JP2004235036A - 電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】端子と電極とを接続するためにこれらの間に介在せしめられる集電リードに、加圧時に局所的な曲げ変形を促進する曲げ案内部を設けるとともに、前記集電リードはそれ自身の相対向する面または集電リードと封口板などの相対向する面との間に形成される内部空間内に突出する突出部を有し、前記突出部が、前記相対向する面に接触して、短縮された導電路を形成していることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池にかかり、特に、正・負極の少なくとも一方に接続された集電体と封口体とを接続するリード部の集電構造の改善に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ニッケル−水素化物蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池などのアルカリ蓄電池は、正極および負極の間にセパレータを介在させ、これらを渦巻状に巻回した後、正極あるいは負極の端部に集電体を接続して電極体を形成し、この電極体を外装容器としての金属製電池ケースに収納して集電体から延伸する集電リードを封口体に溶接した後、封口体を電池ケースの開口部に絶縁ガスケットを介在させて装着することにより密閉して構成されている。
【0003】
一般に、ニッケルーカドミウム蓄電池、ニッケルー水素蓄電池などのアルカリ蓄電池は、集電体から切り起こしや折り返しプレス成形などにより導出した集電リードと封口体とを溶接接続し、封口体を外装容器(電池ケース)の開口部に配置したのち、外装容器をかしめ封口している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特に、このようなアルカリ蓄電池が、電動工具や電気自動車などの高率で充放電を行う用途に使用される場合、電池構成の中でも特に、集電体と封口体の間を接続する集電リードでの電気抵抗が電池特性に大きな影響を与える。ここで、集電リードでの電気抵抗が大きい場合、大電流で放電を行うと、集電リードでの電気抵抗に起因する大きな電圧降下が生じて電池電圧が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、集電リードの厚みを厚く短くするようにしてリード部での電気抵抗を低減するという方法が提案されている。
【0006】
ところで、集電リードを構成する集電部品を厚く短くした場合、集電リードに柔軟性がないことから、封口体との溶接が困難になり、かつ封口体を外装容器の開口部にかしめて密閉する際に、集電リードを折り曲げることが困難になり、生産性が劣るという問題もあった。また、集電リードを構成する集電部品の厚みを厚くすると、抵抗溶接するための溶接電流に無効な電流が多くなって、封口体との溶接性が悪くなるとともに、封口体を外装容器の開口部にかしめて密閉する際に、集電リードを折り曲げることが困難になり、折り曲げ位置にばらつきが生じたりあるいは上述したように折り曲げ位置のばらつきにより斜め方向に応力がかかり、溶接点のはずれが発生するという問題が深刻となっていた。さらにまた折り曲げることが困難であり、生産性が悪いという問題もあった。
【0007】
一方、封口体に集電リードを溶接する場合、まず、図19(a)に示すように、集電体14から垂直に立ち上がった集電リード200に封口体17を隣接させて集電リードの側面に溶接電極を押し当てて封口体に集電リードを抵抗溶接する。この後、集電リードを折り曲げて封口体を外装容器の開口部に装着して、図19(b)に示すように、この開口部の端部をかしめて密封するようにしている。この図からもあきらかなように、厚みが厚くて短い集電リードを用いた方が、抵抗が小さくなり、電池内部抵抗が低下する。
【0008】
しかしながら、上述したように、集電リードを封口体に溶接した後に封口体を外装容器(電池ケース)の開口部に装着するためには、図19(a)に示すように、長めに形成された集電リードを用いて、封口時に、この集電リードを屈曲させるようにして封口体を外装容器の開口部に装着する必要がある。このため、集電リードの長さは溶接を容易にするためにある程度の長さが必要であるとともに、集電リードを屈曲させるようにするためには、薄くて長い集電リードを用いなくてはならず、その抵抗が大きくなって電池内部抵抗が大きくなるという問題を生じていた。
【0009】
そこで、集電経路を短縮して電池内部抵抗を低減させる接続方法が提案されている(特許文献1参照)。この接続方法では、電極体を外装容器に収納した後、集電体に溶接された集電リードを封口体下面に接触させた状態で外装容器の開口部を封口体で密閉し、その後、外装容器と封口体との間に電流を流すことにより、集電リードと封口体との接触部分を溶接するようにしている。
【0010】
これにより、集電リードが短くても容易に外装容器の開口部に封口体を装着することが可能となり、集電距離を短縮して電池内部抵抗を低減することが可能となる。また、封口時に集電リードを折曲する必要がないため、厚みの厚い集電リードを用いることが可能となり、電池内部抵抗の低減をはかることができる。
【0011】
しかしながら、上述の溶接方法にあっては、外装容器内に収容される電極体の高さにばらつきがあった場合に、封口体と集電リードとの接触部が確実に形成できない状態も存在し、溶接部を確実に形成することができないという問題を生じていた。また、板状の集電リード200と封口体17との溶接点に対して斜め方向などに不均一に応力がかかり、振動衝撃時や経時変化によって溶接点のはずれなどが発生するという問題もあった。また、封口体に集電リードを接触させるだけでは、溶接後の溶接点の強度や品質が劣り、製品歩留まりが低下するという問題もあった。
【0012】
そこでまた図20および図21(a)乃至(c)に示すように、集電リードとして両端部が斜めに切断された筒状体40の集電接続部が封口体の下面に固着して配設された封口体に電気的に接続されるとともに集電体に電気的に接続される集電接続構造が提案されている。(特許文献2)
【0013】
この筒状体40は、円筒状で両端部が斜めに切断された本体部41から構成され、本体部41の斜めに切断された両端縁42a、42bにはその軸方向に伸びる一対の切り欠き部45を備えている。そして、筒状体40は、円筒状のパイプを用いて、その両端部を斜めに切り落として形成している。
【0014】
そして、この筒状体40の本体部41底面が正極集電体14上に位置するように載置し、筒状体40の両端縁42a、42bから露出した内周面に溶接用の電極棒を垂直に立てて、この本体部41底面を正極集電体14にスポット溶接(第1溶接)した後、封口体の底面と筒状体40の本体部41の周側面とを溶接(第2溶接)する。そして、封口およびパンチ加圧により、本体部41はその断面形状が略楕円形状に押しつぶされることとなる。
【0015】
【特許文献1】
特開平10−261397号公報
【特許文献2】
特開2001−143684号公報
【0016】
しかしながら、これらの集電構造は集電接続部が筒状であり、筒状部の外周面をとおって集電する構造であるため、集電距離を十分に短縮し得ず、この集電部での抵抗が大電流での使用時には問題となっていた。
【0017】
本発明は前記実情に鑑みてなされたものであって、低抵抗で、確実で信頼性の高い集電構造をもつ電池を提供することを目的とする。
また、厚みが厚くかつ長さが短くても、溶接はずれもなく集電リードを確実に溶接することができ、高率放電性能に優れた電池を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の電池では、端子と電極とを接続するためにこれらの間に介在せしめられる集電リードに、折り曲げによって内部空間を形成するとともに、前記内部空間内に突出する突出部を形成し、前記突出部が、加圧によって変形せしめられて前記内部空間内で短縮された導電路を形成していることを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、例えば、端子と電極との間に集電リードを溶接したのち、封口し、かしめ部を形成すべき領域をプレスによって押し込み圧着する際、集電リードに形成された突出部が、相対向する面に接触して、短縮された導電路を形成しているため、集電抵抗を低減することができる。
【0020】
本発明の第2では、集電リードは、加圧によって局所的な曲げ変形を容易にするように形成された曲げ案内部を具備したことを特徴とする。
すなわち、加圧時に局所的な曲げ変形を促進する曲げ案内部を設けるとともに、前記集電リードはそれ自身の相対向する面または集電リードと封口板などの相対向する面との間に形成される内部空間内に突出する突出部を有し、前記突出部が、前記相対向する面に接触して、短縮された導電路を形成している。
【0021】
かかる構成によれば、曲げ案内部で曲げ変形を生じるため、あらかじめ決められた位置で効率良く曲げられ、溶接点に斜め方向の不均一な応力がかかるようなこともなく、信頼性の高い電池を提供する事が可能となる。また、曲げ案内部を有することにより、弾性度(可撓性)は高められ、溶接点との接触性が高められ、確実な溶接が可能となる。
【0022】
この技術が適用可能な電池としては、一次電池、二次電池に限定されることなく、また封口体が外部端子を兼ねるもの、別に封口体に接続するように外部端子を設けるものなど、電池全般にある。
【0023】
また本発明の第3では、集電リードを、前記正又は負極の一方に接続された集電体に接続され、内部に中空部を備えた筒状体で構成しており、前記封口体と前記集電体とが集電リードに溶接されていることを特徴とする。
【0024】
かかる構成によれば、上記効果に加え、構造が単純でかつ圧着により容易に
集電路を短縮することができる。
【0025】
本発明の第4では、前記内部空間内に突出する切り起こし片からなる突出部を構成しており、前記切り起こし片が前記相対向する面に接触して短縮された導電路を形成していることを特徴とする。
【0026】
かかる構成によれば、集電リードが筒状体に切り起こし片を形成した構造であるため、製造が容易でかつ、切り起こし片に板バネ作用をもたせることができ、接触圧を高め、集電抵抗の低減をはかることができる。
【0027】
本発明の第5では、切り起こし片が、前記内部空間を囲む相対向する面から切り起こされ、前記内部空間内で切り起こし片同士接触することにより短縮された導電路を形成していることを特徴とする。
【0028】
かかる構成によれば、形状にも自由度を持たせることができ、確実な接続が可能となり、集電抵抗のさらなる低減をはかることができる。
【0029】
また筒状体の上面を平坦面とし、溶接面がこの平坦面上にあるようにすることにより、確実な溶接が可能となり、かしめ前に正しい水平状態を維持できるため、溶接点に斜め方向の不均一な応力がかかることも無く、溶接点のはずれをなくすことが可能となる。
【0030】
さらにまた、集電リードを、側周面に相対向する2つの平坦面を具備し、前記2つの平坦面のうち、電極との接続側が、前記端子との接続側よりも表面積が大きい筒状体で構成することにより、上記効果に加え、さらに両溶接面が平坦面上にあるため、より確実な溶接が可能となり、かしめ前に、より正しい水平状態を維持できるため、溶接点に斜め方向の不均一な応力がかかることも無く、溶接点のはずれをなくすことが可能となる。
【0031】
さらにまた、前記筒状体は加圧力により押しつぶされ、前記集電リードは、加圧面に対して平行な断面が対称形であるようにすることにより、さらに確実に均一な圧力が印加されるため、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0032】
また、曲げ案内部をスリットで構成することにより、製造が容易でかつ簡単な構造で曲げ案内部を構成することができる。
【0033】
さらに、曲げ案内部は、前記溶接点に対して対称となる位置に形成され、他の領域よりも可撓性の高い領域(弾性部)であるようにすることにより、確実で均一な圧力が印加され、かしめ前に、より正しい水平状態を維持できるため、溶接点に斜め方向の不均一な応力がかかることも無く、溶接点のはずれをなくすことが可能となる。
【0034】
また、曲げ案内部は、周辺部に形成されたスリットによって可撓性が付与された領域であるようにすることにより簡単な構成で可撓性を付与することができ、また、溶接時にも加圧により、より水平な面を維持することが可能となる。
【0035】
さらにまた、前記曲げ案内部を、前記溶接点に対して対称となる位置に形成された肉薄部であるようにすることにより、肉薄部が圧力を受けて対称位置で変形するため、確実で均一な圧力が印加され、かしめ前に、より正しい水平状態を維持できるため、溶接点に斜め方向の不均一な応力がかかることも無く、溶接点のはずれをなくすことが可能となる。
【0036】
また、前記集電リードは、表面に溶接点となりうる領域をもつ溶接面と、前記溶接面から伸張する少なくとも2本の等脚部とからなり、前記曲げ案内部は、前記等脚部の中間部に形成されているようにすればよい。また、前記集電リードは、表面に溶接点となりうる領域をもつ溶接面と、前記溶接面から伸張する等脚の少なくとも2本の脚部とからなり、前記曲げ案内部は、前記脚部の中間部に形成され、内方に曲折する“く”の字状の折り曲げ部であるようにしてもよい。
【0037】
かかる構成によれば、より接触性を高めることができる。また、前記“く”の字状の折り曲げ部から、内側に均一な応力がかかり、変形するようになっているため、かしめ前に、より正しい水平状態を維持できるため、溶接点に斜め方向の不均一な応力がかかることも無く、溶接点のはずれをなくすことが可能となる。また、曲げ案内部により集電リード自体が可撓性を有するため、溶接作業が確実で、信頼性の高いものとなる。
【0038】
また、集電リードを、円形の金属板からなり、中央部に突出する切り起こし部を具備し、前記切り起こし部の頂面が溶接点となり得る領域を持つ平坦面を構成し、前記切り起こし部に曲げ案内部が形成されるとともに、短縮された導電路を形成するための切り起こし片を同時に形成できれば、1枚の円形金属板から切り起こし部を形成するのみで、容易に確実な溶接面を形成することが可能となり、確実で信頼性の高い接続が可能となる。またかかる構成によれば、周縁部が電極と接続される集電体、平坦面が封口体などの端子と接続される集電リードの役割を果たすことができ、一体形成が可能となったため、接続抵抗の低減を図ることが可能となる。
【0039】
また、封口体と集電体(電極)とが中空空間を備えた断面対称形の突出部を備えた集電リードに溶接されている場合、通電時の電流経路は集電リードの周側壁に沿って集電体から封口体(あるいは、封口体から集電体)に向けて2経路に分かれて流れるが、内部空間内に突出部を形成しておくことにより、加圧により短縮された導電路を形成することができるため、集電リードの集電距離は集電リードの脚部の距離となって集電リードでの電圧降下を半分以下に低減させることが可能になる。このため、集電リードを構成する基材の厚みを厚くする必要がなくなるので、可撓性、弾力性は高められ、わずかな位置ずれも吸収し得ることになり、集電リードと封口体あるいは集電体との溶接も容易になる。
【0040】
また、封口体を外装容器の開口部にかしめて封口する作業も容易になり、押し込み圧着工程でも溶接点近傍を良好な結合状態を維持できるように、圧力により曲げ案内部で、曲げ変形を生じ、集電リードは断面対称状態を維持しつつ溶接面が集電体に対して平行状態となるように維持され、溶接部を良好に保持することが可能となる。従って、電池の製造が容易となる。
【0041】
本発明の電池の製造方法は、一方極の端子を兼ねる開口部を備えた外装容器内に、正および負の電極を配置する工程と、前記電極の一方に、加圧時に局所的な曲げ変形を容易にする曲げ案内部を有するとともにそれ自身の相対向する面または封口板などの相対向する面との間に形成される内部空間内に突出する突出部を有する集電リードの一端を溶接するとともに、前記集電リードの他端を前記他方極の端子を兼ねる封口体に溶接する溶接工程と、前記外装容器の前記開口部に前記封口体を配置し、前記外装容器をかしめて封口するとともに、前記集電リードが前記曲げ案内部で曲がり、前記突出部が、前記相対向する面に接触するように圧着する圧着工程とを含むことを特徴とする。
【0042】
また、本発明の電池の製造方法は、集電体と封口体とを電気的に接続するとともにそれ自身の相対向する面または封口板などの相対向する面との間に形成される内部空間内に突出する突出部を有する集電リードを介して集電体と封口体とが接触した状態となるように、外装容器の開口部に封口体を配置する配置工程と、外装容器と封口体との間に溶接電流を流して集電リードを封口体あるいは集電体のいずれか一方に溶接する溶接工程と、前記外装容器をかしめて封口するとともに、前記集電リードがあらかじめ所定の位置に設けられた曲げ案内部で曲がり、前記突出部が、前記相対向する面に接触することにより短縮された導電路を形成するように圧着する圧着工程を備えるようにしている。
【0043】
かかる構成によれば、例えば、端子と電極との間に集電リードを溶接したのち、封口し、かしめ部をプレスによって押し込み圧着する際、前記曲げ案内部で曲げ変形を生じ、突出部を相対向する面に接触せしめ短縮された導電路を形成するため、あらかじめ決められた位置で効率良く曲げられ、溶接点に斜め方向の不均一な応力がかかるようなこともなく、良好な溶接状態を維持しつつ圧着がなされるため、耐衝撃性も高く、信頼性の高い電池を提供することが可能となる。
【0044】
また、本発明の電池の製造方法では、一方極の端子を兼ねる開口部を備えた外装容器内に、相対向して配置された正および負の電極の少なくとも一方の端部に集電体が接続された電極体を配置する工程と、前記集電体の上面に局所的な曲げ変形を容易にする曲げ案内部を有するとともにそれ自身の相対向する面または封口板などの相対向する面との間に形成される内部空間内に突出する突出部を有する集電リードを溶接する第1溶接工程と、前記集電リードと、前記開口部に装着される封口体とが接触した状態となるように、前記外装容器の開口部に前記封口体を配置する配置工程と、前記外装容器と前記封口体との間に電流を流して前記集電リードを前記封口体に溶接する第2溶接工程と、前記外装容器の前記開口部に前記封口体を配置し、前記外装容器をかしめて封口するとともに、前記集電リードが前記曲げ案内部で曲がるように圧着することにより、前記突出部が、前記相対向する面に接触して、より短い導電路を増設する圧着工程とを備えたことを特徴とする。
【0045】
かかる方法によっても、押し込み圧着する際、曲げ案内部で曲げ変形を生じ、突出部を相対向する面に接触せしめ短縮された導電路を形成するため、あらかじめ決められた位置で効率良く曲げられ、溶接点に斜め方向の不均一な応力がかかるようなこともなく、良好な溶接状態を維持しつつ圧着がなされるため、耐衝撃性も高く、信頼性の高い電池を提供することが可能となる。
【0046】
ここで、封口体装着後に溶接をする直接溶接法による場合、抵抗溶接により溶接部の強度を強くするためには、溶接電流の電流値とともに、溶接点に加わる加圧力も重要な要因となる。溶接点に溶接電流を流すと、溶接点では接触部分の金属がジュール熱により溶融して接合するが、溶接点が加圧されていないと、溶融した金属が飛散する現象が生じ、所謂「溶接ちり」が発生して、これが電池短絡の原因の1つとなる。また、溶接点を加圧していないと、溶接点に内部欠陥が発生し、溶接強度が低下する。
【0047】
しかしながら、上述した溶接方法においては、外装容器の開口部を封口体で密封した後に溶接を行うようにしているため、封口体は固定されることとなって、溶接時に溶接点に加圧力を加えることができなく、「溶接ちり」や内部欠陥が発生するという問題があった。
【0048】
ところが、本発明においては、あらかじめ集電リードに曲げ案内部を形成しているため、集電リードを介して確実に接触性よく、集電体と封口体とが接触した状態となるように外装容器の開口部に封口体を配置することができ、外装容器と封口体との間に溶接電流を流すようにしているので、直接溶接法を用いる場合にも、溶接時に接触部を加圧することが可能となる。これにより、「溶接ちり」の発生を伴うことなく、集電リードは封口体あるいは集電体のいずれか一方あるいは両方に良好に溶接されるようになる。このため、集電リードは封口体と集電体とを接触させるだけの長さがあれば封口体あるいは集電体に溶接されるようになる。そして、外装容器をかしめて封口する工程においても、より正しい水平状態を維持でき、確実な溶接が可能となる上、かしめに際しても、溶接点に斜め方向の不均一な応力がかかることも無く、溶接点のはずれをなくし、歩留まりの向上をはかることが可能となる。
【0049】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をニッケル−水素蓄電池に適用した場合について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図1は本発明の集電リードを装着したニッケル−水素蓄電池の平面図および断面図、図2は要部を示す斜視図、図3(a)乃至(c)はこの集電リードの上面図、側面図、展開図であり、この集電リードは、ニッケルめっきのなされた鉄板製の筒状体からなり、加圧によって局所的な曲げ変形を容易にするように形成された切り欠き45からなる曲げ案内部で折り曲げられており、この集電リードの内部空間内に突出する切り起こし片46を有し、この切り起こし片が、封口後のかしめによって、封口体側の相対向する面に接触して、短縮された導電路を形成するようにしたことを特徴とするものである。
【0050】
この筒状体40は、円筒状で両端部が斜めに切断された本体部41から構成され、本体部41の斜めに切断された両端縁42a、42bにはその軸方向に伸びる一対の切り欠き部45を備えている。そして、筒状体40は、円筒状のパイプの両端部を斜めに切り落とされた形状を構成している。HおよびHsは負極集電体15と外装容器16とを溶接するための溶接棒を挿通する挿通孔である。
【0051】
この筒状体40は、図3(c)にその展開図を示すように、ニッケルめっきのなされた鉄板を円筒状に組み立てたもので、筒状体の下面側に相当する挿通孔Hsの両側にスリットSを形成することにより、この挿通孔HsとスリットSとの間の片が切り起こし片46を構成するようになっている。
【0052】
ここで筒状体40の下面の長さL2に対して2つのスリットS間の間隔L1、挿通孔Hsの直径RはL2−L1<R/2程度とするのが望ましい。これにより、弾性を向上し接触性を高めることができる。
【0053】
そして、この筒状体40の本体部41底面が正極集電体14上に位置するように載置し、筒状体40の両端縁42a、42bから露出した内周面に溶接用の電極棒を垂直に立てて、この本体部41底面を正極集電体14にスポット溶接(第1溶接)した後、封口体の底面と筒状体40の本体部41(図2参照)の周側面とを溶接(第2溶接)する。そして、封口およびパンチ加圧により、本体部41はその断面形状が略楕円形状に押しつぶされることとなる。
【0054】
さらに、図7は電池ケースに挿入された電極体が封口体に溶接されて完成したニッケル−水素蓄電池を示す断面図である。
この筒状体40は、円筒状で両端部が斜めに切断された本体部41から構成され、本体部41の斜めに切断された両端縁42a、42bにはその軸方向に伸びる一対の切り欠き部45を備えている。そして、筒状体40は、円筒状のパイプを用いて、その両端部を斜めに切り落として形成している。
【0055】
そして、この筒状体40の本体部41底面が正極集電体14の直径上に位置するように載置し、筒状体40の両端縁42a、42bから露出した内周面に溶接用の電極棒を垂直に立てて、この本体部41底面を正極集電体14にスポット溶接(第1溶接)した後、封口体の底面と筒状体40の本体部41の周側面とを溶接(第2溶接)する。そして、封口およびパンチ加圧により、本体部41はその断面形状が略楕円形状に押しつぶされることとなる。
【0056】
かかる構成によれば、筒状体からなる集電リード40の内部空間に突出する切り起こし片46によって圧着時に最短導電路を形成するのみで、接続抵抗の大幅な低減を図ることが可能となる。
かかる構成により、前記スリット45の存在による折り曲げ部から、内側に均一な応力がかかり、変形するようになっているため、かしめ前に、より正しい水平状態を維持でき、溶接点に斜め方向の不均一な応力がかかることも無く、溶接点のはずれをなくすことができ、より確実な接続が可能となる。
【0057】
次にこの集電リードを用いて形成されるニッケル−水素蓄電池について説明する。
【0058】
1.電極体の作製
本実施形態のニッケル−水素蓄電池は図4乃至7にその組み立て工程を示すように、ニッケル正極板11と水素吸蔵合金負極板12とを備えている。ニッケル正極板11は、パンチングメタルからなる極板芯体の表面にニッケル焼結多孔体を形成した後、化学含浸法により水酸化ニッケルを主体とする活物質をニッケル焼結多孔体内に充填して作製されている。一方、水素吸蔵合金負極板12は、パンチングメタルからなる極板芯体の表面に水素吸蔵合金からなるペースト状負極活物質を充填し、乾燥させた後、所定の厚みになるまで圧延して作製されている。
【0059】
これらのニッケル正極板11と水素吸蔵合金負極板12との間にセパレータ13を介在させて渦巻状に巻回して渦巻状電極群を作製した。この渦巻状電極群の上端面には、ニッケル正極板11の極板芯体であるパンチングメタルの端部が露出し、また、下端面には水素吸蔵合金負極板12の極板芯体であるパンチングメタルの端部が露出している。そして、この渦巻状電極群の上端面に露出する正極芯体に多数の開口を有する円板状の集電体本体部14を溶接するとともに、下端面に露出する負極芯体に多数の開口を有する円板状の負極集電体15を溶接して、渦巻状電極体10を作製した。
【0060】
2.ニッケル−水素蓄電池の作製
(1)実施例1
そして前述の方法で形成した渦巻状電極体10に対し集電リードとして両端部が斜めに切断された筒状体40を用いたことを特徴とする。
【0061】
この筒状体40は、円筒状で両端部が斜めに切断された本体部41から構成され、本体部41の斜めに切断された両端縁42a、42bにはその軸方向に伸びる一対の切り欠き部45を備えている。そして、筒状体40は、円筒状のパイプ(例えば、ニッケル製で厚みが0.3mmのもの)を用いて、その両端部を斜めに切り落として形成している。44は溶接を容易にするための突起である。
【0062】
そして、この筒状体40の本体部41底面が正極集電体14の直径上に位置するように載置し、筒状体40の両端縁42a、42bから露出した内周面に溶接用の電極棒を垂直に立てて、この本体部41底面を正極集電体14にスポット溶接(第1溶接)した後、上述した実施例1と同様に封口体17の底面と筒状体40の本体部41の周側面とを溶接(第2溶接)し、封口およびパンチPによって加圧して公称容量6.0Ahの円筒形ニッケル−水素蓄電池を作製した。このパンチPによる加圧力により、本体部41はその断面形状が略楕円形状に押しつぶされることとなる。
【0063】
なお、筒状体40の高さは本体部41の直径の長さとなり、封口体17の底面の溶接部から正極集電体14の上面の溶接部までの集電距離は筒状体40の半円周の長さ(例えば、7.85mm)となる。
しかしながら本実施例では、さらにこの表面に平坦部をもつ筒状体の内部空間に突出する切り起こし片を形成することにより、内部に短縮された導電路が形成され、この導電路を通して電流が流れるため集電抵抗の大幅な低減を図ることが可能となる。
【0064】
また、封口体下面と集電リード上面に配置された複数の突起部44との溶接を行う際、それぞれの溶接面に傾きなどが生じていた場合でも中空の内部空間をもつ筒状体の変形し易さにより、複数の突起と封口体下面との接触が均一になされて、溶接時にかかる圧力のばらつきが低減されるという効果を奏効する。これにより、溶接のばらつきが抑えられ、不十分な溶接による、はずれ、充放電電流のばらつき、溶接焼けによる腐食、割れ等が抑制できる。
【0065】
このように相対向する面を平坦面とし、上面側の平坦面が下面側の平坦面よりも面積が小さくなるようなテーパ形状をもつ筒状体を用いることにより、集電リードの可撓性、弾力性は高められ、わずかな位置ずれも吸収し得ることになり、集電リードと封口体あるいは集電体との溶接も容易で確実なものとなる。
【0066】
また、封口体を外装容器の開口部にかしめて封口する作業も容易になり、押し込み圧着工程でも溶接点近傍を良好な結合状態に維持できるように、圧力により曲げ案内部で、曲げ変形を生じ、集電リードは断面対称状態を維持しつつ溶接面が集電体に対して平行状態となるように維持され、溶接部を良好に保持することが可能となる。従って、蓄電池の製造が容易となる。
【0067】
ここで図4は電極体を外装容器に挿入して前記集電リード40を介して封口体と溶接した状態を示す断面図である。また、図5は外装容器の開口部に封口体を封口した状態を示す断面図であり、図6は封口部をプレスするときの状態を示す断面図である。さらに、図7は電池ケースに挿入された電極体が封口体に溶接されて完成したニッケル−水素蓄電池を示す断面図である。
【0068】
そして、この集電リード40を用いてニッケル−水素蓄電池を組み立てるに際しては、まず、図4に示すように、上述の電極体10を鉄にニッケルメッキを施した有底筒状の外装容器(底面の外面は負極外部端子となる)16内に収納し、上述した集電リード40の本体部41が電極体10上に位置するように載置するとともに、この本体部41と正極とを前記抜きばりからなる溶接点の位置でスポット溶接(第1溶接)した。この後、電極体10の中心部に形成された空間部10aに図示しない溶接電極を挿入して、水素吸蔵合金負極板12に溶接された負極集電体15を外装容器16の内底面にスポット溶接した。
【0069】
このようにして、集電リード40の本体部41と正極集電体14とを溶接した後、図4に示すように、外装容器16の上部内周側に防振リング18を挿入し、外装容器16の外周側に溝入れ加工を施して防振リング18の上端部に環状溝16aを形成した。ついで、外装容器16内に30質量%の水酸化カリウム(KOH)水溶液からなる電解液を注入した後、この外装容器16の開口部の上部に、周縁に絶縁ガスケット19を嵌着させた封口体17を配置した。この場合、封口体17の底面が集電リード40の溶接面に形成された突起44と接触するように配置した。なお、封口体17は、底面に円形状の下方突出部を形成してなる蓋体17aと、正極キャップ(正極外部端子)17bと、これら蓋体17aおよび正極キャップ17b間に介在されるスプリング17cと弁板17dからなる弁体を備えており、蓋体17aの中央にはガス抜き孔が形成されている。
【0070】
上述のように封口体を配置した後、正極キャップ(正極外部端子)17bの上面に一方の溶接電極W1を配置するとともに、外装容器16の底面(負極外部端子)の下面に他方の溶接電極W2を配置した。この後、これらの一対の溶接電極W1,W2間に2×106N/m2の圧力を加えながら、これらの溶接電極W1,W2間に電池の放電方向に24Vの電圧を印加し、3KAの電流を約15msecの時間流す通電処理を施した。この通電処理により、封口体17の底面と集電リード40の溶接面の突起44との接触部分が溶接(第2溶接)されて、溶接部が形成される。
【0071】
一対の溶接電極W1,W2間に2×106N/m2の圧力を印加しながら、これらの溶接電極W1,W2間に電圧を印加して、通電処理を施すことにより、電極体10の高さ寸法にばらつきがあっても、あるいは集電リードの本体部41の溶接位置にばらつきがあっても、中空の筒状体を構成すると共に切り起こし部の存在により可撓性を付与されているため、集電リード40の溶接面と封口体17の底面との間に接触点44を形成することが可能となる。これにより、内部短絡の発生原因の1つとなる「溶接ちり」の発生を抑制できるとともに、内部欠陥のない溶接強度に優れた溶接部を形成することができるようになる。
【0072】
ついで、外装容器16の開口端縁16bを内方にかしめて電池を封口することにより、図5に示すように、半完成の電池とした。この後、図6に示すように、この半完成の電池を一対の割型A1,A2内に配置するとともに、封口体17の上部にプレス機に連結されたパンチPを配置した。ついで、プレス機を駆動してパンチPを下降させて、封口体17の封口部(外装容器16の開口端縁16b)をパンチPにより加圧して、封口体17を外装容器16内に押し込んだ。
【0073】
これにより、環状溝16aは押しつぶされて絶縁ガスケット19の下端は防振リング18の上端部付近まで下降することとなる。これにより、図7に示すように、公称容量6Ahの円筒形ニッケル−水素蓄電池を作製した。なお、このパンチPによる加圧力により、集電リード40の両端縁42a、42bには両端縁の軸方向に形成され切り欠き45に沿って押しつぶされ、その断面形状は対称な形状をなすように均一に変形せしめられる。このようにして作製された実施例1のニッケル−水素蓄電池を電池Aとした。
【0074】
上述したような溶接部を形成するためには、正極キャップ(正極外部端子)17aと外装容器16との間に溶接電流を流して、封口体17の底面と筒状体40の本体部41の周側面との接触部に通電時の電流密度を増加させて、接触部のジュール熱の発生を大きくして赤熱し易い状態にする必要がある。そこで、以下のような種々の実施例が考えられる。
【0075】
(2)実施例2
図8は実施例2の集電リード、図9はこの集電リードを用いた電池の断面図である。なお、実施例2に用いられる電極体10は実施例1と同様であり、実施例2においては、筒状体の下面から切り起こされた切り起こし片46に代えて、本体部41の中央部の挿通孔Hの近傍に形成した切り起こし片47を内部空間に向けて突出させ、筒状体の下面に当接させることにより、短縮導電路を形成したことを特徴とする。
【0076】
なお、この切り起こし片の形成領域は挿通孔H形成のために除去する部分であり、プレス加工時の金型を部分的に変更するのみで容易に形成可能である。他の部分については、前記実施例1と同様に形成される。図中同一部位には同一符号を付し、説明を省略する。
【0077】
そして、前記実施例1と同様にして、この集電リード40の本体部41が正極に接続された端子に当接するように載置するとともに、本体部41を正極集電体14上に載置し、本体部41と正極集電体14とをスポット溶接(第1溶接)した後、上述した実施例1と同様に封口体17の底面と集電リードの溶接面を溶接(第2溶接)し、封口およびパンチPによって加圧して公称容量6.0Ahの円筒形ニッケル−水素蓄電池を作製した。このようにして作製された実施例2のニッケル−水素蓄電池を電池Bとした。
【0078】
(3)実施例3
図10(a)乃至(c)は実施例3の集電リード、図11はこの集電リードを用いて形成した電池を示す断面図である。なお、実施例3に用いられる電極体10も実施例1と同様であり、実施例3においては、集電リードとして筒状体の下面および上面からそれぞれ切り起こし片46、47を形成し、中間部で切り起こし片同士を当接せしめたものを用いたことを特徴とする。他の部分については、前記実施例1と同様に形成される。図中同一部位には同一符号を付し、説明を省略する。
【0079】
そして、前記実施例1および2と同様にして、この集電リード40の本体部41が正極に接続された端子に当接するように載置するとともに、本体部41を正極集電体14上に載置し、本体部41と正極集電体14とをスポット溶接(第1溶接)した後、上述した実施例1と同様に封口体17の底面と集電リードの溶接面を溶接(第2溶接)し、封口およびパンチPによって加圧して公称容量6.0Ahの円筒形ニッケル−水素蓄電池を作製した。
【0080】
そして、この筒状体40の底面本体部41が正極集電体14上に位置するように載置し、筒状体40の両端縁42a、42bから露出した内周面に溶接用の電極棒を垂直に立てて、この底部本体部41を正極集電体14にスポット溶接(第1溶接)した後、上述した実施例1と同様に封口体17の底面と筒状体40の本体部41の周側面とを溶接(第2溶接)し、封口およびパンチPによって加圧して公称容量6.0Ahの円筒形ニッケル−水素蓄電池を作製した。このパンチPによる加圧力により、本体部41はその断面形状が略楕円形状に押しつぶされることとなる。このようにして作製された実施例3のニッケル−水素蓄電池を電池Cとした。
【0081】
(4)実施例4
図12は実施例4の集電リード20を電極体に溶接した状態を示す斜視図、図13(a)乃至(c)はこの集電リードの平面図および断面図である。なお、実施例4に用いられる電極体10も実施例1と同様である。実施例4においては、集電リードは、ニッケルめっきのなされた鉄板からなり、ほぼ円板状をなすように形成され、中央部に相対向して形成された脚部となる切り起こし部22a、22bを具備し、前記切り起こし部の頂面が溶接点となり得る領域を持つ平坦面23を構成し、この平坦面から下方に切り起こし片27が形成されており、かしめ時の圧着により切り起こし片27と電極体との間で短縮導電路が形成されるとともに、前記切り起こし部22a、22bに曲げ案内部25が形成されていることを特徴とする。
【0082】
この集電リード20は、1枚の円形金属板からなる本体部21から折り曲げ加工により、相対向して設けられた2つの切り起こし片22a、22bを形成すると共に、その頂面に平坦な溶接面23を形成し、この溶接面23から下方に向けて切り起こし片27を形成し加圧時に電極体10の上面と直接当接して短縮導電路を形成するものである。なお、溶接面にはスリット26a乃至26dにより可撓性を付与された溶接点となる突起24が溶接面上で対称となるように形成されている。
【0083】
このスリットの形成により、封口体下面と集電リード上面に配置された複数の突起部との溶接を行う際、それぞれの溶接面に傾きなどが生じていた場合でも複数の突起と封口体下面との接触が均一になされて、溶接時にかかる圧力のばらつきが低減されるという効果を奏効する。これにより、溶接のばらつきが抑えられ、不十分な溶接による、はずれ、充放電電流のばらつき、溶接焼けによる腐食、割れ等が抑制できる。
【0084】
このようにスリットの形成により、集電リードの可撓性、弾力性は高められ、わずかな位置ずれも吸収し得ることになり、集電リードと封口体あるいは集電体との溶接も容易で確実なものとなる。
【0085】
また、封口体を外装容器の開口部にかしめて封口する作業も容易になり、押し込み圧着工程でも溶接点近傍を良好な結合状態を維持できるように、圧力により曲げ案内部で、曲げ変形を生じ、集電リードは断面対称状態を維持しつつ溶接面が集電体に対して平行状態となるように維持され、溶接部を良好に保持することが可能となる。従って、蓄電池の製造が容易となる。
【0086】
また、内方に曲折する“く”の字あるいは逆“く”の字状の折り曲げ部25を有しており、この“く”の字状の折り曲げ部から、内側に均一な応力がかかり、変形可能となっている。また、本体部には裏面側に抜きばりが形成され裏面に突出した溶接点24sを構成しており、これは同心円を成すように配列されている。
【0087】
そして、この集電リード20を用いてニッケル−水素蓄電池を組み立てるに際しては、まず、上述した集電リード20の本体部21が電極体10上に位置するように載置するとともに、集電体本体部21と正極とを前記抜きばりからなる溶接点24sの位置でスポット溶接(第1溶接)した。そして、この後上述の電極体10を鉄にニッケルメッキを施した有底筒状の外装容器(底面の外面は負極外部端子となる)16内に収納し、電極体10の中心部に形成された空間部10aに図示しない溶接電極を挿入して、水素吸蔵合金負極板12に溶接された負極集電体15を外装容器16の内底面にスポット溶接した。このようにして前記第1乃至第3の実施例と同様にして電池を形成した。このようにして作製された実施例4のニッケル−水素蓄電池を電池Dとした。
【0088】
(5)実施例5
図14は実施例5の集電リード50を電極体に溶接した状態を示す斜視図、図15(a)乃至(c)はこの集電リードの平面図および断面図である。なお、実施例5に用いられる電極体10も実施例1乃至4で用いたのと同様である。この集電リードは、表面に溶接点54をもつ溶接面53と、前記溶接面53から伸張する2本の長さの等しい脚部52a、52bとからなり、前記曲げ案内部は、線状に形成された微孔55で構成されており、この脚部52a、52bの中間部から、切り起こし片56がU字状に形成され、圧着時にこの集電リードの上面である溶接面53と、正極集電体14の上面とが当接して集電リードの中心近傍に短縮導電路が形成されるようにしたことを特徴とする。
また、正極集電体14と接続される本体部は前記脚部52a、52bに連設されており、裏面側に抜きばりが形成され、溶接点となる突起54sを構成している。図中同一部位には同一符号を付し、説明を省略する。
【0089】
そして、この集電リード50の本体部51が正極集電体14上に位置するように載置し、この本体部51a,bの突起54sを正極集電体14にスポット溶接(第1溶接)した後、上述した実施例1と同様に封口体17の底面と溶接面53の突起54とを溶接(第2溶接)し、封口およびパンチPによって加圧して公称容量6.0Ahの円筒形ニッケル−水素蓄電池を作製した。このパンチPによる加圧力により、集電リードの脚部はこの微孔55に沿って折り曲げられるようにその断面形状が均一に押しつぶされることとなり、切り起こし片56の存在により、中心部には短縮導電路が形成される。このようにして作製された実施例5のニッケル−水素蓄電池を電池Eとした。
【0090】
なお、前記実施例では、この微孔55は内側が外側よりも大口径となるようなプロファイルで形成されており、これにより、内側への変形が生じ易いような形状となっている。また、この曲げ変形部は外側から形成されたVノッチのようなもの、あるいはスリットでもよい。
【0091】
また、この切り起こし片56をU字状に形成する場合、一旦内側に折り返した後、側面の折り曲げを利用することにより、2段の折り曲げを行うようにしても良い。また、弾性体で構成するようにすれば、必ずしも先端がU字状に折り返されていなくても集電リードの上面に、良好に当接できるようにすることも可能である。
【0092】
さらにまた、脚部52a、52bは、本体部51a、51bおよびこれに当接する集電体14に対して垂直に配設されているが、破線で示すように、集電体14に近づくにつれて開くように形成し、断面等脚台形をなすような集電リードを構成してもよい。断面台形とすることにより、圧着形状が良好に形成され易いという利点もある。
【0093】
(6)実施例6
図16(a)および(b)は実施例6の集電リード90の平面図および断面図である。なお、実施例6に用いられる電極体10も実施例1乃至5と同様であり、集電リード90は、周縁部が本体部91を構成し、電極体と接続されるようになっており、集電体と集電リードの両方の役割を果たすものである。
【0094】
すなわちこの集電リード90は、中央部に相対向して斜めに形成された脚部となる切り起こし部(脚部)92a、92bを具備し、前記切り起こし部の頂面が溶接点となり得る領域を持つ平坦面93を構成し、前記切り起こし部92a、92bから、切り起こし片96を形成し、短縮導電路を形成しうるようにするとともに、前記本体部91との境界部にスリットSを形成することにより強度が弱くなるように形成された曲げ案内部95を有することを特徴とする。またこの曲げ案内部95の中心近傍にはスリットSの外端の一辺を残してこの辺で折り曲げることにより、切り起こし片96を形成している。
【0095】
この曲げ案内部95が変形し易い領域となっており、加圧されるとこの部分から変形し易くなる。
【0096】
かかる構成によれば、スリットSの一端を残して形成された切り起こし片96が集電リード90と電極体との上面とに囲まれた内部空間内に突出しており、加圧時に押しつぶされることにより、短縮導電路を形成することができる。またスリットの存在により切り起こし部92a、92bが斜めに開くように形成されているため、曲げ案内部で変形し易い状態となっている。
【0097】
このようにして作製された実施例6のニッケル−水素蓄電池を電池Fとした。
【0098】
(2)実施例7
図17は実施例7の集電リードを用いた電池の断面図、図18(a)はこの集電リード40の上面図、図18(b)はこの集電リードの側面図、(c)はこの集電リード40の展開図である。なお、実施例7に用いられる電極体10は実施例1と同様であり、実施例7においては、筒状体の下面から切り起こされた切り起こし片46に代えて、本体部41の底面を構成する領域から突出片46Tを形成し、この突出片46Tを底面から内部空間の上面(封口体側)の突出させ、筒状体の下面に当接させることにより、短縮導電路を形成したことを特徴とする。図中同一部位には同一符号を付し、説明を省略する。
【0099】
なお、この構造についても、プレス加工時の金型を部分的に変更するのみで容易に形成可能である。他の部分については、前記実施例1と同様に形成される。
【0100】
そして、前記実施例1と同様にして、この集電リード40の本体部41が正極に接続された端子に当接するように載置するとともに、本体部41を正極集電体14上に載置し、本体部41と正極集電体14とをスポット溶接(第1溶接)した後、上述した実施例1と同様に封口体17の底面と集電リードの溶接面を溶接(第2溶接)し、封口およびパンチPによって加圧して公称容量6.0Ahの円筒形ニッケル−水素蓄電池を作製した。このようにして作製された実施例7のニッケル−水素蓄電池を電池Gとした。
【0101】
(7)比較例
比較例として、図20に示したような、集電リードの内部空間に突出する切り起こし片などの突出部を形成しない集電リードを用い、後は前記実施例とまったく同様に形成した電池Xを形成した。
【0102】
3.電池特性試験
(1)活性化
上述のようにして作製した各実施例の電池A〜Gを用いて、室温(約25℃)で、1.2Aの電流値で6時間充電した後、1時間休止させ、その後、0.3Aの電流値で電池電圧が0.8Vになるまで放電させるという充放電サイクルを行い、この充放電サイクルを10回繰り返して電池の活性化を行った。
【0103】
(2)V−I特性試験
そして、上述のように活性化した各実施例の電池A〜Gおよび電池Xを用いて、室温(約25℃)で、6Aの電流値で30分充電、1時間休止後、25℃雰囲気下で30Aの電流値で10秒放電させ、10秒目の電池電圧を測定した。
【0104】
ついで、放電させた容量分の電力を充電した後、30分の休止毎に、60A,90A,120A,150Aの電流値で同手順にて10秒放電し、10秒目の電池電圧をそれぞれ測定した。
【0105】
このようにして得られた10秒後の電池電圧を縦軸とし、各電流値を横軸としてV−I直線(V−I特性)を求めると、図22に示すような結果となった。
【0106】
図22から明らかなように、各実施例の電池A〜GのV−I直線の傾きは小さいことが分かる。このことから、各実施例の電池A〜Gの作動電圧はいずれも高く、電池内部抵抗が低いことが分かる。これは、各実施例の電池A〜Gは、集電リードの溶接が良好に行われ、短縮された導電路の増設により内部抵抗が低減し、高率充放電性が得られたものと考えられる。
【0107】
なお、上述した実施の形態および変形例においては、封口体を正極端子とし、外装容器を負極端子とした例について説明したが、封口体を負極端子とし、外装容器を正極端子としてもよい。この場合、正極集電体は電池外装容器の内底面に溶接され、封口体の底面は集電リードを介して負極集電体に溶接されることとなる。
【0108】
さらにまた、前記実施形態においては、電極体を外装容器に装着し集電リードを溶接した後電解液を注入したが、固体電解質を用いる蓄電池の場合は、正極と負極との間に電解質を挟んだ状態で外装容器に装着し、集電リードを溶接し、封着そして圧着という手順をとることになる。
【0109】
また、溶接工程についても前記実施形態に限定されることなく、集電リードを装着し封着したのち、電解質を介して電流を流すようにし溶接する直接溶接法をとる場合にも適用可能であることはいうまでもない。特にこの直接溶接法を用いる場合、集電リードが上面に平坦面(溶接面)をもち断面対称な安定な形状をもつため、安定に載置することができ、封着時に位置ずれが生じるのを防止することができるという効果もある。
【0110】
さらにまた、上述した実施の形態および変形例においては、本発明をニッケル−水素蓄電池に適用する例について説明したが、本発明はニッケル−水素蓄電池に限らず、ニッケル−カドミウム蓄電池等の他の電池にも適用できることは明らかである。
【0111】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、集電リードの内部空間に突出する切り起こし片などの突出部の存在により、かしめ時に押しつぶされて短縮導電路を形成するため、集電抵抗の低減をはかることができる。
特に大電流での使用時には集電抵抗の低減をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の電池の集電リードを電極体に溶接した状態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図2】同電池の電極体に集電リードを溶接した状態を示す斜視図である。
【図3】同集電リードを示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は展開図である。
【図4】電極体を外装容器に挿入して集電リードを封口体と溶接する状態を示す断面図である。
【図5】外装容器の開口部に封口体を封口した状態を示す断面図である。
【図6】封口部をプレスする状態を示す断面図である。
【図7】外装容器に挿入された電極体が集電リードを介して封口体に溶接されて完成したニッケル−水素蓄電池を示す断面図である。
【図8】本発明の実施例2の集電リードを示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は展開図である。
【図9】この集電リードを用いて形成した電池を示す断面図である。
【図10】本発明の実施例3の集電リードを示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は展開図である。
【図11】この集電リードを用いて形成した電池を示す断面図である。
【図12】本発明の実施例4の集電リードを電極体に溶接した状態を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施例4の集電リードを示す図であり、(a)は上面図、(b)(c)は側面図である。
【図14】本発明の実施例5の集電リードを電極体に溶接した状態を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施例5の集電リードを示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図16】本発明の実施例6の集電リードを示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図17】本発明の実施例7の集電リードを電極体に溶接した状態を示す斜視図である。
【図18】本発明の実施例7の集電リードを示す図であり、(a)はこの集電リードの上面図、(b)は側面図、(c)はこの集電リードの展開図である。
【図19】従来例の蓄電池の組み立て工程を示す図である。
【図20】従来例の集電リードを電極体に溶接した状態を示す斜視図である。
【図21】従来例の集電リードを示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図22】本発明の実施形態の電池と比較例の電池とのI−V特性を示す図である。
【符号の説明】
10…電極体、11…正極板、12…負極板、13…セパレータ、14…正極集電体、15…負極集電体、16…外装容器(負極外部端子)、16a…溝部、
17…封口体、17a…蓋体、17b…正極キャップ(正極外部端子)、18…防振リング、19…絶縁ガスケット、20,40,50,60,70、90…集電体、W1,W2…溶接電極、A1,A2…割型、P…パンチ
Claims (5)
- 一方極の端子を兼ねる開口部を備えた外装容器と、前記外装容器内に配置せしめられた正および負の電極と、前記正および負の電極の間に介在せしめられた電解質と、前記開口部を密封する他方極の端子を兼ねる封口体を備えた電池であって、
前記正または負の電極の少なくとも一方と前記他方極の端子との間が、集電リードを介して接続されており、
前記集電リードは、折り曲げによって内部空間を形成するとともに、前記内部空間内に突出する突出部を有し、
前記突出部が、加圧によって変形せしめられて前記内部空間内で短縮された導電路を形成していることを特徴とする電池。 - 前記集電リードは、加圧によって局所的な曲げ変形を容易にするように形成された曲げ案内部を具備したことを特徴とする請求項1に記載の電池。
- 前記集電リードは前記正又は負極の一方に接続された集電体に接続され、内部に中空部を備えた筒状体からなり、
前記封口体と前記集電体とが集電リードに溶接されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電池。 - 前記集電リードは、前記内部空間内に突出する切り起こし片からなる突出部を構成しており、
前記切り起こし片が、前記相対向する面に接触して短縮された導電路を形成していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電池。 - 前記切り起こし片は、前記内部空間を囲む相対向する面から切り起こされ、前記内部空間内で切り起こし片同士接触することにより短縮された導電路を形成していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電池。
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