以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
(比較例)
まず、比較例に係るモータ駆動システム及び故障検出装置を説明する。比較例を説明した後で、実施形態に係る電源遮断装置を説明する。これにより、実施形態をより明確にする。
図1は、比較例に係る故障検出装置を含むモータ駆動システムを例示したブロック図である。図2は、比較例に係る故障検出装置の概略的なシステム構成を例示したブロック図である。図1及び図2に示すように、モータ駆動システムは、故障検出装置101、制御部110、モータドライバ111、モータ112、電源113、及び、電源遮断回路114を備えている。故障検出装置101は、第1電圧センサ102、第2電圧センサ103、領域判定部104、故障検出部105、トルクセンサ115、及び、速度センサ116を備えている。
制御部110は、モータドライバ111にモータ制御信号を送信することで、モータドライバ111を介してモータ112を制御する。
電源113は、モータドライバ111を介して、モータ112に電力を供給する。電源遮断回路114は、電源113とモータドライバ111との間に設けられている。電源遮断回路114は、電源113からモータドライバ111を介してモータ112に供給される電力を遮断する。制御部110は、電源遮断回路114に対して電源遮断制御信号を送信することで、電源遮断回路114を遮断する。
比較例に係る故障検出装置101は、モータ112に異常が発生した際に、電源113からモータドライバ111を介してモータ112へ供給される電力を遮断する電源遮断回路114の故障を検出するものである。
故障検出装置101は、電源遮断回路114の入力側及び出力側の電圧を検出する一対の第1及び第2電圧センサ102、103と、モータ112が安定回生領域内にあるかを判定する領域判定部104と、電源遮断回路114の故障を検出する故障検出部105と、トルクセンサ115と、速度センサ116と、を備えている。
なお、故障検出装置101は、例えば、演算処理等と行うCPU(Central Processing Unit)101a、CPU101aによって実行される演算プログラム等や各種のデータを記憶するメモリ101b、外部と信号の入出力を行うインターフェイス部(I/F)101c、などからなるマイクロコンピュータを中心にして、ハードウェア構成されている。CPU101a、メモリ101b及びインターフェイス部101cは、データバスなどを介して相互に接続されている。
第1電圧センサ102は、電源遮断回路114の入力側に設けられ、入力側の電圧V1を検出する。第1電圧センサ102は、検出した入力側の電圧V1を故障検出部105に出力する。第2電圧センサ103は、電源遮断回路114の出力側に設けられ、出力側の電圧V2を検出する。第2電圧センサ103は、検出した出力側の電圧V2を故障検出部105に出力する。
領域判定部104は、トルクセンサ115により検出されたモータ112のトルクと、速度センサ116により検出されたモータ112の速度と、に基づいて、マップ情報において、モータ112のトルク及び速度が安定回生領域内にあるかを判定する。トルクセンサ115は、モータ112の駆動軸などに設けられている。速度センサ116は、モータ112の駆動軸などに設けられている。
マップ情報は、予めメモリ101bなどに設定されている。図3は、マップ情報を例示した図である。マップ情報は、横軸をモータ112のトルク、縦軸をモータ112の速度とした2次元座標系である。マップ情報には、予め、安定回生領域、不安定回生領域、力行領域、が設定されている。
安定回生領域は、電源遮断がモータ112の制御性に影響しない、安定した回生状態の領域である。安定回生領域は、モータ112が正転あるいは逆転で回生状態にある領域である。さらに、安定回生領域は、モータ112のトルクが正値で所定トルク以上かつモータ112の速度が負値でその速度の絶対値が所定速度以上となる領域である。あるいは、安定回生領域は、モータ112のトルクが負値でそのトルクの絶対値が所定トルク以上かつモータ112の速度が正値で所定速度以上、となる領域である。
所定トルクは、例えば、モータ112のトルク時定数MTに故障検出時間Tを乗算することで算出される。所定速度は、例えば、モータ112の速度時定数MVに故障検出時間Tを乗算することで算出される。故障検出時間Tは、電源遮断回路114の故障を検出するのに必要な時間であり、後述の如く、電源遮断回路114が遮断された後、電源遮断回路114の入力側及び出力側の間の電圧差を算出するまでの時間である。トルク時定数MT、速度時定数MV、故障検出時間Tは、予めメモリ101bなどに設定されているが、ユーザによって任意に設定変更可能である。
不安定回生領域は、電源遮断がモータ112の制御性に影響しないが、故障検出時間T以内に力行領域に入る可能性がある、不安定な回生状態の領域である。不安定回生領域は、モータ112が正転あるいは逆転で回生状態にある領域である。さらに、不安定回生領域は、モータ112のトルクが正値で所定トルク未満となる領域、および、モータ112の速度が負値でその速度の絶対値が所定速度未満となる領域である。あるいは、不安定回生領域は、モータ112のトルクが負値でそのトルクの絶対値が所定トルク未満となる領域、および、モータ112の速度が正値で所定速度未満、となる領域である。
力行領域は、電源遮断がモータ112の制御性に影響する領域である。具体的には、力行領域は、モータ112のトルクが正値及びモータ112の速度が正値となる領域である。あるいは、力行領域は、モータ112のトルクが負値及びモータ112の速度が負値となる領域である。
領域判定部104は、モータ112のトルク及び速度(トルク、速度)の座標が、メモリ101bのマップ情報において、安定回生領域内にあり、モータ112が安定回生状態にあるか否かを判定する。領域判定部104は、モータ112が安定回生状態にあると判定した場合に、その判定結果を故障検出部105に出力する。
故障検出部105は、領域判定部104からの判定結果と、第1電圧センサ102からの入力側の電圧V1と、第2電圧センサ103からの出力側の電圧V2と、に基づいて、例えば、電源遮断回路114のショート故障を検出する。
ところで、例えば、モータ制御用回路において、異常が発生した際に電源遮断回路を用いてモータを停止させる。このとき、電源遮断回路が故障しているとモータを停止させることができないため、電源遮断回路自体の故障も検出する必要がある。従来、モータの回転中に電源遮断回路の故障を検出することができない。このため、次回モータが停止するまでに電源遮断回路が故障しても、モータを停止できないという問題が生じていた。
これに対し、比較例に係る故障検出装置101は、モータ112による回生動作の特性を利用することで、モータ112回転中でも電源遮断回路114の故障を検出できる。具体的には、故障検出部105は、(1)モータ112のトルクが正値で所定トルク以上かつ速度が負値で該速度の絶対値が所定速度以上、あるいは、モータ112のトルクが負値で該トルクの絶対値が所定トルク以上かつ速度が正値で所定速度以上、である、(2)モータ112が回生状態である、かつ、(3)電源遮断回路114が遮断された後所定時間経過したときの電源遮断回路114の入力側及び出力側間電圧差が所定電圧以下である、場合に、電源遮断回路114の故障を検出する。
これにより、モータ112が、電源遮断によりモータ制御性に影響しない安定した安定回生状態にあるときに、電源遮断回路114の遮断を行うことができる。したがって、モータ112回転中でも電源遮断回路114の故障を検出できる。
したがって、比較例においては、電源遮断回路114の故障の検出にかかる故障検出時間Tと、モータ112のトルク時定数MTと、モータ112の速度時定数MVと、に基づいて、故障検出時間T内に回生状態から力行状態に復帰しない安定回生領域を定義し、この安定回生領域内にあるときに電源遮断回路114の遮断を行っている。これにより、確実に、モータ制御性に影響を与えることなく、電源遮断回路114の遮断を行うことができる。
故障検出部105は、領域判定部104からのモータ112が安定回生状態にある旨の判定結果を受けると、電源遮断回路114が遮断された後所定時間(故障検出時間)T経過したときの第1電圧センサ102からの入力側の電圧V1と、第2電圧センサ103からの出力側の電圧V2と、の間の電圧差Vcal(Vcal=V2-V1)を算出する。
そして、故障検出部105は、算出した電圧差Vcalが所定電圧Vch以下であるか否かを判定する。所定電圧Vchは、例えば、電源遮断回路114がショート故障したときの電圧差が予め実験的に求められ、その値がメモリ101bなどに設定されている。故障検出部105は、算出した電圧差Vcalが所定電圧Vch以下であると判定した場合に、電源遮断回路114のショート故障を検出する。
図4は、比較例に係る故障検出方法を例示したフローチャート図である。図4に示す処理は、例えば、所定時間毎に繰返し実行される。
まず、ステップS101に示すように、領域判定部104は、メモリ101bのトルク時定数MT、速度時定数MV、及び、故障検出時間Tに基づいて、マップ情報に安定回生領域を設定する。
次に、ステップS102に示すように、領域判定部104は、モータ112のトルク及び速度と、に基づいて、マップ情報において、モータ112のトルク及び速度が安定回生領域内にあるかを判定する。
ステップS102において、領域判定部104は、モータ112のトルク及び速度が安定回生領域内にあると判定した場合には、ステップS103に示すように、電源遮断回路114を遮断する。一方、ステップS102において、領域判定部104は、モータ112のトルク及び速度が安定回生領域内にないと判定した場合には、本処理を終了する。
次に、ステップS104に示すように、故障検出部105は、電源遮断回路114が遮断された後所定時間T経過したときの第1電圧センサ102の入力側の電圧V1と、第2電圧センサ103の出力側の電圧V2と、を取得する。
次に、ステップS105に示すように、故障検出部105は、第1電圧センサ102からの入力側の電圧V1と、第2電圧センサ103からの出力側の電圧V2と、間の電圧差Vcalを算出する。
次に、ステップS106に示すように、故障検出部105は、算出した電圧差Vcalが所定電圧Vch以下であるか否かを判定する。
ステップS106において、故障検出部105は、算出した電圧差Vcalが所定電圧Vch以下であると判定した場合には、ステップS107に示すように、電源遮断回路114のショート故障を検出する。
一方、ステップS106において、故障検出部105は、算出した電圧差Vcalが所定電圧Vch以下でないと判定した場合には、ステップS108に示すように、電源遮断回路114の遮断を解除する。そして、ステップS109に示すように、制御部110は、モータドライバ111を介してモータ112の制御を継続する。
以上、比較例において、(1)モータ112のトルクが正値で所定トルク以上かつ速度が負値で該速度の絶対値が所定速度以上、あるいは、モータ112のトルクが負値で該トルクの絶対値が所定トルク以上かつ速度が正値で所定速度以上、である、(2)モータ112が回生状態である、かつ、(3)電源遮断回路114が遮断された後所定時間経過したときの電源遮断回路114の入力側及び出力側間電圧差が所定電圧以下である、場合に、電源遮断回路114の故障を検出する。これにより、モータ112が、電源遮断によりモータ制御性に影響しない安定した安定回生状態にあるときに、電源遮断回路114の遮断を行うことができる。したがって、モータ112回転中でも電源遮断回路114の故障を検出できる。
比較例において、安定回生領域では、モータの動作により、第2電圧センサ側の電圧値が上昇する。電源遮断回路が正常であれば、第1電圧センサ側の電圧値は、電源電圧と等しいため、第1及び第2電圧センサの電圧値を比較することで、故障を検出することができる。
しかしながら、比較例においては、安定回生領城以外の領域で故障を検出することができない。産業用ロボットなどの固定動作を行う機器では、殆ど、力行領域で使用されるため、力行領域での故障検出を行う必要がある。以下の実施形態では、力行領域における故障を検出する。
(実施形態)
次に、実施形態に係る電源遮断装置を説明する。一般に、モータの回転中に電源遮断スイッチをオフにしてしまうと、モータドライバへの電源供給が遮断されてしまい、モータが停止してしまう。一方、モータドライバにはフィルタやスイッチング素子のもつ容量成分が存在し、微小な時間はその容量成分によってモータを駆動することが可能である。以下の実施形態では、その容量成分に着目し、モータが駆動できる範囲内で電源遮断スイッチをオン/オフすることで、モータ駆動中でも電源遮断スイッチの故障を検出する。以下で、<産業用ロボット向け構成・手法>、<モビリティ向け構成・手法>、<ヒューマノイド/介護ロボット向け構成・手法>、<探索・災害対応ロボット向け構成・手法>に分けて説明する。
<産業用ロボット向け構成・手法>
産業用ロボット等のように、動作パターンが一定のロボットでは、力行領域での動作が殆どである。本例では、力行領域に限定し、ロボットの最小構成で故障検出を行う手法を説明する。本例では、安定回生領域及び力行領域の状態判定は行わないため、電流センサを有さず、動作パターンが一定である。このため、回転角センサも搭載しない。
図5は、実施形態に係る電源遮断装置の産業用ロボット向け構成を例示したブロック図である。図5に示すように、電源遮断装置10は、電源1と、電源遮断スイッチ2と、第1電圧センサ3と、第2電圧センサ4と、制御部5と、モータドライバ6と、モータ7とを備えている。
電源1は、モータドライバ6を介して、モータ7に電力を供給する。電源遮断スイッチ2は、電源1とモータドライバ6との間に設けられている。電源遮断スイッチ2は、電源1からモータドライバ6を介してモータ7に供給される電力を遮断する。モータドライバ6には、フィルタやスイッチング素子のもつ容量成分Cが存在し、微小な時間はその容量成分Cによってモータ7を駆動することが可能である。なお、電源遮断スイッチ2を、比較例と同様に、電源遮断回路とも呼ぶ。
制御部5は、電源遮断スイッチ2に対して電源遮断制御信号を送信することで、電源遮断スイッチ2を遮断する。制御部5は、演算処理等と行うCPU(Central Processing Unit)及びCPUによって実行される演算プログラム等や各種のデータを記憶するメモリを含んでいる。制御部5は、比較例における制御部110及び故障検出装置101を含んだ構成としてもよい。よって、制御部5は、モータ7に異常が発生した際に、電源1からモータ7へ供給される電力を遮断する電源遮断スイッチ2の故障を検出する。
第1電圧センサ3は、電源遮断スイッチ2の入力側に設けられ、入力側の電圧V1を検出する。第1電圧センサ3は、検出した入力側の電圧V1を制御部5に出力する。第2電圧センサ4は、電源遮断スイッチ2の出力側に設けられ、出力側の電圧V2を検出する。第2電圧センサ4は、検出した出力側の電圧V2を制御部5に出力する。このように、電源遮断装置10は、電源遮断スイッチ2の入力側及び出力側の電圧を検出する一対の電圧センサを備えている。第1電圧センサ3が検出した入力側の電圧V1を、第1電圧センサ値V1とも呼ぶ。第2電圧センサ4が検出した出力側の電圧V2を、第2電圧センサ値V2とも呼ぶ。
制御部5は、図示しないトルクセンサにより検出されたモータ7のトルクと、図示しない速度センサにより検出されたモータの速度と、に基づいたマップ情報において、モータ7のトルク及び速度が回生領域内にあるか、または、力行領域内にあるかを判定することができる。
次に、本実施形態に係る電源遮断装置10の動作として、故障検出方法を説明する。
図6は、実施形態に係る電源遮断装置10の電源遮断スイッチ2に接続された回路を例示した図である。図6に示すように、第1電圧センサ3は、電源遮断スイッチ2の入力側に設けられ、入力側の第1電圧センサ値V1を検出する。第2電圧センサ4は、電源遮断スイッチ2の出力側に設けられ、出力側の第2電圧センサ値V2を検出する。電源遮断スイッチ2の出力側は、モータドライバ6を介してモータ7へ接続されている。モータドライバ6は、容量Cを介して接地されている。モータドライバ6を介してモータ7へ流れる電流を電流Iとする。
図7は、実施形態に係る電源遮断装置10の電源遮断スイッチ2をオンからオフにした時の電源遮断スイッチ2の出力側の電圧の変化を例示したグラフであり、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。電源遮断スイッチ2をオフにすると、第2電圧センサ4が示す第2電圧センサ値V2は、低下し始める。その低下の速度は、容量Cに蓄積される電荷を電荷Qとして、以下の(1)式で求められる。
Q=CV (1)
ここで、Δt時間における電圧変化をΔVとし、Δt時間における電荷の変化をΔQとすると、(1)式は(2)式になる。
(ΔQ/Δt)=C(ΔV/Δt) (2)
電流Iは、(ΔQ/Δt)であるから、(3)式になる。
I=C(ΔV/Δt) (3)
モータ制御に影響のない降下電圧として、降下電圧VTを規定する。電圧変化ΔV=V2-V1=VTとすると、降下電圧VTとなる時間Δtは、(4)式になる。
Δt=C(VT/I) (4)
したがって、Δt時間だけ、電源遮断スイッチ2をオフした際の降下電圧VTにより故障検出を行うことができる。
図8は、実施形態に係る電源遮断装置の産業用ロボット向けの場合の動作を例示したフローチャート図である。
図8のステップS1に示すように、制御部5は、モータ7の制御を開始する。次に、ステップS2に示すように、制御部5は、電源遮断スイッチ2を遮断する。次に、ステップS3に示すように、電源遮断スイッチ2を遮断してからΔt時間[sec]経過後に、制御部5は、第1電圧センサ値V1及び第2電圧センサ値V2を取得する。具体的には、制御部5は、第1電圧センサ値V1を第1電圧センサ3から取得し、第2電圧センサ値V2を、Δt時間経過後の第2電圧センサ4から取得する。
次に、ステップS4に示すように、制御部5は、電源遮断スイッチ2の遮断を解除する。そして、ステップS5に示すように、制御部5は、第1電圧センサ値V1-第2電圧センサ値V2が降下電圧VTより大きいか判断する。ステップS5において、第1電圧センサ値V1-第2電圧センサ値V2が降下電圧VT以下の場合には、電源遮断スイッチ2は故障している場合である。よって、ステップS6に示すように、制御部5は、電源遮断スイッチ2のショート故障を検出する。したがって、ステップS7に示すように、モータ制御を停止する。このように、制御部5は、モータ7が力行状態で、かつ、電源遮断スイッチ2が遮断された後所定期間経過したときの電源遮断スイッチ2の入力側及び出力側間の電圧差が所定電圧以下である場合に、電源遮断スイッチ2の故障を検出する。
一方、ステップS5において、第1電圧センサ値V1-第2電圧センサ値V2が降下電圧VTより大きい場合には、電源遮断スイッチ2は故障していない。よって、ステップS8に示すように、制御部5は、モータ制御を継続する。
図9は、実施形態に係る電源遮断装置の産業用ロボット向けの場合の動作を例示したグラフであり、横軸は時間を示し、縦軸は、速度を示す。図9に示すように、産業用ロボット等のように、動作パターンが一定のロボットでは、力行領域での動作が殆どである。例えば、時間t0~t1及び時間t3~t4において、モータ7は、力行領域の動作である。時間t1~t2及び時間t4~t5だけが回生領域の動作である。したがって、産業用ロボット向けの例では、力行領域に限定して、故障検出を行う。
本例に係る電源遮断装置10によれば、産業用ロボット等のように、動作パターンが一定のロボットの場合には、力行領域の動作状態において、電源遮断スイッチ2の故障を検出することができる。すなわち、モータ7の回転中でも電源遮断スイッチ2の故障を検出できる。
<モビリティ向け構成・手法>
次に、モビリティ向け構成・手法を説明する。モビリティ等の動作パターンが不定なロボットでは、モータ7は、力行領域及び回生領域に渡って万遍なく動作する。さらに、様々な負荷で動作するため、一定時間、電源遮断スイッチ2をオフした場合の降下電圧VTが一定にならない。そこで、動作時の負荷電流Iに応じて、電源遮断スイッチ2をオフする時間を変化させる。これにより、負荷の大小にかかわらず、降下電圧VTが一定となるように制御し、電源遮断スイッチ2の故障検出を行う。力行・回生の状態判定を行うため、電源1側に電流センサを搭載する。
図10は、実施形態に係る電源遮断装置のモビリティ向け構成を例示したブロック図である。図10に示すように、電源遮断装置11は、電源1、電源遮断スイッチ2、第1電圧センサ3、第2電圧センサ4、制御部5、モータドライバ6、モータ7の他に、電源側電流センサ8を備えている。
電源側電流センサ8は、電源遮断スイッチ2の電源1側に流れる電流Iを取得する。取得した電流Iを、上述した(4)式に代入する。よって、電源側電流センサ8で取得した電流Iに応じて、電源遮断スイッチ2をオフする時間Δtを変化させる。電源側電流センサ8で取得した電流Iを、電流センサ値Iとも呼ぶ。
図11は、実施形態に係る電源遮断装置のモビリティ向けの場合の動作を例示したフローチャート図である。
図11のステップS11に示すように、制御部5は、モータ7の制御を開始する。次に、ステップS12に示すように、制御部5は、電流センサ値Iを取得する。具体的には、制御部5は、電源側電流センサ8から電源1側の電流センサ値Iを取得する。
次に、ステップS13に示すように、制御部5は、モータ7の動作が回生領域か判定する。具体的には、制御部5は、図示しないトルクセンサにより検出されたモータ7のトルクと、図示しない速度センサにより検出されたモータ7の速度と、に基づいたマップ情報において、モータ7のトルク及び速度が回生領域内にあるかを判定する。
ステップS13において、モータ7の動作が回生領域の場合には、ステップS14に示すように、比較例に示した方法で故障を検出する。一方、ステップS13において、モータ7の動作が回生領域ではない力行領域の場合には、ステップS15に示すように、Δt[sec]を算出する。具体的には、制御部5は、ステップS12で取得した電流センサ値Iを、(4)式に代入してΔtを算出する。その後は、前述のステップS2~ステップS8と同様に電源遮断スイッチの故障を検出する。
本例に係る電源遮断装置11によれば、モビリティ等の動作パターンが不定なロボットのように、一定時間、電源遮断スイッチ2をオフした場合の降下電圧VTが一定にならない場合でも、動作時の負荷電流Iに応じて、電源遮断スイッチ2をオフする時間を変化させる。これにより、負荷の大小にかかわらず、降下電圧VTが一定となるように制御し、電源遮断スイッチ2の故障検出を行うことができる。すなわち、モータ7の回転中でも電源遮断スイッチ2の故障を検出できる。
<ヒューマノイド/介護ロボット向け構成・手法>
次に、ヒューマノイド/介護ロボット向け構成・手法を説明する。ヒューマノイドや介護ロボット等の人に密着するロボットでは、故障時の安全を確保するため、高速な故障検出が必要である。さらに、モビリティ向けと同様に、動作パターシも不定であって、様々ある。このため、軽負荷時には、故障検出に長時間を要する場合がある。
そこで、動作時のq軸電流Iqに応じて、モータ出力に影響のないd軸電流Idの電流値を変化させる。これにより、負荷の大小にかかわらず、電圧降下時間Δtを一定となるように制御することで、故障検出を行う。本例の電源遮断装置では、力行・回生の状態判定及びベクトル制御を行うため、インバータ側に電流センサ及び回転角センサを搭載している。
図12は、実施形態に係る電源遮断装置のヒューマノイド/介護ロボット向け構成を例示したブロック図である。図12に示すように、電源遮断装置12は、電源1、電源遮断スイッチ2、第1電圧センサ3、第2電圧センサ4、制御部5、モータドライバ6、モータ7の他に、モータドライバ側電流センサ18及び回転角センサ9を備えている。モータドライバ側電流センサ18は、電源遮断スイッチ2のモータドライバ6側に流れる電流Iを取得する。回転角センサ9は、モータの回転角を取得する。
図13は、実施形態に係る電源遮断装置のヒューマノイド/介護ロボット向けの場合の動作を例示したフローチャート図である。図13のステップS21に示すように、制御部5は、モータ7の制御を開始する。次に、ステップS22に示すように、制御部5は、電源遮断スイッチ2のモータドライバ6側に流れる電流Iを取得する。具体的には、制御部5は、モータドライバ側電流センサ18によって、モータドライバ6側に流れる電流Iを取得する。また、制御部5は、回転角センサ値θ[deg]を取得する。具体的には、制御部5は、回転角センサ9により、モータの回転角を取得する。そして、制御部5は、取得した電流I及び回転角センサ値θより、q軸電流Iq[A]を算出する。
次に、ステップS23に示すように、制御部5は、モータ7の動作が回生領域か判定する。ステップS23において、モータ7の動作が回生領域の場合には、ステップS24に示すように、比較例に示した方法で故障を検出する。一方、ステップS23において、モータ7の動作が回生領域ではない力行領域の場合には、ステップS25に示すように、故障検出に必要な目標d軸電流Id-ref[A]を出力する。
前述したように、ヒューマノイドや介護ロボット等の人に密着するロボットでは、故障時の安全を確保するため、高速な故障検出が必要である。さらに、モビリティ向けと同様に、動作パターシも不定であるため、軽負荷時には、故障検出に長時間を要する場合がある。そこで、時間Δtを、故障検出に適した時間に設定する。そして、Δtを満たすd軸電流Idを、q軸電流Iqに応じて以下に示すように計算する。なお、計算する代わりに、事前にq軸電流に対応するd軸電流Idをマップにして制御部5に記憶させてもよい。動作パターンに応じてd軸電流Idを変化させることで、負荷の大小、すなわち、q軸電流Iqの大小にかかわらず、一定時間で故障検出を可能とする。
図14は、実施形態に係る電源遮断装置のヒューマノイド/介護ロボット向けの場合のq軸電流及びd軸電流の関係を例示したグラフであり、横軸は、q軸電流Iqを示し、縦軸は、d軸電流Idを示す。図14に示すように、電流Iは、q軸電流Iq及びd軸電流Idを用いて、(5)式で表せる。
I=√(Iq2+Id2) (5)
ここで、(4)式に電流Iを代入すると、(6)になる。
Δt=CVT/√(Iq2+Id2) (6)
したがって、Δtが一定になるように、q軸電流Iqに合わせて、d軸電流Idを変化させる。例えば、曲線または直線にフィッティングによりq軸電流Iqに応じたd軸電流Idを決定してもよいし、テーブル参照によりq軸電流Iqに応じたd軸電流Idを決定してもよい。その後は、前述のステップS2~ステップS8と同様に電源遮断スイッチの故障を検出する。
本例に係る電源遮断装置12によれば、ヒューマノイドや介護ロボット等の人に密着するロボットのように、高速な故障検出が必要な場合でも、q軸電流Iqに応じたd軸電流Idを設定することにより、時間Δtを一定とすることで、電源遮断スイッチ2の故障検出を行うことができる。すなわち、モータ7の回転中でも電源遮断スイッチ2の故障を検出できる。
<探索・災害対応ロボット向け構成・手法>
次に、探索・災害対応ロボット向け構成・手法を説明する。探索・災害対応ロボット等の屋外や特定の過酷な環境で動作するロボットでは、その周辺環境温度の変化が激しい。容量成分Cは、低温及び高温時に変化しやすいため、一定時間、電源遮断スイッチ2をオフにした場合の降下電圧VTは一定にならない。
そこで、動作時のモータドライバ6におけるインバータ温度に応じて、電源遮断スイッチ2をオフする時間を変化させる。これにより、動作時のインバータ温度の高低にかかわらず、降下電圧VTが一定となるように制御することで、故障検出を行う。インバータ温度を監視するため、温度センサを搭載する。
図15は、実施形態に係る電源遮断装置の探索・災害対応ロボット向け構成を例示したブロック図である。図15に示すように、電源遮断装置13は、電源1、電源遮断スイッチ2、第1電圧センサ3、第2電圧センサ4、制御部5、モータドライバ6、モータ7の他に、電源側電流センサ8及び温度センサ19を備えている。電源側電流センサ8は、電源遮断スイッチ2の電源1側に流れる電流センサ値Iを取得する。温度センサ19は、モータドライバ6におけるインバータの温度を取得する。
図16は、実施形態に係る電源遮断装置の探索・災害対応ロボット向けの場合の動作を例示したフローチャート図である。図16のステップS31に示すように、制御部5は、モータ7の制御を開始する。次に、ステップS32に示すように、制御部5は、電流センサ値I及び温度センサ値Tを取得する。具体的には、制御部5は、電源側電流センサ8から電流センサ値Iを取得する。また、制御部5は、温度センサ19から温度センサ値Tを取得する。
次に、ステップS33に示すように、制御部5は、モータ7の動作が回生領域か判定する。ステップS33において、モータ7の動作が回生領域の場合には、ステップS34に示すように、比較例に示した方法で故障を検出する。一方、ステップS33において、モータ7の動作が回生領域ではない力行領域の場合には、ステップS35に示すように、補正後容量Cを算出し、Δt[sec]を算出する。
前述したように、探索・災害対応ロボット等の屋外や特定の過酷な環境で動作するロボットでは、モータドライバ6の容量成分Cは、低温及び高温時に変化しやすいので、一定時間、電源遮断スイッチ2をオフにした場合の降下電圧VTは一定にならない。そこで、動作時のモータドライバ6におけるインバータ温度に応じて、電源遮断スイッチ2をオフする時間を変化させる。
図17は、実施形態に係る電源遮断装置の探索・災害対応ロボット向けの場合の容量補正率を例示したグラフであり、横軸は、温度センサ値Tを示し、縦軸は、容量C補正率を示す。図17に示すように、容量Cの補正率を温度センサ値Tに応じて測定しておく。例えば、温度センサ値T=-50[℃]の場合には、容量Cは、C×0.8である。そして、算出した補正後容量Cを(4)式に代入することにより、Δt[sec]を算出する。その後は、前述のステップS2~ステップS8と同様に電源遮断スイッチの故障を検出する。
本例に係る電源遮断装置13によれば、探索・災害対応ロボット等の屋外や特定の過酷な環境で動作するロボットのように、容量成分Cが低温及び高温時に変化しやすい場合でも、インバータ温度に応じた容量C補正率を用いてΔtを算出する。これにより、電源遮断スイッチ2の故障検出を行うことができる。すなわち、モータ7の回転中でも電源遮断スイッチ2の故障を検出できる。
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、上記の構成に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、変更することが可能である。