JP7095665B2 - 耐火物構造体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
不定形耐火物用の支持材としては、金属製の金属支持材が一般的であるが、金属支持材の代わりとして、棒状の無機繊維質支持材(棒状成形体)を不定形耐火物内部に設置し不定形耐火物を保持する構成がある(特許文献1)。また、支持材として無機繊維質からなる耐熱繊維ロープを使用する構造体(特許文献2)もある。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、簡易に目的とする配置位置に耐熱繊維ロープが不定形耐火物内に埋設された耐火物構造体を簡易に構成可能な技術を提供することを目的とする。
課題解決のために、本発明の一態様の耐火物構造体は、支持構造物の表面である施工表面に被着した不定形耐火物と、上記不定形耐火物に埋設されて当該不定形耐火物を支持する支持材と、を有する耐火物構造体であって、上記支持材として、1又は2以上の耐熱繊維ロープを含み、ロープを引っ掛け可能な1又は2以上の掛止治具を有し、その掛止治具は、上記施工表面から突出し、上記耐熱繊維ロープは、その少なくとも一部が不定形耐火物の厚み方向に沿った方向に延在し、その延在するロープの上部位置若しくは下部位置の少なくとも一方が上記掛止治具に掛止されることでロープの延在方向が変更されており、上記耐熱繊維ロープは、上記施工表面側を基準として、少なくとも耐火物厚みの50%以上60%以下の範囲を延在する部分を有することを要旨とする。
すなわち、本発明の態様によれば、不定形耐火物の保持に使用され支持材を、金属性支持材から無機繊維質な耐熱繊維ロープ状支持材に変更することで、不定形耐火物内部に発生する熱応力を低下させ不定形耐火物を長寿命化させることができる。また本発明の態様によれば、不定形耐火物が設ける面が平面での曲面でも関係なく、簡易な施工で、不定形耐火物の厚み方向に目的の配置で耐熱繊維ロープが配置され、しかも不定形耐火物を流し込んでも、その配置された耐熱繊維ロープの変形が抑制されるようにロープが掛止治具で拘束される。この結果、本発明の態様によれば、より不定形耐火物の長寿命化を図ることが可能となる。また、本発明の態様によれば、上記構成を採用することで、上記効果を奏しつつ、耐熱繊維ロープを自由に設置することが可能となると共に、複数本の耐熱繊維ロープをまとめて施工することが可能となり、施工時間を短縮することが可能となる。また、一本の耐熱繊維ロープを、不定形耐火物内に、従来に比べて大きいな3次元領域に配置可能となる。
ここで、図面は模式的なものであり、各部品の大きさや長さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状及び構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが出来る。
本実施形態の耐火物構造体は、図1に示すように、金属製の支持構造物1と、支持構造物1の表面に被着した不定形耐火物4と、不定形耐火物4に埋設されて当該不定形耐火物4を支持して補強する支持材とを有する。なお、図1における符号5は、耐火物構造体の施工(製造)のために使用される型枠5を示す。型枠5は、耐火物構造体が製造されれば、撤去される。また、図1では、支持材を構成する耐熱繊維ロープ3の端部3a,3bが不定形耐火物4から外部に出ている状態となっている。耐火物構造体の製造後、この外部に出ている耐熱繊維ロープ3の端部は、必要に応じて、切断すればよい。
図1では、支持構造物1として鉄板が例示され、支持構造物1の上面(表面)の全面が、不定形耐火物4を設ける施工表面1aとなっている場合を例示している。施工表面1aは、支持構造物1の上面(表面)の一部だけであってもよい。
施工表面1aは、平面に限定されず、球面や円筒面(図13参照)などの曲面であっても構わない。
本実施形態の支持材は、1又は2以上の耐熱繊維ロープ3からなる。
(掛止治具)
耐火物構造体は、1又は2以上の耐熱繊維ロープ3を引っ掛け可能な1又は2以上の掛止治具を有する。
掛止治具は、施工表面1aから突出するように配置される。各耐熱繊維ロープ3は、その少なくとも一部が不定形耐火物4の厚み方向に沿った方向に延在し、その延在するロープ3の上部位置若しくは下部位置の少なくとも一方が掛止治具に掛止されることで延在方向が変更されて不定形耐火物4内に配置されている。
ここで、厚み方向に沿った方向とは、施工表面1aに直交する方向のほか、厚み方向に斜めに向かう方向も含む意味である。以下の説明では、厚み方向に沿った方向を厚み方向と記載する場合もある。
施工表面1aからの支持材の高さが、不定形耐火物4の厚みHの60%未満では不定形耐火物4が十分に保持できないことが一般的に知られている。そのため、耐熱繊維ロープ3は、施工表面1a側を基準として不定形耐火物4の厚みの50%以上60%以下の範囲を少なくとも延在している部分を有するように、不定形耐火物4の厚み方向に延在させる。好ましくは、30%以上70%以下の範囲を延在するように耐熱繊維ロープ3を設定する。
第1実施形態は、図1及び図2に示すように、掛止治具としてフック2を用いた例である。
第1実施形態では、複数のフック2が、施工表面1aに固定されている。フック2は1個であってもよい。複数のフック2は、例えば、平面視で格子状など等間隔で整列した配置パターンでも良いし、ランダムな配置パターンでもよい。
そして、耐熱繊維ロープ3(以下、単にロープ3とも記載する)が、図1に示すように、延在方向の途中部分(下部位置3c)をフック2に引っ掛けることで、不定形耐火物4の厚み方向にV字状に配置された場合を例示している。この例では、ロープ3の一端部3aが、型枠5の上端部に固定されて、不定形耐火物4の厚み方向に沿った方向に斜め下方に延在し、フック2に引っ掛けることで延在方向が変更されて、その変更点が下部位置3cとなる。更に、ロープ3は、斜め上方に延在し、ロープ3の端部3bが型枠5の上端部に固定されている。
ここで、施工表面1aからのフック2の張出量h1(高さ)は、フック2の熱膨張により不定形耐火物4に亀裂が発生するリスクを加味し、不定形耐火物4の厚みHの50%以下とすることが好ましい。より好ましくは、張出量h1は、不定形耐火物4の厚みの20%以下である。
また、図2に示すようにロープ3の配置の自由度は高い。符号3cは、ロープ3の延在方向の下部位置(引っ掛け位置)を表す。ロープ3は、例えば、平面視、格子状に配置する(不図示)。もっとも、複数のロープ3の配置パターンには限定はない。
例えば、一つのフック2に対し、複数のロープ3を引っ掛けて各ロープ3の延在方向を変更するような構成であって良い(図6参照)。
また、図3では、型枠5の上部位置に横架材6を設け、その横架材6に、上方に延在するロープ3の上部位置3dを引っ掛けて、ロープの延在方向を下方に変更する場合を例示している。
横架材6の、施工表面1aからの高さは、耐火物厚みHの60%以上が好ましい。
紐形状の横架材6は、例えば、針金から構成される。図3では、横架材6の端部が型枠5を貫通するように設けた例を示す。
横架材6は、例えば平面視、格子状に配置する(図5参照)。
この構成では、不定形耐火物4を上下に延在する部分の下部位置がフック2によって、下方から上方に延在方向が方向転換され、不定形耐火物4を上下に延在する部分の上部位置3dが横架材6によって、上方から下方に延在方向が方向転換されるようにして、ロープ3が不定形耐火物4内に配置されることなる。
なお、横架材6に引っ掛けるロープ3の箇所(上部位置3dを構成)を、図4のように、複数箇所としても良い。
上記のようにロープ3を配置したら、不定形耐火物4を型枠5内に流し込む。その後、上記横架材6を不定形耐火物4から引き抜くことで除去から、不定形耐火物4の養生を行う。ここで、横架材6を抜いたことで形成される不定形耐火物4内の穴は、不定形耐火物4自体の重さや加振によって塞ぐことが可能である。また、不定形耐火物4は粘性が高いため、横架材6を抜いても、ロープ3の位置は余り変更されない。また、不定形耐火物4流し込み時の変形をより抑制するために、耐熱繊維ロープ3として、樹脂等で硬化させたロープ3を使用するようにしても良い。
また、ロープ3の端部を、横架材6に結わくことなどによって、当該横架材6に固定しても良い。
また、図3及び図4では、横架材6が型枠5内を横断するように配置する場合を例示しているが、横架材6を、型枠5の上方に配置して使用しても良い。この場合、配置したロープ3の上部位置が不定形耐火物4よりも上方に位置する。製造した耐火物構造体において、不定形耐火物4の上方に張り出したロープ部分は、必要に応じて切断すればよい。
この例では、矩形の枠体7に、複数の紐状の横架材6を格子状に設けたものである。そして、枠体7を、型枠5の上部位置に取り付ける。そして、上下に延在させるロープ3における、下部位置3cをフック2に引っ掛け、上部位置3dを横架材6に引っ掛けて、上記のように各ロープ3を上下にジグザグ状に配置した例である。
図5の例では、平面視において、型枠5に対し枠体7を45度傾けて設置して、平面視における型枠5と枠体7の干渉部分を少なくしている。枠体7に設けた各横架材6の高さは、型枠5の上端部よりも低くても良いし、型枠5の上方位置でも良い。枠体7は、予め型枠5の一部として作製しておいてもよい。
このとき、図6のように、一つのフック2に複数のロープ3を引っ掛けるようにしてロープ3を配置してもよい。
また、不定形耐火物4の流し込み後、横架材6に関しては、耐熱繊維ロープ3を切断し格子状材料を取り除く方法、格子状材料を焼却する方法や格子状材料を破壊する方法、不定形耐火物4内部で溶解する方法が考えられる。格子状材料が不定形耐火物4内部に存在する場合は、設置した格子状材料は不定形耐火物4の流し込み後に、不定形耐火物4の外に引き抜くことで不定形耐火物4内部から格子状金枠を取り除くことが可能である。
上記の耐熱繊維ロープ3は、張力をもって配置させる方が、耐火材の流し込みの際の変位が抑えられるため好ましい。もっとも、耐熱繊維ロープ3の多少の緩みをもって配置させても構わない。延在方向の下部位置3cや上部位置3d、つまりロープの延在方向の変化点が掛止治具で拘束されているため、その間の耐熱繊維ロープ3に多少の緩みがあっても、耐火材流し込みの際の変位は小さい。
第2実施形態では、図9に示すように、掛止治具として、耐熱繊維ロープ3が通過可能な穴若しくは切欠きが形成されたプレキャストブロック10を有する場合の例である。図9の例では、プレキャストブロック10に、ロープ3を通過させる穴10aが開口している場を例示している。
プレキャストブロック10は、施工表面1aに載置されることで、施工表面1aから突出した状態で設定される。プレキャストブロック10の下面を、接着剤で施工表面1aに固定してもよい。
プレキャストブロック10の穴10aは、支持材を設置したい部位に穴10aをあけておく。図9の例では、上下に延在するロープ3の上部位置3eを掛止するために使用するため、不定形耐火物4の厚みの60%以上の位置に対しプレキャストブロック10の穴10aを設定する。
使用するキャストブロックは、図10のように、複数使用しても問題ない。図10の例では、ロープ3の端部3bをフック2に結わくことで固定する例を示している。
プレキャストブロック10の下部に穴10aは、不定形耐火物4の厚みの40%以下の位置に設けることが好ましい。40%より高い部位では耐熱繊維ロープ3と施工表面1aのなす角度が小さくなってしまうため、不定形耐火物4の支持が困難になるおそれがある。
ここで、図12や図13のように、不定形耐火物4内に配置したロープ3の端部3a,3b同士を、結んだり樹脂製の結束具などで連結したりして連結しても良い。なお、図13は、支持構造体が鋼管の場合の例であり、円筒状の施工表面1aに沿って、プレキャストブロック10を円周方向に沿って配置し、隣り合うプレキャストブロック10に設ける穴10aの位置を違いに違えた例である。この場合、径方向が不定形耐火物4の厚み方向となる。
そして、耐熱繊維ロープ3を設置した木枠に不定形耐火物4を流し込んだ。このとき、耐熱繊維ロープ3を変形せず形状維持が可能であった。また、格子状金枠が接触する部位の耐熱繊維ロープ3を切断することで、格子状金枠を不定形耐火物4から取り外すことができた。
1a 施工表面
2 フック(掛止治具)
3 耐熱繊維ロープ(支持材)
3a,3b 端部
3c、3f 下部位置
3d、3e 上部位置
4 不定形耐火物
5 型枠
6 横架材
7 枠体
10 プレキャストブロック(掛止治具)
10a 穴
10b 切欠き
11 プレート
Claims (10)
- 支持構造物の表面である施工表面に被着した不定形耐火物と、上記不定形耐火物に埋設されて当該不定形耐火物を支持する支持材と、を有する耐火物構造体であって、
上記支持材として、1又は2以上の耐熱繊維ロープを含み、
ロープを引っ掛け可能な2以上の掛止治具を有し、その掛止治具は、上記施工表面から突出し、
上記耐熱繊維ロープは、その少なくとも一部が不定形耐火物の厚み方向に沿った方向に延在し、その延在するロープの上部位置若しくは下部位置の少なくとも一方が上記掛止治具に掛止されることでロープの延在方向が変更されており、
上記耐熱繊維ロープは、2以上の上記掛止治具に掛止されることで、不定形耐火物の厚み方向に沿った方向に、ロープの延在方向が2回以上変更され、
上記耐熱繊維ロープは、上記施工表面側を基準として、少なくとも耐火物厚みの50%以上60%以下の範囲を延在する部分を有することを特徴とする耐火物構造体。 - 上記掛止治具として、上記施工表面に固定されたフックを有し、上記耐熱繊維ロープは、上記フックに引っ掛けられることで延在方向が変更されており、
上記施工表面からの上記フックの張出量が、耐火物厚みの50%以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載した耐火物構造体。 - 上記掛止治具として、上記耐熱繊維ロープが通過可能な穴若しくは切欠きが形成されたプレキャストブロックを有し、上記プレキャストブロックは、上記施工表面から突出した状態に配置され、
上記耐熱繊維ロープは、上記耐熱繊維ロープの穴若しくは切欠きを通過して、延在方向が変更されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した耐火物構造体。 - 上記穴若しくは切欠きは、上記施工表面側を基準として、耐火物厚みの40%以下及び60%以上の少なくとも一方の高さに設定されていることを特徴とする請求項3に記載した耐火物構造体。
- 予め設定した耐火物厚みを有する、請求項1に記載の耐火物構造体の製造方法であって、
上記施工表面を囲うように型枠を設置すると共に、ロープを掛止可能な掛止治具を上記施工表面に2以上設置する工程と、
耐熱繊維ロープの少なくとも一部を、型枠の上部側から底部側に延在させると共に、その延在させた耐熱繊維ロープの上部位置及び下部位置の少なくとも一方を上記掛止治具に掛止させることでロープの延在方向を変更させながら、当該耐熱繊維ロープを上記型枠内に配置する配置工程と、
上記配置工程の後に、上記型枠内に不定形耐火物を流し込む工程と、
を備え、
上記配置工程で、耐熱繊維ロープを、2以上の上記掛止治具に掛止されることでロープの延在方向を2回以上変更することで、型枠の上部側から底部側に向けて延在させると共に型枠の底部側から上部側に向けて延在させて配置する、
ことを特徴とする耐火物構造体の製造方法。 - 上記掛止治具として、上記施工表面に固定されたフックを有し、
上記耐熱繊維ロープを、上記フックに引っ掛けることで延在方向を変更しながら配置し、
上記施工表面からの上記フックの張出量が、耐火物厚みの50%以下である、
ことを特徴とする請求項5に記載した耐火物構造体の製造方法。 - 上記掛止治具として、上記耐熱繊維ロープが通過可能な穴若しくは切欠きが形成されたプレキャストブロックを有し、
上記プレキャストブロックを、上記施工表面から突出した状態に配置し、
上記耐熱繊維ロープを、上記プレキャストブロックの穴若しくは切欠きに通過させて、ロープの延在方向を変更させながら配置することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載した耐火物構造体の製造方法。 - 上記プレキャストブロックを上記施工表面上に配置した際、上記穴若しくは切欠きの位置が、上記施工表面を基準として、耐火物厚みの40%以下及び60%以上の少なくとも一方の高さに位置することを特徴とする請求項7に記載した耐火物構造体の製造方法。
- 上記配置工程において、上記型枠の上部位置若しくは型枠よりも上方に、横方向に延びる紐形状の横架材を1又は2以上設け、上記耐熱繊維ロープの上部位置を上記横架材に引っ掛けることで、ロープの延在方向を下方に変更することを特徴とする請求項5~請求項8のいずれか1項に記載した耐火物構造体の製造方法。
- 上記型枠内に不定形耐火物を流し込んだ後に、上記横架材は、上記不定形耐火物から除去されることを特徴とする請求項9に記載した耐火物構造体の製造方法。
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