JP7113550B1 - 抗鬱剤、抗老化剤及び抗肥満剤 - Google Patents

抗鬱剤、抗老化剤及び抗肥満剤 Download PDF

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Abstract

【課題】乳酸菌ラクトバチルス・コーソイ10H株の有する新規な性質を明らかにし、これに基づいて新たな用途を提供する。【解決手段】受託番号NITE BP-02811として寄託されているラクトバチルス・コーソイ(Lactobacillus kosoi)10H株の菌体を有効成分として含有する抗鬱剤、抗老化剤又は抗肥満剤。【選択図】図2

Description

NPMD NITE BP-02811
本発明は、乳酸菌ラクトバチルス・コーソイ10H株の菌体を含有する抗鬱剤、抗老化剤及び抗肥満剤に関する。
従来から、乳酸菌やその発酵生産物が様々な生理機能を有することが知られている。例えば、特許文献1には、植物由来のラクトバチルス属等に属する乳酸菌が、腸管免疫活性化作用やパイエル板細胞のIgA抗体産生促進作用を有することが記載されている。また、特許文献2には、ラクトバチルス・プランタルムが産生する活性物質が、Cisd2遺伝子発現の増加、ミトコンドリア損傷の減少、神経変性及びサルコペニアなどの老化状態を遅延させて長寿促進に寄与するとの報告がある。さらに特許文献3には、キムチから分離された特定の乳酸菌株を含む組成物が、老化と認知症に対して予防又は治療効果を有することが記載されている。
本出願人は、野菜黒糖発酵液から単離した乳酸菌ラクトバチルス・コーソイ10H株が、他の乳酸菌とは異なる新規なゲノム構造を有するフラクトフィリックな乳酸菌であること、及び優れた免疫賦活作用を有することを見出している(特許文献4参照)。
特開2007-308419号公報 特開2020-59694号公報 特許第6009080号公報 特開2020-92704号公報
特許文献2に記載の活性物質は、ラクトバチルス・プランタルムGKM3という特定の菌株が産生するものであり、長寿遺伝子の発現を増加させる作用に基づくと考えられる。特許文献3では、キムチから分離した数多くの乳酸菌株について検討した結果、ラクトバチルス・ペントーサス変種プランタルムC29などの特定の菌株のみが、抗酸化、抗老化及び認知症の予防又は治療効果を有することが記載されている。一方、特許文献4に記載のラクトバチルス・コーソイ10H株は、他の乳酸菌に対して比較的小さなゲノムを有するとともに、グルコースの資化能が低く、フラクトースを好適な炭素源として資化するという特徴を有する。この菌株は、腸管粘膜においてIgAの産生を促進し、優れた免疫賦活作用を有することが開示されているものの、その他の作用については明らかではない。
本発明は、このような乳酸菌ラクトバチルス・コーソイ10H株の有する新規な性質を明らかにし、これに基づいて新たな用途を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明者らは、ラクトバチルス・コーソイ10H株の新たな有用性について鋭意検討した結果、動物モデルを用いた実験系において、ラクトバチルス・コーソイ10H株の菌体を含む組成物が、抗鬱作用、抗老化作用及び抗肥満作用を有することを見出して本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の実施形態を含む。
(1)受託番号NITE BP-02811として寄託されているラクトバチルス・コーソイ(Lactobacillus kosoi)10H株の菌体を有効成分として含有する抗鬱剤。
(2)菌体が死菌体である(1)に記載の抗鬱剤。
(3)医薬品、飲食品又はこれらに配合する有効成分組成物の形態である(1)又は(2)に記載の抗鬱剤。
(4)受託番号NITE BP-02811として寄託されているラクトバチルス・コーソイ(Lactobacillus kosoi)10H株の菌体を有効成分として含有する抗老化剤。
(5)菌体が死菌体である(4)に記載の抗老化剤。
(6)医薬品、飲食品又はこれらに配合する有効成分組成物の形態である(4)又は(5)に記載の抗老化剤。
(7)前記飲食品が美容用飲食品又は健康増進用飲食品である(6)に記載の抗老化剤。
(8)受託番号NITE BP-02811として寄託されているラクトバチルス・コーソイ(Lactobacillus kosoi)10H株の菌体を有効成分として含有する抗肥満剤。
(9)ヒトまたは非ヒト哺乳動物における鬱症状の改善用、抗老化用又は抗肥満用の医薬品、飲食品又はこれらに配合する有効成分組成物を製造するための、ラクトバチルス・コーソイ(Lactobacillus kosoi)10H株菌体の使用。
本発明によれば、ラクトバチルス・コーソイ10H株の有する新規な用途として、この菌体を含む抗鬱剤、抗老化剤、抗肥満剤及び美容用飲食品・健康増進用飲食品を提供することができる。
図1は、本発明の有効成分組成物の製造工程を示すフロー図である。 図2は、本発明の有効成分組成物について、鬱動物モデルを用いた高架十字テストを行った結果を示すグラフである。横軸に示した各試料を投与した鬱誘発マウスが、高架式十字迷路を移動した総距離を縦軸に示す。 図3は、本発明の有効成分組成物等について、鬱動物モデルを用いた高架十字テストを行った結果を示すグラフである。横軸に示した各試料を投与した鬱誘発マウスが、高架式十字迷路の開放部に滞留した時間の割合を縦軸に示す。 図4は、本発明の有効成分組成物等について、老化促進マウスによる体重増加率を測定した結果を示すグラフである。 図5は、本発明の有効成分組成物等を投与した老化促進マウスの試験開始133日目の体重増加率の結果を示すグラフである。 図6は、本発明の有効成分組成物等を投与した老化促進マウスの11項目の老化度評価スコアの平均値の経時変化を示すグラフである。 図7は、本発明の有効成分組成物等を投与した老化促進マウスの22週齢における11項目の老化度評価スコアの平均値を示すグラフである。 図8は、本発明の有効成分組成物等を投与した老化促進マウスの22週齢における毛の光沢スコアを示すグラフである。 図9は、本発明の有効成分組成物等を投与した老化促進マウスの22週齢における脳ホモジネート上清のアミロイド-βの濃度を示すグラフである。 図10は、本発明の有効成分組成物等を投与した老化促進マウスの22週齢における脳ホモジネート上清のIL-1βの量を示すグラフである。
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
(I)有効成分の乳酸菌
本発明の一実施形態における有効成分は、野菜黒糖発酵液から単離された特定の乳酸菌株及びその変異株である。好ましくは、商品名「ジオリナ(登録商標)酵素」の培養液から得られるラクトバチルス属に属する菌であり、より好ましくは、ラクトバチルス・コーソイ(Lactobacillus kosoi)10H株(受託番号NITE BP-02811)又はその変異株である。「変異株」とは、特定の菌株に対し、当業者に周知の方法により当業者がその主要な性質に変化を及ぼさない範囲で変異させたもの、あるいは、それと同等であると当業者が確認できるものを包含する意味である。
なお、ラクトバチルス・コーソイ(Lactobacillus kosoi)10H株は、平成30年(2018年)11月7日(原寄託日)付で独立行政法人製品評価技術基盤機構、特許微生物寄託センター(〒292-0818日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、122号室)に寄託されている。受託番号は、NITE BP-02811である(以下、本菌株を「10H株」と称する)。また、当該10H株の分類学的性質は、本発明者らにより公表された論文(Chiou T-Y et al,Antonie van Leeuwenhoek(2018)、111:1149-1156)及び特許文献4に記載されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
(ラクトバチルス・コーソイ10H株の特徴)
本菌株は、最近発見されたフラクトフィリック乳酸菌(FLAB:Fructophilic lactic acid bacteria)として、従来の乳酸菌から進化した細菌であると考えられる(Filannino et al.“Fructose-rich niches traced the evolution of lactic acid bacteria toward fructophilic species”Critical Reviews in Microbiology、Vol.45、No.1、2019、pp.65-81)。FLABは、花や果物、発酵食品、またフラクトースを主食とする昆虫の消化管など、フラクトースが豊富な環境に生息している。FLABは、グルコースではなくフラクトースを炭素源として好むヘテロ発酵性の乳酸菌であるが、酸素などの電子受容体基質を追加することで、グルコース存在下での生育が促進されるといわれている。10H株は、他のFLAB及び乳酸菌に対して、比較的小さなゲノムサイズと低いGC含量を有する(Filannino et al.のFigure3参照)。このため、ラクトバチルス属を再分類し、新たな属としてのアピラクトバチルス(Apilactobacillus)属に本菌株を分類する提案もなされている(Zheng et al.International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology、Vol.70、No.4、2020、pp.1-77参照)。したがって、本発明の有効成分は、従来の乳酸菌とは異なる菌体成分を有し、それに基づく新たな作用を発揮する可能性がある。
(II)抗鬱剤
本明細書において、用語「鬱」とは、広く定義されるものであり、抑うつ気分、興味又は喜びの著しい喪失を主症状とし、さらに睡眠障害や思考・集中力の減退、自殺念慮又は自殺企図などの情動障害又は精神障害を包含し、それらの発症に対する生理学的背景または薬理学的背景にかかわらない。また、用語「鬱」は、特に、不安状態も包含する。従って、用語「抗鬱剤」とは、広くこれらの障害の処置のための予防剤又は治療剤をいう。
本実施形態の抗鬱剤は、対象者の鬱状態を改善するために有効な組成物を意味し、ラクトバチルス・コーソイ(Lactobacillus kosoi)10H株(受託番号NITE BP-02811)の菌体を有効成分として含有する。本明細書でいう「改善」という用語には、ヒトまたは非ヒト哺乳動物において生じた鬱状態が、一時的、間欠的若しくは持続的に軽減、緩和、低下または消失することを含む。好ましくは鬱状態のない正常な状態またはそれに近い状態にまで回復することを含む。このため、本実施形態の抗鬱剤は、以下に詳述するように、医薬品、飲食品又はこれらに配合する有効成分組成物の形態等を含む。また、これらの中でも健康食品が好ましく、鬱状態を有するヒトまたは非ヒト哺乳動物における当該症状を軽減、緩和、低下または消失するために用いることができる。
(III)抗老化剤又は抗肥満剤
用語、「抗老化」とは、広く定義されるものであり、しみ、しわやくすみなどの皮膚疾患、心筋梗塞、脳梗塞、骨粗鬆症、アルツハイマー病、関節リウマチ、糖尿病性血管障害、白内障などの老化症状を緩和、改善、抑制、予防及び治療することをいう。好ましくは、皮膚の老化予防や改善作用を有するものをいい、具体的には、外的因子(紫外線、空気の乾燥等)や、加齢に伴う皮膚の保湿機能や弾力性の低下、肌の張りや艶の減少、荒れ、シワ、くすみ等の老化症状を予防または改善するものをいう。用語、「抗老化剤」とは、このような抗老化のために用いられる薬剤を含む。また、上述した老化症状は代謝機能の低下やエネルギーの過剰摂取に伴う体重増加(肥満)とも関連していると考えられるため、抗老化作用を発揮するためには肥満を抑制することも有用である。したがって、本発明の1つの実施形態としては、ラクトバチルス・コーソイ(Lactobacillus kosoi)10H株の菌体を有効成分として含有する抗肥満剤が提供される。
(IV)剤の形態
本実施形態の抗鬱剤、抗老化剤又は抗肥満剤は、医薬品、飲食品又はこれらに配合する有効成分組成物の形態で用いることができる。当該有効成分組成物として用いる場合、有効成分の乳酸菌菌体を、乳酸菌培養の常法に従って培養し、得られた培養物から遠心分離等の集菌手段によって分離されたものをそのまま用いることのみならず、当該培養・発酵液(培養上清含む)、その培養物の粗精製品あるいは精製品、それらの凍結乾燥品、或いは菌体を酵素や物理的手段を用いて処理した細胞質や細胞壁画分も用いることができる。
また、菌体は生菌体のみならず、通常の一般的加熱滅菌操作によって滅菌されたものであってもよい。ラクトバチルス・コーソイ10H株は高糖濃度(高浸透圧)という過酷な生育条件において生育することから、強固な細胞表層構造を有すると予想される。加熱処理は好ましくは65~85℃で1分以上、例えば、10分、30分又は60分程度であり、より好ましくは70~75℃で、1分以上、例えば、5分、10分又は30分程度である。加熱処理された菌体であっても、抗鬱、抗老化及び抗肥満作用が期待できるだけでなく、生菌の場合、製品製造以降の配送時や陳列時に形態変化を起こす可能性があるため、それ以上形態変化を起こさない加熱滅菌した死菌体は好適に使用できる。
また、本実施形態の有効成分組成物中には、必要に応じて更に、10H株の維持、増殖等に適した栄養成分の適量を含有させることができる。該栄養成分の具体例としては、微生物の培養のための培養培地に利用される、例えばフラクトース、グルコース、ソルボース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、ラクチュロース、スクロース等の炭素源、例えば酵母エキス、ペプトン等の窒素源、ビタミン類、ミネラル類、微量金属元素、その他の栄養成分等の各成分を挙げることができる。ビタミン類としては、例えばビタミンB、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK等を例示できる。微量金属元素としては、例えば亜鉛、セレン等を例示できる。その他の栄養成分としては、例えば乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラクチュロース、ラクチトール、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等の各種オリゴ糖を例示できる。これらのオリゴ糖の配合量は、特に限定されるものではないが、通常本実施形態の組成物中に1~30重量%程度となる量範囲から選ばれるのが好ましい。
本実施形態の有効成分組成物中への10H株の配合量は、一般には、組成物100g中に、菌数が10~1013個前後(生菌数である必要はない。)となる量から適宜選択することができる。生菌数の測定は、10%フラクトースを含むMRS液体培地を用いた限界希釈培養法により求めることが出来る。この生菌数と濁度とは相関するため、予め生菌数と濁度との相関を求めておくと、生菌数の測定に代えて濁度を測定することによって上記生菌数を計数できる。本実施形態の有効成分組成物は、適当な可食性担体(食品素材)、製薬上許容される担体を適宜配合して、後述するような飲食品、医薬品等の形態に調製されるのが好ましい。以下に、当該有効成分組成物を含む医薬品及び飲食品の形態について具体的に説明する。
(医薬品)
本実施形態の抗鬱剤、抗老化剤又は抗肥満剤を医薬品とする場合は、10H株と共に製剤学的に許容される適当な製剤担体を用いて、一般的な医薬組成物の形態に調製されて実用される。該製剤担体としては、通常、この分野で使用されることの知られている充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤あるいは賦形剤を例示できる。これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。
医薬組成物の投与単位形態としては、各種の形態が選択できるが、好適には経口投与用製剤、外用投与製剤が挙げられる。経口投与製剤の代表的なものとしては錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等が挙げられる。
錠剤の形態に成形するに際しては、上記製剤担体として例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、リン酸カリウム等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の崩壊剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド等の界面活性剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン、デンプン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤等を使用できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
丸剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤;アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤;ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
更に、医薬組成物中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を含有させることもできる。
上記医薬組成物の投与方法は特に制限がなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等に応じて決定される。また、その投与量は、用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択されるが、通常、上述した有効成分組成物が1日当り体重1kg当り約0.5~100mg程度とするのがよく、該製剤は1日に1~4回に分けてヒトに投与することができる。
(飲食品)
本実施形態の抗鬱剤、抗老化剤又は抗肥満剤を飲食品とする場合は、例えば発酵乳、乳酸菌飲料、発酵野菜飲料、発酵果実飲料、発酵豆乳飲料等を挙げることができる。「発酵乳」とは、乳又は乳製品を乳酸菌、ビフィズス菌又は酵母で発酵させた糊状又は液状にしたものをいう。従って該発酵乳には飲料形態と共にヨーグルト形態が包含される。また「乳酸菌飲料」とは、乳又は乳製品を乳酸菌、ビフィズス菌又は酵母で発酵させた糊状又は液状にしたものを主原料としてこれを水に薄めた飲料をいう。
他の飲食品形態の例としては、漬物、味噌、発酵茶、パン等の発酵食品、離乳食、粉ミルク、ベビーフード等の乳児用食品、発泡製剤、ガム、グミ、プディング等の菓子類、麺類、カプセル、顆粒、粉末、錠剤等の栄養補助食品等、前記発酵乳及び乳酸菌飲料以外の乳製品等を挙げることができる。とりわけ、加熱によっても機能性が保持される有効成分を含むことから、加熱工程が必要とされる加工食品の形態が好ましい。特に好ましい形態としては、衛生管理上、加熱調理が必要な加工食品であり、例えば、介護食品などが挙げられる。本実施形態の飲食品は、食中毒予防に有効な75℃の加熱によっても安定な抗鬱剤、抗老化剤又は抗肥満剤を提供することができる。
本明細書における「飲食品」とは、専ら飲食のために経口的に用いられる形態のものすべてを含み(例えば、飲料も含む)、錠剤などの形態のものであっても、専ら飲食のために用いられる限りにおいては、本明細書における飲食品に含まれる。例えば、鬱状態の改善や抗老化等をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した、健康食品、健康補助食品、病者用食品、栄養補助食品、あるいは、厚生労働省の定める保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)も、本明細書における飲食品に含まれる。
好ましい実施形態としては、美容用飲食品が挙げられる。用語、「美容用」とは、対象者の老化の進行を抑制して美的外観を維持又は改善するための用途のことをいい、これには、肌や髪の美的外観の改善や、肥満の防止等も含まれる。特に、後述する実施例において、本実施形態の有効成分を経口摂取した老化マウスの毛並み、毛の艶及び眼周囲の皮膚状態等の老化指標が改善されることから、対象者の老化を抑制することによる美的外観の改善、すなわち美容用の飲食品としての用途が期待される。また、本実施形態の美容用飲食品は、さらに、経口用の抗肥満剤、皮膚(肌)老化防止(予防)剤、皮膚(肌)の弾力性改善剤、抗皺剤、肌質改善剤、髪美容改善剤、便通改善剤、体調改善剤、体質改善剤として使用することもできる。
上記美容用飲食品は、抗老化作用及び抗肥満作用を通じて対象者の体調を整え、体質を改善することから、異なる観点において、健康増進用飲食品として使用することもできる。本明細書において、「健康増進」とは、単に病気でない、虚弱でないというのみならず、身体的、精神的そして社会的に完全に良好な状態である「健康」状態を増強することを意味する。
また、この美容用飲食品及び健康増進用飲食品は、上記の有効成分以外にも、生理活性物質、(食品)原料、(食品)添加物などを適宜必要に応じて含有していてもよい。添加物・原料としては、例えば、食品等の製造・加工・保存に際して、添加・混和・浸潤その他の方法によって使用するものが挙げられ、例えば、賦形剤、増量剤、増粘剤、結合剤、滑沢剤、安定化剤、着色剤、乳化剤、可溶化剤、着色料、香味料、調味料、香辛料、甘味料、保存料、香料として通常用いられているようなものが挙げられる。
本実施形態による飲食品における前記有効成分組成物の含有量としては特に限定されるものではなく、適宜決定できる。鬱状態の改善及び抗老化の効果を奏する観点から、それぞれの飲食品の全質量に対して、例えば、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。一方、飲食品中における有効成分組成物の含有量の上限は特に制限されず、例えば、後述する実施例のように有効成分組成物としての凍結乾燥菌体をそのまま摂取してもよいが、通常は、飲食品の形態に合わせて適宜調整することができる。
(V)抗鬱、抗老化又は抗肥満作用を有する有効成分組成物の製造方法
本発明の他の側面では、抗鬱、抗老化又は抗肥満作用を有する有効成分組成物の製造方法を提供する。図1は、当該有効成分組成物の製造工程を示すフロー図である。この方法は、ラクトバチルス・コーソイ10H株の保存菌株から種培養液を調製するシード培養工程(S01)と、得られたシード培養液を用いて菌体生産用の培地で培養する本培養工程(S02)と、本培養後の培養液から菌体を回収して洗浄する菌体洗浄工程(S03)と、洗浄した菌体を加熱処理する加熱処理工程(S04)と、加熱処理後の菌体を回収する回収工程(S05)と、を含む。
シード培養工程(S01)は、ラクトバチルス・コーソイ10H株の保存菌株、例えば、凍結乾燥菌や冷凍保存菌を植えつけて本菌株の生育に適した培地、例えば、D-フラクトースを含むMRS培地等を用いて、18~39℃で16~96時間程度培養することにより得ることができる。このシード培養液を本培養液へ接種するが、その接種量は1~10%(v/v)の範囲で行うことが好ましい。
本培養工程(S02)は、上記工程(S01)で得られた種菌が増殖できる限り特に限定されず、乳酸菌の培養に通常用いられる方法を必要により適宜修正して用いることができる。例えば、培養温度は20~40℃でよく、25~35℃であることが好ましい。また培養は好気条件下、及び嫌気条件下のいずれで行ってもよいが、嫌気条件下で行うことが好ましく、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら培養することができる。また、液体静置培養等の微好気条件下で培養してもよい。
培養する培地としては、特に限定されず、乳酸菌の培養に通常用いられる培地を必要により適宜修正して用いることができる。すなわち、炭素源としては、例えば、フラクトース、グルコース、ソルボース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、ラクチュロース、スクロース、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類を資化性に応じて使用できる。窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩類や硝酸塩類を使用できる。また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄等を用いることができる。また、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキス等の有機成分を用いてもよい。また、調製済みの培地としては、例えばMRS培地を好適に用いることができる。
実施形態の1つとしては、ラクトバチルス・コーソイ10H株を、高糖濃度、かつD-フラクトースを含む培地に接種して培養することが好ましい。本実施形態において、「高糖濃度」とは、糖濃度を高くした培地を用いて培養することを意味し、例えば、フラクトース、グルコース、ソルボース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、ラクチュロース、スクロースなどの糖溶液の添加により調整することができる。高糖濃度培地とは、通常の培養培地の浸透圧よりも高い浸透圧を有する培地である。高糖濃度培地は、例えば、添加する糖類の最終濃度が少なくとも10質量%、好ましくは10~40質量%であり、40質量%以上の糖濃度でも生育可能である。さらに、10H株の炭素源としてD-フラクトースを5~20質量%、好ましくは5~15質量%含む培地である。D-フラクトースは、単糖として添加されるだけでなく、ショ糖やオリゴ糖あるいは多糖類(野菜やキノコなどを含む)として添加された培地成分が培養中に分解されて供給されてもよい。従って、高糖濃度の培地としては、D-フラクトース(果糖)をその構成成分として含むショ糖や、黒砂糖または黒糖などの天然物由来の糖類が好ましい。かかる高糖濃度、かつD-フラクトースを含む培地で培養することにより、他の乳酸菌株等の存在下においても、10H株を優勢菌株として生育させることができる。
菌体洗浄工程(S03)は、上記培養後の培養液から遠心分離や濾過などで菌体を分離し、生理食塩水などを用いて菌体を洗浄する工程である。洗浄回数は、本培養工程(S02)で用いた培地成分や菌体の使用目的によって適宜選択することができる。また、場合によっては、本菌体洗浄工程(S03)なしに、上記で得られた培養液を直接加熱処理してもよい。
加熱処理工程(S04)は、上記菌体洗浄工程(S03)で得られた菌体を加熱により殺菌処理する工程である。加熱温度は65~100℃でよく、加熱時間は1分~120分程度から適宜選択することができる。好ましい加熱処理は、65~85℃で1分以上、例えば、10分、30分又は60分程度であり、より好ましくは70~75℃、1分以上、例えば、5分、10分又は30分程度である。
続いて回収工程(S05)では、上記加熱処理後の処理液を濾過、又は遠心分離等により菌体を回収する。例えば、処理液を5000回転/分、4℃、20分間遠心分離して集菌することによって回収することができる。菌体はそのまま冷凍保存してもよいが、更に、該菌体は凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥、ドラム乾燥などにより乾燥物として回収することもできる。かくして得られる菌体は本発明組成物の有効成分として利用することができる。また、得られた菌体に対して、摩砕や破砕等の処理を行った摩砕物や破砕物が使用されてもよい。
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例において、各種成分の添加量を示す数値の単位%は、質量%を意味する。
(実施例1)ラクトバチルス・コーソイの凍結乾燥菌体の製造
ラクトバチルス・コーソイ10H(受託番号NITE BP-02811)の保存菌株を、500mLのMRS培地(ディフコラボラトリ社)にフラクトースを10質量%添加した培地に植菌し、30℃にて48時間静置培養(シード培養)を行った。この培養液を、10LのMRS培地にフラクトースを10質量%添加した培地に添加して(5%植菌)、30℃、48時間静置して本培養を行った。その後、培養液を5000rpm、20分間遠心分離した後、上清を除去した。得られた菌体を10Lの滅菌生理食塩リン酸緩衝液に懸濁した後、5000rpm、20分間遠心分離し、洗浄菌体を得た。この操作を2回繰り返した。さらに、得られた菌体に10Lの滅菌生理食塩リン酸緩衝液を加え懸濁後、70℃、30分間加熱処理した。次に、5000rpm、20分間遠心分離し、加熱処理菌体を得た。さらに、10Lの滅菌蒸留水による懸濁、遠心分離操作を3回繰り返した。最終的に得られた沈殿を凍結乾燥させ、14.3gの乾燥菌体を得た。凍結乾燥装置は、EYELA U-2200を用い、2~3Paの真空条件、-80℃のトラップ温度にて72時間運転した。
(実施例2)鬱動物モデルによる抗鬱作用の評価
コルチコステロン(CORT)は,ヒトのコルチゾールに類似したげっ歯類のストレスホルモンであり、大うつ病性障害のヒトや慢性的なストレスにさらされたげっ歯類では亢進している。そのため、コルチコステロン誘発性うつ病様行動は、動物のストレスによるうつ病の慢性モデルとして広く用いられている。CORTを慢性的に投与することで、動物の不安関連の接近-回避-避難行動に対するストレスの影響を模倣することができる。
2-1.マウス
雄のC57BL/6マウスは、National Laboratory Animal Center(台湾)から入手した。すべてのマウスは、365×207×140mmのケージに1ケージあたり5匹ずつ収容し、23±2℃、午前7時30分から始まる12時間の明暗サイクルで飼育した。動物の健康状態は毎日観察した。主要な有害事象は観察されなかった。水と餌は自由摂取とした。投与期間中、週に一度、24時間の飲水量を測定し、週に二度、体重を測定した。マウスの体重変化率を算出した。すべての動物実験および手順は、工業技術研究院の施設内動物管理・使用委員会Institutional AnimaI Care and Use Committee(ITRI-IACUC-2019-083M)の承認を得た。
2-2.投与方法
8週齢の雄のC57BL/6マウスを4群に分けた(各群n=10)。(1)シャム群、(2)ビークル群(溶媒対照群)、(3)LK600群(実施例1で調製したラクトバチルス・コーソイの凍結乾燥菌体を600mg/kg/日で投与した群)、(4)フルオキセチン群(フルオキセチン塩酸塩、製品番号1279804、シグマ-アルドリッチ社製を15mg/kg/日で投与した群)。シャム群のマウスには生理食塩水3.25mL/kg/日を毎日皮下注射して21日間(0~20日目)投与し、他の群のマウスにはCORT(コルチコステロン、製品番号C2505、シグマ-アルドリッチ社製)40mg/kg/日(3.25mL/kg/日)を毎日皮下注射して鬱の誘導を行った。CORTはゴマ油(製品番号S3547、シグマ-アルドリッチ社製)に2%DMSO(製品番号D2650、シグマ-アルドリッチ社製)を加えて溶解した。ビークル(溶媒)、LK(実施例1で調製したラクトバチルス・コーソイの凍結乾燥菌体を懸濁した水溶液)、フルオキセチン(水溶液)を毎日経口投与(5mL/kg/日)し、投与期間は21日間(0~20日目)とした。21日目から25日目の間に行動試験を行い、28日目にマウスを犠牲にした。
2-3.統計解析
データは一元配置のANOVAを用いて分析し、DunnettのPost hoc解析を行った。すべての統計解析はEZR(R version4.0.3,Rコマンダー2.7-1、参考文献:Bone Marrow Transplantation 2013:48,452-458.)を用いて行った。p値が0.05未満の場合、統計的に有意であるとみなした。
2-4.高架十字テスト
高架式十字迷路(EPM)試験は、動物が高所の開放的な空間を嫌い、閉鎖的な空間に留まろうとする傾向があることに基づく。EPM試験では、閉ざされたアームの中でより多くの時間を過ごすことで不安を表現する。EPM試験では、高さ50cmの昇降式の十字型(+)の装置を使用し、2本の開いたアームと2本の閉じたアームが付いている。各アームの長さは30cm、幅は5cm。閉じた2本のアームには、アームを囲む15cmの背の高い壁がある。マウスは、実験前に迷路の馴化を受けなかった。行動アッセイを開始するために、各マウスを迷路の中央領域(5×5cm)に配置し、5分間探索させた。各アームで過ごした時間は、開いたアームと閉じたアームで過ごした時間の割合として分析した。その後、匂いが次のマウスの行動の妨げにならないように、各テストの間に70%エタノールで迷路を洗浄した。
2-5.結果
その結果を図2及び図3に示す。シャム群に対し、ビークル群では総移動距離(図2)及び開放部滞留割合(図3)の減少傾向が認められた。しかしながら、LK600群(600mg/kg/日のラクトバチルス・コーソイの凍結乾燥菌体投与群)は、ビークル群に対し、有意に総移動距離(図2、Dunnett、p<0.05)及び開放部滞留割合(図3、Dunnett、p<0.01)が増加した。この効果は、抗鬱薬として用いられているフルオキセチン15mg/kg/日投与群と比べても同等か又はそれ以上であった。
(実施例3)老化動物モデルによる抗老化作用の評価
AKR/J系統の選択的な近親交配により、老化促進マウス(SAM)が作製されている。このマウスは、老人性アミロイドーシス、老人性骨粗しょう症、白内障、免疫応答の低下、学習・記憶障害などの早期老化現象を示す。老化促進マウス・プローン8(SAMP8)は、脳の萎縮が早期に始まり、傾眠・記憶障害や情緒障害を伴うことから、特に認知症の研究に広く用いられているモデルである(T.Takeda,et al.,A new murine model of accelerated senescence,Mech. Ageing Dev.17(1981)183-194)。SAMP8の寿命は、対照株であるSAM/resistant1(SAMR1)のほぼ半分である。老化促進マウスSAMP8は、高脂肪食を与えることで、さらに老化が加速し、II型糖尿病を発症しながら、アルツハイマー型認知症の病理モデルとなることが知られている(Mehla et al.,Experimental Induction of Type2 Diabetes in Aging-Accelerated Mice Triggered Alzheimer-Like Pathology and Memory Deficits.Journal of Alzheimer’s Disease 39:145-162,2014)。
3-1.マウス
雄のSAMP8/TaHsd(老化促進マウス)はEnvigo RMS B.V.(オランダ)から入手した。ベンダーのハウジングポリシーによると、SAMP8マウスは6週齢でシングルハウジングにすることになっている。到着時、マウスは4~7週齢であった。6~7週齢のSAMP8マウスは出荷前にシングルハウジングされており、バッチ1として割り当てられた。4~5週齢のSAMP8マウスは5~6週齢(検疫後)にシングルハウジングされ、バッチ2として割り当てられた。すべてのマウスは、365×207×140mmのケージ(キャップなし)に単身で収容し、温度は23±20℃、午前7時30分から12時間の明暗サイクルで飼育した。バッチ2のマウスはバッチ1のマウスよりも2週間遅く実験を開始し、年齢を合わせた。馴化のために、試験開始17日前からすべてのマウスにControl diet(LFD,D12450Ji,Research Diets)を与えた。SAMP8の一部のマウスは、10~11週齢時に高脂肪食(HFD,D12492i,Research Diets)に変更した。HFDとLFDは週に3回給餌した。動物の健康状態は毎日モニターした。水と餌は自由摂取とした。餌の一日あたりの消費量は、1週間ごとに測定した。水の消費量は2~3週間ごとに24時間の飲水量を測定した。体重は、試験期間中、週に2回測定した。マウスの体重の変化率を算出した。すべての動物実験および手順は、工業技術研究院の施設内動物管理・使用委員会Institutional AnimaI Care and Use Committee(ITRI-IACUC-2019-069V1)により承認された。
3-2.投与方法
10~11週齢の雄性SAMP8マウスを3群に分けた(各群n=9、バッチ1とバッチ2の両方で構成、バッチ2では4~5匹/群とした)。(1)LFD(低脂肪食)群、(2)ビークル(高脂肪食)群(3)LK600(高脂肪食)群の3群である。ビークル(高脂肪食)群とLK600(高脂肪食)群(実施例1で調製したラクトバチルス・コーソイの凍結乾燥菌体を600mg/kg/日で投与した群)には試験開始0日目から高脂肪食を自由摂食させ、LFD群には低脂肪食を自由摂食させた。また、LFD(低脂肪食)群とビークル(高脂肪食)群には、デキストリン1500mg/kg/日を投与し、LK600(高脂肪食)群には、ラクトバチルス・コーソイ凍結乾燥菌体600mg/kg/日と共にデキストリン900mg/kg/日を投与した。投与方法は、5mL/kg/日を122日間(試験開始0~121日目)毎日ゾンデを用いて経口投与を行った。122日目から132日目の間は、検体の投与を行わないで試験を継続し、133日目でマウスを犠牲にした。
統計解析は、解析ソフトEZR(R version4.0.3,Rコマンダー2.7-1)により、図4及び図6は、反復測定の分散分析(Repeated measures ANOVA)、図5は、対応のないt検定(unpaired t test)及び図7~10は、一元配置のANOVAを用いて解析し、DunnettのPost-hoc解析を行った。p<0.05、 **p<0.01、 ***p<0.001
3-3.体重増加率の測定
体重は、マウスの健康状態を示す指標としてよく用いられる。LFD(低脂肪食)群と比較して、高脂肪食を摂取したビークル(高脂肪食)群(図4では、HFD Vehicleと表示)の体重増加率は有意に高かった(Repeated measures ANOVA,P<0.001)(図4)。高脂肪食とともにLK600を投与した群(図4では、HFD LK600と表示)では、LFD(低脂肪食)群よりは高いものの、高脂肪食を摂取したビークル(高脂肪食)群よりも有意に低かった(Repeated measures ANOVA,P<0.05)(図4)。試験開始133日目のマウスの体重を測定し、各群を比較した結果を図5に示す。図5に示したように、高脂肪食とともにLK600を投与した群と、ビークル(高脂肪食)群との間には、対応のないt検定により有意な差が認められた(p<0.05)。
3-4.老化指標の測定
老化度評価スコア
SAMP8マウスの老化の程度を評価するために、行動や外見の変化を表す11項目のスコア(表1参照)を0~4で合計した老化度評価スコアを用いた。図6は、本発明の有効成分組成物等を投与した老化促進マウスの11項目の老化度評価スコアの平均値(トータル老化指標)の経時変化を示す。
Figure 0007113550000002
各投与群の平均評点は、9週齢から25週齢にかけて徐々に上昇した。15週齢までは有意な差はなかったが、22週齢以降は明らかに差がついた(図6)(Repeated measures ANOVA;LK600 vs. ビークル:P<0.01、LFD vs. ビークル:P<0.001)。22週齢の各群の老化度評価スコア平均値の合計を図7に示す。図7に示したように、LFD(低脂肪食)群にくらべてビークル(高脂肪食)群は有意に高いスコアを示した(Dunnett,P<0.001)。一方、LK600(高脂肪食)群は、ビークル(低脂肪食)群に比べてこの上昇を有意に抑えた(Dunnett,P<0.01)。スコアの変化は、主に、毛の外観の指標である光沢感と密集度のカテゴリーが中心であった。そこで、各投与群における22週齢の毛の光沢感(Glossiness of fur)のスコアを図8に示す。図8に示したように、LFD(低脂肪食)群にくらべてビークル(高脂肪食)群は有意に高いスコアを示した(Dunnett,P<0.001)。一方、LK600(高脂肪食)群は、ビークル(高脂肪食)群に比べてこの上昇を有意に抑えた(Dunnett,P<0.01)。
3-5.組織の回収
マウスを犠牲にした時、マウスの血清と脳組織を保存した。誘導ボックスとマスクを用いて2.5%イソフルランの吸入によりマウスを深部麻酔し、足指ピンチ反射で麻酔状態を確認した。開胸し、シリンジ(25G針)で右心室から0.35mLの全血を採取して血清とした。心腔内灌流は、ペリスタティックポンプを用いて、右心房を切開した直後の左心室から氷冷した人工脳脊髄液(ACSF)を15~20mL(10mL/min)注入した。ACSFは124mM NaC1、2.5mM KC1、1.2mM NaHPO、24mM NaHCO、5mM HEPES、12.5mMグルコース、2mM MgSO・7HO、2mM CaCl・2HOで構成されていた。ACSFのpHは、室温でカルボゲン(95%O/5%CO)を用いて酸素を供給した後、7.4に調整した。ACSFは4℃または氷上で保存し、使用前にカルボゲンで20分間再酸素化した。心腔内灌流後,脳を速やかに回収し、2つの半球に分離した。左半球は液体窒素中で急速凍結し、-80℃で保存した。全血サンプルを室温で2時間かけて凝固させた後、1000×gで10分間遠心分離した。血清を回収し,-80℃で保存した。
3-6.脳内アミロイド-βの測定
凍結(-80℃)した左半球の脳を、プロテアーゼインヒビターカクテル(K266-100,BioVison)を加えた800μLのT-PERTM Tissue Protein Extraction Reagent(78510,Thermo Fisher Scientific)でホモジナイズした。その後、ホモジネートを10000×gで5分間遠心分離した。上清を回収し、-80℃で保存した。半球中のアミロイド-β1-42の総濃度は、ELISAキット(Mouse amyloid beta peptide 1-42 ELISA Kit, CSB-E10787m, CUSABIO)を用いて、製造者の指示に従って測定した。
老化促進モデルマウスSAMP8は、アミロイド-βの高発現による酸化ストレス増加を病因とするアルツハイマー型認知症のモデルになることが知られている(Morley et al.,The senescence accelerated mouse(SAMP8) as a model for oxidative stress and Alzheimer’s disease.Biochimica et Biophysica Acta 1822:650-656、2012)。LK600(高脂肪食)群のアミロイド-βに対する効果を、SAMP8マウスの脳で評価した結果を図9に示す。図9に示すように、脳ホモジネート上清中のアミロイド-βのレベルは、LFD群に比べてビークル(高脂肪食)群で有意(Dunnett,p<0.001)に上昇したが、LK600(高脂肪食)群では、ビークル(高脂肪食)群に比べてアミロイド-βの上昇が有意に抑えられた(Dunnett,p<0.01)。
3-7.血清中の炎症因子インターロイキン1β(IL-1β)の測定
高齢者ではIL-1などの炎症性サイトカインの産生が高まることが知られている(磯部ら、老年医学の展望―老化と免疫―日本老年医学会雑誌、48:205-210、2011、及びLicastro et al.,Innate immunity and inflammation in ageing:a key for understanding age-related diseases.Immunity & Ageing2:8、2005)。LK600の投与によりSAMP8マウスのIL-1βのレベルが変化するかどうかを調べるため、ELISAを行った。各群の血清サンプルをプールし、Abcam社のHigh Sensitivity IL-1β ELISA Kit(abl97742)を用いてIL-1βを検出した結果を図10に示す。図10に示すように、IL-1βレベルは、LFD(低脂肪食)群に比べてビークル(高脂肪食)群で有意に上昇(Dunnett,p<0.001)したが、LK600(高脂肪食)群では、ビークル(高脂肪食)群に比べてIL-1βの上昇が有意に抑制された(Dunnett,p<0.001)。
(処方例1 錠剤)
常法に従って、以下の成分を混合し、錠剤を製造した。なお、有効成分組成物は、実施例1で得たラクトバチルス・コーソイの凍結乾燥菌体を用いた。
組成
有効成分組成物(実施例1) 150mg
セルロース 80mg
デンプン 20mg
ショ糖脂肪酸エステル 2mg
上記成分を混合、打錠し、錠剤を得た。
(処方例2 カプセル剤)
常法に従って、以下の成分を混合し、軟カプセルを得た。なお、有効成分組成物は、実施例1で得たラクトバチルス・コーソイの凍結乾燥菌体を用いた。
組成
有効成分組成物(実施例1) 100mg
ミツロウ 10mg
ぶどう種子オイル 110mg
上記成分を混合し、ゼラチンおよびグリセリンを混合したカプセル基剤中に充填し、軟カプセルを得た。
(処方例3 美容用飲料水)
常法に従って、以下の成分を混合し、全量を100gとして美容用飲料水を調製した。なお、有効成分組成物は、実施例1で得たラクトバチルス・コーソイの凍結乾燥菌体を用いた。
組成
有効成分組成物(実施例1) 500mg
コエンザイムQ10 500mg
ビタミンB2 5mg
ビタミンB6 5mg
ニコチン酸アミド 10mg
ビタミンE 100mg
L-アスコルビン酸 100mg
黒糖ぶどう糖液糖 10g
クエン酸 1g
香料 100mg
色素 100mg
水 97.5g
ラクトバチルス・コーソイ菌体を含む組成物の適用は、薬剤投与鬱モデルマウスや高脂肪食投与老化促進モデルマウスを用いた評価において、抗鬱作用及び抗老化作用(肥満の抑制を含む)を示すことが確認できた。したがって、本発明の抗鬱剤、抗老化剤及び抗肥満剤は、医薬品、飲食品、特に、美容用飲食品及び健康増進用飲食品として利用できる可能性がある。

Claims (8)

  1. 受託番号NITE BP-02811として寄託されているラクトバチルス・コーソイ(Lactobacillus kosoi)10H株の菌体を有効成分として含有する抗鬱剤。
  2. 前記菌体が死菌体である請求項1に記載の抗鬱剤。
  3. 医薬品、飲食品又はこれらに配合する有効成分組成物の形態である請求項1又は2に記載の抗鬱剤。
  4. 受託番号NITE BP-02811として寄託されているラクトバチルス・コーソイ(Lactobacillus kosoi)10H株の菌体を有効成分として含有する抗老化剤。
  5. 前記菌体が死菌体である請求項4に記載の抗老化剤。
  6. 医薬品、飲食品、飼料又はこれらに配合する有効成分組成物の形態である請求項4又は5に記載の抗老化剤。
  7. 前記飲食品が美容用飲食品又は健康増進用飲食品である請求項6に記載の抗老化剤。
  8. 受託番号NITE BP-02811として寄託されているラクトバチルス・コーソイ(Lactobacillus kosoi)10H株の菌体を有効成分として含有する抗肥満剤。
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