JP4108154B2 - α‐1→3結合含有糖類生成酵素遺伝子およびその使用 - Google Patents
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Description
[発明の背景]
【発明の属する技術分野】
本発明は、澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質に作用して糖受容体へのα‐1→3結合、またはα‐1→3およびα‐1→4結合のグルコース転移を優先的に触媒する糖転移酵素の遺伝子に関するものであり、より具体的には、例えば澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質の非還元末端グルコース部の3位に、グルコース単位をα‐1→3結合する糖転移活性を有し、α‐1→3結合を分子内に含む糖類、特にニゲロース(3‐O‐α‐D‐グルコピラノシルグルコース)等のオリゴ糖を生成する活性を有する糖転移酵素の遺伝子に関するものである。
【0002】
更に本発明は、該遺伝子を含む組換えプラスミド、該プラスミドにより形質転換された生物(微生物、動植物細胞など)、該形質転換体を用いた糖転移酵素の製造法、該組換え酵素を用いた糖類の製造方法、特にニゲロース、ニゲロシルグルコース、ニゲロシルマルトース等のニゲロオリゴ糖の製造方法および遺伝子組換えによって得られる上記転移酵素に関するものである。
【0003】
本発明糖転移酵素は分子内にα‐1→3結合を含む糖類、特にニゲロオリゴ糖を製造するうえで産業上重要な酵素であり、本発明によって得られた形質転換体は本酵素を著量に生産し、これら酵素を用いる産業界(食品、医薬など)に大いに貢献するものである。
【0004】
【従来の技術】
オリゴ糖はその構成単糖、結合様式及び立体構造に応じ、従来から甘味料、医薬品、酵素の検定用基質、あるいは種々の薬品中間体などの用途に使用されている。天然のものに加え、これまでマルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、カップリングシュガー等のオリゴ糖が開発されている。
【0005】
近年、ニゲロース(3‐O‐α‐D‐グルコピラノシルグルコース)、ニゲロシルグルコース(3‐O‐α‐D‐グルコピラノシルマルトース)等のα‐1→3結合を分子中に有するニゲロオリゴ糖について、免疫賦活活性(特開平9−52834号公報)等の生理活性を有することが明らかにされた。また機能性食品素材(特開平3−22958号公報)としての用途についても注目され、本糖の安価な供給が望まれている。
【0006】
従来からα‐1→3結合のオリゴ糖は酒、蜂蜜、麹汁、ビール等に含まれることが知られているが、天然には極く僅かにしか存在しない。また本糖の生産方法としてはAspergillus niger の菌糸中に含まれる3‐O‐α‐D‐グルコピラノシルグルコースを構成糖として含むニゲランを部分酸加水分解する方法、あるいはα‐1→3結合、α‐1→4結合を有するElsinoe 属微生物産生の特種な多糖エルシナンをα‐アミラーゼで酵素分解(特開昭55−19004号公報)する方法が知られているが、本糖の安価な供給には至っていない。また一般に利用可能な澱粉分解物等の基質から本糖を酵素的または化学的に取得しようとする試みに関しても、公知のα‐グルコシダーゼによる縮合、転移反応では本糖は極く僅かしか生成しないほか(フジモト、H.、ニシダ、H.、及びアジサカ、K. 、: Agric.Biol.Chem.、52、1345- 、1988)、Aspergillus oryzaeの酵素による、マルトースからニゲロースの生成についても学術報告はあるもののの、その生成量は少なく実用上の価値は少なかった。
【0007】
ところで本発明者らは先に、Acremonium属に属するある種の菌株が、優先的にα‐1→3結合への転移反応を触媒する糖転移酵素を産生することを見いだしており、該酵素を用いて、適当な基質、特にマルトオリゴ糖に作用させ、α‐1→3結合を分子内に含むニゲロース等のオリゴ糖を高収率で製造する方法を提案している(特開平7−59559号公報)。
【0008】
ニゲロース等のオリゴ糖の大量生産の為には、本酵素の大量取得が望まれる。従来の菌株育種方法は、主として、紫外線や変異誘発剤によって得られる糖転移酵素生産菌の変異株を選抜する方法に限られていたため、安定な変異体を単離するのが困難な場合もある。また、従来法による育種の場合、好まざる形質変化を伴うことも多い。
【0009】
[発明の概要]
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記糖転移酵素の大量生産のためには、本酵素の遺伝子を取得し、遺伝子工学的にそれを生産することが望まれる。さらに、遺伝子を取得出来れば変異体を作成することにより、活性の高い酵素を得ることができ、更には蛋白工学の技術を用いて、耐熱性、耐pH性の向上、反応速度が増大された酵素を得ることも期待できる。
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、優先的にα‐1→3結合への転移反応を触媒する糖転移酵素の部分アミノ酸配列情報をもとに、当該酵素の生産菌(Acremonium sp. S4G13)から調製したcDNAライブラリーより当該酵素をコードする遺伝子を取得することに成功し、さらに酵母等の微生物での発現にも成功した。本発明はそれらの知見に基づいて完成されたものである。従って本発明は該酵素の遺伝子を提供するものである。さらに、該遺伝子を含む組換えプラスミド、該プラスミドにより形質転換された生物、該形質転換体を用いた組換え糖転移酵素及びその製造法、該組換え糖転移酵素を用いた、α‐1→3結合を分子内に含む糖類、特にニゲロオリゴ糖の製造方法を提供するものである。
【0012】
すなわち、本発明による糖転移酵素遺伝子は、澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質に作用して糖受容体へのα‐1→3結合のグルコース転移またはα‐1→3およびα‐1→4結合のグルコース転移を優先的に触媒する糖転移酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であり、より具体的には、配列番号2のアミノ酸番号1〜922で示されるアミノ酸配列またはアミノ酸番号30〜922で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列(該アミノ酸配列またはその1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列)を有し、かつ例えば、
澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質の非還元末端グルコース部の3位に、グルコース単位をα‐1→3結合する糖転移活性を有し、
α‐1→3結合を分子内に含むニゲロース(3‐O‐α‐D‐グルコピラノシルグルコース)等のオリゴ糖を生成する活性を有する糖転移酵素をコードするDNA配列である。
【0013】
本発明によるプラスミドは、上記のDNA配列を含む組換えプラスミドであり、本発明による形質転換体は上記の組換えプラスミドにより形質転換された細胞(微生物、動植物細胞等)である。
【0014】
本発明による糖転移酵素の製造法は、上記の形質転換細胞を培養し、この培養物中から、澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質に作用して糖受容体へのα‐1→3結合のグルコース転移またはα‐1→3およびα‐1→4結合のグルコース転移を優先的に触媒する糖転移酵素活性を有するタンパク質を採取することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明による組換え糖転移酵素は上記遺伝子の発現産物である。すなわち、本発明による糖転移酵素は、配列番号2のアミノ酸番号1〜922で示されるアミノ酸配列またはアミノ酸番号30〜922で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、かつ澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質に作用して糖受容体へのα‐1→3結合のグルコース転移またはα‐1→3およびα‐1→4結合のグルコース転移を優先的に触媒する糖転移酵素活性を有するタンパク質である。
【0016】
更にまた、本発明によるα‐1→3結合を分子内に含む糖類、特にニゲロオリゴ糖の製造方法は、上記組換え糖転移酵素を、澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質と接触させる工程を含んでなるものである。
【0017】
[発明の具体的な説明]
糖転移酵素遺伝子
上述のように、本発明による糖転移酵素遺伝子は、澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質に作用して糖受容体へのα‐1→3(またはα‐1→3およびα‐1→4)結合のグルコース転移を優先的に触媒する糖転移酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA配列であり、優先的にα‐1→3結合への転移反応を触媒する糖転移酵素の部分アミノ酸配列情報をもとに、当該酵素の生産菌(Acremonium sp. S4G13)から調製したcDNAライブラリーより当該酵素をコードする遺伝子を取得することに成功し、さらに酵母等の微生物での発現にも成功することによって決定されたものである。
【0018】
1)微生物の寄託
本発明の典型的な遺伝子を含むプラスミドpRNG11(後記する実施例6参照)で形質転換された、本発明糖転移酵素を著量に発現する酵母キャンディダ・ユティリスIFO0988RNG11は、工業技術院生命工学技術研究所に平成9年(1997年)6月5日に受託番号FERM BP−5959の番号のもと寄託されている。
【0019】
2)糖転移酵素遺伝子のクローニング
Acremonium より得られるα1→3結合(またはα1→3およびα1→4結合)をもたらす糖転移酵素には互いに性質の良く似た2種類の酵素が存在し、それぞれが分子量が異なる2つのサブユニットから成ることが明らかにされている。特定の蛋白質をコードする遺伝子を単離する場合、蛋白質の部分アミノ酸配列を決定し、その縮重コドンからなる混合オリゴヌクレオチドをプロープとして遺伝子ライブラリーから単離することが可能である。また、本発明において実施したようなPCRによる部分断片の取得の後、その断片をプロープとして遺伝子ライブラリーから単離することも可能である。しかしながら、本酵素のように酵素が2種類のサブユニットからなるヘテロオリゴマー分子である場合、2つのサブユニットがそれぞれ異なる遺伝子に独立してコードされる可能性がある。また、それらがひとつの遺伝子から由来するにしても2つのサブユニットをコードする領域が構造遺伝子のなかでどのような位置関係となっているかなどその構造については予測ができない。
【0020】
本発明者らは、まず前述した2種類の酵素のペプチドマップがほぼ同一であることを明らかにした。この結果は2種類の酵素のポリペプチド部分が同一であって、それらの分子量の違いは糖鎖修飾の差異によるものであることを示唆するものである。そして、このうちの1つについて2つのサブユニット双方の部分アミノ酸配列を決定した。さらにPCRによる部分断片の取得の後、その断片をプロープとしたcDNAのクローニングに成功し、遺伝子構造を解析することによってこれら2つのサブユニットが同一の遺伝子にコードされることを明らかにした。すなわち、α1→3結合をもたらす糖転移酵素は、それをコードする遺伝子から1つのポリペプチドとして生成され、まず、1〜29番目のペプチド(シグナルペプチド)が除かれた後、さらに490番目のアミノ酸のC端側で切断されることにより2つの成熟型サブユニットへとプロセスされていることが明らかにされた。
【0021】
従って、上記の典型的な遺伝子によってコードされる糖転移酵素は、配列番号2のアミノ酸番号1〜922、または30〜490および490番目のアミノ酸のC末端側でプロセシングを受けることにより生じた2つのサブユニットからなるものである。
【0022】
3)糖転移酵素をコードする遺伝子を含むDNA断片
本発明による糖転移酵素をコードしている遺伝子を含むDNA断片の具体例としては、図2に示される制限酵素地図で表されるDNA断片が挙げられる。この断片は、Acremonium属に属する菌体、より好ましくはAcremoniumに属するS4G13株より調製されるmRNAを鋳型としたcDNAライブラリーより単離することができる。Acremoniumに属するS4G13株からのその好ましい単離法については後記する実施例において詳細に説明されている。本発明による糖転移酵素遺伝子は、配列番号2(糖転移酵素遺伝子から推定されるアミノ酸配列およびそれをコードするDNAの塩基配列)のアミノ酸番号1〜922もしくはアミノ酸番号30〜922で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは複数(たとえば1もしくは数個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ上記の酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA配列である。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、本発明による糖転移酵素をコードするDNA配列の好ましい具体例としては、配列番号1(糖転移酵素遺伝子の全長を含むpNG3のEcoRI部位に挿入された断片の全塩基配列)に示される塩基配列の120番目から2885番目(配列番号2におけるアミノ酸番号1〜922に相当)までの塩基配列および塩基配列の207番目から2885番目(配列番号2におけるアミノ酸番号30〜922に相当)が挙げられる。
【0024】
蛋白質のアミノ酸配列が与えられば、それをコードする塩基配列は、いわゆるコドン表を参照して決定することができる。よって配列番号2に示されるアミノ酸配列をコードする種々の塩基配列を適宜選択することが可能である。本発明の好ましい態様において、配列番号2のアミノ酸番号1〜922または30〜922に示されるアミノ酸配列をコードするDNA配列 とは、配列番号1に示される塩基配列の120番から2885番または207から2885番の配列を有するもの、およびその縮重関係にあるコドンが使用されている部分以外は同一の塩基配列を有し且つ上記のアミノ酸をコードする塩基配列、更には該配列において1もしくは複数(たとえば1もしくは数個)のコドンが置換、欠失、挿入もしくは付加された塩基配列をも包含するものである。
配列番号1に示される塩基配列の120番から2885番または207から2885番までの配列を有するDNA断片は塩基配列が決定されていることから、そのDNA断片を取得する一つの手段は核酸合成の手法たとえば、DNA/RNAシンセサイザー(モデル392,アプライドバイオシステムズ)を用い、そのマニュアルに記載の方法に従って製造することができる。またこの配列は、前記したAcremonium属に属する菌体、より好ましくはAcremoniumに属するS4G13株から遺伝子工学的な手法を用いて得ることが出きる。例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Sambrook、 Maniatis ら、 Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989))などに記載の方法で好ましく行なうことができる。具体的な方法は、後記する実施例に詳細に説明されている。
【0025】
糖転移酵素
本発明による糖転移酵素は、以下の活性を保持することを特徴とするものである。すなわち、澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質に作用して糖受容体へのα‐1→3(またはα‐1→3およびα‐1→4)結合のグルコース転移を優先的に触媒する活性である。より具体的には、例えば澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質の非還元末端グルコース部の3位に、グルコース単位をα‐1→3結合してα‐1→3結合を分子内に含むニゲロース(3‐O‐α‐D‐グルコピラノシルグルコース)等のオリゴ糖を生成する活性、で特徴付けられる。従って本発明による糖転移酵素は、澱粉及びその分解物から、α‐1→3結合を分子内に含むニゲロース(3‐O‐α‐D‐グルコピラノシルグルコース)等のオリゴ糖を生成することができる。
【0026】
本発明の一つの態様による糖転移酵素のアミノ酸配列は、具体的には、配列表の配列番号2で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号1〜922のアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは複数(1もしくは数個)のアミノ酸の挿入、置換、または欠失、若しくは両末端への付加がなされたものであって、且つ上記した糖転移酵素活性を依然として保持する、改変された配列を包含するものとする。その改変配列における糖転移酵素活性の保持とは、その活性を利用した実際の使用態様において、配列番号2に示される配列を全て有するポリペプチドと、同一の条件でほぼ同様の利用が可能な程度の活性が維持されていることをいうものとする。このような改変された配列は、配列番号2に示されている配列を参照すれば、当業者であれば格別の困難なしに選択し、製造可能であることは明らかである。
【0027】
さらに、本発明の別の態様によれば、配列表の配列番号2のアミノ酸番号30番から922番までに示されるアミノ酸配列が提供される。この配列は、本酵素が培地に分泌される過程で、1〜29番に存在するペプチドが切断されることにより得られる場合のものであり、培地中に回収される酵素は、天然体であっても組換え体であっても実質的にこの配列を含む(上記改変配列を包含する)ものである。さらに前述のように、部分アミノ酸配列分析、および遺伝子構造解析によって天然体の2つのサブユニットが、前駆体ポリペプチドがその490番目のアミノ酸のC末端側で切断されることにより生じたものであることが明らかにされている。従って、本発明のもう一つの態様による糖転移酵素のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2で示されるアミノ酸配列のアミノ酸番号30〜922のアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは複数(1もしくは数個)のアミノ酸の挿入、置換、または欠失、若しくは両末端への付加がなされたものであって、且つ上記した糖転移酵素活性を依然として保持する改変された配列を包含するものとする。
【0028】
本発明による糖転移酵素遺伝子によってコードされるタンパク質には、性質の良く似た2種類の酵素が存在し、これらのペプチドマップがほぼ同一であることは前述したところであり、他方の酵素タンパク質は上記改変配列に包含されるものである。なお、後述のように本発明遺伝子を酵母で分泌発現させた場合、この酵素タンパク質は糖鎖が結合した形で得られ、糖鎖の切断によって糖鎖のない酵素タンパク質とすることができるが、これらも糖転移酵素活性を保持している限り本発明の酵素に包含される。
【0029】
Acremonium に属するS4G13株
本発明によるDNA断片の起源として有用なAcremoniumに属するS4G13株は、本発明者らが群馬県の土壌から分離した菌株であって以下のような性質を示すものである。
(1)成育
麦芽寒天培地、ツアペック培地、オートミール培地、PDA培地、MY培地での成育は緩やかであり、20℃ 10日間で直径15−36mmに達する。集落は最初やや黄色を帯びた白色で、後に淡橙色を呈する。
【0030】
気生菌糸は直立で盛り上がり、放射しわ状を呈する。成育はpH4〜10.5で最適pHは中性付近、成育温度範囲は摂氏20〜35度で、最適成育温度は摂氏25〜30度である。
(2)形態
菌糸の直径は0.5〜3.0μmで、無色で菌糸には隔壁が認められる。
(3)分生子
分生子は亜球形(1〜2X4〜5μm)で、無色、球状に塊る。分生子柄は無色で細長く先細りし、無分岐あるいは輪生状に菌糸側面より突出している。
【0031】
以上に示した性質を菌類分類法に照合すると、本菌はAcremonium属に属しており、Acremonium sp. S4G13と命名した。本菌は平成5年8月2日付けにて工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP-4373として国際寄託されている。本発明による糖転移酵素遺伝子(DNA配列)の由来源としては、Acremonium属に属し、かつまた上述の性能を有する真菌、例えばAcremonium sp. S4G13およびその変種がその代表例としてあげられる。
【0032】
上記の菌体の培養にあたっては、培地に菌体を接種し、常法に従い培養すればよい。培地中には、資化しうる炭素源及び窒素源を適量含有せしめると好ましい。この炭素源窒素源については、特に制限はないが、例えば、コーングルテン、大豆粉、コーンスティープリカー、カザミノ酸、酵母エキス、ペプトン、肉エキス等が挙げられる。
【0033】
一方炭素源としては、α‐1→4グルコシド結合を有するポリサッカライドまたはオリゴサッカライド、例えば澱粉やその分解物、加工物やマルトース、マルトオリゴ糖などの資化し得るマルトオリゴ糖が挙げられる。中でも、マルトース、マルトオリゴ糖などが好ましい。その他に、リン酸、Mg2+、Ca2+、Mn2+、Co2+、Na+、K+等の無機塩や、さらに有機微量栄養源を適宜培地中に添加することもできる。
【0034】
糖転移酵素をコードする遺伝子の発現/糖転移酵素の製造
1)発現ベクター
本発明による糖転移酵素をコードするDNA断片を、宿主細胞内で複製可能であるか、あるいは染色体に組み込まれかつ同遺伝子が発現可能な状態で含むDNA分子、特に発現ベクターの形態として宿主細胞の形質転換を行なえば、宿主細胞において本発明による糖転移酵素を産生させることができる。
【0035】
従って、本発明によれば、さらに本発明による糖転移酵素をコードする遺伝子を含んだDNA分子、特に発現ベクターが提供される。このDNA分子は、ベクター分子に本発明による糖転移酵素をコードするDNA断片を組み込むことによって得ることが出きる。本発明の好ましい態様によれば、このベクターはプラスミドである。
【0036】
本発明によるDNA分子の作成は、前掲のMolecular Cloning:A Laboratory Manualに記載の方法に準じて行なうことが出きる。
【0037】
本発明において利用されるベクターは、使用する宿主細胞の種類を勘案しながら、ウイルス、プラスミド、コスミドベクターなどから適宜選択できる。例えば、宿主細胞が枯草菌の場合はpUB系のプラスミド、大腸菌の場合はλファージ系のバクテリオファージ、pBR、pUC系のプラスミド、酵母の場合はYEp、YCp系、YIP系のベクター、あるいは後記する実施例で使用されるpCRAL10、pCRAL11が挙げられる。
【0038】
このプラスミドは形質転換体の選択マーカーを含むのが好ましく、選択マーカーとしては薬剤耐性マーカー、栄養要求マーカー遺伝子を使用することができる。
【0039】
さらに、本発明による発現ベクターとしてのDNA分子は、糖転移酵素遺伝子の発現に必要なDNA配列、例えばプロモーター、ターミネーター、リボゾーム結合部位、転写終結シグナルなどの転写調節信号、翻訳調節信号などを有しているのが好ましい。
【0040】
プロモーターとしては、枯草菌においてはズブチリシン、SPAC等のプロモーター、酵母ではアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、酸性フォスファターゼ(PHO)、ガラクトース遺伝子(GAL)、グリセルアルデビド3リン酸脱水素酵素遺伝子(GAP)等のプロモーターが好ましく用いることができる。配列番号2に示しているアミノ酸配列のアミノ酸番号1番から922番までの配列にはシグナルペプチドを含んでおり、後記する実施例で示すようにこの配列をそのまま、酵母由来のプロモーター、ターミネーターに挿入し酵母に導入して分泌発現をさせることが出きる。シグナルペプチドの使用は、培養上清からの精製も容易になるので好ましい。また、シグナルペプチドを酵母由来のもの(たとえばインベルターゼシグナル、酸性フォスファターゼシグナル、α‐ファクターシグナルなど)に置き換えることも好ましい。また、大腸菌においては、一般に慣用されるlacプロモーターを用いたところ目的の酵素は発現されなかったが、プロモーターとしてラクトースオペロン(lac )、トリプトファンオペロン(trp )等を用い、シャペロニンを同時に発現させる等の工夫をすれば発現が可能になることも考えられる。
【0041】
2) 形質転換体/培養
本発明によれば、更に上記の発現ベクターを適当な宿主細胞に導入した形質転換細胞、および形質転換細胞を培養して培養物から糖転移酵素を得る糖転移酵素の製造法が提供される。
【0042】
形質転換細胞の培養は、使用宿主細胞に関して一般的な方法を用いることができ、通常1〜4日程度の培養により細胞内または細胞外の培養物中に糖転移酵素が生成蓄積される。培養条件(培地、pH、温度等)に関しては、例えば、細菌では25〜37℃、酵母では25〜30℃、真核細胞では37℃程度が一般的であり、たとえば遺伝子発現実験マニュアル(講談社)等を参照することができる。
【0043】
宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌等の細菌、Candida utilis、Saccaromyces cerevisiae 、Pichia Pastoris等の酵母以外に、高等真核生物(例えばCHO細胞など)を用いることができる。枯草菌としてはBacillus属に属する微生物を用いることが好ましい。該属には蛋白質を菌体外へ分泌する株(たとえば、Bacillus subtilisなど)が存在することが知られている。またプロテアーゼを殆ど分泌しない株も知られており、このような株を宿主として用いることも好ましい。本発明においては、宿主細胞として酵母または細菌が好ましいが、酵母がより好ましく、特にCandida utilisが好ましい。後記する実施例に示すように、食用酵母であるCandida utilisを宿主としてGAPプロモーターの支配下にこの遺伝子を発現させたところ、培地及びペリプラズム中に高い酵素活性が認められた。酵母で発現させた場合、糖鎖が結合した形で分泌されるが、必要に応じて切断酵素(Endo-Hなど)により糖鎖を切断することができる。さらに蛋白質の解析から、酵母においても天然型の酵素同様、N端のシグナルの除去、ポリペプチド内部での切断(サブユニットの形成)が生じることが明らかにされた。このことにより、組換え体において本発明遺伝子を発現することによって活性型の本糖転移酵素を大量に生産可能であることが示された。大腸菌を宿主とした場合、本酵素は全く発現されなかったのに対して酵母では発現した上、培地中に分泌された。さらにカビ(Acremonium S4G13株)と同一の部位でシグナルペプチドが切断された上、酵素自体もSDS−PAGEでヘテロダイマーになることが確認された。このことは、カビと同様に内部配列がプロセシングを受けたと考えられ、全く予想されないことであった。
【0044】
かくして調製された形質転換体の産生する組換え糖転移酵素の単離・精製には、公知の分離、精製方法を適当に組み合わせて行なうことが出きる。これらの分離、精製方法としては例えば塩沈殿、溶媒沈殿のような溶解性の差を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過およびSDS−ポリアクリル電気泳動のような分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーのような電荷の差を利用する方法、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーのような疎水性の差を利用する方法、さらに等電点電気泳動のような等電点の差を利用する方法等が挙げられる。具体的には、例えば実施例7に記載のように糖転移酵素を精製できるが、一般的な分離・精製法に関しては例えば蛋白質・酵素の基礎実験法(南江堂)等を参照することができる。
【0045】
α‐1→3結合を分子内に含む糖類の製造
本発明によれば、上記の組換え糖転移酵素を用いたα‐1→3結合を分子内に含む糖類、特にニゲロース等のオリゴ糖の製造方法が提供される。すなわち、本発明によるオリゴ等の製造法は、上述のような本発明による糖転移酵素を、澱粉およびその分解物から選択される基質に作用させることを特徴とするものである。ここで澱粉の分解物とは、アミロース及びアミロペクチンの分解物の他、マルトオリゴ糖等をも包含するものである。基質としては澱粉、アミロースおよび/またはアミロペクチンの分解物、マルトオリゴ糖等をそれぞれ単独で用いても構わないが、α‐1→3結合を分子内に含むニゲロース等のオリゴ糖の製造法の好ましい態様によれば、本発明による組換え糖転移酵素とデンプン分解物、更に好ましくはマルトオリゴ糖と混合し、接触させることにより、α‐1→3結合を分子内に含むオリゴ糖(通常は種々の重合度の混合物)を効率よく製造することができる。
【0046】
本発明糖転移酵素の好ましい基質であるデンプン分解物のグルコース重合度は特に制限されないが、たとえば、α‐1→3結合を分子内に含むオリゴ糖をシロップとして使用するのが一般的である食品の場合には、重合度は2〜10程度、特定重合度・高純度品を使用することを要求される医薬用途の場合には、所望のオリゴ糖重合度・純度に適した基質の重合度・種類を選択すれば良い。
【0047】
本発明糖転移酵素と基質との混合割合は、酵素の形態(乾物、溶液など)やその他の反応条件によって大きく変化するが、通常糖転移酵素1Uに対して基質0.0005〜0.5g、好ましくは糖転移酵素1Uに対して基質0.001〜0.1gである。また反応条件に関しては、通常pH4〜10、好ましくは6〜9、温度30〜65℃、好ましくは40〜60℃、反応時間3〜96時間、好ましくは12〜48時間である。
【0048】
基本的には、得られるオリゴ糖の重合度は、糖受容体となる基質のグルコース重合度に依存し、重合度の大きい基質を使用しても反応時間を長くすれば重合度の小さいオリゴ糖を得ることもできるが、重合度の小さいオリゴ糖を糖受容体として含む基質を使用すれば、短時間でより効率的にα‐1→3結合含有の低重合オリゴ糖を得ることができることはいうまでもない。
【0049】
生成したα‐1→3結合を分子内に含む目的のオリゴ糖は、通常の糖の分離精製法、たとえば脱色、脱塩、濃縮糖を適宜組み合わせることにより精製することができる。オリゴ糖の分離・精製の一般的方法に関しては、例えば澱粉・関連糖質実験法(学会出版センター)等を参照することができる。
【0050】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、これは本発明を更に具体的に説明するためのものであり、本発明が以下の実施例の範囲のみに限定されるものではない。また、操作手順は特に記載しない限りMolecular Cloning: A Laboratory Manual (Sambrook、 Maniatis ら、 Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989))に記載の方法に従った。また、以下の実施例に於て使用される本発明糖転移酵素に特異的な活性測定方法は、本発明者らが以前用いた方法に従った(特開平7−59559号公報)。この活性測定方法の概要を示せば、以下の通りである。
【0051】
<HPLCを用いた糖転移酵素の測定方法>
特開平7−59559号公報に従い、酵素液0.2mLに対して2%マルトース(20mM リン酸ナトリウム pH7.0に溶解したもの)0.4mLと40℃で1時間反応させた。100℃5分で反応を停止した後、30U/mLのグルコアミラーゼ(生化学工業、1M酢酸ナトリウムpH4.5に溶解したもの)0.1mLと40℃、2時間反応させた。このサンプルについても100℃、5分で反応を停止した後、以下の条件のHPLCで分析した。
カラム:Aminex HPX-42A(Bio-Rad)
移動相:超純水
カラム温度:80℃
流速:0.6ml/min.
検出器:RI
上記条件下で、ピーク面積で全糖中1%のニゲロシルグルコースを生成する酵素濃度を、1U/mLと便宜的に定義した。
<本酵素のα‐グルコシターゼとしての活性測定方法>
特開平7−59559号公報と同様に行なった。即ち、試験管にあらかじめ1.0mLの0.1Mリン酸緩衝液pH7.0、および0.5mLの基質溶液(20mM PNPG(シグマ)水溶液)を加え37℃5分間加熱を行なった。その後、酵素溶液0.5mLを加え37℃で15分間反応させた後、2.0mLの0.2M Na2CO3溶液を加えて反応を停止させた。この溶液について400nmの吸収の変化を測定し生成したp‐Nitrophenol の量を測定し、1分間に1μMのp‐Nitrophenol を生成する活性を1unitと定義した。
【0052】
[実施例1] 糖転移酵素の精製および部分アミノ酸配列の決定
菌体の培養、および酵素精製は特開平7−59559号公報に記載されている方法(実施例1〜4)に従った。Acremonium sp. S4G13株(受託番号FERM BP- 4373の番号で工業技術院生命工学技術研究所に寄託されている)において上記酵素は2種存在する。糖転移酵素(1)、糖転移酵素(2)のそれぞれについて精製を行なった。糖転移酵素(1)、糖転移酵素(2)の両者ともSDS−PAGEでヘテロダイマーであり、分子量は糖転移酵素(1)で約128000と約53000、糖転移酵素(2)で約70000と約53000であった。各糖転移酵素のそれぞれのサブユニット、計4サブユニットについて、部分アミノ酸配列分析を岩松(生化学 63、139〜143(1991))の方法により、またN末端アミノ酸配列分析をMatsudaira T (J. Biol.Chem. 262, 10035〜10038 ( 1987 ))の方法により行なった。
精製酵素を泳動用緩衝液(10%グリセロール、2.5%SDS、2% 2−メルカプトエタノール、62mMトリス塩酸緩衝液(pH6.8))に懸濁させて、SDSポリアクリルアミド電気泳動に供した。泳動後、エレクトロブロッティングにより当該酵素をゲルより10cmX7cmのPVDF膜((ProBlot)アプライド バイオシステムズ)へ転写した。エレクトロブロッティング装置としてはザルトブロットIIs型(ザルトリウス社)を用い、(島津製作所編の(プロテインシーケンサの試料前処理方法について(1))にしたがって、エレクトロブロッティングを160mAで1時間行なった。転写後、当該酵素の転写された部分の膜を切り取り、その一部を直接気相プロテインシークエンサーで分析し、N末端アミノ酸配列を決定した。また残りの膜は約300μlの還元用緩衝液(8M グアニジン塩酸、0.5M トリス塩酸緩衝液(pH8.5)、0.3%EDTA、2%アセトニトリル)に浸し、1mgのジチオスレイトール(DTT)を加え、アルゴン下で25℃、約1時間の還元を行なった。これに3.0mgのモノヨード酢酸を0.5N水酸化ナトリウム液10μlに溶かしたものを加え、遮光下で20分攪拌した。PVDF膜をとりだし、2%アセトニトリルで充分洗浄した後、0.5%ポリビニルピロリドン−40を含む100mM酢酸に浸し、30分間静置した。こののち、PVDF膜を水で充分洗浄し、1mm四方に切断した膜を消化用緩衝液(8%アセトニトリル、90mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0))に浸し、アクロモバクタープロテアーゼI(和光純薬)を1pmol加え、室温で15時間消化した。その消化物をC18カラム(和光純薬 Wakosil AR II C18 300オングストローム 2.0X150mm )を用いた逆相高速液体クロマトグラフィー(日立 L6200)により分離し、各サブユニットについて10種類のペプチド断片を得た。ペプチドの溶出溶媒としてはA溶媒(0.05%トリフルオロ酢酸)、B溶媒(0.02%トリフルオロ酢酸を含む2−プロパノール/アセトニトリル 7:3)を用い、溶出はB溶媒に関し、2〜50%の直線濃度勾配で0.25mL/minの流速で40分間溶出させることにより行なった。糖転移酵素(1)と糖転移酵素(2)のペプチドマップに差が観察されなかった為、糖転移酵素(1)と糖転移酵素(2)の違いは糖鎖の修飾等の違いによるものと予想した。そこで、糖転移酵素(2)についてのみ、得られた断片化ペプチドについてアミノ酸配列分析を行なった。分子量約70000の断片を2−AP、分子量約53000の断片を3−APと命名した。得られた断片化ペプチドについてのアミノ酸配列決定試験を、気相プロテインシークエンサーPPSO−10型(島津製作所)を用いマニュアルに従って自動エドマン分解法により行なった。以下に得られた部分アミノ酸配列、およびN末端アミノ酸配列を記す。部分アミノ酸配列に用いたアクロモバクタープロテアーゼIはリジン残基のカルボキシル基側を特異的に切断する為、以下の配列にN末端側に括弧書きでK(リジン)を記す。2-AP-8はN末端アミノ酸配列であることが判明したため、括弧書きのK(リジン)を除いた。2−APの消化物については、C18カラム(ジーエルサイエンス Inertsil ODS-3 0.5x40mm)を用いた逆相高速液体クロマトグラフィー(日立 L6200)をオンライン化した質量分析機(PE Sciex API−III)で質量分析も合わせて行なった。この際の逆相高速液体クロマトグラフィーの結果を図1に、また断片化ペプチドの質量分析結果を表1に示す。
Bはカルボキシメチルシステインを表す。
なお、表1におけるアミノ酸配列中の各アミノ酸の略号は、B以外はIUPAC−IUBに基づくものである。
表1中、得られた質量のうち、質量(M+H+)4167.2を有する断片はAP2.3の分子量にほぼ一致し、そのC末端にK(リジン)を有さないことから、この断片化ペプチドが2−APのサブユニットのC末端断片であると推定した。すなわちアクロモバクタープロテアーゼIで消化した断片は、その酵素の基質特異性により、サブユニット自身のC末端断片以外の断片はK(リジン)がC末端アミノ酸残基となるためである。またN末端アミノ酸配列の決定は2−APについてのみ行なった。
【0053】
[実施例2] Acremonium sp. S4G13株cDNAライブラリーの作製特開平7−59559号公報に記載の方法(実施例1)に従って、Acremonium sp. S4G13株の菌体を取得した。菌体11.8gよりRNA Extraction Kit(Pharmacia Biotech)を用いてトータルRNAを抽出した。抽出したトータルRNAからmRNA Purification Kit (Pharmacia Biotech)を用いてmRNAを精製した。mRNAよりoligo(dT)をプライマーとしてSuperScriptTM Choice System for cDNA Synthesisキット(GIBCO BRL)を用いてcDNAを合成しEcoRIアダプターを接続し、EcoRIで消化したλZipLoxTM(GIBCO BRL)に接続(ライゲーション)した。GigapackIII Gold(Stratagene)を用いてパッケージングを行いライブラリーを完成させた。
【0054】
[実施例3] 糖転移酵素cDNAのクローニング
2‐AP‐4、2‐AP‐5、3‐AP‐6、3‐AP‐9の部分アミノ酸配列を基にそれぞれセンスプライマー、アンチセンスプライマーを設計し、実施例2で得たmRNAを鋳型として12通りのRT‐PCRを行なった。このうち2‐AP‐4(センスプライマー)、2‐AP‐5(アンチセンスプライマー)の組み合わせ以外に驚くべきことに、2‐AP‐4(センスプライマー)、3‐AP‐6(アンチセンスプライマー)の組み合わせにも増幅断片が認められた。以下に2‐AP‐4(センスプライマー)、3‐AP‐6(アンチセンスプライマー)の配列を示す。使用している記号は全てIUPAC−IUBに基づく。
上記プライマーを用いたRT−PCRの条件を以下に示す。逆転写反応はランダムプライマー(宝酒造)を用いて、逆転写酵素はSuper Script TM RNaseH Reverse Transcriptase (GIBCO-BRL)を用い、添付のバッファーを用いて行なった。PCRの条件は95度30秒、50度1分、72度1分 で25サイクル行なった。結果約0.9kbの断片が増幅された。この断片についてTAクローニングキット(Invitrogen)を用いてpT7Blueにサブクローニングを行なった。この断片について塩基配列をオートシークエンサーABI370A(アプライド・バイオシステムズ)を用いて両側から決定し、アミノ酸配列に変換したところ2-AP-4、3-AP-6と共に2-AP-11の配列が存在し、この断片が糖転移酵素遺伝子の一部であることを確認した。又、同時に本酵素の2つのサブユニットはそれぞれ同一の遺伝子にコードされていることを確認した。上記約0.9kbの断片をプローブとしてスクリーニングに用いた。プローブはMegaprime DNA labelling systems (Amersham)を用いα−32P dCTP(110TBq/mmol)でラベルを行ない、ライブラリーより約50.000クローンからプラークハイブリダイゼーションを行ない、22個のポジティブクローンを得た。3個のクローン(No.3,6,21)について2次スクリーニングを実施してシングルプラークを得た。これらのクローンについて制限酵素解析を行なった結果を図2に示す。No.3クローンのみ上流領域を長く含むクローンであった為、このクローンについて解析を行なった。この約3kbのEcoRI断片についてはpUC118(宝酒造)のEcoRI部位に挿入した。このプラスミドをpNG3と命名する(図3)。
挿入されていた約3kbのEcoRI断片について塩基配列の決定を行なった。すなわち、pBluescriptII KS+ (Strategene)、またはpUC118(宝酒造)に細分化した断片をサブクローニングし、さらにエキソヌクレアーゼIIIおよびマングビーンヌクレアーゼを用いた連続した欠失変異体を作製することにより、種々の変異欠失をもつプラスミドを作製し、2985bpからなるEcoRI断片の配列を決定した(配列番号1)。
予想される構造遺伝子の領域の解析を行なったところ、922個から構成されるアミノ酸配列をコードするオープンリーディングフレームが存在し(配列番号2)。このアミノ酸配列が決定した部分アミノ酸配列の全てを含んでいることを確認した。また決定したN末端アミノ酸配列も含んでいることを確認した。
【0055】
[実施例4] 糖転移酵素のオープンリーディングフレームの取得
実施例3で確認した922アミノ酸をコードしているオープンリーディングフレームについて、5’上流側にXbaIサイト、3’側にBglIIサイトを付加し、pNG3を鋳型としてPCRを行ない増幅断片を得た。以下にセンス、アンチセンスのプライマー配列を記す。
pUC12のHindIII、PstI部位をクレノウでブラントにした後、BglIIリンカー(GAGATCTG)を挿入しpUC12Bglを作製した。プライマーNigeNF とNige-Rを用いてpNG3から増幅させた断片をpUC12BglのXbaI、BglII部位に挿入し、pUC12NigeSと命名した。
pUC12NigeSはLacZとの融合蛋白として糖転移酵素を発現できるように設計されている。本プラスミドを用いて大腸菌(DH5(東洋紡績))の形質転換を行なった。得られたクローンについて3mlの2xYT培地(100μg/mlのアンピシリンを含む)で37℃12時間培養を行なった。菌体を1500gで10分間遠心を行ない回収した。この菌体について、200μlの50mM Tris‐HCL(pH7.5)を加えて超音波破砕(トミー、モデルUR‐20P)を行なったのち再度15000gで10分間遠心を行ない、上清を粗酵素とした。HPLCを用いた糖転移酵素の測定を行なったが、本糖転移酵素活性を確認することはできなかった。
【0056】
[実施例5] GAP遺伝子プロモーター/ターミネーターを含む糖転移酵素発現プラスミドの構築
キャンディダ・ユティリスのグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP)遺伝子のプロモーター、ターミネーター断片は、それぞれJ.Bacteriol.177:7171-7177(1995)記載の方法に従って得たCandida utilis IFO0988株由来のゲノムDNAを鋳型としてPCRにより取得した。プロモーターとしては、開始コドン上流-976から開始コドン直前-1までの974bpの断片(開始コドンAを+1とする)を以下のプライマーを用いて取得した。
これらプライマーにおいては5’側プライマー末端にNotIサイト、3’側開始コドン直前にXbaIとBamHIサイトをそれぞれ付加して合成した。また、ターミネーターとしては、終止コドン直後+1006から+1728までの723bpの断片を取得した。プライマーとしては、
を用い、5’側終止コドン直後にはBamHIサイト、3’側にPstIサイトを付加して合成した。得られた2つの増幅断片はTAクローニングキット(Invitrogen社)を用いてpT7Blueにクローニングした。これら2つの断片はそれぞれ、NotI-BamHI断片と、BamHI-PstI断片として取得した後、pBluescriptSK-のNotIとPstI間にクローニングして、プラスミドpGAPPT10を構築した。
pUC12NigeSについてはインサート領域をpGAPPT10のXbaI,BamHI部位に挿入しpGAPNG1を作製した(図4)。
【0057】
[実施例6] キャンディダ・ユティリス rDNA遺伝子座をターゲットとしたキャンディダ・ユティリス組み込み用糖転移酵素発現ベクターの構築
プラスミドpCLRE2(J.Bacteriol、177:7171-7177、95)からApaI分解により得られるribosomal DNAを含む約1.2kbの断片をpBluescriptSK-のApaIサイトにクローン化してプラスミドpCRA1を構築した。次にpCRA1をXhoIで分解後、クレノウ酵素処理により平滑末端とし、SphIリンカー(5′GGCATGCC3′)を付加してpCRA2を作製した。
また、pCRA1をAsp718で分解後、クレノウ処理により平滑末端とし、NotIリンカー(5′AGCGGCCGCT3′)を付加してpCRA3を作製した。このプラスミドをNotIとBglIIで分解することにより、0.5kbと0.7kbのNotI-BglII断片を回収した。一方、pUC19 をHindIIIとEcoRIとで分解した後、クレノウ処理によりそれぞれを平滑末端とした後BglIIリンカー(5′CAGATCTG3′)を連結して構築したプラスミドpUCBglをBglII分解した後、2種類のNotI-BglII断片をクローニングしてpCRA10を構築した(図5)。また、マーカー遺伝子とするシクロヘキシミド耐性型L41遺伝子に関しては、染色体に組み込まれるベクターのコピー数をコントロールするために、プロモーターの長さの異なる2種類の断片をPCRにより取得した。すなわち、-405から+974までの断片と-184から+974までの断片の2種類を取得した(開始コドンATGのAを+1とする)。この際、遺伝子の5’側プライマー末端にはPstIサイトを付加し、3’側プライマー末端にはSalIサイトをもつ様にデザインした。PCRに用いたプライマーの配列は、L41遺伝子の5’側プライマーとして、
3’側プライマーとして、
である。また、鋳型としてはpCLRE2を用いた。2つの増幅断片はTAクローニングキット(Invitrogen社)を用いてプラスミドpT7Blueにクローニングした。構築したそれぞれのプラスミドからこれら2種類の断片をPstI-SalI断片として切り出してpCRA10に連結することにより、長いL41遺伝子断片を含むプラスミドpCRAL10と短いL41遺伝子断片を含むプラスミドpCRAL11とを構築した(図5)。
これらのプラスミドpCRAL10とpCRAL11においては組み込みのターゲット配列となるrDNA断片が2分割され、その間にAmp耐性遺伝子を含むpUCプラスミド由来の配列を組み込んだ構造となっている。このベクターは、BglIIサイトで分解してから形質転換に用いるため、形質転換体にはターゲットDNA配列とその間のマーカー遺伝子が組み込まれるが、pUCプラスミド由来のDNA配列は組み込まれないという特徴を有する。
pGAPNG1よりNotI-PstI断片として発現カセットを回収し、pCRAL10、pCRAL11のNotI、PstI部位に挿入し、pRNG10、pRNG11を構築した(図6)。
【0058】
[実施例7] 糖転移酵素のキャンディダ・ユティリスでの発現、および同組換え糖転移酵素を用いたニゲロオリゴ糖の製造
プラスミド、pRNG10、pRNG11、pCLRE2について各10μg、BglIIで分解した後、キャンディダ ユティリスATCC9950株を形質転換した。形質転換は電気パルス法(WO/95/32289号実施例10参照)により行なった。パルス条件は電気容量を25μF、抵抗値を1000オーム、電圧を5KV/cmとして行なった。
pRNG10、pRNG11由来の株について1株ずつそれぞれIFO0988RNG10株、IFO0988RNG11株と命名した。そして、菌体内、培養上清、およびペリプラズムの3画分について糖転移酵素の活性確認を行なった。10mLのYPD培地(40μg/mLシクロヘキシミドを含む)で30度3日間培養した菌について、1500g、5分間、4度で遠心を行い培養上清と菌体を分離し、菌体は蒸留水で洗浄した。菌体についてバイオマニュアルシリーズ、酵母による遺伝子実験法(羊土社 p128〜130)の方法に準じて菌体内、およびペリプラズムに分画した。すなわち50mM Tris-HCl pH 7.5 5mM MgCl2 3mM DTT 1Mソルビトール 1mM PMSFバッファーを2倍量(1mL)加え、よく懸濁した。200μL(5mg/mL)のザイモリエース100T(生化学工業)を加えて30度1時間保温した後、1500g、5分間、4度で遠心を行なった。沈殿について上記バッファー1mLでの洗浄を3回繰り返し、これら上清画分をペリプラズム画分とした。沈殿については500μLのグラスビーズを加え、ボルテックスを行ない50mM Tris-HCl pH 7.5 で3回抽出し、遠心した上清を菌体内画分とした。活性測定は前記HPLCを用いた方法にしたがった。ポジティブコントロールであるAcremonium培養上清より精製した酵素(特開平7−59559号公報実施例1参照)と反応させたサンプルと同様に、IFO0988RNG10株、IFO0988RNG11株についても培養上清画分、およびペリプラズム画分と反応させたサンプルからニゲロース、ニゲロシルグルコース、ニゲロシルマルトースと一致するピークが得られた。図7に以下の条件でIFO0988RNG11株の培養上清画分とマルトースとを反応させ、グルコアミラーゼで処理した反応液のHPLCチャートを示す。
酵素液20μLに対して2%マルトース(20mM リン酸ナトリウム pH7.0に溶解したもの)40μLと40℃で1時間反応させた。100℃5分で反応を停止した後、30U/mLのグルコアミラーゼ(生化学工業、1M酢酸ナトリウムpH4.5に溶解したもの)10μLと40℃、2時間反応させた。このサンプルについても100℃、5分で反応を停止した後、以下の条件のHPLCで分析した。
カラム:Amide-80(東ソー)
移動相:65%アセトニトリル
カラム温度:30℃
流速:1ml/min.
ネガティブコントロールである、シクロヘキシミド遺伝子のみを含むpCLRE2で形質転換した株の培養上清を用いたものからは対応するピークは検出されなかった。そこでIFO 0988RNG11株の培養上清を7倍濃縮し、脱塩をおこなったものを粗酵素として、10%マルトースと反応させ、ニゲロシルグルコースに対応するピークを上記条件のHPLCを用いて分取した。分取したサンプルをエバポレーターで濃縮したものについて1H、13C−NMR分析により、これがニゲロシルグルコースと一致することを確認した。表2に培地1mLあたりの本糖転移酵素の活性(生産量)を示す。なお、培養上清についてα‐グルコシダーゼとしての活性を測定したところ1.3×10-3u/mlであった。
また培養上清を14倍濃縮したもの、ポジティブコントロールであるAcremoniumより精製した酵素、及びネガティブコントロールであるpCLRE2で形質転換した株の培養上清を14倍濃縮したものについて、EndoHで処理し(生化学工業、プロトコールに従って処理を行なった)、SDS-PAGEを行なったところ、遺伝子から予想される位置にIFO0988RNG11株由来の組換え糖転移酵素はポジティブコントロールであるAcremonium由来の精製酵素とほぼ完全に一致してバンドが現われた(図8)。本酵素はAcremoniumに於ては、プロセシングを受けるが、組換え体に於ても同様なプロセシングを受けることを確認した。またIFO0988RNG11株培養上清由来の組換え糖転移酵素についても実施例1の方法に従って、N末端アミノ酸配列を決定したところ、Acremoniumより精製した酵素のアミノ酸配列と同一であることを確認した。
【0059】
【発明の効果】
本発明により、特にニゲロオリゴ糖の生成に重要な糖転移酵素および該酵素タンパク質をコードするDNA配列、このDNA配列を含む発現ベクターおよび形質転換体、該形質転換体を用いた糖転移酵素の製造法、該糖転移酵素を用いたニゲロオリゴ糖の製造法が提供された。
本発明において、同一機能を有する2種類の酵素のペプチドマップの近似性、上記糖転移酵素の全アミノ酸配列、該酵素の2つのサブユニットのアミノ酸配列が明らかにされた。また、上記の酵素タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列、および上記2つのサブユニットが同一の遺伝子によってコードされていることが明らかにされた。このことは、酵素が2種類のサブユニットからなるヘテロオリゴマー分子の場合、2つのサブユニットがそれぞれ異なる遺伝子に独立してコードされる可能性があり、また、たとえそれらが一つの遺伝子に由来するとしても、2つのサブユニットをコードする領域が構造遺伝子の中でいかなる位置関係になっているかなど、その構造については予測ができないことからすれば、思いがけなかったことと解される。
本発明によれば、ニゲロオリゴ糖の生成に重要な糖転移酵素タンパク質をコードする遺伝子の取得および酵母等の微生物での発現(糖転移酵素の産生)に成功し、本発明DNA配列を含む形質転換体により、該糖転移酵素を著量に製造することができる。特に、食用酵母であるCandida utilisを宿主としてGAPプロモーターの支配下にこの遺伝子を発現させると著しく高い酵素活性が認められる。大腸菌を宿主としてDH5を使用した場合には酵素は全く発現せず、本発明糖転移酵素遺伝子のシグナル配列が、カビ(Acremonium)のみならず酵母でも正しく機能して著量の糖転移酵素の菌体外分泌を達成することが可能であったこと、また該酵素自体もヘテロダイマーになることが確認されたことは予測のできなかったことである。
【0060】
【配列表】
【0061】
【図面の簡単な説明】
【図1】2‐AP消化物の逆相高速液体クロマトグラフィーの結果を示した図である。
【図2】糖転移酵素遺伝子を含む各種クローンの制限酵素地図である。
【図3】糖転移酵素遺伝子の全長を含むpNG3の制限酵素地図である。
【図4】プラスミド pGAPNG1の構築を表す図である。
【図5】プラスミド pCRAL10、pCRAL11の構築を表す図である。
【図6】プラスミド pRNG10、pRNG11の構築を表す図である。
【図7】プラスミド pCRAL11を用いて形質転換を行なったキャンディダ・ユティリス(IFO0988RNG11株)の培養上清とマルトースとを反応させた後、グルコアミラーゼ処理を行ないHPLC分析を行なった際のチャートを示す図である。
【図8】 Acremonium sp.S4G13株より精製した糖転移酵素、プラスミド pCRAL11を用いて形質転換を行なったキャンディダ・ユティリス(IFO0988RNG11株)の培養上清を14倍濃縮したもの、及びネガティブコントロールであるプラスミドpCLRE2を用いて形質転換を行なったキャンディダ・ユティリスの培養上清を14倍濃縮したもの、およびそれらをEndo‐H処理したもののSDS‐PAGEの電気泳動図(写真)である。マーカーはSDS‐PAGEスタンダードブロードレンジ(BIO‐RAD)を用いた。
Claims (16)
- 配列番号2のアミノ酸番号1〜922で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質に作用して糖受容体へのα‐1→3結合のグルコース転移またはα‐1→3およびα‐1→4結合のグルコース転移を優先的に触媒する糖転移酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
- 配列番号2のアミノ酸番号30〜922で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質に作用して糖受容体へのα‐1→3結合のグルコース転移またはα‐1‐3およびα‐1→4結合のグルコース転移を優先的に触媒する糖転移酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
- Candida utilis FERM BP−5959株に導入されているプラスミドpRNG11において、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素遺伝子プロモーターと同遺伝子ターミネーターの間に挿入された、澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質に作用して糖受容体へのα‐1→3結合のグルコース転移またはα‐1→3およびα‐1→4結合のグルコース転移を優先的に触媒する糖転移酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
- 請求項1または3に記載のDNAを含有する組換えプラスミド。
- 請求項4に記載のプラスミドにより形質転換された酵母細胞。
- 宿主細胞が、活性型酵素を生産し得る酵母細胞である、請求項5記載の形質転換細胞。
- 宿主細胞が酵母である、請求項5記載の形質転換細胞。
- 酵母がCandida utilisである、請求項7記載の形質転換細胞。
- 構造遺伝子として請求項1または3に記載のDNAを、プロモーターとしてグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素遺伝子のプロモーターを含有する組換えプラスミドを用いて形質転換されたCandida utilis。
- 請求項5〜9のいずれか1項に記載の形質転換細胞を培養し、この培養物中から、澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質に作用して糖受容体へのα‐1→3結合のグルコース転移またはα‐1→3およびα‐1→4結合のグルコース転移を優先的に触媒する糖転移酵素活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする、糖転移酵素の製造法。
- 請求項5〜9のいずれか1項に記載の形質転換細胞を培養し、澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質に作用して糖受容体へのα‐1→3結合のグルコース転移またはα‐1→3およびα‐1→4結合のグルコース転移を優先的に触媒する糖転移酵素活性を有するタンパク質を培地中に分泌させることを特徴とする、糖転移酵素の製造法。
- 形質転換細胞がCandida utilisである、請求項11記載の糖転移酵素の製造法。
- 構造遺伝子として請求項1または3のいずれか1項に記載のDNAをCandida utilisで分泌発現させて得ることができる、澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質に作用して糖受容体へのα‐1→3結合のグルコース転移またはα‐1→3およびα‐1→4結合のグルコース転移を優先的に触媒する糖転移酵素活性を有するタンパク質。
- 構造遺伝子として請求項2に記載のDNAおよび酵母由来のシグナルペプチドをコードするDNAを Candida utilis で分泌発現させて得ることができる、澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質に作用して糖受容体へのα‐1→3結合のグルコース転移またはα‐1→3およびα‐1→4結合のグルコース転移を優先的に触媒する糖転移酵素活性を有するタンパク質。
- 請求項13または14に記載の糖転移酵素活性を有するタンパク質を、澱粉およびその分解物から選ばれる基質と接触させることを特徴とする、α‐1→3結合を分子内に含む糖類の製造法。
- 請求項5〜9のいずれか1項に記載の形質転換細胞を培養し、澱粉及びその分解物の中から選ばれた基質に作用して糖受容体へのα‐1→3結合のグルコース転移またはα‐1→3およびα‐1→4結合のグルコース転移を優先的に触媒する糖転移酵素活性を有するタンパク質を培養液中に分泌生産し、分泌生産させた該タンパク質を澱粉およびその分解物から選ばれる基質と接触させることを特徴とする、α‐1→3結合を分子内に含む糖類の製造法。
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