JP7106460B2 - αグルカン - Google Patents

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Description

CNCM CNCM I-5068
本発明は、多糖及びオリゴ糖、並びにその食品的効果の分野に関する。具体的には、(α1→3)結合したD-グルコース単位を含むα-グルカンの製造方法に関する。本発明はまた、交互に(α1→4)及び(α1→3)のグルコシド結合を含み、(α1→3,4)分岐点を有する分岐鎖状α-グルカン、食品組成物、並びにデンプン含有食品材料の消化性炭水化物を低減するためのα-グルカノトランスフェラーゼ酵素の使用、を提供する。更に、本発明のいくつかの態様は、細菌、酵素及び発現ベクターである。
肥満及び過体重は、世界中で急激に増加している。満腹感が高く、かつエネルギー密度が低い食品の開発により、体重増加の防止及び体重減少の促進が可能となる。砂糖の代わりに非消化性炭水化物を含有する飲食品を消費することにより、砂糖含有飲食品と比較し、食後の血糖上昇が低く抑制される。
ヒトの食品の中で最も一般的な炭水化物は、デンプンである。この多糖類は、殆どの緑色植物により貯蔵エネルギーとして生産される。そして、ジャガイモ、小麦、トウモロコシ、米、キャッサバなどの主食に多く含まれる。デンプン及びマルトオリゴ糖を、非消化性炭水化物に化学修飾するための様々な方法が提案されている。
欧州特許第2427565号は、ラクトバシラス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)121GTFBのグルカノトランスフェラーゼ酵素の使用による、デンプンから、比較的長いイソマルトオリゴ糖単位を含む直鎖状グルコオリゴ糖への変換について記載している。かかる材料は、部分的に消化に対する耐性を有するため、消費した際にグルコースの生成が少なく、肥満及びII型糖尿病の予防に役立つ。
アミロースは、(α1→4)結合のみを有し、消化性の高いα-グルカンである。(α1→3)結合したD-グルコース単位の導入により、消化性が低下する。Cladonia属の地衣類は、直鎖状構造の(α1→3)及び(α1→4)の交互結合を有するα-グルカンを産生するが(Woranovicz-Barreira et al.,Phytochemistry,52,1069~1074(1999))、これらのα-グルカンは水不溶性であるため、それらの食品用途は限られたものとなる。
デンプン、デンプン誘導体及びマルトオリゴ糖を酵素的に改変して、それらの機能特性を変更し、それらの栄養的価値を高めるための更なる手段を提供することが望ましいと考えられる。得られる材料は、低い消化性及び良好な溶解性を両立するものであることが理想的である。特に、食品製造への使用に適し、良好な酵素活性及び耐熱性を示す酵素を用いてかかる修飾を行うことは有益である。
本明細書における先行技術文献のいかなる参照も、かかる先行技術が周知であると、又は当分野で共通の一般的な認識の一部を形成していると認めるものとはみなされるべきではない。本明細書中で使用される場合、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」という語、及び同様の語は、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、これらは「含むが、これらに限定されない」ことを意味することを目的としている。
本発明の課題は、従来技術を改良すること、そして、デンプン及び他の多糖若しくはオリゴ糖を、消化性の低い材料へ酵素的に修飾するための改良手段を提供すること、又は少なくとも有用な代替物を提供することである。本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、本発明の着想を更に展開するものである。
したがって、本発明は、第1の態様において、(α1→3)結合したD-グルコース単位を含むα-グルカンの製造方法を提供するものであり、当該方法は、非還元末端に少なくとも2つの(α1→4)結合したD-グルコース単位を含む多糖又はオリゴ糖基質を、(α1→4)グルコシド結合を切断でき、新規な(α1→3)グルコシド結合を導入できるα-グルカノトランスフェラーゼ酵素と接触させて、連続する(α1→3)グルコシド結合を形成することなく、(α1→3)グルコシド結合を散在させた(α1→4)結合したD-グルコース単位の直鎖状セグメントを有するグルコースポリマーを形成するステップを含み、α-グルカノトランスフェラーゼは、GTFB、GTFC及びGTFDタイプの酵素からなる群から選択される、又は、特定の酵素活性を有するそれらの機能的ホモログである。
第2の態様において、本発明は、(α1→3)グルコシド結合が散在しており、(α1→3,4)分岐点を有する、(α1→4)結合したD-グルコース単位の直鎖状セグメントを含むα-グルカンに関し、該α-グルカンは、少なくとも3%の分岐比率を有し、1重量%未満で連続する(α1→3)結合を含み、5×10Da~1×10Daの平均分子質量を有する。第3の態様において、本発明は、(α1→3)グルコシド結合が散在しており、(α1→3,4)分岐点を有する、(α1→4)結合したD-グルコース単位の直鎖状セグメントを含むα-グルカンを含む食品組成物に関し、該α-グルカンは、少なくとも3%の分岐比率を有し、1重量%未満で連続する(α1→3)結合を含み、5×10Da~1×10Daの平均分子質量を有する。
本発明の更なる態様は、デンプン含有食品材料の消化性炭水化物を還元させるための、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むα-グルカノトランスフェラーゼ酵素の使用である。更なる本発明の態様は、菌株ラクトバシラス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)CNCM I-5068(NCC 2970)である。
乳酸菌は、グリコシドヒドロラーゼファミリー70(GH70)に属する多様なグルカンスクラーゼ(GS)酵素を有し、(α1→2)-、(α1→3)-、(α1→4)-及び/又は(α1→6)-グリコシド結合の形成を経て、スクロースをα-グルカン多糖に変換する。近年、スクロースに対しては不活性であるが基質としてマルトデキストリン/デンプンを用いる、GH70酵素の3つの新規サブファミリーが確立された(例えば欧州特許第2248907号に記載のラクトバシラス・ロイテリ121のGTFB)。GSに見られる広い結合特異性と比較し、同定されたスクロース非利用型のGH70酵素はいずれも、4,6-α-グルカノトランスフェラーゼ(4,6-α-GTアーゼ)活性のみを示す。それらの酵素は(α1→4)結合を切断し、新規な(α1→6)結合を形成して、直鎖状(α1→6)α-グルカン鎖、又は交互にα(1→4)/(1→6)結合を有する分岐ポリマーを産生する。
発明者らは、ラクトバシラス・ファーメンタムNCC 2970のゲノムにおける推定GTFB様GH70ファミリーの酵素(1593アミノ酸、180kDa)をコードする単一の遺伝子を同定した。このタンパク質は、L.ロイテリ121GTFB 4,6-α-GTアーゼと77%の配列同一性を有するが、GS内の基質結合残基を形成する残基のいくつかにおいて特有の変異を示す。このL.ファーメンタムGTFB酵素の、アミロースからの生成物の詳細な構造解析を含む、生化学的特性評価から、かかる酵素が、(α1→4)結合を切断し、直鎖方向又は分岐方向に新規な(α1→3)結合を形成する、4,3-α-グルカノトランスフェラーゼ(4,3-α-GTアーゼ)として作用することが明らかとなった。この酵素は、連続的な(α1→3)結合を合成できず、その活性により、交互のα(1→3)/(1→4)結合及び(1→3,4)分岐位置を有する新規なタイプのα-グルカンの形成がもたらされる。GH70ファミリー及びクランGH-Hにおけるこの新規な反応特異性の発見は、合成できるα-グルカンの範囲を拡大するものであり、GTFB様GH70サブファミリーの酵素の結合特異性を支配する活性部位内のキー部位の同定を可能にする。
ラクトバシラス・ファーメンタムGTFB酵素によって形成されるα-グルカンの一次元H-NMR分析により、(α1→4)及び(α1→3)結合の存在が明らかとなった。α-グルカンのメチル化分析により、末端の3-置換、4-置換及び3,4-二置換のグルコピラノース残基の存在が明らかとなった。3-置換及び3,4-二置換グルコピラノース残基の存在は、GTFB酵素が直鎖及び分岐方向に(α1→3)結合を形成することを意味する。(α1→6)結合の検出はごくわずか(1%未満)であった。二次元NMR分光分析及びスミス分解分析では、2つの連続する(α1→3)結合グルコピラノース残基を示すエビデンスは観察されなかった。ゆえに、メチル化分析によって検出されるすべての3-置換グルコピラノース残基は、(α1→4)結合しており、(α1→3)分岐位置を形成する、又は、単一の(α1→3)結合が散在している(α1→4)結合の直鎖状セグメントの一部を構成する筈である。
CAZyデータベース(http://www.CAZy.org)にアノテーションされたいくつかの同定されたGH70タンパク質、及びクエリー配列(太字で示す)としてL.ファーメンタムGH70 NCC2970タンパク質を用いたBLAST検索により同定した(推定の)GH70 GTFB様タンパク質の、完全長アミノ酸配列アラインメントに基づき作成した系統樹を示す。進化の経緯は、JTTマトリックスベースのモデルに基づく最尤法を用いて推定した。バーは、一カ所あたり0.2置換の遺伝距離(20%のアミノ酸配列差)を表す。主な分岐点に隣接するブートストラップ値は、1000回の反復をベースとする確率を表す。タンパク質配列には、それらのGenbankアクセッション番号及び由来細菌による注釈が付されている。L.ロイテリ121GTFBの4,6-α-GTアーゼを、灰色でハイライトする。 L.ファーメンタム4,3-α-GT GTFB酵素(A)、(推定)GTFB様4,6-α-GTアーゼ酵素(B)、E.シビリカムGTFC 4,6-α-GTアーゼ酵素(C)、A.クロオコッカムGTFD 4,6-α-GTアーゼ酵素(D)、及びグルカンスクラーゼ酵素(E)の触媒ドメインにおける保存されたモチーフI~IVの配列アラインメントを示す。GH70酵素における厳格に保存された7つのアミノ酸残基(配列上に番号1~7により示す)は、新規なL.ファーメンタム4,3-α-GT GTFBタンパク質においても保存されている。触媒三残基を構成するアミノ酸を太字及び影付きで示す。記号:NU=求核性、A/B=一般的な酸/塩基、TS=遷移状態安定化。 L.ファーメンタムGTFB 4,3-α-グルカノトランスフェラーゼ、L.ロイテリ121GTFB-ΔN 4,6-α-グルカノトランスフェラーゼ及びL.ロイテリ121GTFAグルカンスクラーゼのポリペプチド鎖に沿ったドメインの配置の概略図を示す。Clustal W2を使用し、L.ロイテリ121GTFB及びGTFA配列との配列比較により、L.ファーメンタムGTFBの一次構造中のドメインA、B、C、IV及びVを同定した。 異なる精製段階における、L.ファーメンタムGTFB GH70タンパク質サンプルのSDS-PAGE解析を示す。レーンMは分子量標準、レーン1は大腸菌細胞を含まない抽出物のサンプル、レーン2は溶解した細胞の遠心分離後の不溶性フラクションのサンプル、レーン3はNi-NTAアガロースカラムクロマトグラフィー後にプールされたフラクション、レーン4は陰イオン交換Hi-trapカラムクロマトグラフィー後の精製GTFB 4,3-α-グルカノトランスフェラーゼである。L.ファーメンタムGTFBタンパク質に対応するバンドを矢印で示す。 精製L.ファーメンタムGTFB酵素の生化学的性質の諸態様を示す一連のグラフである。(A)GTFB活性に対するpHの効果。実験は40℃で実施し、酵素比活性をpH5.5(100%値)の場合と比較した。(B)GTFB活性に対する温度の効果。アッセイはpH5.5で実施し、酵素比活性を50℃(100%値)の場合と比較した。(C)GTFB安定性に対する温度の効果。GTFB酵素(0.1mg/ml)を、1mMのCaClを含む20mMのトリス-HCl(pH8.0)緩衝液中で、示す温度で10分間インキュベートした。実験項に記載の標準条件下、基質としてアミロースVを用い、40℃において残存活性をアッセイした。実験は3回実施し、バーは3回の反復実験における標準誤差を示す。 25mMのマルトオリゴ糖(DP2-DP7)、0.6%(w/v)のアミロースV、0.6%(w/v)のジャガイモ由来可溶性デンプン、及び0.6%(w/v)のアミロペクチンと、25μg/mLのL.ファーメンタムGTFB酵素とのインキュベートにより合成された生成物混合物のTLC解析を示す。反応混合物を24時間、37℃及びpH5.5でインキュベートした。S:標準、G1:グルコース、G2~G7:マルトースからマルトヘプタオース、AMV:アミロースV、STR:デンプン、AMP:アミロペクチン、Pol:ポリマー。 L.ファーメンタムGTFB酵素25μg/mLと、25mMのマルトヘプタオース(DP7)(A)及び0.6%(w/v)のアミロースV(B)との、24時間、37℃及びpH5.5におけるインキュベートから形成される生成混合物のH NMRスペクトル(DO、300K)である。Gα/β及びRα/βとして示すアノマーのシグナルは、それぞれ、遊離型グルコース及び還元型-(1→4)-D-Glcp単位に対応する。化学シフトは、内部アセトン(δ 2.225)のシグナルに対するppmで示す。 0.6%(w/v)のアミロースVと、25μg/mLのL.ファーメンタムGTFB(pH5.5)及びL.ロイテリ121GTFB(pH5.0)酵素との、24時間、37℃におけるインキュベート後に生成する反応生成物のHPSEC分子量分布を示す。点線は、アミロースVの溶出プロファイルに対応する。黒及び灰色の実線は、それぞれ、L.ファーメンタム及びL.ロイテリ121GTFB酵素により合成された生成物の溶出プロファィルに対応する。 L.ファーメンタムGTFB酵素(25μg/mL)と0.6%(w/v)のアミロースVとの24時間のインキュベート後に得られた、バイオゲルP-2多糖フラクションF1の500MHz一次元H NMRスペクトル、二次元H-HのCOSY,TOCSYスペクトル(混合時間150ms)、ROESY及び二次元13C-H HSQCスペクトルである(D2O中、300Kで記録)。(α1→4)及び(α1→3)のアノマーのシグナルのピークを示す。構造-レポーターシグナルを示す。 一次元及び二次元NMR分光分析、メチル化分析及びスミス分解分析により同定されたすべての構造要素を考慮した、L.ファーメンタムGTFB多糖生成物の複合モデルである。残基の標識は、表3に示すものに対応する。 (A)25μg/mLのL.ファーメンタムGTFB及び(B)L.ロイテリ121GTFBとマルトヘプタオースとの、t=10分、1時間及び24時間(pH 5.5、37℃)でのインキュベートにより形成されるオリゴ糖混合物のHPAEC-PADプロファイルを示す。確立されたオリゴ糖構造。ピークの同一性は、市販のオリゴ糖標準を用いて帰属した。 (A)25μg/mLのL.ファーメンタムGTFB及び(B)L.ロイテリ121GTFBとアミロースVとの、t=10分、1時間及び24時間(pH5.5、37℃)でのインキュベートにより形成されるオリゴ糖混合物のHPAEC-PADプロファイルを示す。確立されたオリゴ糖構造。ピークの同一性は、市販のオリゴ糖標準を用いて確認した。 アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)α-アミラーゼ、ケトミウム・エラチカム(Chaetomiumerraticum)デキストラナーゼ及びクレブシェラ・プランチコラ(Klebsiella planticola)プルラナーゼM1によるL.ファーメンタムGTFBポリマーの処理後のTLC解析である。レーン1:酵素処理前のL.ファーメンタムGTFBポリマー、レーン2~3:L.ファーメンタムGTFBポリマー及びデンプン、それぞれのα-アミラーゼ酵素処理により生じる生成物混合物。レーン4~5:L.ファーメンタムGTFBポリマー及びIMMP、それぞれのデキストラナーゼ酵素処理により生じる生成物混合物。レーン6~7:L.ファーメンタムGTFBポリマー及びA.クロオコッカムGTFDポリマー、それぞれのプルラナーゼ酵素処理により生じる生成物混合物。レーンS:標準、G1:グルコース、G2~G7:マルトースからマルトヘプタオース、Pol:ポリマー。
したがって、本発明は、一部において、(α1→3)結合したD-グルコース単位を含むα-グルカンの製造方法に関するものであり、当該方法は、非還元末端に少なくとも2つの(α1→4)結合したD-グルコース単位を含む多糖又はオリゴ糖基質を、(α1→4)グルコシド結合を切断でき、かつ新しい(α1→3)グルコシド結合を生成できるα-グルカノトランスフェラーゼ酵素と接触させて、連続する(α1→3)グルコシド結合を形成することなく、(α1→3)グルコシド結合を散在させた(α1→4)結合したD-グルコース単位の直鎖状セグメントを有するグルコースポリマーを形成するステップを含み、α-グルカノトランスフェラーゼは、GTFB、GTFC及びGTFDタイプの酵素からなる群から選択され(例えばGTFBタイプの酵素)、又は、特定の酵素活性を有するそれらの機能的ホモログである。
多糖類は、グリコシド結合により相互に結合される単糖単位の長鎖から構成される高分子炭水化物である。オリゴ糖は、少数の単糖(典型的に3~9個)を含む糖ポリマーである。グルコースポリマーは、単糖がグルコースである糖ポリマーである。α-グルカンは、α型のグリコシド結合で結合されたD-グルコースモノマーから構成される多糖類である。アミロースは、その非還元末端に少なくとも2つの(α1→4)結合したD-グルコース単位を含む基質の一例である。
直鎖状セグメントは、分岐しないポリマー構造部分であり、例えば一置換グルコピラノース残基の鎖である。本発明の文脈において、用語「散在させる」とは、間を置いて存在することを意味する。(α1→3)グルコシド結合を散在させた(α1→4)結合したD-グルコース単位の直鎖状セグメントにおいて、結合の順序は、1つ以上の(α1→4)結合、次に1つの(α1→3)結合、次に1つ以上の(α1→4)結合である。直鎖状セグメントにおいて、(α1→3)結合は(α1→4)結合の間に存在する。この構造における(α1→3)グルコシド結合は、「架橋」結合と称されることがある。
本発明の方法は、非還元末端に少なくとも2つの(α1→4)結合したD-グルコース単位を含む多糖又はオリゴ糖基質を、(α1→4)グルコシド結合を切断でき、かつ新しい(α1→3)グルコシド結合を生成できるα-グルカノトランスフェラーゼ酵素と接触させて、連続する(α1→3)グルコシド結合を形成することなく、(α1→3)グルコシド結合を散在させた(α1→4)結合したD-グルコース単位の直鎖状セグメントを有するグルコースポリマーを形成するステップを含んでよく、α-グルカノトランスフェラーゼは、(α1→3,4)分岐点を形成することができ、GTFB、GTFC、GTFDタイプの酵素(例えばGTFBタイプの酵素)、又は特定の酵素活性を有する機能的ホモログからなる群から選択される。
本発明の方法によって製造されたα-グルカンは、少なくとも3%、例えば少なくとも5%の分岐比率を有していてもよく、例えば少なくとも7%であってもよい。本発明の前後関係において、分岐比率は、分岐アンヒドログルコース単位(AGU)、すなわち、他の3つの単位に結合するAGUの、分子内のAGUの総数に対する総数として定義される。分岐比率は、公知技術の方法(例えばメチル化、及びそれに続くガスクロマトグラフィー)により測定することができる。分岐がα-グルカンにおいて多く存在する程、消化酵素が近づきにくくなり、α-グルカンの消化性が低くなる。加えて、分岐点の存在は、α-グルカンの溶解性を増加させ得る。本発明の方法は、低い消化性及び良好な溶解性を兼ね備えたα-グルカンを提供できるという意味で有利である。
本発明の方法により製造されるα-グルカンは、(α1→3)グルコシド結合及び少なくとも1つの(α1→3,4)分岐点に隣接する少なくとも1つの(α1→4)グルコシド結合を含み得る。本発明の方法により製造されるα-グルカンは、50~70%の(α1→4)グルコシド結合、8~30%の単一の(α1→3)グルコシド結合、及び3~20%の(α1→3,4)分岐点、例えば5~15%の(α1→3,4)分岐点を含み得る。本発明の方法により製造されるα-グルカンは、連続する(α1→3)グルコシド結合を1%未満有するのがよく、例えば連続する(α1→3)グルコシド結合を0.5%未満有するのがよく、更なる例としては連続する(α1→3)グルコシド結合を有さなくてもよい。本発明の方法により製造されるα-グルカンは、(α1→6)グルコシド結合を1%未満有するのがよく、例えば(α1→6)グルコシド結合を0.5%未満有するのがよく、更なる例としては(α1→6)グルコシド結合を有さなくてもよい。結合のパーセンテージは、ある結合数の、結合総数に対するパーセンテージを指す。
GTF酵素の触媒ドメイン内で、4つの保存領域が同定されている。これまでのタンパク工学に関する研究では、保存配列領域III及びIV(配列アラインメントについては図2を参照)に配置されるアミノ酸残基が、形成されるグリコシド結合のタイプに関するGTF酵素の生成物特異性を制御することが示されている。また、領域I及び領域IIは、酵素活性及び反応特異性に関与するアミノ酸残基を含む。本発明の方法におけるα-グルカノトランスフェラーゼは、GTFBタンパク質の保全領域内に以下の変異のうちの少なくとも1つを含み得る(図2を参照)。
A)(保存領域II):D991におけるAsp(L.ロイテリGTFB 4,6-α-グルカノトランスフェラーゼにおけるN1019のAsnの置換)
B)(保存領域IV):I1098におけるIle(L.ロイテリGTFB 4,6-α-グルカノトランスフェラーゼにおけるQ1126のGlnの置換)
C)(保存領域IV):N1100におけるAsn(L.ロイテリGTFB 4,6-α-グルカノトランスフェラーゼにおけるK1128のLysの置換)
本発明の方法におけるα-グルカノトランスフェラーゼは、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性(例えば配列番号1に対して少なくとも92、95、96、97、98又は99%の同一性)を有するアミノ酸配列を含み得る。
本発明の方法におけるα-グルカノトランスフェラーゼは、ラクトバシラス・ファーメンタムGTFB酵素であってもよく、例えば、本発明の方法におけるα-グルカノトランスフェラーゼは、ラクトバシラス・ファーメンタムCNCM I-5068GTFB酵素であってもよい。一態様において、本発明は、(α1→3)結合したD-グルコース単位を含むα-グルカンの製造方法を提供するものであり、該方法は、少なくとも2つの(α1→4)結合したD-グルコース単位をその非還元末端に含む多糖又はオリゴ糖基質に、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む(例えば、からなる)α-グルカノトランスフェラーゼ(例えばラクトバシラス・ファーメンタムCNCM I-5068GTFB酵素)を接触させるステップを含む。
本発明の方法における基質は、少なくとも5の重合度であってもよく、例えば、それは少なくとも5つのD-グルコース単位を含んでもよい。重合度は、ポリマー又はオリゴマー分子中のモノマー単位の数である。例えば、本発明の方法における基質は、少なくとも6の重合度を有してもよく、例えば、少なくとも6つのD-グルコース単位を含んでもよい。本発明の方法における基質は、デンプン(例えば、ワキシデンプン又は高アミロースデンプン)、デンプン誘導体、マルトオリゴ糖、グルコオリゴ糖、アミロース、アミロペクチン、マルトデキストリン、(α1→4)グルカン及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。デンプン誘導体は、天然のデンプンを物理的、酵素的又は化学的に処理してその特性を変化させることにより調製される。
本発明の方法における基質は、別の材料内に含まれてもよく、該基質は例えば穀粉の形の粉末状デンプンであってもよい。食品成分中に含まれる多糖類又はオリゴ糖を、消化性の低いα-グルカン、例えば分岐α-グルカンに変換することが有利である。このような変換は、成分中の繊維含量を増加させることができ、及び/又は、成分のカロリー含有量の低減を補助することができる。本発明の方法は、食品処理工程の一部として行ってもよく、例えばα-グルカノトランスフェラーゼ酵素を、工程中に食品成分に適用して、加工食品を提供してもよい。基質は、栄養価のあるプロファイルを既に有する材料中に含まれることもあり、例えば、該基質は、全粒小麦粉中に含まれ得る。
多糖又はオリゴ糖基質が本発明の方法におけるα-グルカノトランスフェラーゼ酵素によって変換され得る程度は、反応時間を制限することによって調整できる。部分的に変換された基質は、物性の変化をもたらす。本発明の方法におけるα-グルカンの産生は、基質とα-グルカノトランスフェラーゼ酵素との間の反応が完了する前に停止されてもよく、例えば、変性(例えば加熱)又は酵素の除去によって停止されてもよい。
本発明の方法におけるα-グルカノトランスフェラーゼ酵素は、固定化されてもよく、例えば多糖類又はオリゴ糖基質と接触させる前に固定化されてもよい。このような固定化技術は、従来技術において公知である。酵素を固定化することにより、(上記の)酵素の除去を容易に行うことができる。固定化法は、共有結合、封入、物理吸着、架橋、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。共有結合による固定化においては、酵素中の、触媒活性には必須でない官能基を介して、酵素を支持体に共有結合させる。アルミナ、シリカ及びケイ素化アルミナ等の酸化物材料を用いて酵素を共有結合させることができる。封入による固定化においては、酵素はポリマーマトリックス又は膜の格子内に局在化される。封入の方法は、主に5つのタイプ、すなわち格子、マイクロカプセル、リポソーム、膜及び逆ミセル、に分類される。酵素は、様々な合成又は天然ポリマーのマトリックス中に封入される。イオノトロピックなゲル化によりゲルを形成する天然多糖類であるアルギン酸塩は、そのような固定化マトリックスの1つである。物理吸着による固定化は、担体への酵素の固定化方法のうちで最も簡単かつ古典的な方法である。吸着による固定化は、水素結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス力、及びそれらの組み合わせなどの、酵素と担体との間の物理的相互作用に基づく方法である。吸着は一般に、化学的結合手段よりも酵素への損害が少ない。架橋による固定化は、酵素分子間の架橋試薬となる二又は多官能性の化合物を利用するものである。架橋は、吸着又は封入などの他の固定化方法と組み合わせて使用することができる。
多糖又はオリゴ糖基質は、20℃~60℃(例えば40℃~55℃)の温度、及び3.5~8.0(例えば5.5~7.5)のpHでα-グルカノトランスフェラーゼ酵素と接触さることができる。
更なる実施態様において、本発明は、(α1→3)グルコシド結合が散在しており、(α1→3,4)分岐点を有する、(α1→4)結合したD-グルコース単位の直鎖状セグメントを含むα-グルカンに関し、α-グルカンは、少なくとも3%(例えば少なくとも5%、更には例えば少なくとも7%)の分岐比率を有し、連続する(α1→3)結合の含量が1%未満(例えば連続する(α1→3)結合不含有)であり、5×10Da~1×10Da(例えば1×10Da~1×10Da)の平均分子質量である。本発明のα-グルカンは、(α1→3)結合を50%未満で有してもよい。
本発明のα-グルカンは、例えば(α1→4,6)分岐点を1%未満で有してもよく、例えば(α1→4,6)分岐点を0.5%未満で有してもよく、例えば(α1→4,6)分岐点を有さなくともよい。本発明のα-グルカンは、O2、O4又はO6位において分岐を有さなくともよい。本発明のα-グルカンは、(α1→6)グルコシド結合を1%未満で有してもよく、例えば(α1→6)グルコシド結合を0.5%未満で有してもよく、更に、例えば(α1→6)グルコシド結合を有さなくともよい。
本発明のα-グルカンは、(α1→3)グルコシド結合に隣接する少なくとも1つの(α1→4)グルコシド結合と、少なくとも1つの(α1→3,4)分岐点と、を含んでもよい。本発明のα-グルカンは、50~70%の(α1→4)グルコシド結合、8~30%の単一の(α1→3)グルコシド結合、及び3~20%の(α1→3,4)分岐点、例えば5~15%の(α1→3,4)分岐点を含み得る。本発明のα-グルカンは、連続する(α1→3)グルコシド結合を1%未満有するのがよく、例えば連続する(α1→3)グルコシド結合を0.5%未満有するのがよく、更なる例としては連続する(α1→3)グルコシド結合を有さない。本発明のα-グルカンは、(α1→6)グルコシド結合を1%未満で有してもよく、例えば(α1→6)グルコシド結合を0.5%未満で有してもよく、更に、例えば(α1→6)グルコシド結合を有さなくともよい。
本発明のα-グルカンは、食物繊維とみなすことができる。α-グルカンは、その高度な分岐構造のため、消化管上部における酵素的分解への耐性を示し、最終的には大腸において、大腸細菌叢による完全な発酵に用いられ得る。また、このような食物繊維は、ヒト又は動物における満腹感を増強する。食後の血糖値を上昇させる。本発明のα-グルカンは、デンプン等の材料と比較し消化性が低いため、これらを含む食事は、デンプンを含む同様の食事と比較し血糖値応答が低く、インスリン応答の誘導も緩やかである。本発明のα-グルカンを含む組成物は、対象における食後血中グルコース及びインスリン濃度の制御に用いられ得る。対象は、ヒト又は動物であってもよい。本発明のα-グルカンを含む組成物は、対象における食後血中グルコース及びインスリン濃度の増加に関連する障害の治療又は予防用のものであってもよい。障害は、例えば、妊娠糖尿病などの糖尿病、グルコース代謝異常、高インスリン血症又はインスリン抵抗性からなる群から選択され得る。対象は、糖尿病又は前糖尿病のヒト又はペットであってもよい。
典型的には、食後高インスリン血症はインスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、グルコース不耐性、及び2型糖尿病の発症を促進し得る[Kopp W.,Metabolism.2003,Jul;52(7):840~844]。しかしながら、食後のインスリン要求量を低下させることにより、一方では2型糖尿病における血糖調節の悪化を低減することができ、他方では2型糖尿病に罹患しやすい対象において発症のリスクを低減することができる。
「糖尿病前症患者」とはインスリン抵抗性又はグルコース代謝障害を示している対象であり、例えば家族歴、生活様式、又は遺伝的性質によって、後年になって糖尿病を発症しやすい。インスリン分泌の低減は、長期的には膵臓が疲弊するリスクを低下させることから、糖尿病前症者又は代謝疾患を有する患者における膵臓の管理にとって有益である。したがって、本発明のα-グルカンを含む組成物の使用により、これらの対象における糖尿病、グルコース代謝障害、高インスリン血症、若しくはインスリン抵抗性のリスク及び/又は発症を低減し得る。
糖尿病、インスリン抵抗性、又はグルコース不耐性の罹患は主として成人において認められる。しかしながら、ますます多くの小児が罹患しており、又は罹患しやすくなっており、若しくはこのような障害を後年になって発症するリスクを有している。したがって、これらの障害の予防及び/又は治療は若年期から開始するのが有利である。あるいは、ヒトにおいて観察されるのと同様に、糖尿病、高インスリン血症、又はインスリン抵抗性は、動物、特にペットとして飼育される動物においてもますます広まっている。したがって、本発明はまた、ネコ及びイヌにも関連する。
本発明のα-グルカンを含む組成物は、血漿中の食後グルコース及びインスリン濃度を減少させるための非治療的用途に用いられてもよい。本発明のα-グルカンを含む組成物を、例えば、2型糖尿病、インスリン抵抗性、又はグルコース不耐性を後のある時点で発症するリスクのある健康な対象等の対象にも投与できることは有益である。本発明のα-グルカンを含む組成物は、本明細書に開示のとおり、摂取後にインスリン濃度を低下させる。多くの健康な人々が体重の減量を望んでいる。食物繊維を含有する食事を消費することは、満腹感を高めることができるため、消化性カロリーの消費を減少させたい人々の助けとなる。本発明のα-グルカンを含む組成物は、体重を減量させるための非治療的用途に用いられてもよい。
本発明の別の態様は、本発明のα-グルカンを含む食品組成物に関する。本発明のα-グルカンは、低消化性であるが良好な溶解性を有する炭水化物を提供し、低いカロリー含量が要求される食品での使用にとり理想的である。食品組成物は、飲料(例えば粉末状の飲料ミックス又は飲料用クリーマー)、朝食用シリアル、ペットフード製品、焼成された生地製品(例えばパン、ピザ又は具入りのセイボリーターンオーバー(savoury turnover))、又は菓子製品であってもよい。菓子製品は、アイスクリーム等の冷凍菓子製品、ビスケット(例えばフィリング入りビスケット又はウエハ)などの焼き菓子製品、チョコレート菓子製品、又はシュガースタイルの菓子製品(例えばガム、ゼリー、ハードキャンディ(hard-boiled sweet)又はチューイー・スゥイート(chewy sweet))であってもよい。「シュガースタイルの菓子製品」又は「シュガースタイルのキャンディ」という用語は、伝統的に砂糖を主成分とする菓子製品を意味するが、他の甘味料及び/又は砂糖代用品によって製造されてもよい。
更に別の実施形態において、本発明は、食品材料、例えばデンプン含有食品材料の消化性炭水化物を還元させるための、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性(例えば、配列番号1に対して少なくとも92、95、96、97、98又は99%の同一性)を有するアミノ酸配列を含む、又は配列番号1のアミノ酸配列を有するα-グルカノトランスフェラーゼ酵素の使用を提供する。本発明の範囲において、消化性炭水化物とは、全炭水化物のうち、消化可能で、体細胞へのエネルギー供給に利用できる部分に該当する。本発明に従い使用できるα-グルカノトランスフェラーゼ酵素は、ラクトバシラス・ファーメンタムCNCM I-5068GTFB酵素であり得る。
本発明の更に別の実施形態は、配列番号2に対して少なくとも90%の同一性(例えば配列番号2に対して少なくとも92、95、96、97、98又は99%の同一性)を有する核酸配列を含む、又は配列番号2の核酸配列を有する細菌である。配列番号2により同定される核酸配列を含む細菌は、ラクトバシラス・ファーメンタム(例えばラクトバシラス・ファーメンタムCNCM I-5068)であってもよい。
本発明の一実施形態は、ラクトバシラス・ファーメンタムCNCM I-5068(またNCC 2970とも呼称される)である。かかる細菌は、パスツール研究所(25 rue du Docteur Roux,F-75724 PARIS Cedex 15,France)のCollection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)に2016年3月8日に寄託され、寄託番号I-5068を付与されている。
ラクトバシラス・ファーメンタムCNCM I-5068は、培養培地中で増殖させることができ、条件を最適化することでGTFB酵素の産生を最大にできる。最適条件は、例えば酵素の発現をリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で測定することにより決定できる。次に、アミロースなどの多糖又はオリゴ糖基質の転換は、培養液を使用して、又は、多糖若しくはオリゴ糖基質の存在下でラクトバシラス・ファーメンタムCNCM I-5068を培養することによって実施できる。ラクトバシラス・ファーメンタムCNCM I-5068は、簡便な凍結乾燥粉末の形態で提供してもよい。
更なる実施態様において、本発明は、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むα-グルカノトランスフェラーゼ酵素、例えば、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるα-グルカノトランスフェラーゼ酵素を提供する。本発明は更に、配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば配列番号1に対して少なくとも92、95、96、97、98又は99%の同一性)を有するポリペプチドをコードしている核酸配列を含む発現ベクターを提供する。発現ベクターは、細菌を形質転換するためのベクターであってもよい。
当業者であれば、本明細者に開示される本発明のすべての特徴を自由に組み合わせることができることを理解するであろう。特に、本発明の方法のために記載された特徴を本発明の製品と組み合わせてよく、逆もまた同様であってよい。更に、本発明の異なる実施形態について記載された特徴を組み合わせてもよい。周知の同等物が特定の特徴について存在する場合、このような同等物は、本明細書で具体的に言及されているのと同様に組み込まれる。本発明の更なる利点及び特徴は、図面及び以下の実施例から明らかである。
実験項
イントロダクション
乳酸菌、特にロイコノストック(Leuconostoc)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバシラス(Lactobacillus)属、ワイセラ(Weissella)属及びオエノコッカス(Oenococcus)属に存在するスクロースをα-グルカン多糖に変換するグルカンスクラーゼ酵素を準備するため、グリコシドヒドロラーゼファミリー70(www.CAZy.org)を最初に確立した。GS特異性に依存し、構造的に異なるα-グルカンが形成される。まずは、(α1→3)-(ムタン)又は(α1→6)結合(デキストラン)を有するα-グルカンを合成するグルカンスクラーゼ酵素の大部分が特性評価されており、また、近年では、(α1→2)又は(α1→4)結合を有する各種のα-グルカンが、グルカンスクラーゼ生成物として同定されている。交互の(α1→3)/(α1→6)結合(アルテルナン)(例えばロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)NRRL B-1355のアルテルナンスクラーゼ)又は(α1→4)/(α1→6)結合(ロイテラン)(例えばラクトバシラス・ロイテリ121のロイテランスクラーゼ)を有するα-グルカンを生産するいくつかのグルカンスクラーゼ酵素が特性評価されている。また、分岐位置は、同じ酵素によって、又はL.メセンテロイデス株の別の(α1→2)又は(α1→3)分岐導入酵素によって導入してもよい。GSはこのように、α-グリコシド結合[(α1→2)、(α1→3)、(α1→4)及び(α1→6)]の全4つの考えられる結合タイプを合成することが可能であるが、あるグリコシド結合の組み合わせは、同じα-グルカン内ではこれまで見つかっていない。例えば、α-グルカンを(α1→3)+(α1→4)結合で合成する野生型グルランスクラーゼ酵素は、今まで報告されていない。GSによって産生されるα-グルカンはまた、その分岐度、分子量、及び立体構造が異なる。かかる違いは、多様な産業工業的応用を可能にする様々な機能的特性を示すα-グルカンをもたらす。
ファミリーGH70のGS酵素(スクロースに作用)は進化的に、ファミリーGH13 α-アミラーゼ酵素(マルトデキストリン/デンプンに作用)に関連し、クランGH-Hを構成する。それらの進化的相関性のため、GH70及びGH13ファミリー酵素は、それらの配列及び構造における類似性を示し、同等のα保持的、二重置換的触媒機構を用いるものである。両ファミリーは、そのタンパク質にドメインA、B、Cを有する触媒(β/α)バレル構造を有し、また個々の酵素特異性についての配列フィンガープリントと考えられる4つの保存領域を有する活性部位を有する。しかしながら、GSはまた固有の特徴をも示す。ファミリーGH13において、これらの4つの保存領域の順は、I-II-III-IVである。一方、GS酵素におけるこの(β/α)バレルは円形に配置され、それにより保存領域の順はII-III-IV-Iとなり、それらは、2つの余分の、また特有のドメインIV及びVを有する。また、GSは「U字折れ曲がり」ドメイン構造を示し、そこでは5つのドメインのうちの4つ(ドメインA、B、IV及びV)がポリペプチド鎖の2つの不連続な部分から構築される。それらのGH13からの進化の間、GH70酵素は、この独特の、円形で、順序を変えられたドメイン配置をもたらす一連の遺伝子再構成を受けたと考えられる。
近年において、GH13及びGH70ファミリーの進化の相関性を裏付ける、いくつかのマルトデキストリン/デンプン変換酵素が、GH70ファミリーの中から同定された。第1に、L.ロイテリ121がスクロースに不活性なGS様酵素を産生することが判明した。この酵素をコードする遺伝子は、グルカンスクラーゼGTFAをコードする遺伝子の上流で発見され、gtfBと命名された。L.ロイテリ121GTFBは、スクロースの代わりにマルトデキストリン及びデンプン基質に作用し、ドナー基質の非還元末端から(α1→4)結合を切断し、生成物の非還元末端上に新規な(α1→6)結合を合成する(4,6-α-グルカノトランスフェラーゼ活性、4,6-α-GTアーゼ)。これにより、(α1→6)-及び(α1→4)結合の直鎖を有する生成物(イソマルト/マルト多糖、IMMP)の合成がなされる。合計54の関連するGTFBタイプの酵素は、いずれもラクトバシラス属で見られる4つの例外を除き、データベース上で現在利用可能であり、それらは新規なGH70サブファミリーを構成する。多数の新規ゲノム配列のアノテーションに続いて、いくつかのファミリーGH70酵素も非LAB属において発見された。以前、エキシグオバクテリウム・シビリカム(Exiguobacterium sibiricum)255-15のGTFC酵素(Gangoiti J,Pijning T,Dijkhuizen L.,Appl Environ Microbiol 82:756~766(2015))、及びアゾトバクター・クロオコッカム(Azotobacter chroococcum)NCIMB 8003のGTFD酵素(Gangoiti J,van Leeuwen S,Vafiadi C,Dijkhuizen L.,Biochem Biophys Act 1860:1224~1236(2016))が同定されている。これらのいずれの酵素も、スクロースに対し不活性で、マルトデキストリン/デンプンに対する活性、すなわち4,6-α-GTアーゼ活性を有し、それにより、イソマルトース/マルトースオリゴ糖(IMMO)(GTFC)及びロイテランタイプのα-グルカン(GTFD)が合成される。驚くべきことに、GTFC及びGTFDにおけるドメイン順序は、保存領域I-II-III-IVの順序を変えられていないGH13酵素のそれに似ており、また他のGH70酵素に存在するドメインVが欠如している。GTFC及びGTFDは、更なる2つのGH70サブファミリーを代表し、GH13 α-アミラーゼとGH70グルカンスクラーゼ酵素との間に位置する、構造的に非常に興味深い進化的中間型であるため、進化の起源及び(サブ)ファミリーのクランGH-Hへの分化に関する更なる解析を可能にするものである(http://www.cazy.org)。
ラクトバシラス・ファーメンタムNCC 2970ゲノム配列のアノテーションは、GTFB-タイプの4,6-α-GTアーゼ酵素に対し明らかな配列類似性を有する単一のファミリーGH70タンパク質の同定をもたらした。それはまた、典型的な4,6-α-GTアーゼ酵素のすべての特徴を有し、スクロースに対し不活性で、マルトデキストリン/デンプンに対し活性を有していた。しかしながら、Lb.ファーメンタムGTFBアミノ酸配列は、活性部位のドナー/アクセプター基質結合サブ部位を構成する保存領域II及びIV中のいくつかの残基において特有の変異を示していた。発明者らはしたがって、生化学的にこのL.ファーメンタムGTFB酵素の、その生成物の詳細な特性評価解析を含めた特性評価を行うこととした。これにより、それがマルトデキストリン/デンプン対し、ファミリーGH70及びクランGH-Hにおける新規な反応特異性である、4,3-α-グルカノトランスフェラーゼ(4,3-α-GTアーゼ)活性を有することが明らかとなった。
材料及び方法
L.ファーメンタムGTFBタンパク質配列の解析
クエリー配列としてL.ロイテリ121GTFB(GenBankアクセッション番号AAU08014.2)を用いたBLASTにより、ラクトバシラス・ファーメンタムNCC 2970ゲノム(配列番号2)の解析を行い、GH70タンパク質をコードする遺伝子の同定を可能にした。非冗長タンパク質配列データベースに対するNCBI BLASTp(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)検索を用い、L.ファーメンタムGH70タンパク質配列との類似性を示す配列を発見した。複数のアミノ酸配列アラインメントは、Jalview 2デスクトップアプリケーションを用い、Clustal W2により作成した。シグナルペプチドの有無は、Signal P4サーバを用いて解析した。L.ファーメンタムGTFBタンパク質の細胞内の局在は、CELLO v.2.5:subCELlular Localizationプレディクター(http://cello.life.nctu.edu.tw/)を用いて予測した。GTFBタンパク質のMw(分子量)の理論値は、ExPASy Compute pI/Mw(http://web.expasy.org/compute_pi/)において予測した。
MEGA(バージョン6)(Tamuraら、2013)を用いて、CAZyにおいて割出された代表的な特徴のGH70タンパク質、及びBLASTpにより同定されたGTFB様タンパク質配列に対応する、合計72のアミノ酸配列により、系統発生の解析を実行した。デフォルトパラメータを用い、MUSCLEにより配列アラインメントを行った。MEGA6を用い、JTTマトリックスモデルに基づいて、最尤法により系統樹を構築した。アラインメントのギャップ及び欠損データを含む位置の部分的な削除を行った。推定された系統発生の関係の統計的信頼性は、1,000回のブートストラップ反復試験を実行することにより評価した。
L.ファーメンタムGTFB遺伝子のクローニング
Phusion DNAポリメラーゼ(Finnzyme社、ヘルシンキ、フィンランド)を使用して、GTFBタンパク質(アミノ酸616-1593)のN末端欠失バージョンをコードするDNA断片を、L.ファーメンタムNCC 2970染色体DNAから増幅し、ライゲーション独立クローニング(LIC)を用いて修飾pET15bベクターへクローニングした。N末端欠失のgtfB遺伝子変異体の増幅に用いたプライマーは、LICクローニングを容易にするための5’伸長部分を有し(下線)、以下のとおりである:フォワード:CAGGGACCCGGTTTTGGTAAAGATGGTCGGATTG及びリバース:CGAGGAGAAGCCCGGTTAATTGTCTTCAATATTAGCATAATAATC。得られたPCR産物をアガロースバンドから精製し、dATPの存在下で、T4 DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社)の3’→5’エキソヌクレアーゼ活性により切断した。同時に、pET-15b/LICベクターをKpnIにより切断し、ゲルから単離し、次にdTTPの存在下でT4 DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社)で処理した。処理したpET-15b/LICベクター及びアンプリコンを1:4のモル比で混合し、混合物を用いて大腸菌DH5α細胞(Phabagen社)を形質転換した。これにより、3Cプロテアーゼによって切断可能なN末端His6タグを含むgtfB-ΔN構築物を得た。構築された発現ベクターpET15b/gtfB-ΔNを用い、宿主大腸菌BL21 Star(DE3)を形質転換した。遺伝子配列は、ヌクレオチドシークエンシング(GATC社、ケルン、ドイツ)により決定した。
酵素の発現及び精製
L.ファーメンタムGTFB酵素の発現のため、pET15b/gtfB-ΔNで形質転換した大腸菌star BL21(DE3)の一晩培養液を、アンピシリン(100μg/mL)を添加した新鮮なLB培地で1:100に希釈し、600nmでの光学密度が約0.4に達するまで、37℃及び220rpmで増殖させた。次に、培養温度を16℃に低下させ、誘導因子であるイソプロピル-β-D-1-チオガラクトピラノシドを0.1mMの終濃度で添加した。20時間後、細胞を遠心分離(10,000g×20分)により回収し、その後製造業者(Thermo Scientific、Pierce)により記載のプロトコルに従い、B-PER溶解試薬により破砕した。組換えGTFBタンパク質は、カラム材料としてNi2+-ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)を用いたHisタグアフィニティークロマトグラフィー(シグマアルドリッチ社)により、無細胞抽出物から単離した。25mMのトリス-HCl(pH8.0)(1mMのCaCl)によりカラムを洗浄した後、結合したタンパク質を、同じ緩衝液中の200mMイミダゾールにより溶出させ、イミダゾールは、分子量カットオフ30,000の撹拌限外濾過ユニット(Amicon、ベヴァリー、MA)を用いて除去した。更なる精製のため、タンパク質を1mLのHiTrapカラム(GE Healthcare社)にロードし、20mMのトリス-HCl緩衝液(pH8.0)(1mMのCaClを含む)中のNaCl(0~1M)の直線勾配を用いて溶出させた(1mL/分の流量)。Akta高速タンパク質液体クロマトグラフ(FPLC、GE Healthcare社、ウプサラ、スウェーデン)を用いて1mLのフラクションを回収した。限外濾過(YM30膜、ミリポア社、ビルリカ、MA)によりバッファー交換した。精製の過程は、フラクションのSDS-PAGE解析により評価し、タンパク質濃度は、Nanodrop 2000分光光度計(Isogen Life Science社、De Meern、オランダ)を用いて求めた。
酵素活性のアッセイ
L.ファーメンタムGTFB-ΔN酵素の総活性は、最初にアミロース-ヨウ素法で測定した(Gangoiti J,Pijning T,Dijkhuizen L.,Appl Environ Microbiol 82:756~766.(2015)、Bai Y,van der Kaaij RM,Leemhuis H,Pijning T,van Leeuwen SS,Jin Z,Dijkhuizen L.,2015.Appl Environ Microbiol 81:7223~7232.(2015))。グリコシル化及び/又は加水分解活性から生じるα-グルカン-ヨウ素錯体の吸光度の減少を、40℃で14分間、660nmでモニターした。反応混合物は、0.125%(w/v)のアミロースV(AVEBE社、Foxhol、オランダ)、酵素2.5μg/mL、25mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)及び1mMのCaClを含有した。活性の単位は、1分あたりに基質1mgを変換する酵素の量である。
pHが酵素活性に及ぼす影響を、40℃でpHを3.5~8.0で変化させることにより測定した。クエン酸ナトリウム緩衝液(25mM)は、3.5~7.0のpH値において、リン酸ナトリウム緩衝液(25mM)は、7.0~8.0のpH値において用いた。最適温度は、25mMのクエン酸ナトリウム緩衝液、pH5.5、1mMのCaCl中、30~65℃の範囲の温度で測定した。30~55℃の温度で10分間、1mMのCaClを含む20mMのトリス-HCl緩衝液(pH8.0)における0.1mg/mLの濃度で酵素をインキュベートことにより、GTFB-ΔN安定性に対する温度の効果を測定した。サンプルを次に、4℃で急冷し、40℃で、1mMのCaClを含む25mMのクエン酸ナトリウム(pH5.5)中で、標準反応条件下で残存活性を測定した。
L.ファーメンタムGTFBによる基質の利用
L.ファーメンタムGTFB-ΔN(25μg/mL)を、別々に、25mMのスクロース(Acros社)、ニゲロース(シグマアルドリッチ社)、パノース(シグマアルドリッチ社)、イソマルトース(シグマアルドリッチ社)、イソマルトトリオース(シグマアルドリッチ社)、イソマルトペンタオース(Carbosynth社)、重合度(DP)2~7のマルトオリゴ糖(MOS)、及び0.6%(w/v)のアミロースV(AVEBE、Foxhol、オランダ)、ジャガイモデンプン(シグマアルドリッチ社)及びアミロペクチン(シグマアルドリッチ社)と共にインキュベートした。すべての反応は、24時間37℃で、1mMのCaClを含む25mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)で実施した。100℃で6分間インキュベートし、反応を停止させた。薄層クロマトグラフィー(TLC)及び/又は高性能-アニオン交換クロマトグラフィー(HPAEC)により反応の経過をモニターした。
パルス電流測定検出分析と組み合わせた、薄層クロマトグラフィー及び高性能アニオン交換クロマトグラフィー
薄層クロマトグラフィー(TLC)は、シリカゲル60 F254(20×20cmのTLCシート、メルク社、ダルムシュタット、ドイツ)で実施した。TLCプレートは、n-ブタノール:酢酸:水(2:1:1、v/v)の溶媒系で6時間にわたり展開させた。炭水化物は、オルシノール/硫酸染色によって視覚化し、グルコース及びMOS(DP2~DP7)の混合物を同時に展開させて比較した。
炭水化物サンプルをDMSOで3:100に希釈し、CarboPac PA-1カラム(Dionex社、250×2mm)及びED40パルス化アンペロメトリー検出システムを装備したDionex DX500ワークステーション(Dionex社、アムステルダム、オランダ)を用い、HPAECにより解析した。100mMのNaOH中、10~240mMの酢酸ナトリウムの勾配を、0.25mL/分の流量で57分にわたり適用した。各サンプルの注入量は5μLとした。ピークの同一性は、市販のオリゴ糖標準を用いて確認した。
HPSEC解析
生成混合物のHPSEC解析は、マルチアングルレーザー光散乱検出器(SLD 7000 PSS、マインツ)、粘度計(ETA-2010 PSS、マインツ)及び示差屈折率検出器(G1362A 1260 RID Agilent Technologies)を装備したサイズ排除クロマトグラフィーシステム(Agilent Technologies 1260 Infinity)を用いて実施した(Gangoiti J,van Leeuwen S,Vafiadi C,Dijkhuizen L.,Biochem Biophys Act 1860:1224~1236.(2016))。PFGガードカラムに連結した、100、300及び4,000Åの空隙率を有する3本のPFG-SECカラムを用いて分離を行った。溶出剤としてDMSO-LiBr(0.05M)を、0.5mL/分の流量で用いた。342~805,000DaまでのMwの標準プルランキット(PSS、マインツ、ドイツ)を用い、システムの較正及びバリデーションを行った。RI増加値の比率dn/dcもまたPSSで測定し、数値は0.072mL/gであった。アミロースV及びL.ファーメンタムGTFB-ΔN酵素により生成したポリマーの分子量を測定するため、マルチアングルレーザー光散乱シグナルを用いた。このシステムにおけるこれらの多糖類のRI増加値の比dn/dcはプルランと同じである。ユニバーサル較正法を用い、L.ロイテリGTFB-ΔNポリマーの分子量を測定した。WinGPC Unityソフトウェア(PSS、Mainz)をデータ処理に用いた。測定は二度行った。
L.ファーメンタムGTFBによりアミロースから合成される生成物の産生、その単離及び解析
「L.ファーメンタムGTFBによる基質利用」で上記した条件に従い、精製GTFB-ΔN(0.25mg)を37℃で48時間、アミロースVとインキュベートした。得られた生成混合物を、48mL/hの流量で、溶出剤として10mMのNHHCOを用い、BioGel P2カラム(2.5×50cm、バイオラド社、Veenendaal、オランダ)でのサイズ排除クロマトグラフィーにより分画した。異なるBiogel P2プールに存在する多糖/オリゴ糖を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF-MS)、核磁気共鳴(NMR)分光法及びメチル化分析により解析した。
(i)MALDI-TOF質量分析
MALDI-TOF-MS測定は、窒素レーザー(337nm、3nsパルス幅)を装備したAxima(商標)質量分析装置(Shimadzu Kratos Inc.,Manchester,UK)により記録した。試料溶液(1μL)をMALDI目標にスポットし、直後に10%(w/v)の2,5-ジヒドロキシ安息香酸マトリックス水溶液1μLと混合した。陽性イオンモードのスペクトルを、5000の半値幅(FWHM)の解像度及び遅延抽出(450ナノ秒)のリフレクターモードを用いて記録した。質量スペクトルは通常、200のイオンゲートブランキングで、1~5000Daで得た。
(ii)NMR分光法
一及び二次元Hの核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、溶媒としてDOを用い、298Kのプローブ温度で、Varian Inova 500スペクトロメーター(NMRセンター、フローニンゲン大学)で記録した。分析前に、サンプルをDO(99.9atom% D、Cambridge Isotope Laboratories、アンドーバー、MA)で二回バッファー交換し、中間の凍結乾燥を経て、0.6mLのDOに溶解させた。すべてのNMRスペクトルは、MestReNova 5.3(Mestrelabs Research SL、Santiago de Compostella、スペイン)により処理した。化学シフト(δ)はppmで表し、内部標準のアセトン(Hでδ 2.225ppm、13Cでδ 31.07)により較正した。異なる結合のパーセンテージは、各シグナルピーク面積の積分値により推定した。
(iii)メチル化分析
メチル化分析は文献に記載のとおり実施した(van Leeuwen SS,Kralj S,van Geel-Schutten IH,Gerwig GJ,Dijkhuizen L,Kamerling JP.,Carbohydr Res 343:1237~1250.(2008))。簡潔には、ポリマー及びオリゴ糖サンプル(約5mg)を、DMSO中でCHI及び固体NaOHを用いて過メチル化し、次にトリフルオロ酢酸により加水分解した。部分的にメチル化された単糖を、NaBDにより還元した。得られた部分メチル化されたアルジトールを、120℃のピリジン:無水酢酸(1:1 v/v)を用いて過アセチル化し、部分メチル化されたアルジトールアセタート(PMAA)の混合物を得た。PMAAは、van Leeuwenら(2008)に記載のように、GLC-EI-MS及びGLC-FIDにより解析した。
スミス分解
1~2mgの多糖類のサンプルを、50mMのNaIOを含む100mMのNaOAc(pH4.1)1mLに溶解させ、暗所において4℃で112時間撹拌した。300μLのエチレングリコールを添加して過剰なIO を中和した。SpectraPor 1000Daカットオフ透析フローターを用いて、分解産物を48時間水道水で透析した。透析後、サンプルを室温で一晩、NaBHにより還元し、続いて上記のとおりの透析を行った。還元された多糖サンプルを、30分間90℃で、1mLの90%蟻酸溶液中で凍結乾燥し、加水分解した。室温に冷却した後、蟻酸をN流中で蒸発させた。GLC-EI-MS及びGLC-FID、並びにVan Leeuwenら(2008)のHPAEC-PADにより、TMS誘導体として乾燥多糖フラグメントを解析した。
加水分解酵素によるL.ファーメンタムGTFBの生成物の解析
L.ファーメンタムGTFB-ΔNポリマーを、50mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)に5mg/mLの濃度で溶解させ、それぞれ過剰量のα-アミラーゼ(アスペルギルス・オリゼ、Megazyme社)、デキストラナーゼ(ケトミウム・エラチカム、シグマアルドリッチ社)及びプルラナーゼM1(クレブシェラ・プランチコラ、Megazyme社)と37℃で48時間インキュベートした。デンプン、IMMP L.ロイテリ121 GTFBポリマー及びA.クロッカムのロイテラン様GTFDポリマーを、それぞれこれらの条件下で完全分解を生じるα-アミラーゼ、デキストラナーゼ及びプルラナーゼ処理の陽性対照として用いた。加水分解の程度はTLC分析により試験した。
結果及び考察
L.ファーメンタムGTFBタンパク質配列の解析
L.ファーメンタムのゲノムのアノテーションから、単一のGH70ファミリータンパク質が同定された。L.ファーメンタムGH70タンパク質のBLASTp解析から、このタンパク質の最も近いホモログは、すべて同一性が47%以上のアミノ酸配列(表1)を有するGTFB様4,6-α-GTアーゼGH70サブファミリーのメンバーであることが明らかとなった。
Figure 0007106460000001
Figure 0007106460000002
L.ファーメンタムGH70タンパク質の、他の特徴づけられたGH70酵素及びこのBLASTp検索により同定された(推定の)GH70の4,6-α-GTアーゼとの系統発生の関連を図1に表す。グルカンスクラーゼ(GS)は、ロイコノストック属、ストレプトコッカス属、ラクトバシラス属、オネオコッカス属及びワイセラ属の乳酸菌のゲノムに存在するが、推定GTFBホモログをコードする大部分の遺伝子は、現在のところラクトバシラス株で発見されている(但し、ペディオコッカス属及びロイコノストック属株に存在する4つのGTFB様タンパク質を除く)。L.ファーメンタムGH70酵素は、L.ロイテリ121 GTFB 4,6-α-GTアーゼ及びそのホモログと共にクラスター形成し、このタンパク質がGH70サブファミリーのGTFBタイプのメンバーであることが示された。GTFB様タンパク質は、円形で、順序を変えられた(β/α)8バレルを有するGH70 GSと類似したドメイン構成を示したが、生化学的に、それらはE.シビリカム255-15 GTFC及びA.クロオコッカムNCIMB 8003 GTFD酵素との関連が強い。これらの観察と一致するように、GTFB様GH70サブファミリーは、GSと進化的に関連が強いが、かかるサブファミリーは、GSと、E.シビリカム255-15及びA.クロオコッカムNCIMB 8003によりコードされるGTFC及びGTFDの4,6-α-GTアーゼとの中間に位置する。
L.ファーメンタムから同定されたGTFB遺伝子の配列は、計算上180kDaの分子量を有する1593アミノ酸からなるポリペプチドをコードする。GH70酵素の細胞外局在と一致するように、L.ファーメンタムGTFBは、CELLO v.2.5:subCELlular Localizationプレディクターサーバーにより細胞外タンパク質として機能予測された。Signal P 4.0サーバのアルゴリズムを用いたL.ファーメンタムGTFBのN末端アミノ酸配列の分析から、このタンパク質が39アミノ酸の古典的なグラム陽性N末端シグナルペプチドを含むことが明らかとなった。L.ファーメンタムGTFBは、4,6-α-グルカノトランスフェラーゼ活性を有するものとして最初に特性評価されたGH70メンバー(欧州特許第2248907号)であるL.ロイテリ121 GTFBと、顕著なアミノ酸同一性(77%の同一性、57%範囲)を有する。また、5つのドメイン(A、B、C、IV及びV)からなる大部分のGH70タンパク質に特有の典型的なU字フォールディングドメインの構成が、L.ファーメンタムGTFB酵素(図3)においても存在する。L.ロイテリ121GTFBと同様、L.ファーメンタムGTFBタンパク質のドメインA、B、C及びIVは、ポリペプチド鎖のN末端からC末端へと不連続に構成され、一方ドメインVはN末端ポリペプチド部分のみからなる。また、L.ファーメンタムGTFBは、ラクトバシラス種の多くのグルカンスクラーゼ及びGTFB様タンパク質に存在する約700残基の大型の可変性のN末端ドメインを有し、それにより、細胞壁への結合に関与すると考えられる(Bath K,Roos S,Wall T,Jonsson H.FEMS Microbiol Lett 253:75~82.(2005))。
L.ファーメンタムGTFB酵素の反応及び/又は生成物特異性を予測するため、このタンパク質のホモロジー領域I~IVを、他のGH70ファミリータンパク質との配列アラインメントにより同定した(図2)。これらの4つのホモロジーモチーフは、触媒性及び基質結合性の残基を含み、ゆえに、GH70及びGH13ファミリー酵素における個々の酵素特異性についての配列フィンガープリントと考えられる。L.ファーメンタムGTFBにおける保存領域I~IVの順序はII-III-IV-Iであり、グルカンスクラーゼ及びGTFB様4,6-α-グルカノトランスフェラーゼに見られる順序に対応することから、その円形に順序を変えられたドメイン構造を反映するものである。L.ファーメンタムGTFBのモチーフI~IVは、(推定)GTFB様4,6-α-グルカノトランスフェラーゼに対応するモチーフとの顕著な類似性を示した。最初に、GH70ファミリー酵素のモチーフI~IVにおいて高度に保存される7つの残基は、L.ファーメンタムGTFBにおいても存在する。これらの7つの残基のうち、3つの推定触媒性残基Asp987、Glu1025及びAsp1097(L.ファーメンタムGTFBの付番)は、それぞれ求核基、一般酸/塩基触媒及び遷移状態安定基として同定された。他のGTFB様酵素と同様、分岐化スクラーゼを除き、チロシン残基は、すべてのGSにおいて保存されたサブ部位+1/+2 Trp残基(L.ロイテリGTF180 GSにおけるW1065)を置換している。保存されたW1065(L.ロイテリ180のGTF180の付番)がまた、E.シビリカムGTFC及びA.クロオコッカムGTFDの4,6-α-GTアーゼ酵素におけるチロシン基により置換されていることは注目に値する。このように、典型的なTrp残基の代わりにこの位置にTyr残基が存在することは、「古典的」なGSとは異なり、デンプン/マルトデキストリン基質に対する活性を示すGH70タンパク質としての、1つの主要な相違点を表すものである。また、L.ファーメンタムGTFBは、大部分のGTFB様4,6-α-GTアーゼの場合と同様、基質結合サブ部位+1及び+2に関与する位置1028及び1138(L.ロイテリ180のGTF180の付番)においてそれぞれAsp及びArg残基を含む。しかしながら、L.ファーメンタムGTFBではまた、モチーフII及びIVにおいて-1、+1及び+2ドナー/アクセプター結合サブ部位に関与する残基が、いくつかの特有の変異を示している。具体的には、グルカンスクラーゼ及びGTFB様タンパク質において高度に保存されるサブ部位+1のAsn残基(L.ロイテリGTF180のGSにおけるN1029)は、L.ファーメンタムGTFBにおいてAspで置換されている。GSにおいて、残基N1019は、活性及び結合特異性にとり重要であることが判明した。また、推定の遷移状態安定化基(L.ロイテリ180のGTF180の付番)に続く位置1137及び1140のアミノ酸は、多くのGTFB-及びGTFC様4,6-α-GTアーゼに存在するGln及びLys残基の代わりに、Ile及びAsnである。これらの2つの残基はGSにおけるグリコシド結合の特異性に関与することが、これまでの変異試験で明らかとなっている。特に、位置1137の残基は、サブ部位+2で糖残基の方向修正にとり不可欠であることが判明した。L.ファーメンタムGTFBは、L.ロイテリ121 GTFB 4,6-α-GTアーゼタンパク質との配列類似性を明らかに示すことは事実だが機能的に重要な位置において独自の配列上の特徴を有する。
L.ファーメンタムGTFBの精製及び生化学的解析
L.ファーメンタムGTFB-ΔNタンパク質を、大腸菌BL21(DE3)Starにおいて良好に発現させた。用いた増殖及び誘導条件では、GTFB-ΔNの発現レベルは、可溶性及び不溶性フラクションにおいて比較的低かった(図4)。実験項にて説明したように、金属キレートクロマトグラフィー及びアニオン交換クロマトグラフィーからなる2つのクロマトグラフィー工程により、可溶性フラクションから酵素を精製した。精製された酵素のSDS-PAGE解析では、配列から推定される理論値に対応する、見かけの分子量が約110kDaの単一のタンパク質のバンドが見られた(図4)。この精製工程の結果、大腸菌培養液1Lあたり合計0.4mgの純粋なGTFB-ΔNタンパク質が得られた。
この酵素活性に対するpH及び温度の影響を、アミロースVを基質とするヨウ素染色アッセイによって測定した。精製された組換え型L.ファーメンタムGTFBは、pH5.5で最も高い活性を示し、pH4~6においてこの活性の80%以上が保持された(図5A)。酵素は30~60℃で活性を示し、50℃でその最大活性を示したが、反応を65℃で実施したとき、活性が大幅に低下した(図5B)。更に、20mMのトリス-HCl緩衝液(pH8.0)中、45℃超の温度で酵素は安定性が低下した(図5C)。同様のpH及び温度の最適値が、L.ロイテリ121 GTFBの4,6-α-GTアーゼ酵素に関して報告されている。1mMのCaClを含む酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中、0.125%(w/v)のアミロースVに対する精製L.ファーメンタムGTFB酵素の総比活性は、ヨウ素染色アッセイにおいて、22±0.36U/mgタンパク質として算出された。この数値は、L.ロイテリ121由来GTFBに関する報告(pH5.0及び40℃の最適条件下)(Baiら、2015)より約10倍高く、すなわち2.8U/mgであった。L.ファーメンタムGTFBの活性は、10mMの最終濃度でのキレート剤EDTAの存在下においても分析したところ、若干の(20%の)阻害が見られた。
L.ファーメンタムGTFBの基質及び生成物特異性
ホモロジーモチーフにおいて観察された相違は、L.ファーメンタムGTFBが新規な酵素反応及び/又は生成物特異性を有し得ることを示唆するものであった。したがって、L.ファーメンタムGTFB酵素を異なるオリゴ糖及び多糖と共に37℃で24時間インキュベートし、反応生成物をTLCにより解析した(図6)。L.ロイテリGTFBと同様、L.ファーメンタムGTFB酵素は、スクロース、パノース、ニゲロース及びDP2、DP3及びDP5のイソマルトオリゴ糖とは反応しなかった(データ非掲載)。その代わり、L.ファーメンタムGTFB酵素は、DP6及び7のマルトオリゴ糖(MOS)に対する加水分解及びトランスグリコシラーゼ(不均化)活性を示し、それはMOS基質以外の低分子及び高分子の生成物の蓄積から明白であった。しかしながら、L.ファーメンタムGTFBは、4以下のDPのMOSに対しては活性がなく、マルトペンタオース(DP5)に対する不均化活性は低かった。一方、L.ロイテリ121の場合、GTFB活性はマルトトリオース(DP3)において既に観察された。L.ファーメンタムGTFB酵素と、アミロースV、ジャガイモデンプン及びアミロペクチンとのインキュベートの結果、低分子量生成物に見られる外観が見られ、すなわち該酵素がこれらのポリマーに対する活性をも有することが示された。L.ファーメンタムGTFB酵素がL.ロイテリ121GTFBより顕著に多量のオリゴ糖生成物(主にアミロースVから合成された(修飾型)ポリマー)を産生した点に留意する必要がある。TLCにより観察されるように、DP2~5のMOSは各種のポリマー基質から蓄積され、すなわちL.ファーメンタムGTFBがグルコースドナー基質としてマルトヘキサオース又はそれ以上のMOSを必要とすることを物語るものである。
L.ファーメンタムGTFBの生成物特異性の試験のため、マルトヘプタオース及びアミロースV由来の生成混合物を、一次元H NMR分光法により解析した(図7)。両生成混合物のH-NMRスペクトルから、(α1→4)結合及び新規に合成された(α1→3)結合に対応する、δ約5.40及び5.35の2グループにおけるアノマー同士の重複シグナルの存在が明らかとなった。(α1→3)結合の存在は、δH-54.16ppmにおける(α1→3)結合の構造に由来するレポーター基シグナルにより再確認した。このスペクトルはまた、遊離グルコース単位(Gα H-1、δ 5.225;Gβ H-1、δ 4.637)及び4-置換還元末端グルコース残基(Rα H-1、δ 5.225;Rβ H-1、δ 4.652)に対応するシグナルも示した。(α1→6)結合(H-1、δ約4.97)に対応するトレース量(1%未満)のシグナルが検出された。マルトヘプタオース及びアミロースV生成物における、(α1→4)結合-、(α1→3)結合グルコース残基のモル比は、それぞれ86:14及び81:19であった。L.ファーメンタムGTFBにより生成するアミロースV由来生成混合物のメチル化分析により、25、16、55及び4分子%の、末端、3-置換、4-置換及び3,4-二基置換のグルコピラノース残基の存在が示され、それは、H NMRにより測定された結合比率と一致しており、それにより、L.ファーメンタムGTFBが(α1→3)結合特異性を有することが確認された。直鎖状(α1→6)グルカン鎖を生成するだけであるL.ロイテリGTFB酵素(4,6-α-GTアーゼ)とは対照的に、L.ファーメンタムGTFBは、(α1→4)結合の切断及び新規な(α1→3)の直鎖方向又は分岐方向への形成をもたらす4,3-α-グルカノトランスフェラーゼ(4,3-α-GTアーゼ)として作用する。
L.ファーメンタムGTFB酵素のアミロースに及ぼす作用を、マルチ検出によるHPSECにより解析した(図8)。開始アミロースV基質のHPSECプロファイルは、23.0mLの溶出後、174×10Daの平均Mの単一ピークを示した一方、L.ファーメンタムGTFBで処理したアミロースVは、2つの異なる分子量ピークの分布を示し、21.5mLで溶出する初期ピークは、800×10Daの平均Mを有する高分子量ポリマーに対応し、第2のピークは、1400Daの平均Mを有するオリゴ糖に対応する。L.ロイテリ121 GTFB 4,6α-GTの場合、IMMPに対応するピークは26.5mLで溶出し、平均Mが15×10Daであった。このように、L.ファーメンタムGTFBは、出発アミロースV基質及びIMMP製品のものよりもそれぞれ約8及び50倍高いM値を有するポリマーを合成できる。しかしながら、屈折率シグナルに基づくと、このポリマーは全生成混合物の20%未満である一方で、L.ファーメンタムGTFBの生成混合物中には顕著な割合で低分子量グルカンが存在する。
アミロースVからL.ファーメンタムGTFBにより合成される生成物の構造解析
更に詳細な構造解析を行うため、L.ファーメンタムGTFBによりアミロースから産生される生成物を、Biogel P2でのサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。得られた7つのフラクション(F1~F7)をMALDI-TOF MS及びH NMR分光法により別々に分析した(表2)。フラクションF6及びF7には、それぞれ、加水分解物マルトトリオース(DP3)及びマルトース(DP2)が含まれ、更なる試験には用いなかった。一次元H NMRスペクトルは、δ 5.41及び5.37においてαアノマーシグナルを示し(図7)、この領域は、(α1→4)及び(α1→3)結合α-D-Glcp残基のアノマーシグナルを両方含むと考えられる。したがって、(α1→4)及び(α1→3)結合の有無を測定し、分岐度を求めるため、フラクションF1~F5ではメチル化分析も行った。メチル化分析データは、(α1→3)結合残基に対応するδ 5.37のピークに該当した(表2)。Biogel P2フラクションのH NMR及びメチル化分析から、(α1→3)結合のパーセンテージが、生成物のDPの増加と共に増加することが証明された(表2)。DP>30の重合物を含む、最も高い分子量の生成物フラクションであるF1では、全反応生成混合物における16%及び4%と比較し、それぞれ→3)Glcp(1→グルコシル単位(28%)及び分岐→3,4)Glcp(1→グルコシル単位(8%)のパーセンテージが増加していた。
Figure 0007106460000003
上記データは、1H NMRスペクトルにおいて、5.41ppmで(α1→4)結合のシグナル、及び5.37ppmで(α1→3)結合のシグナルのピーク面積の積分比を表す。
結合分布データを、GLC強度に基づく分子パーセントにて示す。
フラクションF1に存在する構造エレメントを解明するため、二次元NMR(13C-H HSQC、H-H TOCSY及びH-H ROESY)実験を実施した(図9)。
重合フラクションF1の構造解析
多糖生成物(F1)の一次元H NMRスペクトル(図9)では鋭いアノマーシグナルがδ 5.41及びδ 5.37ppmにおいて示され、それぞれ、(α1→4)及び(α1→3)結合グルコース単位が、6:4の比率で存在することが、メチル化分析データ(表2)と整合した。表3は、NMRデータをまとめたものである。
二次元H-H COSYスペクトルにおけるH2シグナルから明らかなように、δ 5.41のアノマートラックにおいて、それぞれδ 3.59、3.63及び3.69において、少なくとも3種類の重複する残基が観察された(図9)。60ms(図示せず)及び150ms(図9)の混合時間による二次元TOCSYスペクトルにおける更なる分析では、それぞれδ 3.70、3.85及び3.97における3つのH-3シグナル、及びδ 3.65~3.67及び3.42におけるH-4シグナルが確認された。末端のα-D-Glcp-(1→4)-残基の場合、それぞれ、H-2、H-3及びH-4シグナルはδ 3.57、3.71及び3.42に予想され、(1→4)-α-D-Glcp-(1→4)-残基の場合、それぞれ、H-2、H-3及びH-4は、δ 3.63、3.96及び3.65で予想され、一方、(1→3)-α-D-Glcp-(1→4)-残基は、それぞれ、δ 3.68、3.85及び3.65でH-2、H-3及びH-4を示さなければならない。二次元13C-H HSQCスペクトルは、これらの残基で予想されるHの化学シフトに対応する13C化学シフトを示した。最も顕著には、δ 78.8の4-置換C-4値は、δ 3.65のH-4に対応し、δ 80.4のC-3は、δ 3.85ppmのH-3に対応した。この二次元NMRスペクトルで観測されたデータは、これら3種類の残基の生成と整合するものである。
δ 5.37のアノマートラックにおいて、二次元H-H COSYスペクトル(図9)は、δ 3.57及び3.61でH2シグナルを示し、少なくとも2種類の残基の存在を示唆した。二次元H-H TOCSYスペクトルは、δ 3.75及び4.03のH-3シグナル、並びにδ 3.67及び3.43のH-4シグナル、並びにδ 4.16のH-5シグナルを明らかにした。δ 3.57、3.75、3.43のH-2~H-4シグナルは、それぞれ、末端のα-D-Glcp-(1→3)-単位と予想されるシグナルに対応する。この単位のH-5シグナルは、δ約4.02と予想され、それは同じ化学シフトを有する強いH-3シグナルと重複する。二次元13C-H HSQCスペクトル(図9)は、δ 4.02のHの化学シフトに対応するC-5(δ 72.4)及びC-3値(δ 74.3)を示し、末端のα-D-Glcp-(1→3)-残基で予想されるδ 4.02のH-5との対応関係を示唆する。H-2~H-5における残りのδ 3.61、4.03、3.67及び4.16の組み合わせは、-(1→4)-α-D-Glcp-(1→3)-残基に対応する。二次元13C-H HSQCスペクトル(図9)は、Hの化学シフトの帰属を確認しており、非置換のC-4値δ 71.2がδ 3.65のH-4に対応し、4-置換α-D-Glcp-(1→3)-残基に対応することを示している。3,4-二基置換残基では明瞭なシグナルは検出されなかったが、δ 3.42及び3.43ppmの構造レポーターシグナルに示されるように、アノマーシグナルに対して8.4%を占める顕著な量の末端残基が観察された。(α1→4)及び(α1→3)のアノマーシグナルのみが観察されるため、分岐残基は3,4-二基置換でなければならない。これは更に、F1における約8%の3,4-二基置換残基を示すメチル化分析データにより裏付けられる(表2)。
特に、(α1→3)-アノマートラックは、δ 3.85のH-3シグナルを示さず、一方、二次元13C-H HSQCスペクトルでは、δ 3.85でH-3に対応する3-置換C-3(δ 80.4)のみが示され、また二次元H-H ROESYスペクトル(図9、赤)では、(α1→3)-アノマーシグナルがδ 3.85のH-3とのみ残基間の対応関係を示し、すなわち連続する(α1→3)結合が発生しないことを示した。更に、4-置換C-4:H-4シグナルは、δ 78.8:3.65~3.67ppmでのみ観察された。
Figure 0007106460000004
スミス分解分析
連続的な(α1→3)結合がないことを確認するため、F1のサンプルを緩酸性条件でNaIOによるスミス分解に供し、続いてNaBHによる還元及び蟻酸による穏やかな加水分解に供した。結合解析を考慮すると、過剰な加水分解によるエリトリトール及び[α-D-Glcp-(1→3)]nD-Glcp断片に起因する断片[α-D-Glcp-(1→3)-]nα-D-Glcp-(1→2)-L-エリトリトールが、予想される。HPAEC-PAD分析では、2分間及び6分間の溶出時間でフラグメントのピークを示した。断片[α-D-Glcp-(1→3)]nα-D-Glcp-(1→2)-L-エリトリトール及び[α-D-Glcp-(1→3)]nD-Glcp(n≧1)の保持時間は10分を上回ると予想されるため、これらの結果は、連続する(α1→3)結合が存在しないことを示唆する。
F1の複合モデルの構築
F1の一次元H NMRのスペクトルにおける、α-D-Glcp-(1→3)-及びα-D-Glcp-(1→4)-残基に対応する、それぞれδ 3.43及び3.42の構造レポーターシグナルは、8.4%の分岐形成を示す。2つの特徴的なピークの相対強度は等しく、4.2% α-D-Glcp-(1→3)-残基及び4.2% α-D-Glcp-(1→4)-残基を示す。連続する(α1→3)結合残基がないことを考慮すると、すべての3-置換残基は(α1→4)結合でなければならない。また、分岐残基は(1→3,4)-α-D-Glcp-(1→4)-残基であり、8.4%に達する。40%(α1→3)の結合が観察されたため、残基の31.6%は-(1→3)-α-D-Glcp-(1→4)-残基でなければならない。(α1→3)結合残基の4.2%が末端であるため、35.8%の-(1→4)-α-D-Glcp-(1→3)残基が存在する。これより、15.8%の(1→4)-α-D-Glcp-(1→4)残基が残る。一次元及び二次元NMR分光分析、メチル化分析及びスミス分解分析によるすべてのデータを総合すると、F1の複合モデルが構築され、同定されたすべての構造エレメントが正しい相対量を示している(図10)。
L.ファーメンタムGTFB酵素により、マルトヘプタオース及びアミロースVから所定時間に形成されるオリゴ糖
L.ファーメンタムGTFB酵素の作用パターンをより詳細に解明するため、時間経過による実験を、マルトヘプタオース及びアミロースV基質を用いて実施した。10分間、1時間及び24時間の反応後に形成されたオリゴ糖生成物をHPAECにより分析した。マルトヘプタオース(G6及びG5がわずかに混入)との反応の初期において、G2が主な反応生成物として同定された(図11A)。グルコース(G1)及びマルトトリオース(G3)に対応する小規模なピークも同定されたが、また未知の構造であるが高DP含量のピークが58分の時点で溶出された。G2の遊離は、L.ファーメンタムGTFB酵素が、DP含量の高い化合物の合成と共に、マルトペンタオシル単位のMOSアクセプター基質への転移を触媒することを示唆する。時間の経過後、グルコース及びDP2~5を有するMOSの量が増加し、一方、24時間後にG6及びG7が減少した。更に、L.ファーメンタムGTFBの不均化活性の結果として、MOS滞留時間にフィットせず、おそらく(1→3)結合を含むオリゴ糖に対応するピークが、G7の開始基質のそれより短い、及び長い保持時間で検出された。アミロースVとのインキュベートにより、G1、G3、G4、G5と共に、第1の明瞭な反応生成物としてG2が得られた(図12A)。これらのプロファイルは、G7及びアミロースVが共に基質として用いられたときにL.ロイテリ121GTFB酵素により得られたものとは著しく異なった(図11B及び図12B)。両基質において、L.ロイテリ121GTFBは、反応の初期に主要な第1の生成物として、(G2の代わりに)グルコースを遊離させる。L.ファーメンタムGTFBによるDP2~DP5を含むMOSの顕著な蓄積は、L.ロイテリ121GTFBでは見られなかった。これらの結果は、L.ファーメンタム及びL.ロイテリ121GTFB酵素が、それらの重合メカニズムにおいて異なることを示唆する。新規なL.ファーメンタムGTFB酵素は、低分子DPのMOSの転移を優先的に触媒し、A.クロオコッカムGTFD酵素のそれに類似する作用様式を示す。一方、L.ファーメンタムGTFB4,3-α-GTでは、特定の最小限長(少なくともDP6)のMOSが、酵素活性に、並びにα(1→3)/(1→4)の交互の構造及びα(1→3)分岐点を有するα-グルカンの産生に必要であると考えられる。最後に、進化的に関連するGH13及びGH77ファミリーに属する酵素の場合に観察されるように、上記のデータは、L.ファーメンタムGTFBの4,3-α-GTが複数のドナー結合サブ部位を有することを示す。
L.ファーメンタムGTFB生成物の酵素処理
L.ファーメンタムGTFB酵素(Biogel P2のフラクションF1)により合成されるポリマーを更に解析するため、このα-グルカンを、高い活性量のα-アミラーゼ、デキストラナーゼ及びプルラナーゼ酵素で処理した。L.ファーメンタムGTFBにより産生されるポリマーは、α-アミラーゼのエンド-(1→4)加水分解活性に対する抵抗性を示した。TLC分析により明らかなように、グルコース、マルトース及び高分子量オリゴ糖は、48時間のα-アミラーゼ分解後、極微量が検出された(図13)。同じ反応条件下で、デンプン対照基質は完全に加水分解され、α-(1→3)結合の存在がL.ファーメンタムGTFBポリマーをα-アミラーゼ消化に対して耐性にすることを示した。L.ファーメンタムGTFBポリマーを、デキストラナーゼ及びプルラナーゼ酵素処理にも供した。デキストラナーゼはデキストランにおける連続する(1→6)結合のエンド加水分解を触媒し、一方、プルラナーゼはプルラン、デンプンのアミロペクチン及びα-及びβ-限界デキストリンに存在する(1→6)結合を切断する。すなわち、デキストラナーゼ及びプルラナーゼ処理において、アミロースVからL.ロイテリGTFB及びA.クロオコッカムGTFDにより産生されるポリマーをそれぞれ陽性対照として含めた。予想通り、デキストラナーゼは、L.ロイテリ121GTFBにより産生されるIMMPを効率的に加水分解し、一方プルラナーゼは、A.クロオコッカムGTFD酵素により合成されるロイテラン様ポリマーを完全に消化した。対照的に、L.ファーメンタムGTFBポリマーの場合、加水分解は観察されず、H NMR分析から推論される(1→6)結合の欠如(1%未満)と一致していた。
結論
本実施例は、L.ファーメンタムNCC2970がコードする、(α1→4)結合を切断し、(α1→3)結合を合成するGH70酵素を初めて同定し、解析したものである。発明者らは、この酵素を(α1→4)-α-D-グルカン:(α1→4)、(α1→3)-α-D-グルカンα-グルカノトランスフェラーゼ、略して4,3-α-グルカノトランスフェラーゼと命名することを提案する。その一次配列に関して、このタンパク質は明らかに、元来4,6-α-グルカノトランスフェラーゼを唯一含む新規なGTFB様GH70サブファミリーに属するが、しかしながら、それはまた、GSのアクセプター結合サブ部位を形成する残基における独自の変異を有し、その活性部位が独自の特徴を示すことを示唆している。これらの知見と一致するように、L.ファーメンタムGTFBは、基質としてマルトデキストリン及びデンプンを用いる点で、従来同定されたGTFB酵素に類似するが、連続する(α1→6)結合の合成を触媒する代わりに、(α1→3)結合に対する特異性を示す。L.ファーメンタム活性により、直鎖方向及び分岐方向における単一の(α1→3)結合により相互に結合した、異なるマルトオリゴ糖の長さを有する独特のα-グルカン構造が合成される。
GSが、たとえ広い生成物スペクトラムを有して、様々な形状の結合を合成するとしても、今まで特徴づけられたGSのいずれも、(α1→4)及び(α1→3)結合からなるα-グルカンを産生しない。L.ファーメンタムGTFB生成物の構造はまた、異なる地衣類及び菌類に存在する(α1→4)及び(α1→3)結合の両方を含むα-グルカンに対応するものとは異なる。実際、大部分のこれらの多糖は直鎖状構造を有し、一方、他のものは主に(α1→3)結合から構成され、及び/又は、(α1→3,4)分岐点を有さない。L.ファーメンタムGTFBの食品マトリックス中に存在するデンプンへの直接作用は、低消化性と一致する構造的特徴を有するデンプン誘導体を提供する。

Claims (13)

  1. (α1→3)結合したD-グルコース単位を含むα-グルカンの製造方法であって、
    非還元末端に少なくとも2つの(α1→4)結合したD-グルコース単位を含む多糖又はオリゴ糖基質を、(α1→4)グルコシド結合を切断でき、かつ新しい(α1→3)グルコシド結合を生成できるα-グルカノトランスフェラーゼ酵素と接触させて、連続する(α1→3)グルコシド結合を形成することなく、(α1→3)グルコシド結合を散在させた(α1→4)結合したD-グルコース単位の直鎖状セグメントを有するグルコースポリマーを形成するステップを含み、
    前記α-グルカノトランスフェラーゼが、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、方法。
  2. 前記基質が、少なくとも5の重合度を有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記基質が、デンプン、デンプン誘導体、マルトオリゴ糖、グルコオリゴ糖、アミロース、アミロペクチン、マルトデキストリン、(α1→4)グルカン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記基質が、穀粉中に含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. (α1→3)グルコシド結合が散在しており、(α1→3,4)分岐点を有する、(α1→4)結合したD-グルコース単位の直鎖状セグメントを含むα-グルカンであって、
    前記α-グルカンが少なくとも3%の分岐比率を有し、1重量%未満で連続する(α1→3)結合を含み、5×10Da~1×10Daの平均分子質量を有し、
    前記α-グルカンが、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むα-グルカノトランスフェラーゼ酵素を用いて得られたものであり、
    前記α-グルカノトランスフェラーゼ酵素が、非還元末端に少なくとも2つの(α1→4)結合したD-グルコース単位を含む多糖又はオリゴ糖基質を用いて(α1→4)グルコシド結合を切断でき、かつ新しい(α1→3)グルコシド結合を生成できるものである、α-グルカン。
  6. 請求項5に記載のα-グルカンを含む食品組成物。
  7. 前記食品組成物が、飲料、朝食用シリアル、ペットフード製品、焼成された生地製品、又は菓子製品である、請求項6に記載の食品組成物。
  8. 食品材料の消化性炭水化物を還元するための、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むα-グルカノトランスフェラーゼ酵素の使用であって、
    前記α-グルカノトランスフェラーゼ酵素が、非還元末端に少なくとも2つの(α1→4)結合したD-グルコース単位を含む多糖又はオリゴ糖基質を用いて(α1→4)グルコシド結合を切断でき、かつ新しい(α1→3)グルコシド結合を生成できるものである、使用。
  9. 配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有する核酸配列を含む細菌であって、
    前記核酸配列が、非還元末端に少なくとも2つの(α1→4)結合したD-グルコース単位を含む多糖又はオリゴ糖基質を用いて(α1→4)グルコシド結合を切断でき、かつ新しい(α1→3)グルコシド結合を生成できるα-グルカノトランスフェラーゼをコードするものである、細菌。
  10. 前記細菌がラクトバシラス・ファーメンタムである、請求項9に記載の細菌。
  11. ラクトバシラス・ファーメンタムCNCM I-5068。
  12. 配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、非還元末端に少なくとも2つの(α1→4)結合したD-グルコース単位を含む多糖又はオリゴ糖基質を用いて(α1→4)グルコシド結合を切断でき、かつ新しい(α1→3)グルコシド結合を生成できるものである、α-グルカノトランスフェラーゼ酵素。
  13. 配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含む発現ベクターであって、
    前記ポリペプチドが、非還元末端に少なくとも2つの(α1→4)結合したD-グルコース単位を含む多糖又はオリゴ糖基質を用いて(α1→4)グルコシド結合を切断でき、かつ新しい(α1→3)グルコシド結合を生成できる酵素をコードするものである、発現ベクター。
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