以下、合成装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明は、合成装置の一例である。図1は、合成装置の構成を例示する概略図である。
本実施形態に係る合成装置1は、タンパク質、ペプチド、核酸等を化学合成するための装置であって、反応容器31に複数種類の溶液(試薬)を順に供給し、この反応容器31において化学合成を進めるようになっている。用いられる溶液の数は、合成物の種類に応じて適宜決められる。これら溶液を選択的に反応容器31へ送ると、その溶液に含まれる分子材料によって合成物(例えば核酸)が生成される。この合成装置1は、コントローラ100(図4にのみ図示)から出力された制御信号を受けて作動する。
例えば核酸を合成する場合、反応容器31内にビーズを多数設け、この反応容器31に溶液を順次供給しながら、脱トリチル化、カップリング、酸化、及びキャッピングの処理を繰り返し行って、ビーズから例えば塩基のような分子材料を次々と結合させる。
合成装置1は、溶液の種類と同数の収容容器11A、11B、11C、・・・を備えている。なお、図1では、簡単のため、3つの収容容器11A、11B、11Cのみを図示しており、その他の容器については図示を省略している。
-収容容器-
収容容器11A、11B、11Cは、いわゆる試薬瓶として構成されており、複数種類の溶液を各々収容している。そして、各収容容器11A、11B、11Cには、ガスを導入するための導入管12と、溶液を導出するための導出管13とが接続されている。各導入管12は、ガスタンク14に接続された配管15から分岐している。一方、各導出管13は、それぞれ計量機構2へ接続されている。以下の記載では、複数個の収容容器11A、11B、11Cを単に「収容容器11」と総称する場合がある。
配管15には、レギュレータ16と、開閉バルブ17とが設けられている。
収容容器11から溶液を送る送液手段10は、圧送方式のものであり、ガスタンク14、導入管12、配管15、レギュレータ16および開閉バルブ17によって構成されている。すなわち、ガスタンク14に充填されている加圧ガス(例えば、不活性ガス等)は、開閉バルブ17の開閉状況に応じて、配管15および導入管12を通って各収容容器11へ供給される。そのときに、レギュレータ16を介して各収容容器11の内圧が調整される。これにより、収容容器11の内圧が高まると、その収容容器11に収容された溶液は、導出管13を介して圧送される。各導出管13は、計量機構2を構成する中間容器22へと通じている。
本実施形態に係る送液手段10は、各収容容器11と中間容器22(厳密には密閉容器24)との差圧を利用して溶液を送るように構成されている。詳しくは、各収容容器11及び密閉容器24は、ガスタンク14から供給された加圧ガスによって加圧されており、密閉容器24の内圧に比して各収容容器11の内圧の方が大きくなるように、レギュレータ16及び第2のレギュレータ19を介して調整されている。送液時には導出管13のバルブ21を開くことにより、収容容器11と密閉容器24との差圧に基づいて、各収容容器11から密閉容器24へと溶液が圧送される。このように、送液の度に圧力を増減させのではなく、常時、一定の圧力に調整しておくことで、圧力の急峻な変動が抑制され、送液量のバラツキを抑制することができる。
-計量機構-
計量機構2は、収容容器11A、11B、11C、…の各々から導出管13を介して供給された溶液を受け入れる中間容器22と、中間容器22内の溶液を計量する計量センサ23と、中間容器22を収容する密閉容器24と、を有している。計量センサ23によって計量された溶液は、配管25から導出される。
各導出管13は、互いに合流することなく、中間容器22に対して個別に接続されている。また、各導出管13には、ピンチバルブ等のバルブ21が設けられている。
導出管13毎に設けられた複数のバルブ21の中から、特定のバルブ21を選択的に開状態とすることで、複数の収容容器11の中から送るべき溶液が収容されたものを選択し、所定の溶液を選択的に中間容器22へと圧送することができる。
中間容器22は、図2に示すように、各溶液を溜めることができる容器であり、その上端部は開口し、その底部には配管25が接続されている。上端側の開口部22aには、複数の導出管13の下流端部が集約して設けられている。このため、導出管13を通じて選択的に送られた溶液は、開口部22aを通じて導入されて、その内部に溜められる。
計量センサ23は、この構成例では重量センサである。具体的に、計量センサ23は、ひずみ式のロードセルによって構成されており、中間容器22に貯留している溶液の重量を測定することができる。なお、ひずみ式のロードセルに代えて、電磁式、圧電素子式、静電容量型、磁歪式、ジャイロ式など、様々な方式のロードセルを使用することができる。また、重量センサではなく、中間容器22に貯留している溶液の液面の高さを検知してもよい。
この計量機構2は、中間容器22を計量容器として機能させる。計量センサ23によって計量された溶液は、配管25を通じて計量機構2の外部へと送られる。配管25を通過した溶液は、中継配管27と分岐回路4を介して反応容器31A、31B、…のいずれかへと至る。中継配管27には、開閉バルブ26が設けられている。計量センサ23によって溶液を計量するとき、この開閉バルブ26は閉状態とされる。
合成装置1は、多数の反応容器31A、31B、…を備えている。図1では、簡単のため、3つの反応容器31A、31B、31Cのみを図示しており、その他の容器については、図示を省略している。以下の記載では、複数個の反応容器31A、31B、31Cを単に「反応容器31」と総称する場合がある。
各反応容器31には、計量機構2により計量された溶液が、選択的に供給されるようになっている。合成装置1は、反応容器31毎に、2つのセンサ32、33と、排出部6を有している。
以下の記載では、所定の反応容器31と、それに対応する上流側センサ32、下流側センサ33及び排出部6とをまとめて、「反応部3」と称する場合がある。
また、以下の記載では、反応容器31Aを有する反応部3を「第1反応部3A」と呼称したり、反応容器31Bを有する反応部3を「第2反応部3B」と呼称したり、反応容器31Cを有する反応部3を「第3反応部3C」と呼称する場合がある。
なお、中間容器22から反応容器31へと溶液を送る手段は、ガスタンク14の加圧ガスを用いた圧送方式である。つまり、前述の送液手段10は、収容容器11から溶液を送る手段と、中間容器22から溶液を送る手段とを兼ねている。中間容器22から溶液を圧送するときには、開閉バルブ26が開状態となる。この圧送のために、計量機構2は、中間容器22を気密状に収容する密閉容器24を備えている。また、密閉容器24とガスタンク14との間には、加圧ガス用の配管18が設けられている。この配管18には、第2のレギュレータ19と、第2の開閉バルブ20とが設けられている。
密閉容器24内へ配管18を通じて加圧ガスを供給すると、その加圧ガスが、中間容器22内に貯留している溶液の液面に圧力を及ぼす。そして、密閉容器24と反応容器31との差圧に応じて、中間容器22に貯留している溶液が、中継配管27および分岐回路4を介して反応容器31へと圧送される。
詳しくは、密閉容器24及び各反応容器31は、ガスタンク14から供給された加圧ガスによって加圧されており、各反応容器31の内圧に比して密閉容器24の内圧の方が大きくなるように、レギュレータ16及び第2のレギュレータ19を介して調整されている。送液時には、中継配管27の開閉バルブ26と後述の切替バルブ5とを開くことにより、密閉容器24と各反応容器31との差圧に基づいて、密閉容器24から反応容器31へ溶液が圧送される。このように、送液の度に圧力を増減させのではなく、常時、一定の圧力に調整しておくことで、圧力の急峻な変動が抑制され、送液量のバラツキを抑制することができる。
-分岐回路-
分岐回路4は、計量機構2によって計量された溶液を、対応する反応部3へと導くための配管である。詳しくは、分岐回路4の一端(上流端)側は、中継配管27に接続されている。対して、分岐回路4の他端(下流端)側は、反応部3と同数に分岐して、各反応部3を成す反応容器31へと接続されている。なお、分岐回路4を構成する配管は、交換可能な部品(いわゆるシングルユース品)によって構成されている。
さらに詳しくは、分岐回路4は、中継配管27との接続部から下流側へと向かう途中で、第1反応部3Aへ向かう分岐配管41と、第2反応部3Bへと向かう分岐配管41と、第3反応部3Cへ向かう分岐配管41とに分岐する。そして、分岐回路4の下流端には、廃液が貯留する貯留部49が接続されている。
また、分岐回路4と、各反応容器31との途中には、計量機構2から各反応容器31への溶液の供給を制御するための複数の切替バルブ5が設けられている。切替バルブ5は、コントローラ100からの制御信号を受けて開閉するように構成された開閉弁である。切替バルブ5としては、エアオペレイト式のピンチバルブ、及び電磁バルブ等を用いることができる。
これら切替バルブ5は、分岐回路4から各分岐配管41へと分岐した直後の部位に設けられる第1切替バルブ51と、各分岐配管41の上流側に設けられる第2切替バルブ52と、を有する。第1切替バルブ51および第2切替バルブ52は、送液手段10および貯留部49とともに、分岐回路4に残留した溶液を廃液として排出するための排出機構を構成している。
各分岐配管41における第2切替バルブ52の下流側には、上流側センサ32が設けられている。各分岐配管41の下流端部は、対応する反応容器31に接続されている。
ここで、上流側センサ32は、計量機構2から反応容器31へ供給される溶液を検知するものであり、溶液の通過を検知して、その検知信号をコントローラ100へと出力することができる。
反応容器31は、その内部に多数のビーズを収容しており、複数種類の溶液が供給されると、その内部において化学合成が進行するようになっている。化学合成が完了すると、この反応容器31を取り外し、合成された反応生成物を取り出すことができる。
前述のように、反応容器31の上流側(一次側)には分岐配管41の下流端部が接続されている。一方、反応容器31の下流側(二次側)には二次側配管42が接続されている。よって、分岐配管41を通じて反応容器31へと供給された溶液は、この反応容器31を通過して、二次側配管42を通じて排出される。
この二次側配管42には、上流側から順に、下流側センサ33と、開閉バルブ34と、排出部6と、が設けられている。ここで、下流側センサ33は、反応容器31から排出部6へと供給される溶液を検知するものであり、溶液の通過を検知して、その検知信号をコントローラ100へ出力することができる。また、開閉バルブ34は、コントローラ100から入力された制御信号に従って二次側配管42を開閉する。
図3は、第1反応部Aにおける排出部6の詳細を示す図である。図3に示すように、排出部6は、二次側配管42を介して反応容器31に接続されたサブカップ61と、このサブカップ61に接続された廃液タンク62と、サブカップ61内の圧力を調整するための背圧機構63及び吸引機構64とを有している。
サブカップ61は、密閉容器であり、反応容器31に供給される溶液の流量、及び、反応容器31から排出される溶液(以下、「廃液」ともいう)の流量を調整することができる。すなわち、このサブカップ61内の圧力を変更することにより、反応容器31の下流側の圧力が調整される。そのことで、反応容器31の上流側と下流側との差圧が調整され、これにより、反応容器31に対する溶液の流速と流量を調整することができる。
また、サブカップ61には、反応容器31へ通じる二次側配管42と、廃液タンク62へ通じる廃液配管65とが接続されている。廃液配管65には、これを開閉する廃液開閉バルブ66が設けられており、廃液開閉バルブ66を開状態にすることにより、サブカップ61と廃液タンク62とを連通させることができる。これにより反応容器31から排出される廃液は、二次側配管42を通じてサブカップ61へと流入し、廃液配管65を通じて廃液タンク62へ排出される。
廃液タンク62は、反応容器31に比べて大容量の容器であり、サブカップ61から排出された廃液が流入するように構成されている。廃液タンク62は、大気に連通しており、その内部は大気圧と同圧となっている。
背圧機構63は、サブカップ61の蓋部に接続されている背圧配管63aと、これを開閉する背圧バルブ63bとを有している。具体的に、背圧バルブ63bを開状態にすることにより、サブカップ61には、予め設定された背圧が負荷されるようになっている。サブカップ61に背圧が負荷されると、サブカップ61内の圧力が上がる。そのため、背圧を負荷しない場合と比較して、反応容器31の上流側との差圧が小さくなるように調整することができる。そうして、反応容器31に流入させる溶液の流量および流速を低減することができる。
一方、吸引機構64は、サブカップ61に蓋部に接続されている吸引配管64aと、これを開閉する吸引バルブ64bとを有している。具体的に、吸引バルブ64bを開状態にすることにより、サブカップ61には、予め設定された負圧が負荷されるようになっている。サブカップ61に負圧が負荷されると、サブカップ61内の圧力が上がる。そのため、負圧を負荷しない場合と比較して、反応容器31の上流側との差圧が大きくなるように調整することができる。そうして、反応容器31の上流側と下流側との差圧が大きくなるため、反応容器31に流入させる溶液の流量および流速を増加させることができる。
このように、排出部6は、対応する反応容器31における二次側(流れ方向下流側)の圧力を調整するという点で、「圧力調整部」を例示している。
-コントローラ-
図4は、合成装置1の制御系を例示するブロック図である。
図4に示すコントローラ100には、計量機構2の計量センサ23、各反応部3の上流側センサ32、及び、下流側センサ33からの検知信号が入力されるよう構成されている。コントローラ100にはまた、配管15のレギュレータ16及び開閉バルブ17と、加圧ガス用の配管18の第2のレギュレータ19、及び、第2の開閉バルブ20と、各導出管13のバルブ21と、中継配管27の開閉バルブ26と、分岐回路4の切替バルブ5と、各反応部3の開閉バルブ34と、各排出部6の廃液開閉バルブ66、背圧バルブ63b及び吸引バルブ64bと、が電気的に接続されている。
コントローラ100は、計量センサ23等から入力された信号に基づいて制御信号を生成し、開閉バルブ26等へ出力する。合成装置1は、その制御信号に従って作動し、溶液による化学合成を実行する。
以下、合成装置1によって実行される制御プロセスのうち、各反応部3の使い分けに関連した制御プロセスについて詳細に説明をする。図5は、コントローラ100によって実行される制御プロセスを例示したフローチャートである。図5に示す制御プロセスは、例えば反応性に優れた溶液を用いた化学合成に適している。
まず、図5のステップS101に示すように、コントローラ100は、予め規定された合成手順に従って、第1反応部3Aへと供給するべき溶液が収容された収容容器11とを選択する。なお、この例では、第1反応部3Aへ溶液を供給する際の制御プロセスについて説明するが、溶液の供給対象は、第2反応部3Bや第3反応部3Cであってもよい。
続くステップS102において、コントローラ100は、レギュレータ16と、開閉バルブ17と、ステップS101において選択された収容容器11に接続された導出管13のバルブ21へと制御信号を出力することにより、計量機構2へと溶液を供給する。
前述のように、収容容器11及び密閉容器24は、密閉容器24に比して各収容容器11の方が高圧になるように加圧されている。導出管13のバルブ21を開くことにより、収容容器11と密閉容器24との差圧に基づいて、各収容容器11から密閉容器24へ溶液が圧送される。
続くステップS103において、コントローラ100は、計量センサ23からの検知信号に基づいて、溶液の計量を実行する。そして、溶液の供給量が適量となり次第、収容容器11からの溶液の供給を停止する。
続くステップS104において、コントローラ100は、中継配管27に設けられた開閉バルブ26と、分岐回路4に設けられた切替バルブ5とを開閉し、第1反応部3Aの反応容器31Aへと溶液を圧送する。
続くステップS105において、コントローラ100は、第1反応部3Aに係る上流側センサ32からの検知信号が途絶え(上流側センサ:OFF)、かつ、下流側センサ33からの検知信号が入力(下流側センサ:ON)されたか否かを判定し、この判定がYESのときにはステップS106へ進む一方、NOのときにはステップS104へ戻る。なお、下流側センサ33からの検知信号は必須ではない。少なくとも上流側センサ32からの検知信号が途絶えたときに、ステップS106へ進むように構成することもできる。
ステップS106において、コントローラ100は、溶液の通過が完了したものとして、計量機構2からの溶液の圧送を停止する。すなわち、コントローラ100は、溶液の通過が完了するまで、その圧送を継続するようになっている。溶液の圧送停止に際して、コントローラ100は、開閉バルブ26および第2切替バルブ52を閉状態にする。
コントローラ100は、反応容器31Aへと圧送された溶液を、この反応容器31A内に所定時間にわたって滞留させる。その滞留時間を利用して、コントローラ100は、ステップS107以降のプロセスを実行する。
ステップS107において、コントローラ100は、分岐回路4の洗浄を実行する。具体的に、コントローラ100は、分岐回路4に設けられた切替バルブ5のうち、各反応部3へと通じる経路上に配置されている第2切替バルブ52を全て閉状態とし、貯留部49へと通じる経路上に配置されている第1切替バルブ51を全て開状態とする。続いて、コントローラ100は、第2のレギュレータ19へと制御信号を出力し、分岐回路4に残留している溶液を貯留部49へと圧送する。
詳しくは、密閉容器24及び貯留部49は、ガスタンク14から供給された加圧ガスによって加圧されており、貯留部49の内圧に比して密閉容器24の内圧の方が大きくなるように、第2のレギュレータ19を介して調整されている。中継配管27の開閉バルブ26と、第1切替えバルブ51とを開状態とした上で、第2切替バルブ52を閉状態とすることにより、密閉容器24と貯留部49との差圧に基づいて、分岐回路4から貯留部49へ溶液が圧送される。
続くステップS108において、コントローラ100は、第2反応部3Bへと溶液を供給するためのプロセスを実行する。詳細は省略するが、前述のステップS101~S106と同様に、第2反応部3Bへと供給するべき溶液を決定し、その溶液を計量機構2によって計量しつつ、第2反応部3Bの反応容器31Bへと圧送する。
その後、コントローラ100は、他の反応部3に対しても同様の制御プロセスを実行する。そして、化学反応が完了した反応部3から順に、第2のレギュレータ19を介してガスを圧送し、反応部3から溶液を排出させる(ステップS109)。
続いて、合成装置1によって実行される制御プロセスの他例について説明をする。図6は、制御プロセスの他例を示すフローチャートである。図6に示す制御プロセスは、例えば、反応性が相対的に悪い溶液を用いた化学合成に適している。
図5に示すフローと同様に、コントローラ100は、第1反応部3Aへと供給するべき溶液を決定し(ステップS201)、その溶液を計量機構2によって計量しつつ、第1反応部3Aの反応容器31Aへと圧送する(ステップS202~S204)。
前述のように、コントローラ100は、第1反応部3Aに係る上流側センサ32からの検知信号が途絶え、かつ、下流側センサ33からの検知信号が入力され次第、計量機構2からの溶液の圧送を停止する(ステップS205~S206)。
続くステップS207において、コントローラ100は、排出部6の背圧バルブ63b及び吸引バルブ64bへと制御信号を出力し、計量機構2とは独立して、溶液の供給を制御する。これにより、反応容器31Aの内部に溶液を滞留させずに、その内部へと連続的に溶液を流入させる。そのことで、化学反応を促進させることができる。
そして、反応容器31Aの内部へと溶液を連続的に流入させつつ、コントローラ100は、分岐回路4の洗浄を実行する(ステップS208)。それに続いて、コントローラ100は、第2反応部3B、第3反応部3Cへと順次溶液を供給し、化学反応が完了した反応部3から順に、溶液を排出させる(ステップS209~S210)。
以上説明したように、各収容容器11から反応容器31へと至る各経路は、図1に示したように、一旦、計量機構2にて集約する。そして、計量機構2にて集約した経路は、分岐回路4を介して各反応容器31へと接続されることになる。
このように、収容容器11と、それに対応する反応容器31とを直に接続するのではなく、その途中で集約させることにより、収容容器11から各反応容器31へと至る経路の一部を共有させることができる。これにより、収容容器11と反応容器31とを相互にパラレルに接続した構成と比較して、収容容器11から反応容器31へと至る経路のバラツキによる、反応生成物の品質の不均一性を低減することができる。
すなわち、収容容器11と反応容器31とをパラレルに接続すると、流路長や流路断面積のズレに起因して、反応容器31毎に、溶液の供給状況が不均一となる。対して、収容容器11から各反応容器31へと至る経路の一部を共有させると、その共有させた部分においては、流路長や流路断面積のズレが解消されるため、完全にパラレルに接続した構成に比して、経路のバラツキを低減することができる。そうして、溶液の供給状況を相対的に均一にし、ひいては合成環境のバラツキを低減することができる。そのことで、反応生成物の品質の均一化を実現することが可能となる。
さらに、図1に示すように、計量機構2にて各経路を集約させると、計量機構2の共通化を図ることが可能となる。仮に、反応容器31毎に個別に計量機構を設けてしまうと、溶液の計量に際して、各計量機構に固有のバラツキが生じる可能性がある。対して、上記のように、共通の計量機構2によって溶液を計量すると、そうしたバラツキが発生しないため、溶液の供給状況を相対的に均一にすることができる。これにより、反応生成物の品質の均一化を実現する上で有利になる。
また、図5のステップS105に示すように、コントローラ100は、溶液の通過が完了したことが上流側センサ32と下流側センサ33とによって検知されたときに、切替バルブ5を介して溶液の圧送を停止する。これにより、溶液の供給対象を自動的に切り替えることができる。例えば、反応容器31Aに対する溶液の供給が完了次第、別の反応容器31Bに対する供給を自動的に開始することが可能となる。このことは、各反応容器31の稼働率を高める上で有効である。
また、図3に示す排出部6を設けたことによって、反応容器31毎に、溶液の供給を個別に調整することができる。これにより、例えば反応容器31毎に溶液の流量や流速を個別に変更し、化学合成を適切に実施することが可能となる。
また、収容容器11から反応容器31へと至る経路の一部を共有させた場合、その共有部に溶液が残留する可能性がある。別の反応容器31への混入を考慮すると、溶液の残留は好ましくない。
本実施形態では、図3に示す貯留部49を設けたことで、分岐回路4の共有部に残留した溶液を廃液として排出することができるため、化学合成を適切に実施する上で有利になる。
また、前述のように、分岐回路4は、交換可能な部品によって構成されている。これにより、分岐回路4を適切なタイミングで交換することで、分岐回路4のコンタミに係るリスクを低減することができる。
〈第2の実施形態〉
続いて、第2の実施形態に係る合成装置1’について説明する。なお、第2の実施形態に係る合成装置1’のうち、前記実施形態と同様に構成された部分については、前記実施形態と同じ符号を付し、その説明も省略する。
図7は、第2の実施形態に係る合成装置1’を一部省略して示す図である。図7に示すように、第2の実施形態に係る反応部3には、各反応容器31の一次側(流れ方向上流側)の圧力を調整するガス供給部7(圧力調整部)が設けられている。図例では、1つの反応部3Aのみを示しているが、ガス供給部7は、実際には各反応部3A~3Cに設けられている。
具体的に、ガス供給部7は、分岐配管41に接続された第2分岐路71と、これを開閉する開閉バルブ72と、第2分岐路71に接続されたガスタンク73と、第2分岐路71において、開閉バルブ72からガスタンク73へと至る途中に設けられた第3レギュレータ74と、を有している。
ガスタンク73は、各導入管12に接続されたガスタンク14と同様に、大気圧よりも高圧のガスを充填している。このガスタンク73には、第2分岐路71の上流端部が接続されている。
第2分岐路71は、ガスタンク73から供給されたガスを、対応する反応容器31の上流側へと供給するための配管である。具体的に、第2分岐路71の上流端部はガスタンク73に接続され、その下流端部は、分岐配管41のうち、切替バルブ5と上流側センサ32との間の部位に接続されている。開閉バルブ72は、コントローラ100から入力された制御信号に従って、この第2分岐路71を開閉する。
すなわち、開閉バルブ72を介して第2分岐路71を開くと、反応容器31の直上流側へ高圧ガスが流入する。この高圧ガスの流入により、反応容器31の直上流側の圧力を高め、溶液の流速を高めることができる。
図6に示すフローと同様に、第2の実施形態に係るコントローラ100は、第1反応部3Aへと供給するべき溶液を決定し、その溶液を計量機構2によって計量しつつ、第1反応部3Aの反応容器31Aへと圧送する。
前述のように、コントローラ100は、第1反応部3Aに係る上流側センサ32からの検知信号が途絶え、かつ、下流側センサ33からの検知信号が入力され次第、計量機構2からの溶液の圧送を停止する。
続いて、コントローラ100は、ガス供給部7の開閉バルブ72へと制御信号を出力し、計量機構2とは独立して、溶液の供給を制御する。これにより、反応容器31Aの内部に溶液を滞留させずに、その内部へと連続的に溶液を流入させる。そのことで、化学反応を促進させることができる。
そして、反応容器31Aの内部へと溶液を連続的に流入させつつ、コントローラ100は、分岐回路4の洗浄を実行する。それに続いて、コントローラ100は、第2反応部3Bへと溶液を供給するためのプロセスへと移行する。
このように、各反応部3にガス供給部7を設けたことによって、反応容器31毎に、溶液の供給を個別に調整することができる。これにより、例えば反応容器31毎に溶液の流量や流速を個別に変更し、溶液の反応性に応じた化学合成を実施することが可能となる。
すなわち、第2の実施形態に係るガス供給部7は、前述の送出手段10に代わって、同手段10が有する機能を発揮することできる。例えば、反応性が相対的に悪い(反応の遅い)溶液を供給する場合には、その溶液が反応容器31に長時間滞留するように第3レギュレータ74を制御する一方、反応性に優れた(反応の速い)溶液を供給する場合は、その溶液を反応容器31から短時間で排出するように第3レギュレータ74を制御することができる。このように、供給される溶液の反応性に応じて、反応容器31における溶液の滞留時間を使い分けることができる。
しかも、ガス供給部7は、反応部3毎に個別に設けられており、このガス供給部7は、送出手段10とは独立して制御されるよう構成されている。これにより、反応容器31毎に、溶液の滞留時間を個別に調整することができ、その時間調整と並行して計量機構2による溶液の計量を行うことができる。このように、単に各反応容器31の稼働率を高めるばかりでなく、各反応容器31へ供給される溶液に適した反応プロセスを実現することができる。
〈第3の実施形態〉
続いて、第3の実施形態に係る合成装置1”について説明する。なお、第3の実施形態に係る合成装置1のうち、前記実施形態と同様に構成された部分については、前記実施形態と同じ符号を付し、その説明も省略する。
図8は、第3の実施形態に係る合成装置1”を一部省略して示す図である。図8に示すように、第3の実施形態に係る反応容器31の一次側には、溶液を一時的に蓄える一時貯留部8が設けられている。図例では、1つの反応部3Aのみを示しているが、一時貯留部8は、実際には各反応部3A~3Cに設けられている。
具体的に、一時貯留部8は、分岐配管41に介設された受入タンク81と、受入タンク81よりも下流側の分岐配管41を開閉する開閉バルブ82と、を有している。
受入タンク81は、分岐配管41を通じて反応容器31へ至る途中に設けられており、計量機構2から分岐回路4を介して供給される溶液が流入するように構成されている。受入タンク81へと流入した溶液は、この受入タンク81にて、一次的に蓄えられる。受入タンク81の蓋部には、受入タンク81の一次側へとガスを供給するガス供給部9が接続されている。
ガス供給部9は、受入タンク81に接続された第3分岐路91と、第3分岐路91に接続されたガスタンク92と、受入タンク81からガスタンク92へと至る途中に設けられた第4レギュレータ93と、を有している。
ガスタンク92は、各導入管12に接続されたガスタンク14と同様に、大気圧よりも高圧のガスを充填している。このガスタンク92には、第3分岐路91の上流端部が接続されている。
第3分岐路91は、ガスタンク92から供給されたガスを、対応する受入タンク81の上流側へと供給するための配管である。具体的に、第3分岐路91の上流端部は、前述のようにガスタンク92に接続され、その下流端部は、受入タンク81の蓋部に接続されている。
第3分岐路91のうち、第4レギュレータ93から受入タンク81へと至る途中の部位には第4分岐路94が接続されている。第4分岐路94は、大気に開放されている。
また、第3分岐路91と第4分岐路94との接続部には、三方弁95が設けられている。コントローラ100は、この三方弁95を作動させることにより、ガスタンク92から受入タンク81へとガスを供給するための経路と、第4分岐路94を介して受入タンク81を大気に開放させるための経路とを切り替える。例えば、受入タンク81に溶液を貯留するときには、受入タンク81を大気に開放させておく。一方、溶液を用いて化学合成をするときには、ガスタンク92から受入タンク81へと高圧ガスを供給する。これにより、受入タンク81内の溶液の液面に正圧が作用して、受入タンク81から反応容器31へと溶液を送り出すことができる。
このように、各反応部3に受入タンク81を設けたことによって、計量機構2から供給された溶液を、受入タンク81にて一時的に蓄えることが可能となる。受入タンク81に蓄えられた溶液は、圧力調整部としてのガス供給部9から高圧ガスを供給することにより、対応する反応容器31へと供給することができる。これにより、計量機構2からの溶液の供給とは独立して、反応容器31毎に溶液の供給を個別に制御することが可能となる。そのことで、例えば反応容器31毎に溶液の流量や流速を個別に変更し、溶液の反応性に応じた化学合成を実施することが可能となる。