JP3759794B2 - 新規遺伝子、ベクター、それを用いた形質転換体及びその利用 - Google Patents

新規遺伝子、ベクター、それを用いた形質転換体及びその利用 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアスペルギルス・オリゼーから得られた新規グルコアミラーゼ遺伝子、これを含むベクター、そのベクターをアスペルギルス・オリゼーまたはサッカロミセス・セレビシアエに移入した形質転換体及びその利用に関するものである。
アスペルギルス・オリゼーのグルコアミラーゼは産業上重要な酵素であり、本発明によって得られた形質転換体は、特に固体培養においても本酵素を著量生産し、これらの酵素を用いる産業界に大いに貢献するものである。
【0002】
【従来の技術】
グルコアミラーゼは澱粉を非還元末端からグルコース単位で分解する酵素であり、清酒醸造をはじめ味噌、醤油製造の産業において原料澱粉を糖化する工程に広く利用されている。これらの産業においてグルコアミラーゼはアスペルギルス・オリゼーの固体培養物(麹)から得られている。特に清酒醸造においては本酵素の生産性は非常に重要で、麹のグルコアミラーゼ活性が低い場合、その後の発酵工程に悪影響を及ぼす。そこでこの麹中のグルコアミラーゼ活性を高めるためアスペルギルス・オリゼーのグルコアミラーゼ遺伝子の単離が試みられている(特公平7−57194、Agric.Biol.Chem.55 941−949)。取得されたアスペルギルス・オリゼーのグルコアミラーゼ遺伝子(glaA)はグルコアミラーゼ活性を有する蛋白をコードしていることが、本遺伝子に対応するcDNAをサッカロミセス・セレビシアエに移入した形質転換体がグルコアミラーゼ活性を発現することによって確認されている。また本遺伝子をアスペルギルス・オリゼーに移入した形質転換体は、液体培養においてグルコアミラーゼを顕著に増加したが、清酒醸造などで用いる固体培養においては親株と同程度のグルコアミラーゼしか生産しなかった。従って、固体培養でグルコアミラーゼを高生産させるには、glaA以外の別の遺伝子の働きが必要であると考えられ、現在清酒醸造などの実際に利用しうるグルコアミラーゼ活性のみが上昇した実用菌株の育種は成功していない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術はたしかにすぐれた技術ではあるが、未だ充分に満足できるものではなく、特にわが国においては、麹といった固体培養が多用されており、醸造工業や医薬品製造工業等において重要な位置を占めている現状に鑑み、固体培養においてもグルコアミラーゼを顕著に増産しうる系の開発が求められている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような技術の現状に鑑み、従来技術が有している問題点を更に改良、解決するためになされたものであって、液体培養のみでなく固体培養においてもグルコアミラーゼを著量生産する微生物を新たに開発することを目的になされたものである。
【0005】
上記目的を達成するために各方面から検討の結果、遺伝子組換え技術が最適であるとの観点に至った。
そして、グルコアミラーゼ生産菌であるアスペルギルス・オリゼーを用いて固体培養を行い、そのグルコアミラーゼを精製し、その酵素の機能や蛋白質の1次構造を詳細に検討した。その結果、固体培養で生産されるグルコアミラーゼは既にクローニングされているglaA以外の遺伝子の産物であることを見いだした。そこでこの固体培養で高発現しているグルコアミラーゼのアミノ酸配列の情報をもとに、このグルコアミラーゼをコードすると考えられるcDNAおよび染色体DNA断片をクローニングすることに成功した。
【0006】
そしてこのグルコアミラーゼをコードするcDNAをサッカロミセス・セレビシアエに移入することにも成功し、得られた形質転換体においてグルコアミラーゼが発現することを確認した。さらにクローニングした染色体DNA断片を移入したアスペルギルス・オリゼー形質転換体においてもグルコアミラーゼ生産性が顕著に増大することも確認した。
すなわち本発明者らは、アスペルギルス・オリゼーの新規なグルコアミラーゼ遺伝子に着目し、アスペルギルス・オリゼーのゲノムDNA制限酵素断片よりグルコアミラーゼをコードするDNA断片をクローン化し、これをアスペルギルス・オリゼー宿主ベクター系に移入することにより、グルコアミラーゼを著量生産する形質転換体(A)を得ることに成功した。ここで得られた形質転換体(A)はFERM P−15826として生命研に寄託されている。
さらにアスペルギルス・オリゼーの全mRNAを固体培養菌体(麹)から調製し、これに基づいてcDNAを合成してcDNAライブラリーを作製し、その中からアスペルギルス・オリゼーのグルコアミラーゼをコードするクローンを分離した。そしてこのcDNAを発現ベクターに連結した後サッカロミセス・セレビシアエに移入することにより、アスペルギルス・オリゼーを生産するグルコアミラーゼと同等のグルコアミラーゼを生産する形質転換体(B)を得ることにも成功した。ここで得られた形質転換体(B)はFERM P−15827として生命研に寄託されている。
【0007】
また、ここで得られた形質転換体(A)を用いて清酒醸造を行ったところ、従来の菌株やglaA遺伝子を移入した形質転換体(特公平7−57194、Gene.108 145−150)に比べて著量のグルコアミラーゼ活性を有する麹が得られたので、麹歩合を低減させたり、粕歩合を低下させたりし、原料コストを大きく低減させることが可能となった。また、形質転換体(B)を用いることにより液化した澱粉原料を糖化酵素などによって糖化することなく、直接アルコール発酵が可能となることも確認した。
本発明は、これらの有用新知見に基づき、遂に完成されたものである。
【0008】
以下、本発明について詳しく説明するが、あくまでもこの方法に限定されるものではない。
本発明に用いた染色体DNA、mRNAおよびグルコアミラーゼ供与体はアスペルギルス・オリゼーであり、具体的にはOSI−1013株である。本発明においては、本菌株の精製グルコアミラーゼを得るため、精白米と本菌株の分生胞子を用いて固体麹を調製する。アスペルギルス・オリゼーのグルコアミラーゼ精製方法はAgric.Biol.Chem.,52,1707−1711(1989)に記載された方法に準じて行われる。
【0009】
次に、得られた精製グルコアミラーゼをJ.Biol.Chem.,98,305−318に準じてリシルエンドペプチダーゼによって消化し、さらに逆相高速液体クロマトグラフィーにより、ペプチド断片を分離回収する。得られたペプチド断片をJ.Biol.Chem.,256,7990(1981)に準じてApplied Biosystem社の自動ペプチドシーケンサーMODEL470Aにて、そのアミノ酸配列を決定する。得られたアミノ酸配列に基づいてオリゴDNAを合成し、これを後述のプラークハイブリダイゼーションのプローブとして使用する。
【0010】
また、アスペルギルス・オリゼーOSI−1013株より染色体を、例えばAgric.Biol.Chem.,51,323−328(1987)に記載された方法にて抽出し、Agric.Biol.Chem.,53,593(1987)に準じて染色体ジーンライブラリーを作製する。この染色体ジーンライブラリーより、上記で得られたオリゴDNAをプローブとしてプラークハイブリダイゼーション法により、新規グルコアミラーゼ遺伝子を単離する。得られたDNA断片は、配列表の配列番号1に示す塩基配列を有していた。(図1)。
【0011】
上記で得られたDNA断片をアスペルギルス・オリゼーのベクターとして例えばniaD遺伝子をマーカーに持つpSTA24(Molec.Gen.Genet.,218,99−104(1989))に挿入し、得られたDNAをniaD欠損株のアスペルギルス・オリゼーに移入し、形質転換体を得る。niaD欠損株は具体的にはアスペルギルス・オリゼーOSI−1013株よりMolec.Gen.Genet.,218,99−104(1989)記載の方法に準じて、塩素酸ナトリウム耐性株として得られる。形質転換法としては、公知の方法、例えばAgirc.Biol.Chem.,51,323−328(1987)に記載された方法あるいはこれに準じた方法がとられる。この方法により形質転換体(A)を得る。
【0012】
次に、アスペルギルス・オリゼーの分生胞子と精白米から固体麹を調製し、この固体麹の表面に生育するアスペルギルス・オリゼーの菌体よりAgric.Biol.Chem.,54,1905(1990)に記載された方法によりmRNAを抽出し、Gene,25,263−269(1983)の方法にてcDNAを合成した。一方、グルコアミラーゼ遺伝子のグルコアミラーゼのコーディング領域の開始コドンを含む配列と、終止コドンを含む配列を基にオリゴDNAを合成する。このオリゴDNAをプライマーとして、得られたcDNAを鋳型として、例えばPCR Technology Stockton Press.(1989)に記載されたPCR法によりグルコアミラーゼcDNAを合成した。単離したグルコアミラーゼcDNAは、配列表の配列番号2に示す塩基配列を有していた(図2)。
【0013】
上記で得られたアスペルギルス・オリゼーのグルコアミラーゼcDNAをサッカロミセス・セレビシアエの発現ベクター、例えば酵母ガラクトースキナーゼ(GAL1)のプロモーターを持つ酵母発現ベクターpYES2に挿入し、サッカロミセス・セレビシアエに移入することにより形質転換体を得る。形質転換法としては、公知の方法、例えばJ.Bacteriol,153,163−168(1983)に記載されている方法あるいはそれに準じた方法がとられる。この方法によって形質転換体(B)を得る。
【0014】
次にこの形質転換体(A)を蒸米上で生育させ、分生胞子を形成させ、得られた分生胞子を用いて公知の方法によって米麹を製造し、これに水、酵母及び蒸米を加え、発酵させることにより、酒類、エタノールなどを製造する。
形質転換体(A)を用いて製造した麹には固体培養で発現するグルコアミラーゼの力価が高いため、酒類、エタノールなどを効率よく製造することができる。
【0015】
またこのグルコアミラーゼのcDNAを含むベクターをサッカロミセス・セレビシアエに移入して、アスペルギルス・オリゼーのグルコアミラーゼを分泌する形質転換体(B)を得る。この形質転換体(B)を用いることにより、グルコアミラーゼなどの糖化酵素を加えることなく、サッカロミセス・セレビシアエによる澱粉から直接アルコール発酵を行うことが可能である。
【0016】
当然のことながら、形質転換体(A、B)は、常法にしたがってこれを培養することにより、酵素を効率よく製造することができ、発酵工業のみならず、食品工業、医薬品工業その他各種の工業において様々な用途に利用することができる。特にアスペルギルス・オリゼーの固体培養で発現するグルコアミラーゼは糖含量が高く、熱やプロテアーゼに対する安定性が高いため、これらの工業で安定に利用することができる。
次に本発明の実施例を示す。
【0017】
【実施例1】
アスペルギルス・オリゼーの固体培養で発現するグルコアミラーゼの精製と部分アミノ酸配列の決定
【0018】
アスペルギルス・オリゼーの分生胞子を蒸米に接種し、常法に従い米麹を調製する。この米麹1kgに3Lの抽出バッファー(1%NaCl,10mM Acetate buffer(pH5))を加えて、4℃で16時間放置後、アドバンテック濾紙No.5Aにてろ過した。ろ過液に90%飽和になるよう硫酸アンモニウムを加えて溶解させた後、4℃16時間放置し塩析を行った。これを遠心分離(8,000rpm,10分)し、上清を集め、流水1日、水1日、緩衝液(10mM Tris−HCl buffer(pH7))でさらに1日透析を行った。この透析液をあらかじめ上記緩衝液で平衡化させたDEAE−Celluloseカラム(300ml)にロードし、グルコアミラーゼをカラムに吸着させた。カラムを緩衝液で十分洗浄後、1M NaClを含む緩衝液500mlでグルコアミラーゼ画分を溶出した。
【0019】
このグルコアミラーゼ画分を限外ろ過装置にて濃縮し、Pharmacia製、ResourceQカラムにロードし、0−0.5M NaClの直線グラジエントにて溶出し、グルコアミラーゼ画分を集めた。このグルコアミラーゼ画分をさらにグルコアミラーゼの特異的インヒビターであるアカボースを固定化したアフィニティーカラム(Agric.Biol.Chem.,52,1707−1714)にて精製した。最終的には150mgの精製グルコアミラーゼを得た。
【0020】
得られた精製グルコアミラーゼ10mgを3mlの7M guanidineを含む0.5M Trisバッファーに溶解し、N2ガス下でDithiothreitolとヨード酢酸にて還元カルボキシメチル化(Cm化)を行った。このCmグルコアミラーゼを4M尿素存在下でリシルエンドペプチダーゼにて消化し、グルコアミラーゼ蛋白をペプチドに分解した。これを逆相HPLCにて各ペプチド断片を分離、回収した。各ペプチドは気相式自動ペプチドシーケンサーにて、そのN末端付近のアミノ酸配列を決定した。
【0021】
得られたペプチド断片のアミノ酸配列と、それから類推して合成したオリゴDNAプローブ(No.1及びNo.2)を図5に示す。
【0022】
【実施例2】
アスペルギルス・オリゼーの固体培養で発現するグルコアミラーゼをコードする染色体DNA断片の単離と塩基配列の決定
【0023】
実施例1記載のオリゴDNAをECLオリゴDNAラベリングシステムにより、蛍光ラベルしたものをプローブとして用いて、アスペルギルス・オリゼーのλEMBL3を用いたファージ染色体ライブラリーより、プラークハイブリダイゼーション法によりグルコアミラーゼ遺伝子を含むクローン選択を行った。一連の操作はMolecular Cloning,pp63−67,Cold Spring Harbor Laboratory(1982)に記載の常法に従った。約20,000個のプラークより、蛍光ラベルしたプローブにハイブリダイズするクローン1個を得た。
【0024】
このクローンよりファージDNAを単離し、蛍光プローブにハイブリダイズするDNA断片(7.0kb SalI断片)をpUC118にサブクローニングした。その制限酵素地図を図3に示す。この7kbのSalI断片のなかで蛍光プローブにハイブリダイズする領域を特定し、ジデオキシ法(Science,214、1295−1310(1980))にてその領域周辺の塩基配列を決定した。その結果この遺伝子断片中に、プローブに用いたペプチド断片をコードする塩基配列が見いだされた。他のAspergillus属のグルコアミラーゼ遺伝子と比較した結果、2つのイントロンに分断された3つのエキソン中に493アミノ酸残基をコードするオープンリーディングフレームがあると推定された。この新規グルコアミラーゼ遺伝子のコーディング領域とその上流、下流領域の塩基配列を配列番号1に示す(図1)。
【0025】
【実施例3】
アスペルギルス・オリゼーの固体培養で発現するグルコアミラーゼを多量に発現するアスペルギルス・オリゼーの形質転換体の作製
【0026】
実施例2に記載するグルコアミラーゼ遺伝子を含む7.0kb−SalIの染色体DNA断片をアスペルギルス・オリゼーのniaD変異を相補する遺伝子を持つベクターpNIA−2に連結し、図3に示すプラスミドpNGB−1を作製した。挿入したSalI断片はグルコアミラーゼのコーディング領域1.7kbとその上流部分2.8kb下流分2.4kbを含んでおり、グルコアミラーゼのアスペルギルス・オリゼーでの発現に必要な領域はすべて含んでいると考えられる。そこでこのプラスミドをアスペルギルス・オリゼーに移入した。
【0027】
アスペルギルス・オリゼーの硝酸還元酵素欠損変異株(niaD)をプラスミドpNGB−1により、Agirc.Biol.Chem.,51,323−328(1987)の記載の方法に準じて形質転換を行った。宿主として用いる硝酸還元酵素欠損変異株はNaNO3を窒素源として利用できないのに対し、niaD遺伝子を含むプラスミドが移入された形質転換体はNaNO3を単一窒素源として生育が可能であった。次にこの形質転換体をプレートに塗布し分生胞子を集めた。この分生胞子を蒸米に接種し、定法に従い米麹を調製した。得られた米麹のグルコアミラーゼ活性を醸協,81,490−494(1986)記載の方法に従って測定した。その結果を下記表5に示す。
【0028】
【表5】
Figure 0003759794
【0029】
上記のようにこのグルコアミラーゼ遺伝子をアスペルギルス・オリゼーに移入することにより、グルコアミラーゼ活性のみ上昇する形質転換体が得られた。なおこの形質転換体(A)は、Aspergillus oryzae GLB−01と命名し、これを工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P−15826として寄託した。
【0030】
【実施例4】
アスペルギルス・オリゼーの固体培養で発現するグルコアミラーゼのcDNAの単離と塩基配列の決定
【0031】
実施例2で得られたアスペルギルス・オリゼーのグルコアミラーゼ遺伝子の塩基配列から推定される開始コドン上流と終止コドン下流に対応する2種のプライマーP1、P2を合成した(図6)。
【0032】
アスペルギルス・オリゼーを固体培養した米麹から、DNA,2,329−335(1983)記載の方法によりTotal RNAを抽出した。このTotal RNAよりQD Rapid poly(A)+mRNA Isolation System(5′Prime−3′Prime Inc)を用いてpoly(A)mRNAを単離した。さらにSuperScript Lambda System for cDNA Synthesis and λcloning Kit(GIBCO BRL)を用いてmRNAよりcDNAを合成した。このcDNAをテンペレートとして先の2種類の合成DNAをプライマーとしてPCR反応を行い、glaB遺伝子に対応するcDNA断片を得た。このcDNA断片をpUC118にサブクローニングし、実施例2に記載の方法と同様にしてその塩基配列を決定した。配列番号2に示すように、全塩基配列は1482bpであり、Metで始まる493個のアミノ酸をコードしていた(図2)。
【0033】
【実施例5】
アスペルギルス・オリゼーのグルコアミラーゼを発現するサッカロミセス・セレビシアエの形質転換体の作製
【0034】
実施例4のグルコアミラーゼcDNA断片を酵母発現ベクターに連結し、図4に示すプラスミドpYGB−1を作成した。使用した発現ベクターはpYES2(Invitogen)である。このプラスミドはSaccharomycescerevisiaeのGAL1プロモータとCYC1ターミネーターを含んでおり、GAL1プロモーター下流に連結されたcDNA断片はこのプロモータ制御を受けて酵母内で発現されると考えられる。
次にこのグルコアミラーゼcDNAを含むプラスミドpYGB−1をItoらのJ.Bacteriology、153、163−168,(1983)記載の方法に従って、酵母宿主(INVScla,his3,trp1,ura3)に導入した。プラスミドに含まれるURA3遺伝子により、ウラシル要求性が相補された形質転換体(B)を選択した。
【0035】
この形質転換体(B)を次に示す組成の合成培地100mlに接種し、30℃、72時間培養した。合成培地:2%ガラクトース、2%ポリペプトン、1%イーストエキス、50mg/lトリプトファン)培養終了後、3,000rpmの遠心処理にて酵母菌体を除いた後、上清のグルコアミラーゼ活性を実施例3と同様の方法にて測定した。その結果を下記表6に示す。
この結果から明らかなように、グルコアミラーゼcDNAが移入された形質転換体(B)においては、グルコアミラーゼが検出された。なお、この形質転換体(B)は、Saccharomyces cerevisiae cGLB−01と命名し、これを工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P−15827として寄託した。
【0036】
【表6】
Figure 0003759794
【0037】
【実施例6】
ノザン解析によるグルコアミラーゼ遺伝子の発現様式の検討
【0038】
実施例4記載と同様に米麹からtotalRNAを抽出しノザン解析によりグルコアミラーゼの発現について検討した。同一菌株を3%デンプン、1%ポリペプトンを含むツァペックドックス液体培地にて、振とう培養し、得られた菌体より同様な方法にてTotalRNAを抽出した。得られたRNAをそれぞれ20μgをCurr.Cenet,22,85−91(1992)に記載の方法にて、変性アガロース電気泳動しナイロンメンブレンにブロット後、グルコアミラーゼ断片をプローブとしたノーザンハイブリダイゼーションを行った。
【0039】
今回取得されたグルコアミラーゼ遺伝子をプローブとした場合、固体培養から抽出したRNAには非常に強いシグナルが検出されたが、デンプン培地での液体培養ではほとんどシグナルは検出されなかった。一方既にクローニングされているアスペルギルス・オリゼーのグルコアミラーゼ遺伝子(glaA)をプローブとした場合、固体培養、液体培養ともシグナルが認められた。しかし固体培養でのシグナルは今回クローニングされたグルコアミラーゼ遺伝子のものと比較して、非常に弱いものであった。よって固体培養では今回取得されたグルコアミラーゼ遺伝子が優先的に発現しているものと考えられた。
以上の結果よりこの新規グルコアミラーゼ遺伝子は固体培養で特異的、かつ強力に発現する遺伝子であることが確認された。
【0040】
【発明の効果】
本発明によって、米麹で発現するグルコアミラーゼ遺伝子およびcDNAのクローニングに成功し、その塩基配列も解明された。また本発明においては、クローニングされた上記遺伝子をベクターに挿入して宿主の形質転換を行うことにも成功したものである。したがって、得られた形質転換体を培養することによりグルコアミラーゼを著量生産することができる。
【0041】
たとえばグルコアミラーゼ遺伝子をアスペルギルス・オリゼーに導入した形質転換体では、米麹においてもグルコアミラーゼのみを著量生産することができる。酒類の製造やアルコール発酵において、発酵もろみ中のグルコアミラーゼ活性は発酵速度に大きな影響を与えることが知られている。清酒もろみ中ではグルコアミラーゼ活性が不足すると酵母の発酵速度が低下し発酵期間が増加するばかりか、清酒の重要な香味の一つであるエステル類の生産が顕著に抑制され最終製成酒の品質が低下する。従ってグルコアミラーゼを著量生産する麹を用いることはこれらの醸造物の効率的かつ高品質な生産に大きく寄与する。
【0042】
またグルコアミラーゼcDNAを導入した形質転換体酵母はデンプンなどの高分子の糖質を資化しアルコール発酵を行うことが可能である。よってデンプンから直接アルコールを製造したり、穀類原料から直接酒類を製造することができる。これは当該発酵産業の効率化に大きく寄与する。
【0043】
【配列表】
本発明に係るアスペルギルス・オリゼーの新規グルコアミラーゼ遺伝子の塩基配列を配列番号1に示し、そのcDNAの塩基配列を配列番号2に示す。
下記表1〜4に、配列番号1〜2で示される各配列を示す。
【0044】
【表1】
Figure 0003759794
【0045】
【表2】
Figure 0003759794
【0046】
【表3】
Figure 0003759794
【0047】
【表4】
Figure 0003759794

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアスペルギルス・オリゼーのグルコアミラーゼ遺伝子の塩基配列を示す。
【図2】そのcDNAの塩基配列を示す。
【図3】プラスミドpNGB−1の作成法及び制限酵素地図を示す。
【図4】プラスミドpYGB−1の作成法及び制限酵素地図を示す。
【図5】オリゴDNAプローブ(No.1及びNo.2)を示す。
【図6】PCR用プライマー(P1及びP2)を示す。

Claims (9)

  1. 配列表の配列番号1の塩基配列で示され、アスペルギルス・オリゼーから単離したグルコアミラーゼ遺伝子のプロモーター及び/又は蛋白質コード領域を含む塩基配列を有するDNA。
  2. 配列番号2の塩基配列で示され、アスペルギルス・オリゼーのグルコアミラーゼmRNAから合成したcDNA。
  3. 請求項第1項記載のDNAを含んだアスペルギルス・オリゼーのベクター。
  4. 請求項第2項記載のcDNAを含んだサッカロマイセス・セレビシアエのベクター。
  5. 請求項第3項記載のベクターをアスペルギルス・オリゼーに移入することによって得られたグルコアミラーゼ酵素生産が上昇した形質転換体。
  6. 請求項第4項記載のベクターをサッカロマイセス・セレビシアエに移入することによって得られるグルコアミラーゼを生産する形質転換体。
  7. 請求項第5項又は第6項に記載の形質転換体を使用することを特徴とするアルコール及び/又は酒類の製造方法。
  8. 請求項第5項又は第6項に記載の形質転換体を培養し、培養物からグルコアミラーゼを採取することを特徴とするグルコアミラーゼの製造法。
  9. 該形質転換体を固体培養することを特徴とする請求項第8項に記載のグルコアミラーゼの製造法。
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