JP2002138106A - 透明性耐熱樹脂とその製造方法およびその用途 - Google Patents

透明性耐熱樹脂とその製造方法およびその用途

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JP2002138106A
JP2002138106A JP2000334303A JP2000334303A JP2002138106A JP 2002138106 A JP2002138106 A JP 2002138106A JP 2000334303 A JP2000334303 A JP 2000334303A JP 2000334303 A JP2000334303 A JP 2000334303A JP 2002138106 A JP2002138106 A JP 2002138106A
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hydroxyl group
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transparent heat
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JP2000334303A
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Hideo Asano
英雄 浅野
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Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 加熱賦形する際に脱アルコール反応が進行す
ることを防ぎ、従って、成形品中に泡やシルバーが入る
ことを防止でき、さらに工業的生産に適し、効率の良
い、透明性耐熱樹脂とその製造方法およびその用途を提
供する。 【解決手段】 本発明に係る透明性耐熱樹脂は、分子鎖
中に水酸基とエステル基を有する重合体に対して該水酸
基とエステル基との脱アルコール反応を行い、さらに、
未反応の水酸基を、脱アルコール反応点として作用しな
い基に変換処理して得られる、ラクトン環構造を有する
透明性耐熱樹脂であって、前記脱アルコール反応による
水酸基の反応率と未反応の水酸基を脱アルコール反応点
として作用しない基に変換処理する反応による水酸基の
反応率の合計が90%以上であり、且つ、前記脱アルコ
ール反応のみによる水酸基の反応率が70%以上である
ことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透明性耐熱樹脂と
その製造方法およびその用途に関する。より詳しくは、
特定の化学反応処理を用いて得られる透明性耐熱樹脂と
その製造方法およびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】メタクリル系樹脂は、透明性、表面光
沢、耐候性に優れ、また、機械的強度、成形加工性、表
面硬度のバランスがとれているため、自動車や家電製品
等における光学関連用途に幅広く使用されている。しか
しながら、メタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)
は100°C前後であることから、耐熱性が要求される
分野での使用は困難である一方で、デザインの自由度、
コンパクト化、高性能化などの要請から、光源を樹脂に
近接して配置する設計が行われることが多く、より優れ
た耐熱樹脂が要望されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】耐熱性を持ったメタク
リル系樹脂を得る方法として、Polym.Prep
r.,8,1,576(1967)には、2−(ヒドロ
キシメチル)アクリル酸アルキルエステル/メタクリル
酸メチル共重合体またはα−ヒドロキシメチルスチレン
/メタクリル酸メチル共重合体を押出機で減圧下で加熱
して脱アルコール反応させることにより、重合体の持つ
水酸基とエステル基の縮合によってラクトン環を生じさ
せ、耐熱樹脂を得る方法が開示されている。この方法に
おいては溶液重合または塊状重合を行い、溶液重合のと
きは、重合反応物からあらかじめ重合体を固体として取
り出してから押出機に導入し、塊状重合のときは、重合
後の固体状重合体をそのまま造粒して押出機に導入して
おり、工業的生産には適していない。また、この方法で
は、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルエス
テルまたはα−ヒドロキシメチルスチレンの割合が増え
ると、脱アルコール反応の反応率が悪く、α−ヒドロキ
シメチルスチレン/メタクリル酸メチル共重合体の例に
見られるように、例えば、重合体中のα−ヒドロキシメ
チルスチレンの含有率が25%の場合は、脱アルコール
反応の反応率が71%であり、α−ヒドロキシメチルス
チレンの含有率が30%の場合は、反応率が59%であ
る。したがって、得られた重合体を再び加熱賦形する際
に脱アルコール反応が進行し、成形品に泡が発生するな
どの欠点があった。さらに、固体状の重合体を移送した
り、押出機に投入するため、製造プロセスが複雑になる
という問題があった。
【0004】別の先行技術である特開平9−24132
3号公報は、ポリ[2−(ヒドロキシメチル)アクリル
酸エチル]や、あるいは、2−(ヒドロキシメチル)ア
クリル酸アルキルエステルの含有率が高い重合体の脱ア
ルコール反応の際に、重合体を固体状態で用いると、反
応時に重合体の架橋が起こり、溶融賦形が困難になると
いうことであったことから、一旦再沈殿により得られた
固体状態の重合体をジメチルスルホキシド(DMSO)
に再溶解して溶液状態で脱アルコール反応を行うように
したのである。しかし、この方法では、再沈殿・固体取
り出し・再溶解という工程が必要であり、工業的生産に
は適していない。また、この方法も、脱アルコール反応
率が十分でなく、プレス成形等の賦形時にさらに反応を
進行させるために、高温で時間をかける必要があった
り、脱アルコール反応率を上げるために溶液中で長時間
反応させる必要があった。また、脱アルコール反応率が
90%近くまで達成できた場合でも、樹脂の耐熱性に関
してはある程度満足できる樹脂が得られていても、成形
時の加熱により泡やシルバーストリーク(銀条)が成形
品中に入るという欠点はなお顕著に見られていた。
【0005】また、脱アルコールを行う際、必要に応じ
て、脱アルコール反応の触媒として、一般に用いられる
硫酸やp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒また
はエステル交換触媒を用いた場合、樹脂の着色(黄変)
が起こりやすい。そのため、触媒量を減らせば樹脂の着
色は低減するが、脱アルコール反応率が低くなり、成形
時の加熱により、泡やシルバーストリークが成形品に入
るという欠点があった。また、欧州特許1008606
号には、分子鎖中に水酸基とエステル基を有する重合体
を脱アルコール反応させることにより耐熱性を有する透
明性樹脂を得る方法において、前記脱アルコール反応を
溶剤存在下で行い、且つ、前記脱アルコール反応の際
に、脱揮工程を併用する方法が開示されている。しか
し、この方法でも、重合体中の2−(ヒドロキシメチ
ル)アクリル酸アルキルの含有量が多い場合や、脱揮工
程の条件が変わると、成形品中に泡やシルバーストリー
クが入ることがあった。例えば、生産性向上のために脱
揮する樹脂の処理量をふやしていくと、成形品中に泡や
シルバーストリークが入ることがあった。
【0006】そこで、本発明の課題は、加熱成形する際
に脱アルコール反応が進行することを防ぎ、従って、成
形品中に泡やシルバーストリークが入ることを防止で
き、さらに工業的生産に適し、効率のよい、透明性耐熱
樹脂とその製造方法およびその用途を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決すべく鋭意検討した。その結果、分子鎖中に水酸基
とエステル基を有する重合体を脱アルコール反応させる
ことによりラクトン環構造を有する透明性樹脂を得る方
法において、重合体の加熱賦形時の脱アルコール反応の
原因である残存水酸基を、特定の時点において、水酸基
と反応し得る化合物の添加によって処理することによ
り、本発明の上記課題を全て解決できることを見いだし
た。すなわち、本発明に係る透明性耐熱樹脂の製造方法
は、分子鎖中に水酸基とエステル基を有する重合体に対
して該水酸基とエステル基との脱アルコール反応を行う
ことにより、ラクトン環構造を有する透明性耐熱樹脂を
製造する方法において、前記脱アルコール反応による水
酸基の反応率が70%以上の時点で、前記水酸基と反応
しうる化合物を添加し、未反応の水酸基を、脱アルコー
ル反応点として作用しない基に変換処理することを特徴
とする。
【0008】また、本発明に係る透明性耐熱樹脂は、分
子鎖中に水酸基とエステル基を有する重合体に対して該
水酸基とエステル基との脱アルコール反応を行い、さら
に、未反応の水酸基を、脱アルコール反応点として作用
しない基に変換処理して得られる、ラクトン環構造を有
する透明性耐熱樹脂であって、前記脱アルコール反応に
よる水酸基の反応率と未反応の水酸基を脱アルコール反
応点として作用しない基に変換処理する反応による水酸
基の反応率との合計が90%以上であり、且つ、前記脱
アルコール反応のみによる水酸基の反応率が70%以上
であることを特徴とする。
【0009】さらに、本発明に係る透明性耐熱樹脂成形
材料は、本発明の透明性耐熱樹脂を含むことを特徴とす
る。また、本発明に係る成形品は、本発明の透明性耐熱
樹脂を含む透明性耐熱樹脂成形材料を成形することによ
り得られることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】(透明性耐熱樹脂の製造方法)本
発明に係る透明性耐熱樹脂の製造方法においては、該樹
脂は分子鎖中に水酸基とエステル基を有する重合体を原
料として得られる。分子鎖中に水酸基とエステル基を有
する重合体とは、直接あるいはいくつかの原子を介して
主鎖に結合した水酸基とエステル基を有する重合体であ
り、本発明の脱アルコール反応によって前記水酸基とエ
ステル基の少なくとも一部が縮合環化してラクトン環を
生じることができるものである。特に、前記水酸基とエ
ステル基が近接して存在する場合には、ラクトン環が生
成し易くなるので好ましく、水酸基とエステル基の間に
介在する原子が6以下がさらに好ましく、4以下が最も
好ましい。6を超えるものについては、分子間反応によ
る架橋が起こり、ゲル化しやすくなるため、好ましくな
い。この重合体の分子量は特に限定されないが、重量平
均分子量が1000〜1000000が好ましく、特に
5000〜500000がより好ましい。さらに好まし
くは、40000〜300000である。分子量が上記
範囲より低いと、機械的強度が低下して脆くなるという
問題があり、上記範囲より高いと、流動性が低下して成
形しにくくなるという問題があるからである。
【0011】前記分子鎖中に水酸基とエステル基を有す
る重合体中の水酸基およびエステル基の割合は、例え
ば、2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルが
原料単量体である場合、重合体中の2−(ヒドロキシア
ルキル)アクリル酸エステル単量体の比は、5〜60重
量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましく、2
0〜50重量%がさらに好ましい。水酸基、エステル基
を別々に持つ単量体、あるいは、繰り返し単位からなる
場合には、水酸基とエステル基において等量的に少ない
方の単量体、あるいは、繰り返し単位で表される。水酸
基およびエステル基の割合が少ないと、脱アルコール後
の重合体の耐熱性や耐溶剤性があまり向上しない。ま
た、上記割合が60重量%を超える場合など、水酸基お
よびエステル基の割合が高すぎる場合は、重合体の架橋
により、溶融賦形しにくくなるおそれがある。
【0012】なお、前記重合体は、例えば後述するよう
に、あらかじめ水酸基とエステル基を有する単量体や、
水酸基を有する単量体とエステル基を有する単量体との
混合物を、原料単量体の少なくとも一部として重合する
ことにより得ることができるし、また、ブタジエン等の
ジエン化合物の共重合体の二重結合部分への水酸基の付
加反応や、酢酸ビニル共重合体などのエステル基を有す
る重合体の加水分解、カルボキシル基や酸無水物基を有
する重合体のエステル化等の反応によって、水酸基また
はエステル基を重合体に後から導入して得ることもでき
る。前記分子鎖中に水酸基とエステル基を有する重合体
の原料となる単量体は特に限定されないが、該原料の少
なくとも一部が、分子内に水酸基とエステル基を有する
ビニル単量体、または、分子内に水酸基を有するビニル
単量体と分子内にエステル基を有するビニル単量体との
混合物であることが特に好ましく、これら以外に他のビ
ニル単量体を共存させてもよい。
【0013】分子内に水酸基とエステル基を有するビニ
ル単量体としては特に限定されないが、特に、一般式
(1)で示される単量体が好ましく、例えば、2−(ヒ
ドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシ
メチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)
アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)ア
クリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)ア
クリル酸ターシャリーブチルなどが挙げられ、この中で
も特に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルと
2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好まし
い。さらに、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチ
ルが、耐熱性向上効果が高いことから、最も好ましい。
また、これらの単量体は1種のみ用いても2種以上を併
用してもよい。
【0014】
【化1】 前記の分子内に水酸基を有するビニル単量体としては特
に限定されないが、上記の一般式(1)で示される単量
体や、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシ
エチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸
メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エ
ステル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2
−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸などが挙げられ、
これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
その中でも特に、上記の一般式(1)で示される単量体
を用いた場合、脱アルコール反応率を高くしても、つま
り、ラクトン化率を高くしても、架橋反応によるゲル化
が起こりにくいために、好ましい。
【0015】前記の分子内にエステル基を有するビニル
単量体としては特に限定されないが、上記の一般式
(1)で示される単量体や、アクリル酸メチル、アクリ
ル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロ
ピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、
アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、ア
クリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル、メタクリ
ル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピ
ル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチ
ル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチ
ル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジ
ルなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられ、これら
は1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。この中
でも、メタクリル酸メチルが、耐熱性、透明性の点で好
ましい。
【0016】前記の分子内に水酸基とエステル基を有す
るビニル単量体、あるいは、分子内に水酸基を有するビ
ニル単量体と分子内にエステル基を有するビニル単量体
との混合物と併用してもよい他のビニル単量体としては
特に限定されないが、特に、一般式(2)で示される単
量体や、N−置換マレイミド等の単量体が好ましく、例
えば、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリ
ル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸
ビニルなどが挙げられ、この中でも、スチレン、α−メ
チルスチレンが特に好ましい。また、これらの単量体は
1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。また、併
用するこれらの単量体の含有量は30重量%以下が好ま
しく、より好ましくは20重量%以下、そしてさらに好
ましくは10重量%以下が好ましい。
【0017】
【化2】 本発明に係る製造方法で用いる前記重合体を前記単量体
から得るための重合反応の方法としては特に限定されな
いが、溶液重合または塊状重合が好ましい。さらに本発
明では、後述のように、溶液重合が特に好ましい。ま
た、塊状重合においては、必要に応じて重合後に溶剤を
添加してもよいし、重合方法によらず、必要であれば一
度固体として取り出した後、溶剤を添加してもよい。ま
た、塊状重合においては、未反応単量体により溶液状態
になっていてもよい。重合温度、重合時間は、使用する
重合性単量体の種類、使用比率等によって異なるが、好
ましくは、重合温度0〜150℃、重合時間0.5〜2
0時間であり、さらに好ましくは、重合温度80〜14
0℃、重合時間1〜10時間である。
【0018】重合反応を溶液重合で行う場合は、用いる
溶剤は特に限定されないが、例えば、通常のラジカル重
合反応で使用されるものが選ばれ、トルエン、キシレ
ン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルエチ
ルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;クロ
ロホルム、DMSO、テトラヒドロフランなどが挙げら
れる。また、使用する溶媒の沸点が高すぎると、脱揮後
の樹脂中の残存揮発分が多くなることから、処理温度で
重合体を溶解し、沸点が50〜200℃のものが好まし
く、例えば、トルエン等の芳香族炭化水素類、メチルエ
チルケトン等のケトン類などがさらに好ましく挙げられ
る。
【0019】重合反応時には、必要に応じて、開始剤を
添加してもよい。開始剤としては特に限定されないが、
例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピ
ルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパ
ーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイル
パーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカ
ーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサ
ノエートなどの有機過酸化物、2,2´−アゾビス(イ
ソブチロニトリル)、1,1´−アゾビス(シクロヘキ
サンカルボニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−
ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物が挙げら
れ、これらは1種類のみを用いても、2種類以上を併用
してもよい。なお、開始剤の使用量は、用いる単量体の
組み合わせや、反応条件などに応じて適宜設定すればよ
く、特に限定されない。
【0020】上記重合反応後に得られる重合反応混合物
には、得られた重合体以外に、溶剤が含まれている場合
があるが、その場合は、本発明に係る製造方法ではこの
溶剤を完全に除去して重合体を固体状態で取り出す必要
はなく、該溶剤を含んだ状態で続く工程に導入すること
が好ましい。また、必要な場合は固体状態で取り出した
後に、続く工程に好適な溶剤を再添加してもよい。溶剤
の量は、全量の5〜90重量%、好ましくは10〜80
重量%、さらに好ましくは30〜75重量%であり、5
重量%より少ないと重合体の粘度が高くなって取り扱い
にくく、90重量%を超えると揮発すべき溶剤が多すぎ
て、生産性が低下してしまう。
【0021】本発明に係る透明性耐熱樹脂の製造方法で
は、前記重合体に対して該水酸基とエステル基との脱ア
ルコール反応を行うことにより、ラクトン環構造を有す
る透明性耐熱樹脂を製造する方法において、前記脱アル
コール反応による水酸基の反応率が70%以上の時点
で、前記水酸基と反応しうる化合物を添加し、未反応の
水酸基を、脱アルコール反応点として作用しない基に変
換処理することを特徴とする。本発明における脱アルコ
ール反応とは、加熱により、前記重合体の分子鎖中に存
在する水酸基とエステル基の少なくとも一部が縮合環化
してラクトン環を生じる反応であり、該縮合環化によっ
てアルコールが副生する。このラクトン環構造が分子鎖
中に形成されることにより、高い耐熱性が付与される。
【0022】本発明において、分子鎖中に水酸基とエス
テル基を有する重合体を脱アルコール反応させる方法と
しては、例えば、前記重合体を押出機で減圧下で加熱し
て脱アルコール反応させる方法(Polym.Prep
r.,8,1,576(1967))、前記重合体を溶
剤の存在下で加熱するか、または、エステル化触媒ある
いはエステル交換触媒を添加し脱アルコール反応させる
方法(特開平9−241323号公報)、前記重合体の
脱アルコール反応を溶剤の存在下で行い、且つ、前記脱
アルコール反応の際に脱揮工程を併用する方法や特定の
有機リン化合物を脱アルコール反応の触媒として用いる
方法(欧州特許1008606号)などがあるが、特に
限定されるものではない。
【0023】本発明においては、前記脱アルコール反応
による水酸基の反応率が70%以上の時点で、前記水酸
基と反応しうる化合物を添加し、未反応の水酸基を、脱
アルコール反応点として作用しない基に変換処理する
(以下、この処理を「残存水酸基処理」と称することが
ある)。脱アルコール反応において、水酸基とエステル
基が反応せずに残っていると、得られた樹脂を加熱賦形
する際に、その加熱処理によって賦形中に脱アルコール
反応が進行してしまい、成形品中に当該反応により発生
したアルコールが泡やシルバーストリークの形となって
混在してしまうので、好ましくない。そこで、本発明で
は、脱アルコール反応による水酸基の反応率が70%以
上の時点おいて反応せずに残った残存水酸基の少なくと
も一部を、水酸基と反応し得る化合物によって処理する
ことにより、脱アルコール反応点としての水酸基を脱ア
ルコール反応点として作用しない他の基に変換し、結果
として、得られた樹脂を加熱賦形する際の脱アルコール
反応を防止し、従って、成形品中に泡やシルバーストリ
ークが入ることを防止することとした。
【0024】本発明で用いる前記水酸基と反応し得る化
合物としては、重合体分子鎖中に存在する水酸基と反応
して水酸基以外の基に変換できるもので、さらに、変換
後の基が脱アルコール反応の反応点として作用しないも
のである。具体的には、例えば、無水酢酸、無水安息香
酸などのカルボン酸無水物、無水ピロメリト酸、無水コ
ハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリ
ト酸などの多価カルボン酸無水物、イソシアン酸メチ
ル、イソシアン酸エチル、イソシアン酸プロピル、イソ
シアン酸n−オクタデシル、イソシアン酸フェニル、イ
ソシアン酸ナフチル、ジイソシアン酸トルエン、ジイソ
シアン酸ヘキサメチレンなどのイソシアネート化合物、
塩化アセチルなどの酸ハロゲン化物、ハロゲン化水素、
ハロゲン化チオニルなどが挙げられるが、中でも特に、
カルボン酸無水物、イソシアネート化合物が、本発明の
目的達成のために好ましい。
【0025】本発明における残存水酸基処理は、水酸基
と反応し得る化合物を、対象とする樹脂に添加すること
により行うが、この際に、必要により加熱処理を併用し
ても良い。また、溶液中で残存水酸基処理を行ってもよ
く、好ましくは、溶液中で50〜250℃の範囲であ
り、さらに好ましくは、溶液中で80〜150℃の範囲
である。また、必要であれば、触媒を添加して残存水酸
基処理を行ってもよい。なお、残存水酸基処理と同時に
脱アルコール反応が進行してもなんら問題はない。残存
水酸基処理を行う時期としては、前記脱アルコール反応
のみによる水酸基の反応率が70%以上であることが好
ましく、さらに好ましくは80%以上、より好ましくは
85%以上である。前記脱アルコール反応のみによる水
酸基の反応率が70%より低いと、水酸基と水酸基と反
応しうる化合物との反応が不十分となったり、成形時の
加熱により泡やシルバーストリークが成形品中に入り、
外観不良となりやすくなる。また、重合体中のラクトン
環構造の割合が少なくなり、耐熱性など所定の物性が得
られないことがある。
【0026】本発明の製造方法によれば、脱アルコール
反応率、つまり、ラクトン環化率が高い樹脂が得られる
ので、耐熱性が十分に向上する。そして、本発明の特徴
である残存水酸基処理によって、成形時には、脱アルコ
ール反応を起こすための反応点はもはやほとんど存在し
ていないので、成形時の加熱処理等によるアルコール発
生に由来する、成形品中の泡やシルバーストリークの問
題が回避できる。さらに、透明性や低着色度などの樹脂
物性の向上も可能となる。本発明を、例えば、一般式
(1)のような特定構造の単量体にあてはめた場合、脱
アルコール反応率が高まり、つまり、ラクトン環化率が
高まるので、非常に優れた処理工程である。
【0027】(透明性耐熱樹脂)本発明に係る透明性耐
熱樹脂は、分子鎖中に水酸基とエステル基を有する重合
体に対して該水酸基とエステル基との脱アルコール反応
を行い、さらに、未反応の水酸基を、脱アルコール反応
点として作用しない基に変換処理して得られる、ラクト
ン環構造を有する透明性耐熱樹脂であって、前記脱アル
コール反応による水酸基の反応率と未反応の水酸基を脱
アルコール反応点として作用しない基に変換処理する反
応による水酸基の反応率との合計が90%以上であり、
且つ、前記脱アルコール反応のみによる水酸基の反応率
が70%以上であることを特徴とする。
【0028】本発明に係る新規な透明性耐熱樹脂は、前
述のように、分子鎖中に水酸基とエステル基を有する重
合体を脱アルコール反応させることにより、前記水酸基
とエステル基の少なくとも一部が縮合環化してラクトン
環が生じた樹脂であり、耐熱性に非常に優れた樹脂であ
る。加えて、本発明に係る透明性耐熱樹脂は、前述のよ
うに、前記脱アルコール反応において反応せずに残った
残存水酸基の少なくとも一部が、水酸基と反応し得る化
合物により処理された樹脂であり、加熱賦形する際の脱
アルコール反応の進行を防ぎ、従って、成形品中に泡や
シルバーストリークが入ることを防止できる樹脂であ
る。
【0029】また、本発明に係る透明性耐熱樹脂は、前
記脱アルコール反応の反応率と、前記未反応の水酸基を
脱アルコール反応点として作用しない基への変換処理の
反応率との、両者の反応率の合計が90%以上であるこ
とを特徴とし、好ましくは95%以上、さらに好ましく
は97%以上である。水酸基の反応率の合計が90%よ
り低いと、成形時の加熱により泡やシルバーストリーク
が成形品中に入り、外観不良となるために好ましくな
い。また、本発明に係る透明性耐熱樹脂は、前記脱アル
コール反応のみによる水酸基の反応率が70%以上であ
ることを特徴とし、好ましくは80%以上、より好まし
くは85%以上である。前記脱アルコール反応のみによ
る水酸基の反応率が70%より低いと、水酸基と水酸基
と反応しうる化合物との反応が不十分となったり、成形
時の加熱により泡やシルバーストリークが成形品中に入
り、外観不良となりやすくなる。また、重合体中のラク
トン環構造の割合が少なくなり、耐熱性など所定の物性
が得られないことがある。
【0030】(透明性耐熱樹脂成形材料)本発明の透明
性耐熱樹脂は、必要に応じて、ヒンダードフェノール
系、リン系、イオウ系の酸化防止剤や安定剤、ガラス繊
維あるいは炭素繊維などの補強材、フェニルサリチレー
ト、2−(2´−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベ
ンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノンなど
の紫外線吸収剤、トリス(ジブロムプロピル)ホスフェ
ート、トリフェニルホスフェート、トリアリルホスフェ
ート、四臭化エチレン、酸化アンチモン、ジンクボレー
トなどの難燃剤、アニオン系、カチオン系、非イオン
系、両性系の界面活性剤などの帯電防止剤、および、無
機顔料、有機顔料、染料などの着色剤などを配合して透
明性耐熱樹脂成形材料としてもよい。前記透明性耐熱樹
脂成形材料中、本発明の透明性耐熱樹脂の含有量は、好
ましくは10〜100重量%、さらに好ましくは30〜
100重量%、より好ましくは50〜100重量%、さ
らにより好ましくは60〜100重量%、最も好ましく
は70〜100重量%である。
【0031】(成形品)前記の本発明の透明性耐熱樹脂
を含む透明性耐熱樹脂成形材料を成形することにより、
本発明の成形品が得られる。この成形品は、150〜3
50℃で成形するのが好ましく、より好ましくは200
〜300℃であるが、耐熱性などの樹脂の性質に応じて
適宜設定すればよく、特に限定されない。成形方法とし
ては特に限定されず、射出成形、ブロー成形、押出成形
などが挙げられる。 (用途)本発明の透明性耐熱樹脂は、透明性に優れてい
るので、透明光学レンズ、光学素子(例えば、各種計器
類の照明あるいは各種ディスプレイや看板照明等に利用
可能な導光体、プラスチック光ファイバー、光拡散性面
状成形体等)、OA機器や自動車等の透明部品(例え
ば、レーザービームプリンター用レンズ、パソコンプロ
ジェクターレンズ、OA機器パネル、車両用のヘッドラ
ンプやフォグランプや信号灯等に用いられるランプレン
ズ等)、また、TVプロジェクター用レンズなどに応用
でき、種々の形状を容易に成形できる点で好ましい。さ
らに、本発明の樹脂もしくは樹脂組成物は、フィルム、
シート状の成形品、他の樹脂との積層シート、浴槽用表
層樹脂等にも応用できる。
【0032】本発明の成形品は、本発明の透明性耐熱樹
脂を含む透明性耐熱樹脂成形材料を用いてなるので、従
来の透明性耐熱樹脂成形品で避けられなかった泡やシル
バーを、完全に、あるいはほぼ完全に回避できる点で、
非常に有用である。
【0033】
【実施例】以下、本発明に係る実施例および比較例につ
いて説明するが、本発明は該実施例により何ら制限され
るものではない。なお、以下の文中「部」は「重量部」
を表す。 〔重合反応率、重合体組成分析〕重合反応時の反応率お
よび重合体中の特定単量体単位の含有率は、得られた重
合反応混合物中の未反応単量体の量をガスクロマトグラ
フィー(島津製作所社製、装置名:GC−14A)を用
いて測定して求めた。
【0034】〔脱アルコール反応率、あるいは水酸基の
反応率〕脱アルコール反応して得られた重合体、また
は、脱アルコール反応後、残存水酸基処理された重合体
(もしくは重合体溶液あるいはペレット)を一旦テトラ
ヒドロフランに溶解もしくは希釈し、過剰のヘキサンも
しくはメタノールへ投入して再沈殿を行い、取り出した
沈殿物を真空乾燥(1mmHg(1.33hPa)、8
0℃、3時間以上)することにより、揮発成分等を除去
し、得られた白色固形状の樹脂の脱アルコール反応率を
以下の方法(ダイナミックTG法)で分析した。
【0035】 測定装置:Thermo Plus2 TG-8120 Dynamic TG ((株)リガク社製) 測定条件:試料量 約5mg 昇温速度 10℃/min 雰囲気 窒素フロー200ml/min 方法 階段状等温制御法(60〜500℃間で重量減少速度値0. 005%/sec以下で制御) 反応率:以下の参考例1または2で得られた重合体組成からすべての水酸基が メタノールとして脱アルコールした際に起こる重量減少量を基準にし、この測定 において重量減少の始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃ までの脱アルコール反応による重量減少量から求めた。
【0036】すなわち、ラクトン環構造を有した重合体
の熱分析(ダイナミックTG)において150℃から3
00℃までの間の重量減少率の測定を行い、得られた実
測重量減少率を(X)とする。他方、当該重合体の組成
から、その重合体組成に含まれる全ての水酸基がラクト
ン環の形成に関与するためアルコールになり脱アルコー
ルすると仮定した時の理論重量減少率(すなわち、その
組成上において100%の脱アルコール反応が起きたと
仮定して算出した重量減少率)を(Y)とする。なお、
理論重量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中の
脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する原
料単量体のモル比と、当該重合体組成における前記原料
単量体の含有率とから算出することができる。これらの
値(X,Y)を脱アルコール反応率(水酸基の反応率)
計算式: 1−(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y)) に代入してその値を求め、%で表記すると、脱アルコー
ル反応率、あるいは、水酸基の反応率が得られる。
【0037】例として、後述の実施例1で得られる重合
体において脱アルコール反応率(水酸基の反応率)を計
算する。この重合体の理論重量減少率(Y)を求めてみ
ると、メタノールの分子量は32であり、2−(ヒドロ
キシメチル)アクリル酸メチルの分子量は116であ
り、この2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの
重合体(脱アルコール反応前)中の含有率(重量比)は
組成上20.0%であるから、(32/116)×2
0.0≒5.52重量%となる。他方、ダイナミックT
G測定による実測重量減少率(X)は0.83重量%で
あった。これらの値を上記の脱アルコール計算式に当て
はめると、1−(0.83/5.52)≒0.850と
なるので、脱アルコール反応率は85.0%である。
【0038】また、残存水酸基処理後のダイナミックT
G測定による実測重量減少率(X)は0.27重量%で
あった。これらの値を上記の脱アルコール計算式に当て
はめると、1−(0.27/5.52)≒0.951と
なるので、脱アルコール反応と残存水酸基処理による水
酸基の反応率の合計は95.1%である。なお、この脱
アルコール反応率は、残存水酸基処理を行う際、重合体
の反応状態を規定する上で重要な指標となる。 〔重量平均分子量〕重合体の重量平均分子量は、GPC
(東ソー社製GPCシステム)のポリスチレン換算によ
り求めた。
【0039】〔樹脂の着色度YI〕樹脂の着色度YI
は、樹脂をクロロホルムに溶かし、15重量%溶液を石
英セルに入れ、JIS−K−7103に従い、色差計
(日本電色工業社製、装置名:SZ−Σ90)を用い
て、透過光で測定した。 〔樹脂の熱分析〕樹脂の熱分析は、試料約10mg、昇
温速度10℃/min、窒素フロー50cc/minの
条件で、TG(リガク社製、装置名:TG−8110)
とDSC(リガク社製、装置名:DSC−8230)を
用いて行った。なお、ガラス転移温度(Tg)は、AS
TM−D−3418に従い、中点法で求めた。
【0040】〔樹脂中の揮発分測定〕樹脂中に含まれる
残存揮発分量は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所
社製、装置名:GC−14A)を用いて測定して求め
た。 〔成形品の透明度〕透明度の指標として、得られた樹脂
あるいは樹脂成形材料を射出成形(厚み3.2mm)
し、全光線透過率と曇価を、ASTMD1003に従っ
て、濁度計(日本電色工業社製、装置名:NDH−10
01DP)を用いて測定した。 〔樹脂中のラクトン環の確認〕樹脂の骨格中にラクトン
環があるかどうかは、赤外線吸収スペクトルおよび13
−NMRにより確認した。なお、赤外線吸収スペクトル
は、FTS−45赤外分光光度計(BIO−RAD製)
を用い、13C−NMRは、FT−NMR UNITY
plus400(Varian製)を用いて測定を行っ
た。
【0041】[参考例1]攪拌装置、温度センサー、冷
却管、窒素導入管および滴下ポンプを付した30Lの反
応釜に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5
部、メタクリル酸メチル20部、トルエン25部を仕込
み、窒素を通じつつ100°Cまで昇温した。そして、
開始剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピ
ルカーボネート0.075部を加えると同時に、2−
(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5部、メタクリ
ル酸メチル20部、トルエン25部、開始剤0.075
部からなる溶液を3時間半かけて滴下しながら100〜
110°Cで溶液重合を行い、さらに1時間半かけて熟
成を行った。重合の反応率は91.8%で、重合体中の
2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル単位比率は
20.0%であった。また、この重合体の重量平均分子
量は130000であった。
【0042】[実施例1]参考例1で得られた重合体溶
液に、重合体100部に対して0.1部のリン酸ステア
リル/リン酸ジステアリル混合物(堺化学社製、製品
名:ステアリルアシッドホスフェート)を加え、窒素を
通じつつ、100℃で5時間、脱アルコール反応を行っ
た。得られた反応溶液の一部を取り出し、先に記載の方
法で脱アルコール反応率を求めたところ、この時点での
脱アルコール反応率は85.0%であった(ダイナミッ
クTG法の測定で0.83%の重量減少を検知)。次い
で、上記の反応溶液に、重合体100部に対して10部
の無水酢酸を加え、窒素を通じつつ、100℃で3時
間、無水酢酸による重合体中の残存水酸基処理を行っ
た。得られた反応溶液をテトラヒドロフランで希釈し、
過剰のメタノールへ投入して再沈殿し、取り出した沈殿
物を真空乾燥(1.33hPa(1mmHg)、80
℃、5時間)することにより、白色固形状の樹脂を得
た。
【0043】この得られた樹脂について、先に記載の方
法で脱アルコール反応と残存水酸基処理とによる水酸基
の反応率の合計を求めたところ、97.1%であった
(ダイナミックTG法の測定で0.16%の重量減少を
検知)。また、この樹脂の着色度YIは0.2であっ
た。また、重量平均分子量は120000であり、ま
た、熱安定性の指標である5%重量減少温度は366℃
であったことから、この樹脂は高温領域での熱安定性に
優れていることがわかった。なお、ガラス転移温度は1
32℃であった。この樹脂を250℃で射出成形するこ
とにより、安定的に泡やシルバーストリークが入らな
い、無色透明(全光線透過率:92.5%、曇価:0.
7%)の成形品を得た。
【0044】[参考例2]2−(ヒドロキシメチル)ア
クリル酸メチルを12.5部、メタクリル酸メチルを1
2.5部、トルエンをイソブチルケトンに変更した以外
は、参考例1と同様の方法で沸点下で重合を行った。重
合体の反応率は94.5%で、重合体中の2−(ヒドロ
キシメチル)アクリル酸メチルの含有率(重量比)は5
0.0%であった。また、この重合体の重量平均分子量
は110000であった。 [実施例2]参考例2で得られた重合体溶液に、重合体
100部に対して0.5部のリン酸ステアリル/リン酸
ジステアリル混合物(堺化学社製、製品名:ステアリル
アシッドホスフェート)、メチルエチルケトン50部を
加えた以外は実施例1と同様に脱アルコール反応を行っ
た。得られた反応溶液の一部を取り出し、先に記載の方
法で脱アルコール反応率を求めたところ、この時点での
脱アルコール反応率は87.2%であった(ダイナミッ
クTG法の測定で1.77%の重量減少を検知)。
【0045】次いで、上記の反応溶液に、重合体100
部に対して10部の無水酢酸を加え、窒素を通じつつ、
100℃で3時間、無水酢酸による重合体中の残存水酸
基処理を行った後、バレル温度260℃、回転数100
rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300
mmHg)、リアベント数1個とフォアベント数4個の
ベントタイプスクリュー2軸押出機(Φ=29.75m
m、L/D=30)に、樹脂量換算で2.5kg/時間
の処理速度で導入し、該押出機内で水酸基の反応を完結
させつつ脱揮処理を行い、押し出すことにより、透明な
ペレットが得られた。
【0046】この得られた樹脂について、先に記載の方
法で脱アルコール反応と残存水酸基処理とによる水酸基
の反応率の合計を求めたところ、97.8%であった
(ダイナミックTG法の測定で0.30%の重量減少を
検知)。また、この樹脂の着色度YIは1.3であっ
た。また、重量平均分子量は110000であり、ま
た、熱安定性の指標である5%重量減少温度は375℃
であったことから、この樹脂は高温領域での熱安定性に
優れていることがわかった。なお、ガラス転移温度は1
62℃であった。また、樹脂中の残存揮発分は以下に示
す値となった。
【0047】メタクリル酸メチル:50ppm 2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル:90pp
m メタノール:150ppm イソブチルケトン:300ppm メチルエチルケトン:100ppm この樹脂を260℃で射出成形することにより、安定的
に泡やシルバーストリークが入らない、無色透明(全光
線透過率:91.5%、曇価:1.0%)の成形品を得
た。
【0048】[比較例1]参考例1で得られた重合体溶
液をテトラヒドロフランで希釈し、過剰のヘキサンに投
入して再沈殿し、取り出した沈殿物を真空乾燥(1mm
Hg(1.33hPa)、80℃、3時間)して得られ
た白色固形状の樹脂100部を、600部のDMSOに
溶解させ、p−トルエンスルホン酸一水和物5部を添加
し、50℃で6時間加熱した。冷却後、反応液をテトラ
ヒドロフランで希釈し、過剰のメタノールに投入して再
沈殿し、取り出した沈殿物を真空乾燥(1mmHg
(1.33hPa)、80℃、5時間)することによ
り、白色の固形樹脂を得た。
【0049】得られた樹脂について、先に記載の方法で
脱アルコール反応率を求めたところ、脱アルコール反応
率は84.6%であった(ダイナミックTG法の測定
で、0.85%の重量減少を検知し、この方法で求めた
ラクトン環構造の占める割合は16.9重量%であっ
た)。この樹脂を220℃あるいは250℃で射出成形
したが、成形品にかなりの泡とシルバーストリークが見
られた。 [比較例2]参考例2で得られた重合液をそのまま、実
施例2と同条件で2軸押出機に導入し、該押出機内で脱
アルコール反応を行うとともに、脱揮処理を行い、押し
出すことにより、透明なペレットが得られた。
【0050】この得られた樹脂について、先に記載の方
法で脱アルコール反応率を求めたところ、脱アルコール
反応率は86.2%であった(ダイナミックTG法の測
定で、1.90%の重量減少を検知)。また、この樹脂
の着色度YIは1.0であった。また、重量平均分子量
は39000であり、また、熱安定性の指標である5%
重量減少温度は350℃であった。なお、ガラス転移温
度は150℃であった。また、樹脂中の残存揮発分は以
下に示す値となった。 メタクリル酸メチル:570ppm 2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル:90pp
m メタノール:700ppm イソブチルケトン:300ppm この樹脂を260℃で射出成形したところ、成形品中に
泡やシルバーストリークがかなり見られた。
【0051】
【発明の効果】本発明によれば、加熱賦形する際に脱ア
ルコール反応が進行することを防ぎ、従って、成形品中
に泡やシルバーストリークが入ることを防止でき、さら
に工業的生産に適し、効率の良い、透明性耐熱樹脂とそ
の製造方法およびその用途を提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F071 AA31 AF30 BC17 4J002 BG071 FD010 FD050 FD070 FD090 FD100 FD130 4J100 AA02Q AA03Q AB02Q AB03Q AF10Q AG04Q AL09P AM02Q BA15H BA34H BA35H CA01 CA04 HA17 HA61 HC28 HC51

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】分子鎖中に水酸基とエステル基を有する重
    合体に対して該水酸基とエステル基との脱アルコール反
    応を行うことにより、ラクトン環構造を有する透明性耐
    熱樹脂を製造する方法において、前記脱アルコール反応
    による水酸基の反応率が70%以上の時点で、前記水酸
    基と反応しうる化合物を添加し、未反応の水酸基を、脱
    アルコール反応点として作用しない基に変換処理するこ
    とを特徴とする、透明性耐熱樹脂の製造方法。
  2. 【請求項2】前記水酸基と反応しうる化合物が、カルボ
    ン酸無水物、および/または、イソシアネート化合物で
    ある、請求項1に記載の透明性耐熱樹脂の製造方法。
  3. 【請求項3】分子鎖中に水酸基とエステル基を有する重
    合体に対して該水酸基とエステル基との脱アルコール反
    応を行い、さらに、未反応の水酸基を、脱アルコール反
    応点として作用しない基に変換処理して得られる、ラク
    トン環構造を有する透明性耐熱樹脂であって、前記脱ア
    ルコール反応による水酸基の反応率と未反応の水酸基を
    脱アルコール反応点として作用しない基に変換処理する
    反応による水酸基の反応率との合計が90%以上であ
    り、且つ、前記脱アルコール反応のみによる水酸基の反
    応率が70%以上であることを特徴とする、透明性耐熱
    樹脂。
  4. 【請求項4】請求項3に記載の透明性耐熱樹脂を含む透
    明性耐熱樹脂成形材料。
  5. 【請求項5】請求項3に記載の透明性耐熱樹脂を含む透
    明性耐熱樹脂成形材料を成形することにより得られた成
    形品。
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