以下、本発明に係る計量装置および計量値補正方法の実施の形態について説明する。
図1~図5は、本発明に係る計量装置の一実施の形態を示している。
図1および図2に示すように、計量装置1は、装置本体部2と、搬送部3と、搬入センサ4、ベルト周期センサ60、基準周波数取得部61とを備えて構成されている。また、計量装置1の後段には選別部5が接続されている。
計量装置1は、生産ラインの一部を構成するベルトコンベア14の下流側に設置されており、所定の間隔で矢印A方向に順次搬入されてくる肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物Wの重量を測定し、得られた測定値を測定結果として出力するようになっている。
さらに、計量装置1は、得られた測定値を予め設定された重量の上限および下限の基準値とそれぞれ比較し、得られた測定値が基準値の範囲内にあるか否かを判定して、範囲内のものを良品とし範囲外のものを不良品として良否判定するようになっている。さらに、複数の基準値に対応して重量ランク判定をするようになっていてもよい。
また、測定結果、良否判定結果や重量ランク判定結果などの判定結果は、例えば表示部10に表示されるとともに、計量装置1の後段に接続された選別部5に出力されるようになっている。
装置本体部2は、秤量部21を備え、さらに収納筐体2a内に、総合制御部7と、表示部10と、操作部11とを備えて構成されている。
搬送部3は、ベルトコンベア14から矢印A方向に搬入されてくる被計量物Wを所定の搬送条件により搬送するようになっている。被計量物Wは、助走コンベア31により測定するのに最適な速度になるよう加速または減速されて搬送され、秤量コンベア32によりさらに搬送され、秤量コンベア32で搬送されている間に重量が秤量手段21により計量されるようになっている。秤量コンベア32は、被計量物Wを所定の搬送条件により搬送するようになっている。また、被計量物Wは、計量の後にさらに後段の選別部5に搬送され、振り分けられるようになっている。
搬送部3は、助走コンベア31および秤量コンベア32により構成されている。助走コンベア31は、前段のベルトコンベア14から搬送されてきた被計量物Wが秤量コンベア32に移動する前に、被計量物Wの助走を行うものであり、2つのローラ31a、31cと、これらのローラ31a、31cに巻き付けられている無端状の搬送ベルト31bとにより構成されている。
秤量コンベア32は、被計量物Wの計量を行う秤量部21の上部に支持されており、2つのローラ32a、32cとこれらのローラ32a、32cに巻き付けられている無端状の搬送ベルト32bとにより構成されている。秤量コンベア32の搬送ベルト32bは回転駆動され、搬送ベルト32b上の被計量物Wが所定の速度で搬送されるようになっている。また、秤量コンベア32は、運用現場のユーザ、または製造時の組み付け工程の作業者により、種類の異なるコンベアに交換可能となっている。
搬入センサ4は、一対の投光部4aおよび受光部4bからなる透過形光電センサで構成されており、助走コンベア31と秤量コンベア32との間に配置されている。具体的には、投光部4aは、搬送ベルト32bの装置本体部2側に配置され、受光部4bは、搬送ベルト32bの他の側面側で投光部4aに対向するように配置され、投光部4aと受光部4bとを結ぶ位置が搬入開始検出位置POとなる。被計量物Wが投光部4aおよび受光部4bの間を通過すると被計量物Wにより受光部4bが遮光されるので、被計量物Wの搬入が開始されたことが検出されるようになっている。検出された搬入開始の信号は、装置本体部2内の総合制御部7に出力されるようになっている。
ベルト周期センサ60は、反射形光電センサまたは透過形光電センサで構成されており、搬送ベルト32bの回転周期を検知するために秤量コンベア32の近傍に配置されている。例えば、搬送ベルト32b上の所定の位置にマーキング32eが付けられており、ベルト周期センサ60は、回転駆動する搬送ベルト32bに対して固定された状態で、特定のセンシング位置を通過する搬送ベルト32b上のマーキング32eを検知するようになっている。搬送ベルト32b上の所定の位置に、マーキング32eの代わりに穴が開けられおり、ベルト周期センサ60は、この穴を検知するようになっていてもよい。
搬送ベルト32bのマーキング32eまたは穴は搬送ベルト32bが1回転するたびにセンシング位置を通過し、ベルト周期センサ60は、このマーキング32eまたは穴をセンシング位置で検知してパルス信号を出力するようになっている。これにより、ベルト周期センサ60から、搬送ベルト32bの回転周期の間隔でパルス信号が基準周波数取得部61に出力されるようになっている。
基準周波数取得部61は、ベルト周期センサ60が出力したパルス信号の間隔から搬送ベルト32bの回転周波数を取得するようになっている。具体的には、基準周波数取得部61は、ベルト周期センサ60から供給されるパルス信号の時間間隔をタイマなどで計測し、パルス信号の時間間隔の逆数を搬送ベルト32bの回転に係る基準周波数として、装置本体部2内の総合制御部7に出力するようになっている。通常の実施では、基準周波数は、数Hz(例えば4~5Hz)程度の低周波数である。基準周波数取得部61が出力する基準周波数は、学習用データ取込モードでは総合制御部7のデータ記憶部101に学習用データとして記憶され、通常稼働モードでは総合制御部7の補正信号合成部104による補正信号の生成に用いられる。
秤量部21は、電磁平衡機構などのはかり機構で構成されており、被計量物Wが秤量コンベア32で搬送されている間に、秤量部21に加わる荷重、すなわち被計量物Wと秤量コンベア32の合計重量を測定するようになっている。秤量部21は、重量を測定できるはかり機構であればよく、例えば、差動トランス機構や歪ゲージ機構などのはかり機構で構成してもよい。
秤量部21は、例えば、搬入センサ4によって被計量物Wが秤量コンベア32に搬入されたことが検知されてから、予め設定された基準時間Tkが経過したときに計量を行うようになっている。被計量物Wが秤量コンベア32に搬入されたことが検知されてから基準時間Tkが経過すると、被計量物Wは搬入開始検出位置POからL1だけ移動して質量測定位置PSに到達し、この位置において計量が行われる。秤量部21は、被計量物Wの品種に応じて、その測定範囲、測定能力および検査精度などの条件が設定され、この条件に基づいて被計量物Wの計量を行うようになっている。
総合制御部7は、信号処理部71、計量部72、良否判定部73、記憶部74、制御部75、モード設定部76を備えている。
信号処理部71は、秤量部21から供給される秤量信号に対する信号処理を行うものであり、増幅部711、A/D変換部712、合成部713、フィルタ処理部714を備えている。
増幅部711は、秤量部21が出力した秤量信号を増幅し、A/D変換部712は、増幅部711で増幅された秤量信号をデジタル信号に変換するようになっている。A/D変換部712が出力した秤量信号は、被計量物Wの荷重を測定するための秤量信号として合成部713に供給されるようになっている。また、搬送ベルト32b上に被計量物Wが搬送されていない状態において、A/D変換部712が出力した秤量信号が、学習用データとしてデータ記憶部101に記憶されるようになっている。
合成部713は、A/D変換部712が出力した秤量信号に対して、補正信号合成部104が出力した合成補正信号を合成することによって、秤量信号を合成補正信号で補正して補正処理済の秤量信号を出力するようになっている。後述するように、補正信号合成部104が出力した合成補正信号は、搬送ベルト32bの継ぎ目がローラ32a、32cに当たる衝撃により発生する低周波振動成分を含む信号を再現したものであり、A/D変換部712が出力した秤量信号から補正信号合成部104が出力した合成補正信号を減算することによって、搬送ベルト32bの継ぎ目がローラ32a、32cに当たる衝撃の振動成分を秤量信号から除去することができる。
フィルタ処理部714は、合成部713が出力した補正処理済の秤量信号に対して、所定の信号処理条件に基づいて信号処理を行って、信号処理済の秤量信号を出力するようになっている。具体的には、フィルタ処理部714は、秤量部21からの秤量信号に対して、種類や特性の異なる複数のローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)から選択したフィルタを用いて、秤量信号の低周波成分のみを信号処理済の秤量信号として通過させるようになっている。
なお、フィルタ処理部714が選択するローパスフィルタは、1つの場合、または、複数を組み合わせたものの場合がある。このローパスフィルタとしては、FIR(Finite Impulse Response)フィルタと、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタとがある。
FIRフィルタは、インパルス応答波形が入力された場合に、ある決まった時間(有限時間)だけ出力を出す有限インパルス応答フィルタである。FIRフィルタは、合成部713が出力した補正処理済の秤量信号(デジタル秤量信号)に対して、所定の低周波成分を通過するローパスフィルタを構成し、単純平均化処理や公知の窓関数を用いた重み付け平均化処理を行うようになっている。IIRフィルタは、無限にインパルス応答波形の減衰波形を出力する無限インパルス応答フィルタである。
計量部72は、信号処理部71のフィルタ処理部714が出力する信号処理済の秤量信号に基づいて被計量物Wの計量値を算出(グラム換算)するようになっている。また、計量部72においては、搬入センサ4によって被計量物Wが秤量コンベア32に搬入されたことが検知されてから所定の基準時間Tkが経過したときに(すなわち、被計量物Wが質量測定位置PSに位置するときに)、信号処理済の秤量信号に基づいて被計量物Wの計量値を算出するようになっている。計量部72により算出された個々の重量の測定結果は、例えば表示部10に表示され、さらに被計量物Wの良否を判定するために良否判定部73に出力される。
基準時間Tkは、被計量物Wの品種に対応した搬送速度に基づいて設定される。具体的には、基準時間Tkは、秤量コンベア32の速度(m/min)、秤量コンベア32の矢印B方向の長さ(mm)および被計量物Wの搬送方向である矢印B方向の長さ(mm)、被計量物Wのサイズやラインの処理能力、その他の条件などに基づいて設定される。また、図3に示すように、基準時間Tkが経過すると、被計量物Wは、搬入開始検出位置POからL1だけ移動して質量測定位置PSに到達し、計量が行われる。
なお、計量部72においては、被計量物Wの品種(特に、サイズ)に応じて、その測定範囲、測定能力および検査精度などの検査条件(パラメータ)が選択されるようになっており、被計量物Wの品種に応じて、例えば、測定範囲が6g~600g、測定能力が最大150個/minで選択されるようになっている。この場合、被計量物Wの1個当たりの基準時間Tkは、最小400msecに設定されていることになり、基準時間Tkは400msec以上であればよいが、被計量物Wのサイズ、ラインの処理能力、生産その他の条件により設定されるようになっている。基準時間Tkは、400msecに近いほど短時間で測定されるので検査効率は高まり、遠くなるほど検査時間はかかるが、秤量コンベア32上を安定して搬送されるようになるから計量精度は高まることになる。
また、被計量物Wの品種に応じて、例えば、測定範囲が1g~300g、測定能力が最大600個/minで選択されるようになっている。測定能力が最大600個/minであると、被計量物Wの1個当たりの測定時間は最小100msecに設定されていることになり、被計量物Wのサイズ、ラインの処理能力、生産やその他の条件により設定されるようになっている。この基準時間Tkは、100msecに近いほど短時間で測定されるので検査効率は高まり、遠くなるほど検査時間はかかるが、秤量コンベア32上を安定して搬送されるようになるから計量精度は高まる。このように、計量手段72においては、被計量物Wの品種に応じて、その範囲、能力などの検査条件(パラメータ)が選択される。
良否判定部73は、被計量物Wの良否を判定するものであり、判定回路などから構成され、計量部72が算出した計量値と良否判定基準とを比較して被計量物Wの良否を判定するようになっている。
具体的には、良否判定部73は、計量部72から出力された被計量物Wの重量信号を受けると、重量の上限値Gaおよび下限値Gbと被計量物Wの重量とをそれぞれ比較し、上限値Gaおよび下限値Gbで決定される重量の許容範囲内に被計量物Wの重量が入っているか否かを判定するようになっている。
良否判定部73において判定された判定結果は、表示部10に出力され、良品または不良品として表示されるようになっている。また、判定結果は、計量装置1の後段に接続された選別部5に出力され、被計量物Wが良品または不良品として選別されるようになっている。さらに、判定結果は所定の記憶媒体などに出力されて、各被計量物Wについての判定結果が記憶されてもよい。
記憶部74は、記憶媒体などから構成されており、秤量コンベア32による被計量物Wの所定の搬送条件、および信号処理部71における所定の信号処理条件を含む条件パラメータを被計量物Wの品種に対応させて記憶するようになっている。記憶部74には、被計量物Wの品種毎に付された各品種番号に対応して、搬送速度、LPF特性が記憶されている。また、記憶部74には、被計量物Wの良否を判定するための良品範囲が記憶されている。搬送速度は、被計量物Wを搬送する搬送部3の速度であり、LPF特性は、どのような特性のローパスフィルタであるかを示すものであり、良品範囲とは、良品と判定される被計量物Wの重量の範囲(上述した上限値Gaおよび下限値Gbで規定される範囲)である。これらの記憶情報は、操作部11からの設定操作または外部機器との接続により予め記憶されるようになっている。
制御部75は、被計量物Wの品種に応じて記憶部74から所定の搬送条件および所定の信号処理条件を読み出して秤量コンベア32および信号処理部71をそれぞれ制御するようになっている。また、記憶部74に記憶している複数の品種に対応する条件パラメータを順次切り替えて搬送部3および信号処理部71を制御するようになっている。また、制御部75は、図示しないモータの回転速度(rpm)を駆動制御して、搬送部3による被計量物Wの搬送速度を制御するようになっている。
モード設定部76は、操作部11からの入力指示や搬送ベルト32b上における被計量物Wの搬送状態などに応じて制御部75に指令を出し、計量装置1の動作モードを、通常稼働モード、学習用データ取込モード、学習モードに設定するものである。
通常稼働モードは、計量装置1が被計量物Wの計量、重量の算出および良否判定を行う通常の動作モードのことである。通常稼働モードでは、秤量部21が出力した秤量信号は信号処理部71における信号処理を経て計量部72に供給され、計量部72において計量値の算出が行われ、さらには良否判定部73における良否判定が行われる。
学習用データ取込モードは、信号処理部71のA/D変換部712が出力した秤量信号を取り込んで、後述する学習モードにおいて補正パラメータを生成するために用いる学習用データとしてデータ記憶部101に記憶するとともに、基準周波数取得部61が出力した基準周波数をデータ記憶部101に記憶する動作モードのことである。学習用データ取込モードは、搬送ベルト32b上に被計量物Wが搬送されていない状態で動作するよう設定される。学習用データ取込モードは、被計量物Wの荷重が秤量部21に加わっていないとき、すなわちコンベア32の搬送ベルト32b上に被計量物Wが搬送されていないときに実行されるようになっていて、例えば、定期的に、通常稼働モードの動作前の搬送ベルト32b上に被計量物Wが搬送されていないときに実行されてもよく、通常稼働モードで動作している最中の搬送ベルト32b上に被計量物Wが搬送されていないときに実行されてもよいが、好ましくは、劣化した搬送ベルト32bを新品に交換した直後や搬送ベルト32bの張り具合を調整した直後など、秤量信号に重畳する搬送ベルト32bの継ぎ目の衝撃による振動状態が変化した時点で実行するとなお良い。
学習モードは、補正パラメータ決定部102が、搬送ベルト32b上に被計量物Wが搬送されていない状態、すなわち学習用データ取込モードで取り込んだ秤量信号と基準周波数とをデータ記憶部101から読み出して補正パラメータを決定および生成し、生成した補正パラメータを補正パラメータ記憶部103に記憶する動作モードのことである。学習モードは、例えば、通常稼働モードの動作前の学習用データ取込モードで学習用データがデータ記憶部101に記憶されると同時に実行されてもよく、通常稼働モードで動作している最中に通常稼働モードと並列して実行されてもよい。
また、総合制御部7は、データ記憶部101、補正パラメータ決定部102、補正パラメータ記憶部103、補正信号合成部104をさらに備えている。
データ記憶部101は、学習用データ取込モードにおいて、基準周波数取得部61が出力する基準周波数と、A/D変換部712が出力する秤量信号とを学習用データとして記憶するようになっている。具体的には、データ記憶部101には、搬送ベルト32b上に被計量物Wが搬送されていない状態で搬送ベルト32bを回転させ、このときに秤量部21が出力した秤量信号を増幅部711で増幅してA/D変換部712でデジタル信号に変換した結果得られた信号と、このときに基準周波数取得部61が出力した基準周波数が記憶されるようになっている。データ記憶部101には、搬送ベルト32bが少なくとも1回転したときに得られる少なくとも1周期以上の秤量信号が記憶され、精度を上げるために数周期(例えば5周期)の秤量信号が記憶されてもよい。
補正パラメータ決定部102は、学習モードにおいて動作し、データ記憶部101に記憶されている学習用データである秤量信号および基準周波数を読み出し、これらの秤量信号および基準周波数に基づいて補正パラメータを決定および生成するようになっている。
補正パラメータ決定部102は、図4に示すように、周波数設定部121a~121N、正弦波生成部122a~122N、増幅部123a~123N、位相調整部124a~124N、スイッチ125a~125N、合成部127、除去対象周波数設定部128、バンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)129、振幅/位相決定部130、振幅/位相判定部131により構成されている。
周波数設定部121a~121Nは、データ記憶部101から読み出した基準周波数に基づく周波数を設定するようになっている。具体的には、周波数設定部121a~121Nは、基準周波数の整数倍(逓倍)した値を周波数として設定するようになっており、例えば基準周波数fの入力に対して、周波数設定部121aは基準周波数fの1倍の周波数(基準周波数fと同一)を設定し、周波数設定部121bは基準周波数fの2倍の周波数(周波数f×2)を設定し、周波数設定部121Nは基準周波数fのN倍の周波数(周波数f×N、ただしNは整数倍として設定される最大値)を設定するようになっている。
なお、基準周波数の整数倍を算出するために乗算される整数値kは、例えばk=1~Nまでのすべての整数(すなわち、k=1、2、…、N)としてもよく、あるいは、k=1~Nまでの奇数(すなわち、k=1、3、5、…、N)などのようにしてもよい。
整数倍として設定される最大値Nの値は、例えば信号処理部71のフィルタ処理部714で選択されるLPFの周波数に基づいて設定することが可能である。フィルタ処理部714では、LPFによって秤量信号の低周波成分のみを通過させ、周波数特性を示すパラメータとしてのカットオフ周波数(遮断周波数)より高い高周波成分は高い周波数ほど高い減衰率で減衰されるようになっている。一例として、搬送ベルト32bの回転が毎秒5回の周期であれば、この回転に係る基準周波数が5Hzであり、フィルタ処理部714ではカットオフ周波数が40HzであるLPFが選択されている場合には、基準周波数の8倍(40Hz/5Hz倍)以上の周波数成分の振動はフィルタ処理部714で減衰されることになる。この場合、秤量信号を補正するために補正信号合成部104で生成される合成補正信号は、基準周波数の8倍(40Hz/5Hz倍)以上の周波数成分を含む必要はなく、補正パラメータ決定部102は、基準周波数の8倍より低い周波数の補正信号を生成するよう最大値N=7に設定して、合成補正信号を生成するための補正パラメータを決定すればよい。なお、補正パラメータ決定部102は、カットオフ周波数を超える周波数成分の補正信号に係る補正パラメータを冗長に決定しておき、補正信号合成部104が、カットオフ周波数より低い周波数成分の補正信号を生成してもよい。
正弦波生成部122a~122Nは、周波数設定部121a~121Nの各々の後段に接続されており、周波数設定部121a~121Nの各々で設定された周波数に基づく正弦波を生成して出力するようになっている。
具体的には、正弦波生成部122aは、周波数設定部121aで設定された基準周波数fの1倍の周波数(基準周波数fと同一)の正弦波を生成するようになっている。正弦波生成部122bは、周波数設定部121bで設定された基準周波数fの2倍の周波数(周波数f×2)の正弦波を生成するようになっている。正弦波生成部122Nは、周波数設定部121Nで設定された基準周波数fのN倍の周波数(周波数f×N)の正弦波を生成するようになっている。
増幅部123a~123Nは、正弦波生成部122a~122Nの各々の後段に接続されており、振幅/位相決定部130によって設定された振幅に基づいて、正弦波生成部122a~122Nが出力した正弦波の振幅を増幅するようになっている。
具体的には、増幅部123aは、振幅/位相決定部130による設定に基づいて、正弦波生成部122aが出力した正弦波の振幅がα1となるよう増幅するようになっている。増幅部123bは、振幅/位相決定部130による設定に基づいて、正弦波生成部122bが出力した正弦波の振幅がα2となるよう増幅するようになっている。増幅部123Nは、振幅/位相決定部130による設定に基づいて、正弦波生成部122Nが出力した正弦波の振幅がαNとなるよう増幅するようになっている。
位相調整部124a~124Nは、増幅部123a~123Nの各々の後段に接続されており、振幅/位相決定部130によって設定された位相に基づいて、増幅部123a~123Nが出力した正弦波の位相を調整するようになっている。
具体的には、位相調整部124aは、振幅/位相決定部130による設定に基づいて、正弦波生成部122aが出力した正弦波の位相がφ1となるよう調整するようになっている。位相調整部124aからは、振幅がα1、位相がφ1の基準周波数fと同一の周波数の正弦波が出力される。また、位相調整部124bは、振幅/位相決定部130による設定に基づいて、正弦波生成部122bが出力した正弦波の位相がφ2となるよう調整するようになっている。位相調整部124bからは振幅がα2、位相がφ2の基準周波数fの2倍の周波数の正弦波が出力される。また、位相調整部124Nは、振幅/位相決定部130による設定に基づいて、正弦波生成部122Nが出力した正弦波の位相がφNとなるよう調整するようになっている。位相調整部124Nからは振幅がαN、位相がφNの基準周波数fのN倍の周波数の正弦波が出力される。
スイッチ125a~125Nは、位相調整部124a~124Nの各々の後段に設けられており、除去対象周波数設定部128によるオン/オフの設定によって、位相調整部124a~124Nの各々が出力した正弦波を後段に接続されている合成部127へ出力するかどうかを切り替えるようになっている。除去対象周波数設定部128はスイッチ125a~125Nのうちの除去対象周波数に対応したスイッチをオンに設定して、残りのスイッチをオフに設定するようになっており、これによって、位相調整部124a~124Nのいずれか1つが出力した正弦波(除去対象周波数の正弦波)の信号(補正信号)が合成部127へ出力されるようになっている。
合成部127は、データ記憶部101から読み出した秤量信号に対して、位相調整部124a~124Nのいずれか1つが出力した正弦波(除去対象周波数の正弦波)の補正信号を減算または逆位相で加算し、この計算によって得られた信号(差分信号)をBPF129へ出力するようになっている。
除去対象周波数設定部128は、除去対象周波数を決定し、スイッチ125a~125Nのオン/オフ制御およびBPF129で使用するフィルタの設定を行うようになっている。除去対象周波数とは、周波数設定部121a~121Nで設定される基準周波数に基づく周波数のことであり、除去対象周波数設定部128は、例えば基準周波数fの整数倍の周波数(f×k:ただしkは1~Nの整数)のうちのいずれか1つを選択するようになっている。
除去対象周波数設定部128は、振幅/位相判定部131から除去対象周波数の設定指示を受けると、例えば基準周波数fの整数倍の周波数(f×k)のうちのいずれか1つを除去対象周波数として選択し(kの値を決定)、スイッチ125a~125Nのうちの除去対象周波数に対応したスイッチをオンに設定して、残りのスイッチをオフに設定するとともに、除去対象周波数の周波数成分のみを通過させるBPF129を設定するようになっている。具体的には、振幅/位相判定部131から除去対象周波数の設定指示を受けて、例えば基準周波数fの2倍の周波数(f×2)を除去対象周波数として選択した場合には、基準周波数fの2倍の周波数に対応したスイッチ125bをオンに設定して、残りのスイッチをオフに設定するとともに、基準周波数fの2倍の周波数(f×2)の周波数成分のみを通過させるBPF129を設定するようになっている。
BPF129は、合成部127が出力した差分信号に対して、除去対象周波数設定部128で設定された除去対象周波数の周波数成分のみを通過させるようになっている。
振幅/位相決定部130は、除去対象周波数の正弦波の振幅および位相の調整指示を応じて、除去対象周波数に対応した増幅部123a~123Nにおける振幅を調整し、除去対象周波数に対応した位相調整部124a~124Nにおける位相を調整するようになっている。
振幅/位相判定部131は、BPF129を通過した後の差分信号の信号レベルを測定し、差分信号の信号レベルが最小になっているかどうかを判定するようになっている。なお、差分信号の信号レベルが最小になっている状態とは、位相調整部124a~124Nのいずれか1つが出力した正弦波(除去対象周波数の正弦波)の補正信号によって、秤量信号の除去対象周波数成分の振動レベルが最も小さくなるよう打ち消されている状態に対応している。
振幅/位相判定部131は、差分信号の信号レベルが最小になっていないと判定した場合には、振幅/位相決定部130に対して、除去対象周波数の正弦波の振幅および位相の調整指示を行うようになっている。振幅/位相判定部131は、例えば、差分信号の信号レベルの測定と、振幅/位相決定部130への振幅および位相の調整指示とを繰り返し行うことによって、差分信号の信号レベルが最小になる振幅および位相を見つけることができる。振幅/位相判定部131は、差分信号の信号レベルが最小になっていると判定した場合には、このときの振幅および位相を補正パラメータとして補正パラメータ記憶部103に記憶させるようになっている。
振幅/位相判定部131は、除去対象周波数設定部128と協働して、除去対象周波数ごとに、差分信号の信号レベルが最小になっているかどうかを判定するようになっており、ある除去対象周波数に係る差分信号の信号レベルが最小になっていると判定した場合には、除去対象周波数設定部128に対して除去対象周波数の設定指示を出力して、別の除去対象周波数に係る差分信号の信号レベルの判定を行うようになっている。
一例として、基準周波数fとし、除去対象周波数の候補としてN個の周波数(f×k:ただしkは1~Nの整数)が存在する場合、振幅/位相判定部131は、まず、例えばk=1として、基準周波数fの1倍の周波数(f×1:基準周波数fと同一)を除去対象周波数とする設定指示を除去対象周波数設定部128へ出力する。この設定指示に応じて除去対象周波数設定部128は、基準周波数fに対応するスイッチ125aのみをオンにするとともに、基準周波数fの周波数成分のみを通過させるBPF129を設定する。これにより、振幅/位相判定部131には、秤量信号に対して除去対象周波数(ここでは基準周波数f)の正弦波の補正信号を減算または逆位相で加算した差分信号がBPF129(基準周波数fの周波数成分のみを通過)を通過した後の差分信号が入力される。振幅/位相判定部131は、この信号の信号レベルが最小となる振幅α1および位相φ1を判定し、補正パラメータとして、基準周波数fに対応する振幅α1および位相φ1を補正パラメータ記憶部103に記憶させる。
振幅/位相判定部131は、次に、例えばk=2として、基準周波数fの2倍の周波数(f×2)を除去対象周波数とする設定指示を除去対象周波数設定部128へ出力する。この設定指示に応じて除去対象周波数設定部128は、基準周波数fの2倍の周波数(f×2)に対応するスイッチ125bのみをオンにするとともに、基準周波数fの2倍の周波数(f×2)の周波数成分のみを通過させるBPF129を設定する。これにより、振幅/位相判定部131には、秤量信号に対して除去対象周波数(ここでは基準周波数fの2倍の周波数(f×2))の正弦波の補正信号を減算または逆位相で加算した差分信号がBPF129(基準周波数fの2倍の周波数(f×2)の周波数成分のみを通過)を通過した後の差分信号が入力される。振幅/位相判定部131は、この信号の信号レベルが最小となる振幅α2および位相φ2を判定し、補正パラメータとして、基準周波数fに対応する振幅α2および位相φ2を補正パラメータ記憶部103に記憶させる。
このようにk=1~Nまで変更しながら差分信号の信号レベルの判定を行うことで、振幅/位相判定部131は、除去対象周波数ごとに、差分信号の信号レベルが最小となる正弦波の振幅および位相を見つけるようになっている。
補正パラメータ記憶部103は、記憶媒体などから構成されており、除去対象周波数ごとに、正弦波の振幅および位相を補正パラメータとして記憶するようになっている。補正パラメータには、搬送ベルト32b上に被計量物Wが搬送されていない状態で取得された秤量信号を除去対象周波数の周波数成分ごとに正弦波で分解した場合の振幅および位相の情報が含まれている。搬送ベルト32b上に被計量物Wが搬送されていない状態で取得された秤量信号には、図9に示すように、搬送ベルト32bの継ぎ目がローラ32a、32cに当たる衝撃により発生する低周波振動成分が重畳されている。すなわち、補正パラメータは、搬送ベルト32bの継ぎ目がローラ32a、32cに当たる衝撃により発生する低周波振動成分を含む信号を除去対象周波数の周波数成分ごとに正弦波で分解した場合の振幅および位相の情報である。
補正信号合成部104は、通常稼働モードにおいて動作し、補正パラメータ記憶部103に記憶されている補正パラメータを読み出し、補正パラメータおよび基準周波数取得部61が出力する基準周波数に基づいて合成補正信号を生成して出力するようになっている。
補正信号合成部104は、図5に示すように、周波数設定部141a~141N、正弦波生成部142a~142N、増幅部143a~143N、位相調整部144a~144N、合成部145、補正パラメータ設定部146により構成されている。
周波数設定部141a~141Nは、基準周波数取得部61が出力した基準周波数に基づく周波数を設定するようになっている。具体的には、周波数設定部141a~141Nは、基準周波数の整数倍(逓倍)した値を周波数として設定するようになっており、例えば基準周波数fの入力に対して、周波数設定部141aは基準周波数fの1倍の周波数(基準周波数fと同一)を設定し、周波数設定部141bは基準周波数fの2倍の周波数(周波数f×2)を設定し、周波数設定部141Nは基準周波数fのN倍の周波数(周波数f×N、ただしNは整数倍として設定される最大値)を設定するようになっている。
なお、周波数設定部141a~141Nの個数および周波数の値は、補正パラメータ記憶部103に記憶されている補正パラメータに含まれる除去対象周波数の個数および周波数の値によって決定される。例えば、N個の除去対象周波数(f×k:k=1~Nまでのすべての整数)に対応する振幅および位相が含まれている場合には、これに対応するN個の周波数設定部141a~141Nが設けられる。
正弦波生成部142a~142Nは、周波数設定部141a~141Nの各々の後段に接続されており、周波数設定部141a~141Nの各々で設定された周波数に基づく正弦波を生成して出力するようになっている。
具体的には、正弦波生成部142aは、周波数設定部141aで設定された基準周波数fの1倍の周波数(基準周波数fと同一)の正弦波を生成するようになっている。正弦波生成部142bは、周波数設定部141bで設定された基準周波数fの2倍の周波数(周波数f×2)の正弦波を生成するようになっている。正弦波生成部142Nは、周波数設定部141Nで設定された基準周波数fのN倍の周波数(周波数f×N)の正弦波を生成するようになっている。
増幅部143a~143Nは、正弦波生成部142a~142Nの各々の後段に接続されており、補正パラメータ設定部146によって設定された振幅に基づいて、正弦波生成部142a~142Nが出力した正弦波の振幅を増幅するようになっている。
具体的には、増幅部143aは、補正パラメータ設定部146による設定に基づいて、正弦波生成部142aが出力した正弦波の振幅がα1となるよう増幅するようになっている。増幅部143bは、補正パラメータ設定部146による設定に基づいて、正弦波生成部142bが出力した正弦波の振幅がα2となるよう増幅するようになっている。増幅部143Nは、補正パラメータ設定部146による設定に基づいて、正弦波生成部142Nが出力した正弦波の振幅がαNとなるよう増幅するようになっている。
位相調整部144a~144Nは、増幅部143a~143Nの各々の後段に接続されており、補正パラメータ設定部146によって設定された位相に基づいて、増幅部143a~143Nが出力した正弦波の位相を調整するようになっている。位相調整部144a~144Nからは、除去対象周波数ごとに振幅および位相が調整された正弦波の信号(補正信号)が出力される。
具体的には、位相調整部144aは、補正パラメータ設定部146による設定に基づいて、正弦波生成部142aが出力した正弦波の位相がφ1となるよう調整するようになっている。位相調整部144aからは、振幅がα1、位相がφ1の基準周波数fと同一の周波数の正弦波が出力される。また、位相調整部144bは、補正パラメータ設定部146による設定に基づいて、正弦波生成部142bが出力した正弦波の位相がφ2となるよう調整するようになっている。位相調整部144bからは振幅がα2、位相がφ2の基準周波数fの2倍の周波数の正弦波が出力される。また、位相調整部144Nは、補正パラメータ設定部146による設定に基づいて、正弦波生成部142Nが出力した正弦波の位相がφNとなるよう調整するようになっている。位相調整部144Nからは振幅がαN、位相がφNの基準周波数fのN倍の周波数の正弦波が出力される。
合成部145は、位相調整部144a~144Nの各々が出力した補正信号を加算し、この計算によって得られた信号を合成補正信号として信号処理部71の合成部713に出力するようになっている。
補正パラメータ設定部146は、補正パラメータ記憶部103から読み出した補正パラメータに基づいて、増幅部143a~143Nで増幅する振幅と、位相調整部144a~144Nで調整する位相とを設定するようになっている。
上述したように、補正パラメータは、搬送ベルト32bの継ぎ目がローラ32a、32cに当たる衝撃により発生する低周波振動成分を含む信号を除去対象周波数の周波数成分ごとに正弦波で分解した場合の振幅および位相の情報である。補正パラメータ設定部146が、補正パラメータに含まれる振幅および位相に基づいて、増幅部143a~143Nおよび位相調整部144a~144Nにおける振幅および位相を設定することで、位相調整部144a~144Nの各々が出力する補正信号によって、搬送ベルト32bの継ぎ目がローラ32a、32cに当たる衝撃により発生する低周波振動成分を含む信号を除去対象周波数の周波数成分ごとに分解した正弦波が再現される。さらに、合成部145から出力される合成補正信号は、位相調整部144a~144Nの各々が出力した補正信号を重ね合わせたものであり、合成補正信号によって、搬送ベルト32bの継ぎ目がローラ32a、32cに当たる衝撃により発生する低周波振動成分を含む信号が再現される。
表示部10は、図1に示すように、装置本体部2の搬送部3側の上端部に設けられ、液晶ディスプレイなどの表示デバイスで構成される。
表示部10は、計量装置1の動作状態、被計量物Wの計量値、良否判定結果の表示を行うようになっており、また、各種設定に関する表示を行うようになっている。なお、表示部10は、表示された数字、文字などがタッチ操作により入力されるタッチパネルとして構成し、操作部11として使用してもよい。
計量装置1の後段に接続される選別部5は、計量装置1が出力した測定結果、良否判定結果や重量ランク判定結果などの判定結果に応じて被計量物Wを振り分けるようになっている。
計量装置1の後段に接続される選別部5は、選別機構部5aと、被計量物Wを搬送ベルト5dで搬送する選別コンベア5bと、により構成されており、選別機構部5aは、例えば、押し出し型の選別機構により構成されている。選別機構部5aは、良品と不良品とを選別できるものであればよく、フリッパ機構、ドロップアウト機構、エアジェット機構などの選別機構で構成してもよい。
選別機構部5aは、上流の秤量コンベア32から搬送される被計量物Wが選別コンベア5bで矢印B方向に搬送されている間に、不良品と判定された被計量物Wに対して搬送ベルト5dの側面方向への押し出しやジェットエアの吹き付けを行うようになっており、不良の被計量物Wを搬送ベルト5d上から排出し、良品の被計量物Wと区別することにより選別を行っている。
また、搬送ベルト5dは、ローラ5cおよびローラ5cに対向して配置されるローラ(不図示)と、これらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルトとして構成されており、測定を終了した被計量物Wを所定の速度で下流側に搬送するようになっている。
以下、本発明の実施の形態に係る計量装置1における動作について説明する。本発明の実施の形態に係る計量装置1は、通常稼働モード、学習用データ取込モード、学習モードの各動作を実行するようになっている。
本発明の実施の形態に係る計量装置1における通常稼働モードの動作について説明する。通常稼働モードでは、秤量部21が、搬送部3で搬送されている被計量物Wの計量を行い、被計量物Wの計量結果を含む秤量信号を出力する。このとき、補正信号合成部104が合成補正信号を生成して出力し、信号処理部71の合成部713が、A/D変換部712が出力した秤量信号から補正信号合成部104が出力した合成補正信号を減算する。合成部713が出力する補正処理済の秤量信号は、搬送ベルト32bの継ぎ目がローラ32a、32cに当たる衝撃の振動成分を除去したものである。フィルタ処理部714が、合成部713が出力した補正処理済の秤量信号に対してフィルタ処理を行い、計量部72が、フィルタ処理部714から出力された信号処理済の秤量信号に基づいて被計量物Wの計量値を算出することで、搬送ベルト32bの継ぎ目の衝撃による振動を除去した信号に基づいて、被計量物Wの計量できるようになる。また、そして、良否判定部73が、計量部72により算出された個々の重量の測定結果に基づき、被計量物Wの良否を判定することで、搬送ベルト32bの継ぎ目の衝撃による振動を除去した信号に基づいて、被計量物Wの良否を判定できるようになる。
本発明の実施の形態に係る計量装置1における学習用データ取込モードの動作について説明する。
学習用データ取込モードは、後述する学習モードに先立って実行される。この学習用データ取込モードでは、搬送ベルト32b上に被計量物Wが搬送されていない状態で秤量部21が出力した秤量信号と、基準周波数取得部61が出力した基準周波数とがデータ記憶部101に記憶される。学習用データ取込モードの動作は、搬送ベルト32b上に被計量物Wが搬送されていないときに実行される。例えば、通常稼働モードの動作が開始される前、すなわち、これから生産ラインを動作させようとしているときに実行されてもよく、あるいは、通常稼働モードで動作している最中であっても、搬送ベルト32b上に被計量物Wが搬送されていないときに実行されてもよい。ただし、データ記憶部101には、搬送ベルト32bが少なくとも1回転したときに得られる、少なくとも1周期以上の秤量信号が記憶される必要があり、搬送ベルト32b上に被計量物Wが搬送されていない時間が、搬送ベルト32bの回転動作の少なくとも1周期分以上確保される必要がある。
本発明の実施の形態に係る計量装置1における学習モードの動作について説明する。
学習モードは、学習用データ取込モードに続いて実行される。この学習モードでは、データ記憶部101に記憶されている学習用データに基づいて補正パラメータ決定部102により補正パラメータが決定および生成され、生成された補正パラメータが補正パラメータ記憶部103に記憶される。学習モードの動作は、学習用データがデータ記憶部101に記憶されている状態であればいつでも実行可能であるが、学習用データ取込モードの動作が実行されて新たな学習用データがデータ記憶部101に記憶されたタイミングで、その新たな学習用データを反映した補正パラメータを生成するために実行されることが望ましい。例えば、通常稼働モードの動作が開始される前、すなわち、これから生産ラインを動作させようとしているときに学習用データ取込モードの動作が実行され、その直後に学習モードの動作が実行されてもよく、あるいは、通常稼働モードで動作している最中に学習用データ取込モードの動作が実行され、その直後に学習モードの動作が実行されてもよい。なお、実際の実施では、学習モードの動作時間は7~10秒程度であり、新たな学習用データを反映した補正パラメータを迅速に生成して合成補正信号を更新することができる。
図6~図8を参照しながら、本発明の実施の形態に係る計量装置1における学習モードの動作について説明する。図6は、本発明の実施の形態に係る計量装置1における学習モードの補正パラメータ決定処理の一例を示すフローチャートであり、図7は、図6中の位相の学習処理の一例を示すフローチャートであり、図8は、図6中の振幅の学習処理の一例を示すフローチャートである。
学習モードにおける動作の指示を受けると、補正パラメータ決定部102は補正パラメータ決定処理を開始する。なお、ここでは基準周波数fとし、補正パラメータとして、N個の除去対象周波数(f×k:k=1~Nまでのすべての整数)のそれぞれに関する振幅αkと位相φkを補正パラメータ記憶部103に記憶させる場合について説明する。
まず、補正パラメータ決定部102は、データ記憶部101から基準周波数fを読み出し、例えば除去対象周波数(f×k)の倍数kをk=1に設定する(ステップS101)。すなわち、除去対象周波数は、基準周波数fと同一の周波数に設定される。
除去対象周波数設定部128は、周波数f×k(ここではf×1)に対応するスイッチ125aをオンにし、残りのスイッチをオフに設定する(ステップS102)。さらに、除去対象周波数設定部128は、周波数f×k(ここではf×1)の信号を通過させるBPF129を設定する(ステップS103)。
振幅/位相決定部130は、パラメータαk、φk(ここではパラメータα1、φ1)を初期値に設定する(ステップS104)。
この状態で、補正パラメータ決定部102は周波数f×k(ここではf×1)の補正信号を生成して、データ記憶部101から読み出した秤量信号と補正信号との差分信号を生成し、パラメータαk、φk(ここではパラメータα1、φ1)の値を調整しながら信号レベルが最小となるパラメータを決定する。具体的には、まず、位相の学習処理を行って位相φk(ここでは位相φ1)を決定し(ステップS105)、その後、振幅の学習処理を行って振幅αk(ここでは振幅α1)を決定する(ステップS106)。
図7に、ステップS105の位相の学習処理の詳細を示す。
位相の学習処理においては、振幅/位相決定部130によって、可変範囲内で位相φk(ここでは位相φ1)が変更される(ステップS151)。なお、最初は、初期値として設定された位相がそのまま使用される。そして、補正パラメータ決定部102は、正弦波生成部122aにより生成された周波数f×k(ここではf×1)の正弦波が、増幅部123aで振幅αk(ここでは振幅α1)に増幅され、位相調整部124aで位相φk(ここでは位相φ1)に調整された補正信号を生成する(ステップS152)。
補正パラメータ決定部102は、合成部127において、データ記憶部101から読み出した秤量信号から、ステップS152で生成した補正信号を減算した差分信号を計算し(ステップS153)、振幅/位相判定部131において、除去対象周波数f×k(ここではf×1)を通過させるBPF129を通過した後の差分信号の信号レベルを測定する(ステップS154)。
振幅/位相判定部131は、BPF129を通過した後の差分信号の信号レベルが最小になっているかどうかを判定し(ステップS155)、信号レベルが最小になっていないと判定した場合(ステップS155でNO)には、再度ステップS151に戻って同様の処理が繰り返される。
ステップS151では、振幅αk(ここでは振幅α1)は初期値に固定された状態のまま、位相φk(ここでは位相φ1)が可変範囲内で変更され、再び、補正信号の生成、差分信号の計算、信号レベルの測定が行われる。このように位相の変更が繰り返し行われることで、振幅/位相判定部131は、差分信号の信号レベルが最小になる位相を見つけることができる。差分信号の信号レベルが最小になっていると判定した場合(ステップS155でYES)には、そのときの位相φk(ここでは位相φ1)を補正パラメータとして決定する(ステップS156)。
図8に、ステップS106の振幅の学習処理の詳細を示す。
振幅の学習処理においては、振幅/位相決定部130によって、可変範囲内で振幅αk(ここでは振幅α1)が変更される(ステップS161)。なお、最初は、初期値として設定された振幅がそのまま使用される。また、位相φk(ここでは位相φ1)には、位相の学習処理で決定された位相が設定される。そして、補正パラメータ決定部102は、正弦波生成部122aにより生成された周波数f×k(ここではf×1)の正弦波が、増幅部123aで振幅αk(ここでは振幅α1)に増幅され、位相調整部124aで位相φk(ここでは位相φ1)に調整された補正信号を生成する(ステップS162)。
補正パラメータ決定部102は、合成部127において、データ記憶部101から読み出した秤量信号から、ステップS162で生成した補正信号を減算した差分信号を計算し(ステップS163)、振幅/位相判定部131において、除去対象周波数f×k(ここではf×1)を通過させるBPF129を通過した後の差分信号の信号レベルを測定する(ステップS164)。
振幅/位相判定部131は、BPF129を通過した後の差分信号の信号レベルが最小になっているかどうかを判定し(ステップS165)、信号レベルが最小になっていないと判定した場合(ステップS165でNO)には、再度ステップS161に戻って同様の処理が繰り返される。
ステップS161では、位相φk(ここでは位相φ1)がステップS105の位相の学習処理で決定された位相に固定された状態のまま振幅αk(ここでは振幅α1)が可変範囲内で変更され、再び、補正信号の生成、差分信号の計算、信号レベルの測定が行われる。このように振幅の変更が繰り返し行われることで、振幅/位相判定部131は、差分信号の信号レベルが最小になる振幅を見つけることができる。差分信号の信号レベルが最小になっていると判定した場合(ステップS165でYES)には、そのときの振幅αk(ここでは振幅α1)を補正パラメータとして決定する(ステップS166)。
図6に戻り、k=1における振幅α1、位相φ1が決定されると、倍数kが最大値Nに等しくなっているかどうかを確認することで、N個の除去対象周波数すべてに対して処理が行われたかどうかを判定し(ステップS107)、倍数kが最大値Nに到達していない場合(ステップS107のNO)には、倍数kをインクリメントして(ステップS108)、ステップS102以降の処理が繰り返し行われる。すなわち、除去対象周波数(f×1)の次に除去対象周波数(f×2)、除去対象周波数(f×3)などについて同様の処理を順次繰り返し、N個の除去対象周波数すべてに関する振幅αk、位相φkを決定する。倍数kが最大値Nに到達した場合(ステップS107のYES)には、除去対象周波数の倍数k(k=1~N)ごとに振幅αk、位相φkを補正パラメータとして補正パラメータ記憶部103に記憶させ(ステップS109)、学習モードに係る動作は終了となる。
以上説明したように、本実施の形態に係る計量装置1は、秤量コンベア32を支持し被計量物Wの荷重に基づいて秤量信号を出力する秤量部21と、秤量信号を信号処理して信号処理済の秤量信号を出力する信号処理部71と、信号処理済の秤量信号に基づいて被計量物Wの計量値を算出する計量部72とを備えた計量装置1において、
秤量コンベア32の搬送ベルト32bの回転周波数を基準周波数として取得する基準周波数取得部61と、
基準周波数の整数倍の周波数を有する複数の正弦波を発生させて、複数の正弦波の周波数成分ごとに秤量信号を補正するための複数の補正信号を生成し、複数の補正信号を合成して合成補正信号を生成する補正信号合成部104と、を備え、
信号処理部71は、秤量部21が出力する秤量信号を合成補正信号で補正することを特徴とする。
この構成により、搬送ベルト32bの継ぎ目の衝撃による振動を除去し、高速に精度良く被計量物Wの計量を行うことができる。また、この構成により、搬送ベルト32bの継ぎ目の衝撃による振動を除去することができるため、シームレスではなく継ぎ目のある搬送ベルト32bや、低品質で安価の搬送ベルト32bを使用した場合であっても、高速に精度良く被計量物Wの計量を行うことができる。
また、本実施の形態に係る計量装置1は、被計量物Wが秤量コンベア32上に搬送されていない状態において秤量部21が出力する秤量信号に基づいて、基準周波数の整数倍の周波数を有する複数の正弦波のそれぞれの振幅および位相を補正パラメータとして決定する補正パラメータ決定部102と、
補正パラメータを記憶する補正パラメータ記憶部103と、を備え、
信号処理部71は、被計量物Wが秤量コンベア32上に搬送されている状態において秤量部21が出力する秤量信号を、補正パラメータ記憶部103に記憶されている補正パラメータに基づいて補正信号合成部104が生成した合成補正信号で補正することを特徴とする。
この構成により、被計量物Wが秤量コンベア32上に搬送されていない状態で取得したデータに基づいて補正パラメータを決定および記憶し、記憶している補正パラメータから生成した合成補正信号で秤量信号を補正することができるため、高速に精度良く被計量物Wの計量値を補正することができる。
また、本実施の形態に係る計量装置1では、基準周波数の整数倍の最大周波数は、信号処理部71が信号処理に使用するローパスフィルタのカットオフ周波数に基づいて決定されることを特徴とする。
この構成により、合成補正信号の生成に使用する複数の補正信号の最大周波数を決定することができ、搬送ベルト32bの継ぎ目の衝撃による振動を除去するために必要かつ十分な周波数成分を含む合成補正信号を効率良く生成することができる。
また、本実施の形態に係る計量装置1では、信号処理部71は、秤量部21が出力する秤量信号に対して、合成補正信号を同位相で減算または逆位相で加算することを特徴とする。
この構成により、秤量部21が出力する秤量信号に重畳されている搬送ベルト32bの継ぎ目の衝撃による振動を確実に除去することができる。
また、本実施の形態に係る計量値補正方法は、秤量コンベア32を支持し被計量物Wの荷重に基づいて秤量信号を出力する秤量部21と、秤量信号を信号処理して信号処理済の秤量信号を出力する信号処理部71と、信号処理済の秤量信号に基づいて被計量物Wの計量値を算出する計量部72とを備えた計量装置1における計量値補正方法において、
秤量コンベア32の搬送ベルト32bの回転周波数を基準周波数として取得するステップと、
基準周波数の整数倍の周波数を有する複数の正弦波を発生させて、複数の正弦波の周波数成分ごとに秤量信号を補正するための複数の補正信号を生成し、複数の補正信号を合成して合成補正信号を生成するステップと、
秤量部21が出力する秤量信号を合成補正信号で補正する信号処理ステップと、を有することを特徴とする。
この処理により、搬送ベルト32bの継ぎ目の衝撃による振動を除去し、高速に精度良く被計量物Wの計量を行うことができる。また、この処理により、搬送ベルト32bの継ぎ目の衝撃による振動を除去することができるため、シームレスではなく継ぎ目のある搬送ベルト32bや、低品質で安価の搬送ベルト32bを使用した場合であっても、高速に精度良く被計量物Wの計量を行うことができる。
また、本実施の形態に係る計量値補正方法は、被計量物Wが秤量コンベア32上に搬送されていない状態において秤量部21が出力する秤量信号に基づいて、基準周波数の整数倍の周波数を有する複数の正弦波のそれぞれの振幅および位相を補正パラメータとして決定するステップと、
補正パラメータを補正パラメータ記憶部103に記憶するステップと、を有し、
信号処理ステップにおいて、被計量物Wが秤量コンベア32上に搬送されている状態において秤量部21が出力する秤量信号を、補正パラメータ記憶部103に記憶されている補正パラメータに基づいて生成した合成補正信号で補正することを特徴とする。
この処理により、被計量物Wが秤量コンベア32上に搬送されていない状態で取得したデータに基づいて補正パラメータを決定および記憶し、記憶している補正パラメータから生成した合成補正信号で秤量信号を補正することができるため、高速に精度良く被計量物Wの計量値を補正することができる。
また、本実施の形態に係る計量値補正方法では、基準周波数の整数倍の最大周波数は、信号処理ステップにおける信号処理に使用するローパスフィルタのカットオフ周波数に基づいて決定されることを特徴とする。
この処理により、合成補正信号の生成に使用する複数の補正信号の最大周波数を決定することができ、搬送ベルト32bの継ぎ目の衝撃による振動を除去するために必要かつ十分な周波数成分を含む合成補正信号を効率良く生成することができる。
また、本実施の形態に係る計量値補正方法では、信号処理ステップにおいて、秤量部21が出力する秤量信号に対して、合成補正信号を同位相で減算または逆位相で加算することを特徴とする。
この処理により、秤量部21が出力する秤量信号に重畳されている搬送ベルト32bの継ぎ目の衝撃による振動を確実に除去することができる。