以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
1.第1実施形態
(全体構成)
図1に、第1実施形態に係る把持装置10を適用した産業用ロボット12の構成を示す。産業用ロボット12は、直交ロボットであって、レール14と、レール14に沿って移動する移動体16と、移動体16に固定されたエアシリンダ18とを備える。移動体16は、図中XY軸方向に移動可能に設けられている。
エアシリンダ18は、シリンダーチューブ19と、シリンダーチューブ19に対し進退可能に設けられたピストンロッド20とを有する。シリンダーチューブ19には、エアシリンダ用配管21、22が設けられている。当該エアシリンダ用配管21、22を通じて気体が給排気されることにより、ピストンロッド20がシリンダーチューブ19に対し進退可能となっている。
ピストンロッド20の先端には、回転機構23を介して、把持装置10が取り付けられている。図1に示す回転機構23は把持装置10を回転させる機構の一例であり、適宜設計してよい。
回転機構23は、回転軸23aを有する。回転軸23aの軸方向は、本実施形態では図中Y軸方向である。回転軸23aは、連結ロッド24を介して、把持装置10と連結している。回転軸23aは、図示しないが例えば調整用ねじを有し、回転角θを調整した上で調整用ねじにより固定する。回転角θは、ピストンロッド20と連結ロッド24とのなす角である。本実施形態では、回転角θは、90°以上270°以下の範囲内である。本図の場合は、回転角θが100°である。
産業用ロボット12は、ベルトコンベア25のベルト表面25a上に載せられ搬送されるワークWを、把持装置10で把持すると共に、X軸、Y軸、及びZ軸方向に移動することができる。ベルトコンベア25は、ワークWの搬送路である。ワークWは、下面のうちのベルトコンベア25下流側の面と、ベルト表面25aの間に隙間Gが形成される物であることが好ましい。本図では、ワークWは、粉体や粒状物を内包する袋体を示している。
把持装置10は、連結ロッド24に連結されたケース30と、ケース30に固定された把持本体32とを備える。把持装置10においては、ケース30側が上側であり、把持本体32側が下側である。把持本体32は、掌部33と第1指部34と第2指部35を有し、これらが一体に形成されている。把持装置10の詳細は別の図面を用いて後述する。
ケース30には、把持本体32の内部と通じる配管26の一端が接続されている。配管26の他端は、図示しないが例えば切替弁を介して、加圧ポンプと三方弁に接続されている。三方弁は、真空ポート、給排気ポート、大気解放ポートを有し(いずれも図示なし)、真空ポートが真空ポンプに、給排気ポートが配管26に、大気解放ポートが外部に接続される。加圧ポンプ、真空ポンプ、三方弁、及び切替弁は、図示しないが例えばコントローラと電気的に接続しており、このコントローラにより制御される。
把持本体32は、ケース30の下方に設けられている。把持本体32は、気密性と弾性とを有する材料で形成されている。把持本体32は、復元力を有する材料で形成されることが好ましい。把持本体32の材料としては、例えば、弾性のある樹脂やゴムなどが用いられる。把持本体32の硬度は、用途に応じて適宜設計してよい。把持本体32の硬度は、日本工業規格JIS K6253に準拠し、タイプAデュロメーターで測定される。把持本体32の硬度は、60〜90程度であるのが好ましく、本実施形態では60である。
図2に示すように、把持本体32は、掌部33と、掌部33の周囲に突出して設けられた第1指部34を有する。掌部33は、円盤状に形成されており、中心部分の内面及び外面が平坦面である。第1指部34は、本実施形態では柱状である。第1指部34の外形形状は、適宜選択することができ、例えば、円柱、三角柱、四角柱、円錐、三角錐、四角錐、円錐台、四角錐台、板状などでもよい。第1指部34は、本実施形態では1つのみ設けられているが、2つ以上設けてもよい。第1指部34を2つ以上設ける場合は、各第1指部34の外径形状は、全て同一でもよいし、一部または全てが異なってもよい。
把持本体32は、掌部33を挟んで第1指部34に対向して設けられた第2指部35を更に有する。第2指部35は、薄い板状に形成されており、本実施形態ではへら状である。第2指部35は、先端側の幅が基端側の幅よりも広い。第2指部35は、先端側の厚みが基端側の厚みよりも小さい。本実施形態では、第2指部35は、先端側に向かうほど、幅が徐々に広くなっており、かつ、厚みが徐々に小さくなっている。第2指部35の先端は尖っていることが好ましい。
第2指部35には、把持本体32の内部と外部の間で気体が流通可能な気体流通部36が形成されている。気体流通部36は、第2指部35の表面に形成された吸気口36aを有する。本実施形態の場合、吸気口36aは、第2指部35のうちの掌部33に対向した内面に形成されている。吸気口36aは、第2指部35の先端側であり、かつ、第2指部35の幅方向の中央部に形成されている。吸気口36aの形状は、図2では四角形であるが、円形、楕円形、多角形など適宜選択することができる。吸気口36aの大きさや数は、ワークWの大きさなどに合わせて適宜設計してよい。
把持装置10について、図3を参照しながら具体的に説明する。把持本体32は、上側が開口した袋状をしており、この開口がケース30により塞がれている。ケース30と把持本体32の内面で囲まれた空間が内部空間44である。把持本体32の厚みは、本実施形態では1mmとしているが、適宜設計してよい。本実施形態では、第1指部34の長さは、第2指部35の長さよりも短い。
第1指部34及び第2指部35内には弾性部53,54がそれぞれ設けられている。弾性部53,54は、本実施形態では、第1指部34及び第2指部35のそれぞれに対し一体に形成されている。弾性部53の基端部53aは、例えば掌部33の内面と滑らかに接続するように湾曲している。弾性部54の基端部54aは、例えば基端部53aと同様の形状であり、掌部33の内面と滑らかに接続するように湾曲している。
気体流通部36は、吸気口36aと基端部54aの間に設けられた流路36bを有する。この流路36bにより、吸気口36aが弾性部54を介して内部空間44と通じる。流路36bの形状は、本実施形態では吸気口36aに合わせた四角形であるが、円形状、楕円形状、多角形状など適宜選択してよい。流路36bの大きさは、本実施形態では吸気口36aに合わせた大きさであるが、適宜設計してよい。
ケース30は、連結ロッド24に連結されている。図3に示すケース30は一例であり、適宜設計してよい。
ケース30は、ケース本体38と、支持体39とを有する。ケース本体38は、円盤状であって、配管26が接続される継手部42を有する。継手部42は、ケース本体38に形成された貫通穴(図示なし)に設けられる。
支持体39は、把持本体32を支持する支持部39aと、支持部39aの上端に設けられたフランジ部39bと、支持部39aの下端に設けられた円盤部39cとを有する。本実施形態では、支持体39は、支持部39aとフランジ部39bと円盤部39cが一体に形成されたものである。支持体39は、別体で作られた支持部39aとフランジ部39bと円盤部39cを、接着剤などを用いて接着することにより形成してもよい。支持体39は、減圧により変形しない程度の硬質な材料で形成される。支持体39の材料としては、例えば硬質な樹脂や金属などが用いられる。
支持部39aは、把持本体32内に収容され、外周面で把持本体32を支持する。支持部39aに対する把持本体32の取り付け方法としては、例えば、支持部39aの外周面の周方向全域に接着剤を塗布し、この接着剤を介して、把持本体32を支持部39aに接着させる方法が用いられる。これにより、把持本体32の支持部39aからの脱落と、支持部39aの外周面と把持本体32の内面の間での気体の流通とが防止される。支持部39aの外径を把持本体32の開口径よりも若干大きくし、把持本体32の弾性を利用して、支持部39aの外周面と把持本体32の内面が密着するように取り付けてもよい。支持部39aの形状は、本実施形態では円筒状であるが、これに限られず適宜設計してよい。上記把持本体32の弾性を利用した取り付け方法を用いる場合は、支持部39aが円筒状に形成されていることが好ましい。
フランジ部39bは、支持部39aの径方向の外側に向けて突出しており、図示しないパッキンを介してケース本体38の下面に、図示しない締結手段、例えばねじを用いて固定される。
円盤部39cの中央には開口部41が形成されている。開口部41は、支持部39aと把持本体32の間で気体を流通させるためのものである。開口部41を形成する位置は、円盤部39cの中央に限られず適宜設計してよい。
ケース30の下方には、掌部33の外周面46の形状を保持する形状保持部47と、第2指部35を伸びた状態で保持する指保持部51が設けられている。形状保持部47は、例えば円盤部39cに接着剤等で固定されている。なお、形状保持部47と円盤部39cは、一体の成型品でもよい。形状保持部47は、減圧により変形しない程度の硬質な材料で形成される。形状保持部47の材料としては、例えば硬質な樹脂や金属などが用いられる。形状保持部47の材料としては、必ずしも一種の材料である必要はなく、異種材料を組み合わせた複合材料でもよい。
形状保持部47は、上方に変形した掌部33を受け入れる円形状のガイド穴48と、ガイド穴48の軸方向の指部側先端の外側に湾曲部50とを有する枠状部材である。本実施形態の場合、形状保持部47は、掌部33の外周面46を保持する保持面49を更に有する円筒状部材である。ガイド穴48は、掌部33に対応した形状保持部47の中央に設けられる。このガイド穴48によって、掌部33の厚み方向(図3における上下方向)への変形が許容される。ガイド穴48の大きさは、適宜設計してよいが、掌部33と略同じ大きさであることが好ましい。保持面49は、形状保持部47の外側の円周面である。保持面49は、外周面46を保持できる大きさに形成される。この保持面49によって、掌部33の厚み方向と直交する方向への変形が規制されるので、掌部33の外周の収縮が防止される。保持面49の下端は、湾曲部50の上端と接続している。湾曲部50は、外側に向かって凸形状である。湾曲部50は、基端部53a,54aとの間に、隙間をあけた状態で設けられている。湾曲部50の先端、すなわち湾曲部50とガイド穴48が面で交差する形状保持部47の先端には、例えば面取り加工により曲面を形成してもよい。面取り加工は、形状保持部47の指部側先端を削り、角面や丸面とする加工が適用できる。形状保持部47は、面取り加工が施されていることにより、上記先端における欠けなどの破損を防止することができる。
指保持部51は、ガイド穴48内に配置されており、第2指部35に対応する掌部33の一部の変形を押さえる接触面52を有する。指保持部51は、接触面52と掌部33の内面の間に隙間をあけた状態で設けられている。本実施形態では、指保持部51は、円盤部39cに接着剤等で固定されている。指保持部51は、形状保持部47と略同じ高さを有しており、接触面52と湾曲部50が滑らかに接続している。接触面52は、第2指部35を伸びた状態で保持できる大きさに形成される。指保持部51は、減圧により変形しない程度の硬質な材料で形成される。指保持部51の材料としては、例えば硬質な樹脂や金属などが用いられる。指保持部51の材料としては、必ずしも一種の材料である必要はなく、異種材料を組み合わせた複合材料でもよい。
(動作及び効果)
上記のように構成された把持装置10が設けられた産業用ロボット12の動作及び効果について説明する。産業用ロボット12は、ピストンロッド20がシリンダーチューブ19内に退避し、エアシリンダ18が収縮した状態であり、かつ、把持本体32の掌部33が形成された面が鉛直下向き、すなわち回転角θが180°である状態を初期状態とする。初期状態では、切替弁は、配管26と三方弁が繋がった状態である。把持装置10は、三方弁を介して配管26が大気解放ポートに接続されており、内部空間44の圧力が大気圧である。
産業用ロボット12は、移動体16がレール14に沿って移動することで、ワークWの搬送路の上方に把持装置10を位置決めする。産業用ロボット12は、回転角θを例えば100°とすることにより、把持本体32の掌部33が形成された面を搬送路の上流側に向ける。第2指部35は、第1指部34よりも下方に位置している。次いで、産業用ロボット12は、シリンダーチューブ19からピストンロッド20が進出することにより、第2指部35の先端が隙間Gに挿入可能な位置まで、エアシリンダ18を伸長させる。
次いで三方弁は、大気解放ポートが遮断され、配管26が真空ポートと繋がった状態に切り替えられる。図4に示すように、配管26を介して内部空間44の気体が吸引される。これに伴い、吸気口36aの近傍の気体が気体流通部36を通って内部空間44へ流入し、配管26を介して排気される。産業用ロボット12は、内部空間44の気体を吸引し続けた状態で待機する。この待機状態では、把持装置10は、内部空間44の圧力が大気圧に維持される。
搬送路の上流から下流へ搬送されるワークWは、下流側で待機している把持装置10の第2指部35の先端と接触する。このとき、隙間Gに第2指部35の先端が入り込む。
図5に示すように、ワークWは、第2指部35に乗り上げ、吸気口36aに吸着される。これにより気体流通部36がワークWで塞がれる。ワークWは、吸着力によって第2指部35上からの落下が防止される。内部空間44は、気体流通部36がワークWで塞がれることにより、継手部42が設けられた貫通穴を除いて密閉される。よって、内部空間44は、配管26を介して真空吸引され、減圧される。
把持本体32は、形状保持部47により掌部33の外周面の形状が保持されている。このため、掌部33は、内部空間44の真空吸引によって、ガイド穴48に吸い込まれるように厚み方向へ変形する。第2指部35に対応する掌部33の一部は、接触面52と接触し、変形が押さえられる。この結果、第2指部35は、掌部33へ向かって倒れ込むことなく、伸びた状態に保持される。
図6に示すように、内部空間44の真空吸引が継続されることにより、第1指部34に対応する掌部33の一部は、厚み方向に更に変形する。第1指部34は、掌部33の中心へ引っ張られ、保持面49と湾曲部50の接続部分との接触部分を起点として、掌部33へ向かって倒れるように変形する。第1指部34が倒れることにより、湾曲部50と基端部53aが接触する。第1指部34は、湾曲部50と基端部53aが接触した後は、形状保持部47の先端と基端部53aとの接触部分を起点として、掌部33へ向かって倒れるように更に変形することができる。なお、本図では湾曲部50と基端部54aとが非接触であるが、掌部33の変形により第2指部35が掌部33の中心へ引っ張られ、湾曲部50と基端部54aとが接触してもよい。
第1指部34が倒れることにより、第1指部34とワークW表面が接触する。本実施形態の場合、把持装置10は、第1指部34がワークWの上面に接触し、第2指部35がワークWの下面に接触することにより、ワークWを挟むように把持する。
次いで、産業用ロボット12は、ピストンロッド20をシリンダーチューブ19内に退避させてエアシリンダ18を収縮し、移動体16の移動とレール14の移動により、ワークWを所定の移動先へ移動させる。
例えば、産業用ロボット12は、移動先としての基台(図示なし)の上方に把持装置10を位置決めする。産業用ロボット12は、シリンダーチューブ19からピストンロッド20が進出することにより、例えば第2指部35が基台に接触するまで、エアシリンダ18を伸長させる。次いで、切替弁は、配管26が加圧ポンプと繋がった状態に切り替えられる。配管26を介して内部空間44へ圧縮気体が流入し、内部空間44が加圧される。掌部33は、ガイド穴48から押し出され、元の状態に戻る。これにより、掌部33と接触面52が非接触となり、圧縮気体が内部空間44から気体流通部36へ流入し、吸気口36aにおけるワークWの吸着が解除される。掌部33が元の状態に戻るのに伴い、第1指部34が起き上がり、第1指部34とワークWが非接触となる。この結果、ワークWは、第2指部35上から基台へ滑り落ちる。内部空間44に流入した圧縮気体は吸気口36aから排気されるため、把持本体32の破裂が防止される。
以上のようにして、産業用ロボット12は、搬送路の上流側から搬送されるワークWを、下流側で待機している把持装置10によって把持し、所望の位置へ移動することができる。
上記のように、把持装置10は、真空吸引される内部空間44と気体流通部36が通じているので、気体流通部36が塞がれたときに内部空間44が減圧されて把持動作が開始される。したがって、把持装置10は、把持動作の開始に合わせて吸引を開始する制御が不要であるため、内部空間44を真空吸引するだけの簡単な制御で種々のワークを把持することができる。
把持装置10は、配管26を介して排気するだけでワークWを吸気口36aへ吸着させる吸着動作をすることができ、吸着をきっかけにして把持動作が行われる。したがって、把持装置10は、吸着動作と把持動作を行うための制御系を別々に設ける必要がなく、ワークWを検知するセンサを別途設ける必要がないため、構成を簡略化できる。また、把持装置10は、制御系を切り替える制御を行う必要がなく、更にはセンサに対する教示設定も把持動作に関する教示設定も必要ないため、制御を簡略化できる。
把持装置10は、第2指部35がへら形状であることにより、第2指部35上にワークWをより容易に乗せることができる。
把持装置10は、指保持部51によって第2指部35が伸びた状態に保持されているので、第2指部35上にワークWをより確実に乗せることができる。第2指部35は、第2指部35に対応する掌部33の一部の変形が接触面52で押さえられていることにより、伸びた状態が確実に保持される。
把持装置10は、指保持部51がガイド穴48に配置されていることにより、内部空間44が有効に利用されているためコンパクトである。特に、把持装置10は、一部の指部を動かすために従来の把持装置のように関節機構を設ける必要がなく、動かす指部自体がコンパクトであるため、小型化に適している。
把持装置10は、第1指部34の長さが第2指部35の長さよりも短いことにより、第1指部34と第2指部35の間にワークWをよりスムーズに受け入れることができる。
把持装置10は、第2指部35の先端側であり、かつ、第2指部35の幅方向の中央部に吸気口36aが形成されていることにより、ワークWをより確実に吸着することができる。
把持装置10は、弾性部53,54が第1指部34及び第2指部35と一体であることにより、第1指部34及び第2指部35内における弾性部53,54の移動が防止されるので、ワークWをより確実に把持することができる。更に、吸気口36aと流路36bの位置ずれが防止されるので、ワークWをより確実に吸着することができる。
把持装置10は、形状保持部47に湾曲部50が形成されていることにより、掌部33が湾曲部50に接触しながら厚み方向に変形するので、第1指部34が連続的、かつ、ゆるやかに変形する。したがって把持装置10は、柔らかくワークWを把持することができる。因みに形状保持部に湾曲部が形成されていない把持装置では、指部は座屈するように変形する。
2.第2実施形態
第2実施形態に係る把持装置について説明する。第2実施形態の場合は、吸気口の位置が第1実施形態に係る把持装置10とは異なる。上記第1実施形態と同様の構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
図7に示すように、第2実施形態に係る把持装置60は第2指部62を有する。第2指部62には気体流通部63が形成されている。この例では、気体流通部63の吸気口63aは、第2指部62のうちの掌部33に対向した内面とは反対側の外面に形成されている。本図の場合、吸気口63aは、第2指部62のほぼ中央部に形成されている。
第2指部62内には弾性部64が設けられている。本実施形態では、弾性部64は、第2指部62と一体に形成されている。弾性部64の基端部64aは、例えば掌部33の内面と滑らかに接続するように湾曲している。
気体流通部63は、吸気口63aと基端部64aの間に設けられた流路63bを有する。この流路63bにより、吸気口63aが弾性部64を介して内部空間44と通じる。
指保持部51は、ガイド穴48内の第2指部62に対応する位置に設けられており、接触面52によって、第2指部62に対応する掌部33の一部の変形を押さえる。
把持装置60は、上記第1実施形態の把持装置10の代わりに産業用ロボット12に適用することができ、レール14と移動体16とエアシリンダ18によって移動する。把持装置60の把持動作の一例について、図8〜図12を参照しながら説明する。
図8に示すように、把持装置60は、第2指部62が第1指部34よりも下方に位置した状態で載置台70の上方に配置される。載置台70は、ワークWを載置するためのものであり、例えば鉄板等で形成される。第2指部62の先端と載置台70の間には若干の隙間が設けられる。把持装置60は、配管26を介して内部空間44の気体を吸引し続けた状態に維持される。吸気口63aの近傍の気体は、気体流通部63を通って内部空間44へ流入し、配管26を介して排気される。これにより、把持装置60は、内部空間44の圧力が大気圧となる。
図9に示すように、把持装置60は、ワークWの上方へ移動し、ワークWを把持する把持位置に位置決めされる。把持位置は、例えば、ワークWの位置を図示しないセンサによって検知し、得られた検知信号に基づいて設定される。本図の場合は、第2指部62の先端がワークWの下方へ入り込み、ワークWが載置台70に対して傾いた状態とされている。
図10に示すように、把持装置60は、第2指部62を載置台70に押し付けるように下方へ移動する。第2指部62は、載置台70に押し付けられることによって、掌部33へ向かって折り曲げられ、かつ、保持面49と湾曲部50の接続部分との接触部分を起点として倒れるように変形する。第2指部62の変形により気体流通部63が塞がれる。この例では、気体流通部63のうち、弾性部64の基端部64a側が閉じられる。気体流通部63が塞がれることにより、内部空間44が密閉状態となる。密閉された内部空間44は、真空吸引によって減圧される。掌部33は、ガイド穴48に吸い込まれるように厚み方向へ変形する。掌部33のうちの第2指部62に対応する一部は、接触面52と接触し、変形が押さえられる。
図11に示すように、内部空間44の真空吸引が継続されることにより、掌部33のうちの第1指部34に対応する一部が厚み方向へ更に変形する。第1指部34は、掌部33の中心に引っ張られて倒れるように変形し、ワークWの上面に接触する。これにより、把持装置60は、第1指部34と第2指部62の間にワークWを挟むように把持する。
図12に示すように、把持装置60は、ワークWを把持した状態で上方へ移動する。第2指部62は、載置台70への押し付けが解除されることによって、折り曲げられた状態から伸びた状態へ戻る。このとき、内部空間44の真空吸引によって掌部33がガイド穴48に吸い込まれるように更に変形し、第1指部34がワークWを押さえながら掌部33へ向かって更に倒れるように変形する。このため、把持装置60は、第1指部34と第2指部62の間にワークWを把持した状態を維持することができる。
上記のように、把持装置60は、真空吸引される内部空間44と気体流通部63が通じており、第2指部62の変形によって気体流通部63が塞がれたときに把持動作が開始されるので、把持動作の開始に合わせて吸引を開始する制御が不要である。
把持装置60は、第2指部62の外面に吸気口63aが設けられているので、ワークWを吸引することなく把持することができる。したがって、把持装置60は、例えば吸気口63aよりも小さいワーク、脆く破損しやすいワーク、凹凸を有するワーク等の多種多様なワークを把持することができるため、汎用性に優れる。
把持装置60は、上記のように第2指部62の先端を載置台70へ押し付けるように動作することでワークWを把持することができる他、第2指部62の外面のうちの基端部64aに対応する部分を載置台70へ押し付けるように動作することでワークWを把持することもできる。また、把持装置60は、吸気口63aを載置台70で塞ぐように動作することでワークWを把持することもできる。
把持装置60は、ワークWの重みで気体流通部63が塞がれた場合にも把持動作を開始することができる。この場合は、第2指部62と弾性部64の材料として、ワークWの重みによって変形し、かつ、ワークWを把持することができる程度に硬質な材料を選択することが好ましい。
3.第3実施形態
第3実施形態に係る把持装置について説明する。第3実施形態の場合は、第2実施形態の場合と比べて、吸気口が第2指部の外面に形成されている点は同じであるが、第2指部の形状が異なる。
図13に示すように、第3実施形態に係る把持装置80は、柱状に形成された第2指部82を有する。第2指部82には気体流通部83が形成されている。この例では、気体流通部83の吸気口83aは、第2指部82のうちの掌部33に対向した内面とは反対側の外面に形成されている。本図の場合、吸気口83aは、第2指部82のほぼ中央部に形成されている。第2指部82の外形形状は、適宜選択することができ、例えば、円柱、三角柱、四角柱、円錐、三角錐、四角錐、円錐台、四角錐台、板状などでもよい。
第2指部82内には弾性部84が設けられている。本実施形態では、弾性部84は、第2指部82と一体に形成されている。弾性部84の基端部84aは、例えば掌部33の内面と滑らかに接続するように湾曲している。
気体流通部83は、吸気口83aと基端部84aの間に設けられた流路83bを有する。この流路83bにより、吸気口83aが弾性部84を介して内部空間44と通じる。
また、第3実施形態に係る把持装置80は、薄い板状に形成された第1指部92を有する。この例では、第1指部92は、へら状に形成されており、先端側の厚みが基端側の厚みよりも小さい。第1指部92の長さは、第2指部82の長さよりも長い。
第1指部92内には弾性部94が設けられている。本実施形態では、弾性部94は、第1指部92と一体に形成されている。弾性部94の基端部94aは、例えば掌部33の内面と滑らかに接続するように湾曲している。
指保持部51は、ガイド穴48内の第2指部82に対応する位置に設けられており、接触面52によって、第2指部82に対応する掌部33の一部の変形を押さえる。
把持装置80の把持動作の一例について説明する。この例では、把持装置80は、上記第2実施形態の把持装置60と同様の動作をする。すなわち、把持装置80は、第2指部82が第1指部92よりも下方に位置した状態で、ワーク(図示なし)が載置された載置台(図示なし)の上方に配置される。把持装置80は、配管26を介して内部空間44の気体を吸引し続けた状態に維持される。次に、把持装置80は、ワークの上方に移動した後、第2指部82を載置台に押し付けるように下方へ移動する。第2指部82は、載置台に押し付けられることによって、掌部33へ向かって折り曲げられ、かつ、保持面49と湾曲部50の接続部分との接触部分を起点として倒れるように変形する。第2指部82の変形により気体流通部83が塞がれる。内部空間44は、密閉状態となり、真空吸引によって減圧される。掌部33は、ガイド穴48に吸い込まれるように厚み方向に変形する。掌部33のうちの第2指部82に対応する一部は、接触面52と接触し、変形が押さえられる。
内部空間44の真空吸引が継続されていることにより、掌部33のうちの第1指部92に対応する一部が厚み方向へ更に変形する。第1指部92は、掌部33へ向かって倒れるように変形し、ワークの上面に接触する。これにより、把持装置80は、第1指部92と第2指部82の間にワークを挟むように把持する。
上記のように、把持装置80は、真空吸引される内部空間44と気体流通部83が通じており、第2指部82の変形によって気体流通部83が塞がれたときに把持動作が開始されるので、把持動作の開始に合わせて吸引を開始する制御が不要である。また、把持装置80は、第2指部82の外面に吸気口83aが設けられており、ワークを吸引することが無いので、多種多様なワークを把持することができる。更に、把持装置80は、第1指部92が第2指部82よりも長いので、把持動作によってワークを掌部33側へ引き寄せることができ、ワークをより確実に把持することができる。
4.第4実施形態
第4実施形態に係る把持装置について説明する。第4実施形態の場合は、第2指部の吸気口の位置が第3実施形態に係る把持装置80とは異なる。
図14に示すように、第4実施形態に係る把持装置100は第2指部102を有する。第2指部102には気体流通部103が形成されている。この例では、気体流通部103の吸気口103aは、第2指部102のうちの掌部33に対向した内面に形成されている。本図の場合、吸気口103aは、第2指部102の先端側に形成されている。第2指部102は、第1指部92よりも短い。換言すると、第1指部92の長さは、第2指部102の長さよりも長い。
第2指部102内には弾性部104が設けられている。本実施形態では、弾性部104は、第2指部102と一体に形成されている。弾性部104の基端部104aは、例えば掌部33の内面と滑らかに接続するように湾曲している。
気体流通部103は、吸気口103aと基端部104aの間に設けられた流路103bを有する。この流路103bにより、吸気口103aが弾性部104を介して内部空間44と通じる。
把持装置100の把持動作の一例について説明する。この例では、把持装置100は、上記第1実施形態の把持装置10と同様の動作をする。すなわち、把持装置100は、内部空間44の気体を吸引している状態で、ワーク(図示なし)を搬送する搬送路(図示なし)の下流側で待機する。この状態では、第2指部102は、第1指部92よりも下方に位置する。
搬送路の上流から下流へ搬送されるワークは、第2指部102の先端に接触し、第2指部102に乗り上げ、吸気口103aに吸着される。この結果、ワークによって気体流通部103が塞がれる。内部空間44は、密閉状態となり、真空吸引によって減圧される。掌部33は、ガイド穴48に吸い込まれるように厚み方向に変形する。掌部33のうちの第2指部102に対応する一部は、接触面52と接触し、変形が押さえられる。
内部空間44の真空吸引が継続されていることにより、掌部33のうちの第1指部92に対応する一部が厚み方向へ更に変形する。第1指部92は、掌部33へ向かって倒れるように変形し、ワークの上面に接触する。これにより、把持装置100は、第1指部92と第2指部102の間にワークを挟むように把持する。
上記のように、把持装置100は、真空吸引される内部空間44と気体流通部103が通じており、第2指部102の内面に吸気口103aが形成されているので、上記第1実施形態の把持装置10と同様の効果を得ることができる。また、把持装置100は、第1指部92が第2指部102よりも長いので、把持動作によってワークを掌部33側に引き寄せることができる。
(変形例)
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
吸気口36a,63a,83a,103aの位置は適宜変更することができる。例えば、吸気口36a,63a,83a,103aは、第2指部35,62,82,102のうち、基端側に形成してもよいし、幅方向の一側または他側に形成してもよい。
掌部33の大きさ、第1指部34,92の形状、数や長さ、第2指部35,62,82,102の形状、数や長さなどは、用途に合わせ適宜変えてもよい。例えば、第1実施形態の把持装置10において、掌部33の周囲に複数の第1指部34を設け、ワークWを包むように把持するようにしてもよい。
弾性部53,54,64,84,94,104は、第1指部34,92または第2指部35,62,82,102と一体に形成する場合に限らず、第1指部34,92または第2指部35,62,82,102とは別体に形成してもよい。この場合、弾性部53,54,64,84,94,104の形は、第1指部34,92または第2指部35,62,82,102内に挿入された状態で一定の形を保持できる形状であればよい。弾性部53,54,64,84,94,104は、第1指部34,92または第2指部35,62,82,102の内面との間に、隙間がないように配置されるのが好ましい。弾性部53,54,64,84,94,104の材料としては、例えば、弾性のある樹脂やゴムなどが用いられる。弾性部53,54,64,84,94,104の材質は、必ずしも均一である必要はなく、異種材料を組み合わせた複合材でもよい。弾性部53,54,64,84,94,104は、フィラーなどの添加物を含んでもよい。
把持本体32は、掌部33と第1指部34,92と第2指部35,62,82,102が一体に形成されている場合に限らず、それぞれ別体に形成してもよい。掌部33と第1指部34,92と第2指部35,62,82,102の材料は、同じ材料である場合に限らず、異なる材料でもよい。第1指部34,92及び第2指部35,62,82,102がワークWを把持可能な程度に硬質な材料で形成されている場合は、弾性部53,54,64,84,94,104を省略してもよい。
第2指部35,62,82,102の先端に爪部を設けてもよい。第2指部35,62,82,102に爪部を設けることにより、第2指部35,62,82,102上にワークWをより確実に乗せることができる。第2指部35,62,82,102に爪部を設けることに加えて、又は代えて、第1指部34,92の先端に爪部を設けてもよい。第1指部34,92に爪部を設けることにより、ワークWをより確実に把持することができる。
ケース30には、ワークWを撮影するカメラ、ワークWの重量を測定する重量計、ワークWと把持本体32の間の距離を測定する近接センサなどを設けてもよい。
形状保持部47は、同心円状に配置された複数のリング体により形成してもよい。複数のリング体のうち、最も内側に配置されたリング体の穴がガイド穴48である。最も内側に配置されたリング体の先端には曲面が形成されることが好ましく、他のリング体の先端にも曲面が形成されることがより好ましい。形状保持部47は、複数のリング体を適宜組み合わせることにより、ガイド穴48の大きさや、外形の大きさを変更することができる。したがって、リング体を適宜選択することにより、把持本体32の外周の大きさや掌部33の大きさを、目的とする大きさに調整することができる。形状保持部47は、円筒状部材に限らず、例えば、平面視において長円形状、多角形や、楕円形などの枠状部材としてもよい。形状保持部47の外形形状は、長円形、楕円形、多角形など適宜変更することができ、把持本体32の形状に合わせてもよい。ガイド穴48は、円形状に限らず、多角形状であってもよい。形状保持部47は、本実施形態では保持面49を有している場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、保持面49を省略してもよい。保持面49を省略する場合は、保持面49の代わりに掌部33の外周面46を保持する保持部材を別途用いることが好ましい。
上記各実施形態では、ワークWの吸着を解除するために内部空間44を加圧する例を示したが、本発明はこれに限らず、三方弁を切り替えて配管26と大気解放ポートが繋がった状態にすることで、配管26を介して内部空間44へ気体を流入させ、内部空間44を大気圧に戻してもよい。
ワークWは、袋体に限らず、食品、例えばハンバーガー、サンドイッチ、おにぎりなどでもよい。産業用ロボット12は、ベルトコンベア25により搬送されるワークWや載置台70に載置されたワークWを把持する場合に限らず、例えば、傾斜面を有する台から滑り落ちるワークW、薄型の運搬容器に収容されたワークWなどを把持するようにしてもよい。産業用ロボット12によりワークWを移動させる移動先は、基台の場合に限らず、紙袋、包装機、薄型の運搬容器などでもよい。
上記各実施形態では、産業用ロボット12として直交ロボットの例を示したが、本発明はこれに限らず、スカラロボット、垂直多関節ロボットなどに適用することができる。すなわち把持装置10は、産業用ロボットによってX軸、Y軸、Z軸を中心に回転しても、ワークWを把持すると共に、把持した状態を維持することができる。