JP5483572B2 - 光学用面状熱可塑性樹脂成形体、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
面状の光学用透明高分子材料に要求される特性としては、まず、透明性、光学等方性が高いことが挙げられ、それらと共に用途に応じた特性も要求される。
偏光板などに用いられる光学用保護フィルムには、高い透明性、高い光学等方性に加えて、低い光学弾性率、耐熱性、耐光性、高い表面硬度、高い機械的強度、位相差の波長依存性が小さいこと、位相差の入射角依存性が小さいことなどの特性が要求される。
拡散板、導光板などの光学シートには、高い透明性、高い光学等方性に加えて、低い光学弾性率、耐熱性、耐光性、高い表面硬度、高い機械的強度などの特性が要求される。特に、現行の光学シートに用いられているポリメチルメタクリレート(PMMA)よりもさらに高い耐熱性を持たせることによって成形ひずみを原因とする光学特性の低下を抑えることが望まれている。
他方、透明性と耐熱性とを共に兼ね備えた熱可塑性樹脂として、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体をラクトン環化縮合反応させることによって得られるラクトン環含有重合体が知られている(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。しかし、光学等方性、耐光性、表面硬度が十分に発現できず、機械的強度も満足できるものではなかったので、フィルム化やシート化を行って面状の光学用透明高分子材料とすることは従来はなされていなかった。
すなわち、本発明にかかる光学用面状熱可塑性樹脂成形体は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を加熱処理することにより得られるラクトン環含有重合体を主成分として含む延伸フィルムであり、光学フィルムであり、面方向の位相差が20〜500nmである。
前記ラクトン環含有重合体は、下記一般式(1)で表されるラクトン環構造を有する。
前記光学フィルムは、位相差フィルムであることがある。
前記光学フィルムは、視野角補償フィルムであることがある。
前記光学フィルムは、延伸フィルムである。
〔ラクトン環含有重合体〕
本発明にかかる光学用面状熱可塑性樹脂成形体は、ラクトン環含有重合体を主成分として含む。
ラクトン環含有重合体は、好ましくは、下記一般式(1)で表されるラクトン環構造を有する。
ラクトン環含有重合体構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。ラクトン環含有重合体構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合が5重量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になることがあり、好ましくない。ラクトン環含有重合体構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合が90重量%よりも多いと、成形加工性に乏しくなることがあり、好ましくない。
ラクトン環含有重合体構造中の一般式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、(メタ)アクリル酸エステルを重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは10〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは40〜90重量%、特に好ましくは50〜90重量%であり、水酸基含有単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。不飽和カルボン酸を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。一般式(2a)で表される単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
重合工程においては、下記一般式(1a)で表される単量体を含む単量体成分の重合反応を行うことにより、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得る。
一般式(1a)で表される単量体としては、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ターシャリーブチルなどが挙げられる。これらの中でも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、耐熱性向上効果が高い点で、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが特に好ましい。一般式(1a)で表される単量体は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、一般式(1a)で表される単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;などが挙げられ、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも特に、耐熱性、透明性が優れる点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
水酸基含有単量体としては、一般式(1a)で表される単量体以外の水酸基含有単量体であれば特に限定されないが、例えば、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル;2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸;などが挙げられ、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸などが挙げられ、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
一般式(2a)で表される単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
単量体成分を重合して分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得るための重合反応の形態としては、溶剤を用いた重合形態であることが好ましく、溶液重合が特に好ましい。
重合温度、重合時間は、使用する単量体の種類、使用比率等によって異なるが、好ましくは、重合温度が0〜150℃、重合時間が0.5〜20時間であり、より好ましくは、重合温度が80〜140℃、重合時間が1〜10時間である。
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられ、これらは1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや反応条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
重合工程で得られた重合体は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)であり、重合体(a)の重量平均分子量は、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。重合工程で得られた重合体(a)は、続くラクトン環化縮合工程において、加熱処理されることによりラクトン環構造が重合体に導入され、ラクトン環含有重合体となる。
ラクトン環化縮合工程において得られるラクトン環含有重合体は、好ましくは、下記一般式(1)で表されるラクトン環構造を有する。
重合体(a)を加熱処理する方法については特に限定されず、公知の方法が利用できる。例えば、重合工程によって得られた、溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。また、溶剤の存在下で、必要に応じて閉環触媒を用いて加熱処理してもよい。また、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を持つ加熱炉や反応装置、脱揮装置のある押出機等を用いて加熱処理を行うこともできる。
環化縮合反応を行う際に、重合体(a)に加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。また、環化縮合反応を行う際には、必要に応じて、環化縮合反応の触媒として一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いてもよいし、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機カルボン酸類を触媒として用いても良い。特開昭61−254608号公報や特開昭61−261303号公報に示されている様に、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などを用いてもよい。
環化縮合反応の際に触媒として用いることができる有機リン化合物としては、例えば、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等のアルキル(アリール)亜ホスホン酸(但し、これらは、互変異性体であるアルキル(アリール)ホスフィン酸になっていてもよい)およびこれらのジエステルあるいはモノエステル;ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニルエチルホスフィン酸等のジアルキル(アリール)ホスフィン酸およびこれらのエステル;メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、トリフルオルメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等のアルキル(アリール)ホスホン酸およびこれらのジエステルあるいはモノエステル;メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸等のアルキル(アリール)亜ホスフィン酸およびこれらのエステル;亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニル等のリン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;メチルホスフィン、エチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のモノあるいはジあるいはトリアルキル(アリール)ホスフィン;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、フェニルジクロロホスフィン、ジメチルクロロホスフィン、ジエチルクロロホスフィン、ジフェニルクロロホスフィン等のアルキル(アリール)ハロゲンホスフィン;酸化メチルホスフィン、酸化エチルホスフィン、酸化フェニルホスフィン、酸化ジメチルホスフィン、酸化ジエチルホスフィン、酸化ジフェニルホスフィン、酸化トリメチルホスフィン、酸化トリエチルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィン等の酸化モノあるいはジあるいはトリアルキル(アリール)ホスフィン;塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム等のハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム;などが挙げられる。これらの中でも、触媒活性が高くて低着色性のため、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステル、アルキル(アリール)ホスホン酸が好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステルがより好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、リン酸ジエステルあるいはモノエステルが特に好ましい。これら有機リン化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加しても良い。
脱揮工程とは、溶剤、残存単量体等の揮発分と、ラクトン環構造を導く環化縮合反応により副生したアルコールを、必要により減圧加熱条件下で、除去処理する工程をいう。この除去処理が不十分であると、生成した樹脂中の残存揮発分が多くなり、成形時の変質等によって着色したり、泡やシルバーストリークなどの成形不良が起こったりする問題等が生じる。
前記熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲が好ましく、200〜300℃の範囲がより好ましい。反応処理温度が150℃より低いと、環化縮合反応が不十分となって残存揮発分が多くなるおそれがあり、350℃より高いと、着色や分解が起こるおそれがある。
前記ベント付き押出機を用いる場合、ベントは1個でも複数個でもいずれでもよいが、複数個のベントを有する方が好ましい。
前記ベント付き押出機を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲が好ましく、200〜300℃の範囲がより好ましい。上記温度が150℃より低いと、環化縮合反応が不十分となって残存揮発分が多くなるおそれがあり、350℃より高いと、着色や分解が起こるおそれがある。
なお、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態の場合、後述するように、厳しい熱処理条件では得られるラクトン環含有重合体の物性が悪化するおそれがあるので、好ましくは、上述した脱アルコール反応の触媒を使用し、できるだけ温和な条件で、ベント付き押出機等を用いて行うことが好ましい。
脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに、過程の一部においてのみ併用する形態を行っても良い。例えば、重合体(a)を製造した装置を、さらに加熱し、必要に応じて脱揮工程を一部併用して、環化縮合反応を予めある程度進行させておき、その後に引き続いて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行い、反応を完結させる形態である。
なお、ラクトン環化縮合工程において環化縮合反応に導入する「重合体(a)と溶剤とを含む混合物」とは、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま使用してもよいし、一旦溶剤を除去したのちに環化縮合反応に適した溶剤を再添加してもよいことを意味する。
上記方法(i)で添加する触媒としては、一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒またはエステル交換触媒、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などが挙げられるが、本発明においては、前述の有機リン化合物を用いることが好ましい。触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加しても良い。添加する触媒の量は特に限定されないが、重合体(a)の重量に対し、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.01〜2.5重量%、さらに好ましくは0.01〜0.1重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。方法(i)の加熱温度と加熱時間は特に限定されないが、加熱温度としては、好ましくは室温以上、より好ましくは50℃以上であり、加熱時間としては、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。加熱温度が低いと、あるいは、加熱時間が短いと、環化縮合反応率が低下するので好ましくない。また、加熱時間が長すぎると、樹脂の着色や分解が起こる場合があるので好ましくない。
上記方法(i)、(ii)ともに、条件によっては加圧下となっても何ら問題はない。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、溶剤の一部が反応中に自然に揮発しても何ら問題ではない。
重合工程で得られた重合体(a)の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基を予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う形態の場合、予め行う環化縮合反応で得られた重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)と溶剤を、そのまま脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に導入してもよいし、必要に応じて、前記重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)を単離してから溶剤を再添加する等のその他の処理を経てから脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に導入しても構わない。
ラクトン環含有重合体は、重量平均分子量が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。
ラクトン環含有重合体は、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での重量減少率が1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である。
ラクトン環含有重合体は、15重量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が6以下となるものが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である。着色度(YI)が6を越えると、着色により透明性が損なわれ、本来目的とする用途に使用できない場合がある。
ラクトン環含有重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上、最も好ましくは140℃以上である。
ラクトン環含有重合体は、それに含まれる残存揮発分の総量が、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下である。残存揮発分の総量が1500ppmよりも多いと、成形時の変質等によって着色したり、発泡したり、シルバーストリークなどの成形不良の原因となる。
〔光学用面状熱可塑性樹脂成形体〕
本発明にかかる光学用面状熱可塑性樹脂成形体は、ラクトン環含有重合体を主成分として含む。
本発明にかかる光学用面状熱可塑性樹脂成形体は、ラクトン環含有重合体以外の重合体(その他の重合体)を含んでいてもよい。
その他の重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体;などが挙げられる。
本発明にかかる光学用面状熱可塑性樹脂成形体は、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;フェニルサリチレート、(2,2´−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;難燃剤;などが挙げられる。
光学用面状熱可塑性樹脂成形体の製造方法は、特に限定されないが、好ましくは、ラクトン環含有重合体と、必要により、その他の重合体やその他の添加剤などを、従来公知の混合方法にて混合し、面状に成形することで得られる。
面状の形態としては、フィルム状やシート状が好ましい。
本発明においては、フィルム状の光学用面状熱可塑性樹脂成形体とシート状の光学用面状熱可塑性樹脂成形体とを定義上で区別するため、膜厚が350μm未満のものをフィルム状の光学用面状熱可塑性樹脂成形体、膜厚が350μm以上のものをシート状の光学用面状熱可塑性樹脂成形体と定義する。
シート状の光学用面状熱可塑性樹脂成形体の膜厚は、350μm〜10mmが好ましく、より好ましくは350μm〜5mmである。膜厚が10mmよりも厚いシート状の光学用面状熱可塑性樹脂成形体は、シート厚が均一になりにくいために好ましくない。
本発明にかかる光学用面状熱可塑性樹脂成形体は、高透明性を有するので、可視光透過率が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上である。
本発明にかかる光学用面状熱可塑性樹脂成形体は、ASTM−D−882−61Tに基づいて測定した伸び率が1%以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、通常は100%以下が好ましい。1%未満の場合には、靭性に欠けるため好ましくない。
本発明にかかる光学用面状熱可塑性樹脂成形体には、目的に応じて、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー性等の種々の機能性コーティング層を各々積層塗工したり、本発明にかかる光学用面状熱可塑性樹脂成形体に各々の単独の機能性コーティング層が塗工された部材を粘着剤や接着剤を介して積層した積層体であってもよい。なお、各層の積層順序は特に限定されるものではなく、積層方法も特に限定されない。
ノングレア層は、視野角を広げ、透過光を散乱させるために設けられる。シリカ、メラミン樹脂、アクリル樹脂等の微粉体をインキ化し、従来公知の塗布法で、他の機能層上に塗布し、熱あるいは光硬化させることにより形成される。また、ノングレア処理したフィルムを他の機能性フィルム上に貼り付けても良い。
本発明にかかる前記光学用面状熱可塑性樹脂成形体の一つの好ましい形態は、光学用保護フィルム(以下、本発明の光学用保護フィルムと称することがある)である。
本発明の光学用保護フィルムは、透明光学部品を保護するフィルムであれば特に限定されないが、好ましい具体例としては、液晶表示装置用の偏光板の保護フィルムである。また、位相差フィルムを兼ねた光学用保護フィルムとすることもできる。
本発明の光学用保護フィルムは、未延伸フィルムであっても良いし、延伸フィルムであっても良い。
本発明の光学用保護フィルムは、延伸フィルムである場合、面方向の位相差が20〜500nmであり、好ましくは50〜400nmである。
本発明の光学用保護フィルムは、延伸フィルムである場合、特定の位相差(例えば、λ/2やλ/4)を持たせることで、位相差フィルムの機能を有することも可能である。この場合、ラクトン環含有重合体を製造する際に用いる単量体として、一般式(1a)で表される単量体としての(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルを用いることが好ましい。また、光学用面状熱可塑性樹脂成形体中のその他重合体として、アクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
本発明の光学用保護フィルムは、位相差の入射角依存性が小さく、入射角0°の位相差R0と入射角40°の位相差R40との差(R40−R0)が、好ましくは20nm未満、より好ましくは10nm未満である。
本発明の光学用保護フィルムは、表面硬度が高く、鉛筆硬度が、好ましくはH以上、より好ましくは2H以上である。
フィルム成形の方法としては、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法など、公知のフィルム成形方法が挙げられる。これらの中でも、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が好ましい。
溶液キャスト法(溶液流延法)に用いられる溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン、およびこれらの混合溶媒などの芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジオキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル;などが挙げられる。これら溶媒は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
溶融押出法としては、Tダイ法、インフレーション法などが挙げられ、その際の、フィルムの成形温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。
延伸を行う方法としては、従来公知の延伸方法が適用でき、例えば、一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸などを用いることができる。
延伸温度としては、フィルム原料の重合体のガラス転移温度近辺で行うことが好ましく、具体的には、(ガラス転移温度−30)℃〜(ガラス転移温度+100)℃で行うことが好ましく、より好ましくは(ガラス転移温度−20)℃〜(ガラス転移温度+80)℃である。(ガラス転移温度−30)℃よりも低いと、十分な延伸倍率が得られないために好ましくない。(ガラス転移温度+100)℃よりも高いと、樹脂の流動(フロー)が起こり安定な延伸が行えなくなるために好ましくない。
延伸速度(一方向)としては、好ましくは10〜20000%/分の範囲、より好ましくは100〜10000%/分の範囲である。10%/分よりも遅いと、十分な延伸倍率を得るために時間がかかり、製造コストが高くなるために好ましくない。20000%/分よりも早いと、延伸フィルムの破断等が起こるおそれがあるために好ましくない。
〔光学フィルム〕
本発明にかかる前記光学用面状熱可塑性樹脂成形体の別の好ましい形態は、光学フィルム(以下、本発明の光学フィルムと称することがある)である。
本発明の光学フィルムは、光学特性に優れたフィルムであれば特に限定されないが、好ましくは、位相差フィルム(以下、本発明の位相差フィルムと称することがある)、視野角補償フィルム(以下、本発明の視野角補償フィルムと称することがある)である。
本発明の光学フィルムは、未延伸フィルムであっても良いし、延伸フィルムであっても良いが、大きい位相差を発現するためには延伸フィルムであることが好ましい。
本発明の位相差フィルムは、位相差の波長依存性が小さく、590nmの位相差Reと各波長の位相差Rとの比(R/Re)が、好ましくは0.9〜1.2、より好ましくは0.95〜1.1である。
本発明の位相差フィルムは、位相差の入射角依存性が小さく、入射角0°の位相差R0と入射角40°の位相差R40との差(R40−R0)が、好ましくは20nm未満、より好ましくは10nm未満である。
本発明の位相差フィルムの製造方法は、特に限定されないが、好ましくは、ラクトン環含有重合体と、必要により、その他の重合体やその他の添加剤などを、従来公知の混合方法にて混合し、フィルム状に成形することで得られる。また、延伸することによって延伸フィルムとしてもよい。
フィルム成形温度、フィルム成形の方法は、前述の光学用保護フィルムにおけるフィルム成形温度、フィルム成形の方法と同様である。
延伸温度、延伸倍率、延伸速度は、前述の光学用保護フィルムにおける延伸温度、延伸倍率、延伸速度と同様である。
フィルムの光学等方性や力学特性を安定化させるため、延伸処理後に熱処理(アニーリング)などを行うこともできる。
本発明の位相差フィルムは、必要により、表面をコロナ処理してもよい。特に、フィルム表面にコーティング加工等の表面処理が施される場合や、粘着剤により別のフィルムがラミネートされる場合には、相互の密着性を向上させるため、フィルム表面のコロナ処理を行うことが好ましい。
本発明の視野角補償フィルムは、位相差の波長依存性が小さく、590nmの位相差Reと各波長の位相差Rとの比(R/Re)が、好ましくは0.9〜1.2、より好ましくは0.95〜1.1である。
本発明の視野角補償フィルムは、表面硬度が高く、鉛筆硬度が、好ましくはH以上、より好ましくは2H以上である。
本発明の視野角補償フィルムの製造方法は、特に限定されないが、好ましくは、ラクトン環含有重合体と、必要により、その他の重合体やその他の添加剤などを、従来公知の混合方法にて混合し、フィルム状に成形することで得られる。また、延伸することによって延伸フィルムとしてもよい。
延伸を行う方法としては、従来公知の延伸方法が適用でき、例えば、一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸などを用いることができる。これらの中でも、視野角補償フィルムとするためには、逐次二軸延伸、同時二軸延伸などの二軸延伸が好ましい。
延伸温度、延伸倍率、延伸速度は、前述の光学用保護フィルムにおける延伸温度、延伸倍率、延伸速度と同様である。
フィルムの光学等方性や力学特性を安定化させるため、延伸処理後に熱処理(アニーリング)などを行うこともできる。
本発明にかかる前記光学用面状熱可塑性樹脂成形体の別の好ましい形態は、光学シート(以下、本発明の光学シートと称することがある)である。
本発明の光学シートは、耐熱性、光学特性に優れたシートであれば特に限定されないが、好ましくは、拡散板(以下、本発明の拡散板と称することがある)、導光板(以下、本発明の導光板と称することがある)である。
本発明の光学シートが拡散板である場合、その構成は、樹脂成分として本発明におけるラクトン環含有重合体を必須に含む以外は従来公知の拡散板の構成を有すればよい
本発明の光学シートが導光板である場合、その構成は、樹脂成分として本発明におけるラクトン環含有重合体を必須に含む以外は従来公知の導光板の構成を有すればよい。
本発明の光学シートは、表面硬度が高く、鉛筆硬度が、好ましくはH以上、より好ましくは2H以上である。
本発明の光学シートは、耐熱性が特に高く、ビカット軟化温度が、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上である。
本発明の光学シートの製造方法は、特に限定されないが、好ましくは、ラクトン環含有重合体と、必要により、その他の重合体やその他の添加剤などを、従来公知の混合方法にて混合し、シート状に成形することで得られる。
シート成形の成形温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。
本発明の拡散板は、上記その他の添加剤として、有機充填剤および/または無機充填剤を含むことが好ましい。
有機充填剤および/または無機充填剤の使用量は、ラクトン環含有重合体に対して、有機充填剤と無機充填剤の合計量が、0.01〜50重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜40重量%、さらに好ましくは0.1〜20重量%である。この範囲内で使用することにより、光線透過率、拡散率、強度、剛性、熱変形温度および硬度などの特性のバランスが良い拡散板が得られる。
有機充填剤として重合体架橋物粒子を用いる場合、重合体架橋物粒子の粒径は、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.5〜50μmである。
有機充填剤としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリシロキサン類、フッ素樹脂等が挙げられる。有機充填剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
無機充填剤としては、例えば、シリカ、シリカアルミナ、ケイ藻土、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ペントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデンなどが挙げられ、これらの中でも、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、タルク、炭酸バリウムが好ましい。無機充填剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
本発明の拡散板を用い、従来公知の方法によって、液晶表示装置の光拡散シートおよびこれを用いたバックライトユニットとすることができる。
本発明の導光板は、側面以外の一平面に、光反射防止層を有していることが好ましい。本発明の導光板が、上述のように、側面以外の一平面に、光反射機能を有する微細凹凸形状を有している場合には、光反射防止層は光反射機能を有する微細凹凸形状を有する面の反対面であることが好ましい。
光反射防止層は、一般の光学部品の光反射防止層と同様に、可視光線などの光の、入光面における反射を防止する機能を有する層であれば特に限定されず、例えば、無機薄膜や透明樹脂膜が挙げられる。
<重合反応率、重合体組成分析>
重合反応時の反応率および重合体中の特定単量体単位の含有率は、得られた重合反応混合物中の未反応単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、装置名:GC17A)を用いて測定して求めた。
<ダイナミックTG>
重合体(もしくは重合体溶液あるいはペレット)を一旦テトラヒドロフランに溶解もしくは希釈し、過剰のヘキサンもしくはメタノールへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1mmHg(1.33hPa)、80℃、3時間以上)することによって揮発成分などを除去し、得られた白色固形状の樹脂を以下の方法(ダイナミックTG法)で分析した。
測定条件:試料量 5〜10mg
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素フロー 200ml/min
方法:階段状等温制御法(60℃〜500℃の間で重量減少速度値0.005%/sec以下で制御)
<脱アルコール反応率とラクトン環構造の占める割合>
脱アルコール反応率を、重合で得られた重合体組成からすべての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる重量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において重量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による重量減少から求めた。
1−(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))
に代入してその値を求め、%で表記すると、脱アルコール反応率が得られる。そして、この脱アルコール反応率だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、ラクトン環化に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体の当該重合体組成における含有量(重量比)に、脱アルコール反応率を乗じることで、当該重合体中のラクトン環構造の占める割合を算出することができる。
重合体の重量平均分子量は、GPC(東ソー社製GPCシステム)のポリスチレン換算により求めた。
<樹脂の熱分析>
樹脂の熱分析は、試料約10mg、昇温速度10℃/min、窒素フロー50cc/minの条件で、DSC((株)リガク社製、装置名:DSC−8230)を用いて行った。なお、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に従い、中点法で求めた。
<鉛筆硬度>
フィルムの表面硬度を、JIS K−5400に基づいて、鉛筆引っかき試験機を用いて測定した。
屈折率異方性(リタデーション:Re)は、王子計測器社製KOBRA−21ADHを用いて測定した。可視光透過率は、日本電色工業社製NDH−1001DPを用いて測定した。
<機械的特性>
フィルムの引張強度、伸び率、引張弾性率は、ASTM−D−882−61Tに基づいて測定した。
〔製造例1〕
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30L反応釜に、9000gのメタクリル酸メチル(MMA)、1000gの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、10000gの4−メチル−2−ペンタノン(メチルイソブチルケトン、MIBK)、5gのn−ドデシルメルカプタンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、開始剤として5.0gのターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(アクゾ化薬製、商品名:カヤカルボン Bic−7)を添加すると同時に、10.0gのターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネートと230gのMIBKからなる溶液を4時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜120℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
〔製造例2〕
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30L反応釜に、8500gのMMA、1500gのMHMA、10000gのMIBK、5gのn−ドデシルメルカプタンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、開始剤として10.0gのターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを添加すると同時に、10.0gのターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネートと230gのMIBKからなる溶液を4時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜120℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
得られたペレット(2A)について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.35重量%の重量減少を検知した。また、ペレットの重量平均分子量は166000であり、メルトフローレートは3.9g/10分、ガラス転移温度は127℃であった。
〔製造例3〕
製造例1において、MMAの量を8000g、MHMAの量を2000gに変更した以外は製造例1と同様に行い、透明なペレット(3A)を得た。
〔製造例4〕
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した30L反応釜に、7500gのMMA、2000gのMHMA、500gのメタクリル酸、10000gのMIBK、25gのn−ドデシルメルカプタンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、開始剤として10.0gのターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを添加すると同時に、10.0gのターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネートと230gのMIBKからなる溶液を4時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜120℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
得られた重合体溶液を、製造例1と同様にベントタイプスクリュー二軸押出し機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押出すことにより、透明なペレット(4A)を得た。
得られたペレット(4A)について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.28重量%の重量減少を検知した。また、ペレットの重量平均分子量は186000であり、メルトフローレートは7.2g/10分、ガラス転移温度は139℃であった。
〔参照例1〕
製造例1で得られたペレット(1A)を、20mmφのスクリューを有する二軸押出し機を用いて、幅150mmのコートハンガータイプTダイから溶融押出しし、厚さ約100μmのフィルム(1B)を作成した。
〔参照例2〜4〕
製造例2〜4で得られたペレット(2A)〜(4A)を用いて、参照例1と同様にして、厚さ約100μmのフィルム(2B)〜(4B)を作成した。
得られたフィルム(2B)〜(4B)の光学特性、機械的特性の評価を行った結果を表1、2に示した。
〔比較例1〕
ポリカーボネート(帝人化成製、商品名:パンライト L−1225Y)を用いて、参照例1と同様にして、厚さ約100μmのフィルム(c1B)を作成した。
参照例1で得られたフィルム(1B)をポリビニルアルコールからなる偏光膜の両面に貼り合わせて偏光板(P1)を得た。この偏光板(P1)をクロスニコルで重ね合わせて、光の抜けを観察したところ、重なった部分の光り抜け(輝点)は観察されなかった。
なお、偏光板の概略図を図1に示した。
〔参照例6〕
参照例1で得られたフィルム(1B)を、二軸延伸試験機(東洋精機製作所製)を用いて、150℃、0.1m/分の延伸速度で1.5倍に二軸延伸することで、厚さ45μmの延伸フィルム(1C)を得た。
この延伸フィルム(1C)をポリビニルアルコールからなる偏光膜の両面に貼り合わせて偏光板(P2)を得た。この偏光板(P2)をクロスニコルで重ね合わせて、光の抜けを観察したところ、重なった部分の光り抜け(輝点)は観察されなかった。
〔実施例1〕
製造例3で得られたペレット(3A)を用いて、参照例1と同様にして、厚さ約200μmのフィルムを作成した。これを、二軸延伸試験機(東洋精機製作所製)を用いて、150℃、0.1m/分の延伸速度で1.5倍に単軸延伸することで、厚さ148μmの延伸フィルム(3C)を得た。
〔比較例2〕
ポリカーボネート(帝人化成製、商品名:パンライト L−1225Y)を用いて、二軸延伸試験機(東洋精機製作所製)を用いて、実施例1と同様に、150℃、0.1m/分の延伸速度で1.5倍に二軸延伸することで、厚さ約150nmの延伸フィルム(c1C)を得た。
この延伸フィルム(c1C)の450nmと590nmにおける位相差を測定したところ、420nmと375nmであった。
参照例6で得られた延伸フィルム(1C)をポリビニルアルコールからなる偏光膜の片面に、実施例1で得られた延伸フィルム(3C)をもう一方の面に貼り合わせて偏光板(P3)を得た。この偏光板(P3)と参照例6で得られた偏光板(P2)をクロスニコルで重ね合わせて、光の抜けを観察したところ、重なった部分の光り抜け(輝点)は観察されなかった。
〔実施例3〕
製造例3で得られたペレット(3A)を用いて、参照例1と同様にして、厚さ約200μmのフィルムを作成した。これを、二軸延伸試験機(東洋精機製作所製)を用いて、140℃、0.1m/分の延伸速度で2.0倍に単軸延伸することで、厚さ126μmの延伸フィルム(3D)を得た。得られた延伸フィルム(3D)の590nmにおける位相差は146nmであった。
得られた延伸フィルム(3D)と延伸フィルム(c1D)を、これら2つのフィルムの光軸が45度となるように貼り合わせて、視野角補償フィルムを得た。
〔参照例7〕
8gのジペンタエリスリトールヘキサエチルアクリレート、2gのペンタエリスリトールトリエチルアクリレート、0.5gの光重合開始剤(チバガイギー製、商品名:イルガキュア907)を、40gのキシレンに溶解して、紫外線硬化型ハードコート樹脂を調製し、参照例6で得られた延伸フィルム(1C)にバーコーターを用いて塗布した。溶媒を乾燥後、高圧水銀灯で紫外線を照射することにより、厚さ5μmのハードコート層を形成した。このハードコート層の上に、反射防止剤(旭硝子製、商品名:サイトップ)をバーコーターを用いて塗布し、膜厚0.1μmの低屈折率層を形成することで、反射防止フィルム(1D)を得た。
〔参照例8〕
参照例1で得られたフィルム(1B)の片面に下記する配合の紫外線遮蔽層を乾燥膜厚が3μmとなるように塗布し、120℃で1分間乾燥した。さらに、紫外線遮蔽層と反対側に下記する配合の粘着剤層を乾燥膜厚が20μmとなるように塗布し、120℃で1分間乾燥した。得られた積層体の表面硬度は4Hであった。また、350nmでの透過率は0%であった。なお、透過率は、分光光度計「UV−3100」(島津製作所社製)で測定した。
紫外線遮蔽性アクリル樹脂(商品名:ハルスハイブリッドUV−G13、日本触媒社製):100部
イソシアネート硬化剤(商品名:デスモジュールN3200、住化バイエルウレタン社製):3部
酢酸ブチル:37部
(粘着剤層の組成)
n−ブチルアクリレート/アクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート=93/6/1の共重合体(Mw=80万、ガラス転移温度=約−48℃、酢酸エチル溶液、不揮発分は約40%):100部
イソシアネート硬化剤(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製):1部
酢酸ブチル:100部
〔参照例9〕
参照例1で得られたフィルム(1B)の片面に下記する配合の熱線遮蔽層を乾燥膜厚が10μmとなるように塗布し、120℃で3分間乾燥した。得られた積層体の表面硬度は5Hであった。また、871nmでの透過率は34%、1090nmでの透過率は30%であった。なお、透過率は、分光光度計「UV−3100」(島津製作所社製)で測定した。
アクリルバインダー(商品名:ハルスハイブリッドIR−G205、日本触媒社製):100部
フタロシアニン系色素(商品名:イーエクスカラーIR−12、日本触媒社製):0.3部
ジイモニウム系色素(商品名:IRG−022、日本化薬社製):0.3部
メチルイソブチルケトン:50部
〔参照例10〕
参照例1で得られたフィルム(1B)の片面に下記する配合のハードコート層を乾燥膜厚が3μmとなるように塗布し、130℃で2分間乾燥した。また、積層体を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿後、250g/cm2の荷重でスチールウール(型番:#0000)を使用して塗工面を擦ったが、傷が全く認められなかった。
熱硬化型シリコンハードコート剤(商品名:ソルガードNP730、日本ダクロシャムロック社製):100部
イソプロピルアルコール:100部
〔参照例11〕
参照例1で得られたフィルム(1B)の片面に下記する配合のハードコート層、低屈折率層の順に積層させた。すなわち、下記のハードコート剤(A)を塗布し、100℃で1分間乾燥した後、高圧水銀灯で200mJ/cm2の紫外線を照射することにより塗布層を硬化させ、膜厚5μmのハードコート層を形成した。次に、このハードコート層上に、下記する配合の低屈折率コーティング剤(B)を塗布し、100℃で1時間硬化させ、膜厚0.1μmの低屈折率層を形成した。得られたフィルムの反射率は、波長550nmで0.25%であった。得られたフィルムの折り曲げ性、耐湿熱性、耐熱性、反射率の評価結果を表3に示した。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ライトアクリレートDPE−6A、共栄社化学社製)8g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(ライトアクリレートPE−3A、共栄社化学社製)2gを混合し、メチルエチルケトン40gに溶解した溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.5gをメチルイソブチルケトン2gに溶解した溶液を加え、ハードコート剤(A)を調製した。
(低屈折率コーティング剤(B)の調製)
攪拌機、温度計、および冷却管を備えた300mlの四つ口フラスコに、テトラメトキシシラン144.5g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン23.6g、水19.0g、メタノール30.0g、アンバーリスト15(オルガノ社製の陽イオン交換樹脂)5.0gを入れ、65℃で2時間攪拌し、反応させた。反応混合物を室温まで冷却した後、冷却管に代えて蒸留塔、これに接続させた冷却管および流出口を設け、常圧下でフラスコ内温約80℃まで2時間かけて昇温シ、メタノールが流出しなくなるまで同温度で保持した。さらに、2.67×10kPaの圧力下、90℃の温度で、メタノールが流出しなくなるまで保持し、反応をさらに進行させた。再び、室温まで冷却した後、アンバーリスト15を濾別し、数平均分子量が1800の重合性ポリシロキサン(M−1)を得た。
(低屈折率コーティング剤中の無機微粒子と有機ポリマーの比率)
低屈折率コーティング剤を1.33×10kPaの圧力下、130℃で24時間乾燥したものについて元素分析を行い、灰分を低屈折率コーティング剤中の無機微粒子含有量として求めた。
低屈折率コーティング剤(S−1)1gを酢酸n−ブチル99gで希釈した溶液を用いて、透過型電子顕微鏡により粒子を撮影し、任意の100個の粒子の直径を読み取り、その平均を平均粒子径として求めた。
(耐湿熱性)
80℃で相対湿度95%RHの高温高湿雰囲気中に複合フィルムを1000時間放置し、放置前後の使用したジイモニウム色素の極大吸収波長(1090nm)での透過率を前記と同様に分光光度計で測定し、放置前後の透過率の差を求め、下記の基準で塗膜中の色素の安定性を評価した。また、1000時間放置後の塗工フィルムの基材密着性を評価するためにJIS5400の碁盤目テープ剥離試験を行い、剥離試験後の塗膜状態を下記の基準で評価した。
○:試験前後の色素の極大吸収波長での透過率の変化が1%未満
△:試験前後の色素の極大吸収波長での透過率の変化が1%以上3%未満
×:試験前後の色素の極大吸収波長での透過率の変化が3%以上
基材密着性:
○:異常なし
×:剥離
(耐熱性)
100℃の雰囲気中に塗工フィルムを1000時間放置し、放置前後の使用したジイモニウム色素の極大吸収波長(1090nm)での透過率を前記と同様に分光光度計で測定し、放置前後の透過率の差を求め、下記の基準で塗膜中の色素の安定性を評価した。
○:試験前後の色素の極大吸収波長での透過率の変化が1%未満
△:試験前後の色素の極大吸収波長での透過率の変化が1%以上3%未満
×:試験前後の色素の極大吸収波長での透過率の変化が3%以上
(折り曲げ性)
塗工フィルムをJIS K5600(2004年版)に基づいた屈曲試験を行い、塗膜の屈曲部にクラック、剥がれなどの異常が生じた心棒の直径を評価し、下記の評価基準で評価した。心棒の直径が小さいほど塗膜の折り曲げ性は優れることを意味する。
△:やや良好(心棒の直径が8mm以上10mm以下)
×:劣る(心棒の直径が12mm以上)
(反射率)
フィルムの反射防止膜側とは反対側の面をスチールウールで粗面化し、さらに黒色インキを塗り、反射防止膜側の入射角5°における鏡面反射スペクトルを分光光度計(UV−3100、島津製作所製)を用いて測定し、反射率が最小値を示す波長とその反射率の最小値を求めた。
参照例9で得られたフィルムの熱線遮蔽層とは反対側に参照例11と同様にハードコート層、低屈折率層の順に積層させた。このようにして、反射防止性と熱線遮蔽性を有する複合フィルムを作成した。得られた複合フィルムの反射率は波長550nmで0.25%であった。また、871nmでの透過率は34%、1090nmでの透過率は30%であった。なお、透過率は、分光光度計「UV−3100」(島津製作所製)で測定した。
〔参照例13〕
参照例1で得られたフィルム(1B)の片面に、下記する配合で攪拌機で攪拌して得られた塗料を、得られる光拡散層の乾燥膜厚が15μmとなるように塗布し、硬化させた。得られた拡散フィルムをバックライトユニット(図2)に導光板側とは反対側に光拡散層となるように組み込み、このバックライトユニットを60℃の恒温槽に放置させ、72時間後の光拡散シートの撓みの有無を観察したが、撓みは全くなかった。
(光拡散層の塗料組成)
アクリルバインダー(商品名:RUBメヂリウムクリアー、大日成精化工業社製):100部
アクリル樹脂系ビーズ(商品名:NT−2、日本油脂社製、平均粒子径5μm):14部
コロイダルシリカ(商品名:スノーテック、日産化学社製、平均粒子径0.015μm):20部
〔参照例14〕
製造例3で得られたペレット(3A)を射出成形して、150mm×150mm×3mmのシート状成形品(3E)を作成した。
〔参照例15〕
製造例3で得られたペレット(3A)を射出成形して、200mm×200mm、最大厚み5mm、最小厚み2mmのくさび形導光板(3F)を作成した。
得られたくさび形導光板(3F)を用いて、図2のようなバックライトユニットを作成したところ、輝度ムラは観察されなかった。
〔参照例16〕
80部の製造例3で得られたペレット(3A)に、20部のアクリル系微粒子(日本触媒製、商品名:エポスターMA)を溶融混練した後、射出成形して、150mm×150mm×3mmのシート状成形品(3G)を作成した。
2 保護フィルム
3 保護フィルムまたは位相差フィルム
11 導光板
12 拡散シート(拡散フィルム)
13 反射シート
14 蛍光管
15 リフレクタ
Claims (9)
- 位相差フィルムである、請求項1に記載の光学用面状熱可塑性樹脂成形体。
- 視野角補償フィルムである、請求項1に記載の光学用面状熱可塑性樹脂成形体。
- 590nmの位相差Reと各波長の位相差Rとの比(R/Re)が0.9〜1.2である請求項1〜3のいずれかに記載の光学用面状熱可塑性樹脂成形体。
- 表裏面の少なくとも一面に機能性コーティング層が積層されてなる、請求項1〜4のいずれかに記載の光学用面状熱可塑性樹脂成形体。
- 前記機能性コーティング層が、粘接着剤層、防眩(ノングレア)層、光拡散層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層および電磁波遮蔽層からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の光学用面状熱可塑性樹脂成形体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の光学用面状熱可塑性樹脂成形体と偏光膜とを積層してなる、偏光板。
- 請求項7に記載の偏光板を含む、液晶表示装置。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の光学用面状熱可塑性樹脂成形体を含む、液晶表示装置。
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