JP7101061B2 - ポリアセタール粉末及びその使用方法、並びに付加製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1~3では、これら上述の問題点について十分な検討がなされておらず、ポリアセタール粉末の積層性、得られる造形品の機械的物性及び造形精度を高める点で、未だ改良の余地があった。
[1]
平均粒子径(D50)が30μm以上70μm以下であり、
オキシメチレンユニット100molに対して0.1mol以上1.3mol以下のコモノマーユニットを有するポリアセタールコポリマーを含み、
融点が167℃以上178℃以下であり、
結晶化開始温度が140℃以上152℃以下である、
ことを特徴とする、ポリアセタール粉末。
[2]
示差走査熱量(DSC)測定におけるファーストスキャンの融点とセカンドスキャンの融点との差が0℃以上5℃以下である、[1]に記載のポリアセタール粉末。
[3]
結晶化速度が30秒以上50秒以下である、[1]または[2]に記載のポリアセタール粉末。
[4]
固め嵩密度をゆるめ嵩密度で除した値(固め嵩密度/ゆるめ嵩密度)が、1.45以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
[5]
径が前記D50の2倍以上である粒子の割合が、10vol%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
[6]
径が前記D50の0.2倍以下である粒子の割合が、10vol%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
[7]
前記D50が65μm以下であり、径が前記D50の0.2倍以下である粒子の割合が3vol%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
[8]
前記ポリアセタール粉末の融点より10℃低い温度で1時間保持したときの重量減少率が、5%以下である、[1]~[7]のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
[9]
疎水性シリカを0.05質量%以上1.0質量%以下含む、[1]~[8]のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
[10]
前記ポリアセタール粉末を構成する粒子の平均短径長径比が、0.50以上である、[1]~[9]のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
[11]
前記ポリアセタール粉末を構成する粒子の平均表面平滑形状係数が、0.80以上である、[1]~[10]のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
[12]
付加製造に用いられる、[1]~[11]のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
付加製造に用いることを特徴とする、[1]~[11]のいずれかに記載のポリアセタール粉末の使用方法。
[1]~[11]のいずれかに記載のポリアセタール粉末を造形材料として用いることを特徴とする、付加製造方法。
なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
また、本発明の実施の形態において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。
本実施形態のポリアセタール粉末は、平均粒子径(D50)が30μm以上70μm以下であり、オキシメチレンユニット100molに対して0.1mol以上1.3mol以下のコモノマーユニットを主鎖に有するポリアセタールコポリマーを含み、融点が167℃以上178℃以下であり、結晶化開始温度が140℃以上152℃以下である、ことを特徴とする。
本実施形態のポリアセタール粉末は、積層性に優れ、付加製造の造形材料として好適に用いることができ、高い造形精度及び高い機械的物性を有する造形品を得ることができる。
以下、本実施形態のポリアセタール粉末の粒子特性、樹脂特性、及び粉末特性等について説明する。
本実施形態のポリアセタール粉末は、平均粒子径(D50)が、30μm以上70μm以下であることを特徴とする。ポリアセタール粉末の平均粒子径(D50)が前記範囲内であれば、作業性を十分に確保することができ、例えば100μm程度の厚みに十分均一に敷き詰めることができ、得られる造形品における微小な空隙(ボイド)の発生を十分に抑制することができる。
ポリアセタール粉末のD50が30μm未満であると、作業性が悪化し、一方、70μmを超えると、例えば100μm程度の薄さに均一に敷き詰めることが困難となり、得られる造形品に微小な空隙(ボイド)が多く発生する虞がある。
同様の観点から、ポリアセタール粉末のD50は、33μm以上67μm以下であることが好ましく、35μm以上65μm以下であることがより好ましい。
本実施形態のポリアセタール粉末のD50は、レーザー回折・散乱法によって湿式(溶媒:水)で測定した体積基準の粒度分布から求められる、微粒径側から累積した50%粒子径(メジアン径)を意味し、より具体的には、後述の実施例記載の方法によって測定することができる。
本実施形態のポリアセタール粉末は、樹脂成分として、オキシメチレンユニット100molに対して0.1mol以上1.3mol以下のコモノマーユニットを有するポリアセタールコポリマーを含むことを特徴とする。樹脂成分として含まれるポリアセタールコポリマーのコモノマーユニットの含有率が前記範囲内であれば、熱安定性が良好で、レーザー照射時にガスの発生が抑えられ、ミクロボイドの少ない造形品が得られるポリアセタール粉末を得ることができる。また、造形機内に長時間滞留しても劣化が少なく、リサイクルが可能なポリアセタール粉末を得ることができる。
同様の観点から、ポリアセタールコポリマーのコモノマーユニット含有率は、オキシメチレンユニット100molに対して、0.3mol以上1.1mol以下であることが好ましく、0.5mol以上0.9mol以下であることが更に好ましい。
コモノマーユニットは、ポリアセタールコポリマーの主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよく、主鎖と側鎖の両方に含まれていてもよい。
そして、上述のような特定のコモノマーユニット含有率を有するポリアセタールコポリマーは、例えば、後述する製造方法によって製造することができる。
なお、以下の手順は、コモノマーユニットが炭素数2以上のオキシアルキレンユニットであるポリアセタールコポリマーについて述べる。
即ち、ポリアセタールコポリマーを、ヘキサフルオロイソプロパノールにより濃度1.5質量%となるように24時間かけて溶解させ、この溶解液を用いて1H-NMR解析を行い、オキシメチレンユニットと、炭素数2以上のオキシアルキレンユニットと、の帰属ピ-クの積分値の比率から、オキシメチレンユニット(a=100mol)に対する炭素数2以上のオキシアルキレンユニット(bmol)の含有率(b/a:mol/100mol)を求めることができる。
本実施形態のポリアセタール粉末は、融点が167℃以上178℃以下であることを特徴とする。融点が前記範囲内であれば、ポリアセタール粉末の結晶化開始温度との温度差(プロセスウィンドウ)を十分広くすることができ、造形時の造形エリア内の温度差に対するポリアセタール粉末の許容性を広げ(例えば、造形エリアの温度が、周囲への放熱等により、設定温度よりも低くなってしまっている部分があっても、造形時の反りの発生を抑制でき)、得られる造形品の造形精度を高めることができる。また、一度に多量の造形品を量産する場合は、造形装置内の温度差に対するポリアセタール粉末の許容性を広げ、造形品間の造形精度のばらつきを抑制することができる。
同様の観点から、ポリアセタール粉末の融点は、168℃以上176℃以下であることが好ましく、169℃以上174℃以下であることが更に好ましい。
なお、通常、ポリアセタールコポリマー中のコモノマー含有率を増やすと結晶化度が下がり、ポリアセタール粉末の融点を低くすることができる。逆に、ポリアセタールコポリマー中のコモノマー含有率を減らせば結晶化度が上がり、ポリアセタール粉末の融点を高くすることができる。
本実施形態のポリアセタール粉末は、結晶化開始温度が140℃以上152℃以下であることを特徴とする。
付加製造中の造形エリア内及び造形装置内の温度は、樹脂粉末の結晶化開始温度より高温に常時保たれている。しかし、造形エリア内又は造形装置内において多少の温度差(温度ムラ)が生じた場合、加熱-焼結された造形層において結晶化開始温度まで冷却された部分のポリアセタールが結晶化し、特に積層方向に反りが生じ、得られる造形品において造形精度を低下させていた。この点に関し、本発明者らは、ポリアセタール粉末の融点と結晶化開始温度との温度差を大きくすることによって造形エリア内及び造形装置内での温度差(温度ムラ)に対する許容性を広げることができ、造形中の反りを抑制し、得られる造形品の造形精度を高めることができることを見出した。そして、一度に多量の造形品を量産する場合は、造形品間の造形精度のばらつきも抑えることができることを見出した。
同様の観点から、ポリアセタール粉末の結晶化開始温度は、144℃以上152℃以下であることが好ましく、147℃以上151℃以下であることが更に好ましい。
ポリアセタール粉末の結晶化開始温度は、示差走査熱量(DSC)測定によって測定することができ、より具体的には、後述の実施例記載の方法によって測定することができる。
上記範囲の結晶化温度を有するポリアセタール粉末は、ポリアセタールコポリマーのコモノマーユニットの主鎖中の含有率及び/又は結晶核剤の量、等を調整することによって得ることができる。
本実施形態のポリアセタール粉末は、示差走査熱量(DSC)測定におけるファーストスキャンの融点とセカンドスキャンの融点との差が0℃以上5℃以下であることが好ましい。
樹脂粉末を造形材料として使用する付加製造において重要となるプロセスウィンドウの広さを決めることになるポリアセタール粉末の融点は、DSC測定におけるファーストスキャンの融点に相当する。ファーストスキャンの融点は、ポリアセタール粉末が製造されるまでに受けた熱履歴を反映している。
一方、セカンドスキャンの融点は、樹脂自体の実力としての融点であり、高い方が好ましい。ファーストスキャンの融点が低くてもセカンドスキャンの融点が高ければ、後述するアニール等の後処理を事前にすることで、ファーストスキャンの融点を高めることが可能である。
同様の観点から、ポリアセタール粉末における、DSC測定におけるファーストスキャンの融点とセカンドスキャンの融点との差は、0℃以上4℃以下であることがより好ましく、0℃以上3℃以下であることが更に好ましい。
なお、DSC測定におけるファーストスキャンの融点とセカンドスキャンの融点との差は、DSC測定で測定されたファーストスキャンの融点及びセカンドスキャンの融点のうち、高温である方の融点から低温である方の融点を差し引いた値とする。
上記範囲内のファーストスキャンの融点とセカンドスキャンの融点との差を有するポリアセタール粉末は、製造過程における凍結粉砕の条件を制御すること、凍結粉砕後で分級工程の前又は後にアニール(融点より低温かつ結晶成長が可能な程度の高温で一定時間保持すること。例えば、120℃で1時間など)によって結晶成長させること、等によって得ることができる。
本実施形態のポリアセタール粉末は、結晶化速度が30秒以上50秒以下であることが好ましい。結晶化速度が前記範囲内であれば、造形途中の造形エリア内や層間の温度ムラを許容して、造形中の反りを一層抑制し、得られる造形品の造形精度を高めることができる。一方、結晶化速度が30秒未満であると、樹脂の結晶化が早過ぎて、造形途中の造形エリア内や層間の温度ムラを許容することができず、造形中に反りが生じて、造形品の造形精度が低下する恐れがある。また、結晶化速度が50秒超であると、樹脂の結晶化が遅過ぎて、造形部と非造形部との境界線の精密さが損なわれて、造形品の輪郭の造形精度が低下する恐れがある。
同様の観点から、ポリアセタール粉末の結晶化速度は、30秒以上47秒以下であることがより好ましく、31秒以上45秒以下であることが更に好ましい。
ここで、結晶化速度は、DSC測定において、一旦融解させたポリアセタール粉末を急速降温して結晶化開始温度付近の所定温度で保持し結晶化による発熱ピークを観察して、前記所定温度での保持開始から発熱ピークの最高温度(ピークトップ温度)に達するまでの時間とする。より具体的には、後述の実施例記載の方法によって測定することができる。
上記範囲内の結晶化速度を有するポリアセタール粉末は、上述のように、ポリアセタールコポリマーのコモノマーユニットの含有率や、結晶核剤の有無、種類、及び添加量などを適宜調整することによって得ることができる。
本実施形態のポリアセタール粉末は、メルトフローレート(MFR)が70g/10分未満であることが好ましい。MFRが70g/10分未満である程にポリアセタール自体が高分子量体であれば、クリープ特性に優れた造形品が得られる。
また、本実施形態のポリアセタール粉末は、メルトフローレート(MFR)が2.5g/10分以上であることも好ましい。ポリアセタール粉末のMFRが2.5g/10分以上であることにより、レーザーで溶融した際に、ポリアセタールが流れることで粒子同士の隙間をより効率的に埋めることができ、これにより、造形品中のボイドがより少なくなり、引張強さ等の機械的物性に優れた造形品が得られる。
同様の観点から、ポリアセタール粉末のMFRは、5g/10分以上55g/10分以下であることがより好ましく、20g/10分以上40g/10分以下であることが更に好ましい。
ここで、ポリアセタール粉末のMFRは、ISO1133(条件D・温度190℃)に準拠して測定されるものである。
上記範囲内のMFRを有するポリアセタール粉末は、ポリアセタールコポリマーの重合工程において連鎖移動剤の添加量を調整することによって得ることができる。
本実施形態のポリアセタール粉末は、当該ポリアセタール粉末の融点より10℃低い温度で1時間保持したときの重量減少率が、5%以下であることが好ましい。ポリアセタール粉末の上記重量減少率が5%以下であることにより、高い熱安定性を保持することができ、例えばポリアセタールからなるポリアセタール粉末を用いた場合に、加熱によるホルムアルデヒド等の揮発性有機物質(VOC)の放出を十分に抑制することができる。
同様の観点から、ポリアセタール粉末の上記重量減少率は、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。
ポリアセタール粉末の上記重量減少率は、熱重量測定装置で測定することができ、より具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
上記範囲内の重量減少率を有するポリアセタール粉末は、上記ポリアセタールコポリマー以外の成分、例えば、後述する他の樹脂、各種添加剤の種類及び/又は添加量を調整することによって得ることができる。
本実施形態のポリアセタール粉末は、固め嵩密度をゆるめ嵩密度で除した値(固め嵩密度/ゆるめ嵩密度)が、1.45以下であることが好ましい。固め嵩密度をゆるめ嵩密度で除した値が前記範囲内であれば、ポリアセタール粉末が流動性及び積層性に優れ、ボイドの発生を一層抑制することができ、造形品を高密度にして機械的物性を一層高めることができる。
同様の観点から、固め嵩密度をゆるめ嵩密度で除した値は、1.40以下であることがより好ましく、1.36以下であることが更に好ましい。
ゆるめ嵩密度は、所定容積の容器内に粉末を疎充填した(タップしない)状態で測定する密度である。固め嵩密度は、粉末を充填した所定容積の容器を一定高さから一定速度で繰り返し落下させ(タップ)、容器内の粉末の嵩密度がほぼ一定となるまで密に充填した状態で測定する密度である。固め嵩密度、ゆるめ嵩密度は、具体的には、後述の実施例記載の方法によって測定することができる。
本実施形態のポリアセタール粉末は、径が平均粒子径(D50)の2倍以上である粒子(例えば、D50が50μmである場合には、径が100μm以上である粒子)の割合が、10vol%以下であることが好ましい。上記割合が10vol%以下であることで、ポリアセタール粉末の流動性を向上させ、造形品を高密度にして、機械的物性を高めることが可能となる上、造形品の表面をより滑らかにでき、造形精度が向上するので、精密な部品を製造し易くなる。
同様の観点から、ポリアセタール粉末における、径がD50の2倍以上である粒子の割合は、5vol%以下であることがより好ましく、3vol%以下であることが更に好ましく、実質的に0vol%であることがより更に好ましい。
造形に用いるレーザービームは、照射スポット寸法を非常に小さくできるので、造形品の輪郭の解像度を非常に鮮明にすることができる。しかしながら、レーザーでの加熱により融着した箇所からの熱伝導により、レーザーが走査された箇所の外側にある粉末が焼結対象の部分に直接融着し、レーザー走査領域を越え、従って設計寸法を越えて粉末が融着する恐れがある。また、焼結からの熱が残っていると、単に粉末をその層の上に新たに敷き並べただけでも、当該粉末が先の層の焼結部分に焼結して、いわゆる層間成長が生じる恐れがある。このような層間成長が生じた場合には、造形精度が低下する上、完成品から未焼結粉末を除去することが困難になる。この点に関し、本発明者らは、径がD50の0.2倍以下である粒子が、特に融着し易く、造形精度に影響を与えること、並びに、その割合を10vol%以下とすることで、造形精度が高まり、精密な部品を製造し易くなることを見出した。更に、上記割合が10vol%以下であることで、ポリアセタール粉末の流動性を向上させ、造形品を高密度にして、機械的物性を高めることも可能となる。
同様の観点から、ポリアセタール粉末における、径がD50の0.2倍以下である粒子の割合は、5vol%以下であることがより好ましく、3vol%以下であることが更に好ましく、実質的に0vol%であることがより更に好ましい。
同様の観点から、D50が63μm以下であり、径がD50の0.2倍以下である粒子の割合が2vol%以下であることがより好ましく、D50が62μm以下であり、径がD50の0.2倍以下である粒子の割合が1vol%以下であることが更に好ましい。
径がD50の2倍以上である粒子の割合又は/及び径がD50の0.2倍以下である粒子の割合が上記範囲内のポリアセタール粉末は、ポリアセタール粉末の製造方法の粉砕工程及び/又は分級工程における各種条件を調整することによって得ることができる。
本実施形態のポリアセタール粉末を構成する粒子は、流動性の観点から、球形であることが好ましい。一般に、粒子材料としてのポリアセタール等の樹脂は、重合により微粒子を直接形成することが難しく、かかる樹脂を用いて粉末を製造するためには、任意の方法で得たペレットを粉砕するなどといった操作が必要となる。そのため、その際に、粉砕方法や粉砕条件を適宜調整して、球形に近い粒子を直接得るか、或いは、粉砕した粉末を後加工により加熱しながら撹拌し、粒子の角を取って丸めるなどして、球形の粒子を得ることができる。
以下、本実施形態におけるポリアセタール粉末を構成する粒子の形状について、より具体的に説明する。
本実施形態のポリアセタール粉末を構成する粒子は、平均短径長径比が0.50以上であることが好ましい。粒子の平均短径長径比が0.50以上であることで、いびつさを回避して流動性を高め、粉末を隙間なく敷き並べることができる。
同様の観点から、粒子の平均短径長径比は、0.70以上であることがより好ましく、0.80以上であることが更に好ましい。
ここで、平均短径長径比とは、粒子の長径に対する短径の比(短径/長径)をいい、平均短径長径比とは、任意に選択した100個の粒子の短径長径比の平均値をいう。また、短径、長径とは、それぞれ、粒子の境界画素上に外接する面積が最小となる外接長方形の短辺、長辺をいう。
ポリアセタール粉末を構成する粒子の平均短径長径比は、後述する実施例記載の方法によって測定することができる。
粒子の平均短径長径比が上記範囲内であるポリアセタール粉末は、ポリアセタール粉末の製造方法の粉砕工程及び/又は分級工程における各種条件を調整することによって得ることができる。
本実施形態のポリアセタール粉末を構成する粒子は、平均表面平滑形状係数が0.80以上であることが好ましい。粒子の平均表面平滑形状係数が0.80以上であることで、粒子がより規則的で凹凸の少ない形状となる結果、粒子の流動性をより向上させることができる。同様の観点から、粒子の平均表面平滑形状係数は、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることが更に好ましい。
ここで、表面平滑形状係数とは、粒子の円又は楕円らしさを表す指数であり、粒子の短径、長径及び周囲長の測定値を用い、以下の式により表わされる。
表面平滑形状係数=[π×(粒子の長径+粒子の短径)]/[2×粒子の周囲長]
そして、平均表面平滑形状係数とは、任意に選択した100個の粒子の表面平滑形状係数の平均値をいう。
ポリアセタール粉末を構成する粒子の平均表面平滑形状係数は、後述する実施例記載の方法によって測定することができる。
粒子の平均表面平滑形状係数が上記範囲内であるポリアセタール粉末は、ポリアセタール粉末の製造方法の粉砕工程及び/又は分級工程における各種条件を調整することによって得ることができる。
本実施形態のポリアセタール粉末は、ポリアセタール粉末100質量%に対して、疎水性シリカを0.05質量%以上1.0質量%以下含むことが好ましい。疎水性シリカを前記範囲内で含むことにより、ポリアセタール粉末の流動性を向上させ優れた積層性を付与し、造形品の機械的物性を一層高めることができる。
同様の観点から、疎水性シリカの含有量は、0.1質量%以上0.7質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上0.5質量%以下であることが更に好ましい。
疎水性シリカとしては、特に限定されないが、乾式法シリカであることが好ましい。
疎水性シリカの疎水化表面改質は、特に限定されないが、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、及びシリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも1種以上で疎水化表面改質されていることが好ましい。
疎水性シリカのBET比表面積は、特に限定されないが、50m2/g以上300m2/g以下であることが好ましく、100m2/g以上250m2/g以下であることがより好ましく、130m2/g以上200m2/g以下であることが更に好ましい。
なお、本実施形態のポリアセタール粉末が疎水性シリカを含む場合、ポリアセタール粉末の平均粒子径(D50)は、疎水性シリカが粒子表面に付着して存在するポリアセタール粉末について測定した値とする。
以下、本実施形態のポリアセタール粉末の成分組成について具体的に説明する。
本実施形態のポリアセタール粉末は、樹脂成分として、オキシメチレンユニット100molに対して0.1mol以上1.3mol以下のコモノマーユニットを含有するポリアセタールコポリマーを含む。本実施形態のポリアセタール粉末は、樹脂成分として前記ポリアセタールコポリマーのみを含んでいてもよく、前記ポリアセタールコポリマー以外の他の樹脂を少量含んでいてもよい。
本実施形態のポリアセタール粉末が、他の樹脂を少量含む場合、樹脂成分の含有量100質量%に対して、前記ポリアセタールコポリマーを85質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことが更に好ましく、95質量%以上含むことがより更に好ましく、97質量%以上含むことが一層好ましい。
前記所定のコモノマーユニット含有率を有するポリアセタールコポリマーは、市販の製品であってもよく、下記で説明するポリアセタールコポリマーの製造方法で製造したものであってもよい。
以下、本実施形態のポリアセタール粉末に樹脂として含まれる、上記所定のコモノマーユニット含有率を有するポリアセタールコポリマーの製造方法について詳述する。
重合工程では、公知の重合法(例えば、米国特許第3027352号明細書、米国特許3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、独国特許発明第1495228号明細書、独国特許発明第1720358、独国特許発明第3018898号明細書、特開昭58-98322号公報及び特開平7-70267号公報に記載の方法)により、反応器中で、連鎖移動剤や重合触媒を用いて主モノマーとコモノマーとを共重合して、末端が安定化されていない粗ポリアセタールコポリマーを得ることができる。
なお、樹脂粉末の材料としては、この粗ポリアセタールコポリマー自体を用いることもできるが、後述する末端安定化工程により、粗ポリアセタールコポリマーの末端を安定化させたものを用いることが好ましい。
ポリアセタールコポリマーの製造に使用する主モノマーとしては、例えば、ホルムアルデヒド又はその3量体であるトリオキサン若しくは4量体であるテトラオキサン等の環状オリゴマーなどが挙げられる。
本実施形態において「主モノマー」とは、全モノマー量に対して50質量%以上含有されているモノマーユニットをいう。
ポリアセタールコポリマーの製造に使用するコモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、分子中に炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを有する環状エーテル化合物が挙げられる。
環状エーテル化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリアセタールコポリマーの製造においては、連鎖移動剤を用いることが好ましい。連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒドのジアルキルアセタール及びそのオリゴマー;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノール等の低級脂肪族アルコールなどが挙げられる。ホルムアルデヒドのジアルキルアセタールのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びブチル等の低級脂肪族アルキル基であることが好ましい。
連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。いずれの場合においても、得られるポリアセタールコポリマーは不安定末端数の少ないものが好ましい。
ポリアセタールコポリマーの製造に使用する重合触媒としては、特に限定されないが、ルイス酸、プロトン酸、及びプロトン酸のエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。
触媒中和失活剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリアセタールコポリマーの製造に使用する反応器としては、特に限定されないが、例えば、バッチ式の攪拌機付き反応槽、連続式のコニーダー、二軸スクリュー式連続押し出し混練機、二軸パドル型連続混合機などが挙げられる。
反応器は、ジャケット等の反応混合物を加熱又は冷却できる構造を、胴の外周に有することが好ましい。
末端安定化工程では、重合工程で得られた粗ポリアセタールコポリマーに含まれる不安定末端部分を分解除去することによって、安定したポリアセタールコポリマーを得ることができる。なお、末端安定化を行ったポリアセタールは、樹脂粉末の製造に先立ち、乾燥させておくことが好ましい。
粗ポリオキシメチレンコポリマーに含まれる不安定末端部分の分解除去に用いる分解除去剤としては、例えば、アンモニア、脂肪族アミン;水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;無機弱酸塩;及び有機弱酸塩などの塩基性物質が挙げられる。
分解除去剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のポリアセタール粉末は、樹脂として、上述する特定のコモノマーユニット含有率のポリアセタールコポリマー以外の他の樹脂を少量含んでいてもよい。
樹脂成分として含まれ得る他の樹脂の具体例としては、特に制限はされず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフレラート(PBT)等の結晶性樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本実施形態におけるポリアセタール粉末は、例えば、酸化防止剤、安定剤(熱安定剤等)、耐候(光)剤、潤滑剤(離型剤等)、結晶核剤、無機・有機の充填剤、導電剤・帯電防止剤、外観改良剤(顔料や染料等)などの添加剤を含んでいてもよい。特に、本実施形態におけるポリアセタール粉末は、添加剤として酸化防止剤及び熱安定剤を含むことが好ましい。酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、熱安定剤は、ホルムアルデヒド反応性窒素を含むものが好ましい。
添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3’-メチル-5’-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-テトラデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、1,4-ブタンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。好ましくは、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。
酸化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
安定剤としては、熱安定剤が好適に用いられる。
熱安定剤としては、例えば、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの縮合物、尿素、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物などが挙げられる。
〔(M2+)1-X(M3+)X(OH)2〕X+〔(An-)X/n・mH2O〕X-
(上記式中、M2+は2価金属、M3+は3価金属、An-はn価(nは1以上の整数)のアニオンを示し、Xは、0<X≦0.33の範囲にあり、mは正数を示す。)
上記式において、M2+の例としては、Mg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+などが挙げられ、M3+の例としては、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、In3+などが挙げられ、An-の例としては、OH-、F-、Cl-、Br-、NO3-、CO3 2-、SO4 2-、Fe(CN)6 3-、CH3COO-、シュウ酸イオン、サリチル酸イオンなどが挙げられる。An-の例としては、OH-、CO3 2-が好ましい。
安定剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
耐候(光)剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、蓚酸アニリド系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。
耐候(光)剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
潤滑剤としては、例えば、アルコール、脂肪酸及びそれらの脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール、平均重合度が10~500であるオレフィン化合物、シリコーンなどが挙げられる。
潤滑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
結晶核剤は、例えば、タルク、シリカ、石英粉末、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、葉ロウ石、クレイ、珪藻土、ウォラストナイト等の珪酸塩;酸化鉄や酸化チタンやアルミナ等の金属酸化物;硫酸カルシウムや硫酸バリウム等の金属硫酸塩;炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムやドロマイト等の炭酸塩;その他炭化珪素、窒化硅素、窒化ホウ素、各種金属粉末など、ポリアセタール等の樹脂において通常知られている結晶核生成無機物の細分された固体であればよい。結晶核剤としては、窒化ホウ素及びタルクが好ましい。
結晶核剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機系充填剤としては、例えば、金属粉(アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銀など)、酸化物(酸化ケイ素、酸化鉄、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛など)、水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、珪酸塩(タルク、マイカ、クレイ、ベントナイトなど)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなど)、カーボン系物質(カーボンブラック、黒鉛、カーボンファイバーなど)、硫酸塩、窒化ホウ素、窒化珪素などが挙げられる。
導電剤としては、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ又はナノ繊維又はナノ粒子、金属粉末又は繊維などが挙げられる。
導電剤・帯電防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
外観改良剤としては、例えば、無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料、各種染料などが挙げられる。
外観改良剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態におけるポリアセタール粉末は、例えば、ポリアセタール等の樹脂材料を造粒する工程(造粒工程)と、造粒された樹脂材料を粉砕する工程(粉砕工程)と、粉砕した樹脂材料を篩にかけて所望の粉体特性を有するポリアセタール粉末を得る工程(分級工程)とを実施することにより、製造することができる。また、任意により、分級工程に次いで疎水性シリカ混合工程を実施してもよい。
以下、各工程について具体的に説明する。
造粒工程では、例えば、上述のようにして得られるポリアセタール等の樹脂材料を、ニーダー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機などを用いて溶融混練することにより、ペレットを得ることができる。
或いは、造粒工程では、樹脂材料に対する添加剤の分散性を高めるために、樹脂材料の一部又は全部を混合前に任意に粉砕し、ヘンシェルミキサー、タンブラー又はV字型ブレンダーなどを用いて、アミド化合物及び上述した添加剤を添加して混合し、得られる樹脂組成物を溶融混錬してもよい。この場合、展着剤を用いて更に分散性を高めてもよい。
上述のアミド化合物は、例えば樹脂材料としてポリアセタールを用いた場合において、樹脂組成物から分解等により発生したホルムアルデヒドと反応することができ、ホルムアルデヒドが酸化してギ酸等になって分解を促進させることを抑制することができる。
樹脂組成物中の添加剤の含有量は、ポリアセタール等の樹脂材料100質量部に対し、100質量部以下であることが好ましい。添加剤の含有量を100質量部以下とすることにより、造形機内で長時間高温で滞留しても物性の変化が抑えられ、リサイクルが可能であり、得られる造形品の機械強度も良好となる傾向にある。同様の観点から、樹脂組成物中の添加剤の含有量は、樹脂材料100質量部に対し、50質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることが更に好ましい。
展着剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素、これらの変性物並びにポリオールの脂肪酸エステルなどが挙げられる。
展着剤は、1種単独で用いてもよく、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素及びこれらの変性物の混合物など、2種以上を併用してもよい。
粉砕工程では、造粒工程で得られたペレットを粉砕して、粉末を得ることができる。粉砕方法としては、特に制限されず、例えば、常温粉砕、凍結粉砕、等が挙げられる。また、造粒工程で得られたペレットを溶媒に溶解させたのち、析出させる方法も挙げられる。
分級工程では、粉砕工程で得られた粉末を篩にかけることにより、平均粒子径(D50)、径がD50の2倍以上である粒子の割合、径がD50の0.5倍以下である粒子の割合などを適宜調整して、最終的に本実施形態のポリアセタール粉末を得ることができる。
本実施形態のポリアセタール粉末の製造方法においては、任意により、分級工程に次いで疎水性シリカ混合工程を実施してもよい。
疎水性シリカ混合工程では、分級工程で得られたポリアセタール粉末と、疎水性シリカとを混合することにより、ポリアセタール粉末を構成する粒子の表面に疎水性シリカが付着し、ポリアセタール粉末の流動性を向上させることができる。
混合方法としては、特に制限されず、通常の粉体混合機、例えば、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等を使用して混合すればよい。また、手動による撹拌等で混合してもよい。
本実施形態のポリアセタール粉末は、付加製造技術に好適に用いられ、特に選択的レーザー焼結法に好適に用いられる。本実施形態におけるポリアセタール粉末は、粉体特性及び粒子特性の適正化が図られているため、例えば100μm程度の薄さに均一に敷き並べることが可能である。従って、この樹脂粉末を選択的レーザー焼結法に用いて付加製造を行うことにより、微小な空隙(ボイド)が十分に抑制された、高い機械的物性を有する造形品を得ることができる。このような造形品は、自動車部品、電気・電子部品、工業部品、医療用部品等の機構部品などに、広範囲に亘って適用可能である。
本実施形態のポリアセタール粉末の使用方法は、上述した本実施形態のポリアセタール粉末を、付加製造に用いることを含む。
付加製造に使用する付加製造技術としては、特に限定されず、選択的レーザー焼結法や、樹脂粉末を敷き詰めた造形エリアの造形したい箇所に熱吸収剤を塗布しヒーターで上面から熱を与えて造形する、熱溶融法などが挙げられる。
なお、本実施形態のポリアセタール粉末の使用方法において、具体的な使用条件等は、特に制限されず、使用する付加製造技術、造形品の用途及び目的等に応じて適宜選択して、ポリアセタール粉末を使用することができる。
本実施形態の付加製造方法は、上述した本実施形態のポリアセタール粉末を造形材料として用いることを含む。本実施形態の付加製造方法によれば、上述した本実施形態のポリアセタール粉末を用いるため、高い造形精度及び機械的物性を有する造形品を得ることができる。
本実施形態の付加製造方法で使用する付加製造技術は、樹脂粉末を造形材料として用いることができるものであれば特に限定されず、例えば、選択的レーザー焼結法、熱溶融法、などが挙げられる。
本実施形態の付加製造方法における具体的な造形条件等は、特に制限されず、使用する付加製造技術及び造形品の用途などに応じて適宜選択して、造形することができる。
実施例及び比較例で得られたポリアセタール粉末について、平均粒子径(D50)、径がD50の2倍以上である粒子の割合、径がD50の0.2倍以下である粒子の割合、コモノマーユニット含有率、融点、結晶化開始温度、DSC測定におけるファーストスキャンとセカンドスキャンの融点差、結晶化速度、重量減少率、メルトフローレート、固め嵩密度/ゆるめ嵩密度の値、粒子の平均短径長径比、粒子の平均表面平滑形状係数を測定した。各測定方法は、以下のとおりである。
マルバーン社製のマスターサイザーを使用し、平均粒子径(D50)、径がD50の2倍以上である粒子の割合、径がD50の0.2倍以下である粒子の割合を測定した。
コモノマーユニットの含有率については、1H-NMR法を用いて、以下の手順で求めた。
即ち、ポリアセタールコポリマーを、ヘキサフルオロイソプロパノールにより濃度1.5質量%となるように24時間かけて溶解させ、この溶解液を用いて1H-NMR解析(磁場強度:400MHz、測定溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール、基準物質:テトラメチルシラン、温度55℃、積算回数500回)を行った。
1H-NMR解析で得られたオキシメチレンユニットの帰属ピーク(δ(ppm):4.8~5.4)の積分値と、コモノマーユニットである炭素数2以上のオキシアルキレンユニットの帰属ピーク(δ(ppm):例えば、コモノマーユニットがオキシエチレンユニットである場合は、3.6~4.0)の積分値との比率から、オキシメチレンユニット(a=100mol)に対するコモノマーユニットユニット(bmol)の含有率(b/a:mol/100mol)を求めた。
示差走査熱量計(Parkin Elmer社製:DSC-2C)を用いて、下記の手順1~8に従って測定を行って得られたDSC曲線に基づき、ファーストスキャン融点、セカンドスキャン融点、結晶化開始温度、及び結晶化速度を求めた。
1:測定対象のポリアセタール粉末3mgを測定用アルミパンの中に封入し、示差走査熱量計の加熱炉内の所定位置に配置する。
2:10℃/分の昇温速度で220℃に達するまで昇温し、その際の吸熱ピーク(融点ピーク)の最高点を「ファーストスキャン融点」とする。
3:220℃に達してから2分間、その温度を保持する。
4:次いで、80℃/分の降温速度で149℃に達するまで降温し、10分間、その温度を保持して、結晶化による発熱ピークを測定する。
5:149℃での保持開始から発熱ピークの最高点に達するまでの時間を、「結晶化速度」とする。なお、この時間が長いほど、結晶化速度が遅いことを意味する。
6:次いで、20℃/分の昇温速度で210℃に達するまで昇温し、5分間、その温度を保持する。
7:次いで、20℃/分の降温速度で、210℃から100℃に冷却する。この際の発熱ピーク(結晶化ピーク)の開始点の温度(高温側)を「結晶化開始温度」とする。
8:次いで、20℃/分の昇温速度で100℃から210℃に昇温し、その際の吸熱ピーク(融点ピーク)の最高点を「セカンドスキャン融点」とする。
上記のようにしてDSC測定で求めたセカンドスキャンの融点からファーストスキャンの融点を差引くことによって、ファーストスキャンとセカンドスキャンの融点差(表1で「1st2nd融点差」と称する)を求めた。
熱重量測定装置(Perkin Elmer社製、商品名「Pyris1 TGA」)を用いて、試料重量:5mg、空気流量:10mL/分、昇温速度:10℃/分にて室温から、測定対象のポリアセタール粉末の融点より10℃低い温度まで昇温し、その温度にて1時間保持した後の重量減少率を測定した。
東洋精機製作所製「P-111」を用い、190℃、荷重2.16kgの条件で、ISO1133(条件D)に準拠してMFRを測定した。
パウダテスターPT-X型(ホソカワミクロン製)を用いて、固め嵩密度とゆるめ嵩密度の測定を行った。
具体的には、ステンレス製100cm3円筒容器に,粉体が容器に山盛りになるまでサンプル供給装置を振動させて粉体を流下し、ブレードを用いて容器上の余分な粉を擦切って測定した密度を、ゆるめ嵩密度(g/cm3)とした。
また、ステンレス製100cm3円筒容器にキャップをかぶせ、サンプル供給装置を振動させて粉体を流下し、ストローク長(タッピング高さ)18mm、タッピング速度60回/分、タッピング回数180回、でタッピングを行った。その後、ブレードを用いて容器上の余分な粉を擦切って測定した密度を、固め嵩密度(g/cm3)とした。
上述のように測定された、固め嵩密度の測定値をゆるめ嵩密度の測定値で除して、固め嵩密度/ゆるめ嵩密度の値を求めた。
デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、「VH-7000型」、「VH-501レンズ」使用)を用いて撮影した画像を、1360×1024ピクセル、TIFFファイル形式で保存し、画像処理解析ソフト(株式会社デジモ製「Image HyperII」)を使用して、100個の粒子の短径/長径の平均値を求めた。
上述のデジタルマイクロスコープを用いて撮影した画像を、1360×1024ピクセル、TIFFファイル形式で保存し、上述の画像処理解析ソフトを使用して、100個の粒子の長径、短径、周囲長を測定し、以下の式に従ってそれぞれの表面平滑形状係数を求め、その平均値を求めた。
表面平滑形状係数=[π×(粒子の長径+粒子の短径)]/[2×粒子の周囲長]
実施例及び比較例で得られたポリアセタール粉末を用い、市販の選択的レーザー焼結法の造形装置で、各々、縦5cm、横1cm、積層方向の厚み4mmの短冊型に造形した。そして、ポリアセタール粉末の積層性、造形時の反り、造形品の機械的物性を、下記評価方法に従って評価した。
粉体供給部を155℃に、造形エリアを160℃に加熱して造形を実施し、造形中の造形エリアの表面状態を目視で観察し、下記の基準に従ってポリアセタール粉末の積層性(リコート性)を評価した。
◎:粉体積層時に凝集塊がなく、造形中の造形部にも均一に粉が積層されている。
○:粉体積層時に凝集塊がなく、造形中の造形部に一部不均一に粉が積層されている。
△:凝集塊が1~2個程度。
×:全面に凝集塊があり、造形できない。
凝集塊がなく且つ造形部への粉の積層が均一である程、積層性及び造形精度に優れる。
造形中のレーザーが照射された造形部を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
◎:カールが発生せず、きれいに造形できた。
○:最初の数層は短冊の端部周辺がカールしたが、すぐに収まりきれいに造形できた。
△:端部がカールし短冊の一部がきれいに造形できなかった。
×:レーザー照射部が大きくカールし、造形部がリコーターに引きずられ造形できなかった。
カールの発生が少ない程、造形時の反りが抑制され、造形精度に優れる。
造形した試験片を、ISO527-1に準拠して、引張速度5mm/分で引張試験を行い、引張破壊応力を測定し、以下の基準に従って評価した。
◎:40MPa以上
○:20MPa以上40MPa未満
△:10MPa以上20MPa未満
×:10MPa未満
引張破壊応力の値が大きい程、機械的物性に優れる。
<ポリアセタールコポリマーの調製>
(1)重合工程
熱媒を通すことのできるジャケット付セルフ・クリーニングタイプの二軸パドル型連続混合反応器(スクリュー径3インチ、径に対する長さの比(L/D)=10)を80℃に調整した。主モノマーとしてのトリオキサンを3750g/hr、コモノマーとしての1,3-ジオキソランを5~150g/hr、且つ、連鎖移動剤としてのメチラールを2.0~8.0g/hrの範囲で流量調整を行ない、連続混合反応器に連続的にフィードした。重合触媒として、三フッ化ホウ素ジ-n-ブチルエーテラートの1質量%シクロヘキサン溶液を、当該触媒がトリオキサン1molに対して2.0×10-5molとなるように、連続混合反応器に添加して重合を行い、重合フレークを得た。なお、連鎖移動剤の添加量の調整は、得られるポリアセタール粉末のメルトフローレートが所望のものとなるように行った。
得られた重合フレークを粉砕した後、触媒中和失活剤としてのトリエチルアミン1質量%水溶液中に、前記粉砕物を投入して撹拌し、重合触媒を失活させた。その後、重合フレークを含むトリエチルアミン1質量%水溶液について、濾過、洗浄及び乾燥を順次行い、粗ポリアセタールコポリマーを得た。
得られた粗ポリアセタールコポリマー100質量部に対して0.5質量部の水を添加し、押出機の条件を温度200℃、滞留時間7分として、ポリアセタールコポリマーの不安定末端部分(-(OCH2)n-OH)の分解除去を行った。
濾取したポリアセタールコポリマーについて、窒素雰囲気下のギアオーブン(80℃設定)にて品温80℃を確認して3時間乾燥を行った。
このポリアセタールコポリマー(a-1)100質量部と、アミド化合物(H-3(旭化成ファインケム株式会社製))0.2質量部と、酸化防止剤(イルガノックス245(チバスペシャリティケミカルズ株式会社製))0.2質量部とを、ヘンシェルミキサーにて1分間混合した。その後、得られたポリアセタール組成物を、200℃に設定した真空ベント付きスクリュー型二軸押出機(株式会社ラスチック工学研究所製、BT-30、L/D=44、L:二軸押出機の原料供給口から排出口までの距離(m)、D:二軸押出機の内径(m))にてスクリュー回転数100rpmとし、24アンペアで溶融混練して、ペレットを得た。
得られたペレットを測定前に80℃、2時間ギアオーブン(エスペック株式会社製、GPH-102)にて乾燥した。乾燥したペレットを用い、メルトフローレートを測定した。結果を表1に示す。
得られたペレットを液体窒素で凍結しながら、リンレックスミル(ホソカワミクロン株式会社製)で凍結粉砕し、篩にかけて粉体特性を適宜調整することで、粉末を得た。
得られた粉末について、上述のように測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
ポリアセタールコポリマーの調製におけるコモノマー添加流量、ポリアセタール粉末の調製における結晶核剤添加の有無及び添加量、熱処理の有無等を適宜調整した以外は、実施例1と同様にして、表1に示す実施例2~12及び比較例1~5のポリアセタール粉末を得た。
なお、結晶核剤としては、タルクを使用した。
得られた各ポリアセタール粉末について、上述のように測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
Claims (14)
- 平均粒子径(D50)が30μm以上70μm以下であり、
オキシメチレンユニット100molに対して0.1mol以上1.3mol以下のコモノマーユニットを有するポリアセタールコポリマーを含み、
融点が167℃以上178℃以下であり、
結晶化開始温度が140℃以上152℃以下である、
ことを特徴とする、ポリアセタール粉末。 - 示差走査熱量(DSC)測定におけるファーストスキャンの融点とセカンドスキャンの融点との差が0℃以上5℃以下である、請求項1に記載のポリアセタール粉末。
- 結晶化速度が30秒以上50秒以下である、請求項1または2に記載のポリアセタール粉末。
- ステンレス製100cm 3 円筒容器にキャップをかぶせ、サンプル供給装置を振動させて粉体を流下し、ストローク長(タッピング高さ)18mm、タッピング速度60回/分、タッピング回数180回、でタッピングを行った後、ブレードを用いて容器上の余分な粉を擦切って測定した密度である固め嵩密度を、ステンレス製100cm 3 円筒容器に,粉体が容器に山盛りになるまでサンプル供給装置を振動させて粉体を流下し、ブレードを用いて容器上の余分な粉を擦切って測定した密度であるゆるめ嵩密度で除した値(固め嵩密度/ゆるめ嵩密度)が、1.45以下である、請求項1から3のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
- 径が前記D50の2倍以上である粒子の割合が、10vol%以下である、請求項1から4のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
- 径が前記D50の0.2倍以下である粒子の割合が、10vol%以下である、請求項1から5のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
- 前記D50が65μm以下であり、径が前記D50の0.2倍以下である粒子の割合が3vol%以下である、請求項1から6のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
- 前記ポリアセタール粉末の融点より10℃低い温度で1時間保持したときの重量減少率が、5%以下である、請求項1~7のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
- 前記ポリアセタール粉末100質量%に対して、疎水性シリカを0.05質量%以上1.0質量%以下含む、請求項1~8のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
- 前記ポリアセタール粉末を構成する粒子の平均短径長径比が、0.50以上である、請求項1~9のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
- 前記ポリアセタール粉末を構成する粒子の平均表面平滑形状係数が、0.80以上である、請求項1~10のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
- 付加製造に用いられる、請求項1~11のいずれかに記載のポリアセタール粉末。
- 付加製造に用いることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載のポリアセタール粉末の使用方法。
- 請求項1~11のいずれかに記載のポリアセタール粉末を造形材料として用いることを特徴とする、付加製造方法。
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