以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではない。本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能であり、下記の実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。なお、本発明の各実施例では、誘導加熱調理器Z(図1参照)に相対した使用者の視線を基準として、図1等に示すように前後・上下・左右を定義する。尚、本発明の各実施例では、加熱調理器として、グリル庫を有するビルトインタイプの誘導加熱調理器を例にとって説明するが、本発明は据え置きタイプの誘導加熱調理器にも容易に適用できる。
本実施例の誘導加熱調理器Zは、金属製である被調理鍋(図示せず)の鍋底で渦電流が発生し、この渦電流によるジュール熱が被調理鍋そのものを発熱する装置である。図1は、誘導加熱調理器Zの斜視図、図2は図1の分解斜視図、図3は図1のA-A線で切断した側面断面図、図4は図1のB-B線で切断した正面断面図、図5は図1のC-C線で切断した正面断面図、図6は図1のD-D線で切断した基板カバー内のレイアウトである。
図2の分解斜視図に示すように、誘導加熱調理器Zは、主に、本体1と、トッププレート2と、加熱コイル3a、3b、3cと、基板台73a、73b上に載置した基板7a、7bと、基板7a、7bを覆うように設けた基板カバー6a、6bと、ファン装置9(冷却手段)とを備えている。このような構成の誘導加熱調理器Zにおいて、前記の渦電流は、加熱コイル3a、3b、3cに例えば20kHz~40kHz程度の高周波電流を流して磁束が時間的に変化することで発生する。
加熱コイル3a、3b、3cは、トッププレート2(プレート)の下方に設置され、その中心付近に鍋底の温度を検出する温度センサ34を設置している。トッププレート2の鍋載置部21には、温度センサ34の信号を送受信するための透過部26が設けられている。また、トッププレート2の操作部22の後側には、火力、メニュー、時間、温度等を表示する表示部P1の表示情報を透過する表示窓27が設けられている。トッププレート2は、透明のホウケイ酸ガラス等の非結晶化ガラスや結晶化ガラスで形成されており、ガラスの下面(裏面)側に耐熱インクによる印刷が施されている。ただし、透過部26及び表示窓27には、温度センサ34の信号を送受信するため、表示部P1の表示情報を透過させるため、印刷が施されていない。印刷はシルク印刷を用いると良い。また、加熱コイル3a、3b、3cは、ファン装置9の下流側に配置しており、ファン装置9から吹き出る冷却風が基板カバー6a、6bや蓋部6c下方の基板7a、7bを冷却した後、本体前側隅の吐出部60aを介して加熱コイル3a、3b、3cを冷却するようになっている。加熱コイル3a、3b、3cは、後述するインバータ回路の駆動によって高周波電流が流れるコイルであり、コイルベース31に載置されている。なお、本実施例では、平面視において右・左・中央奥に一つずつ加熱コイル3a、3b、3cを設けるようにした。コイルベース31は、3つの支持部32(例えば、バネ)で支持され、この支持部32によって上向きの付勢力が与えられている。これによって、加熱コイルはトッププレート2の下面に押し付けられ、被調理鍋と加熱コイル3a、3b、3cとの距離が一定に保たれる。
本体1の正面左側のグリル庫5には、前後にスライドして被調理物(図示せず)を設置するための投入口(図示せず)を設けている。また、本体1の正面右側には、主にグリル庫5内の加熱具合を調整するための操作パネルP2を設けている。トッププレート2は、被調理鍋が載置される板状ガラス(図示せず)と、板状ガラスの四辺を保持する枠部(図示せず)で構成され、本体1の上から設置している。トッププレート2は、三つの加熱コイル3a、3b、3cの設置位置に対応した三口の鍋載置部21と、被調理鍋の火加減を調整するための操作部22と、通気口H2とを有している。なお、通気口H2は、ファン装置9から吹き出る空気を排出するための複数の孔であり、トッププレート2の後方(右側・左側)に設けている。
本体1は、誘導加熱調理器Zを設置する空間(所定の左右幅・前後幅・高さ)に対応して外郭を有する筐体であり、上方が開放された本体開口部を有する箱状(凹状)に形成されている。この本体1の左下側にグリル庫5を設けるとともに、グリル庫5を覆う仕切板1bに基板台73a、73bを載置し、この上に基板7a、7b、および、ファン装置9を構成する下側のケーシング90b、インペラ91を平面状に配置する。また、図3に示すように、ファン装置9の流出部である吐出口95は、基板7a、7b面を含む高さに配置している。
ここでファン装置9は、インペラ91と、インペラ91を上下に挟んで設けたケーシング90a、90bと、ケーシング90aを貫通してインペラ91に連結するモータ92で構成した遠心ファンである。つまり、インペラ91は、モータ92を設けたケーシング90aと、吸気口9aを設けたケーシング90bで周囲を囲まれた空間に収納され、ケーシング90a、90bに接触しないように、モータ92の回転軸92aで回転可能に支持している。よって、ファン装置9はインペラ91の回転軸92aを本体1の上下方向に有し、下方から吸気し、側方の吐出口95から二方向に空気を吹き出す。また、図3に示すように、ケーシング90bの吸気口9aはベルマウス状となっている。つまり、ファン装置9を基板7a、7bの上流側に配置し、モータ92を駆動することで吸気口9aから空気を取り込み、吐出口95から二方向に分流し、基板7a、7bのヒートシンク8a、8bに向かって冷却風を供給するようになっている。
また、図2等に示すように、基板7a、7bはそれぞれ基板カバー6a、6bと蓋部6cで覆われており、基板カバー6a、6bに並んでファン装置9を構成する上側のケーシング90aを配置している。また、これらの上方に加熱コイル3a、3b、3cや表示部P1等を設置し、さらに上から蓋をするようにトッププレート2を設けている。
ここで、基板7a、7b上の電子部品71は、加熱コイル3a、3bに高周波電流を供給したり、ファン装置9を駆動したりするために用いられる集積回路、インバータ回路、コンデンサ、抵抗器等である。基板台73a、73bは、基板7a、7bを固定するための絶縁部材(樹脂部材)であり、本体1の内壁や仕切板1bに固定される。
基板7aの左側(本体中央側)には中継コネクタ77を設けており、加熱コイル3a、3b、3cに設置した温度センサ34の信号線を接続している。また、基板カバー6a、6bの間の、基板カバーによって覆われていない領域には、着脱可能な蓋部6cを嵌め込んでいる。従って、中継コネクタ77の上方を覆う蓋部6cを取り外すことで、温度センサの信号線を中継コネクタ77から容易に取り外すことができる。また、中継コネクタ77と蓋部6cの空間は、ファン装置9から左側の基板7bに向かう風路となっている。本実施例の構成によれば、ファン装置9から左側の基板7bに向かう風路を広い断面積の風路とすることができるため、左側の基板7bのヒートシンク8bに向けて、小さい通風抵抗で効率良く冷却風を供給する流れを構成することができる。
中継コネクタ77は、各加熱コイル3a、3b、3cに対し、略最短距離となる右側の基板7a上、つまり本体上面視において、加熱コイル3a、3b、3cの間隙に位置しているため、メンテナンス時には、加熱コイル3a、3b、3cを大きく移動させずとも、蓋部6cの取付けや取外しが容易に行えるとともに、温度センサ34の信号線の中継コネクタ77からの取外し等も容易に行うことができる。
また、中継コネクタ77から各加熱コイル3a、3b、3cに設けた温度センサ34の信号線の長さを余分に取る必要が無い為、配線を容易に整理でき、例えば風路の通風抵抗を抑制でき、あるいは基板7a、7b上の電磁ノイズを招き難いなど、信頼性の高い部品実装が可能となる。
なお、蓋部6cが本体上面視において、加熱コイル3a、3b、3cの間隙に位置しておけば、基板カバー6a、6bにネジで固定した場合であっても、蓋部6cの着脱の手間がかからない。
図3は、図1に示すA-A線で切断した側面断面図であり、主に右側の加熱コイル3aとファン装置9の位置関係を示すものである。本体1の背面側にはそれぞれ、ファン装置9の駆動によって外部から空気を取り込むための吸気開口部H1を設けている。また、ファン装置9から本体1内に吹き出る空気は、トッププレート2の後方に設けた通気口H2から排出される。なお、本体1の後方の他に、例えば正面下側にも吸気開口部を設ければ、比較的低温の空気を本体1内に取り込み易くなる。また、左側に位置するグリル庫5から遠い背面側に吸気開口部H1を設けることで(図2参照)、吸気開口部H1を介して取り込む温度が高い空気を吸い込み難くできる。また、本実施例の誘導加熱調理器Zでは、ファン装置9の下側、つまりグリル庫5の右側に空洞部(チャンバ部F0)を設けている。吸気開口部H1とファン装置9の間に設けたチャンバ部F0は、吸気開口部H1より流入した空気の風速分布を緩和させ、吸気口9aのベルマウスに沿って乱れの少ない気流を供給する。
したがって、吸気口9a下流のインペラ91での流れの剥離などが抑制でき、インペラ91が高効率で送風できる。よって、ファン装置9は低騒音かつ大風量で回転駆動でき、運転音の小さい誘導加熱調理器となる。つまり、ファン装置9を誘導加熱調理器Zに組み込んだ際、インペラ91の所定の圧力上昇を確保できるので、必要以上に回転数を上昇させなくてよく、低騒音で運転可能である。
また、ファン装置9の下側ケーシング90bは、基板台73aを載置する仕切板1b(図2参照)より下方に突出しており、大口径且つ羽根厚さの大きいインペラが収納し易い構成となっている。
誘導加熱調理におけるファン装置9は、本体1内の通風抵抗(例えば100から200Pa)に対して、十分な裕度のある圧力-風量の送風特性であるほど、低速回転で冷却に必要な風量(例えば1.0から1.5m3/min)を得るので、基板7a、7bや加熱コイル3a、3b、3cを効率よく冷却できるとともに、使用時の運転音を抑えた低騒音化が容易となる。また、吸気開口部H1から通気口H2までの通風抵抗が小さければ、ファン装置9の回転数を抑えても冷却に必要な風量を流せるため、より騒音を低くできる。
ファン装置9から吹き出た空気は、基板台73aと基板カバー6aの間隙に設置した基板7a上を流れ(F1)、その下流の基板カバー6a上に設置した加熱コイル3aに向かって基板カバー6aとトッププレート2の間隙を流れる(F2)。本実施例では基板カバー6aの前側に、加熱コイル3aに向かって側方から空気を供給する吐出部60a(図2参照)を設けている。吐出部60aの開口部は、加熱コイル3aの側面を向いており、上方から平面視しても開口面は見えない。これは、万一トッププレートの亀裂部から液体が侵入しても、吐出部60aの開口部から、基板カバー内に液体を浸入させないために有効である。
また、ファン装置9の吐出口95は、インペラ91に連通する吸気口9aが基板台73aより下方となるように構成したため、基板カバー6aに向かって斜め上向きに空気が吹き出る。本構成は、基板カバー6aを介して基板7aと加熱コイル3aを近接して設けたことにより生じる、基板カバー6aの温度上昇を抑制するものである。調理中の加熱コイル3aは200℃近い温度まで上昇するため、基板カバー6aが加熱コイル3aの放射熱で温度上昇する。よって、基板カバー6aに向かう吐出口95を構成させ、主流が基板カバー6a側に偏流することで、放射熱による熱変形を抑制している。
グリル庫5より上方に基板7a(7b)を設けた本実施例では、基板をグリル庫の側方に設けた構成に比べ、加熱コイル3a(3b、3c)と基板7a(7b)の距離も近づくので、加熱コイルの温度上昇の影響を受け易くなるが、本構成のように、ファン装置9の送風による流れの主流を基板カバー6a(6b)に傾けることで、基板カバー6aを介して基板7aに伝熱する熱を防止でき、効率よく本体1内の部品全体を冷却できる。
ここで、加熱コイル3aを冷却し、基板カバー6aとトッププレート2の間隙を流れる空気(F2)は、本体1後方の通気口H2に向かって排出する。通気口H2は、金属板に複数の小径孔を設けた排気カバー25で覆われており、トッププレート上でふきこぼれ等が生じた際に流れ込む液体(図示せず)が直に入り難くなっている。なお、排気カバー25は着脱可能であり、汚れた際に取り外して洗浄できる。また、排気カバー25を通過した液体は、排気カバー25の下方に設けた水受部94により、小径孔を通過して落下した液滴を広い面で受けて緩衝させ、ファン装置9側に流れ込まないようにしている。水受部94とモータ92の間には、格子状の仕切り94aが設けられ、本体1内部への液体侵入を抑制している。
さらに、本実施例の構成では、通気口H2近傍にファン装置9を配置したことにより、右側の通気口H2から、基板7aまでの距離を長くでき、基板の充電部に液体が浸入し難い構造となっている。よって、通気口H2に対して、基板7aへの液体浸入の可能性を極めて低くでき、本実施例が故障の起き難い、安全性の高い構造となる。なお、左側の通気口H2においては、図2に示すように、仕切板1b後方に水受部1aを設けており、排気カバー25を通過した液滴は、グリル庫5の後方まで落下するため、基板カバー6b側に入り難い構成となっている。
図4は図1に示すB-B線、図5は図1に示すC-C線で切断した正面断面図であり、各加熱コイル3a、3b、3cに対し基板7a、7bとの位置関係を示すものである。まずグリル庫5内の加熱室50は、例えば、魚焼きなどの調理物を配置する空間であり、熱源である電熱ヒータ(上ヒータ51、下ヒータ52)と、魚等を載置する焼網54と、この焼網54の下方に配置した受け皿53と、を有している。前記したように、加熱室50を平面視において本体1内の左領域に配置しており、内部の受け皿53などが本体1に対して前後方向でスライド可能になっている。
なお、加熱室50の熱源は電熱ヒータに限らず、マイクロ波、水蒸気、又はこれらの組合せで食品を熱するようにしてもよい。また、温度調節器を備えてオーブン加熱するようにしてもよい。本実施例では、本体幅の1/2以上のグリル庫5を備えた誘導加熱調理器Zを示した。
前述したように、電子部品71が実装される基板7a、7bと、基板カバー6a、6b内の風路を介して空気を通流させるファン装置9は、トッププレート2の通気口H2近傍に配置している。このため、加熱コイル3cの正面断面を示した図4、および加熱コイル3a、3bの正面断面を示した図5では、本体1内の右領域が空間(チャンバ部F0)となっている。また、図5に示すように、本実施例では右側の加熱コイル3aの下方に基板7a、左側の加熱コイル3bの下方に基板7bが分割して配置しており、基板7aに右側の加熱コイル3aに給電するインバータ回路を、基板7bに左側の加熱コイル3bと奥側の加熱コイル3cに給電するインバータ回路を実装している。基板7a、7bはそれぞれ基板台73aと基板カバー6a、基板台73bと基板カバー6bを上下に組み合わせた空間に配置しており、その空間内が空気の風路(F1)となる。本実施例の誘導加熱調理器Zでは、故障などによる部品交換の際、インバータ基板毎に行えるように複数毎の基板を平面状に並べた構成となっており、部品交換を効率良く行うことができるため、サービス作業性を良好にしている。
図6は図1に示すD-D線で切断した基板カバー内の基板とファン装置のレイアウトであり、ファン装置9より供給する空気の流れと基板7a、7bの関係を示したものである。図6に示すように、ファン装置9のケーシング90aの吐出口95の下流側には、基板7aのヒートシンク8a、中継コネクタ77、基板7bのヒートシンク8bがそれぞれファン装置9に近い位置に配置している。ヒートシンク8a、8bは、発熱性の高い電子部品である高発熱素子72から吸熱し、ファン装置9を介して流入する空気に対して放熱する放熱器である。ヒートシンク8a、8bはそれぞれ、所定の表面積を有するフィン(図示せず)を有しており、基板7a、7bに設置している。ファン装置9の吐出口95は、ヒートシンク8a、8bに臨んで二箇所に分流し、モータ92の駆動に伴って所定流量の空気をヒートシンク8a、8bに導く。ヒートシンク8a、8bには、インバータ回路を構成する高発熱素子72を設置するため、ファン装置9に近い最上流側に配置することで高い冷却性能を得る。なお、ファン装置9から通気口H2まで、ヒートシンク8aに流れる空気の風路に比べ、ヒートシンク8bを流れる空気の風路が長くなる。
本実施例では、基板カバー6a、6bの上壁面にそれぞれ下方(基板側)に延びるリブ66a、66b、66cを設け(図6参照)、ヒートシンク8a、8bの夫々に向かう二つの風路を構成している。したがって、ヒートシンク8aへの風路は、風路上面となる基板カバー6a、風路側面となる基板カバー6aから下方に延びるリブ66aとリブ66b、風路下面となる基板7aにより通風ダクト65aが構成される。一方、ヒートシンク8bへの風路は、風路上面となる基板カバー6bと蓋部6c、風路側面となる基板カバー6bから下方に延びるリブ66cとリブ66b、風路下面となる基板7aと基板7bによる通風ダクト65bを構成する。つまり、通気口H2までの風路が長い通風ダクト65bの風路断面積を通風ダクト65aより大きく構成し、全体の通風抵抗を低減しファン装置9への負荷を低減することで、運転騒音を抑制させている。
ヒートシンク8a、8bは、ファン装置9に近い上流側に設置している。つまり、吐出口95を介して流入した空気によって、発熱量が最も大きい高発熱素子72が最初に冷却するようにヒートシンク8a、8bを配置している。このように、吐出口95の近傍にヒートシンク8a、8bを配置し、リブ66a、66b、66cにより流れを集中することで、高発熱素子72を効果的に冷却できる。なお、基板カバー6a、6bに設けるリブは他の電子部品71への風量分配などを考慮し適宜設ければよい。また、リブの高さも風量分配の状況に応じて適宜決めればよく、さらに基板カバーの内側でなく、加熱コイル側の上壁面側に設けてコイル冷却風路としても差し支えない。また、リブ形状でなく、部品の外形に応じて基板カバーの上壁面に凹凸を設けた構成であってもよい。
次に、図7を用いて、本実施例の誘導加熱調理器Zで用いられる電流共振インバータの回路図を説明する。ここでは図6に示す高発熱素子72により、電流共振インバータのハーフブリッジ回路を構成した例を示しており、図7(a)は左側の加熱コイル3bと、奥側の加熱コイル3c用のハーフブリッジ回路図、図7(b)は右側の加熱コイル3a用のハーフブリッジ回路図である。
誘導加熱調理器で一般的に用いる回路として、電流共振インバータのハーフブリッジ回路があり、例えば図7(b)のように、二つのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)72aとDB(Diode Bridge)72xで構成される。また、図7(a)に示すように、本実施例では加熱コイル3b、3cに給電するインバータのDBを共用した構成となっている。DBの共用は、一枚の基板7b上でDBを挟んで二つのハーフブリッジ回路を配置するように構成し、さらに図7に示すように、高発熱素子72を本体前後方向にそれぞれ整列したレイアウトにし、冷却風路として用いている。
図8はトッププレート2を透過してファン装置9から通気口H2までの本体1内の流れを示した上面図である。図8に示すように、ファン装置9から吐出した空気は、本体1の左右中央付近の通風ダクト65a、65bを後方から前方に向かって流れる(図6参照)。そして、通風ダクト65aを通過した空気の主流は本体右側に曲がり、基板カバー6a内の基板7a上の電子部品71(図示せず)を冷却するとともに、その下流の加熱コイル3aに流れる(冷却する)。
また、通風ダクト65bを通過した空気は、主流が本体左側に曲げられ基板カバー6b内の基板7b上の電子部品71(図示せず)を冷却するとともに、その下流の加熱コイル3bを冷却する。つまり、ファン装置9の冷却風は、基板カバー6a、6b内で主流が本体左右に分岐して流れる。この結果、流れが交差することなく効率よく下流の通気口H2まで導かれ易くなっている。また、本構成では冷却風路が、基板カバー6a、6b内(F1)と、トッププレート2下方(F2)の二層で構成されるので、ファン装置9から出た主流が壁面に衝突して流れ方向を変える部位が少なくなり、通風抵抗を抑えた構造が実現できる。
上述した誘導加熱調理器Zは、システムキッチン10にビルトインされて使用される。図9はシステムキッチンにビルトインされた誘導加熱調理器の斜視図である。誘導加熱調理器Zはシステムキッチンにビルトインされた状態において、操作パネルP2及びグリル庫5のドアがシステムキッチン10の前側開口部を塞ぐように配置され、トッププレート2がシステムキッチンのカウンタートップの開口部を塞ぐように配置されている。
本実施例の誘導加熱調理器Zは、ガラス製のトッププレート2に、操作部22、表示窓27、鍋載置部21、通気口H2を備えていることを一つの特徴としている。加えて、鍋載置部21には、温度センサ34の信号を送受信するための透過部26を備えている。操作部22と通気口H2は鍋載置部21を挟んで対向するように配置されている。すなわち、通気口H2は加熱コイル3a,3b,3cよりも後方側に配置され、操作部22は加熱コイル3a,3b,3cよりも前方側に配置されている。誘導加熱調理器Zのトッププレート2は、鍋載置部21を含め、平坦状に形成されているので、清掃性が良く、意匠性に優れている。
本実施例の誘導加熱調理器Zは通気口H2もガラス製のトッププレート2に形成されているので、より清掃性が良い。さらには、トッププレート2には、操作部22、表示窓27を備えられているので、操作性に優れている。
調理後、トッププレート2の清掃を行う場合には、布巾等を横方向に動かしながら、前側から後側に向かって行うと良い。操作部22、表示窓27の付近は操作者の指紋等が付着し、鍋載置部21の付近は飛び散った油が付着し、通気口H2付近は、飛び散った油に加え、グリル庫5で調理され煙に含まれた油等が付着する。すなわち、前側から後側に向かうに従い、汚れの度合いが大きい。そのため、調理後は汚れ度合いが小さい、前側から後側に向かって拭き掃除を行うと良い。本実施例にように、通気口H2をトッププレート2に設けるものとして、特許文献1、特開2007-134070号公報があるが、トッププレート2に操作部22、表示窓27を備えるものではない。上述したように本実施例においては、ガラス製のトッププレート2に、操作部22、表示窓27、鍋載置部21、通気口H2を備えているので、操作性、清掃性、意匠性に優れているものである。
誘導加熱調理器Zをシステムキッチンへ取り付けるにあたっては、加熱調理器本体の手前側が下になるように傾斜させ、カウンタートップ11に形成された上面開口から挿入し、システムキッチン10の前側に形成された前面開口に、加熱調理器本体の前面を合わせ、その後、加熱調理器本体の後方をカウンタートップ11に載置する。誘導加熱調理器Zは、加熱調理器本体にトッププレート2が固定された状態でシステムキッチン10に取付を行う。作業者はトッププレート2を把持しながら行うが、加熱調理器本体の前面を合わせた後、誤って加熱調理器本体を落した場合、カウンタートップ11とトッププレート2の後部が衝突し、トッププレート2の後部には強い衝撃が加わる。トッププレート2の後部には、トッププレート2の一部を切欠いて形成した通気口H2があるので、カウンタートップとトッププレート2の後部が衝突した場合、トッププレート2が衝撃により破損する恐れがある。また、誘導加熱調理器Zをシステムキッチン10に取付けた後、トッププレート2の後部に何らかの物体が落下し、強い衝撃を受けた場合、トッププレートが衝撃により破損する恐れがある。これを解決するための手段について、図10から図15を用いて説明する。
図10は、実施例に係る誘導加熱調理器からトッププレート、フレーム、補強板を分解した斜視図である。図10において、トッププレート2の通気口H2には、排気サッシ23が設けられている。トッププレート2と加熱コイル3a,3b,3cとの間には、補強板40が設けられている。トッププレート2の周縁には、フレーム80が設けられている。
図11を用いて補強板40の構成について説明する。図11は、実施例に係る補強板の上面図である。トッププレート2の下面は平坦に形成されている。補強板40は鋼板からなり、外郭を矩形状に形成され、トッププレート2の下面を接するプレート取付部41を形成している。プレート取付部41とトッププレート2とは、シリコンにて接着固定される。補強板40には、補強板40を貫通した開口部42が形成されており、この開口部42は、加熱コイル3a,3b,3cに対応した大開口部42aと、通気口H2に対応した通気開口42bとにより形成されている。通気開口42bは中央部を境として、左右に分かれ2つ形成されている。また、補強板40の前後左右には、補強のため、下方に向かって凹んだリブ43を備えている。補強板40の前側には、操作部22の基板を保持する基板保持部44を備えている。本実施例においては、12個の基板保持部44を備えている。補強板40はネジにより、本体1に固定される。本実施例においては、トッププレート2を補強支持する補強板40に加え、フレーム80を備えている。
図12から図15を用いて、フレーム80の構成について説明する。図12は図1のE-E線で切断した斜視断面図、図13は図12のG部拡大図、図14は図13をH方向から見た断面図、図15は図1のF-F線で切断した側面断面図である。
図12から図15に示すように、フレーム80は、トッププレート2の周囲を覆うように配置されている。フレーム80に覆われるトッププレート2の端面2aは、上下方向中央部が外周側に突出するよう上下方向の断面がR状の曲面に形成されている。
図14に示すように、フレーム80の上端部80aは、トッププレート2のR形状に沿うように形成されている。すなわち、フレーム80の上端部80aは、トッププレート2の上下方向中央部の位置までは、下方に向かうに従い外方を向くように傾斜している。フレーム80の上端部80aより下方の部分は、垂直方向に下方に延びており、補強板40のリブ43の下面の位置においてトッププレート2の内側に向かって折り曲げられ、リブ43の下面と接合されている。
また、フレーム80の上端部80aの高さ方向における先端位置t1は、トッププレート2の上面位置t2よりも低い位置にある(t1<t2)。これにより、トッププレート2の上面を布巾等で拭き掃除をした際、布巾等がフレーム80に引っ掛かるのを抑制することができる。
本実施例のトッププレート2は、2つの部材である補強板40とフレーム80とにより保護されている。そして、本実施例によれば、トッププレート2は、下面が補強板40に支持され、周囲がフレーム80にて覆われているので、ガラス製のトッププレート2の強度を向上することができ、衝撃によるトッププレート2の破損を抑制することができる。また、衝撃によりトッププレート2が破損したとしても、破損したガラス片が周囲に飛び散ることがなく、安全性を確保することができる。
次に、排気サッシ23と排気カバー25について説明する。本実施例では、トッププレート2に通気口H2を形成している。この通気口H2には、通気口H2の開口縁を覆うように排気サッシ23が設けられている。図14に示すように、通気口H2の左右方向に位置する排気サッシ23は、通気口H2の左右開口縁2bを跨ぐように配置された平端部23aと、平端部23aの内側端部から下方に延びた左右板部23bと、平端部23aの外側端部から上方に立ち上がった堰部23cとを備えている。堰部23cの外周側は、上方から下方外周側に向かって傾斜した傾斜部23c1を備えている。堰部23cはトッププレート2の上面に位置している。
傾斜部23c1の下方には接着剤28が配置されており、接着剤28によって排気サッシ23とトッププレート2が接合されている。これにより、排気サッシ23とトッププレート2との間に僅かに生じる可能性が有る隙間から水等が本体内に流入するのを防ぐことができる。
排気カバー25は、排気サッシ23に載置する。堰部23cによって、排気カバー25の左右方向の位置決めを行う。排気サッシ23に形成した平端部23aは、排気カバー25の載置部としての機能を備えている。本実施例によれば、排気カバー25は平端部23aに載置されているだけであるので、誘導加熱調理器Zから排気カバー25を容易に着脱することができる。
通気口H2の開口縁を覆うように排気サッシ23は、図15に示すように本体1の前後方向にも設けられている。通気口H2の前後方向に位置する排気サッシ23は、通気口H2の前後開口縁2cに沿って前後開口縁2cの内側を覆うように配置された前後板部23dと、通気口H2の前後開口縁2cの上方を跨ぐように配置された上リップ部23eと、前後開口縁2cの下方を跨ぐように配置された下リップ部23fと、上リップ部23eよりも上方に突出した上方突出部23gとを備えている。
排気カバー25の前後方向の位置決めは、上方突出部23gによって行う。
なお、上リップ部23eとトッププレート2とが接触する面に接着剤28を配置してもよい。これにより、排気サッシ23とトッププレート2との間に僅かに生じる可能性が有る隙間を塞ぐことができ、水等が本体内に流入するのを防ぐことができる。
本実施例では、トッププレート2の上面に、通気口H2の左右開口縁2b及び前後開口縁2cを覆うように上リップ部23eを設けるようにしているので、トッププレート2に零れた水等が通気口H2から、誘導加熱調理器Z内に浸入するのを抑制することができ、水等から誘導加熱調理器Z内にある電気部品を保護することができる。また、通気口H2の左右開口縁2b及び前後開口縁2cを覆うように上リップ部23eを設けたことで、衝撃によりトッププレート2が破損したとしても、排気サッシ23が破損したガラス片をつなぎ合わせる役割を果たすことで、ガラス片が周囲に飛び散るのを防ぐことができる。
トッププレート2の通気口H2は、ウォータジェット加工により、トッププレート2を切断して形成される。切断後の通気口H2における左右開口縁2b及び前後開口縁2cには、ガラス繊維のバリが発生する。
本実施例においては、通気口H2に排気サッシ23を配置して、左右開口縁2b及び前後開口縁2cを平端部23a,左右板部23b、上リップ部23e,前後板部23dで覆うようにしているので、使用者が通気口H2における左右開口縁2b及び前後開口縁2cに触れるのを抑制することができ、安全性が向上する。なお、より安全性を高めるため、左右開口縁2b及び前後開口縁2cには、ヤスリ等で面取り処理をするのが好ましい。
また、排気サッシ23には、トッププレート2の上下を挟むように上リップ部23e及び下リップ部23fが配置されている。排気サッシ23は耐熱樹脂で形成され、左右板部23bを内側に撓ませることにより、通気口H2から排気サッシ23を容易に着脱することができる。また、排気サッシ23の上リップ部23eと下リップ部23fの間にトッププレート2が挟まって固定されることから、トッププレート2と上リップ部23eとの密着性が高くなる。これにより、排気サッシ23とトッププレート2との間に僅かに生じる可能性が有る隙間から水等が本体内に流入するのを防ぐことができる。
なお、下リップ部23fの前後方向の長さは、上リップ部23eの前後方向の長さより短く形成されている。このため、トッププレート2と下リップ部23fを容易に係合し易い。
なお、排気サッシ23とトッププレート2との間から水等が流入する可能性を低減させることを優先して、排気サッシ2の上リップ部23eと下リップ部23fの間にトッププレート2を挟むことによる固定方法と、接着剤28による接着を組合せてもよい。
図16は、図1のF-F線で切断した側面断面図の別の例である。図16の排気サッシ23は図15の排気サッシ23と比べて、下リップ部23fが無い点が異なる。図16の排気カバー25は図15の排気カバー25と比べて、上リップ部23eの側面を覆うような形状となっている。
図17は、トッププレートと排気サッシとの間に汚れが入り込んでしまった場合を示す従来図である。
通気口H2周辺において、補強板40に部材110が被着されている。そして、部材110とトッププレート2の間には隙間が生じている。よって、鍋から吹き零れた煮汁などがこの隙間に溜まることで、汚れ100が溜まってしまうことになる。この汚れ100が多く溜まってしまうと、人の眼101から見えてしまい、清潔感が失われる。また、汚れ100が少量だとしても、透明なトッププレート2の場合はトッププレート2を介して汚れ100が眼101から見えてしまうことから、同様に清潔感が失われる。
仮に、この隙間に嵌まるような排気カバーを被せたとしても、トッププレート2を介して汚れ100が見えてしまうことに変わりはない。
図18は、トッププレート2と排気サッシ23との間に汚れが入り込んでしまった場合を示す、図15の一部を拡大した図である。
万が一トッププレート2と排気サッシ23の間に汚れ100が入り込んでしまった場合を考える。排気サッシ23は透明ではないことから、上リップ部23eも透明ではない。上リップ部23eが汚れ100を覆っていることから、眼101から汚れ100が見えるのを防ぐことができる。
図19は、トッププレート2と排気サッシ23との間に汚れが入り込んでしまった場合を示す、図16の一部を拡大した図である。
図18と異なり、排気カバー25は上リップ部23eの側面を覆うような形状となっている。ここで排気カバー25は金属製であることから、不透明の部材である。ここで、万が一トッププレート2と排気サッシ23の間に汚れ100が入り込んでしまった場合を考える。排気カバー25が上リップ部23eを覆っていることから、図18の場合よりもさらに眼101から汚れ100が見えるのを防ぐことができる。これにより、使用者から見て綺麗なトッププレート2を維持できる。
図20は、排気サッシ23の斜視図である。図10に記載の通り、トッププレート2の後方には2つの通気口H2が設けられている。しかし、2つの通気口H2に1つずつ排気サッシを設けるのではなく、2つの通気口H2を跨ぐ1つの排気サッシ23を設けている。2つの通気口H2に1つずつ排気サッシを配置すると、左の2つの排気サッシの間にできた隙間に汚れが溜まってしまう。よって、お手入れの手間が増えることになる。一方、1つの排気サッシ23とすることで、お手入れし易くなる。 図21は、排気サッシ23を拡大した斜視図である。通気口H2に対応する排気サッシ23の2つの開口32の間には、突出部29が設けられている。排気カバー25は、図10に記載の通り、1つの開口32に対して1つ設けられている。堰部23cおよび突出部29によって、排気カバー25の左右方向の位置決めを行う。
なお、本発明の排気カバー25はアルミの押し出し成形にて製造される。よって、排気カバー25を箱型のような形状にし、排気サッシ23に引っ掛けることで左右方向の位置決めをすることは困難である。一方、本発明は排気サッシ23に排気カバー25を載せるだけで位置決めができることから、排気カバー25の形状を複雑にする必要がない。よって、アルミの押し出し成形にて製造した排気カバー25を用いることができる。また、お掃除の際に排気カバー25を容易に外すことができる。
なお、本発明は、上述した実施例に限定するものではなく、様々な変形例が含まれる。上述した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。