本発明に係る集電リードを備えている二次電池として、FAサイズの円筒形のニッケル水素二次電池(以下、電池という)1を例に、図面を参照して、以下に説明する。
電池1は、上端が開口した有底円筒形状をなす外装缶2を備え、外装缶2は導電性を有し、その底壁は負極端子として機能する。外装缶2の中には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)とともに電極群4が収容されている。
図1に示すように、外装缶2の開口3は封口体14によって閉塞されている。封口体14は、導電性を有する円板形状の蓋板16、蓋板16上に配設された弁体20及び同じく蓋板16上に配設された正極端子22を含んでいる。
蓋板16の外周部には、この蓋板16を囲むようにリング形状の絶縁ガスケット18が配置され、絶縁ガスケット18及び蓋板16は外装缶2の開口縁17をかしめ加工することにより外装缶2の開口縁17に固定されている。即ち、蓋板16及び絶縁ガスケット18は互いに協働して外装缶2の開口3を封止している。
ここで、蓋板16は、中央に排気孔19を有し、そして、蓋板16の外面16aの上には、排気孔19を閉塞するようにゴム製の弁体20が配置されている。
更に、蓋板16の外面16aの上には弁体20を覆うように正極端子22が電気的に接続されている。
この正極端子22は、円筒状の周壁24と、この周壁24の一方端に位置付けられた開口25と、この開口25の周縁に設けられたフランジ26と、開口25の反対側の他方端に位置付けられた端壁27と、を有している。この正極端子22は弁体20を蓋板16に向けて押圧している。また、この正極端子22は、周壁24にガス抜き孔23を有している。
通常時、排気孔19は弁体20によって気密に閉じられている。一方、外装缶2の内部にガスが発生し、ガスの圧力が高まれば、弁体20はガスの圧力によって圧縮され、排気孔19が開かれる。その結果、外装缶2内から排気孔19及び正極端子22のガス抜き孔23を介して外部にガスが放出される。つまり、排気孔19、弁体20及び正極端子22のガス抜き孔23は電池1のための安全弁を形成している。
電極群4は、それぞれ帯状の正極6、負極8及びセパレータ10を含み、これらは正極6と負極8との間にセパレータ10が挟み込まれた状態で渦巻状に巻回されている。即ち、セパレータ10を介して正極6及び負極8が互いに重ね合わされている。このような電極群4は、全体としては円柱形状をなしている。
この電極群4においては、一方の端面から正極6の端縁部が渦巻状に露出しており、他方の端面から負極8の端縁部が渦巻状に露出している。ここで、露出している正極6の端縁部を正極接続端縁部32とし、露出している負極8の端縁部を負極接続端縁部(図示せず)とする。これら露出している正極接続端縁部32及び負極接続端縁部には、後述する正極集電体28及び負極集電体(図示せず)がそれぞれ溶接される。
負極8は、帯状をなす導電性の負極芯体を有し、この負極芯体に負極合剤が保持されている。
負極芯体は、帯状の金属材であり、その厚さ方向に貫通する貫通孔(図示せず)が多数設けられている。このような負極芯体としては、例えば、パンチングメタルシートを用いることができる。
負極合剤は、負極芯体の貫通孔内に充填されるばかりでなく、負極芯体の両面上にも層状にして保持されている。
負極合剤は、水素吸蔵合金の粒子、導電材、結着剤等を含む。ここで、水素吸蔵合金は、負極活物質である水素を吸蔵及び放出することが可能な合金であり、ニッケル水素二次電池に一般的に用いられている水素吸蔵合金が好適に用いられる。上記した結着剤は水素吸蔵合金の粒子及び導電材を互いに結着させるとともに負極合剤を負極芯体に結着させる働きをする。ここで、導電材としては、ニッケル水素二次電池に一般的に用いられているものが好適に用いられる。また、結着剤としては、ニッケル水素二次電池の負極に一般的に用いられているものであれば特に限定されないが、例えば、樹脂系材料が用いられ、具体的には、親水性若しくは疎水性のポリマー、カルボキシメチルセルロースなどの樹脂系材料を用いることができる。
負極8は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、水素吸蔵合金粒子の集合体である水素吸蔵合金粉末、導電材、結着剤及び水を混練して負極合剤のペーストを調製する。得られた負極合剤のペーストは負極芯体に塗着され、乾燥させられる。乾燥後、水素吸蔵合金粒子等を含む負極合剤が付着した負極芯体にはロール圧延及び裁断が施される。これにより、負極の中間製品が得られる。この負極の中間製品は、全体として長方形状をなしている。そして、この負極の中間製品における負極接続端縁部となるべき所定の端縁部については、負極合剤の除去が行われる。これにより、所定の端縁部は、負極芯体がむき出しの状態とされた負極接続端縁部となる。このようにして、負極接続端縁部を有する負極8が得られる。ここで、負極合剤の除去方法としては、特に限定はされないが、例えば、超音波振動を与えることにより除去することが好適に行われる。なお、負極接続端縁部以外の領域には、負極合剤が保持されたままの状態である。
次に、正極6について説明する。
正極6は、導電性の正極基材と、この正極基材に保持された正極合剤とを含む。詳しくは、正極基材は、多数の空孔を有する多孔質構造をなしており、正極合剤は、前記した空孔内及び正極基材の表面に保持されている。
正極基材としては、例えば、発泡ニッケルを用いることができる。
正極合剤は、正極活物質粒子としての水酸化ニッケル粒子、導電材としてのコバルト化合物、結着剤等を含んでいる。上記した結着剤は、水酸化ニッケル粒子及び導電材を互いに結着させるとともに水酸化ニッケル粒子及び導電材を正極基材に結着させる働きをする。ここで、結着剤としては、ニッケル水素二次電池の正極に一般的に用いられているものであれば特に限定されないが、例えば、樹脂系の材料を用いることができ、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ディスパージョン、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)ディスパージョンなどの樹脂系材料を用いることができる。
正極6は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、正極活物質粒子(水酸化ニッケル粒子)の集合体である正極活物質粉末、導電材、水及び結着剤を含む正極合剤スラリーを調製する。得られた正極合剤スラリーは、例えば、発泡ニッケルに充填され、乾燥させられる。その後、水酸化ニッケル粒子等が充填された発泡ニッケルには、ロール圧延及び裁断が施される。これにより、正極の中間製品が得られる。この正極の中間製品は、全体として長方形状をなしている。そして、この正極の中間製品における正極接続端縁部32となるべき所定の端縁部については、正極合剤の除去が行われ、正極基材がむき出しの状態とされる。次いで、正極合剤が除去された端縁部は、正極の中間製品の厚さ方向に圧縮加工され正極接続端縁部32となる。このように圧縮加工されることにより、正極基材は、稠密な状態となるので、この正極接続端縁部32は溶接がし易い状態となる。また、正極接続端縁部32にNiめっき鋼の薄板を接合することにより、正極接続端縁部32を更に溶接し易くする場合もある。このようにして、正極接続端縁部32を有する正極6が得られる。ここで、正極合剤の除去方法としては、特に限定はされないが、例えば、超音波振動を与えることにより除去する方法が好適に用いられる。なお、正極接続端縁部32以外の領域には、正極合剤が充填されたままの状態である。
次に、セパレータ10としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの、あるいは、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したものを用いることができる。
以上のようにして製造された正極6及び負極8は、上記したセパレータ10を介在させた状態で、渦巻き状に巻回され、これにより電極群4が形成される。詳しくは、巻回の際、正極6及び負極8は、互いに、電極群4の軸線方向に沿う方向に僅かにずれた状態となるように配置されるとともに、これら正極6及び負極8の間には、所定サイズのセパレータ10が所定位置に配置され、この状態で巻回作業が行われる。その結果、円柱形状の電極群4が得られる。得られた電極群4の態様としては、電極群4の一端側においては、正極6の正極接続端縁部32が、セパレータ10を介して隣り合っている負極8よりも突出した状態となっており、電極群4の他端側においては、負極8の負極接続端縁部が、セパレータ10を介して隣り合っている正極6よりも突出した状態となっている。
なお、電極群4は、上記した正極6、負極8及びセパレータ10が、所定の外径寸法を有する巻芯により巻回されて形成され、巻回作業後は、この巻芯が抜き取られるので、電極群4の中央部には、この中央部を貫く中心貫通孔9が形成されている。
以上より、電極群4は、全体として中心貫通孔9を有する円柱形状をなしている。そして、電極群4においては、当該電極群4の円柱形状における一方の端部を形成する正極接続端縁部32に正極集電体28が接続され、当該電極群4の円柱形状における他方の端部を形成する負極接続端縁部に負極集電体が接続される。
上記した負極集電体については、特に限定されるものではなく、例えば、従来から用いられている円板形状の金属板を用いることが好ましい。準備した負極集電体は、電極群4の他端側の負極接続端縁部に溶接される。
次に、正極集電体28について説明する。
正極集電体28は、導電性材料で形成された板状体であり、平面視形状は特に限定されるものではなく、円板形状、多角形状等任意の形状のものを採用することができる。また、正極集電体28の大きさは、電極群4の外径寸法よりも小さく、且つ、電極群4の一端側から突出している正極6の正極接続端縁部32をカバーできる大きさに設定される。
本実施形態においては、図2に示すように、平面視形状が十角形状の板材が用いられる。詳しくは、正極集電体28は、全体として十角形状のNiめっき鋼製の薄板であり、中央に円形の集電体中央貫通孔29と、この集電体中央貫通孔29を囲むように放射状に延びる6個のスリット30とを含んでいる。スリット30は、打ち抜き加工で形成し、スリット30のエッジの部分に下方(電極群4側)へ延びる突起(バリ)を生じさせることが好ましい。更に、集電体中央貫通孔29の周囲の所定位置には、パンチプレス加工により、電極群4側とは反対側に突出する集電体突起部31を設けることが好ましい。この集電体突起部31の個数は特に限定されないが、例えば、図2に示すように4個設けることが好ましい。
電池1においては、図1に示すように、正極集電体28と封口体14との間に集電リード34が介在し、この集電リード34が、電極群4の正極6に接続されている正極集電体28と、正極端子22を有する封口体14とを電気的に接続する。
集電リード34は、図1から明らかなように、封口体14の蓋板16に接続されている頂壁50と、正極集電体28に接続されている底壁36と、頂壁50の両側の端縁46、48及び底壁36の両側の端縁38、40の間にそれぞれ存在する一対の側壁42、44とを有している。
この集電リード34について、図3、4を参照して詳しく説明する。なお、図3においては、頂壁50が上側に、底壁36が下側になる状態で示しており、図4においては、底壁36が上側に、頂壁50が下側になる状態で示している。
頂壁50は、図3から明らかなように、底壁36と対向する位置に位置付けられており、全体として長方形状をなしている。詳しくは、頂壁50は、その短辺方向の中央において長辺方向に沿って延びるスリット53により分割されている。つまり、頂壁50は、分割された一方の第1半体部52と、分割された他方の第2半体部54とを含んでいる。
これら第1半体部52及び第2半体部54は、詳しくは、底壁36と対向する対向部52c、54cと、この対向部52c、54cから頂壁50の長手方向に延びる延出部52a、52b、54a、54bとを有している。
第1半体部52の対向部52cにおける中央には、上記したスリット53に臨む半円形の第1半円切欠55が設けられている。また、第2半体部54の対向部54cにおける中央には、上記したスリット53に臨む半円形の第2半円切欠57が設けられている。これら第1半円切欠55及び第2半円切欠57は、互いに対向する位置に位置付けられており、全体として、ほぼ円形の頂壁貫通孔59を形成している。この頂壁貫通孔59は、集電リード34が封口体14に接合された際に、蓋板16の排気孔19と重なる。
延出部52a、52b、54a、54bには、封口体14の側に向かって突出したリード突起部58が設けられている。このリード突起部58は、抵抗溶接を行う際に、溶接電流を集中させる部分として利用される。つまり、抵抗溶接では、集電リード34を封口体14に向けて加圧し、リード突起部58が蓋板16に押し付けられるような状態で電流を流す。この場合、リード突起部58と、蓋板16における当接箇所との間で大電流が集中して流れることにより、この部分が発熱し、溶融する。これにより、集電リード34と封口体14との溶接が行われる。
このリード突起部58は、例えば、パンチプレス加工により形成される。なお、図4における参照符号60は、延出部52a、52b、54a、54bにリード突起部58を設ける際にリード突起部58の裏側に生じた凹部を示す。
これら延出部52a、52b、54a、54bは、底壁36と対向する対向部52c、54cから外側に延びており、底壁36と重なることを避けている。このため、集電リード34を封口体14に抵抗溶接する際に、底壁36と干渉することなく抵抗溶接機の電極棒を延出部52a、52b、54a、54bに当接させることができる。また、延出部52a、52b、54a、54bが、底壁36と対向する対向部52c、54cから外側に延びていることで、集電リード34が封口体14に接合された際に集電リード34の安定性を高める働きをする。
側壁42、44は、図3、4に示すように、頂壁50の両側の端縁46、48から底壁36の両側の端縁38、40へ延びている。側壁42、44の平面視形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、矩形状、台形状等任意の形状を採用することができる。
底壁36は、図4に示すように、平面視形状が全体として正方形状をなしている。そして、底壁36の中央部分には、輪郭がU字型の底壁貫通孔47が設けられており、この底壁貫通孔47の開口縁45の一部45aに連なり、集電リード34の内側、すなわち、頂壁50が位置する側へ斜めに延びる傾斜板49が設けられている。
傾斜板49の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、U字型の輪郭を有する形状とすることが好ましい。
また、図5に示すように、底壁36に対する傾斜板49のなす角度αは、30度以上、60度以下とすることが好ましく、より好ましくは45度である。傾斜板49は、電極群4の中心貫通孔9内に生じた溶融物の破片が、中心貫通孔9内から飛び出した際に、蓋板16の排気孔19に向かうことを避けるために、溶融物の破片が移動する方向を変える働きをする。ここで、底壁36に対する傾斜板49のなす角度αが、60度を超えると、溶融物の破片が移動する方向を十分に変えることができず、溶融物の破片が蓋板16の排気孔19の部分に到達する量が増える。このため、底壁36に対する傾斜板49のなす角度αは、なるべく低い角度とすることが好ましいが、あまり低くなり過ぎると電極群4への電解液の行き渡りが滞り易くなる。ここで、底壁36に対する傾斜板49のなす角度αが30度以上であれば、溶融物の破片の移動方向を蓋板16の排気孔19に向かう方向とは異なる方向に変えることができるとともに、電極群4への電解液の行き渡りが滞ることも避けることができる。よって、底壁36に対する傾斜板49のなす角度αは30度以上とすることが好ましい。
なお、図4中において、参照符号56で示された仮想円は、抵抗溶接が行われた場合に溶接部となる溶接予定箇所を示している。本実施形態では、底壁36における溶接予定箇所(底壁溶接予定部)56は、4箇所であり、底壁貫通孔47の部分を囲むように、底壁36における4つのコーナー部付近にそれぞれ位置付けられる。
上記した集電リード34は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、金属製の薄板を加工することにより、図6に示すような、平面視形状がほぼH形の薄板で形成された集電リード34の中間製品62を準備する。この中間製品62において、両側部に位置付けられた長尺部分が、第1半体部52となる第1半体部予定領域70及び第2半体部54となる第2半体部予定領域72である。第1半体部予定領域70及び第2半体部予定領域72の内側に連なる領域は、側壁42、44となる側壁予定領域74、76である。そして、側壁予定領域74と側壁予定領域76との間に挟まれた領域が、底壁36となる底壁予定領域78である。
この中間製品62においては、パンチプレス加工により、第1半体部予定領域70及び第2半体部予定領域72のそれぞれの両端部における所定位置にリード突起部58が設けられている。このリード突起部58の部分は、抵抗溶接により溶融し、溶接部となる。
また、中間製品62においては、打ち抜き加工により、第1半体部予定領域70及び第2半体部予定領域72の側縁の中央に第1半円切欠55及び第2半円切欠57が設けられている。
更に、中間製品62においては、底壁予定領域78の中央にU字型の切れ込み51が設けられている。
底壁予定領域78における切れ込み51の周りには、正極集電体28の集電体突起部31と当接し、抵抗溶接により溶接部が形成される予定の底壁溶接予定部56が4箇所想定され、この底壁溶接予定部56は仮想円で表されている。
上記した切れ込み51で囲まれた部分は、底壁予定領域78に対して所定角度をなすように折曲げ加工が施されることにより、傾斜板49とされる。
上記したようなプレス加工及び打ち抜き加工を施すことによって得られた中間製品62においては、第1半体部予定領域70と側壁予定領域76との間に想定される折曲げ仮想線80、側壁予定領域76と底壁予定領域78との間に想定される折曲げ仮想線82、底壁予定領域78と側壁予定領域74との間に想定される折曲げ仮想線84、側壁予定領域74と第2半体部予定領域72との間に想定される折曲げ仮想線86の部分を折り曲げることにより、図3、4に示すような集電リード34を形成する。なお、側壁予定領域74、76については、湾曲形状に加工することが好ましい。
なお、集電リード34を形成するにあたり、スリット53は、必ずしも形成する必要はなく、第1半体部52と、第2半体部54とを連結した形状としても構わない。
次に、電池1の組み立て手順の一例について説明する。
まず、上記したような電極群4を準備する。そして、電極群4の他方端側に負極集電体を接合した後、当該電極群4を外装缶の中に収容する。そして、外装缶の底壁に負極集電体を抵抗溶接する。
次いで、電極群4の一方端側に正極集電体28を載置し、電極群4における正極接続端縁部32と正極集電体28とが抵抗溶接される。このとき、正極集電体28のスリット30のバリと正極接続端縁部32とが接触する部分に電流が集中して溶接部が形成され、正極6の正極接続端縁部32と正極集電体28とが溶接される。
次いで、外装缶2内にアルカリ電解液を所定量注入する。外装缶2内に注入されたアルカリ電解液は、電極群4に保持され、その大部分はセパレータ10に保持される。このアルカリ電解液は、正極6と負極8との間での充放電の際の電気化学反応(充放電反応)を進行させる。このアルカリ電解液としては、KOH、NaOH及びLiOHのうちの少なくとも一種を溶質として含む水溶液を用いることが好ましい。
一方、別工程において、封口体14の蓋板16の内面16bと集電リード34の頂壁50とを抵抗溶接し、封口体14と集電リード34との複合体を形成しておく。詳しくは、集電リード34の頂壁50としての第1半体部52及び第2半体部54におけるリード突起部58と封口体14の蓋板16の内面16bとが接触する部分に電流が集中して溶接部が形成され、これにより封口体14と集電リード34とが溶接された複合体が得られる。
次いで、上記した複合体を正極集電体28の上部へ載置する。このとき、集電リード34の底壁36における底壁溶接予定部56と、正極集電体28の集電体突起部31とが接触するように、正極集電体28のスリット30を基準にして複合体は位置合わせされる。また、封口体14の蓋板16の外周縁には、絶縁ガスケット18が配設されており、蓋板16は、この絶縁ガスケット18を介して、外装缶2の上端開口部に位置付けられる。
その後、電池1の正極端子22と負極端子との間に加圧しながら電流を流し、抵抗溶接(プロジェクション溶接)を行う。このとき、正極集電体28の集電体突起部31と集電リード34の底壁36における底壁溶接予定部56とが接触する部分に電流が集中して溶接部が形成され、正極集電体28と集電リード34の底壁36とが溶接される。
上記のような溶接が完了した後、外装缶2の開口縁17をかしめ加工することにより、外装缶2の開口3を封止する。このようにして、電池1が形成される。
ここで、得られた電池1が、過充電等されてしまった場合、外部短絡されてしまった場合、あるいは誤って火中に投下されてしまった場合などには、電池1内にガスが異常発生するとともに電池1が高温になってしまう。すると、電極群4に含まれる樹脂成分が溶融して溶融物が生じることがある。この溶融物は、主に電極群4の中心貫通孔9内で生じる。また、このような状況の電池においては、安全弁の作動にともない排気孔19が開きかけることにより、高圧状態の電池の内部から、電池の内部よりも低圧である電池の外部へのガスの流れが生じる。溶融物は、そのガスの流れに乗り、中心貫通孔9内を移動し、中心貫通孔9から飛び出して、蓋板16の排気孔19に向かう。そうすると、溶融物は、排気孔19の部分に付着し、排気孔19を塞いでしまい、安全弁を作動できなくしてしまうおそれがある。しかし、上記のような本発明に係る電池1は、傾斜板49を有する集電リード34を備えており、この傾斜板49は、電極群4の中心貫通孔9の開口の上方にて、中心貫通孔9が延びる方向に対し斜めに配設されていることから、上記した溶融物の破片が移動する方向を変え、当該破片が排気孔19の部分に到達することを抑制する。よって、溶融物が排気孔19を塞ぐことを防止することができる。その結果、安全弁が動作不能になることは避けられ、電池1の安全性の向上を図ることができる。
なお、樹脂材料の溶融物の破片が蓋板16の排気孔19の部分に到達することをより確実に抑制するためには、排気孔19の開口縁から電極群4の中心貫通孔9の方向に向かって延びる円筒を仮想し、この仮想された円筒に対し、傾斜板49が斜めに交差する態様とすることが好ましい。この態様では、蓋板16の排気孔19と電極群4の中心貫通孔9との間に傾斜板49が斜めに介在するので、電極群4の中心貫通孔9の側から蓋板16の方向を見た場合に、排気孔19が傾斜板49に完全に隠れた状態となる。この態様とした場合、電極群4の中心貫通孔9から飛び出した溶融物の破片のうち排気孔19に向かう進路をとる溶融物の破片は、確実に傾斜板49に当たり、進路を変えられ、蓋板16の排気孔19に向かうことは防止される。その結果、溶融物の破片が蓋板16の排気孔19を塞ぐことは、より確実に抑制されるので、電池の安全性はより向上する。
以上のように、本発明によれば、従来よりも安全性が高い二次電池を得ることができる集電リード及びこの集電リードを備えている二次電池を提供することができるといえる。
ここで、近年、各種機器の小型化が進んでおり、小型の機器についても高率での充放電が要求されている。このような状況にともない、小型の機器に使用される、FA形、AA形やAAA形といった小型の電池についてもより高率での充放電が要求されている。
これら小型の電池においては、D形やC形といった、外径が19mm以上の大型の電池の場合に比べ、構成部品をより小型化しなければならない。構成部品の小型化にともない、蓋板の排気孔の径もより小さくなり、溶融物によって排気孔がより閉塞され易くなっている。排気孔が閉塞されると、安全弁が正常に作動しなくなるので、電池の破裂がより発生し易くなっている。
このような状況に対し、本発明は、溶融物が生じても、当該溶融物が排気孔に到達することを抑制し、それにより安全弁が動作不能になることを防止することができるので、特に、高率での充放電特性に優れる小型の電池、具体的には、直径19mm未満の電池の破裂を抑えることに有効である。
[実施例]
1.電池の製造
実施例1
(1)正極集電体の製造
まず、いわゆるSPCC(冷間圧延鋼板)に相当する鋼の薄板に厚さが2μmのNiめっきが施されたNiめっき鋼板を準備した。このNiめっき鋼板の厚さは0.40mmである。そして、このNiめっき鋼板に打ち抜き加工及びパンチプレス加工を施すことにより、図2に示すような、全体として十角形状をなしており、中央に穿設された集電体中央貫通孔29と、集電体中央貫通孔29を囲むように放射状に延びる6個のスリット30と、4個の集電体突起部31とを含んでいるFAサイズ用の正極集電体28を製造した。ここで、正極集電体の外接円の直径は15.0mmであり、集電体中央貫通孔29の直径は3mmである。
(2)集電リードの製造
次に、いわゆるSPCC(冷間圧延鋼板)に相当する鋼の薄板に厚さが2μmのNiめっきが施されたNiめっき鋼板を準備した。このNiめっき鋼板の厚さは0.30mmである。そして、このNiめっき鋼板に打ち抜き加工及びパンチプレス加工を施すことにより、図6に示すような、ほぼH形の集電リードの中間製品62を製造した。この中間製品62においては、その中央にU字型の切れ込み51が設けられており、両側の第1半体部予定領域70及び第2半体部予定領域72の所定位置に第1半円切欠55及び第2半円切欠57が穿設されている。また、第1半体部予定領域70及び第2半体部予定領域72の所定位置には、リード突起部58が形成されている。
ここで、図6を参照し、中間製品62の各部の寸法を以下に記載する。
側壁最大幅W1は8.0mmであり、U字型の切れ込み51の矢印Yで示す方向の長さW2は3.5mmであり、側壁長さL1は3.5mmであり、U字型の切れ込み51の矢印Xで示す方向の長さL2は3.0mmである。そして、底壁予定領域78の矢印Xで示す方向の長さL3が6.5mmであり、第1半体部予定領域70及び第2半体部予定領域72における矢印Xで示す方向の長さL4が2.5mmであり、底壁予定領域78の矢印Yで示す方向の長さW3が7.5mmであり、第1半体部予定領域70及び第2半体部予定領域72における矢印Yで示す方向の長さW4が12.5mmである。U字型の切れ込み51の半円形状部分の半径は1.5mmである。第1半円切欠55及び第2半円切欠57の半径は1.5mmである。
次に、中間製品62について、U字型の切れ込み51で囲まれた部分を斜めに折り曲げて傾斜板49を形成するとともに、折曲げ仮想線80、82、84、86の部分を折り曲げることにより、図3、4に示すような集電リード34を形成した。なお、傾斜板49は、U字型の輪郭を有しており、底壁36に対して45度の角度をなすように折り曲げられて形成されている。
(3)電極群の製造
次に、一般的なニッケル水素二次電池に用いられる正極6、負極8及びセパレータ10を準備した。これら正極6、負極8及びセパレータ10はそれぞれ帯状をなしている。準備した正極6及び負極8の間にセパレータ10を介在させた状態で、巻芯に巻き付けて渦巻き状に巻回し、FAサイズ用の電極群4を形成した。巻回の際、正極6及び負極8を、互いに、電極群4の軸線方向に沿う方向に僅かにずれた状態となるように配置するとともに、これら正極6及び負極8の間の所定位置にセパレータ10を配置し、この状態で巻回作業を行い、円柱形状の電極群4を得た。得られた電極群4は、電極群4の一端側において正極6の正極接続端縁部32が、セパレータ10を介して隣り合っている負極8よりも突出した状態となっており、電極群4の他端側において負極8の負極接続端縁部が、セパレータ10を介して隣り合っている正極6よりも突出した状態となっている。また、電極群4の中心には、巻芯を抜き取ったことにより生じた中心貫通孔9が形成されている。
ここで、得られた電極群4は、全体として、外径が17.0mm、高さが61.5mm、中心貫通孔の内径が3.0mmである。
(4)電池の組立
次に、直径16.0mmの円板形状をなし、厚さが0.4mmのNiめっき鋼の薄板で形成されたFAサイズ用の負極集電体を準備した。この負極集電体は、電極群4の負極接続端縁部に溶接した。
次に、負極集電体が溶接された電極群4を有底円筒形状の外装缶2の中に収容した。そして、外装缶2の底壁の内面と負極集電体とを溶接した。
次に、電極群4の上端部に正極集電体28を載置し、電極群4における正極接続端縁部32と正極集電体28とを抵抗溶接した。
次に、外装缶2内にKOHを溶質として含むアルカリ電解液を所定量注入した。
次に、上記のようにして製造した集電リード34を封口体14に抵抗溶接し、封口体14と集電リード34との複合体を形成した。詳しくは、集電リード34の頂壁50としての第1半体部52及び第2半体部54におけるリード突起部58と封口体14の蓋板16の内面16bとが接触する部分に電流が集中して溶接部が形成され、これにより封口体14と集電リード34とが溶接された複合体を得た。ここで、封口体14に含まれる蓋板16の排気孔19は円形状をなし、その直径は1.8mmとした。
得られた複合体を正極集電体28の上部へ載置した。このとき、集電リード34の底壁36における底壁溶接予定部56と、正極集電体28の集電体突起部31とが接触するように、正極集電体28のスリット30を基準にして複合体を位置合わせした。また、封口体14の蓋板16の外周縁には、絶縁ガスケット18を配設した。これにより、蓋板16は、この絶縁ガスケット18を介して、外装缶2の上端開口部に位置付けられた状態となる。
その後、封口体14の正極端子22と負極端子との間に加圧しながら電流を流し、抵抗溶接(プロジェクション溶接)を行った。このとき、正極集電体28の集電体突起部31と集電リード34の底壁36における底壁溶接予定部56とが接触する部分に電流が集中して溶接部が形成され、正極集電体28と集電リード34の底壁36とが溶接された。
上記のような溶接が完了した後、外装缶2の開口縁17をかしめ加工することにより、外装缶2の開口3を封止した。このようにして、公称容量4000mAhのFAサイズの電池1を組み立てた。
以上のような手順を繰り返すことにより、電池1を複数個製造した。
(5)初期活性化処理
得られた電池1に対し、温度25℃の環境下にて、0.1Itの充電電流で16時間の充電を行った後、0.2Itの放電電流で電池電圧が1.0Vになるまで放電させる充放電作業を1サイクルとする充放電サイクルを3回繰り返した。このようにして初期活性化処理を行い、電池1を使用可能状態とした。
比較例1
集電リード34の底壁36において、傾斜板49を形成することは行わなかったこと、及びU字型の輪郭を有する底壁貫通孔47の代わりに直径3mmの円形の底壁貫通孔を設けたことを除き、実施例1と同様にして電池を複数個製造し、当該電池を使用可能状態とした。
2.電池の評価
(1)過充電試験
初期活性化処理済みの実施例1、比較例1の各電池をそれぞれ複数個準備し、これらの電池に対し、25℃の環境下で、2.5Itの充電電流で1時間充電する過充電試験を行った。
そして、過充電を行った後の各電池につき、破裂しているか否かの確認を行った。
その結果、実施例1の電池については、破裂した電池は認められなかった。
一方、比較例1の電池については、破裂した電池が存在した。
また、過充電試験後の電池について、分解を行い、内部の状態の確認を行った。
その結果、比較例1の電池のうち破裂した電池については、溶融物が蓋板16の排気孔19の部分に付着し、排気孔19を塞いでいた。このように排気孔19が塞がれると安全弁が正常に作動しないため、電池が破裂したものと考えられる。
一方、実施例1の電池において、溶融物は、一部が傾斜板49の部分に引っ掛かっており、それ以外は、傾斜板49から横に逸れて集電リード34の頂壁50と底壁36との間に溜まっており、蓋板16の排気孔19の部分には付着していなかった。このため、安全弁が正常に作動し、電池の破裂は避けられたものと考えられる。
(2)バーナ燃焼試験
初期活性化処理済みの実施例1、比較例1の電池に対し、充電操作を行い、満充電状態とした。
満充電状態の実施例1、比較例1の各電池をそれぞれ複数個準備し、これら電池に対し、外装缶の周壁面にガスバーナの炎を当て、60秒間保持して加熱することにより燃焼試験を行った。その後、各電池を室温(25℃)まで自然冷却した。
自然冷却後の各電池につき、破裂しているか否かの確認を行った。
その結果、実施例1の電池については、破裂した電池は認められなかった。
一方、比較例1の電池については、破裂した電池が存在した。
また、バーナ燃焼試験後の電池について、分解を行い、内部の状態の確認を行った。
その結果、比較例1の電池のうち破裂した電池については、溶融物が蓋板16の排気孔19の部分に付着し、排気孔19を塞いでいた。このように排気孔19が塞がれると安全弁が正常に作動しないため、電池が破裂したものと考えられる。
一方、実施例1の電池において、溶融物は、一部が傾斜板49の部分に引っ掛かっており、それ以外は、傾斜板49から横に逸れて集電リード34の頂壁50と底壁36との間に溜まっており、蓋板16の排気孔19の部分には付着していなかった。このため、安全弁が正常に作動し、電池の破裂は避けられたものと考えられる。
以上より、集電リード34の底壁36に傾斜板49を設けることにより、電池の破裂を抑制し、電池の安全性を向上させることができるといえる。
なお、本発明は上記した実施形態及び実施例に限定されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、傾斜板49の形状は、U字型の輪郭を有する形状に限定されるものではなく、矩形状、半円形状としてもよい。
また、上記した実施形態及び実施例では、外装缶に接続される側の極を負極とし、封口体に接続される側の極を正極としたが、本発明はこの態様に限定されるものではなく、外装缶に接続される側の極を正極とし、封口体に接続される側の極を負極としてもよい。
また、本発明において、電池の種類は、ニッケル水素二次電池に限定されず、ニッケル-カドミウム二次電池、リチウムイオン二次電池等であってもよい。
更に、本発明において、電池のサイズは、特に限定されず、FAサイズやAAサイズであってもよく、これら以外のサイズであってもよい。
<本発明の態様>
本発明の第1の態様は、排気孔を有する蓋板、前記排気孔を開閉可能な弁体及び前記弁体を収容するとともに前記蓋板に接合されている一方極の端子を含んでいる封口体と、セパレータを介して重ね合わされた一方極及び他方極が渦巻き状に巻回され、当該渦巻き状の中心部を貫く中心貫通孔を含む全体として円柱形状をなす電極群の一方の端部に接合されており、前記中心貫通孔の開口端と向かい合う位置に設けられた集電体中央貫通孔を有する集電体とを電気的に接続するために、前記封口体と前記集電体との間に介在せしめられ、前記蓋板及び前記集電体に接合されている二次電池用の集電リードにおいて、前記封口体の側に位置する頂壁と、前記頂壁に対向し、前記集電体の側に位置する底壁と、前記頂壁の側縁と前記底壁の側縁との間に延びており、互いに対向している一対の側壁とを有しており、前記頂壁は、前記排気孔と向かい合う位置に設けられた頂壁貫通孔を含み、前記底壁は、前記集電体中央貫通孔と向かい合う位置に設けられた底壁貫通孔と、前記底壁貫通孔の開口縁の一部に連なり、前記頂壁の側へ斜めに延びる傾斜板とを含んでいる、集電リードである。
本発明の第2の態様は、開口を有している外装缶と、一方極の端子を含み、前記外装缶の開口を密閉している封口体と、一方極及び他方極がセパレータを介して重ね合わされ渦巻き状に巻回されて形成された円柱形状の電極群であって、前記外装缶の内部に電解液とともに収容されている電極群と、前記電極群の一方の端部に接合されている集電体と、前記集電体と前記封口体とを接続する集電リードと、を備え、前記集電リードは、上記した本発明の第1の態様の集電リードである、二次電池である。