以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用された斜板式の可変容量圧縮機の概略構成を示す断面図である。この可変容量圧縮機は、主に車両用のエアコンシステムに適用されるクラッチレス圧縮機として構成されている。
可変容量圧縮機100は、複数のシリンダボア101aが形成されたシリンダブロック101と、シリンダブロック101の一端側に設けられたフロントハウジング102と、シリンダブロック101の他端側にバルブプレート103を介して設けられたシリンダヘッド104とを含む。シリンダブロック101、フロントハウジング102、バルブプレート103及びシリンダヘッド104は、複数の通しボルト105によって締結されて圧縮機ハウジングを構成している。また、シリンダブロック101とフロントハウジング102とによってクランク室140が形成され、前記圧縮機ハウジングに回転自在に支持された駆動軸110がクランク室140内を横断するように設けられている。なお、図では省略しているが、フロントハウジング102とシリンダブロック101との間にはセンターガスケットが配置され、シリンダブロック101とシリンダヘッド104との間には、バルブプレート103の他にも、シリンダガスケット、吸入弁形成板、吐出弁形成板及びヘッドガスケットが配置されている。
駆動軸110の軸方向の中間部の周囲には、斜板111が配置されている。斜板111は、駆動軸110に固定されたロータ112にリンク機構120を介して連結され、駆動軸110と共に回転する。また、斜板111は、駆動軸110の軸線Oに直交する平面に対する角度(傾角)が変更可能に構成されている。
リンク機構120は、ロータ112から突設された第1アーム112aと、斜板111から突設された第2アーム111aと、一端側が第1連結ピン122を介して第1アーム112aに対して回動自在に連結され、他端側が第2連結ピン123を介して第2アーム111aに対して回動自在に連結されたリンクアーム121と、を含む。
駆動軸110が挿通される斜板111の貫通孔111bは、斜板111が最大傾角と最小傾角の範囲で傾動可能な形状に形成されている。貫通孔111bには駆動軸110と当接する最小傾角規制部が形成されている。斜板111が駆動軸110の軸線Oに直交するときの斜板111の傾角(最小傾角)を0°とした場合、貫通孔111bの前記最小傾角規制部は、斜板111の傾角がほぼ0°となると駆動軸110に当接し、斜板111のそれ以上の傾動を規制するように形成されている。また、斜板111は、その傾角が最大傾角となるとロータ112に当接してそれ以上の傾動が規制される。
駆動軸110には、斜板111の傾角を減少させる方向に斜板111を付勢する傾角減少バネ114と、斜板111の傾角を増大させる方向に斜板111を付勢する傾角増大バネ115とが装着されている。傾角減少バネ114は、斜板111とロータ112との間に配置され、傾角増大バネ115は、斜板111と駆動軸110に固定されたバネ支持部材116との間に装着されている。
ここで、斜板111の傾角が前記最小傾角であるとき、傾角増大バネ115の付勢力の方が傾角減少バネ114の付勢力よりも大きくなるように設定されており、駆動軸110が回転していないとき、斜板111は、傾角減少バネ114の付勢力と傾角増大バネ115の付勢力とがバランスする傾角に位置決めされる。
駆動軸110の一端(図1における左端)は、フロントハウジング102のボス部102a内を貫通してフロントハウジング102の外側まで延在している。そして、駆動軸110の前記一端に図示省略の動力伝達装置が連結されている。駆動軸110とボス部102aとの間には軸封装置130が設けられており、クランク室140内は外部空間から遮断されている。
駆動軸110とロータ112の連結体は、ラジアル方向においては軸受131、132で支持され、スラスト方向においては軸受133、スラストプレート134で支持されている。そして、駆動軸110(及びロータ112)は、外部駆動源からの動力が前記動力伝達装置に伝達されることにより、前記動力伝達装置の回転と同期して回転するように構成されている。なお、駆動軸110の他端、すなわち、スラストプレート134側の端部と、スラストプレート134との隙間は、調整ネジ135によって所定の隙間に調整されている。
各シリンダボア101a内には、ピストン136が配置されている。ピストン136のクランク室140内に突出する突出部に形成された内側空間には、斜板111の外周部及びその近傍が収容されており、斜板111は、一対のシュー137を介してピストン136と連動するように構成されている。そして、駆動軸110の回転に伴う斜板111の回転によってピストン136がシリンダボア101a内を往復動する。すなわち、斜板111、リンク機構120及び一対のシュー137などからなる変換機構によって駆動軸110の回転運動がピストン136の往復運動に変換される。
シリンダヘッド104には、ほぼ中央部に配置された吸入室141と、吸入室141を環状に取り囲む吐出室142とが形成されている。吸入室141は、バルブプレート103に設けられた連通孔103a及び前記吸入弁形成板(図示省略)に形成された吸入弁(図示省略)を介してシリンダボア101aに連通している。吐出室142は、前記吐出弁形成板(図示省略)に形成された吐出弁(図示省略)及びバルブプレート103に設けられた連通孔103bを介してシリンダボア101aに連通している。
また、シリンダヘッド104には、一端に吸入ポート104aを備えた吸入通路104bが形成されている。吸入通路104b(吸入ポート104a)の一端は、図示省略の前記エアコンシステムの冷媒回路の低圧側に接続される。吸入通路104bの他端は、シリンダヘッド104の外周側から吐出室142の一部を横切るように延びて、吸入室141内に開口する。
シリンダブロック101の側壁(図1では上部)には、冷媒の脈動による騒音・振動を低減するため、マフラ160が設けられる。マフラ160は、シリンダブロック101の上部に区画形成されたマフラ形成壁101bに図示しないシール部材を介して蓋部材106がボルトにより締結されることにより形成される。マフラ160内のマフラ空間143には、吐出側冷媒回路から吐出室142への冷媒ガスの逆流を防止する逆止弁200が配置される。
逆止弁200は、シリンダヘッド104、バルブプレート103及びシリンダブロック101に跨って形成されている連通路144とマフラ空間143との接続部に配置される。逆止弁200は、連通路144(上流側)とマフラ空間143(下流側)との圧力差に応答して動作し、圧力差が所定値より小さい場合に連通路144を遮断し、圧力差が所定値より大きい場合に連通路144を開放する。吐出室142は、連通路144、逆止弁200、マフラ空間143、及び、蓋部材106に開口される吐出ポート106aで構成される吐出通路を介して、図示省略の前記エアコンシステムの冷媒回路の高圧側に接続されている。
前記エアコンシステムの前記冷媒回路の低圧側の冷媒(圧縮前の冷媒)は、吸入通路104bを介して吸入室141に導かれる。吸入室141内の冷媒は、ピストン136の往復運動によってシリンダボア101a内に吸入され、圧縮され、この圧縮後の冷媒は、吐出室142に吐出される。すなわち、本実施形態においては、シリンダボア101a及びピストン136によって吸入室141内の冷媒を吸入して圧縮する圧縮部が構成されている。そして、吐出室142に吐出された冷媒(圧縮後の冷媒)は、前記吐出通路を介して前記エアコンシステムの前記冷媒回路の高圧側へと導かれる。
シリンダヘッド104には、さらに容量制御弁300が設けられている。容量制御弁300は、シリンダヘッド104に形成された弁収容室(図示省略)に配置されている。前記弁収容室は、吐出室142内の冷媒をクランク室140に供給するための供給通路145の一部を構成する。そして、容量制御弁300は、供給通路145の開度(流路断面積)を調整し、これによって、吐出室142内の冷媒のクランク室140への供給量を制御するように構成されている。
容量制御弁300によって供給通路145の開度を調整することでクランク室140の圧力を変化(すなわち、上昇又は低下)させることができ、これによって、斜板111の傾角、つまりピストン136のストロークを減少又は増加させて可変容量圧縮機100の吐出容量を変化させることができる。すなわち、可変容量圧縮機100は、クランク室140の圧力に応じて前記圧縮部の状態(具体的には、ピストン136のストローク)が変化して吐出容量が変化するように構成されている。換言すれば、可変容量圧縮機100において、クランク室140は、内部圧力に応じて前記圧縮部の状態を変化させて吐出容量を変化させる。そして、容量制御弁300は、主にクランク室140の圧力を調整するために用いられる。したがって、本実施形態においてはクランク室140が本発明の「制御圧室」に相当する。
具体的には、クランク室140の圧力を変化させることにより、各ピストン136の前後の圧力差、換言すると、ピストン136を挟むシリンダボア101a内の圧縮室とクランク室140との圧力差を利用して斜板111の傾角を変化させることができる。その結果、ピストン136のストローク量が変化して可変容量圧縮機100の吐出容量が変化する。より詳しくは、クランク室140の圧力を低下させると、斜板111の傾角が大きくなってピストン136のストローク量が増加し、可変容量圧縮機100の吐出容量が増加するようになっている。
なお、本実施形態では、クランク室140内の冷媒は、排出通路146を介して、吸入室141へ流れるようになっている。排出通路146は、固定絞り103cを有する第1排出通路146aと、容量制御弁300内を経由し第1排出通路146aに対して並列的に設けられる第2排出通路146bとで構成される。第1排出通路146aは、シリンダブロック101に形成された連通路101c及び空間部101dと、バルブプレート103に形成された固定絞り103cとで構成され、常時開放されている。したがって、第1排出通路146aは、主にクランク室140の圧力を逃す通路として機能する。後に詳述するが、第2排出通路146bは、容量制御弁300によりその開度が調整されるように構成されており、容量制御弁300が供給通路145の開度を最小開度以上の開度領域で調整しているとき、第2排出通路146bが全閉状態に維持するように構成されている。
本実施形態において、容量制御弁300には、可変容量圧縮機100の外部に設けられた制御装置(図示せず)から信号が入力される。また、容量制御弁300には、第2排出通路146bの一部を構成する圧力導入通路147を介して吸入室141の圧力(冷媒)が導かれるようになっている。そして、容量制御弁300は、基本的には、吸入室141の圧力が空調設定(車室設定温度)や外部環境などに基づく前記信号によって設定される圧力になるように、供給通路145の開度を調整するように構成されている。容量制御弁300による供給通路145の開度の調整に伴って、可変容量圧縮機100の吐出容量が変化する。
次に、図2及び図3を参照して容量制御弁300の実施形態を説明する。なお、以下では、説明の便宜上、供給通路145のうちの吐出室142から容量制御弁300までの部位を供給通路145Aとし、供給通路145のうちの容量制御弁300からクランク室140までの部位を供給通路145Bとする。
図2に示されるように、容量制御弁300は、ソレノイドユニット310と、弁ユニット320とを含む。
ソレノイドユニット310は、一端面から他端面まで延びる貫通孔311aが形成された固定コア311と、固定コア311の前記一端面との間に隙間を有して配置された可動コア312と、可動コア312に一体に連結され、貫通孔311aに隙間を有して挿通されたソレノイドロッド313と、固定コア311から離れる方向に可動コア312を付勢する圧縮コイルバネ314と、有底円筒状に形成され、固定コア311及び可動コア312を収容する収容部材315と、収容部材315を取り囲むように配置されて樹脂で覆われたコイル316と、コイル316を収容すると共に収容部材315を保持するソレノイドハウジング317と、を有する。本実施形態において、固定コア311の可動コア312とは反対側の端部は他の部分よりも大径の大径部311bとして形成されている。
ソレノイドロッド313は、弁ユニット320の後述する第1弁部322と一体に形成されている。収容部材315は、非磁性材料で形成されている。固定コア311、可動コア312及びソレノイドハウジング317は、磁性材料で形成されており、磁気回路を構成する。そして、ソレノイドユニット310は、コイル316が通電されると、圧縮コイルバネ314の付勢力に抗して可動コア312を固定コア311に向けて移動させる電磁力を発生する。そして、可動コア312の固定コア311に向かう移動は、ソレノイドロッド313を介して弁ユニット320の第1弁部322に伝達され、第1弁部322が供給通路145を閉じる方向に移動する。つまり、ソレノイドユニット310は、第1弁部322に対して供給通路145を閉じる方向の電磁力を作用させるように構成されている。なお、供給通路145を閉じる方向とは、後述するように、第1弁部322が第1弁孔321dを閉じる方向のことをいう。
弁ユニット320は、弁ハウジング321と、第1弁部322と、第2弁部323と、感圧ロッド324と、感圧部材325と、付勢部材326を含む。なお、本実施形態において、感圧ロッド324が本発明に係る「ロッド」に相当する。
弁ハウジング321には、ソレノイドユニット310側から順に、円柱状に凹んだ第1凹部321aと、第1弁部322を収容する弁室321bを固定コア311と協働して形成する第2凹部321cと、第1弁部322によって開閉される第1弁孔321dと、第2弁部323によって開閉される第2弁孔321eと、感圧ロッド324を挿通して支持する中央孔321fと、感圧部材325を収容する感圧室321gとが、第2弁孔321eを除いて同一軸線上に形成されている。また、弁ハウジング321には、供給通路145Bと弁室321bとを連通する連通孔321h、供給通路145Aと第1弁孔321dとを連通する連通孔321i、及び、圧力導入通路147と感圧室321gとを連通する連通孔321jが形成されている。
本実施形態では、例えば、第2弁孔321eは一つ設けられ、連通孔321h及び連通孔321jは弁ハウジング321の周方向に離間した複数の位置にそれぞれ設けられ、連通孔321iは第2弁孔321eを避けた弁ハウジング321の周方向に離間した複数の位置にそれぞれ設けられるものとする。なお、連通孔321h~連通孔321jの全部又は一部が一つであってもよい。
第1凹部321aには、ソレノイドユニット310の固定コア311の大径部311bが嵌合する。固定コア311の大径部311bの端面は第1凹部321aの底面に当接している。第1凹部321aに固定コア311の大径部311bが嵌合することにより、第2凹部321cの開口部が閉鎖される。これによって、弁室321bが第2凹部321cと固定コア311の大径部311bの端面とにより区画形成される。
弁室321bは、クランク室140に連通孔321h及び供給通路145Bを介して常時連通する。第2凹部321cの底壁が弁室321bにおける感圧室321g側の弁室一端壁321b1を構成する。弁室一端壁321b1は、平坦な平面として形成されている。
第1弁孔321dは、弁室一端壁321b1から感圧室321gに向かって延びると共に吐出室142に常時連通し、供給通路145の一部を構成する。詳しくは、第1弁孔321dは、一端が弁室一端壁321b1に開口すると共に、他端側において連通孔321i及び供給通路145Aを介して吐出室142に常時連通している。
第2弁孔321eは、第1弁孔321dの径方向外方において弁室321bと感圧室321gとの間を接続し、排出通路146の一部(詳しくは、第2排出通路146bの一部)を構成する。第2弁孔321eの一端は弁室一端壁321b1に開口し、第2弁孔321eの他端は感圧室321gにおける弁室321b側の感圧室一端壁321g1に開口する。
中央孔321fは、第1弁孔321dに連続して感圧室321gに向かって延び、感圧室一端壁321g1に開口する。詳しくは、中央孔321fの一端は、第1弁孔321dの前記他端に接続しており、中央孔321fの他端は、感圧室一端壁321g1に開口している。また、本実施形態では、中央孔321fは、第1弁孔321dと同径の内径を有して感圧室321gに向かって延び、感圧室一端壁321g1の開口部位に第1弁孔321dの内径より大きい内径を有して延びる拡径部321f1を有する。したがって、拡径部321f1の内径は、感圧ロッド324の後述する大径部324cの外径より大きい。
感圧室321gは、吸入室141に連通孔321j及び圧力導入通路147を介して常時連通する。
本実施形態では、感圧室321gにおける弁室321b側の感圧室一端壁321g1は、後述する第2弁孔開口周縁321g2と面一であり、且つ、中央孔321fを中心に環状に形成される環状座面321g3を有する。
第1弁部322は、弁室321b内に収容され、第1弁孔321dの開度を調整する。第1弁部322は、ソレノイドロッド313と感圧ロッド324との間を接続する。本実施形態では、第1弁部322は、ソレノイドロッド313及び感圧ロッド324と一体に形成されている。つまり、第1弁部322の一端に、ソレノイドロッド313の端部が接続され、第1弁部322の他端に、感圧ロッド324の端部が接続される。ソレノイドロッド313、第1弁部322及び感圧ロッド324の一体形成体は、一方向に延伸している。
第2弁部323は、感圧室321g内に収容され、第2弁孔321eの開度を調整する。第2弁部323は、第1弁部322と別体で形成されている。第2弁部323は、感圧ロッド324が貫通する貫通孔323aを有する。貫通孔323aの孔壁には、貫通孔323aの孔軸方向に延びる溝部323a1が形成されている。
感圧ロッド324は、第1弁部322と一体に形成され、中央孔321fを貫通する。感圧ロッド324の一端部は第1弁部322に連結し、感圧ロッド324の他端部は第2弁部323(貫通孔323a)を貫通して感圧室321g内に位置する。感圧ロッド324の長手方向における中間部位324aは、第2弁部323(詳しくは、後述する連結面323c)に接離する。
本実施形態では、感圧ロッド324は、前記他端部を構成し感圧部材325の一端(詳しくは後述する端部部材325b)に接離する円柱状の小径部324bと、小径部324bより大径の外径を有し中央孔321fの内周面に支持される円柱状の大径部324cと、大径部324cと第1弁部322との間を連結し、第1弁孔321d内に配置され、大径部324cより小径の外径を有する連結部324dと、を有する。
感圧ロッド324における第2弁部323に接離する中間部位324aは、小径部324bの外周面と大径部324cの外周面との間を接続する環状の面として形成されている。第2弁部323が第2弁孔321eを閉じた状態で、中間部位324aは中央孔321fの拡径部321f1に位置している。大径部324cの外周面と中央孔321fの内周面との間の隙間は、微小隙間として設定されている。これにより、第1弁孔321dと感圧室321gとが実質的に区画される。好ましくは、図2に示すように、大径部324cの外周面にラビリンスシールのための環状溝が形成される。
感圧部材325は、感圧室321g内に収容され、吸入室141の圧力に応じて伸縮する。感圧部材325は、吸入室141の圧力の低下に伴って伸長して感圧ロッド324の小径部324b(前記他端部)を介して第1弁部322に対して第1弁孔321dを開く方向の付勢力を作用させる。詳しくは、感圧部材325は、ベローズ325aと、可動端としての端部部材325bと、圧縮コイルバネ325dと、ストッパー325eとを有する。ベローズ325aは、第1弁部322の移動方向に伸縮可能に有底の蛇腹状に形成される。端部部材325bは、ベローズ325aの一端を閉塞し、感圧ロッド324の小径部324bを受ける。圧縮コイルバネ325dは、ベローズ325aの内部において、端部部材325bとストッパー325eとの間に配置され、ベローズ325aを伸長する方向に端部部材325bを付勢する。ストッパー325eは、ベローズ325aの収縮を規制する部材である。
付勢部材326は、第2弁部323に対して第2弁孔321eを閉じる方向の付勢力を作用させる部材であり、例えば、圧縮コイルバネからなる。
本実施形態では、付勢部材326は、第2弁部323と感圧部材325との間に設けられている。したがって、感圧部材325は、付勢部材326により感圧室一端壁321g1に対向する感圧室他端壁321g4に押圧されている。
ここで、感圧ロッド324、第1弁部322、ソレノイドロッド313及び可動コア312が一体構成物となっている。そして、感圧ロッド324、第1弁部322、ソレノイドロッド313及び可動コア312からなる一体構成物において、感圧ロッド324(大径部324cの外周面)が中央孔321fの内周面に摺動自在に支持され、可動コア312の外周面が収容部材315の内周面に摺動自在に支持されている。したがって、前記一体構成物は、その軸線方向に移動可能に支持されている。
容量制御弁300には、吐出室142(供給通路145A)とクランク室140(供給通路145B)とを接続する第1内部通路と、クランク室140(供給通路145B)と吸入室141(圧力導入通路147)とを接続する第2内部通路とが形成されている。前記第1内部通路は、連通孔321i、第1弁孔321d、弁室321b、連通孔321hで構成される。前記第2内部通路は、連通孔321h、弁室321b、第2弁孔321e、感圧室321g、小径部324bの外周面と貫通孔323aの内周面との間の隙間、溝部323a1、第2弁部323の外周面と感圧室321gの内周面との間の隙間、及び、連通孔321jで構成される。また、前記第2排出通路146bは、供給通路145B、前記第2内部通路及び圧力導入通路147で構成される。したがって、前記第1内部通路の一部である第1弁孔321dは、吐出室142内の冷媒をクランク室140に供給するための供給通路145の一部を構成し、前記第2内部通路の一部である第2弁孔321eは、クランク室140内の冷媒を吸入室141に排出するための排出通路146(詳しくは、第2排出通路146b)の一部を構成する。
そして、ソレノイドユニット310と弁ユニット320が互いに嵌合固定されて一体化されることにより、容量制御弁300が完成する。
次に、第1弁部322と第1弁孔321d、及び、第2弁部323と第2弁孔321eの詳細構造について、図3及び図4を参照して説明する。
第1弁部322は、円柱状の第1本体部322aと、第1弁孔321d内に進入すると共に第1本体部322aより小さい外径を有する円柱状の進入部322bと、進入部322bの基端部に設けられ弁室一端壁321b1における第1弁孔開口周縁321b2に接離する第1当接部322cと、を有する。
第1当接部322cは、第1弁部322の延伸方向と直交し且つ弁室一端壁321b1と平行な平面からなる。具体的には、第1当接部322cは、第1本体部322aの先端の円環状の面により構成されている。この円環状の面からなる第1当接部322cが弁室一端壁321b1における第1弁孔開口周縁321b2に当接することで、第1弁孔321dが閉じられるようになっている。すなわち、本実施形態においては、第1弁孔開口周縁321b2は、第1弁部322が当接する円環状の面からなる弁座を構成し、第1弁部322は、弁座としての第1弁孔開口周縁321b2に面接触で当接する。これにより、第1弁部322は弁座としての第1弁孔開口周縁321b2に安定して着座する。
第1弁孔321dは、進入した進入部322bの外周面に対向して直線的に延びる内周面を有するストレート孔部321d1を有する。
進入部322bの外周面とストレート孔部321d1の内周面との間の隙間により、供給通路145についてのゼロより大きい最小流路断面積が規定される。換言すると、進入部322bの外周面とストレート孔部321d1の内周面との間の隙間により、第1弁孔321dの最小開度が規定される。したがって、ストレート孔部321d1は流量規制部となっている。
本実施形態では、第1弁孔321dはストレート孔部321d1のみによって構成されている。つまり、ストレート孔部321d1の弁室側端縁が弁室一端壁321b1に位置している。
第2弁部323は、感圧室一端壁321g1における第2弁孔開口周縁321g2に接離する第2当接部323bと、前述した貫通孔323aと、感圧ロッド324の中間部位324aが接離する連結面323cとを有する。
本実施形態では、前述したように、感圧室一端壁321g1は、第2弁孔開口周縁321g2と面一であり、且つ、中央孔321fを中心に環状に形成される環状座面321g3を有する。貫通孔323aは、第2当接部323bを貫通している。そして、第2当接部323bは、貫通孔323aを中心として環状座面321g3に対応して環状に形成されると共に、環状座面321g3に接離する環状当接面323b1を有する。
具体的には、第2当接部323bは円筒状に形成され、環状当接面323b1は第2当接部323bの円筒一端面により構成される。この環状当接面323b1が第2弁孔開口周縁321g2を含む環状座面321g3に当接することで、第2弁孔321eが閉じられるようになっている。すなわち、本実施形態においては、第2弁孔開口周縁321g2を含む環状座面321g3は、第2弁部323が当接する円環状の面からなる弁座を構成し、第2弁部323(詳しくは環状当接面323b1)は、弁座としての環状座面321g3に面接触で当接する。
本実施形態では、連結面323cは、環状当接面323b1における貫通孔開口周縁により構成されている。この貫通孔開口周縁からなる連結面323cに、感圧ロッド324における環状の面からなる中間部位324aが当接する。第2弁部323は、感圧ロッド324の中間部位324aにより付勢部材326の付勢力に抗して押圧されることにより、第2弁孔321eを開く方向に移動して、第2弁孔321eを開く。
本実施形態では、第2弁部323は、感圧室321gの内周面に摺動可能に支持されるガイド部323dを更に含む。詳しくは、ガイド部323dは、円筒状に形成され、感圧室321gの内周面の内径に合せた外径を有し、円筒状の第2当接部323bの円筒他端面から感圧部材325側に向って延びる。感圧室321gは、概ね円柱状の空間を内部に有しており、第2弁部323の移動は、感圧室321gの内周面によってガイドされる。したがって、感圧室321gの内周面に支持された状態の第2弁部323は、その貫通孔323aの内周面と小径部324bの外周面との間の全周に亘って、隙間が設けられている。
第2弁孔321eは、第1弁孔321dの径方向外方において、第1弁孔321dの軸線と略平行に直線的に延びている。第2弁孔321eの一端は、弁室一端壁321b1における第1弁孔開口周縁321b2を避けた位置に開口する。第2弁孔321eの他端は感圧室一端壁321g1に開口する。第2弁孔321eは一つに限らず、第1弁孔321dを囲むように弁ハウジング321の周方向に離間した複数の位置で第1弁孔321dの軸線に略平行に延びるように形成してもよい。
次に、図5を参照して、第1弁部322及び第2弁部323を含む要部における長手方向(延伸方向)等の寸法について説明する。
第1当接部322cにおける第1弁孔開口周縁321b2との当接部位から中間部位324aにおける第2弁部323の連結面323cとの当接部位までの第1の距離L1は、弁室一端壁321b1から第2弁孔開口周縁321g2に当接した状態の第2弁部323における連結面323c(環状当接面323b1)までの第2の距離L2より長い所定距離に設定されている(L1>L2)。換言すると、本実施形態では、第1当接部322cは第1本体部322aの先端の円環状の面であり、中間部位324aは、小径部324bの外周面と大径部324cの外周面との間を接続する円環状の面であり、これらの面は互いに平行に形成されているため、第1の距離L1は、第1当接部322cと中間部位324aとの間の面間距離である。また、連結面323cは環状当接面323b1と面一であるため、第2の距離L2は、弁室一端壁321b1と環状当接面323b1との間の距離ともいえる。したがって、進入部322bが第1弁孔321d内に進入すると共に第1当接部322cが第1弁孔開口周縁321b2に当接して第1弁部322が第1弁孔321dを閉じているときは、感圧ロッド324の中間部位324aが第2弁部323の連結面323cを押圧し、第2弁部323が第2弁孔開口周縁321g2から最大に離間して第2弁孔321eを最大開度に開いている。
進入部322bの先端から中間部位324aにおける第2弁部323の連結面323cとの当接部位までの第3の距離L3は、ストレート孔部321d1の弁室側端縁から第2弁孔開口周縁321g2に当接した状態の第2弁部323における連結面323cまでの第4の距離L4以下の所定距離に設定されている(L4≧L3)。このため、第1弁部322が第1弁孔321dを閉じた状態から開く方向に移動すると、進入部322bの先端がストレート孔部321d1の弁室側端縁(弁室一端壁321b1)と対向する位置に到達した時又は到達する前に、感圧ロッド324の中間部位324aから第2弁部323の連結面323cへの押圧は解除され、第2弁部323は付勢部材326からの付勢力により第2弁孔開口周縁321g2に当接し第2弁孔321eを閉じる。なお、本実施形態では、ストレート孔部321d1の弁室側端縁が弁室一端壁321b1に位置している。したがって、第4の距離L4は、弁室一端壁321b1から第2弁孔開口周縁321g2に当接した状態の第2弁部323における連結面323cまで距離となり、第2の距離L2と同じである。また、第1の距離L1は第3の距離L3より当然に大きい。
本実施形態では、第3の距離L3は、第4の距離L4より短く設定されている。したがって、本実施形態では、L1>L4(=L2)>L3の関係が成立している。このため、第1弁部322が第1弁孔321dを閉じた状態から開く方向に移動すると、進入部322bの先端がストレート孔部321d1の弁室側端縁(弁室一端壁321b1)と対向する位置に到達する前に、確実に、感圧ロッド324の中間部位324aから第2弁部323の連結面323cへの押圧は解除され、第2弁部323は付勢部材326からの付勢力により第2弁孔開口周縁321g2に当接し第2弁孔321eを閉じている。
ここで、本実施形態においては、感圧ロッド324、第1弁部322、ソレノイドロッド313及び可動コア312からなる前記一体構成物について、感圧ロッド324の大径部324cの外径で規定される大径部324cの断面積と進入部322bの外径で規定される進入部322bの断面積はほぼ同等に設定されている。このため、吐出室142の圧力は、第1弁孔321dと中央孔321fで構成される空間において、それぞれ軸線方向の上下でほぼ同じ面積に対して作用して相殺されるようになっている。そして、感圧室321gは吸入室141に連通しているため、感圧部材325は、吸入室141の圧力に応じて伸縮する。したがって、第2弁部323が第2弁孔321eを閉じているとき、第1弁部322は、概ね、ソレノイドユニット310が発生する第1弁孔321dを閉じる方向の電磁力と、前記一体構成物を介して感圧部材325に作用する吸入室141の圧力とに応じて開閉制御される。なお、感圧部材325は、吸入室141の圧力の低下に伴ってベローズ325aが伸長し、感圧ロッド324を介して第1弁部322に対して第1弁孔321dを開く方向の付勢力を作用させることになる。
次に、前記第1内部通路及び前記第2内部通路の機能等について説明する。
容量制御弁300において、前記第1内部通路(連通孔321i、第1弁孔321d、弁室321b、連通孔321h)は、第1弁部322が第1弁孔321dを開いたときに、吐出室142(供給通路145A)とクランク室140(供給通路145B)とを連通し、第1弁部322が第1弁孔321dを閉じると、吐出室142(供給通路145A)とクランク室140(供給通路145B)との連通を遮断する。そして、第1弁部322が第1弁孔321dを開くことによって、吐出室142内の冷媒がクランク室140に供給されてクランク室140の圧力が上昇する。したがって、第1弁孔321dは、前述したように供給通路145の一部を構成しており、前記第1内部通路のうちの第1弁孔321dよりも下流側、具体的には、弁室321b、連通孔321hは、第1弁部322が第1弁孔321dを開いたときに供給通路145の一部を構成する。
そして、容量制御弁300において、前記第2内部通路(連通孔321h、弁室321b、第2弁孔321e、感圧室321g、小径部324bの外周面と貫通孔323aの内周面との間の隙間、溝部323a1、第2弁部323の外周面と感圧室321gの内周面との間の隙間、及び、連通孔321j)は、第2弁部323が第2弁孔321eを開いたときに、クランク室140(供給通路145B)と吸入室141(圧力導入通路147)とを連通し、クランク室140内の冷媒が前記第2内部通路を通って吸入室141に向かって流れる。したがって、第2弁孔321eを含む前記第2内部通路は、第1排出通路146aとは別の第2排出通路146bの一部を構成している。
なお、第1弁部322が第1弁孔321dを開き、且つ、第2弁部323が第2弁孔321eを閉じている状態において、吐出室142からの冷媒の一部が連通孔321i、第1弁孔321d、大径部324cの外周面と中央孔321fの内周面との間の隙間を経由して中央孔321fの拡径部321f1に流入する。しかし、小径部324bの外周面と第2弁部323の貫通孔323aの内周面(孔壁)との間の隙間、及び、溝部323a1により規定される流路断面積は、大径部324cの外周面と中央孔321fの内周面との間の隙間により規定される流路断面積より大きく設定されている。このため、第2弁部323が第2弁孔321eを閉じている状態において、吐出室142から拡径部321f1に流入した冷媒は、小径部324bの外周面と第2弁部323の貫通孔323aの内周面(孔壁)との間の隙間、及び、溝部323a1からなる流路を経由して、感圧室321gに速やかに排出される。その結果、第2弁部323に面する拡径部321f1の圧力は、感圧室321gの圧力と略同等に維持される。したがって、吐出室142から拡径部321f1への冷媒流れにより、第2弁部323が第2弁孔321eを開く方向に移動することはなく、第2弁孔321eの閉弁状態が維持される。
次に、容量制御弁300の動作について、図4及び図6を参照して詳述する。図6は第1弁部322及び第2弁部323のリフト特性図であり、図4(a)、図4(b)及び図4(c)に示す状態は、図6中に示す(a)、(b)及び(c)位置における弁リフトの状態にそれぞれ対応している。図6において、横軸は第1弁部322の一方向の全リフト量(全移動量)に対するリフト量の割合を示し、縦軸は第1弁孔321d及び第2弁孔321eにおけるそれぞれの流路断面積(弁開度)を示している。リフト量は、第1弁部322が第1弁孔321dを閉じているとき位置を基準とした量である。
前記エアコンシステムの作動時、つまり可変容量圧縮機100の作動状態において、前記制御装置は、空調設定(車室設定温度)や外部環境などに基づき、例えば400~500Hzの範囲の所定周波数でPWM制御によって容量制御弁300のコイル316の通電量を制御する。すると、容量制御弁300は、吸入室141の圧力がコイル316の通電量に対応する設定圧力となるように、第1弁部322によって第1弁孔321d(すなわち、供給通路145)の開度を調整して可変容量圧縮機100の吐出容量を制御する。
前記制御装置が容量制御弁300のコイル316の通電をOFFしている作動前の状態において、第1弁部322は主に圧縮コイルバネ314の付勢力によって第1弁孔321dを最大開度に開き、第2弁部323は主に付勢部材326からの付勢力によって第2弁孔321eを閉じている。
前記制御装置が容量制御弁300のコイル316の通電をONすると、感圧ロッド324、第1弁部322、ソレノイドロッド313及び可動コア312からなる一体構成物は、圧縮コイルバネ314等の付勢力に抗して第1弁部322が第1弁孔321dを閉じる方向に移動する。
そして、図4(a)に示されるように、第1弁部322の第1当接部322cが第1弁孔開口周縁321b2に当接し、第1弁孔321dが閉じられる。これと同時に、感圧ロッド324の中間部位324aが付勢部材326の付勢力に抗して第2弁部323の連結面323cを押圧し、第2弁部323が第2弁孔開口周縁321g2から最大に離間し、第2弁孔321eが最大開度に開かれる(図6中の(a)位置参照)。このとき、クランク室140は、第1排出通路146a(連通路101c、空間部101d、固定絞り103c)と、第2排出通路146b(供給通路145B、第2弁孔321eを含む前記第2内部通路、圧力導入通路147)との2つの経路を経由して、吸入室141と連通するので、クランク室140内の冷媒を速やかに吸入室141に排出できる。したがって、クランク室140の圧力は吸入室141の圧力と同等となり、斜板111の傾角が最大となって、ピストン136のストローク量が最大となる。そして、第1弁部322が第1弁孔321dを閉じているとき、常時、第2弁部323が第2弁孔321eを最大に開放するようになっている。例えば、エアコンを起動してから車室内の空調状態が設定された所定の状態に近づくまで、このような状態が継続される。
図4(a)に示す状態から、例えば、第1当接部322cが第1弁孔開口周縁321b2から僅かに離間しても、進入部322bの先端がストレート孔部321d1内に位置しているとき(図6中の(a)位置と(b’)位置との間の領域参照)は、第1弁孔321dは前記最小開度に絞られ、第1弁孔321dから弁室321bへの流れは最小の流れとなっており、クランク室140の圧力を昇圧するには至らない。一方、第2弁部323は第2弁孔321eに向かって近づき、第2弁孔321eの開度は図6に示すように最大開度から徐々に小さくなる。第2弁孔321eの開度は、第2弁孔開口周縁321g2と環状当接面323b1との間の隙間からなる帯状流路の流路面積Sにより定まる。この流路面積Sは、第2弁孔321eの半径をrとし、第2弁孔開口周縁321g2と環状当接面323b1との間の距離をtとしたとき、下記の式(1)により定まる。
S=2πrt ・・・式(1)
そして、例えば、第1弁部322がさらに第1弁孔321dを開く方向に移動し、進入部322bの先端がストレート孔部321d1の前記弁室側端縁(弁室一端壁321b1)と対向する位置(図6中の(b’)位置に相当)に到達する前に、感圧ロッド324の中間部位324aから第2弁部323の連結面323cへの押圧は解除される。このとき、図4(b)に示すように、第2弁部323は付勢部材326からの付勢力により第2弁孔開口周縁321g2に当接し第2弁孔321eを閉じる。その結果、第2弁孔321eを含む第2排出通路146bを経由する吸入室141への流れは遮断される(図6中の(b)位置参照)。
したがって、図4(b)に示すように、感圧ロッド324の中間部位324aが感圧室一端壁321g1(環状当接面323b1)と面一になる位置に位置しているとき、進入部322bの先端はまだストレート孔部321d1内に位置しており、進入部322bの外周面がストレート孔部321d1の内周面に第1弁部322の長手方向について所定幅分だけオーバーラップするように構成されている。このとき、第1弁孔321dの開度は前記最小開度に維持されていると共に、第2弁孔321eは閉じられている(図6中の(b)位置参照)。つまり、図6に示すように、第1弁孔321dの開度が前記最小開度に維持される領域と第2弁孔321eが閉じられる領域とが互いにオーバーラップする領域(オーバーラップ領域)が設けられている。なお、このオーバーラップ領域において、クランク室140は、第1排出通路146aのみを経由して吸入室141と連通している。
図4(b)に示す状態から、例えば、第1弁部322がさらに第1弁孔321dを開く方向に移動して、進入部322bの先端がストレート孔部321d1の前記弁室側端縁(弁室一端壁321b1)と対向する位置(図6中の(b’)位置に相当)を超えると、第1弁部322はそのリフト量に応じて第1弁孔321dの開度を前記最小開度以上に調整する(図6の(b’)位置より右側の流量調整領域参照)。一方、感圧ロッド324の中間部位324aは第2弁部323の連結面323cから離れ、その後、第2弁部323は付勢部材326の付勢力により第2弁孔321eを閉じた状態に維持される。したがって、前記流量調整領域でも、クランク室140は、第1排出通路146aのみを経由して吸入室141と連通しているだけである。このため、前記流路調整領域において、排出通路146を介したクランク室140の冷媒の吸入室141への排出が抑制され、第1弁孔321dの開度の調整により、クランク室140の圧力を容易に変化(昇圧、減圧)させることができ、斜板111の傾角を変更して、ピストン136のストローク量を速やかに制御できる。ピストン136のストローク量を制御することにより、エアコンシステムの冷媒回路を流れる冷媒流量を調整し、車室内の空調状態を設定された所定の状態に維持する。
そして、例えば、ソレノイドロッド313の可動コア312側の端部が収容部材315の底壁に当接するところまで、第1弁部322が第1弁孔321dを開く方向に移動すると、この位置で、第1弁部322の移動が阻止される。このとき、図4(c)に示すように、第1弁部322の第1当接部322cは第1弁孔開口周縁321b2から最大に離間し、第1弁部322が第1弁孔321dを最大開度に開く(図6中の(c)位置参照)。詳しくは、前記エアコンシステムの作動が停止される、つまり可変容量圧縮機100が作動状態から非作動状態に切り替わると、前記制御装置は、容量制御弁300のコイル316の通電をOFFする。すると、感圧ロッド324、第1弁部322、ソレノイドロッド313及び可動コア312からなる前記一体構成物は、圧縮コイルバネ314の付勢力によって第1弁部322が第1弁孔321dを開く方向に移動し、第1弁孔321d(供給通路145)が最大開度に開かれると共に第2弁孔321e(第2排出通路146b)の閉弁状態が維持される。このとき、斜板111の傾角が最小の状態となって、ピストン136のストローク量が最小となり、可変容量圧縮機100は、吐出容量が最小となる。そして、可変容量圧縮機100が非作動状態にある間は、その吐出容量が最小の状態が維持される。
本実施形態による容量制御弁300において、第1当接部322cにおける第1弁孔開口周縁321b2との当接部位から中間部位324aにおける第2弁部323の連結面323cとの当接部位までの第1の距離L1は、弁室一端壁321b1から第2弁孔開口周縁321g2に当接した状態の第2弁部323における連結面323cまでの第2の距離L2より長い所定距離に設定されている。このため、進入部322bが第1弁孔321d内に進入すると共に第1当接部322cが第1弁孔開口周縁321b2に当接して第1弁部322が第1弁孔321dを閉じたときは、感圧ロッド324の中間部位324aが第2弁部323の連結面323cを押圧して第2弁部323が第2弁孔321eを最大開度に確実に開くように構成することができる。これにより、第1弁部322が供給通路145を閉じているときに、第2弁部323が排出通路146を最大開度に開くので、クランク室140の冷媒の排出性能が向上し、従来技術と同様に、エアコンの効きが早くなる。
そして、本実施形態による容量制御弁300において、進入部322bの先端から中間部位324aにおける第2弁部323の連結面323cとの当接部位までの第3の距離L3は、ストレート孔部321d1の弁室側端縁から第2弁孔開口周縁321g2に当接した状態の第2弁部323における連結面323cまでの第4の距離L4以下の所定距離に設定されている。このため、第1弁部322が第1弁孔321dを閉じた状態から開く方向に移動すると、進入部322bの先端がストレート孔部321d1の弁室側端縁と対向する位置に到達した時又は到達前に、中間部位324aから連結面323cへの押圧は解除され、第2弁部323は付勢部材326からの付勢力により第2弁孔開口周縁321g2に当接し第2弁孔321eを閉じる。したがって、進入部322bの先端がストレート孔部321d1の弁室側端縁と対向する位置に位置している状態から、第1弁部322が第1弁孔321dを開く方向に移動することにより、第1弁孔321dの開度を最小開度以上の開度領域で調整する際に、第2弁孔321eを確実に全閉状態に維持することができる。したがって、第1弁孔321dの開度を最小開度以上の開度領域で調整して、吐出室142からクランク室140へ冷媒を供給しようとしている際に、吐出室142から第1弁孔321dを経由して弁室321b内に導かれた冷媒の一部が第2弁孔321eを経由して吸入室141へ漏れ出ることを確実に防止することができる。その結果、従来技術に比べて、可変容量圧縮機100の圧縮効率を確実に向上させることが可能となる。
また、第2弁孔321eは、第1弁孔321dの径方向外方において弁室321bと感圧室321gとの間を接続し、クランク室140内の冷媒を吸入室141に排出するための排出通路146(第2排出通路146b)の一部を構成している。これにより、第1弁部322及び感圧ロッド324内を経由せずに、排出通路146の一部を形成することができる。したがって、第1弁部322の外径を小さくすることができる。ここで、前記流量調整領域における第1弁孔321dの開度は、概ね、第2弁孔321eと同様に、進入部322bの先端周縁と第1弁孔開口周縁321b2との間の隙間からなる帯状流路の流路面積S’により定まる。この流路面積S’は第1弁孔321dの半径に比例して大きくなるため、第1弁部322のリフト量が同じ場合には、第1弁孔321dの半径が大きいほど(換言すると、第1弁部322の進入部322bの半径が大きいほど)、リフト量に対する第1弁孔321dの開度の変化量が大きくなる。その結果、微少流量の調整が困難になる。この点、排出通路146の一部は、第1弁部322内に形成されないため、第1弁部322の外径は、従来と比較して小さくすることができるため、微少流量の調整を容易に行うことができる。
そして、本実施形態では、第3の距離L3は、第4の距離L4より短く設定されている。これにより、第1弁孔321dの開度が前記最小開度に維持される領域と第2弁孔321eが閉じられる領域とが互いにオーバーラップする領域(オーバーラップ領域)が設けられている。その結果、このオーバーラップ領域において、第1弁部322等の製造公差に起因するリフト量等のバラツキを吸収することができ、ひいては、第1弁部322が第1弁孔321dの開度を最小開度より大きい開度領域で調整している際に、第2弁孔321eを確実に閉状態に維持することができる。したがって、第1弁部322が第1弁孔321dの開度を最小開度より大きい開度領域で調整している際に、第2弁孔321eを経由する冷媒の吸入室141へ漏れを確実に防止することができ、従来技術に比べて、可変容量圧縮機100の圧縮効率をより確実に向上させることが可能となる。
換言すると、本実施形態による容量制御弁300では、L1>L4(=L2)>L3の関係が成立するように構成されている。したがって、(i)第1弁部322が第1弁孔321dを閉じたときに、第2弁部323が第2弁孔321eを最大開度に開き(図6中の(a)位置参照)、(ii)第1弁部322がゼロより大きい前記最小開度より大きい開度領域で第1弁孔321dの開度を調整しているときに、第2弁部323が第2弁孔321eを閉じ(図6中の流量調整領域参照)、(iii)前記オーバーラップ領域では、第1弁部322が第1弁孔321dを最小開度で開き、第2弁部323が第2弁孔321eを閉じ(図6中の(b)位置と(b’)位置との間の領域参照)、(iv)第2弁部323が第2弁孔321eの開度を最大開度から全閉位置まで変化させている間に、第1弁部322が第1弁孔321dの開度を概ね前記最小開度に維持する(図6中の(a)位置と(b)位置との間の領域参照)、という動作を確実に実行することができる。
本実施形態では、感圧ロッド324は、第2弁部323を貫通して感圧部材325の一端に接離する円柱状の小径部324bと、中央孔321fの内周面に支持される円柱状の大径部324cとを有し、中間部位324aは、小径部324bの外周面と大径部324cの外周面との間を接続する環状の面として形成されている。これにより、簡素な構成で、ソレノイドロッド313、第1弁部322及び感圧ロッド324の一体形成体と、第2弁部323及び感圧部材325との当接及び離間構造を実現することができる。
本実施形態では、感圧室一端壁321g1は、第2弁孔開口周縁321g2と面一であり、且つ、中央孔321fを中心に形成される環状座面321g3を有し、貫通孔323aは、第2当接部323bを貫通し、第2当接部323bは、貫通孔323aを中心として環状座面321g3に対応して環状に形成されると共に、環状座面321g3に接離する環状当接面323b1を有する。これにより、第2弁部323を、その環状当接面323b1を環状座面321g3に面接触させて、安定に着座させて保持することができる。
本実施形態では、連結面323cは、環状当接面323b1における貫通孔開口周縁により構成されている。これにより、簡素な構成で、第2弁部323と感圧ロッド324との連結構造を実現することができる。
本実施形態では、第2弁部323は、感圧室321gの内周面に摺動可能に支持されるガイド部323dを更に含み、貫通孔323aの内周面と小径部324bの外周面との間の全周に亘って、隙間が設けられている。つまり、第1弁部322が第1弁孔321dの開度を調整しているとき、ソレノイドロッド313、第1弁部322及び感圧ロッド324の一体形成体は、第2弁部323の連結面323cから離間すると共に、径方向についても第2弁部323から完全に分離している。したがって、第1弁部322のリフト移動(作動)によって、不用意に第2弁部323が開弁方向に移動することを確実に防止することができる。
本実施形態では、付勢部材326は、第2弁部323と感圧部材325との間に設けられ、感圧部材325は、付勢部材326により感圧室他端壁321g4に押圧されている。つまり、付勢部材326は、感圧部材325を感圧室他端壁321g4に保持する機能を兼ね備えている。これにより、感圧部材325の保持構造を簡素化することができる。
なお、本実施形態では、第3の距離L3は、第4の距離L4より短く設定されているものとしたが、第3の距離L3は第4の距離L4と同じであってもよい。この場合であっても、第1弁孔321dの開度を最小開度以上の開度領域で調整する際に、第2弁孔321eを確実に全閉状態に維持することができる。
また、第1弁孔321dは、ストレート孔部321d1のみからなるものとしたが、これに限らない。例えば、第1弁孔321dは、図示省略するが、ストレート孔部321d1の弁室側端縁から弁室321bに向かってテーパ状に拡径するように延びストレート孔部321d1と弁室321bとの間を連通するテーパ孔部を更に有してもよい。これにより、前記テーパ孔部の傾斜角度を適宜に設定することにより、第1弁孔321dについて所望の開度特性(例えば、第1弁部322のリフト量に対する第1弁孔321dの開度変化の感度)を容易に実現することができる。この場合、ストレート孔部321d1の弁室側端縁から第2弁孔開口周縁321g2に当接した状態の第2弁部323における連結面323cまでの第4の距離L4は、弁室一端壁321b1から第2弁孔開口周縁321g2に当接した状態の第2弁部323における連結面323cまでの第2の距離L2より短くなる。この場合、L1>L2>L4>L3の関係が成立する。
また、第2弁部323は、感圧室321gの内周面に摺動可能に支持されるガイド部323dを有するものとしたが、これに限らない。例えば、図7に示すように、第2当接部323bの円筒他端面に、小径部324bの外周面にガイドされる円筒状のロッドガイド部323eを設けてもよい。このロッドガイド部323eの内径は、貫通孔323aと同径に設定すればよい。これにより、ソレノイドロッド313、第1弁部322及び感圧ロッド324の一体形成体をスムースにリフト移動させることができる。
以上では、容量制御用の制御圧室としてクランク室を用いる斜板式の可変容量圧縮機に本発明を適用した場合について説明しているが、これに限られるものではなく、本発明は、制御圧室の圧力を変化させて吐出容量が可変制御される構成の可変容量圧縮機に広く適用可能である。
また、本発明は上述の各実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形及び変更が可能であることはもちろんである。