JP7111359B2 - 植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤及び植物の育成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、植物のカリウムイオン輸送体(チャネル・トンランスポーター・ポンプ)の機能制御剤、及び当該機能制御剤を施用する植物の育成方法に関する。さらに詳しく言えば、特定の化学構造を有するN,N’-ジフェニル尿素化合物誘導体(「ジフェニル尿素化合物誘導体」と略記することがある。)からなる植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤、及びその制御剤を植物に施用する改質された植物体の育成方法に関する。
植物は葉や茎にある気孔から空気中の炭酸ガス(CO2)を体内に取り込み、光合成でCO2を炭素源(C源)の養分とする。窒素(N)、リン(P)、鉄(Fe)、硫黄(S)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、塩素(Cl)、ケイ素(Si)、モリブデン(Mo)、ホウ素(B)などの無機養分は根から吸収する。この吸収は、気孔の開口によって生じる蒸散流が寄与している。気孔の開口によって体内の水分が外界へ抜けることとなる。このため、乾燥時には気孔は閉じている必要がある。
気孔の開閉を調節するのは、孔辺細胞と呼ばれる2つの細胞である。孔辺細胞のカリウム(K)イオン輸送体(K+チャネル・K+トンランスポーター・ポンプ)が孔辺細胞の体積を制御している。モデル植物のシロイヌナズナには、細胞外から細胞内へK+(本明細書ではK+を単にKと記載することがある。)を吸収するカリウム(K)イオンチャネル(KAT1、KAT2、AKT1)、細胞内から細胞外へカリウムイオン(K+)を排出するK+チャネル(GORK、SKOR)、両方向にK+を輸送するAKT2、K+チャネルの機能が確認できていないKClが存在している。特に、KAT1、KAT2、GORKは気孔で良く機能することが知られている。
孔辺細胞が膨潤する(すなわち、気孔が開口する)場合、内向きチャネルのKAT1、KAT2がオープン(open)になり活性化し、同時に、外向きチャネル(GORK)がクローズ(close)になる。KAT1とKAT2は、ヘテロ四量体を形成してKチャネルとして機能する。このためKAT1またはKAT2のどちらか一つの輸送活性が阻害するとKチャネルのイオン輸送機能は阻害される。
一方、孔辺細胞が収縮する(すなわち、気孔が閉鎖する)場合、内向きチャネルのKAT1、KAT2がクローズ(close)になり活性化する。同時に、外向きチャネル(GORK)がオープン(open)になる。
このような気孔の開閉の制御以外の目的にもカリウムイオン輸送体が利用される。植物の根で行われるカリウムイオンの吸収と排出においても、カリウムイオン輸送体が主体となって機能している。NS5806類によるカリウムイオン輸送体の機能の制御により、養分吸収や細胞内イオン環境が調節されることになり、植物の機能の制御が可能となる。さらに、通導組織である維管束系〈導管や篩管〉などのカリウムイオンの出入りにもカリウムイオン輸送体が機能しており、上記同様にこの輸送体の機能制御を行うことにより、植物の機能の制御が可能となる。SKORは根や維管束に発現しており、細胞内からKを排出する輸送活性を有する。土壌から吸収したKを維管束に積み込む機能、または細胞内のK濃度を適正に保つために、Kを細胞から排出輸送する機能がある。さらに、生殖組織である花においてもカリウムイオン輸送体が機能することから、この輸送体の機能制御を行うことにより、受精、果実形成が制御される。
理論通り、内向きチャネルのKAT1、KAT2の発現量が低下した植物変異株では、気孔の閉鎖が促進されるため、乾燥耐性をもつことが実際に報告されている(非特許文献1;Plant Physiology,(2001),127,473~485)。
一方、ヒト向けの医薬品では、このようにイオン輸送体を標的としたイオンチャネル阻害剤/イオンチャネル遮断薬(ion channel blocker)(チャネルブロッカーなどと称される。)が数多く開発されている(例えば、動物のATP依存性Kチャネル阻害剤であるグリベンクラミド(オイグルコン euglucon(登録商標)など)。しかしながら、これまで、植物のカリウムイオン輸送体を標的にした植物の成長、分化、耐環境性の強化、蒸散の調節、養分吸収の調節、CO2吸収の調節、生理機能を調節する化合物(阻害薬、機能遮断薬または活性化薬)は皆無である。
Plant Physiology,(2001),127,473~485
従って、本発明の課題は植物のカリウムイオン輸送体を標的にした機能制御剤(機能阻害剤及び/または機能活性化剤)を提供することにある。
さらに、本発明は、前記植物の輸送体を標的にした機能制御剤を植物に施用する、改質された植物体の育成方法を提供することにある。
生物の生体膜にあるイオン輸送体(イオンチャネル・トランスポーター・ポンプ)が開閉することでイオンの出入りが調整されている。細胞内イオン濃度の変化に応じて、水の出入りが起こり細胞の体積も変化する。
本発明者らは、特定の化学構造を有するN,N’-ジフェニル尿素化合物誘導体が植物のカリウムイオン輸送体(K+チャネル)を効果的に阻害すること、具体的には、孔辺細胞や維管束系で機能する植物のKAT1、KAT2、AKT1、AKT2(AKT3)、GORK、SKORの6つのK+チャネルを阻害し、その中でも、植物内で発現箇所が異なるKAT1とSKORの2つを強力に阻害することを見出し、さらに,気孔開閉の調節を行うことも見出した。
すなわち、後述する特定の化学構造を有するN,N’-ジフェニル尿素化合物誘導体が特異性、選択性の高いK輸送体阻害剤であることを示す一方、KAT1、KAT2以外の他の4種類のK+チャネル(すべてのK+チャネル)を阻害した。前記ジフェニル尿素化合物誘導体を植物に与えた場合には、内向きK+チャネルと外向きK+チャネルの両方を同時に阻害すると考えられる。このことは、選択的に片側方向のみのK+チャネル阻害剤を開発することによって、より効果的な細胞体積の制御が可能になることを示唆するものである。
本発明は、一般式(1)で示されるジフェニル尿素化合物誘導体を含む下記[1]~[4]の植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤(阻害剤及び/または活性化剤)、及び[5]~[8]の植物の育成方法に関する。
[1] 一般式(1)
Figure 0007111359000001
(式中、R1~R7は、それぞれ独立して、水素原子、C1~10の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルエステル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、1級、2級または3級アミノ基、トリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる1価基を表すか、またはR1~R7の少なくとも2種の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、かかる基により置換を受けている炭素原子と共に少なくとも1つ以上の3~7員環の飽和または不飽和炭化水素の環状構造を形成する2価の基を形成してもよい。前記R1~R7が表すアルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、またはそれらによって形成される環状炭化水素鎖にはカルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノ結合を任意の数含んでもよい。R8は、前記R1~R7の記載と同じ意味を表すか、またはテトラゾリル基を表す。X1及びX2は、それぞれ独立してハロゲン原子を表し、X3及びX4はそれぞれ独立してハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を表す。)
で示されるジフェニル尿素化合物誘導体を含む、植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤。
[2] 一般式(1)で示されるジフェニル尿素化合物誘導体が、一般式(1A)
Figure 0007111359000002
(式中、R1aは水素原子またはC1~4のアルキル基を表し、R8はテトラゾリル基を表し、X1及びX2はそれぞれ独立してハロゲン原子を表し、X3及びX4はそれぞれ独立してハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を表す。)
で示される化合物誘導体である前項1に記載の植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤。
[3] 前記化合物誘導体が、N-[3,5-ビス(トリフロロメチル)フェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(NS5806)、N-[3-トリフロロメチル,5-ブロモフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA38)、N-[3,5-ジブロモフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA39)、N-[4-メチル-3,5-ジクロロフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA44)、N-[3,5-ジクロロフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA37)、またはN-[3,5-ビス(トリフロロメチル)フェニル]-N’-[2,4-ジクロロ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(No.44)である前項1または2に記載の植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤。
[4] 植物のカリウムイオン輸送体の機能制御が、植物の気孔開口の制御である前項1~3のいずれかに記載のカリウムイオン輸送体の機能制御剤
[5] 前項1~4のいずれかに記載の植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤を植物に施用することを特徴とする植物の育成方法。
[6] 前記カリウムイオン輸送体の機能制御がカリウムイオン輸送体の機能阻害である前項5に記載の植物の育成方法。
[7] 前記カリウムイオン輸送体の機能制御がカリウムイオン輸送体の機能活性化である前項5に記載の植物の育成方法。
[8] 植物に、乾燥耐性の付与、炭酸ガス取り込み阻害による植物体の矮小化、成長調節、養分吸収の活性化と抑制、植物内養分循環の調節、作物サイズの調節、収穫時期の変化、植物体のみずみずしさの増強、植物体や実の糖度の調節(変化)、根の成長促進性の変化、葉の肉厚の変化、及び低カリウム化から選択される少なくとも1種の機能を付与する前項5~7のいずれかに記載の植物の育成方法。
本発明の植物のカリウムイオン輸送体(K+チャネル・K+トンランスポーター・ポンプ)の機能制御剤により、K+イオンチャネルを制御することによって乾燥時における蒸散の抑制や良好な環境における気孔からのCO2吸収の促進などが可能である。カリウムイオン輸送体を標的とするジフェニル尿素化合物誘導体を外部から噴霧や添加することにより、植物の成長と分化の制御や環境変化への適応を促すことが可能である。これにより分子育種や遺伝子操作に頼らない植物の成長の調節(制御)や耐環境性の増強が可能である。
アフリカツメガエル卵母細胞生体膜KAT1チャネルのK+電流の阻害度合いに関するNS5806の濃度依存性を示す。 6種類のK+チャネル(KAT1、KAT2、AKT1、AKT2、GORK及びSKOR)に対するNS5806の阻害実験の結果を示す。 気孔開口に対するNS5806の阻害実験の結果を示す。 6種類のジフェニル尿素化合物誘導体(NS5806、No.44、UA37、UA38、UA39及びUA44)の濃度30μMにおける比電流(Relative current)を示す。 気孔開口に対する、5種類のジフェニル尿素化合物誘導体(NS5806、No.44、UA37、UA38、UA44)の濃度10μMにおける阻害実験の結果を示す。 気孔閉鎖に対する、NS5806の濃度10μMにおける気孔閉鎖促進実験の結果を示す。
本発明は、下記一般式(1)で示されるジフェニル尿素化合物誘導体を含む、植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤を提供する。
Figure 0007111359000003
式(1)中、R1~R7は、それぞれ独立して、水素原子、C1~10の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルエステル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、1級、2級または3級アミノ基、トリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる1価基を表すか、またはR1~R7の少なくとも2種の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、かかる基により置換を受けている炭素原子と共に少なくとも1つ以上の3~7員環の飽和または不飽和炭化水素の環状構造を形成する2価の基を形成してもよい。前記R1~R7が表すアルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、またはそれらによって形成される環状炭化水素鎖にはカルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノ結合を任意の数含んでもよい。R8は、前記R1~R7の記載と同じ意味を表すか、またはテトラゾリル基を表す。X1及びX2は、それぞれ独立してハロゲン原子を表し、X3及びX4はそれぞれ独立してハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を表す。
本発明で用いられる前記一般式(1)で示されるジフェニル尿素化合物誘導体の中でも、下記一般式(1A)
Figure 0007111359000004
(式中、R1aは水素原子またはC1~4のアルキル基を表し、R8はテトラゾリル基を表し、X1及びX2はそれぞれ独立してハロゲン原子を表し、X3及びX4はそれぞれ独立してハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を表す。)
で示される化合物誘導体が好ましい。
それぞれ独立してハロゲン原子を表す前記X1及びX2としては、塩素原子及び臭素原子が好ましく、また、X3及びX4が表すハロゲン原子としては塩素原子及び臭素原子が好ましい。
8としては、特にテトラゾリル-5-イル基が好ましい。
本発明物の植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤に好ましく用いられる前記一般式(1)で示される化合物の具体例を以下に示す。
(1)N-[3,5-ビス(トリフロロメチル)フェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(NS5806)
Figure 0007111359000005
(2)N-[3-トリフロロメチル,5-ブロモフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA38)
Figure 0007111359000006
(3)N-[3,5-ジブロモフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA39)
Figure 0007111359000007
(4)N-[4-メチル-3,5-ジクロロフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA44)
Figure 0007111359000008
(5)N-[3,5-ジクロロフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA37)
Figure 0007111359000009
(6)N-[3,5-ビス(トリフロロメチル)フェニル]-N’-[2,4-ジクロロ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(No.44)
Figure 0007111359000010
さらに、本発明では、前記前記一般式(1)で示されるジフェニル尿素化合物誘導体を植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤として、植物に施用することにより所望の植物を育成する方法を提供することができる。カリウムイオン輸送体の機能制御は、例えば、カリウムイオン輸送体の機能阻害を与えて制御する方法であってもよく、またカリウムイオン輸送体の機能活性化を行わせる、植物育成の制御方法であってもよい。
本発明において、好ましく用いられる「NS5806」は、フナコシ株式会社(Funakoshi Co., Ltd.)のネット公開情報(http://www.funakoshi.co.jp/contents/158053)によれば、動物由来のKv4.3チャネル活性化物質であって、一過性の外向きK+電流を調節する作用が知られている。ここで、Kv4.3チャネルと植物のカリウムチャネルは、アミノ酸配列が大きく異なる。なお、Kv4.3チャネルは、Kv1-Kv6の分類の中の1つであり、「NS5806」は、Kv4.3チャネルの活性化物質として限定的な阻害剤であり、Kv4.3チャネルは細胞内のKを一過性で細胞外に排出する作用を持つことが知られている。
しかしながら、本発明の実施例の結果から、本発明者らは、「NS5806」にはGORKとSKORに対しては同じく外向き(K排出)チャネルの作用の調整を持つものの、驚くべくことにSKORのみに、選択的(特異的に)に大きな阻害作用があることを発見した(図2参照)。一方、「NS5806」は、細胞外のKを細胞内に取り込む(逆方向)KAT1に対しても、内向き輸送活性を示すKAT2、AKT1と比較して選択的(特異的に)に大きな阻害作用を有することを発見した。
本発明者らは、化学構造が「NS5806」に類似の入手可能なジフェニル尿素化合物誘導体の中にも、驚くべきことに「NS5806」と同様にKAT1に対して、KAT2、AKT1と比較して選択的(特異的に)に大きな阻害作用を有することを発見した。
このように、本発明においては、植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤として用いられる前記一般式(1)、一般式(1-A)もしくは前記式(1-1)~(1-6)で示されるジフェニル尿素化合物誘導体を植物由来の外向きK+電流を調節する機能制御に用いるだけでなく、細胞外のKを細胞内に取り込む(逆方向)の作用も調整できるものである。本発明者らは、後述の実施例の項に示す通り、植物(葉)の気孔開口の阻害及び気孔閉鎖の促進にジフェニル尿素化合物誘導体が関与することを確認している。
本発明の植物の育成方法において施用される、植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤は、ジフェニル尿素化合物誘導体を溶媒中に分散させた分散液であってもよく、またジフェニル尿素化合物誘導体を溶媒中に溶解させた薬剤として用いてもよい。また、分散液の1つの形態として、ジフェニル尿素化合物誘導体をワセリンなどの基剤の中に分散させたクリーム状または軟膏剤等の、NS5806類として半固形の製剤を塗布・噴霧等により用いてもよい。この場合、公知の乳剤性基剤(例えば、一般にクリームの形態で使用されるもの)、水溶性基剤(例えば、ポリエチレングリコール類)や懸濁性基剤(例えば、セルロース等)が用いられる。
このような、植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤(組成物)に含まれるジフェニル尿素化合物誘導体の含有量(濃度)は、特に制限を受けるものではないが、好ましくは1μM(濃度)以上、より好ましくは5μM(濃度)以上、さらに好ましくは10μM(濃度)以上で使用される。しかしながら、本発明においては、ジフェニル尿素化合物誘導体の製造コスト等の問題もあり、当該機能制御剤(組成物)に含まれるジフェニル尿素化合物誘導体の含有量(濃度)は、1mM(濃度)以下が望ましい。
本発明において、前記分散液または液剤に用いられる溶媒は制限を受けない。しかしながら、ジフェニル尿素化合物誘導体の化学構造には芳香環や尿素構造を含むため、DMSO、DMF等の両親媒性溶媒(aprotic solvent)を単独または併用することができる。
さらに、本発明においては前記一般式(1)で示されるジフェニル尿素化合物誘導体を植物に施用することにより、植物に対し、乾燥耐性の付与、炭酸ガス取り込み阻害による植物体の矮小化、作物サイズの調節、収穫時期の変化、植物体のみずみずしさの増強、植物体や実の糖度の調節(変化)、根の成長促進性の変化、葉の肉厚の変化、及び低カリウム化からなる群から選択される少なくとも1種の機能を付与することができる。
本発明の植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤は、前記一般式(1)または(1-1)~(1-6)の有効量を含む種々の剤形にて施用される。通常は、担体、液体担体、またはガス担体と混合し、さらに必要に応じて界面活性剤、増量剤、着色剤、結合剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤などを添加して、油剤、乳剤、可溶化剤、水和剤、懸濁剤、フロアブル剤、粉剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤、除草剤、植物生長調節剤、共力剤、肥料、土壌改良剤等に製剤化して施用される。または混合せずに同時に用いることもできる。適用する植物体の部位、施用の時期、施用の方法などは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
以下、本発明のカリウムイオン輸送体(K+チャネル・K+トンランスポーター・ポンプ)の機能制御剤の具体例について説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
実施例で使用したジフェニル尿素化合物誘導体は以下の通りである。
(1)N-[3,5-ビス(トリフロロメチル)フェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(NS5806)
(2)N-[3-トリフロロメチル,5-ブロモフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA38)
(3)N-[3,5-ジブロモフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA39)
(4)N-[4-メチル-3,5-ジクロロフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA44)
(5)N-[3,5-ジクロロフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA37)
(6)N-[3,5-ビス(トリフロロメチル)フェニル]-N’-[2,4-ジクロロ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(No.44)
これらの化合物は以下の方法で合成した。
合成例1:N-[3,5-ビス(トリフロロメチル)フェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(NS5806)
Figure 0007111359000011
アルゴン雰囲気下、2-アミノベンゾニトリル(50mmol,5.9g)の酢酸溶液(150mL)に、臭素(110mmol 5.6mL)を滴下した後、室温で5時間撹拌した。反応溶液を氷水(200mL)に注ぎ、生じた固体を濾取して水で洗浄した。残渣を酢酸エチルから再結晶して、2-アミノ-3,5-ジブロモベンゾニトリル(6.9g,収率50%)を得た。得られた2-アミノ-3,5-ジブロモベンゾニトリル(10.0mmol,2.75g)、テトラブチルアンモニウムフルオリド三水和物(5.0mmol,1.58g)、トリメチルシリルアジド(TMSN3)(15.0mmol,2.0mL)をアルゴン雰囲気下85℃で2時間撹拌した。反応溶液に酢酸エチルを加えて、1M塩酸(5mL)で3回抽出した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥して、減圧下酢酸エチルを留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:エタノール=10:1)に付し、2,4-ジブロモ-6-(1H-テトラゾール-5-イル)アニリン(1.40g,収率44%)を白色固体として得た。
2,4-ジブロモ-6-(1H-テトラゾール-5-イル)アニリン(0.5mmol,157.5mg)とトリエチルアミン(1.5mL)のテトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に、3,5-ジトリフルオロメチルフェニルイソシアネート(0.5mmol,87.0μL)を加えて、室温で12時間撹拌した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)に付し、UA-14(NS5806:57.4mg,収率20%)を白色固体として得た。
mp 219.0-220.0 ℃ (decomposed); Rf = 0.52 (AcOEt/MeOH = 4/1); 1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) :δ7.62 (1H, s), 8.03 (2H, s), 8.08 (1H, d, J = 2.0 Hz), 8.21 (1H, d, J = 2.4 Hz), 8.73 (1H, bs), 9.82 (1H, bs); 13C-NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ114.7, 118.0, 119.8, 123.5 (q, J = 271.9 Hz), 125.7, 126.6, 130.9 (q, J = 32.7 Hz), 131.8, 134.7, 137.1, 142.0, 152.5, 154.0; 19F-NMR (376 MHz, DMSO-d6): δ-63.1; IR (KBr): 3353, 1681, 1279; LRMS (FAB) m/z: 576.9 ([M+H+4]+), 574.9 ([M+H+2]+), 572.9 ([M+H]+); HRMS (FAB): 計算値 C16H9Br2F6N6O+ ([M+H]+): 572.9109, 実測値 572.9117。
合成例2:N-[3-トリフロロメチル,5-ブロモフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA38)
Figure 0007111359000012
3-ブロモ-5-トリフルオロメチルアニリン(2.0mmol,276μL)のジメチルスルホキシド(3.0mL)溶液にカルボジイミダゾール(2.2mmol,357mg)を加えて、室温で2時間撹拌した。次いで、2,4-ジブロモ-6-(1H-テトラゾール-5-イル)アニリン(2.0mmol,638.0mg)とトリエチルアミン(1.0mL)を加えて、室温で24時間撹拌した。減圧下加温して溶媒を留去後、生じた固体を酢酸エチルに溶解して、飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)で3回抽出した。有機層を纏めて硫酸マグネシウムで乾燥して減圧下溶媒を留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)に付し、UA-38(160.1mg,収率14%)を白色固体として得た。
mp 190.0-190.1℃ (decomposed); Rf = 0.50 (Ethyl acetate:Methanol = 10:3); 1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ7.49 (1H, s), 7.81 (1H, d, J = 2.4 Hz), 7.86 (1H, s), 7.98 (1H, s), 8.22 (1H, d, J = 2.0 Hz), 10.3 (1H, s), 10. 4 (1H, s); 13C-NMR (150 MHz, DMSO-d6): δ113.2, 118.8, 120.5, 122.3, 123.0 (q, J = 273.6 Hz), 123.8, 124.4, 126.9, 130.9, 131.2 (q, J = 31.7 Hz), 134.3, 135.9, 142.1, 152.1, 155.0; 19F-NMR (376 MHz, DMSO-d6) δ-61.7 (s, 3F); IR (KBr, cm-1) 3328, 1657, 1560, 1456, 1334, 1130, 863; LRMS (FAB) m/z: 588.9 ([M+H+6]+), 586.9 ([M+H+4]+), 584.9 ([M+H+2]+), 582.9 ([M+H]+); HRMS (FAB): 計算値C15H9Br3F3N6O+ ([M+H]+): 582.8340, 実測値 582.8346。
合成例3:N-[3,5-ジブロモフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA39)
Figure 0007111359000013
3,5-ジブロモアニリン(0.65mmol,163mg)のジメチルスルホキシド(3.0mL)溶液にカルボジイミダゾール(0.74mmol,120mg)を加えて、室温で2時間撹拌した。次いで、2,4-ジブロモ-6-(1H-テトラゾール-5-イル)アニリン(0.65mmol,207.4mg)とトリエチルアミン(1.0mL)を加えて、室温で24時間撹拌した。反応溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)に付し、メタノール溶出液を減圧下加温して溶媒を留去した。生じた固体を酢酸エチル(300mL)に溶解して、飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)で2回抽出した。有機層を纏めて硫酸マグネシウムで乾燥して、減圧下溶媒を留去した。残渣をジクロロメタン、トルエン、少量の冷メタノールで洗浄して、UA-39(20.1mg,収率5%)を白色固体として得た。
mp 218.0-219.0℃ (decomposed); Rf = 0.39 (Ethyl acetate:Methanol = 10:3); 1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ7.37 (1H, t, J = 1.6 Hz), 7.59 (2H, d, J = 2.0 Hz), 8.07 (1H, d, J = 2.0 Hz), 8.21 (1H, d, J = 2.0 Hz), 8.62 (1H, bs), 9.46 (1H, bs); 13C-NMR (150 MHz, DMSO-d6): δ119.2, 119.4, 122.3, 124.9, 126.1, 126.3, 131.5, 134.5, 136.7, 142.4, 151.9, 153.9; IR (KBr, cm-1): 3353, 3074, 1675, 1582, 1539, 871; LRMS (FAB) m/z: 600.8 ([M+H+8]+), 598.8 ([M+H+6]+), 596.8 ([M+H+4]+), 594.8 ([M+H+2]+), 592.8 ([M+H]+); HRMS (FAB): 計算値C14H9Br4N6O+ ([M+H]+): 592.7571, 実測値 592.7543。
合成例4:N-[4-メチル-3,5-ジクロロフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA44)
Figure 0007111359000014
3,5-ジクロロ-4-メチルアニリン(0.9mmol,157.5mg)のジメチルスルホキシド(3.0mL)溶液にカルボジイミダゾール(1.1mmol,178.4mg)を加えて、室温で2時間撹拌した。次いで、2,4-ジブロモ-6-(1H-テトラゾール-5-イル)アニリン(1.0mmol,319.0mg)とトリエチルアミン(1.0mL)を加えて、室温で24時間撹拌した。減圧下加温して溶媒を留去後、生じた固体を酢酸エチル(300mL)に溶解して、飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)で3回抽出した。有機層を纏めて硫酸マグネシウムで乾燥して減圧下溶媒を留去した。生じた固体をトルエン、酢酸エチルで洗浄した後、メタノールに溶解して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=1:1)に付し、UA-44(12.0mg,収率3%)を白色固体として得た。
mp 222.0-223.0℃ (decomposed); Rf = 0.44 (Ethyl acetate:Methanol = 10:3); 1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ2.31 (3H, s), 7.58 (2H, s), 7.78 (1H, d, J = 2.4 Hz), 8.20 (1H, d, J = 2.0 Hz), 10.18 (1H, s), 10.21 (1H, s); 13C-NMR (150 MHz, DMSO-d6) δ16.4, 116.9, 117.1, 122.4, 125.9, 128.6, 129.0, 133.2, 134.1, 134.3, 139.5, 152.1, 158.2; IR (KBr, cm-1) 3419, 1635, 1537, 1458, 1024; LRMS (FAB) m/z:522.9 ([M+H+4]+), 520.9 ([M+H+2]+), 518.9 ([M+H]+); 計算値C15H11Br2Cl2N6O+ ([M+H]+): 518.8738。
合成例5:N-[3,5-ジクロロフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA37)
Figure 0007111359000015
2,4-ジブロモ-6-(1H-テトラゾール-5-イル)アニリン(0.314mmol,100mg)とトリエチルアミン(0.377mmol,52.3μL)のトルエン溶液(1.6mL)に、3,5-ジクロロフェニルイソシアネート(0.323mmol,44.0μL)を加えて、室温で12時間撹拌した。生じた固体を濾取して酢酸エチルに溶解した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去後真空乾燥して、UA-37(67.4mg,収率43%)を白色固体として得た。
mp 227.0-228.0℃; Rf = 0.35 (Chloroform:Methanol = 10:1); 1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ7.12-7.14 (1H, m), 7.41 (2H, d, J = 1.6 Hz), 8.08 (1H, bs), 8.17 (1H, s), 8.70 (1H, s), 9.51 (1H, s); 13C-NMR (150 MHz, DMSO-d6) δ 114.1, 116.1, 119.1, 121.0, 124.7, 126.4, 131.4, 134.0, 134.5, 136.5, 142.1, 151.9; IR (neat, cm-1): 3297, 3072, 2987, 1700, 1591, 1543, 1445, 1437, 1263, 1215; LRMS (FAB) 505 (M+H)+; HRMS (FAB-EB): (M+H)+ 計算値 C14H9Br2Cl2N6O+: 504.8582, 実測値 504.8570。
合成例6:N-[3,5-ビス(トリフロロメチル)フェニル]-N’-[2,4-ジクロロ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(No.44)
Figure 0007111359000016
本化合物は、国際公開第2005/023237号に記載されている公知化合物であり、その記載に沿って合成した。
白色固体; mp > 220℃ (decomposed.); Rf = 0.54 (Ethyl acetate:MeOH = 5:1); 1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ7.61 (1H, s), 7.94 (1H, d, J = 2.8 Hz), 7.98 (1H, d, J = 2.4 Hz), 8.03 (2H, s), 8.78 (1H, s), 9.85 (1H, s); 13C-NMR (100 MHz, DMSO-d6): δ114.7, 114.8 (d, J = 3.7 Hz), 118.0, 123.5 (q, J = 271.9 Hz), 126.1, 128.4, 130.9 (q, J = 32.8 Hz), 131.5 (d, J = 3.7 Hz), 133.0, 134.4, 142.0, 152.6, 154.2; 19F-NMR (376 MHz, DMSO-d6) δ-63.2 (s, 6F); IR (KBr, cm-1): 3315, 3085, 1663, 1581, 1385, 1280, 1129; MS (EI) m/z 484 (M+, 57%), 255 (M+-77, 100%); HRMS (EI): 計算値C16H8Cl2F6N6O (M-+) 484.0041, 実測値 484.0036。
[カリウムイオンチャネル遺伝子の卵母細胞への導入と輸送活性の電気生理学的測定]
ジフェニル尿素化合物誘導体のK+輸送体に対する阻害度は、本発明者らによる「New Phytol.,218,1504-1521(2018)」に記載による方法に従って評価した。すなわち、カリウムイオンチャネル遺伝子をアフリカツメガエル卵母細胞へ導入してK+チャネルの発現を誘導し、K+チャネルの発現した卵母細胞の生体膜に発現したK+チャネルのK+電流の発生の有無とその電流量を、ジフェニル尿素化合物誘導体を添加する場合と添加しない場合について電気生理学的なスクリーニングする方法によって測定して、ジフェニル尿素化合物誘導体のK+輸送体に対する阻害度を評価した。
すなわち、本発明者らは、カリウムイオン輸送体(K+輸送体)である6種のK+チャネル(KAT1、KAT2、AKT1、AKT2、GORK、SKOR)をコードするDNAを鋳型に用いてRNA合成をした後、各RNAをアフリカツメガエル卵母細胞に公知の方法で導入した。各卵母細胞を16~20℃にて1~3日間インキュベーションしてK+チャネルの発現を誘導した。
+チャネルの発現した卵母細胞について、以下の測定液1及び測定液2を用いて卵母細胞の生体膜に発現したK+チャネルのK+電流の発生の有無とその電流量を、下記のNS5806を添加する場合と添加しない場合について電気生理学的に測定し、NS5806のK+輸送体に対する阻害度を評価した。なお、NS5806は公知の化合物であり、市販品を使用した。
測定液1(KAT1、KAT2、AKT1及びAKT2用)
120mM KCl、1mM MgCl2、1mM CaCl2、10mM HEPES-NaOH pH7.3。
測定液2(GORK及びSKOR用)
12mM KCl、108mM NaCl、1mM MgCl2、1mM CaCl2、10mM HEPES-NaOH pH7.3。
KAT1、KAT2、AKT1、またはAKT2の発現した卵母細胞が入った上記測定液1、及びGORKまたはSKORの発現した卵母細胞が入った上記の上記測定液2の各々にNS5806を添加して、卵母細胞の生体膜に発現したK+チャネルのK+電流の発生の有無とその電流量を膜電位固定装置(AxoClamp 2B two-electrode voltage clamp amplifier (Axon Instruments社))を用いて、電気生理学的に測定した。KAT1、KAT2、AKT1及びAKT2の測定は、膜電位を+10mVから-170mV間へ20mVずつステップで0.5秒間、電位を一定にした。GORKとSKORの測定は、膜電位を-90mVから+70mVへ20mVずつステップで2秒間、電位を一定にした。その際に生じる電流を測定した。本方法は公知である。式(1-1)に化学構造式を示すNS5806を用い、これを添加した場合と、添加しない場合について比較することにより、阻害度を評価した。
KAT1チャネルのK+電流の阻害度合いに関するNS5806の濃度依存性を図1に示す。NS5806(濃度10μM)におけるKAT2、AKT1、AKT2,GORKまたはSKORのイオン電流の阻害度合いを図2に示す。図1及び図2においては、縦軸(阻害度)は、コントロール(NS5806を添加しない系)の当該生体膜に発現したKチャネルのK電流量を1として規格化し、NS5806を添加した時のK電流量のその相対比率で示している。
NS5806を添加した場合は、KAT1チャネル及びSKORチャネルを大きく阻害し、その結果、K+電流の大幅な低下が観測され、細胞外から細胞内へK+を吸収する機能及び細胞内から細胞外へK+を排出する機能を阻害することが判明した。
NS5806による気孔開口の阻害度合いを図3(縦軸;気孔の開度[μm])に示し、気孔閉鎖促進の度合いを図6に示した。気孔開口を阻害する活性をもつ植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)と比較した。同濃度(濃度10μM)を添加した場合、顕著な気孔開口阻害効果及び気孔閉鎖促進効果を示した。ABAと比較しても同等レベルの効果を示したことは驚くべきことである。このように、NS5806は、作用機序の異なるいずれのK+チャネルについても阻害活性を有することが判明した。
[6種類のジフェニル尿素化合物誘導体(NS5806、No.44、UA37、UA38、UA39及びUA44)の濃度30μMにおける比電流(Relative current)の測定]
6種類のジフェニル尿素化合物誘導体(NS5806、No.44、UA37、UA38、UA39及びUA44)について、用量を30μMに固定して実験を行った。結果を図4に示す。
[5種類のジフェニル尿素化合物誘導体(NS5806、No.44、UA37、UA38、UA44)の濃度10μMにおける気孔開口に対する阻害実験]
3~4週齢のシロイヌナズナ野生株(Col-0)のロゼッタ葉を一枚切除し、Stomatal Buffer(30mM KCl,10mM MES,pH6.0(KOH))を1mL入った容器に入れた。柄を液に浸かった状態で切除し、容器をアルミホイルで包み遮光し一晩置いて気孔を閉じさせた。翌日、葉を取り出しブレンダーで破砕して表皮片を得た。この表皮片をStomatal Bufferが入った容器に戻し、ジフェニル尿素化合物誘導体(DMSO 0.2%)を添加した。表皮片を3時間光に当てたのち、顕微鏡下で観察し気孔開口部の短径を測定した。結果を図5に示す。
[NS5806の濃度10μMにおける気孔閉鎖促進実験]
3~4週齢のシロイヌナズナ野生株(Col-0)のロゼッタ葉を一枚切除し、Stomatal Buffer(30mM KCl,10mM MES,pH6.0(KOH))を1mL入った容器に入れた。柄を液に浸かった状態で切除し、2時間光に当てて気孔を開かせた。その後、葉を取り出しブレンダーで破砕して表皮片を得た。この表皮片をStomatal Bufferが入った容器に戻し、5806(DMSO0.2%)を添加した。表皮片を2時間光に当てたのち、顕微鏡下で観察し気孔開口部の短径を測定した。結果を図6に示す。
本実施例において試験したジフェニル尿素化合物誘導体には、化学構造及び立体構造に類似性が見られ、本発明ではジフェニル尿素化合物誘導体が気孔の開閉を調節する孔辺細胞、特に孔辺細胞のカリウム(K)イオン輸送体(K+チャネル・K+トンランスポーター・ポンプ)に立体構造を伴った構造活性相関があることを見出し、前記一般式(1)で示されるジフェニル尿素化合物誘導体を含む植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤及びこの機能制御剤植物に施用する植物の育成方法の発明を完成した。
本発明の、前記一般式(1)示されるジフェニル尿素化合物誘導体を含む植物のカリウムイオン輸送体(K+チャネル・K+トンランスポーター・ポンプ)の機能制御剤により、K+イオンチャネルを制御することができ、特に細胞外から細胞内へKを吸収するカリウム(K)チャネル(KAT1、KAT2)を阻害することにより、気孔で良く機能し(孔辺細胞が膨潤する)することがわかり、このことによって、乾燥時における蒸散の抑制や、良好な環境における気孔からのCO2吸収の促進や蒸散の調節による根における養分吸収の調節などが可能であり、イオン輸送体を標的と機能制御剤を、外部から噴霧や添加することにより、植物の成長と分化の制御や環境変化への適応を促すことが可能である。さらに,カリウム(K)チャネル(SKOR)の細胞内から細胞外へKを排出する活性により,根などで吸収されたKを他の細胞へ運ぶ輸送体の一つとして植物内のK循環系として適切に機能させることができる。これにより分子育種や遺伝子操作に頼らず、植物に乾燥耐性の付与、養分吸収の調節、膜電位と浸透圧の調節、炭酸ガス取り込み阻害による植物体の矮小化、作物サイズの調節、収穫時期の変化、植物体のみずみずしさの増強、植物体や実の糖度の調節(変化)、根の成長促進性の変化、葉の肉厚の変化、低カリウム植物体の機能を付与する植物の育成が可能となる。
対象となる植物は特に限定されずあらゆる種類の植物である。モデル植物のシロイヌナズナ(Arabidopsis)のほか、農業、産業に利用されている作物、資材用植物、環境整備用植物(街路樹や防風林など)、樹木、光合成生物(ラン藻や藻類など)などが対象となる(農林水産省のホームページ掲載『水陸稲麦類 豆類 かんしょ 飼肥料作物 工芸農作物;http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_kome/index.html』を参照)。
代表例を下記に示す。食用作物及び工業用植物(バイオエタノール・バイオプラスチックの原料)となる植物:稲類(イネ 水稲 陸稲)、小麦や大麦などの麦類、サツマイモ、ジャガイモ、キャッサバ(タピオカ)などのイモ類、豆類、飼料作物(牧草、ソルゴーなど)、トウモロコシ、ハクサイ、レタス、アイスプラント、キャベツ、ホウレンソウ、レンコン、なす、きゅうり、テンサイ、ゴボウ、ニンジン、ゴマ、ミカン、かんきつ類、イチゴ、メロン、バナナ、パイナップルなどの果実類、工芸作物の桑など、マツ、ぶな、杉、ヒノキ、マングローブ、ゴムなどの樹木(木)類、乾燥地植物であるソテツ、リュウゼツランなどのサボテン類。
農業では、カリウム、リン、窒素は、植物の3大栄養素であり、カリウムの細胞輸送は細胞の活性の維持にかかわる。K+吸収系K+チャネル(KAT1、KAT2、AKT1)の阻害や、K+排出系K+チャネル(GORK、SKOR)の活性化及び両方向性K+チャネル(AKT2)の吸収能の阻害と排出能の活性化は、細胞内のK+量を減少させる。これとは逆に、K+吸収系K+チャネル(KAT1、KAT2、AKT1)の活性化や、K+排出系K+チャネル(GORK、SKOR)の阻害は、細胞内のK+量を増大させる。本発明において、カテキンによる選択的機能制御により、細胞の活性を上昇させることも、減じることも可能である。このことにより、K+の吸収速度の調製が可能であり、植物の成長の促進や抑制、蒸散量の調節、気孔を介した二酸化炭素吸収の調節が可能である。
全ての植物がKAT1やSKORと同じ種類の(ホモログ:オルソログ;同族輸送体)K+輸送体があることがわかっている。また、6種類の(KAT1、KAT2、AKT1、AKT2、GORK、SKOR)で機能した前記NS5806誘導体は、好ましくは、穀類(イネ、小麦、大麦など)、果樹、野菜(キャベツ、トウモロコシ)等の植物育成において特段の効果を顕現できる。さらに、本発明に開示のジフェニル尿素化合物誘導体の使用は、植物産業における育成に係る生産制御に利用することができる。

Claims (7)

  1. 般式(1A)
    Figure 0007111359000017
    (式中、R1aは水素原子またはC1~4のアルキル基を表し、Rはテトラゾリル基を表し、X及びXはそれぞれ独立してハロゲン原子を表し、X及びXはそれぞれ独立してハロゲン原子またはトリフルオロメチル基を表す。)
    で示されるジフェニル尿素化合物誘導体を含む、植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤。
  2. 前記化合物誘導体が、N-[3,5-ビス(トリフロロメチル)フェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(NS5806)、N-[3-トリフロロメチル,5-ブロモフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA38)、N-[3,5-ジブロモフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA39)、N-[4-メチル-3,5-ジクロロフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA4
    4)、N-[3,5-ジクロロフェニル]-N’-[2,4-ジブロモ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(UA37)、またはN-[3,5-ビス(トリフロロメチル)フェニル]-N’-[2,4-ジクロロ-6-(2H-テトラゾール-5-イル)フェニル]尿素(No.44)である請求項1に記載の植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤。
  3. 植物のカリウムイオン輸送体の機能制御が、植物の気孔開口の制御である請求項1又は2に記載のカリウムイオン輸送体の機能制御剤。
  4. 請求項1~のいずれかに記載の植物のカリウムイオン輸送体の機能制御剤を植物に施用することを特徴とする植物の育成方法。
  5. 前記カリウムイオン輸送体の機能制御が、カリウムイオン輸送体の機能阻害である請求項に記載の植物の育成方法。
  6. 前記カリウムイオン輸送体の機能制御が、カリウムイオン輸送体の機能活性化である請求項に記載の植物の育成方法。
  7. 植物に、乾燥耐性の付与、炭酸ガス取り込み阻害による植物体の矮小化、成長調節、養分吸収の活性化と抑制、植物内養分循環の調節、作物サイズの調節、収穫時期の変化、植物体のみずみずしさの増強、植物体や実の糖度の調節(変化)、根の成長促進性の変化、葉の肉厚の変化、及び低カリウム化から選択される少なくとも1種の機能を付与する請求項のいずれかに記載の植物の育成方法。
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