以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
尚、本明細書では、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸またはメタクリル酸」を意味し、「ppm」は特に断りの無い限り質量換算で求められる値(例えば10,000ppmは1質量%)を意味する。また、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱い、本明細書において特記しない限り、数値範囲を示す「A~B」は、「A以上、B以下」であることを意味する。
<1.(メタ)アクリル系フィルム>
本発明の一実施形態における、(メタ)アクリル系フィルムは、熱可塑性樹脂組成物からなる。熱可塑性樹脂組成物は、(メタ)アクリル系樹脂と、分子量が700未満の紫外線吸収剤とを含む。本発明の(メタ)アクリル系フィルムによれば、フィルム表面の濡れ性が向上しているため、水系(水溶性)プライマーを均一に塗工し得る(疎水性の紫外線吸収剤がフィルム表面にブリードアウトするのを抑制し得るため、フィルム表面の濡れ性が向上する)。また、可視光の領域の吸収を抑制しながら、紫外領域の波長の光を吸収し得る。以下、熱可塑性樹脂組成物の含有成分について詳細に説明する。
〔(メタ)アクリル系樹脂〕
本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂組成物は、(メタ)アクリル系樹脂を含む。(メタ)アクリル系樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸、もしくはこれら化合物の誘導体、または下記式で表される構造を有する水酸基含有単量体を含む単量体組成物を、重合または共重合して得られる樹脂およびその誘導体である。これらの構造は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。具体的には、公知の(メタ)アクリル系樹脂を用いることができる。
CH2=C(COOR1)-CHR2-OH
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、または、炭素数1~20の直鎖状、分枝鎖状、若しくは環状のアルキル基を表す)。
(メタ)アクリル酸の誘導体としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチル、および(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシへキシルなどが挙げられる。これら誘導体は、複数種類が併用されてもよい。上記具体例のなかでも、得られる(メタ)アクリル系樹脂の熱安定性が優れている点で、(メタ)アクリル酸メチルが最も好ましい。
また、(メタ)アクリル系樹脂は、当該(メタ)アクリル系樹脂の耐熱性の向上のために、分子鎖(重合体の主骨格または主鎖とも称する)に環構造が導入されていてもよい。主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂については、後述する。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系フィルムにしたときに着色(黄変)し難いように、窒素原子を含まない構造であることがより好ましい。
また、本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリル系樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が108℃以上、160℃以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは110℃以上、150℃以下の範囲内である。さらに好ましい態様では、上記ガラス転移温度の範囲は、上限値は140℃以下、130℃以下、125℃以下の順に、低いほど好ましくなり、下限値は111℃以上、112℃以上、113℃以上、115℃以上、117℃以上の順に、高いほど好ましくなる。この点において、上記熱可塑性組成物は、一般的な(メタ)アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル(PMMA))とは異なっている。
ガラス転移温度が108℃未満である場合には、例えば当該(メタ)アクリル系樹脂からなる光学フィルムを光学機器の偏光板として組み入れた場合に、高温での十分な耐久性を発揮することができないおそれがある。ガラス転移温度が160℃を超える場合には、(メタ)アクリル系樹脂の成形温度を高くする必要があり、それゆえ、成形時に発泡したり、紫外線吸収剤のブリードアウトが発生したりするおそれがある。
また、当該(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度がこの範囲であれば、フィルム成形または延伸などの成形加工が困難となることなく、フィルムに形成される熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度を高めることができ、ひいては光学フィルムのガラス転移温度も高めることができる。ガラス転移温度の高い光学フィルムは、高温環境下での位相差の変化率を小さくできる。
上記ガラス転移温度は、JIS K7121の規定に準拠して測定することができる。測定条件などの詳細に関しては、実施例の項にて説明する。
なお、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度および熱分解温度と、熱可塑性組成物のガラス転移温度および熱分解温度とは、相違する場合がある。これは、熱可塑性組成物を調製する際に、(メタ)アクリル系樹脂以外の成分が追加される場合があるからである。
一方、熱可塑性組成物を成形したものが光学フィルムである場合、熱可塑性組成物のガラス転移温度および熱分解温度は、光学フィルムのガラス転移温度および熱分解温度と実質的に同一と見なしてよい。
この点に関して、本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂組成物の好ましいガラス転移温度および熱分解温度(すなわち、本発明の一実施形態における(メタ)アクリル系フィルムの好ましいガラス転移温度および熱分解温度)は、熱分解温度Td(℃)と熱可塑性樹脂組成物の溶融温度Tp(℃)との関係が式50≦Td-Tpを満たすことが好ましい。この条件を満たすことによって、熱可塑性樹脂組成物の溶融物に含まれるゲルなどの異物も少なくなる。すなわち、ロール(タッチロールおよびキャストロール)が汚染することも少なくなる。
また、(メタ)アクリル系樹脂は、耐熱性を損なわない範囲で、(メタ)アクリル酸またはその誘導体と共重合可能なその他の単量体を重合してなる構造単位を有していてもよい。共重合可能なその他の単量体の具体例としては、スチレン、およびα-メチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリルなどのニトリル系単量体、ならびに酢酸ビニルなどのビニルエステル類などが挙げられる。
本発明の一実施形態における(メタ)アクリル系樹脂の、GPC測定法によるスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、3,000~1,000,000であることが好ましい。この重量平均分子量が3,000以上であれば高分子として必要な強度が発現できる。また1,000,000以下であれば成形加工によって成形体とすることができる。
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、より好ましくは4,000~800,000であり、さらに好ましくは5,000~500,000であり、より一層好ましくは100,000~500,000である。重量平均分子量が上記の範囲にある(メタ)アクリル系樹脂は、押出溶融による成形性が良好であるために好ましい。
本発明の一実施形態における(メタ)アクリル系樹脂の、GPC測定法による分子量分布(Mw/Mn)は、1~10であることが好ましい。成形加工に適した樹脂粘度に調整する観点から、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.1~7.0、より好ましくは1.2~5.0、さらに好ましくは1.5~4.0である。
〔主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂〕
上述したように、(メタ)アクリル系樹脂は、当該(メタ)アクリル系樹脂の耐熱性の向上のために主鎖に環構造が導入されていてもよい。
このような環構造の例としては、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、N-置換マレイミド単量体に由来する構造、および無水マレイン酸単量体に由来する構造から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。より具体的には、(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸またはその誘導体と、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、およびメチルマレイミド等のN-置換マレイミドとの共重合体であってもよい。(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくは、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、およびN-置換マレイミド単量体に由来する構造である。
(メタ)アクリル系樹脂における環構造の含有率は、例えば、1~60モル%の範囲内であることが好ましく、1~40モル%の範囲内であることがより好ましく、2~30モル%の範囲内であることがさらに好ましい。
また、(メタ)アクリル系樹脂における環構造の含有率は、例えば、1~80質量%の範囲内であることが好ましく、1~50質量%の範囲内であることがより好ましく、2~40質量%の範囲内であることがさらに好ましい。これにより、(メタ)アクリル系樹脂を含む(メタ)アクリル系フィルムは、優れた透明性および耐熱性を示すと共に、優れた機械的強度を示す。
(ラクトン環構造含有重合体の構造)
(メタ)アクリル系樹脂は、重合体の主鎖に分子内環化反応によってラクトン環構造を導入した、いわゆるラクトン環構造含有重合体であることがより好ましく、ラクトン環構造を主成分としたラクトン環構造含有重合体であることが特に好ましい。本明細書では、主鎖にラクトン環構造が導入されている(メタ)アクリル系樹脂をラクトン環構造含有重合体と称する。このようなラクトン環構造含有重合体は、透明性、耐熱性、光学等方性が何れも高く、各種光学用途に応じた特性を十分に発揮することができる。
上記ラクトン環構造含有重合体は、特に限定されるものではないが、下記一般式(2)で示されるラクトン環構造を有することがより好ましい。
(式中、R11、R12、R13は、それぞれ独立して、水素原子、または、炭素数1~20の直鎖状、枝分かれ鎖状、若しくは環状のアルキル基(当該アルキル基は、任意構成で酸素原子を有していてもよい)を表す)。
ラクトン環構造含有重合体における、一般式(2)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは1質量%以上、80質量%以下、より好ましくは3質量%以上、60質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上、40質量%以下、特に好ましくは10質量%以上、30質量%以下である。上記含有割合が1質量%よりも少ない場合には、耐熱性、耐溶剤性、および表面硬度が不十分になることがある。また、上記含有割合が90質量%よりも多い場合には、成形加工性に乏しくなることがある。
ラクトン環構造含有重合体は、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造を有していてもよい。一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造は、特に限定されるものではない。例えば、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記一般式(3)で表される単量体、から選ばれる少なくとも1種の単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
CH2=C(X)-R14 …(3)
(式中、R14は、水素原子またはメチル基を表す。Xは、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、アリール基、-OAc基、-CN基、-CO-R15基、またはC-O-R16基を表す。Acはアセチルを表す。R15およびR16は、水素原子、または、炭素数1~20の直鎖状、枝分かれ鎖状、若しくは環状のアルキル基を表す)。
ラクトン環構造含有重合体が、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造として、(メタ)アクリル酸エステルを重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)を有している場合には、その含有割合は、好ましくは20質量%以上、99質量%以下の範囲内、より好ましくは40質量%以上、97質量%以下の範囲内、さらに好ましくは60質量%以上、95質量%以下の範囲内、特に好ましくは70質量%以上、90質量%以下の範囲内である。
また、ラクトン環構造含有重合体が、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造として、水酸基含有単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)を有している場合には、その含有割合は、好ましくは0質量%を超え、30質量%以下の範囲内、より好ましくは0質量%を超え、20質量%以下の範囲内、さらに好ましくは0質量%を超え、15質量%以下の範囲内、特に好ましくは0質量%を超え、10質量%以下の範囲内である。
また、ラクトン環構造含有重合体が、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造として、不飽和カルボン酸を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)を有している場合には、その含有割合は、好ましくは0質量%を超え、30質量%以下の範囲内、より好ましくは0質量%を超え、20質量%以下の範囲内、さらに好ましくは0質量%を超え、15質量%以下の範囲内、特に好ましくは0質量%を超え、10質量%以下の範囲内である。
また、ラクトン環構造含有重合体が、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造として、一般式(3)で表される単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)を有している場合には、その含有割合は、好ましくは0質量%を超え、30質量%以下の範囲内、より好ましくは0質量%を超え、20質量%以下の範囲内、さらに好ましくは0質量%を超え、15質量%以下の範囲内、特に好ましくは0質量%を超え、10質量%以下の範囲内である。
尚、ラクトン環構造含有重合体において、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、合計で、好ましくは10質量%以上、95質量%以下、より好ましくは30質量%以上、90質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上、90質量%以下、特に好ましくは50質量%以上、90質量%以下である。
(無水グルタル酸構造含有重合体およびグルタルイミド構造含有重合体の構造)
(メタ)アクリル系樹脂は、重合体の主鎖に、無水グルタル酸構造またはグルタルイミド構造を導入した、いわゆる無水グルタル酸構造含有重合体またはグルタルイミド構造含有重合体であってもよい。本明細書では、主鎖に無水グルタル酸構造が導入されている(メタ)アクリル系樹脂を無水グルタル酸構造含有重合体と称し、主鎖にグルタルイミド構造が導入されている(メタ)アクリル系樹脂をグルタルイミド構造含有重合体と称する。
上記無水グルタル酸構造含有重合体およびグルタルイミド構造含有重合体は、特に限定されるものではないが、下記一般式(4)で示される無水グルタル酸構造またはグルタルイミド構造を有することがより好ましい。
(式中、R17、R18は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表す。X1は、酸素原子または窒素原子を表す。そして、X1が酸素原子のとき、R19は存在せず、X1が窒素原子のとき、R3は、水素原子、炭素数1~6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基を表す)。
即ち、一般式(4)におけるX1が酸素原子のとき、一般式(4)により示される環構造は無水グルタル酸構造となる。無水グルタル酸構造含有重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を、分子内で脱アルコール環化縮合反応させることによって形成することができる。
分子内での脱アルコール環化縮合反応の方法は、特に限定されないが、例えば、上記共重合体を加熱することによって行うことができる。加熱温度は、脱アルコールによって分子内環化反応が生じる温度であれば特に限定されないが、例えば180~350℃の範囲内が好適である。加熱時間は、(メタ)アクリル系樹脂の組成等に応じて適宜変更すればよいが、例えば1~2時間の範囲内が好適である。また、上記脱アルコール環化縮合反応においては、触媒(例えば、酸触媒、塩基性触媒、塩系触媒等)を必要に応じて使用してもよい。
一般式(4)におけるX1が窒素原子のとき、一般式(4)により示される環構造はグルタルイミド構造となる。グルタルイミド構造含有重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの重合体をメチルアミン等のイミド化剤を用いてイミド化することによって形成することができる。イミド化の方法は、公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、アンモニアや置換アミン等を用いて(メタ)アクリル酸エステルの重合体をイミド化することができる。
(メタ)アクリル系樹脂を光学フィルムにしたときに、高湿環境下での寸法変化または位相差変化が起こりにくいように、一般式(4)におけるX1は窒素原子であることが好ましい。
(N-置換マレイミド単量体に由来する構造含有重合体および無水マレイン酸単量体に由来する構造含有重合体の構造)
(メタ)アクリル系樹脂は、重合体の主鎖に、N-置換マレイミド単量体に由来する構造または無水マレイン酸単量体に由来する構造を導入した、いわゆるN-置換マレイミド単量体に由来する構造含有重合体または無水マレイン酸単量体に由来する構造含有重合体であってもよい。本明細書では、主鎖にN-置換マレイミド単量体に由来する構造が導入されている(メタ)アクリル系樹脂をN-置換マレイミド単量体に由来する構造含有重合体と称し、主鎖に無水マレイン酸単量体に由来する構造が導入されている(メタ)アクリル系樹脂を無水マレイン酸単量体に由来する構造含有重合体と称する。
上記N-置換マレイミド単量体に由来する構造含有重合体および無水マレイン酸単量体に由来する構造含有重合体は、特に限定されるものではないが、下記一般式(5)で示されるN-置換マレイミド単量体に由来する構造または無水マレイン酸単量体に由来する構造を有することがより好ましい。
(式中、R20、R21は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表す。X2は、酸素原子または窒素原子を表す。そして、X2が酸素原子のとき、R22は存在せず、X2が窒素原子のとき、R22は、水素原子、炭素数1~6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基またはフェニル基を表す)。
即ち、一般式(5)におけるX2が酸素原子のとき、一般式(5)により示される環構造は無水マレイン酸単量体に由来する構造となる。無水マレイン酸単量体に由来する構造含有重合体は、例えば、無水マレイン酸と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合(例えば、ラジカル重合によって、好ましくは溶液重合によって)させることによって形成することができる。一般式(5)におけるX2が窒素原子のとき、一般式(5)により示される環構造はN-置換マレイミド単量体に由来する構造となる。N-置換マレイミド単量体に由来する構造含有重合体は、例えば、N-置換マレイミドと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合(例えば、ラジカル重合によって、好ましくは溶液重合によって)させることによって形成することができる。
(メタ)アクリル系樹脂を光学フィルムにしたときに、高湿環境下での寸法変化または位相差変化が起こりにくいように、一般式(5)におけるX2は窒素原子であることが好ましい。
尚、無水グルタル酸構造含有重合体、グルタルイミド構造含有重合体、N-置換マレイミド単量体に由来する構造含有重合体および無水マレイン酸単量体に由来する構造含有重合体は、各々の環構造の形成に用いる重合体が全て(メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位として有する。そのため、当該方法により得られる樹脂は(メタ)アクリル系樹脂の範疇に含まれる。
ラクトン環構造含有重合体、無水グルタル酸構造含有重合体、グルタルイミド構造含有重合体、N-置換マレイミド単量体に由来する構造含有重合体および無水マレイン酸単量体に由来する構造含有重合体は、必要に応じて複数種類を併用してもよい。即ち、本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂組成物は、これら重合体の混合物であってもよい。
〔紫外線吸収剤〕
本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂組成物は、分子量が700未満の紫外線吸収剤を含む。
紫外線吸収剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシケート系化合物、ベンゾエート系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、およびトリアジン系化合物から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。これら紫外線吸収剤のなかでも、紫外線吸収能が高いことから、ベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、下記一般式(1)で示される紫外線吸収剤が好ましい;
(式中、R1、R2は、それぞれ独立して、水素原子、または、炭素数1~20のアルキル基(当該アルキル基は、置換基を有していてもよい)を表す。R3、R4は、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表す。Lは、炭素数1~4のアルキレン基を表す)。
一般式(1)で示される紫外線吸収剤の中でも、下記式で示される2,2’-メチレンビス〔6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール〕(ケミプロ化成株式会社製:KEMISORB(登録商標)279RC)が色調および入手容易性の点から特に好ましい。
本発明の一実施形態における紫外線吸収剤の分子量は、700未満であるが、400以上700未満であることが好ましい。なお、分子量が400未満であると、熱可塑性樹脂組成物または(メタ)アクリル系フィルムの製造時に、ベントに吸引される紫外線吸収剤が多くなりすぎて、配管などが閉塞するおそれがある。
本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂組成物は、(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して、上述した紫外線吸収剤を0.1~3重量部の範囲内で含むことが好ましい。紫外線吸収剤の量が0.1重量部未満である場合、耐候性向上の寄与が少なく、3重量部を超えると、水系プライマーを均一に塗工できる(メタ)アクリル系フィルムを製造することが困難になる。
〔その他の添加物〕
本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、(メタ)アクリル系樹脂および紫外線吸収剤の他に、その他の添加物を含有していてもよい。
その他の添加物としては、重合体、未反応の単量体、溶剤、(メタ)アクリル系樹脂の重合工程中に発生した副生成物、酸化防止剤、安定剤、補強材、近赤外線吸収剤、難燃剤、位相差調整剤、帯電防止剤、フィラー、樹脂改質剤、および充填剤などが挙げられるが、これに限らない。
重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン重合体、またはポリ(4-メチル-1-ペンテン)などのオレフィン系重合体;塩化ビニル、または塩素化ビニル樹脂などの含ハロゲン系重合体;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系重合体;ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、またはアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンブロック共重合体などのスチレン系重合体;ポリマーポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、またはナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂またはASA樹脂などのゴム質重合体;などが挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、リン系、およびイオウ系などが挙げられる。安定剤としては、耐光安定剤、耐候安定剤、および熱安定剤などが挙げられる。補強材としては、ガラス繊維、および炭素繊維などが挙げられる。難燃剤としては、トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、および酸化アンチモンなどが挙げられる。位相差調整剤としては、位相差上昇剤、位相差低減剤、および位相差安定剤などが挙げられる。帯電防止剤としては、アニオン系、カチオン系、またはノニオン系の界面活性剤を含むものが挙げられる。
本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂組成物100質量%におけるその他の添加剤の含有割合は、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~2質量%、さらに好ましくは0~1質量%の範囲内である。
本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂組成物は、さらに着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、無機顔料、有機顔料、および染料などが挙げられる。より具体的には、アントラキノン骨格を有する化合物、およびフタロシアニン骨格を有する化合物などが挙げられるが、中でも耐熱性の観点からアントラキノン骨格を有する化合物が好ましい。
本発明の一実施形態における着色剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物100質量%に対して0.01~5質量ppmが好ましく、0.05~3質量ppmがより好ましく、0.1~1質量ppmがさらに好ましい。
着色剤は公知のものを適宜使用できる。例えば、具体的には、「マクロレックス(登録商標)バイオレットB」「マクロレックス(登録商標)バイオレット3R」(ランクセス株式会社製)、または「スミプラスト(登録商標)バイオレットB」「スミプラスト(登録商標)グリーンG」(住化ケムテックス株式会社製)などが挙げられる。着色剤は、本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂組成物の色相および彩度を低減させることが可能である。
ここで、本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂組成物は、これを製造する際に、金属元素が混入する可能性がある。
例えば、後述する(メタ)アクリル系樹脂の製造過程では重合開始剤、環化触媒、および失活剤などの添加剤由来の金属元素が含まれることがある。また、熱可塑性樹脂組成物の製造時にはその他添加剤由来の金属元素の混入が考えられる。
本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂組成物100質量%の金属元素の含有量は、好ましくは0~200質量ppm、より好ましくは0~100質量ppm、さらに好ましくは0~60質量ppm、特に好ましくは0~10質量ppmの範囲内である。
熱可塑性樹脂組成物の金属元素の含有量が200質量ppmを超える場合には、熱可塑性樹脂組成物の色相および彩度の増加、および異物の発生による透明性の悪化が生じるおそれがある。
このような好ましくない効果をもたらす金属元素の一例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および重金属が挙げられ、例えば、亜鉛、銅、および鉄などが挙げられる。これらの金属元素は、ベンゾトリアゾール系化合物である紫外線吸収剤と錯体を形成し、色相および彩度を増加させるおそれがある。
<2.(メタ)アクリル系フィルムの製造方法>
(メタ)アクリル系フィルムは、上述の熱可塑性樹脂組成物を製膜することによって製造される。熱可塑性樹脂組成物は、(メタ)アクリル系樹脂と紫外線吸収剤とを混合することで得られる。また、(メタ)アクリル系樹脂の製造方法としては、(メタ)アクリル酸またはその誘導体を含有する単量体組成物を重合する方法などが挙げられる。
以下、(メタ)アクリル系樹脂の製造方法、(メタ)アクリル系樹脂の好ましい形態であるラクトン環構造含有重合体の製造方法、熱可塑性樹脂組成物の製造方法、および(メタ)アクリル系フィルムの製造方法について説明する。
〔(メタ)アクリル系樹脂の製造方法〕
(メタ)アクリル系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、(メタ)アクリル酸またはその誘導体を含有する単量体組成物を重合する方法が挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂を光学材料用途として用いる場合は、微小な異物の混入はできるだけ避けるのが好ましい。この観点から、懸濁剤または乳化剤を用いない塊状重合、キャスト重合または溶液重合を用いることが望ましい。
重合形式としては、例えば、バッチ重合法、連続重合法のいずれも用いることができる。重合操作が簡単という観点からは、バッチ重合法が望ましく、より均一な組成の重合物を得るという観点では、連続重合法が望ましい。
重合温度および重合時間は、用いる単量体の種類、およびその使用比率(単量体組成物の組成)などに応じて異なる。一般的には、重合温度は0℃以上、150℃以下の範囲内であることが好ましく、80℃以上、140℃以下の範囲内であることがより好ましい。また、重合時間は、0.5時間以上、20時間以下の範囲内であることが好ましく、1時間以上、10時間以下の範囲内であることがより好ましい。
溶剤を用いた重合形態の場合において用いられる溶剤は、特に限定されるものではない。例えば、トルエン、キシレン、またはエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、またはメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;などが挙げられる。溶剤は、複数種類を併用してもよい。
特に、主鎖にラクトン環構造が導入されている(メタ)アクリル系樹脂を製造する場合には、用いる溶剤の沸点が高すぎると、最終的に得られる(メタ)アクリル系樹脂の残存揮発分が多くなる。そのため、溶剤の沸点は50℃以上、200℃以下の範囲内であることがより好ましい。
単量体組成物の重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤は、特に限定されるものではない。例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、またはt-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、または2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられる。重合開始剤は、複数種類を併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、用いる単量体の種類、その使用比率(単量体組成物の組成)、或いは反応条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
単量体組成物の重合反応時には、反応液のゲル化を抑制するために、反応液中の重合体の濃度を50質量%以下に制御することが好ましい。具体的には、反応液中の重合体の濃度が50質量%を超える場合には、当該濃度が50質量%以下となるように、反応液に溶剤を適宜追加することが好ましい。上記濃度は、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、重合体の濃度が低すぎると生産性が低下するため、当該濃度は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
重合反応時中に反応液に溶剤を追加する方法は、特に限定されるものではない。例えば、反応液に連続的に溶剤を追加してもよく、間欠的に溶剤を追加してもよい。反応液中の重合体の濃度を制御することによって、反応液のゲル化を抑制することができる。
反応液に追加する溶剤は、重合反応開始時に用いる溶剤と同じ種類(組成)であってもよく、異なる種類(組成)であってもよいが、重合反応開始時に用いる溶剤と同じ種類(組成)であることがより好ましい。また、添加する溶剤は、複数種類を併用してもよい。
〔ラクトン環構造含有重合体の製造方法〕
(メタ)アクリル系樹脂がラクトン環構造含有重合体である場合、ラクトン環構造含有重合体の製造方法は、特に限定されるものではない。好ましくは、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得た後に、当該重合体を加熱処理することでラクトン環構造を重合体に導入する環化縮合反応(ラクトン環縮合反応)を生じさせて、ラクトン環構造含有重合体を得ることができる。つまり、単量体組成物が、重合工程およびラクトン環化縮合工程を経ることによって、ラクトン環構造含有重合体となる。
ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、重合体に高い耐熱性が付与される。ラクトン環構造を重合体に導入する環化縮合反応の反応率が低い場合には、重合体の耐熱性が十分に向上しないおそれがある。また、成形時の加熱処理に伴う熱が原因となって、成形途中に重合体の縮合反応が起こり、生じたアルコールが成形品中に泡やシルバーストリークとなって現れるおそれがある。
環化縮合反応を行うために上記重合体を加熱処理する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を利用することができる。例えば、重合工程を行うことによって得られた、重合体および溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。また、重合体を溶剤の存在下で、必要に応じて環化触媒を用いて加熱処理してもよい。さらに、揮発成分を除去するための真空装置または脱揮装置を備えた加熱炉や反応装置を用いて加熱処理してもよい。さらにまた、脱揮装置および押出機等を用いて重合体の加熱処理を行うこともできる。
環化縮合反応を行うときに、上記重合体に加えて、他のアクリル系樹脂を共存させてもよい。また、環化縮合反応を行うときには、必要に応じて、環化縮合反応の触媒として一般に用いられている、(i)有機リン化合物、(ii)p-トルエンスルホン酸等のエステル化触媒または(iii)エステル交換触媒を用いてもよい。或いは、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、およびメタクリル酸等の有機カルボン酸類を触媒として用いてもよい。さらには、特開昭61-254608号公報や特開昭61-261303号公報に記載されている、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩等を触媒として用いてもよい。
脱アルコール反応である環化縮合反応の触媒としては、有機リン化合物がより好ましい。触媒として有機リン化合物を用いることにより、環化縮合反応の反応率を向上させることができると共に、得られるラクトン環構造含有重合体の着色を大幅に低減することができる。さらに、有機リン化合物を触媒として用いることにより、ラクトン環化縮合工程と後述する脱揮工程とを併用する場合において起こり得る、重合体の分子量の低下を抑制することができ、さらに当該重合体に優れた機械的強度を付与することができる。
環化縮合反応のときに触媒として用いることができる有機リン化合物としては、例えば、メチル亜スルホン酸、エチル亜スルホン酸、フェニル亜スルホン酸等のアルキル(アリール)亜スルホン酸(但し、これらは、互変異性体であるアルキル(アリール)ホスフィン酸になっていてもよい)およびこれらのモノエステルまたはジエステル;ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニルエチルホスフィン酸等のジアルキル(アリール)ホスフィン酸およびこれらのエステル;メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、トリフルオルメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等のアルキル(アリール)ホスホン酸およびこれらのモノエステルまたはジエステル;メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸等のアルキル(アリール)亜ホスフィン酸およびこれらのエステル;亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸モノエステル、ジエステルまたはトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2-エチルヘキシル、リン酸オクチル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ-2-エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニル等のリン酸モノエステル、ジエステルまたはトリエステル;メチルホスフィン、エチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のモノ-、ジ-またはトリ-アルキル(アリール)ホスフィン;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、フェニルジクロロホスフィン、ジメチルクロロホスフィン、ジエチルクロロホスフィン、ジフェニルクロロホスフィン等のアルキル(アリール)ハロゲンホスフィン;酸化メチルホスフィン、酸化エチルホスフィン、酸化フェニルホスフィン、酸化ジメチルホスフィン、酸化ジエチルホスフィン、酸化ジフェニルホスフィン、酸化トリメチルホスフィン、酸化トリエチルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィン等の酸化モノ-、ジ-またはトリ-アルキル(アリール)ホスフィン;塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム等のハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム;等が挙げられる。
これら有機リン化合物の中でも、触媒活性が高く、かつ着色性が低いため、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステル或いはモノエステル、リン酸ジエステル或いはモノエステル、アルキル(アリール)ホスホン酸が好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステル或いはモノエステル、リン酸ジエステル或いはモノエステルがより好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、リン酸ジエステル或いはモノエステルが特に好ましい。これら有機リン化合物は、複数種類が併用されてもよい。
環化縮合反応のときに用いる触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、上記重合体に対して、好ましくは0.001~5質量%の範囲内、より好ましくは0.01~2.5質量%の範囲内、さらに好ましくは0.01~1質量%の範囲内、特に好ましくは0.05~0.5質量%の範囲内である。触媒の使用量が0.001質量%未満であると、環化縮合反応の反応率の向上が不十分になるおそれがある。一方、触媒の使用量が5質量%を超えると、ラクトン環構造含有重合体の着色の原因となったり、重合体の架橋によって溶融賦形し難くなったりするおそれがある。
触媒の添加時期は、特に限定されるものではなく、環化縮合反応の反応初期に添加してもよく、反応途中に添加してもよく、それらの両方で添加してもよい。
ラクトン環構造含有重合体の製造方法としては、ラクトン環化縮合工程を溶剤の存在下で行い、かつ、ラクトン環化縮合工程のときに、脱揮工程を併用することが好ましい。このような製造方法の形態としては、(i)ラクトン環化縮合工程の全体を通じて脱揮工程を併用する形態、および、(ii)ラクトン環化縮合工程の一部においてのみ脱揮工程を併用する形態、が挙げられる。脱揮工程を併用する方法では、環化縮合反応で副生するアルコールを強制的に脱揮させて除去するので、反応の平衡が生成側に有利となる。
ラクトン環化縮合工程の一部においてのみ脱揮工程を併用する形態とは、例えば、重合体の製造後、当該重合体を製造した装置をさらに加熱して環化縮合反応を予め或る程度進行させておき、その後に引き続いて脱揮工程を併用した環化縮合反応を行い、当該反応を完結させる形態である。ここで、重合体を製造した装置をさらに加熱して環化縮合反応を予め或る程度進行させる段階においても、必要に応じて脱揮工程を一部併用してよい。ラクトン環化縮合工程と脱揮工程とを併用する形態であって、脱気工程がラクトン環化縮合工程の全体を通じて併用されていない形態はすべて、本形態に分類される。
ここで、上記脱揮工程とは、溶剤、残存単量体等の揮発分、および、ラクトン環構造を導く環化縮合反応によって副生したアルコールを除去処理する工程をいう。脱揮工程は、必要により減圧加熱条件下で行ってもよい。この除去処理が不十分であると、生成したラクトン環構造含有重合体中の残存揮発分が多くなり、成形時の変質等によってラクトン環構造含有重合体が着色したり、泡やシルバーストリーク等の成形不良が起こったりする等の問題が生じる。
ラクトン環化縮合工程の全体を通じて脱揮工程を併用する形態において、使用する装置は、特に限定されるものではない。本発明の製造方法をより効果的に実施するために、(i)熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置、(ii)ベント付き押出機、または、(iii)脱揮装置とベント付き押出機とを直列に配置した装置、を用いることが好ましく、(i)熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置または(ii)ベント付き押出機を用いることがより好ましい。
熱交換器と脱揮槽とからなる上記脱揮装置を用いる場合、環化縮合反応時の温度は、150~350℃の範囲内が好ましく、200~300℃の範囲内がより好ましい。上記温度が150℃よりも低いと、環化縮合反応が不十分となって残存揮発分が多くなるおそれがある。上記温度が350℃よりも高いと、ラクトン環構造含有重合体の着色や分解が起こるおそれがある。
熱交換器と脱揮槽とからなる上記脱揮装置を用いる場合、環化縮合反応時の圧力は、931~1.33hPa(700~1mmHg)の範囲内が好ましく、798~66.5hPa(600~50mmHg)の範囲内がより好ましい。上記圧力が931hPaよりも高いと、アルコールを含めた揮発分がラクトン環構造含有重合体に残存し易くなるおそれがある。上記圧力が1.33hPaよりも低いと、工業的な実施が困難になるおそれがある。
上記ベント付き押出機を用いる場合には、ベントは1個であっても複数個であってもよいが、複数個である方がより好ましい。
上記ベント付き押出機を用いる場合、環化縮合反応時の温度は、150~350℃の範囲内が好ましく、200~300℃の範囲内がより好ましい。上記温度が150℃よりも低いと、環化縮合反応が不十分となって残存揮発分が多くなるおそれがある。上記温度が350℃よりも高いと、ラクトン環構造含有重合体の着色や分解が起こるおそれがある。
上記ベント付き押出機を用いる場合、環化縮合反応時の圧力は、931~1.33hPa(700~1mmHg)の範囲内が好ましく、798~13.3hPa(600~10mmHg)の範囲内がより好ましい。上記圧力が931hPaよりも高いと、アルコールを含めた揮発分がラクトン環構造含有重合体に残存し易くなるおそれがある。上記圧力が1.33hPaよりも低いと、工業的な実施が困難になるおそれがある。
尚、ラクトン環化縮合工程の全体を通じて脱揮工程を併用する形態では、後述するように、厳しい条件の加熱処理において得られるラクトン環構造含有重合体の物性が低下するおそれがある。そのため、好ましくは、前述した環化縮合反応の触媒を使用して、できるだけ温和な条件で、ベント付き押出機等を用いて脱揮工程を行う。ここで、「厳しい条件の加熱処理」とは、例えば、300℃以上の高温条件で行う加熱処理を指す。一方、「温和な条件の加熱処理」とは、例えば、250~300℃の温度条件で行う加熱処理を指す。
また、ラクトン環化縮合工程の全体を通じて脱揮工程を併用する形態においては、好ましくは、重合工程で得られた重合体を、溶剤と共に反応装置に導入する。この場合には、必要に応じて、上記反応装置から取り出した重合体を、脱揮装置またはベント付き押出機にもう一度通してもよい。
ラクトン環化縮合工程の全体を通じて脱揮工程を併用する形態(例えば、2軸押出機を用いて、250℃近い或いはそれ以上の高温で重合体を加熱処理する形態)では、熱履歴の違いによって環化縮合反応が起こる前に重合体の一部が分解する等の現象が生じる場合がある。このような現象が生じると、得られるラクトン環構造含有重合体の物性が悪くなるおそれがある。
そのため、ラクトン環縮合工程は、ラクトン環化縮合工程の一部においてのみ脱揮工程を併用する形態とすることが好ましい。例えば、脱揮工程を併用したラクトン環化縮合工程を行う前に、環化縮合反応を予め或る程度進行させておくと、後半の反応条件を緩和することができ、得られるラクトン環構造含有重合体の物性の低下を抑制することができるので好ましい。
特に好ましい形態としては、脱揮工程をラクトン環化縮合工程の開始から時間をおいて開始する形態が挙げられる。具体的には、(i)重合工程で得られた重合体の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基とを、予め環化縮合反応させて環化縮合反応の反応率を或る程度上げておき、引き続き、(ii)脱揮工程を併用したラクトン環化縮合工程を行う形態である。より具体的には、例えば、(i)釜型反応器を用いて溶剤の存在下で環化縮合反応を或る程度の反応率まで予め進行させておき、その後、(ii)脱揮装置を備えた反応器(例えば、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置や、ベント付き押出機等)で、環化縮合反応を完結させる形態である。この形態においては、反応系に環化縮合反応の触媒が存在していることが特に好ましい。
前述したように、(i)重合工程で得られた重合体の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基とを、予め環化縮合反応させて環化縮合反応の反応率を或る程度上げておき、引き続き、(ii)脱揮工程を併用したラクトン環化縮合工程を行う方法は、ラクトン環構造含有重合体を得る上で好ましい形態である。この形態により、環化縮合反応の反応率がより高まる。また、ガラス転移温度がより高く、耐熱性に優れたラクトン環構造含有重合体が得られる。この形態において、環化縮合反応の反応率の目安としては、実施例に示すダイナッミクTG測定における、150~300℃の間での質量減少率が、2%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
脱揮工程を併用したラクトン環化縮合工程を行う前の、予め行う環化縮合反応において採用することができる反応器は、特に限定されるものではない。好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置、ベント付き押出機等が挙げられる(このうち、ベント付き押出機は、脱揮工程を併用したラクトン環化縮合工程にも好適に使用することができる)。より好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器である。しかしながら、ベント付き押出機等の反応器を使用するときでも、(i)ベント条件を温和にする(例えば、931hPa(700mmHg)以上とする)、(ii)ベントを行わない、(iii)温度条件やバレル条件、スクリュウ形状、スクリュウ運転条件等を調整する、などの対処により、オートクレーブや釜型反応器での反応状態と同じような状態で環化縮合反応を行うことが可能である。
上記予め行う環化縮合反応としては、好ましくは、重合工程で得られた重合体と溶剤とを含む混合物を、(i)触媒を添加して加熱反応させる方法、(ii)無触媒で加熱反応させる方法、および、(iii)上記(i)または(ii)を加圧下で行う方法を採用することができる。
尚、ラクトン環化縮合工程において環化縮合反応に導入する「重合体と溶剤とを含む混合物」は、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま使用してもよいし、当該重合反応混合物から溶剤を一旦除去した後に環化縮合反応に適した別の溶剤を添加してなる混合物を使用してもよい。つまり、脱揮工程を併用したラクトン環化縮合工程の前に予め行う環化縮合反応において使用する溶剤は、重合工程で使用した溶剤であってもよいし、別の溶剤であってもよい。
予め行う環化縮合反応において使用する、上記別の溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;クロロホルム、DMSO、テトラヒドロフラン;等が挙げられる。しかしながら、重合工程で用いた溶剤と同じ種類の溶剤を用いることがより好ましい。
上記方法(i)で添加する触媒としては、環化縮合反応の触媒として一般に用いられているp-トルエンスルホン酸等のエステル化触媒またはエステル交換触媒、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩等を用いてもよい。しかし、本発明の一実施形態においては、前述した有機リン化合物を用いることが好ましい。
触媒の添加時期は、特に限定されるものではなく、環化縮合反応の反応初期に添加してもよく、反応途中に添加してもよく、それらの両方で添加してもよい。添加する触媒の量は、特に限定されるものではないが、重合体の質量に対して、好ましくは0.001~5質量%の範囲内、より好ましくは0.01~2.5質量%の範囲内、さらに好ましくは0.01~0.1質量%の範囲内、特に好ましくは0.05~0.5質量%の範囲内である。
方法(i)の加熱温度および加熱時間は、特に限定されるものではないが、加熱温度としては、好ましくは室温以上、より好ましくは50℃以上であり、加熱時間としては、好ましくは1~20時間の範囲内、より好ましくは2~10時間の範囲内である。加熱温度が低いと、或いは、加熱時間が短いと、環化縮合反応の反応率が低下するおそれがある。また、加熱温度が高いと、或いは、加熱時間が長いと、ラクトン環構造含有重合体の着色や分解が起こるおそれがある。
上記方法(ii)としては、例えば、耐圧性の釜型反応器等を用いて、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま加熱する方法等が挙げられる。加熱温度としては、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上である。加熱時間としては、好ましくは1~20時間の範囲内、より好ましくは2~10時間の範囲内である。加熱温度が低いと、或いは、加熱時間が短いと、環化縮合反応の反応率が低下するおそれがある。また、加熱温度が高いと、或いは、加熱時間が長いと、ラクトン環構造含有重合体の着色や分解が起こるおそれがある。
上記方法(i)、(ii)共に、条件によっては加圧下で行っても何ら問題はない(上記方法(iii))。また、上記予め行う環化縮合反応において、溶剤の一部が反応中に自然に揮発しても何ら問題はない。
上記予め行う環化縮合反応の終了時、即ち、脱揮工程の開始直前において、ダイナッミクTG測定における、150~300℃の間での質量減少率は、2%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が2%よりも高いと、続けて脱揮工程を併用したラクトン環化縮合工程を行っても、環化縮合反応の反応率が十分高いレベルにまで上がらず、得られるラクトン環構造含有重合体の物性が低下するおそれがある。
尚、ラクトン環化縮合工程(脱揮工程を併用する工程も、脱揮工程を併用しない工程も、いずれも含む)においては、重合体と溶剤とを含む混合物に、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。上記他の熱可塑性樹脂としては、ラクトン環構造含有重合体と熱力学的に相溶する熱可塑性樹脂が好ましい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを含む共重合体が挙げられる。具体的には、アクリロニトリル-スチレン系共重合体やポリ塩化ビニル樹脂、或いは、メタクリル酸エステル類を50質量%以上含有する重合体が挙げられる。
これら他の熱可塑性樹脂の中でも、アクリロニトリル-スチレン系共重合体が最も相溶性に優れ、耐熱性を損なわずに透明な成形体を得ることができるのでより好ましい。尚、ラクトン環構造含有重合体と他の熱可塑性樹脂とが熱力学的に相溶するかどうかは、両者を混合して得られた熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度を測定することによって確認することができる。具体的には、示差走査熱量測定器により測定される上記熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度が1点のみ観測される場合には、両者が熱力学的に相溶していると言える。
他の熱可塑性樹脂としてアクリロニトリル-スチレン系共重合体を用いる場合において、ラクトン環構造含有重合体とアクリロニトリル-スチレン系共重合体とを重合する方法としては、乳化重合法や懸濁重合法、溶液重合法、バルク重合法等が挙げられる。これら重合法の中でも、得られる光学用フィルムの透明性や光学性能の観点から、溶液重合法およびバルク重合法がより好ましい。
(i)重合工程で得られた重合体の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基とを環化縮合反応させて、環化縮合反応の反応率を予め或る程度上げておき、引き続き、(ii)脱揮工程を併用したラクトン環化縮合工程を行う形態では、予め行う環化縮合反応で得られた重合体(分子鎖中に存在する水酸基およびエステル基の一部が環化縮合反応した重合体)と溶剤とを分離することなく、脱揮工程を併用したラクトン環化縮合工程を開始してもよい。また、必要に応じて、その他の処理(予め行う環化縮合反応で得られた重合体(分子鎖中に存在する水酸基およびエステル基の一部が環化縮合反応した重合体)と溶剤とを分離した後に、別の溶剤を添加する等)を経てから、脱揮工程を併用したラクトン環化縮合工程を開始しても構わない。
脱揮工程は、ラクトン環化縮合工程と同時に終了する必要はなく、ラクトン環化縮合工程の終了から時間をおいて終了しても構わない。つまり、脱揮工程は、ラクトン環化縮合工程より先に終了してもよいし、後に終了してもよい。
前述したように、ラクトン環化縮合工程においては、重合体の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基とが環化縮合反応して、エステル交換の一種である脱アルコール反応を起こすことにより、重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)にラクトン環構造が形成される。
〔熱可塑性樹脂組成物の製造方法〕
熱可塑性樹脂組成物を製造する方法は特に限定されるものではない。(メタ)アクリル系樹脂と紫外線吸収剤とが均一に混合されることにより、本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂組成物が得られる。
なお、その他の重合体または添加剤は、(メタ)アクリル系樹脂と紫外線吸収剤とを混合する際に混合してもよいし、(メタ)アクリル系樹脂および/または紫外線吸収剤とあらかじめ混合しておいてから、他方と混合してもよい。混合方法は、特に限定されない。
〔(メタ)アクリル系フィルムの製膜方法〕
(メタ)アクリル系フィルムの製膜方法は、特に限定されず一般的な方法(例えば、タッチロール製膜、および、オープン製膜)を用いることができるが、純水との接触角を小さくし、かつ、ブリードアウトを抑制するという観点から、タッチロール製膜を用いることが好ましい。
タッチロール製膜とは、例えば、ダイからフィルム状に連続的に吐出された熱可塑性樹脂組成物の溶融物を、タッチロールとキャストロールとで挟み込んで、所定の大きさおよび厚さのフィルムに連続的に製膜する方法である。より具体的には、タッチロール製膜とは、例えば、タッチロールとキャストロールとの間にダイから上記溶融物を吐出し、タッチロールとキャストロールとで挟み込んで成形した後、冷却固化させてフィルムに連続的に製膜する方法である。
タッチロール製膜によって、純水との接触角を小さくすることができ、結果として(メタ)アクリル系フィルムの濡れ性が向上する。濡れ性が向上することによって、水系プライマーの均一な塗工が可能となる。
タッチロール製膜では、ダイの出口における溶融物の温度を「50≦Td-Tp」を満たすように調整することが好ましい(熱分解開始温度:Td、溶融物の温度:Tp)。ブリードアウトを抑制することができる。
溶融物の温度とは、Tダイ等のダイから吐出された直後(ダイリップから30mm以内)の溶融物に、針状または棒状の熱電対を接触させて複数箇所で測定した温度のうちの、最高温度を指す。
「Td-Tp」の上限値には特に制限は無いものの、90℃以下であることがより好ましい。それゆえ、「Td-Tp」は、50℃以上、90℃以下であることがより好ましく、55℃以上、85℃以下であることがさらに好ましく、60℃以上、80℃以下であることが特に好ましい。「Td-Tp」が50℃未満の場合には、熱可塑性樹脂組成物に含まれる紫外線吸収剤が熱分解してしまう。「Td-Tp」が90℃を超える場合には、溶融物の粘度が高く、ダイ内での流れが悪くなる。そのため、端部まで十分に溶融物が流れず、膜厚プロファイルが悪化するおそれがある。
(ダイ)
ダイは、熱可塑性樹脂組成物を溶融させる溶融装置の出口に設けられている。そして、熱可塑性樹脂組成物の溶融物をフィルム状にして、タッチロール上、またはキャストロール上に連続的に吐出するように構成されている。ダイの材質は、金属であることが好ましく、ステンレスであることがより好ましい。ダイの大きさおよび個数は、吐出する溶融物の量に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
ダイの温度は、上記製膜に用いる装置の温度と同様の範囲内であることが好ましい。上記温度は、熱可塑性樹脂組成物に含まれる紫外線吸収剤の熱分解温度Td(℃)と、上記ダイの出口における上記溶融物の温度Tp(℃)との関係が式「50≦Td-Tp」を満たすことができるように設定されることがより好ましい。尚、上記溶融装置は、上記式を満たすことができるように熱可塑性樹脂組成物を溶融させて、温度Tp(℃)以上の溶融物を調製できるように構成されている。
(タッチロールおよびキャストロール)
タッチロールおよびキャストロールは、互いに対向して平行に設置されている。タッチロールおよびキャストロールは、それぞれ複数本存在していてもよい。タッチロールおよびキャストロールは、その表面が鏡面仕上げされていることが特に好ましい。
タッチロールは、弾性を有する材質から形成されていることが好ましい。タッチロールおよびキャストロールの材質は、SCM系の鋼鉄、またはSUS等のステンレス等が好ましい。さらに、タッチロールおよびキャストロールとして、上記鋼鉄またはステンレスに、クロム、ニッケル、またはチタン等のめっきを施してなる材;PVD(Physical Vapor Deposition)法等によって、TiN,TiAlN,TiCN,CrN,またはDLC(ダイアモンド状カーボン)等の表面被膜を形成してなる材;タングステンカーバイトまたはその他のセラミックを溶射してなる材;および、上記鋼鉄またはステンレスの表面を窒化処理してなる材;を用いることも好適である。
キャストロールに対するタッチロールの押圧力を、フィルムとタッチロールとの接触面積で割った値であるタッチ圧は、0.1MPa~10MPaの範囲内であることが好ましく、0.3MPa~8MPaの範囲内であることがより好ましく、0.5MPa~5MPaの範囲内であることが特に好ましい。
タッチロールおよびキャストロールは、その表面の算術平均高さ(Ra)が100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、25nm以下であることがさらに好ましい。これにより、表面に適度な凹凸を有するフィルムを製膜することができる。タッチロールおよびキャストロール表面の材質が金属であれば、これらロールのRaを100nm以下にすることが容易である。
タッチロールおよびキャストロールの太さ、長さ、および温度等は、所望する(メタ)アクリル系フィルムの大きさおよび厚さに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。但し、溶融物を徐冷(冷却)する上で、上記キャストロールは複数本(より具体的には2~6本)存在することがより好ましい。
そして、例えば、2本以上のキャストロールを用いて溶融物を徐冷してフィルムを製膜する場合には、ダイにより近い側(上流側)のキャストロールよりも下流側に隣接するキャストロールの温度は、上記上流側のキャストロールの温度と比較して、0℃を超え、20℃以下の範囲で低いことが好ましく、1℃~18℃低いことがより好ましく、2℃~15℃低いことがさらに好ましい。これにより、得られる(メタ)アクリル系フィルムの両面の物性をより均一にすることができ、当該(メタ)アクリル系フィルム内の残存ひずみが解消され易くなる。それゆえ、湿度および熱に対する(メタ)アクリル系フィルムの寸法安定性を向上させることができる。尚、ダイに最も近い側(最上流側)のキャストロールの温度は、溶融物の温度に応じて適宜設定すればよい。
タッチロールの温度は、熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg-80℃~Tg+10℃の範囲内であることが好ましく、Tg-70℃~Tg+5℃の範囲内であることがより好ましく、Tg-60℃~Tgの範囲内であることが特に好ましい。
タッチロールおよびキャストロールの温度制御は、例えば、これらロールの内部に温度を調節した熱媒(液体または気体)を流通させることによって行うことができる。
(製膜速度)
溶融物の製膜速度は、所望する(メタ)アクリル系フィルムの大きさおよび厚さ等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。上記製膜速度は、2m/分~50m/分の範囲内であることが好ましく、2m/分~40m/分の範囲内であることがより好ましく、3m/分~35m/分の範囲内であることがさらに好ましい。製膜速度を上記範囲内とすることにより、ダイの出口において上記溶融物がタッチロールおよびキャストロールによって引っ張られ、当該溶融物の膨張が抑制されると共に、溶融物がダイの出口に擦れることが抑制される。そのため、得られる(メタ)アクリル系フィルムの表面の凹凸を好ましい範囲に制御することができる。また、製膜速度を上記範囲内とすることにより、溶融物のダイでの滞留時間を短く抑えることができるので、溶融物に含まれる異物(ゲルや汚染物質)の数を低減することができる。製膜速度が50m/分を超えると、ダイの出口における溶融物の流れに乱れが生じ、フィルムの均一性が低下するおそれがある。
このように耐熱性(ガラス転移温度が108℃以上の)の(メタ)アクリル系樹脂をタッチロール製膜することによって、熱分解温度が低い紫外線吸収剤を用いた場合においても、b*値が低くて良好であり、製膜時にロール(タッチロールおよびキャストロール)からの汚染物質の転写が無い、光学特性が良好な(メタ)アクリル系フィルムを製造することができる。
ここで、b*値とは、JIS Z 8729に規定されるb*表色系における指数であり、b*値は色相を表す。b*値は、0に近いほど無彩色に近いことを意味する。
そして、熱可塑性樹脂組成物に含まれる紫外線吸収剤の熱分解温度Td(℃)と、上記ダイの出口における上記溶融物の温度Tp(℃)との関係が式「50≦Td-Tp」を満たすようにダイから溶融物を吐出すると、上述の効果をより大きくすることができる。
尚、タッチロール製膜によって得られた(メタ)アクリル系フィルムは、必要に応じて、その両端をトリミングしてもよい。トリミングによって切り落とされた(メタ)アクリル系フィルムは、破砕すれば原料として再使用することができる。
(巻き取りおよび延伸)
タッチロール製膜によって連続的に製造された(メタ)アクリル系フィルムは、キャストロールから剥離され、ニップロール等を通過した後、心材に巻き取られてロール状の(メタ)アクリル系フィルムとされる。(メタ)アクリル系フィルムの巻き取り速度は、特に限定されるものではないものの、1m/分~100m/分の範囲内であることが好ましく、2m/分~80m/分の範囲内であることがより好ましく、3m/分~70m/分の範囲内であることがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル系フィルムの巻き取り張力は、特に限定されるものではないものの、1N/m幅~500N/幅の範囲内であることが好ましく、1N/m幅~300N/幅の範囲内であることがより好ましい。
(メタ)アクリル系フィルムを巻き取る前に、当該(メタ)アクリル系フィルムの片面または両面に、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエステル等からなる保護フィルムを貼着してもよい。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないものの、5μm~100μmの範囲内であることが好ましく、10μm~50μmの範囲内であることがより好ましい。
タッチロール製膜によって連続的に製造された(メタ)アクリル系フィルムは、縦延伸および/または横延伸を行うことが好ましい(以下、縦延伸を「MD延伸」、横延伸を「TD延伸」とも表記する)。MD延伸および/またはTD延伸と、収縮緩和処理とを組み合わせても行ってもよい。本発明に係る(メタ)アクリル系フィルムは、二軸延伸(MD延伸およびTD延伸)することがより好ましい。尚、MDとはMachine Directionの略語で、「長手方向」および「縦方向」と同義である。TDとはTransverse Directionの略語で、「幅方向」および「横方向」と同義である。
MD延伸の具体的な方法としては、特に限定されるものではないものの、例えば、オーブン縦延伸、ロール縦延伸等の方法が挙げられる。
オーブン縦延伸は、オーブンの入口側にある搬送ロールと、出口側にある搬送ロールとの間に周速差をつけることによって原フィルムをその長手方向に延伸する方法である。上記オーブンは、原フィルムを延伸可能な温度にまで加熱できるように構成されている。オーブン縦延伸によれば、延伸条件によっては、延伸後のフィルムに熱処理効果を与えることができる。
オーブン縦延伸における延伸温度は、原フィルムのガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg-10℃~Tg+50℃の範囲内であることが好ましく、Tg-5℃~Tg+40℃の範囲内であることがより好ましく、Tg℃~Tg+30℃の範囲内であることがさらに好ましい。Tg-10℃よりも低い温度で延伸すると、原フィルムが破断するおそれがある。Tg+50℃よりも高い温度で延伸すると、原フィルムのたるみが大きくなるために、原フィルムと装置とのこすれが生じるおそれや、原フィルムが破断するおそれがある。
ロール縦延伸は、原フィルムを多数の加熱ロールに連続接触しながら延伸温度にまで加熱し、延伸区間に設けられたニップロールによって延伸する方法である。その後、延伸されたフィルムは、冷却ロールによって冷却される。上記延伸区間内には、延伸温度を安定化させるために、補助加熱装置が設けられていてもよい。ロール縦延伸は、ロール縦延伸機を用いて実施することができる。
ロール縦延伸機における加熱ロールの温度とは、加熱ロールの設定温度を指す。原フィルムの延伸温度および延伸倍率は、縦延伸後に得られるフィルムの機械的強度、表面性および厚み精度を指標として、適宜調整することができる。延伸のときには、原フィルムを、当該フィルムのガラス転移温度(Tg)を基準として、加熱ロールによってTg-10℃~Tg+20℃の範囲内にまで加熱することが好ましい。さらに、延伸区間内に設けた補助加熱装置によって、Tg℃~Tg+30℃の範囲内にまで加熱することがより好ましい。加熱ロールによる原フィルムの加熱がTg-10℃よりも低い場合には、原フィルムが裂ける、割れる等の工程上の問題を引き起こし易い。加熱ロールによる原フィルムの加熱がTg+30℃よりも高い場合には、最終的に得られる(メタ)アクリル系フィルムの伸び率や引っ張り強度、可撓性等の力学的性質が改善され難いので、2次加工性が悪くなることがある。
尚、加熱ロールの合計本数は5本以上が好ましい。加熱ロールが5本よりも少ない場合には、加熱効果が小さくなるため、原フィルムを十分に加熱することができない。加熱ロールの合計本数を5本未満にする代わりに、加熱効果を高めるために加熱ロールのロール径を大きくする方法は、加熱により熱膨張した原フィルムを充分に引き伸ばすことができず、シワが発生し易くなると共にシワ由来の破断も発生し易くなるため好ましくない。
延伸区間内に設ける補助加熱装置としては、公知の装置が挙げられる。具体的には、例えば、IRヒーター、セラミックヒーター、熱風ヒーターの中から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
MD延伸を行うときの延伸速度は、所望する(メタ)アクリル系フィルムの特性に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないものの、10~20000%/分の範囲内が好ましく、100~10000%/分の範囲内がより好ましい。延伸速度が10%/分よりも遅いと、十分な延伸倍率を得るために時間が掛かり、製造コストが高くなる。延伸速度が20000%/分よりも速いと、フィルムの破断等が起こるおそれがある。
MD延伸を行うときの延伸倍率は、所望する(メタ)アクリル系フィルムの特性に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないものの、10~300%の範囲内であることが好ましく、15~300%の範囲内であることがより好ましく、20~200%の範囲内であることがさらに好ましい。尚、延伸倍率は、「延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)-(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)」で定義される。
TD延伸を行うときの延伸温度は、特に限定されるものではないものの、原フィルムのガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg-5℃~Tg+30℃の範囲内であることが好ましく、Tg~Tg+30℃の範囲内であることがより好ましく、Tg~Tg+20℃の範囲内であることがさらに好ましい。延伸温度がTg-5℃未満であれば、延伸する前にフィルムが破断するおそれがある。延伸温度がTg+30℃を超えると、分子鎖の緩和が大きくなって分子が配向し難くなるおそれがある。
TD延伸を行うときの延伸速度は、所望する(メタ)アクリル系フィルムの特性に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないものの、10~20000%/分の範囲内が好ましく、100~10000%/分の範囲内がより好ましい。延伸速度が10%/分よりも遅いと、十分な延伸倍率を得るために時間が掛かり、製造コストが高くなる。延伸速度が20000%/分よりも速いと、フィルムの破断等が起こるおそれがある。
TD延伸を行うときの延伸倍率は、所望する(メタ)アクリル系フィルムの特性に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないものの、10~300%の範囲内であることが好ましく、15~300%の範囲内であることがより好ましく、20~200%の範囲内であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系フィルムは、MD延伸および/またはTD延伸の前に熱処理を行ってもよく、MD延伸および/またはTD延伸の後に熱処理を行ってもよい。
本発明に係る(メタ)アクリル系フィルムは、特に限定されるものではないものの、縦方向の延伸倍率と横方向の延伸倍率との比(MD延伸の延伸倍率/TD延伸の延伸倍率)が、0.40~1.50の範囲内であることが好ましく、0.45~1.40の範囲内であることがより好ましく、0.50~1.30の範囲内であることがさらに好ましい。
本発明の一実施形態における(メタ)アクリル系フィルムの製造方法は、上述した(メタ)アクリル系フィルムの上に、上述した水系プライマーを塗布する工程を含む、製造方法であってもよい。水系プライマーを塗布する方法としては、特に限らないが、バーコーティング、ワイヤコーティング、またはスピンコーティングなどの当該技術分野で通常用いられるコーティング層形成方法を用いることができる。また、本発明には、上述した本発明の一実施形態における(メタ)アクリル系フィルム上に、水系プライマーが塗布された態様のフィルムを含み得る。
<3.(メタ)アクリル系フィルムの特性および用途>
以下に、(メタ)アクリル系フィルムの特性、および(メタ)アクリル系フィルムの用途について述べる。
〔(メタ)アクリル系フィルムの特性〕
本発明の一実施形態における(メタ)アクリル系フィルムは、上述の熱可塑性樹脂組成物からなる(メタ)アクリル系フィルムであり、純水との接触角が76°以下である。本発明の一実施形態における(メタ)アクリル系フィルムは、上述の熱可塑性樹脂組成物からなる(メタ)アクリル系フィルムであり、純水との接触角が、75°以下、73°以下、または、71°以下であってもよい。
純水との接触角が76°以下であれば、(メタ)アクリル系フィルムへ水系プライマーを塗布する際に、均一に塗布することができる。なお、本実施形態において「接触角」とは、接触角測定器(協和界面化学社製「FACE 接触角計 CA-X」)を用いて、JIS R3257:1999に準拠して測定した値である。また、純水との接触角の下限値は特に制限されないが、60°以上、63°以上、65°以上、または67°以上であってもよい。
本発明の一実施形態に係る(メタ)アクリル系フィルムの表面には、必要に応じて、各種の機能性コーティング層が形成され得る。機能性コーティング層は、例えば、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、またはガスバリヤー層が挙げられる。
特に、(メタ)アクリル系フィルムの表面に親水性のコーティング層を形成すると、フィルムの濡れ性が向上し、純水との接触角を小さくすることができる。これにより、(メタ)アクリル系フィルムに水系プライマーを、より均一に塗布することができる。但し、本発明の一実施形態における(メタ)アクリル系フィルムは、親水性のコーティング層を形成することなく、十分に濡れ性が向上され得る。それ故に、フィルムの製造工程を簡略化することによって、フィルムの製造コストを低減するという観点からは、(メタ)アクリル系フィルムの表面に親水性のコーティング層を形成することを省略することが好ましい。
本発明の一実施形態における(メタ)アクリル系フィルムの厚さは、20μm以上100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系フィルムの厚さは、デジマチックマイクロメーター(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した。以降に評価方法を示す物性を含め、(メタ)アクリル系フィルムの物性を測定、評価するためのサンプルは(メタ)アクリル系フィルムの幅方向の中央部から取得した。
本発明の一実施形態における(メタ)アクリル系フィルムは、500nmの透過率を100%とした際における、400nmの透過率が85%以上(例えば、87%以上、90%以上、92%以上、95%以上、または、97%以上)、かつ380nmの透過率が35%以下(例えば、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、または、5%以下)であることが好ましい。
本発明の一実施形態における(メタ)アクリル系フィルムは、フィルム厚みを40μmとしたときに、500nmの透過率を100%とした際における、400nmの透過率が85%以上(例えば、87%以上、90%以上、92%以上、95%以上、または、97%以上)、かつ380nmの透過率が35%以下(例えば、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、または、5%以下)であってもよい。この場合、フィルム厚みは40μmに限定されず、所望のフィルム厚み(例えば、1μm~100μmの範囲の任意の厚み)であってもよい。
透過率が上述した範囲にあることにより、耐候性が向上し、かつ水系プライマーを均一に塗工できる(メタ)アクリル系フィルムを得ることができる。
〔ラクトン環構造含有重合体を含有する(メタ)アクリル系フィルムの特性〕
本発明の一実施形態における(メタ)アクリル系フィルムがラクトン環構造含有重合体を含む場合、ラクトン環構造含有重合体の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上、2,000,000以下、より好ましくは5,000以上、1,000,000以下、さらに好ましくは10,000以上、500,000以下、特に好ましくは50,000以上、500,000以下である。
上記ラクトン環構造含有重合体は、ダイナッミクTG測定における、150~300℃の間での質量減少率が、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることがさらに好ましい。
上述のラクトン環構造含有重合体は、環化縮合反応の反応率が高いので、成形後の成形品中に泡やシルバーストリークが入るという欠点を回避することができる。さらに、環化縮合反応の反応率が高いことにより、ラクトン環構造含有重合体にラクトン環構造が十分に導入されているので、得られたラクトン環構造含有重合体は十分に高い耐熱性を有している。
ラクトン環構造含有重合体は、熱重量分析(TG)における5%質量減少温度が、280℃以上であることが好ましく、290℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましい。熱重量分析(TG)における5%質量減少温度は、熱安定性の指標であり、当該温度が280℃未満である場合には、得られたラクトン環構造含有重合体が十分な熱安定性を発揮できないおそれがある。
ラクトン環構造含有重合体は、当該ラクトン環構造含有重合体に含まれる残存揮発分の総量が、5,000ppm以下であることが好ましく、2,000ppm以下であることがより好ましい。残存揮発分の総量が5,000ppmよりも多いと、成形時の変質等によってラクトン環構造含有重合体が着色したり、発泡したり、シルバーストリーク等の成形不良が生じたりする原因となる。
ラクトン環構造含有重合体は、射出成形により得られる成形品の、ASTM-D-1003に準じた方法で測定された全光線透過率が、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は、透明性の目安であり、当該透過率が85%未満であると、透明性が低下し、目的とする本来の用途に使用することができないおそれがある。
〔(メタ)アクリル系フィルムの用途〕
本発明の一実施形態に係る(メタ)アクリル系フィルムの用途は特に限定されない。本発明の一実施形態に係る(メタ)アクリル系フィルムは、次の用途に好適である。
当該用途は、例えば、光学用保護フィルム(具体的には、各種の光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LDなど)の基板の保護フィルム)、またはLCDなどの画像表示装置が備える偏光板に用いる偏光子保護フィルムである。他にも、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルム、位相差フィルム、または光変換用フィルムなどの光学フィルムとして、本発明の一実施形態に係る(メタ)アクリル系フィルムを用いることができる。中でも、偏光子保護フィルムとしての使用に好適である。
このとき、本発明の一実施形態に係る(メタ)アクリル系フィルムは、同種光学材料および/または異種光学材料と積層させて用いることにより、光学特性を制御することができる。この際に積層される光学材料としては、特には限定されないが、例えば、偏光板、ポリカーボネート製延伸配向フィルム、または環状ポリオレフィン製延伸配向フィルムなどが挙げられる。
すなわち、本発明の一実施形態に係る(メタ)アクリル系フィルムを用いた光学フィルム、当該光学フィルムを用いた偏光子保護フィルム、当該偏光子保護フィルムを備えた偏光板、および、当該偏光板を備えた画像表示装置も本発明に含まれる。
<4.水系プライマー>
本発明の一実施形態における(メタ)アクリル系フィルムは、純水との接触角が76°以下であるため、(メタ)アクリル系フィルムに水系プライマーを均一に塗布することができる。以下、水系プライマーについて説明する。
水系プライマーとは、水溶性樹脂または水分散性樹脂を主成分とする有機溶剤を使用しない、あるいはその使用量が少ないプライマーである。水系プライマーは、(メタ)アクリル系フィルムを損傷させず、火災時の危険性および環境負荷が小さく、作業性に優れており、さらには、希釈剤として高価な溶剤が不要であるなどの利点を有する。
水系プライマーとしては、親水性の樹脂を用いることができ、例えば、ウレタン樹脂、水酸基含有アクリル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、アルキド樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、およびシリコン樹脂などが挙げられる。また、この中から複数を組み合わせて用いてもよい。中でもウレタン樹脂が最も好ましい。
ウレタン樹脂としては特に限定されないが、例えば、アクリルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ウレタンジオール、またはポリカーボネート樹脂などが挙げられるが、典型的には、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得た樹脂である。ポリオールは、分子中にヒドロキシル基を2個以上有する、任意のポリオールを採用できる。ポリオールは、例えば、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールである。2種以上のポリオールを組み合わせてもよい。
ポリアクリルポリオールは、典型的には、(メタ)アクリル酸エステル単量体と水酸基を有する単量体との共重合体である。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、または(メタ)アクリル酸シクロヘキシルである。水酸基を有する単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、または(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシペンチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;グリセリンまたはトリメチロールプロパンなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸モノエステル;N-メチロール(メタ)アクリルアミドである。
ポリイソシアネートは、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4-ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、または3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4′-シクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、または1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、または1,4-フェニレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネートまたは、α,α,α,α-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネートである。
水酸基含有アクリル樹脂としては、例えば、ビニル変性アルキド、シリコンアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、またはビニル変性エポキシエステル樹脂などが挙げられるが、これに限らない。
これら水酸基含有アクリル樹脂を構成する好適なモノマー組成物として、例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の、水酸基を含有するアクリル酸ヒドロキシエステル;メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル等の、水酸基を含有するメタクリル酸ヒドロキシエステル;のうちの少なくとも1つを含み、さらに、必要に応じて、アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸イソボロニル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸イソボロニル等のメタクリル酸エステル;スチレン等の芳香環を有するエチレン性不飽和モノマー;等のうちの少なくとも1つを含む組成物が挙げられる。モノマー組成物の組成は、水酸基含有アクリル樹脂に求められる各種物性に応じて適宜調節すればよい。
アミノ樹脂としては、例えば、尿素樹脂、および水性メラミン樹脂などが挙げられるが、これに限らない。
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、可とう性エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、キレート変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリシロキサンなどのエポキシ樹脂類;これらのハロゲン化エポキシ樹脂;融点を有する結晶性エポキシ樹脂などが挙げられる。
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、およびナフタレン型フェノール樹脂が挙げられるが、これに限らない。
ポリエステルとしては、アニオン系、カチオン系、およびノニオン系のものがあるが、いずれも用いることができる。
シリコン樹脂としては、シリコンアクリル樹脂、および水系エポキシシリコンなどが挙げられるが、これに限らない。
アルキド樹脂としては、例えばポリエステルアルキド樹脂が挙げられるが、これに限らない。
〔物性等の測定方法〕
(純水との接触角の測定)
接触角測定器(協和界面化学社製「FACE 接触角計 CA-X」)を用いて、JIS R3257:1999に準拠して測定した。滴下後30秒後の純水と、(メタ)アクリル系フィルムとの接触角を5回測定し、最高値と最低値とを除く、3回の測定値の平均値を接触角とした。
(380nmおよび400nmにおける光線透過率)
JIS K7361:1997の規定に準拠して、株式会社島津製作所製UV-1600PCを用い、延伸後のフィルムについて、380nmおよび400nmにおける光線透過率のそれぞれを測定した。
(塗工ムラ評価)
延伸後のフィルムを50mm×100mmサイズに切断し、主剤として水系ウレタン樹脂(第一工業製薬製:スーパーフレックス(登録商標)210)、架橋剤としてオキサゾリン基含有水溶性ポリマー(株式会社日本触媒製:エポクロス(登録商標)WS-700)、およびAB剤としてシリカ微粒子(株式会社日本触媒製:シーホスター(登録商標)KE-W30)を混合した水溶液を、バーコーターを用いてフィルム表面にコーティングした後、100℃で10分乾燥し硬化させた。
得られた塗工フィルムについてThermoSCIENTIFIC社製iS10を用いて、フィルム端部とフィルム中央部とについて、以下の測定条件で、IRスペクトルを得た。得られたIRスペクトルの例を図1に示す。
なお、端部では、切断したフィルム長手方向両端部から2mmの箇所を等間隔で5点ずつ、計10点において測定を行った。中央部では、切断したフィルム長手方向両端部から15mm以上20mm以下の箇所を等間隔で5点ずつ、計10点において測定した。
測定条件
測定方法:ATR法
測定領域:650-4000cm-1
分解能:4cm-1
積算回数:32回
得られたIRスペクトルにおける基材フィルムに帰属する約1725cm-1のピーク(a)と、プライマーに帰属する約730cm-1のピーク(b)とのピーク強度の比(b/a)について、端部のピーク強度比の値が中央部のピーク強度比の値の最小値よりも大きな箇所を、塗工ムラのない箇所として求めた。塗工ムラのない箇所が10箇所中、9箇所または10箇所のときを「◎」、6箇所以上8箇所以下のときを「○」、5箇所以下のときを「×」として評価した。
〔実施例1〕
((メタ)アクリル系樹脂組成物の製造)
攪拌装置、温度センサー、冷却コンデンサおよび窒素導入管を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル(MMA)83.5部、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)12部、トルエン90.4部、トリス(2,4-ジーターシャリー-ブチルフェニル)ホスファイト(ADEKA社製:アデカスタブ(登録商標)2112)0.05部、およびn-ドデシルメルカプタン0.07部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。
昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富株式会社製:ルペロックス(登録商標)570)0.09部を添加するとともに、上記t-アミルパーオキシイソノナノエート0.18部とスチレン4.5部とを2時間かけて滴下しながら約105~110℃の還流下で溶液重合を進行させ、滴下終了後、同温度でさらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、リン酸ステアリル(SC有機化学株式会社製:Phoslex A-18)0.075部を加え、約90~110℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。さらに、得られた重合溶液を、240℃に加熱した多管式熱交換器に通して環化縮合反応を完結させた。
その後、バレル温度が250℃であり、1個のリアベント、4個のフォアベント(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)および第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーを備え、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルター(濾過精度5μm)が配置され直径47mmのベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52.5)に、35.1部/時(樹脂量換算)の処理速度で導入した。その際、イオン交換水を第2ベントの前から0.54部/時の投入速度で、第3および第4ベントの前から0.18部/時の投入速度でそれぞれ投入した。また、上記サイドフィーダーから、紫外線吸収剤(ケミプロ化成株式会社製:KEMISORB(登録商標)279RC、重量減少開始温度Td(℃)は345℃、分子量659)を0.36部/時の投入速度で投入した。この際、リアベントを80.0kPa、第1ベントを26.7kPa、第2から第4ベントを2.6kPaに減圧し、出口樹脂の処理量は35.5kg/時で脱揮を行った。
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂組成物を当該押出機の先端からポリマーフィルタで濾過しながら排出した。樹脂組成物が押出機内に備えたダイスを通過した後、孔径1μmのフィルタ(オルガノ株式会社製:ミクロポアフィルタ1EU)で濾過した。30±10℃の範囲内の温度に保持した冷却水を満たした水槽により、ストランドを冷却し、切断機(ペレタイザー)に導入することで、(メタ)アクリル系樹脂組成物(A-1)を得た。
(フィルムの製造)
得られた(メタ)アクリル系樹脂組成物(A-1)から、タッチロール製膜を行うことによってフィルムを製造した。
具体的には、先端部にポリマーフィルタ(濾過精度5μm)およびTダイを備えた直径65mm、L/D=32、バリアフライト型スクリューを有するベント付単軸押出機を用い、25kg/時の処理速度で溶融製膜を行った。クロムめっきが施された冷却ロールである第1ロール(R1)(弾性タッチロール)、第2ロール(R2)(キャストロール)、および第3ロール(R3)を用い、各冷却ロールの温度をR1/R2/R3=95/100/85℃とし、Tダイ出口から押し出した(メタ)アクリル系樹脂組成物の溶融樹脂フィルムと、R1およびR2の間隙を含む鉛直面とのなす角度θを5°に設定した。そして、溶融樹脂フィルムをR1上にキャスティングし、厚さ128μmの未延伸フィルムを得た後、そのまま連続的にオーブン縦延伸機へ供給し、オーブン温度を136℃として、縦方向に延伸倍率1.6倍の延伸を行った。次いで、延伸後のフィルムを巻き取り機で巻き取り、平均厚さ80μmの縦延伸フィルムロールを得た。
次に、得られた縦延伸フィルムロールを繰り出し機より繰り出し、両端部から20mmの位置を2インチのクリップで掴んでテンター延伸機へ供給し、オーブン温度を138℃として、横方向に延伸倍率2.0倍の横延伸を行った。次いで、延伸後のフィルムを巻き取り機で巻き取り、平均厚さ40μmのロール状のフィルムを得た。得られたフィルムを50mm×100mmサイズに切断して、枚葉(複数枚)のフィルム(B-1)を製造した。
〔実施例2〕
紫外線吸収剤の投入速度を0.79部/時とした以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた(メタ)アクリル系樹脂組成物を(A-2)とし、実施例1と同様の方法で得たフィルムを(B-2)とし、実施例1と同様の測定および評価を行った。
〔実施例3〕
紫外線吸収剤の投入速度を1.08部/時とした以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた(メタ)アクリル系樹脂組成物を(A-3)とし、実施例1と同様の方法で得たフィルムを(B-3)とし、実施例1と同様の測定および評価を行った。
〔比較例1〕
紫外線吸収剤の投入速度を1.45部/時とした以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた(メタ)アクリル系樹脂組成物を(A-4)とし、実施例1と同様の方法で得たフィルムを(B-4)とし、実施例1と同様の測定および評価を行った。
〔比較例2〕
実施例2で得られた(メタ)アクリル系樹脂組成物(A-2)から、オープン製膜を行うことによってフィルムを製造した。
具体的には、先端部にポリマーフィルタ(濾過精度5μm)およびTダイを備えた直径65mm、L/D=32、バリアフライト型スクリューを有するベント付単軸押出機を用い、25kg/時の処理速度で溶融製膜を行った。クロムめっきが施された冷却ロールである第2ロール(R2)(キャストロール)、および第3ロール(R3)を用い、各冷却ロールの温度をR2/R3=120℃/95℃とし、Tダイ出口から押し出した。押し出した(メタ)アクリル系樹脂組成物の溶融樹脂フィルムをR2上にキャスティングし、厚さ128μmの未延伸フィルムを得た。
その後、そのまま連続的にオープン縦延伸機へ供給し、オープン温度を136℃として、縦方向に延伸倍率1.6倍の延伸を行った。次いで、延伸後のフィルムを巻き取り機で巻き取り、平均厚さ80μmの縦延伸フィルムロールを得た。
次に、得られた縦延伸フィルムロールを繰り出し機より繰り出し、両端部から20mmの位置を2インチのクリップで掴んでテンター延伸機へ供給し、オーブン温度を138℃として、横方向に延伸倍率2.0倍の横延伸を行った。次いで、延伸後のフィルムを巻き取り機で巻き取り、平均厚さ40μmのロール状のフィルムを得た。得られたフィルムを50mm×100mmサイズに切断して、枚葉(複数枚)のフィルム(B-5)を製造した。フィルム(B-5)に対しても実施例1と同様の測定および評価を行った。