JP7096832B2 - 把持装置及び産業用ロボット - Google Patents
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Description
本発明は、把持装置及び産業用ロボットに関するものである。
ワークを把持することを目的とした把持装置として、主に吸着ハンドや2指型グリッパ(例えば、特許文献1)が利用されているが、これらは機構上、サイズや形状が異なるワークを汎用的に把持することができない場合がある。そのため、多品種少量生産のように、把持するワークの種類が多い作業現場においては、ツールチェンジャーや人による取り替え作業が必要となってしまうため、生産効率が低下してしまう。さらに食品に代表されるような、柔軟かつ不定形なワークを傷めずに把持することができないという問題があった。
これに対し、人間の手の形状に近い機構を有する5指型の把持装置の検討もされている(例えば、特許文献2)。ところが、5指型の把持装置は、人間の手に近い複雑な動作を実現する為に、動作や制御機構が非常に複雑なため、これらの複雑さが導入を困難にする要因となっている。
さらに密閉されたゴム状の袋と、当該ゴム袋に充填された粉体とを有し、粉体のJamming転移を利用した把持装置が開発されている(例えば、特許文献3)。この把持装置は、ゴム袋をワークに追従させた状態で把持できるので、簡単な制御で様々なワークに対応することができる。
しかしながら、上記特許文献3に係る把持装置は、把持力を発現するために強い力でワークへ押し付ける必要があるので、食品のような柔軟なワークを傷めてしまうという問題がある。また把持装置は、ワークへ押し付ける力が弱い場合、ゴム袋のワークに対する追従性が著しく低下するので、把持できるワークが限られてしまう。さらにゴム袋が、劣化や破損などによって破裂した場合、ゴム袋に充填された粉体が飛散し、ワークを汚染してしまう、という問題がある。粉体は、Jamming転移に伴う密度変化によって劣化するので、安定的に使用することができないという問題がある。
本発明は、粉体を用いず、より確実にワークを把持することができる把持装置及び産業用ロボットを提供することを目的とする。
本発明に係る把持装置は、掌部と、前記掌部の周囲に突出して設けられ、前記掌部を厚さ方向に変形させることにより前記掌部に向かって倒れる複数の指部とを有する袋状の把持本体と、前記指部内に設けられ、前記指部の形を有する弾性部と、前記把持本体内に設けられ、前記掌部の外周の収縮を防ぐ形状保持部とを備え、前記形状保持部は、枠状部材であって、変形した前記掌部を受け入れるガイド穴を有し、前記ガイド穴の軸方向の、前記指部側先端の外側に湾曲部が設けられていることを特徴とする。
本発明に係る産業用ロボットは、上記把持装置を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、形状保持部が掌部の外周が収縮するのを防ぐことで、掌部が厚さ方向に変形することにより、指部を掌部に向かって変形させてワークを把持することができるので、粉体を用いず、より確実にワークを把持することができる。形状保持部に湾曲部が形成されていることにより、掌部が湾曲部に接触しながら厚さ方向に変形するので、指部が連続的、かつ、ゆるやかに変形する。したがって把持装置は、柔らかくワークを把持することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
(全体構成)
図1に、本実施形態に係る把持装置10を適用した産業用ロボット12の構成を示す。産業用ロボット12は、直交ロボットであって、レール14と、レール14に沿って移動する移動体16と、移動体16に固定されたエアシリンダ-18とを備える。レール14は、図中Y軸方向に移動可能に設けられている。
図1に、本実施形態に係る把持装置10を適用した産業用ロボット12の構成を示す。産業用ロボット12は、直交ロボットであって、レール14と、レール14に沿って移動する移動体16と、移動体16に固定されたエアシリンダ-18とを備える。レール14は、図中Y軸方向に移動可能に設けられている。
エアシリンダ-18は、シリンダーチューブ19と、シリンダーチューブ19に対し進退可能に設けられたピストンロッド20とを有する。シリンダーチューブ19には、配管21、22が設けられている。当該配管21、22を通じて、気体が給排気されることにより、ピストンロッド20がシリンダーチューブ19に対し進退可能となっている。ピストンロッド20の先端には、把持装置10が設けられている。
産業用ロボット12は、水平な基台26上に置かれたワークWを、把持装置10で把持すると共に、X軸、Y軸、及びZ軸方向に移動することができる。
把持装置10は、ピストンロッド20に連結されたケース36と、当該ケース36に固定された把持本体28Aとを備える。ケース36には、配管24が連結されている。把持本体28Aは、気密性と弾性とを有する材料、例えば、天然ゴムや、合成ゴムなどで形成することができる。把持本体28AのJIS K6253のデュロメータ硬さ試験(タイプA)に準じて測定した硬度は、60~90程度であるのが好ましい。
図2に示すように把持本体28Aは、掌部30と、掌部30の周囲に突出して設けられた複数の指部32と、掌部30の外形より大きい筒状の外周面39とを有する。掌部30は略円盤状をなしている。指部32は、掌部30と一体に形成されており、掌部30を囲むように放射状に5個設けられている。指部32同士の間には、外周35が設けられ、所定の間隔が形成されている。外周35は、外周面39と、掌部30の外縁とを接続し、外周面39、掌部30、指部32を一体とする。外周35は、斜面形状又は外側に向かって凸状に湾曲した形状を有する。指部32は、内面31が掌部30と一体に形成されている。指部32の外形形状は、適宜選択することができ、例えば、円柱、円錐、円錐台、三角柱、四角柱、三角錐、四角錐、四角錐台などでもよい。本実施形態の場合、指部32は、同一形状で構成されている。なお複数の指部32は、全て同一形状である必要はなく、形状が異なっていてもよい。指部32は、四角錐台形状を有し、内面31が、掌部30に接合している基端から先端に向かって外側に傾斜するように形成されている。
把持本体28Aは、掌部30を厚さ方向(図2、矢印方向)に変形させる力が作用すると、当該力によって内面31が引っ張られ、指部32が掌部30へ向かって倒れるように弾性変形する(図3)。
図4に示すように把持本体28Aは、掌部30及び指部32が形成されている表面とは逆側の面に円形の開口を有する袋状の部材からなる。把持本体28Aは、内部に、弾性部34と、形状保持部38とを有する。把持本体28Aは、開口の周縁に一体形成されたフランジ部33においてケース36に固定されており、当該ケース36によって開口が密閉されている。
ケース36には、貫通穴37が設けられている。配管24は、一端が、貫通穴37に挿入され、把持本体28Aに通じている。配管24の他端は、図示しないが、例えば三方弁を介して真空ポンプに接続されている。三方弁は、真空ポート、給排気ポート、大気解放ポートを有し、真空ポートが真空ポンプに、給排気ポートが把持装置10に、大気解放ポートが外部にそれぞれ接続される。当該配管24を通じて、気体が、把持本体28Aの内から外へ、及び把持本体28Aの外から内へ、流通する。
弾性部34は、指部32内に充填され、当該指部32の形を有する。弾性部34の形は、把持本体28Aの指部32内に挿入され一定の形を保持できれば、指部32の内面との間に多少隙間が生じていてもよい。弾性部34の材質は、樹脂またはゴムであるのが好ましい。弾性部34の材質は、必ずしも均一である必要はなく、異種材料を組み合わせた複合材でもよい。弾性部34は、フィラーなどの添加物を含んでもよい。弾性部34は、指部32の内面との間に、隙間がないように配置されるのが好ましい。弾性部34は、掌部30を超えて把持本体28Aの大半に充填されると、掌部30が厚さ方向に変形せず指部32が掌部30の中心に向かって弾性変形し難くなる。したがって弾性部34は、指部32内に配置されるのが好ましい。
形状保持部38は、把持本体28Aの掌部30の内部空間に配置されている。形状保持部38は、掌部30以外、すなわち掌部30の外周35が収縮しないように、把持本体28Aを保持する。本実施形態の場合、形状保持部38は、外周35及び外周面39が収縮しないように把持本体28Aを保持する。形状保持部38の材質は、把持本体28Aの減圧下において変形しなければ足り、例えば硬質樹脂や金属を用いることができる。形状保持部38の材質は、必ずしも均一である必要はなく、異種材料を組み合わせた複合材でもよい。
本図に示す形状保持部38は、変形した掌部30を受け入れるガイド穴40と、ガイド穴40の軸方向の指部32側先端43の外側に湾曲部49とを有する枠状部材である。本実施形態の場合、形状保持部38は、外周面39を保持する保持面48を有する円筒状部材である。ガイド穴40は、掌部30に対応した形状保持部38の中央であって、内径が掌部30と略同じ大きさであるのが好ましい。保持面48は、形状保持部38の外側の円周面であり、掌部30の外周面39を保持できる大きさを有し、全体として先端に向かって先細になっている。保持面48の指部32側に湾曲部49が設けられている。湾曲部49は、形状保持部38の基端と指部側先端43を接続する外表面である。湾曲部49は、掌部30の外周35の収縮を防ぐため、指部32同士の間の掌部30の形状に沿った形状、すなわち斜面形状又は外側に向かって凸状に湾曲した形状を有する。本図に示す湾曲部49は、外側に向かって凸形状である。より具体的には湾曲部49は、保持面48と先端43を接続する外表面であり、外側に向かって凸状に湾曲した形状である。
図5に示すように、形状保持部38は、同心円状に配置された複数、本図の場合、3個のリング体44~46を有する。各リング体44~46は、軸方向に移動可能、取り外し可能である。
湾曲部49とガイド穴40が面で交差する形状保持部38の指部側先端43は、面取り加工が施されているのが好ましい。面取り加工は、形状保持部38の指部側先端43を削り、角面や丸面とする加工が適用できる。形状保持部38は、面取り加工が施されていることにより、上記指部側先端43における欠けなどの破損を防止することができる。
形状保持部38のさらに詳細について、図4を参照して説明する。形状保持部38は、外径Dと前記ガイド穴40内径dの比が1.0:0.93~1.0:0.5であるのが好ましい。例えば、形状保持部38の外径Dが80mmの場合、内径dが60~70mmの範囲であれば、指部32は掌部30の中心に向かってより確実に弾性変形する。
さらに平面視における弾性部34の基端の中心位置よりも半径方向の外側に、形状保持部38の指部側先端43が位置するのが好ましい。すなわち、弾性部34の半径方向の長さをLとした場合、当該弾性部34の内側からの距離TがL/2以上である位置で形状保持部38の指部側先端43が弾性部34の基端に接触するのが好ましい。形状保持部38の指部側先端43が、弾性部34の中心位置よりも半径方向の内側で弾性部34の基端に接触した場合(TがL/2より小さい場合)、指部32は、掌部30の中心に向かって弾性変形しにくくなる。
(動作及び効果)
上記のように構成された把持装置10が設けられた産業用ロボット12の動作及び効果について説明する。産業用ロボット12は、ピストンロッド20がシリンダーチューブ19内に退避し、エアシリンダ-18が収縮した状態を原点とする。また把持装置10は、初期状態において把持本体28A内の圧力が大気圧である。すなわち三方弁は、真空ポートが遮断され、給排気ポートが大気解放ポートと繋がっている状態である。
上記のように構成された把持装置10が設けられた産業用ロボット12の動作及び効果について説明する。産業用ロボット12は、ピストンロッド20がシリンダーチューブ19内に退避し、エアシリンダ-18が収縮した状態を原点とする。また把持装置10は、初期状態において把持本体28A内の圧力が大気圧である。すなわち三方弁は、真空ポートが遮断され、給排気ポートが大気解放ポートと繋がっている状態である。
産業用ロボット12は、移動体16がレール14に沿って移動することで、基台26上に置かれたワークWの鉛直線上に把持装置10を位置決めする(図1)。次いで、産業用ロボット12は、ピストンロッド20がシリンダーチューブ19から進出することにより、指部32がワークWの側面に到達するまで、エアシリンダ-18を伸長させる。
次いで三方弁は、大気解放ポートが遮断され、給排気ポートが真空ポートと繋がった状態に切り替えられる。これにより把持装置10は、配管24を通じて、把持本体28A内の気体を吸引し、把持本体28A内の圧力を-0.03MPa以下に減圧する。
把持本体28Aは、形状保持部38により外周35及び外周面39の形状が保持された状態を維持する。そうすると掌部30が、形状保持部38のガイド穴40に吸い込まれるようにして厚さ方向に変形する(図6)。掌部30が厚さ方向へ変形するのに伴い、指部32の内面31が掌部30の中心へ引っ張られる。そうすると指部32は、掌部30へ向かって倒れるように弾性変形する。これにより指部32は、主に内面31がワークW表面に接触する。本図に示す立方体のワークWの場合、指部32はワークWの側面に接触する。上記のように把持装置10は、把持本体28A内を減圧することにより、ワークWを把持する。把持装置10は、把持本体28A内の圧力に応じた把持力を発揮する。すなわち、把持装置10の把持力は、把持本体28A内の圧力が低い程、大きくなる。
次いで産業用ロボット12は、ピストンロッド20をシリンダーチューブ19内に退避させてエアシリンダ-18を収縮することにより、ワークWを基台26から持ち上げることができる。さらに産業用ロボット12は、移動体16がレール14に沿って移動したり、レール14がY軸方向に移動したりすることにより、水平方向へワークWを自在に移動することができる。
所望の場所へ移動した後、産業用ロボット12は、ピストンロッド20がシリンダーチューブ19から進出することにより、ワークWが基台26に接触するまでエアシリンダ-18を伸長させる。次いで、三方弁は、真空ポートが遮断され、給排気ポートが大気解放ポートと繋がっている状態に切り替えられる。そうすると把持本体28A内へ大気解放ポートから配管24を通じて気体が流入する。把持本体28A内の圧力が大気圧に戻るのに伴い、掌部30がガイド穴40から押し出され元の状態に戻る。掌部30が元の状態に戻るのに伴い、指部32が開き、ワークWを手放す。
次いで、産業用ロボット12は、ピストンロッド20をシリンダーチューブ19内に退避させてエアシリンダ-18を収縮することにより、把持装置10をワークWから切り離す。以上のようにして産業用ロボット12は、基台26上に置かれたワークWを、把持装置10で把持することにより、所望の位置へ移動することができる。
把持装置10は、把持本体28A内に、指部32の形状を有する弾性部34と、形状保持部38を有することにより、粉体を用いず、より確実にワークWを把持することができる。把持装置10は、粉体を用いていないので、万一、把持本体28Aが破裂しても、ワークWを汚染することがない。
弾性部34は、指部32の形状を有するので、指部32の先端が下向きの状態だけでなく、横向きや上向きの状態であっても、指部32内に留まる。したがって把持装置10は、基台上のワークWを持ち上げるだけでなく、垂直な壁面や、天井に吊り下げられたワークWを把持することができる。指部32の形状を有する弾性部34は、Jamming転移後の粉体に比べ剛性が高いので、より確実にワークWを把持することができる。
把持装置10は、把持本体28Aを減圧して掌部30を確実に厚さ方向に変形させることにより、ワークWを把持することができるので、把持本体28AをワークWに押し付ける必要がない。したがって把持装置10は、食品などの柔らかいワークWを押し潰さずに把持できるので、ワークWの損傷を防止することができる。
把持本体28Aは、内部が減圧される程度によって指部32の変形量、及び把持力を変えることができる。したがって把持装置10は、ワークWの大きさや硬さに合わせて、把持力を変えることができるので、汎用性を向上することができる。掌部30がガイド穴40に吸い込まれるようにして厚さ方向に変形するので、指部32は掌部30へ向かってより鋭角に変形する。したがって把持装置10はより小さいワークWも把持することができる。
形状保持部38は、同心円状に配置された複数のリング体44~46を適宜取り外すことにより、ガイド穴40の大きさや、外形の大きさを変更することができる。したがって、形状保持部38は、把持本体28Aの外周面39の大きさや、掌部30の大きさに合わせ、リング体44~46を選択することにより、調整することができるので、汎用性を向上することができる。形状保持部38は、最も内側に配置されたリング体44の穴がガイド穴40であり、最も外側に配置されたリング体46の外側の円周面が保持面48である。
指部32は、形状保持部38に湾曲部49が形成されていることにより、掌部30が湾曲部49に接触しながら厚さ方向に変形するので、指部32が連続的、かつ、ゆるやかに変形する。したがって把持装置10は、柔らかくワークWを把持することができる。因みに形状保持部に湾曲部が形成されていない把持装置では、指部は座屈するように変形する。
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
上記実施形態では、産業用ロボット12として直交ロボットの例を示したが、本発明はこれに限らず、スカラロボット、垂直多関節ロボットなどに適用することができる。すなわち把持装置10は、産業用ロボットによってX軸、Y軸、Z軸を中心に回転しても、ワークWを把持すると共に、把持した状態を維持することができる。
把持本体28Aは、1種の材料で形成してもよいし、複数の異なる材料で形成された膜を積層して形成してもよい。また把持本体28Aは、部分的に異なる材料で形成してもよい。把持本体28Aの厚さは、一定でなくてもよく、部分的に厚肉部又は薄肉部を設けてもよい。
把持本体28Aと、弾性部34は、一体であってもよい。この場合、把持本体28Aと弾性部34は、一部又は全部が、同種の材料であってもよいし、異種材料であってもよい。
把持装置10は、指部32に爪部を設けることとしてもよい。爪部は、合成樹脂製の板状部材や、円錐状部材、サック状の部材を用いることができる。
上記実施形態の場合、形状保持部38は、同心円状に配置された複数のリング体44~46を有する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、1個のリング体であってもよい。1個のリング体の場合、リング体は気体の流通路を有しているのが好ましい。形状保持部38は、1個のリング体の場合、把持本体28Aと一体であってもよい。形状保持部38は、円筒状部材に限られず、ガイド穴40を有する多角柱でもよい。
ケース36には、ワークWを撮影するカメラ、把持したワークWの重量を測定する重量計、ワークWと把持本体との距離を測定する近接センサなどを設けてもよい。
上記実施形態の場合、形状保持部38は指部側先端43の外側の全周に湾曲部49が形成されている(図5)ので、湾曲部49と弾性部34の間における把持本体28Aの内面の間に空間41が生じる(図4)。図4に示す把持本体28Aは、把持本体28A内の圧力を減圧した場合、当該空間41に面した把持本体28Aが部分的に凹む。
図7を参照して上記空間41を埋めた把持装置50について説明する。上記第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。本図に示す把持装置50は、ケース51と、当該ケース51に装着された把持本体52と、把持本体52内に設けられた形状保持部56及び弾性部34とを備える。ケース51は、円柱状の部材であって、軸方向に貫通した流路55を有する。ケース51は、把持本体52の開口を塞ぐように、把持本体52内に挿入されている。流路55の一端は配管24が連結されており、他端は把持本体52内に配置されている。把持本体52は、外周面39においてバンド(図示しない)で締め付けることにより、ケース51に一体化される。ケース51は、外周面39に対応する位置に円筒状の保持面53を有する。
形状保持部56は、ガイド穴40及び湾曲部49を有する筒状部材であり、ケース51の先端と掌部30の間の空間に配置されている。図8に示すように、形状保持部56は、弾性部34に対応した位置に、指部32へ向かって突出した突起58を有する。本図に示す形状保持部56は、3本の指部32に合わせ、3個の突起58を有する。図9に示すように、形状保持部56は、外径Dと前記ガイド穴40内径dの比が1.0:0.93~1.0:0.5であるのが好ましい。例えば、形状保持部56の外径Dが80mmの場合、内径dが60~70mmの範囲であれば、指部32は掌部30の中心に向かってより確実に弾性変形する。
さらに平面視における弾性部34の基端の中心位置よりも半径方向の外側に、形状保持部56の指部側先端43が位置するのが好ましい。すなわち、弾性部34の半径方向の長さをLとした場合、当該弾性部34の内側からの距離TがL/2以上である位置で形状保持部56の指部側先端43が弾性部34の基端に接触するのが好ましい。形状保持部56の指部側先端43が、弾性部34の中心位置よりも半径方向の内側で弾性部34の基端に接触した場合(TがL/2より小さい場合)、指部32は、掌部30の中心に向かって弾性変形しにくくなる。
形状保持部56を把持本体52内に組み付けると、突起58の先端59が弾性部34に接触すると共に側面61が把持本体52の内面に密着して、弾性部34と把持本体52の内面の間の空間がなくなる。形状保持部56が上記空間を埋めることにより、減圧時における把持本体52の部分的な凹みを防止することができる。したがって把持本体52を備えた把持装置50は、より安定的に指部32を弾性変形させることができると共に、把持本体52の耐久性を向上することができる。なお形状保持部56が湾曲部49を有するので、把持装置50は上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
上記実施形態の場合、把持本体は、図2に示す指の長さを有する場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、図10A~Cに示す把持本体28B、28C、28Dのように、指部の長さは用途に合わせ適宜変えることができる。指部の長さに応じ、掌部の大きさも変えることができる。指部の数は、図11A~Cに示す把持本体60A、60B、60Cのように4本であってもよいし、図12A~Cに示す把持本体62A、62B、62Cのように3本でもよく、さらに5本以上(図示しない)でもよい。
上記実施形態の場合、形状保持部38は円筒状部材である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、平面視において長円形状、多角形や、楕円形などの枠状部材としてもよい。形状保持部は、把持本体の形状に合わせて、外形形状を適宜変更することができる。形状保持部のガイド穴は、円形状に限らず、多角形状であってもよい。形状保持部38は保持面48を有している場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、保持面48を省略してもよい。この場合、円柱状のケース51を用い、当該ケース51の外周面において保持面の機能を発揮させることができる。
図13に示す把持本体64は、掌部66を平面視において長方形状とした例である。上記第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。把持本体64は、長方形状の掌部66の周囲に突出して設けられた複数の指部32を有する。指部32は、掌部66の長辺に沿って2個を一組として、掌部66を挟んで両側に合計二組設けられている。本図の場合、二組の指部32同士は、互い違いに配置されている。なお、把持本体64の内部に設けられる形状保持部(図示しない)は、把持本体64の外形形状に合わせた長方形状の枠状部材である点が異なるのみで、上記実施形態と同様の構成であるので、説明を省略する。
把持本体64は、掌部66が厚さ方向へ変形するのに伴い、指部32の内面が掌部66の中心へ引っ張られる。そうすると指部32は、掌部66へ向かって倒れるように弾性変形する。この場合、指部32は、対向する長辺に向かって倒れるように弾性変形する。したがって当該把持本体64を備えた把持装置は、円筒形状や角柱形状など、長尺部材を容易に把持することができる。
次に、図14、図15を参照して、形状保持部の変形例について説明する。図14に示す形状保持部68は、変形した掌部(本図には図示しない)を受け入れるガイド穴69と、ガイド穴69の軸方向の指部側先端71の外側に湾曲部70とを有する円筒状部材である。本図に示す湾曲部70は、平坦な部分と外側に向かって凸形状に湾曲した部分とを有する。形状保持部68は、指部側先端71側に、ガイド穴69の内径が指部側先端71から基端73に向かって漸減した内周面72を有する。本図に示す内周面72は、指部側先端71から基端73に向かって先細となる円錐状であり、基端73側において筒状の穴74に接続されている。
把持本体28A内が減圧されることによって、掌部30は、ガイド穴69に吸い込まれるようにして、内周面72に沿って厚さ方向に変形する(図15)。内周面72が形状保持部68の指部側先端71から基端73に向かって先細となる円錐状であるから、上記実施形態(図6)に比べ、掌部30は緩やかに変形する。したがって、形状保持部68の指部側先端71から把持本体28Aに加わる力が分散し、把持本体28Aの負荷が軽減される。このように掌部30の厚さ方向への急激な変形を抑制することで、指部側先端71から把持本体28Aへの過剰な負荷が作用することを抑制する。したがって把持本体28Aの破損を防止し、把持本体28Aの耐久性を向上することができる。
上記実施形態の場合、弾性部34の基端の形状が平面形状の場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、弾性部34の基端の形状は、湾曲部49、70の湾曲に合わせた曲面形状とすることができる。この場合、弾性部34の基端と湾曲部49、70を面接触させることが好ましい。これにより、湾曲部49、70と弾性部34の間における把持本体の内面の間に空間が生じないので、減圧時における把持本体の部分的な凹みを防止することができる。この結果、より安定的に指部32を弾性変形させることができると共に、把持本体の耐久性を向上することができる。
10 把持装置
12 産業用ロボット
28A~D,60A~C,62A~C,64 把持本体
30,66 掌部
32 指部
34 弾性部
38,56,68 形状保持部
39 外周面
40,69 ガイド穴
49,70 湾曲部
72 内周面
12 産業用ロボット
28A~D,60A~C,62A~C,64 把持本体
30,66 掌部
32 指部
34 弾性部
38,56,68 形状保持部
39 外周面
40,69 ガイド穴
49,70 湾曲部
72 内周面
Claims (7)
- 掌部と、
前記掌部の周囲に突出して設けられ、前記掌部を厚さ方向に変形させることにより前記掌部に向かって倒れる複数の指部と
を有する袋状の把持本体と、
前記指部内に設けられ、前記指部の形を有する弾性部と、
前記把持本体内に設けられ、前記掌部の外周の収縮を防ぐ形状保持部と
を備え、
前記形状保持部は、枠状部材であって、変形した前記掌部を受け入れるガイド穴を有し、前記ガイド穴の軸方向の、前記指部側先端の外側に湾曲部が設けられている
ことを特徴とする把持装置。 - 前記弾性部は、前記指部と一体であることを特徴とする請求項1記載の把持装置。
- 前記形状保持部は、外径と前記ガイド穴の内径の比が1.0:0.93~1.0:0.5であることを特徴とする請求項1又は2記載の把持装置。
- 平面視における前記弾性部の中心位置よりも半径方向の外側に、前記形状保持部の先端が位置することを特徴とする請求項1又は2記載の把持装置。
- 前記形状保持部は、前記弾性部に対応した位置に、前記指部へ突出した突起を有することを特徴とする請求項1又は2記載の把持装置。
- 前記形状保持部は、前記ガイド穴の内径が前記指部側先端から基端に向かって漸減した内周面を有することを特徴とする請求項1又は2記載の把持装置。
- 請求項1又は2記載の把持装置を設けたことを特徴とする産業用ロボット。
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