<第1の実施の形態>
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るソフトスタート回路を含むDC/DCコンバータの回路図である。図1のDC/DCコンバータは、同期整流方式降圧型DC/DCコンバータである。
図1において、DC/DCコンバータは、制御回路DRV、第1トランジスタQ1、第2トランジスタQ2、インダクタL、キャパシタC1、キャパシタC2、抵抗R1~R3、エラーアンプERR、スロープ回路SLOPE、PWMコンパレータPWM、ソフトスタート回路SS及び発振回路OSCから構成される。インダクタLのインダクタンスは、例えば、0.47μHから47μHである。キャパシタC1の容量は、例えば、10μFから1000μFである。キャパシタC2の容量は、例えば、1000pFから10nFである。抵抗R3の抵抗は、例えば、1kΩから200kΩである。
なお、第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2は共にNMOSトランジスタ(Nチャネル金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)としているが、第1トランジスタQ1をPMOSトランジスタ(Pチャネル金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)、第2トランジスタQ2をNMOSトランジスタとしてもよい。また、第1トランジスタQ1にNMOSトランジスタが用いられる場合には、電源端子Vbb、ダイオードDb及びキャパシタCbstを含むブートストラップ回路が用いられる。ブートストラップ回路によって第1トランジスタQ1を確実にオンさせることができる。キャパシタCbstの容量は、例えば、100nFから1μFである。さらに、第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2には、MOSトランジスタではなくバイポーラトランジスタが用いられてもよい。
制御回路DRVは、パルス幅変調(PWM;Pulse Width Modulation)制御により、第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2を相補的にオンオフする。なお、相補的とは、第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2のオンオフ状態が完全に逆転している場合のほか、貫通電流防止の観点から第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2のオンオフ状態の遷移タイミングに所定の遅延、すなわちデッドタイムが与えられている場合をも含むものとする。
発振回路OSCは、バッファBu、抵抗Rss、第3トランジスタQ3~第6トランジスタQ6、定電流源CC1、定電流源CC2及び発振部OSCrを含む。発振部OSCrは、例えば、インバータ又は差動増幅器をリング状に接続したリングオシレータやCR発信器で構成されている。
次に、図1のソフトスタート回路を含むDC/DCコンバータの回路構成及び回路接続について説明する。
制御回路DRVの第1の出力端子は第1トランジスタQ1のゲートGに接続される。制御回路DRVの第2の出力端子は第2トランジスタQ2のゲートGに接続される。第1トランジスタQ1のドレインDは電源端子(高電位端子)Vinに接続される。第1トランジスタQ1のソースSはノードN1に接続される。第2トランジスタQ2のドレインDはノードN1に接続される。第2トランジスタQ2のソースSはグランド端子(低電位端子)GNDに接続される。インダクタLはノードN1とノードN2との間に接続される。キャパシタC1は、ノードN2とグランド端子GNDとの間に接続される。インダクタL及びキャパシタC1により平滑回路が構成される。ノードN2は出力端子OUTに接続される。出力端子OUTには、負荷RLが接続される。負荷RLとしては、例えば、CPUが接続される。出力端子OUTに流れる出力電流Ioutは、例えば、0Aから20Aである。電源端子Vinの電圧vinは、例えば、2.7Vから100Vである。出力端子OUTに出力される出力電圧Voutは、例えば、0.6Vから100Vである。
キャパシタCbstは、ノードN1と、ダイオードDbのカソードとの間に接続される。ダイオードDbのアノードは、電源端子Vbbに接続される。ダイオードDbのアノードは、制御回路DRVの第3の入力端子に接続される。キャパシタCbst、ダイオードDb及び電源端子Vbbによりブートストラップ回路が構成される。
抵抗R1は、ノードN2とノードN3との間に接続される。抵抗R2は、ノードN3とグランド端子GNDとの間に接続される。抵抗R1及び抵抗R2は分圧回路を構成し、出力端子OUTの出力電圧Voutを分圧する。エラーアンプERRの反転入力端子(-)はノードN3に接続される。エラーアンプERRの第1非反転入力端子(+)には第1参照電圧Vref1が印加される。ソフトスタート回路SSの出力端子は第2非反転入力端子(+)に接続される。エラーアンプERRの出力端子はPWMコンパレータPWMの反転入力端子(-)に接続される。キャパシタC2はエラーアンプERRの出力端子及び抵抗R3の一方の端子に接続される。抵抗R3の他方の出力端子はグランド端子GNDに接続される。キャパシタC2と抵抗R3との直列接続回路によって位相補償が行われる。位相補償によってDC/DCコンバータの周波数特性が補正され、安定した状態でDC/DCコンバータが作動される。PWMコンパレータPWMの出力端子は制御回路DRVの第1の入力端子に接続される。
また、ソフトスタート回路SSの出力端子はバッファBuの第1非反転入力端子(+)に接続される。バッファBuの第2非反転入力端子(+)には、第2参照電圧Vref2が印加される。バッファBuの出力端子は、第3トランジスタQ3のベースB及びバッファBuの反転入力端子(-)に接続される。第3トランジスタQ3のコレクタCはグランド端子GNDに接続される。第3トランジスタQ3のエミッタEは、第4トランジスタQ4のベースB及び定電流源CC1の一方の端子に接続される。抵抗Rssは、第4トランジスタQ4のエミッタEとグランド端子GNDとの間に接続される。第4トランジスタのコレクタCは、第5トランジスタQ5のドレインDに接続される。第5トランジスタQ5のドレインDは第5トランジスタQ5のゲートGに接続される。第5トランジスタQ5のゲートG及び第6トランジスタQ6のゲートGは共通に接続される。定電流源CC1の他方の端子、定電流源CC2の一方の端子、第5トランジスタQ5のソースS及び第6トランジスタQ6のソースSは電源端子Vccに接続される。第6トランジスタQ6のドレインDはノードN4に接続される。第5トランジスタQ5及び第6トランジスタQ6によりカレントミラー回路が構成される。定電流源CC2の一方の端子はノードN4に接続される。発振部OSCrの入力端子はノードN4に接続される。なお、第3トランジスタQ3及び第4トランジスタQ4は、バイポーラトランジスタではなく、MOSトランジスタで構成されてもよい。また、第5トランジスタQ5及び第6トランジスタQ6は、MOSトランジスタではなく、バイポーラトランジスタで構成されてもよい。
発振部OSCrの出力端子は制御回路部DRVの第2の入力端子及びスロープ回路SLOPEの第1入力端子に接続される。スロープ回路SLOPEの出力端子はPWMコンパレータPWMの非反転入力端子(+)に接続される。
次に、図1のソフトスタート回路を含むDC/DCコンバータの信号の流れ及び回路動作について説明する。
制御回路DRVは駆動信号S1及びS2を出力する。駆動信号S1及びS2はそれぞれ第1トランジスタQ1のゲートG及び第2トランジスタQ2のゲートGに入力される。これにより、第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2が交互にオンオフされ、インダクタLに電流ILが流れる。電流ILはキャパシタC1により平滑され、出力端子OUTに出力電圧Voutが発生する。出力端子OUTに負荷RLが接続されることで出力電流Ioutが出力される。
また、出力端子OUTの出力電圧Voutは、抵抗R1及び抵抗R2により分圧され、ノードN3にフィードバック電圧Vfbが生成される。エラーアンプERRは、ソフトスタート入力電圧Vss又は第1参照電圧Vref1の低い方とフィードバック電圧Vfbとを比較し、比較結果に応じた誤差信号Verrを出力する。フィードバック電圧Vfbは、例えば、0.6Vから2Vである。
また、ソフトスタート入力電圧Vssは、発振回路OSCのバッファBuの第1非反転入力端子(+)にも入力される。バッファBuは、ソフトスタート入力電圧Vss及び第2参照電圧Vref2の低い方とバッファBuの反転入力端子(-)に帰還されるソフトスタート出力電圧Vssoとを比較し、比較結果に応じたソフトスタート出力電圧Vssoを出力する。ソフトスタート出力電圧Vsso、及び定電流源CC1から生成される定電流Ibias1に基づいて第3トランジスタQ3及び第4トランジスタQ4が動作し、カレントミラー入力電流Id5が生成される。カレントミラー入力電流Id5に基づいて、第5トランジスタQ5及び第6トランジスタQ6から構成されるカレントミラー回路により、第6トランジスタQ6のドレインDにカレントミラー出力電流Id6が生成される。また、定電流源CC2は、定電流Ibias2を生成する。カレントミラー出力電流Id6及び定電流Ibias2からソフトスタート電流Ioscが生成される。ソフトスタート電流Ioscは、例えば、0.1μAから10μAである。なお、定電流源CC2は必須の構成要件ではない。
ソフトスタート電流Ioscは、発振部OSCrを構成する、例えば、リングオシレータに供給される。矩形信号Voscは、ソフトスタート電流Ioscに基づいて、発振部OSCrにより生成され、発振部OSCrの出力端子から出力される。ソフトスタート電流Ioscの大きさに応じて発振部OSCrで生成される矩形信号Voscの周波数が決定される。なお、カレントミラー出力電流Id6が生成されるまでは、定電流Ibias2がソフトスタート電流Ioscとして発振部OSCrに入力される。
矩形信号Voscは、制御回路部DRV及びスロープ回路SLOPEの第1入力端子に入力される。また、スロープ回路SLOPEの第2入力端子には、電源端子Vinの電圧vinが印加される。スロープ回路SLOPEの第3入力端子には、ノードN1の電圧Vswが印加される。電圧Vinと電圧Vswとが図示しない抵抗の両端にそれぞれ印加されることにより第1トランジスタQ1に流れる電流を検知する。スロープ回路SLOPEは、矩形信号Vosc、電源端子Vinの電圧vin及びノードN1の電圧Vswに基づいてスロープ信号Vslを出力する。PWMコンパレータPWMは、スロープ信号Vslと誤差信号Verrとを比較して、パルス幅変調信号Vpwmを出力する。パルス幅変調信号Vpwmの論理レベルは、スロープ信号Vslのレベルが誤差信号Verrのレベルを上回ったときにハイレベルHとなり、スロープ信号Vslのレベルが誤差信号Verrのレベル以下の場合は、ローレベルLとなる。制御回路DRVは、パルス幅変調信号Vpwmに基づいて第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2のスイッチングを制御する。PWMコンパレータPWMから出力されるパルス幅変調信号Vpwmは、第1トランジスタQ1に流れる電流の大きさが反映された、いわゆる電流制御方式の出力信号である。
図1のDC/DCコンバータの起動時において、ソフトスタート回路SSから出力されるソフトスタート入力電圧Vssは、徐々に増加する。それに伴って、ソフトスタート出力電圧Vsso、カレントミラー入力電流Id5及びカレントミラー出力電流Id6も徐々に増加する。それにより、ソフトスタート電流Ioscが徐々に増加する。そのため、矩形信号Voscの周波数及びスロープ信号Vslの周波数が直線的に徐々に増加し、パルス幅変調信号Vpwmの周波数が直線的に徐々に増加する。第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2のスイッチング速度が徐々に増加するように制御されるため、出力端子OUTの出力電圧Voutが徐々に増加する。その結果、ソフトスタート時の出力電圧Voutのオーバーシュートが抑制される。
図2は、図1の本発明の第1の実施の形態に係るソフトスタート回路を含むDC/DCコンバータにおけるタイミング図である。DC/DCコンバータの回路動作について図2を参照して説明する。
時刻T1において、図1のDC/DCコンバータが起動すると、参照電圧Vref1及び参照電圧Vref2がゼロレベルから一定レベルまで上昇する。また、ソフトスタート入力電圧Vssは徐々に増加し始める。それに伴って、ソフトスタート出力電圧Vsso、カレントミラー入力電流Id5も緩やかに増加し始める。そのため、発振回路OSCは、矩形信号Voscを出力し始める。それにより、制御回路DRVは、第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2を相補的にオンオフさせ始める。その結果、出力端子OUTの出力電圧Voutが徐々に増加し始める。また、フィードバック電圧Vfbも徐々に増加し始める。エラーアンプERRは、フィードバック電圧Vfbとソフトスタート入力電圧Vssとを比較し、誤差信号Verrを徐々に増加させ始める。
時刻T1から時刻T2にかけて、ソフトスタート入力電圧Vssは緩やかに増加する。それに伴って、ソフトスタート出力電圧Vsso、カレントミラー入力電流Id5も緩やかに増加する。そのため、発振回路OSCは、直線的に徐々に増加する発振周波数fosc1の矩形信号Voscを出力する。それにより、第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2のスイッチング周波数が徐々に増加する。その結果、出力端子OUTの出力電圧Voutが緩やかに増加する。また、フィードバック電圧Vfbも徐々に増加する。エラーアンプERRは、フィードバック電圧Vfbとソフトスタート入力電圧Vssとを比較し、誤差信号Verrを徐々に増加さる。なお、従来の分周器を用いたソフトスタート回路の場合、周波数を切り替える際に、フィードバック電圧Vfbにリプルr1、リプルr2及びリプルr3が発生するため、オーバーシュートo1、オーバーシュートo2及びオーバーシュートo3が発生し得る。
時刻T2において、ソフトスタート入力電圧Vssが参照電圧Vref1を上回ると、エラーアンプERRは、フィードバック電圧Vfbと参照電圧Vref1とを比較し始める。また、バッファ回路Buにより、ソフトスタート出力電圧VssoがVref2の値にクランプされ、ソフトスタート出力電圧Vssoの増加が止まる。それにより、カレントミラー入力電流Id5の増加が止まる。そのため、矩形信号Voscの発振周波数foscの増加が止まり、一定の発振周波数fosc2の矩形信号Voscが出力されようになる。その結果、出力電圧Voutの増加が止まり、出力電圧Voutが一定になるように第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2のオンオフが制御される。なお、一定の発振周波数fosc2は、例えば、100kHzから10MHzである。また、ソフトスタート入力電圧Vssが増加し始めてからクランプされるまでのT1からT2の時間は、例えば、1msecから100msecである。
図3は、図1の本発明の第1の実施の形態に係るソフトスタート回路を含むDC/DCコンバータにおけるタイミング図である。DC/DCコンバータの回路動作について図3を参照して説明する。
時刻T1において、矩形信号VoscがローレベルLからハイレベルHに変化すると、駆動信号S2がハイレベルHからローレベルLに変化する。
時刻T1から時刻T2において、駆動信号S2がハイレベルHからローレベルLに変化して一定期間後に、駆動信号S1がローレベルLからハイレベルHに変化する。これにより、第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2に貫通電流が流れることが防止される。ここで、駆動信号S1のローレベルL及びハイレベルHは、電源端子Vinの電圧vin及びダイオードDbのアノードに供給される電源電圧vbbの大きさで決定される。駆動信号S1のローレベルLは、ブートストラップ回路により、0電位ではなく、電源端子Vinの電圧vinにほぼ等しい大きさになる。また、駆動信号S1のハイレベルHは、ブートストラップ回路により、電源電圧vbbからダイオードDbの順方向電圧Vdbが降下した電圧が電圧Vinに上積みされた大きさとなる。ハイレベルHは、電源端子Vinの電源電圧vinよりも、例えば、3Vから5V高い電圧に設定される。また、駆動信号S1がローレベルLからハイレベルHに変化すると電圧VswがローレベルLからハイレベルHに変化する。また、矩形信号Voscの立ち上がりに応答してスロープ信号Vslが生成される。
時刻T2において、スロープ信号Vslが立ち下がるとパルス幅変調信号Vpwmが立ち上がる。それにより、駆動信号S1がハイレベルHからローレベルLに変化する。さらに、電圧VswがハイレベルHからローレベルLに変化する。
時刻T2から一定期間後にVpwmが立ち下がる。また、駆動信号S1がハイレベルHからローレベルLに変化して一定期間後に、駆動信号S2がローレベルLからハイレベルHに変化する。これにより、第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2に貫通電流が流れることが防止される。
時刻T3及びT4、時刻T5及びT6並びに時刻T7及び時刻T8においては、時刻T1及びT2と同様に動作する。しかし、時刻T2から時刻T3までの時間は、時刻T4から時刻T5までの時間より長く、時刻T4から時刻T5までの時間は、時刻T6から時刻T7までの時間より長い。このように、時刻T1から時刻T8にかけて、矩形信号Voscの発振周波数foscが直線的に徐々に増加することにより、第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2のスイッチング速度が徐々に増加するため、出力端子OUTの出力電圧Voutが徐々に増加する。
図4は、図1の本発明の第1の実施の形態に係るソフトスタート回路を含むDC/DCコンバータにおける発振周波数(fosc)-ソフトスタート電流(Iosc)特性を表す図である。以下、図4において、図1を参照して説明する。
カレントミラー出力電流Id6が0のとき、定電流源CC2の定電流Ibias2がソフトスタート電流Ioscとして発振部OSCrに入力されるため、発振周波数foscsの矩形信号Voscが発振部OSCrから出力される。カレントミラー出力電流Id6が増加すると、ソフトスタート電流Ioscが直線的に徐々に増加するため、直線的に徐々に増加する発振周波数fosc1の矩形信号Voscが発振部OSCrから出力される。その後、ソフトスタート電流Ioscが電流値Iosc1になると、バッファ回路Buによりソフトスタート出力電圧Vssoがクランプされ、その結果、カレントミラー出力電流Id6の増加が止まり、ソフトスタート電流Ioscの増加が止まる。これにより、矩形信号Voscの発振周波数foscの増加が止まる。そのため、一定の発振周波数fosc2の矩形信号Voscが発振部OSCrから出力される。
以上のように、図1のDC/DCコンバータが起動すると、発振回路OSCの発振周波数foscが直線的に徐々に増加するため出力電圧Voutが緩やかに増加する。そのため、出力電圧Voutのオーバーシュートが抑制される。また、従来のソフトスタート回路とは異なり、発振回路OSCの矩形信号Voscを分周する必要がないため、より出力電圧Voutのオーバーシュートが抑制される。また、矩形信号Voscを分周する必要がないため、分周器、コンパレータ等が不要となり、回路構成が簡素化する。
<第2の実施の形態>
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るソフトスタート回路を含むDC/DCコンバータの回路図である。図5のDC/DCコンバータは、同期整流方式昇圧型DC/DCコンバータである。
図5において、DC/DCコンバータは、制御回路DRV、第1トランジスタQ10、第2トランジスタQ20、インダクタL10、キャパシタC10、キャパシタC2、抵抗R10、抵抗R20、抵抗R3、エラーアンプERR、スロープ回路SLOPE、PWMコンパレータPWM、ソフトスタート回路SS及び発振回路OSCから構成される。インダクタL10のインダクタンスは、例えば、0.47μHから47μHである。キャパシタC10の容量は、例えば、10μFから1000μFである。キャパシタC2の容量は、例えば、1000pFから10nFである。抵抗R3の抵抗は、例えば、1kΩから200kΩである。
なお、第1トランジスタQ10及び第2トランジスタQ20は共にNMOSトランジスタとしているが、第1トランジスタQ10をPMOSトランジスタ、第2トランジスタQ20をNMOSトランジスタとしてもよい。また、第1トランジスタQ10にNMOSトランジスタが用いられる場合には、キャパシタ及びダイオードを含むブートストラップ回路(図示せず。)が用いられる。ブートストラップ回路によって第1トランジスタQ10を確実にオンさせることができる。さらに、第1トランジスタQ10及び第2トランジスタQ20には、MOSトランジスタではなくバイポーラトランジスタが用いられてもよい。
制御回路DRVは、パルス幅変調制御により、第1トランジスタQ10及び第2トランジスタQ20を相補的にオンオフする。なお、相補的とは、第1トランジスタQ10及び第2トランジスタQ20のオンオフ状態が完全に逆転している場合のほか、貫通電流防止の観点から第1トランジスタQ10及び第2トランジスタQ20のオンオフ状態の遷移タイミングに所定の遅延、すなわちデッドタイムが与えられている場合をも含むものとする。
発振回路OSCは、バッファBu、抵抗Rss、第3トランジスタQ3~第6トランジスタQ6、定電流源CC1、定電流源CC2及び発振部OSCrを含む。発振部OSCrは、例えば、インバータ又は差動増幅器をリング状に接続したリングオシレータやCR発信器で構成されている。
次に、図5のソフトスタート回路を含むDC/DCコンバータの回路構成及び回路接続について説明する。
制御回路DRVの第1の出力端子は第1トランジスタQ10のゲートGに接続される。制御回路DRVの第2の出力端子は第2トランジスタQ20のゲートGに接続される。インダクタL10は電源端子(高電位端子)Vin10とノードN10との間に接続される。第1トランジスタQ10のドレインDはノードN10に接続される。第1トランジスタQ10のソースSはグランド端子(低電位端子)GNDに接続される。第2トランジスタQ20のドレインDはノードN10に接続される。第2トランジスタQ20のソースSはノードN20に接続される。キャパシタC10は、ノードN20とグランド端子GNDとの間に接続される。ノードN20は出力端子OUTに接続される。出力端子OUTには、負荷RLが接続される。負荷RLとしては、例えば、LED(Light Emitting Diode)が接続される。
抵抗R10は、ノードN20とノードN30との間に接続される。抵抗R20は、ノードN30とグランド端子GNDとの間に接続される。抵抗R10及び抵抗R20は分圧回路を構成し、出力端子OUT10の出力電圧Vout10を分圧する。エラーアンプERRの反転入力端子(-)はノードN30に接続される。エラーアンプERRの第1非反転入力端子(+)には第1参照電圧Vref1が印加される。ソフトスタート回路SSの出力端子は第2非反転入力端子(+)に接続される。エラーアンプERRの出力端子はPWMコンパレータPWMの反転入力端子(-)に接続される。キャパシタC2はエラーアンプERRの出力端子及び抵抗R3の一方の端子に接続される。抵抗R3の他方の出力端子はグランド端子GNDに接続される。キャパシタC2と抵抗R3との直列接続回路によって位相補償が行われる。位相補償によってDC/DCコンバータの周波数特性が補正され、安定した状態でDC/DCコンバータが作動される。PWMコンパレータPWMの出力端子は制御回路DRVの第1の入力端子に接続される。
また、ソフトスタート回路SSの出力端子はバッファBuの第1非反転入力端子(+)に接続される。バッファBuの第2非反転入力端子(+)には、第2参照電圧Vref2が印加される。バッファBuの出力端子は、第3トランジスタQ3のベースB及びバッファBuの反転入力端子(-)に接続される。第3トランジスタQ3のコレクタCはグランド端子GNDに接続される。第3トランジスタQ3のエミッタEは、第4トランジスタQ4のベースB及び定電流源CC1の一方の端子に接続される。抵抗Rssは、第4トランジスタQ4のエミッタEとグランド端子GNDとの間に接続される。第4トランジスタのコレクタCは、第5トランジスタQ5のドレインDに接続される。第5トランジスタQ5のドレインDは第5トランジスタQ5のゲートGに接続される。第5トランジスタQ5のゲートG及び第6トランジスタQ6のゲートGは共通に接続される。定電流源CC1の他方の端子、定電流源CC2の一方の端子、第5トランジスタQ5のソースS及び第6トランジスタQ6のソースSは電源端子Vccに接続される。第6トランジスタQ6のドレインDはノードN4に接続される。第5トランジスタQ5及び第6トランジスタQ6によりカレントミラー回路が構成される。定電流源CC2の一方の端子はノードN4に接続される。発振部OSCrの入力端子はノードN4に接続される。なお、第3トランジスタQ3及び第4トランジスタQ4は、バイポーラトランジスタではなく、MOSトランジスタで構成されてもよい。また、第5トランジスタQ5及び第6トランジスタQ6は、MOSトランジスタではなく、バイポーラトランジスタで構成されてもよい。
発振部OSCrの出力端子は制御回路部DRVの第2の入力端子及びスロープ回路SLOPEの第1入力端子に接続される。スロープ回路SLOPEの出力端子はPWMコンパレータPWMの非反転入力端子(+)に接続される。
次に、図5のソフトスタート回路を含むDC/DCコンバータの信号の流れ及び回路動作について説明する。
制御回路DRVは駆動信号S10及びS20を出力する。駆動信号S10及びS20はそれぞれ第1トランジスタQ10のゲートG及び第2トランジスタQ20のゲートGに入力される。これにより、第1トランジスタQ10及び第2トランジスタQ20が交互にオンオフされ、インダクタL10に電流IL10が流れる。電流IL10はキャパシタC10により平滑され、出力端子OUT10に出力電圧Vout10が発生する。出力端子OUT10に負荷RLが接続されることで出力電流Iout10が出力される。
また、出力端子OUT10の出力電圧Vout10は、抵抗R10及び抵抗R20により分圧され、ノードN30にフィードバック電圧Vfb10が生成される。エラーアンプERRは、ソフトスタート入力電圧Vss又は第1参照電圧Vref1の低い方とフィードバック電圧Vfb10とを比較し、比較結果に応じた誤差信号Verrを出力する。フィードバック電圧Vfb10は、例えば、0.6Vから2Vである。
また、ソフトスタート入力電圧Vssは、発振回路OSCのバッファBuの第1非反転入力端子(+)にも入力される。バッファBuは、ソフトスタート入力電圧Vss及び第2参照電圧Vref2の低い方とバッファBuの反転入力端子(-)に帰還されるソフトスタート出力電圧Vssoとを比較し、比較結果に応じたソフトスタート出力電圧Vssoを出力する。ソフトスタート出力電圧Vsso、及び定電流源CC1から生成される定電流Ibias1に基づいて第3トランジスタQ3及び第4トランジスタQ4が動作し、カレントミラー入力電流Id5が生成される。カレントミラー入力電流Id5に基づいて、第5トランジスタQ5及び第6トランジスタQ6から構成されるカレントミラー回路により、第6トランジスタQ6のドレインDにカレントミラー出力電流Id6が生成される。また、定電流源CC2は、定電流Ibias2を生成する。カレントミラー出力電流Id6及び定電流Ibias2からソフトスタート電流Ioscが生成される。ソフトスタート電流Ioscは、例えば、0.1μAから10μAである。なお、定電流源CC2は必須の構成要件ではない。
ソフトスタート電流Ioscは、発振部OSCrを構成する、例えば、リングオシレータに供給される。矩形信号Voscは、ソフトスタート電流Ioscに基づいて、発振部OSCrにより生成され、発振部OSCrの出力端子から出力される。ソフトスタート電流Ioscの大きさに応じて発振部OSCrで生成される矩形信号Voscの周波数が決定される。なお、カレントミラー出力電流Id6が生成されるまでは、定電流Ibias2がソフトスタート電流Ioscとして発振部OSCrに入力される。
矩形信号Voscは、制御回路部DRV及びスロープ回路SLOPEの第1入力端子に入力される。また、スロープ回路SLOPEの第2入力端子には、電源端子Vin10の電圧vin10が印加される。スロープ回路SLOPEの第3入力端子には、ノードN10の電圧Vsw10が印加される。電圧Vinと電圧Vsw10とが図示しない抵抗の両端にそれぞれ印加されることにより第1トランジスタQ10に流れる電流を検知する。スロープ回路SLOPEは、矩形信号Vosc、電源端子Vin10の電圧vin10及びノードN10の電圧Vsw10に基づいてスロープ信号Vslを出力する。PWMコンパレータPWMは、スロープ信号Vslと誤差信号Verrとを比較して、パルス幅変調信号Vpwmを出力する。パルス幅変調信号Vpwmの論理レベルは、スロープ信号Vslのレベルが誤差信号Verrのレベルを上回ったときにハイレベルHとなり、スロープ信号Vslのレベルが誤差信号Verrのレベル以下の場合は、ローレベルLとなる。制御回路DRVは、パルス幅変調信号Vpwmに基づいて第1トランジスタQ10及び第2トランジスタQ20のスイッチングを制御する。PWMコンパレータPWMから出力されるパルス幅変調信号Vpwmは、第1トランジスタQ10に流れる電流の大きさが反映された、いわゆる電流制御方式の出力信号である。
図5のDC/DCコンバータの起動時において、ソフトスタート回路SSから出力されるソフトスタート入力電圧Vssは、徐々に増加する。それに伴って、ソフトスタート出力電圧Vsso、カレントミラー入力電流Id5及びカレントミラー出力電流Id6も徐々に増加する。それにより、ソフトスタート電流Ioscが徐々に増加する。そのため、矩形信号Voscの周波数及びスロープ信号Vslの周波数が直線的に徐々に増加し、パルス幅変調信号Vpwmの周波数が直線的に徐々に増加する。第1トランジスタQ10及び第2トランジスタQ20のスイッチング速度が徐々に増加するように制御されるため、出力端子OUT10の出力電圧Vout10が徐々に増加する。その結果、ソフトスタート時の出力電圧Vout10のオーバーシュートが抑制される。
以上のように、図5のDC/DCコンバータが起動すると、発振回路OSCの発振周波数foscが直線的に徐々に増加するため出力電圧Vout10が緩やかに増加する。そのため、出力電圧Vout10のオーバーシュートが抑制される。また、従来のソフトスタート回路とは異なり、発振回路OSCの矩形信号Voscを分周する必要がないため、より出力電圧Vout10のオーバーシュートが抑制される。また、矩形信号Voscを分周する必要がないため、分周器、コンパレータ等が不要となり、回路構成が簡素化する。
なお、本発明に係る発振回路OSC及びソフトスタート回路SSは、昇圧型と降圧型の両方を兼ね備えた昇降圧型DC/DCコンバータに用いられてもよい。
<スイッチング電源装置(基本構成)>
図6は、スイッチング電源装置の基本構成を示す全体ブロック図である。本構成例のスイッチング電源装置1は、入力電圧Vinを降圧して所望の出力電圧Voutを生成する降圧型のDC/DCコンバータであり、半導体装置100と、これに外付けされる種々のディスクリート部品(抵抗R1~R3、キャパシタC1~C4、及び、インダクタL1)と、を有する。
半導体装置100は、いわゆるスイッチング電源ICであり、上側トランジスタ101Hと、下側トランジスタ101Lと、上側ドライバ回路102Hと、下側ドライバ回路102Lと、ロジック回路103と、第1レギュレータ回路104と、第2レギュレータ回路105と、第3レギュレータ回路106と、ブートストラップ回路107と、基準電圧生成回路108と、ソフトスタート電圧生成回路109と、誤差増幅回路110と、発振回路111と、スロープ電圧生成回路112と、比較回路113と、減電圧保護回路114と、温度保護回路115と、短絡保護回路116と、過電圧保護回路117と、過電流保護回路118と、を集積化して成る。
また、半導体装置100は、装置外部との電気的な接続を確立するための手段として、外部端子T1~T8を有している。外部端子T1(ブートストラップ端子)は、キャパシタC3の第1端に接続されている。キャパシタC3の第2端は、外部端子T8に接続されている。外部端子T2(電源端子)は、入力電圧Vinの入力端とキャパシタC1の第1端に接続されている。キャパシタC1の第2端は、接地端に接続されている。外部端子T3(イネーブル端子)は、イネーブル信号ENの入力端に接続されている。外部端子T4(アナログ系接地端子)は、アナログ系接地端AGNDに接続されている。外部端子T5(帰還端子)は、抵抗R1と抵抗R2との接続ノード(=帰還電圧Vfbの印加端)に接続されている。外部端子T6(位相補償端子)は、キャパシタC4の第1端に接続されている。キャパシタC4の第2端は、抵抗R3の第1端に接続されている。抵抗R3の第2端は、接地端に接続されている。外部端子T7(パワー系接地端子)は、パワー系接地端PGNDに接続されている。外部端子T8(スイッチ端子)は、インダクタL1の第1端に接続されている。インダクタL1の第2端は、出力電圧Voutの出力端と、キャパシタC2の第1端と、抵抗R1の第1端に接続されている。キャパシタC2の第2端は、接地端に接続されている。抵抗R1の第2端は、抵抗R2の第1端に接続されている。抵抗R2の第2端は、接地端に接続されている。
続いて、半導体装置100に集積化された回路ブロック毎の概要を説明する。
上側トランジスタ101Hは、外部端子T2と外部端子T8との間に接続されたNチャネル型MOS[metal oxide semiconductor]電界効果トランジスタであり、出力トランジスタとして機能する。上側トランジスタ101Hのドレインは、外部端子T2に接続されている。上側トランジスタ101Hのソースとバックゲートは、いずれも外部端子T8に接続されている。上側トランジスタ101Hのゲートは、上側ドライバ回路102Hの出力端(=上側ゲート信号GHの出力端)に接続されている。上側トランジスタ101Hは、上側ゲート信号GHがハイレベルであるときにオンし、上側ゲート信号GHがローレベルであるときにオフする。
下側トランジスタ101Lは、外部端子T8と外部端子T7との間に接続されたNチャネル型MOS電界効果トランジスタであり、同期整流トランジスタとして機能する。下側トランジスタ101Lのドレインは、外部端子T8に接続されている。下側トランジスタ101Lのソースとバックゲートは、いずれも外部端子T7に接続されている。下側トランジスタ101Lのゲートは、下側ドライバ回路102Lの出力端(=下側ゲート信号GLの出力端)に接続されている。下側トランジスタ101Lは、下側ゲート信号GLがハイレベルであるときにオンし、下側ゲート信号GLがローレベルであるときにオフする。
上側トランジスタ101Hと下側トランジスタ101Lを相補的にオン/オフさせることにより、外部端子T8には矩形波状のスイッチ電圧Vsw(ハイレベル:Vin、ローレベル:PGND)が現れる。このスイッチ電圧VswをインダクタL1とキャパシタC2で平滑することにより、出力電圧Voutが生成される。
このように、本構成例のスイッチング電源装置1では、上側トランジスタ101H、下側トランジスタ101L、インダクタL1、及び、キャパシタC2を用いることにより、入力電圧Vinを降圧して所望の出力電圧Voutを生成するスイッチ出力段が形成されている。
なお、上側トランジスタ101Hと下側トランジスタ101Lは、半導体装置100に外付けすることも可能である。その場合には、上側ゲート信号GHと下側ゲート信号GLをそれぞれ外部出力するための外部端子が必要となる。また、上側トランジスタ101Hとして、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタを用いることも可能である。その場合には、ブートストラップ回路107が不要となる。また、上側トランジスタ101Hや下側トランジスタ101Lとして、IGBT[insulated gate bipolar transistor]などを用いることも可能である。
また、スイッチ出力段の整流方式としては、下側トランジスタ101Lを用いた同期整流方式に代えて、ダイオード整流方式を採用することも可能である。その場合、下側トランジスタ101Lと置き換えられるダイオードについては、カソードを外部端子T8に接続し、アノードを外部端子T7に接続すればよい。
上側ドライバ回路102Hは、上側オン/オフ制御信号SHの電流能力を高めて上側ゲート信号GH(ハイレベル:Vb、ローレベル:Vsw)を生成することにより、スイッチ出力段の上側トランジスタ101Hを駆動する。
下側ドライバ回路102Lは、下側オン/オフ制御信号SLの電流能力を高めて下側ゲート信号GL(ハイレベル:Vreg、ローレベル:PGND)を生成することにより、スイッチ出力段の下側トランジスタ101Lを駆動する。
ロジック回路103は、上側トランジスタ101Hと下側トランジスタ101Lを相補的に駆動すべく、オン信号S1とオフ信号S2に応じて上側オン/オフ制御信号SHと下側オン/オフ制御信号SLを生成する。具体的に述べると、ロジック回路103は、オン信号S1のパルスエッジを受けて、上側オン/オフ制御信号SHをハイレベルとし、下側オン/オフ制御信号SLをローレベルとする。逆に、ロジック回路103は、オフ信号S2のパルスエッジを受けて、上側オン/オフ制御信号SHをローレベルとし、下側オン/オフ制御信号SLをハイレベルとする。
なお、ロジック回路103は、スイッチ出力段に過大な貫通電流が流れないように、上側オン/オフ制御信号SHと下側オン/オフ制御信号SLの論理切替タイミングを僅かにずらして、上側トランジスタ101Hと下側トランジスタ101Lの同時オフ期間(いわゆるデッドタイム)を設ける機能を備えている。
また、ロジック回路103は、異常保護信号SPに応じてスイッチ出力段のスイッチング動作を強制的に停止させる機能(=上側オン/オフ制御信号SHと下側オン/オフ制御信号SLを共にローレベルとする機能)も備えている。
第1レギュレータ回路104は、入力電圧Vinから第1定電圧Vpreg生成するプリレギュレータに相当する。なお、第1レギュレータ回路104は、外部端子T3を介して入力されるイネーブル信号ENに応じてその出力動作が許可/禁止される。具体的に述べると、第1レギュレータ回路104の出力動作は、イネーブル信号ENがハイレベルであるときに許可され、イネーブル信号ENがローレベルであるときに禁止される。
第2レギュレータ回路105は、第1定電圧Vpregから第2定電圧Vregを生成するメインレギュレータに相当する。このように、プリレギュレータとメインレギュレータの2段構成とすることにより、入力変動の影響を受けにくい第2定電圧Vregを生成することが可能となる。
第3レギュレータ回路106は、入力電圧Vinから第3定電圧Vbregを生成するブートストラップ用レギュレータに相当する。
ブートストラップ回路107は、先述のキャパシタC3と半導体装置100に内蔵されているダイオードD1を用いてブースト電圧Vbを生成し、これを上側ドライバ回路102Hに供給する。なお、ダイオードD1のアノードは、第3レギュレータ回路106の出力端(=第3定電圧Vbregの出力端)に接続されている。また、ダイオードD1のカソードは、外部端子T1(=ブースト電圧Vbの印加端)に接続されている。
ブートストラップ回路107の動作について簡単に説明する。外部端子T8に現れるスイッチ電圧Vswがローレベル(PGND=0V)であるときには、ダイオードD1が順バイアスとなるので、第3定電圧Vbregを用いたキャパシタC3の充電が行われる。このとき、ブースト電圧Vbは、第3定電圧VbregからダイオードD1の順方向降下電圧Vfを差し引いた電圧値(=Vbreg-Vf)となる。
一方、スイッチ電圧Vswがローレベル(0V)からハイレベル(Vin)に立ち上がると、キャパシタC3の電荷保存則により、ブースト電圧Vbもスイッチ電圧Vswの上昇分だけ引き上げられる。すなわち、ブースト電圧Vbは、入力電圧VinにキャパシタC3の両端間電圧(Vbreg-Vf)を足し合わせた高電圧(=Vin+Vbreg-Vf)となる。
このようなブースト電圧Vbを上側ドライバ回路102Hに供給すれば、上側ゲート信号GHのハイレベルを入力電圧Vinよりも高めることができるので、上側トランジスタ101Hをオンすることが可能となる。
基準電圧生成回路108は、第1レギュレータ回路104の出力端(=第1定電圧Vpregの出力端)と接地端との間に直列接続された抵抗R4及びR5を含み、互いの接続ノードから基準電圧Vref(=第1定電圧Vpregの分圧電圧に相当)を出力する。
ソフトスタート電圧生成回路109は、スイッチング電源装置1の起動時に緩やかに上昇するソフトスタート電圧Vssを生成する。なお、ソフトスタート電圧生成回路109は、異常保護信号SPに応じてソフトスタート電圧Vssを初期値(0V)にリセットする機能も備えている。
誤差増幅回路110は、第1非反転入力端(+)に入力される基準電圧Vrefと第2非反転入力端(+)に入力されるソフトスタート電圧Vssのより低い方と、反転入力端(-)に印加される帰還電圧Vfbとの差分に応じて誤差電圧V1を生成する。誤差電圧V1は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref(またはソフトスタート電圧Vss)よりも低いときに上昇し、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref(またはソフトスタート電圧Vss)よりも高いときに低下する。なお、誤差増幅回路110の出力端には、外部端子T6を介して位相補償回路(キャパシタC4と抵抗R3)が接続されている。
発振回路111は、第1定電圧Vpregの供給を受けて動作し、スイッチング周波数fswで矩形波状のオン信号S1を生成する。
スロープ電圧生成回路112は、オン信号S1に同期してスロープ波状(三角波状や鋸波状など)のスロープ電圧V2を生成する。なお、スロープ電圧生成回路112は、スイッチ出力段に流れるインダクタ電流ILの大きさに応じて、スロープ電圧V2の傾きを調整する機能(=スロープ補償機能)を備えている。このような構成とすることにより、いわゆるカレントモード制御を行うことができるので、スイッチング電源装置1の負荷応答性を高めることが可能となる。
比較回路113は、反転入力端(-)に印加される誤差電圧V1と非反転入力端(+)に印加されるスロープ電圧V2とを比較してオフ信号S2を生成する。オフ信号S2は、誤差電圧V1がスロープ電圧V2よりも高いときにローレベルとなり、誤差電圧V1がスロープ電圧V2よりも低いときにハイレベルとなる。
減電圧保護回路114は、第1定電圧Vpregを監視して減電圧異常を検出する。
温度保護回路115は、第1定電圧Vpregの供給を受けて動作し、半導体装置100の接合温度Tjを監視して温度異常を検出する。
短絡保護回路116は、第2定電圧Vregの供給を受けて動作し、例えば帰還電圧Vfbを監視して短絡異常(例えば出力電圧Voutの出力端が接地端ないしはこれに準ずる低電位端に短絡した地絡状態)を検出する。
過電圧保護回路117は、第2定電圧Vregの供給を受けて動作し、例えば帰還電圧Vfbを監視して過電圧異常を検出する。
過電流保護回路118は、第2定電圧Vregの供給を受けて動作し、例えばスイッチ電圧Vswを監視してスイッチ出力段に流れる過電流を検出する。過電流保護回路118の形式としては、一周期毎にスイッチング動作の強制停止と自己復帰を繰り返すパルスバイパルス形式が採用されている。
<ソフトスタート動作>
図7は、ソフトスタート動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順番に、オン信号S1、帰還電圧Vfb(実線)、ソフトスタート電圧Vss(破線)、基準電圧Vref(一点鎖線)、誤差電圧V1(破線)、スロープ電圧V2(実線)、オフ信号S2、及び、スイッチ電圧Vswが描写されている。
オン信号S1がハイレベルに立ち上がると、上側トランジスタ101Hがオンし、下側トランジスタ101Lがオフするので、スイッチ電圧Vswがハイレベルとなる。また、このとき、スロープ電圧V2が所定の傾きを持って初期値から上昇し始める。
その後、スロープ電圧V2が誤差電圧V1よりも高くなると、オフ信号S2がハイレベルに立ち上がる。その結果、上側トランジスタ101Hがオフし、下側トランジスタ101Lがオンするので、スイッチ電圧Vswがローレベルとなる。また、このとき、スロープ電圧V2が初期値にリセットされる。
ところで、誤差電圧V1とスロープ電圧V2との交差タイミングは、誤差電圧V1が高いほど遅くなる。従って、上側トランジスタ101Hのオン期間Tonが長くなり、延いては、上側トランジスタ101HのオンデューティDon(=スイッチング周期Tに占めるオン期間Tonの割合、Don=Ton/T)が大きくなる。
逆に、誤差電圧V1が低いほどスロープ電圧V2との交差タイミングが早くなる。従って、上側トランジスタ101Hのオン期間Tonが短くなり、延いては、上側トランジスタ101HのオンデューティDonが小さくなる。
このように、スイッチング電源装置1では、誤差電圧V1に応じて上側トランジスタ101HのオンデューティDonを決定することにより、入力電圧Vinから所望の出力電圧Voutが生成される。
なお、ソフトスタート電圧Vssは、スイッチング電源装置1の起動後、0Vから緩やかに立ち上がり、最終的に基準電圧Vrefよりも高い電圧値まで上昇する。また、先にも述べた通り、誤差増幅回路110は、基準電圧Vref及びソフトスタート電圧Vssの低い方と帰還電圧Vfbとの差分に応じて誤差電圧V1を生成する。従って、スイッチング電源装置1の起動後、ソフトスタート電圧Vssが基準電圧Vrefを下回っている期間(=ソフトスタート期間)には、帰還電圧Vfbとソフトスタート電圧Vssとの差分に応じた誤差電圧V1が生成される。
このようにして生成される誤差電圧V1は、ソフトスタート電圧Vssの上昇に伴い、0V近傍から緩やかに高くなっていく。従って、上側トランジスタ101HのオンデューティDonもその最小値から徐々に大きくなっていくので、キャパシタC2や負荷への突入電流を防止することが可能となる。
<過電流保護動作>
図8は、過電流保護動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、上側オン/オフ制御信号SHとインダクタ電流IL(実線:過電流保護あり、破線:過電流保護なし)が描写されている。
本図で示したように、過電流保護回路118は、例えばインダクタ電流ILが所定の閾値電流Ithよりも大きくなったときに、スイッチ出力段のスイッチング動作を強制停止させることにより、インダクタ電流ILが閾値電流Ithを上回らないように制限する。
特に、パルスバイパルス形式の過電流保護回路118では、スイッチング周期T毎にスイッチング動作の強制停止と自己復帰が繰り返される。すなわち、ある周期中に過電流が検出されてスイッチ出力段のスイッチング動作が強制停止されたとしても、次周期ではスイッチ出力段のスイッチング動作が自己復帰(再開)される。従って、負荷変動などにより一時的に過電流保護が掛かってしまった場合でも、出力動作を再開することができる。
図9は、過電流保護動作の課題を示すタイミングチャートであり、上から順に、上側オン/オフ制御信号SHとインダクタ電流ILが描写されている。本図では、例えば、入力電圧Vinが高いアプリケーションにおいて、出力電圧Voutの出力端が低インピーダンスの経路を介して地絡したときの挙動が示されている。
このような出力地絡が生じた場合、スイッチング動作の強制停止と自己復帰(再開)を繰り返すパルスバイパルス形式の過電流保護回路118では、各スイッチング周期T毎のオン時間Tonを最小限(=最小オン期間Ton(min))まで短縮してもなお、過電流の制限(=強制オフ期間におけるインダクタ電流ILの低減)が間に合わなくなり、インダクタ電流ILが上昇し続けてスイッチ出力段の破壊に至るおそれがあった。
<スイッチング電源装置(第1実施例)>
図10は、スイッチング電源装置1の第1実施例を示す要部ブロック図である。本実施例は、先の基本構成(図6)をベースとしつつ、発振回路111に改良を加えた構成とされている。より具体的に述べると、第1実施例のスイッチング電源装置1において、発振回路111は、基準発振回路部111Aと分周回路部111Bを含む。
基準発振回路部111Aは、固定周波数f0の基準クロック信号S0を生成する。
分周回路部111Bは、帰還電圧Vfbに応じた分周比nで基準クロック信号S0を分周することによりオン信号S1を生成する。なお、出力電圧Voutが分周回路部111Bの入力ダイナミックレンジに収まっている場合には、帰還電圧Vfbに代えて出力電圧Voutを直接入力しても構わない。
このように、発振回路111は、帰還電圧Vfbに応じてオン信号S1のスイッチング周波数fsw(=f0/n)を変化させる機能を備えている。より具体的に述べると、発振回路111は、帰還電圧Vfbが所定の閾値電圧よりも低いときに、スイッチング周波数fswを引き下げる構成とされている。
図11は、過電流保護動作の改善結果を示すタイミングチャートであり、上から順に、上側オン/オフ制御信号SHとインダクタ電流IL(実線:fsw可変、破線:fsw固定)が描写されている。なお、本図では、先出の図9と同じく、例えば、入力電圧Vinが高いアプリケーションにおいて、出力電圧Voutの出力端が低インピーダンスの経路を介して地絡したときの挙動が示されている。
本図で示したように、出力地絡が生じて帰還電圧Vfbが所定の閾値電圧を下回ったときには、スイッチング周波数fswを引き下げてスイッチング動作の強制停止期間を延長することにより、パルスバイパルス形式での過電流抑制機能を高めることが可能となる。
図12は、分周回路部118Bの一構成例を示すブロック図である。本構成例の分周回路部118Bは、分周処理部B10と、選択制御部B20と、選択処理部B30を含む。
分周処理部B10は、分周器B11~B13を含み、基準クロック信号S0を相異なる分周比で分周することにより、複数の分周クロック信号S0d2、S0d4、S0d8を生成する。より具体的に述べると、分周器B11は、基準クロック信号S0を2分周することにより、分周クロック信号S0d2を生成する。分周器B12は、基準クロック信号S0を4分周することにより、分周クロック信号S0d4を生成する。分周器B13は、基準クロック信号S0を8分周することにより、分周クロック信号S0d8を生成する。
選択制御部B20は、コンパレータB21~B23を含み、帰還電圧Vfb(ないしは出力電圧Vout)と相異なる閾値電圧Vth1~Vth3(ただしVth1<Vth2<Vth3)とを比較することにより、選択制御信号SEL1~SEL3を生成する。
コンパレータB21は、非反転入力端(+)に入力される帰還電圧Vfbと反転入力端(-)に入力される閾値電圧Vth1とを比較して選択制御信号SEL1を生成する。選択制御信号SEL1は、帰還電圧Vfbが閾値電圧Vth1よりも低いときにローレベルとなり、帰還電圧Vfbが閾値電圧Vth1よりも高いときにハイレベルとなる。
コンパレータB22は、非反転入力端(+)に入力される帰還電圧Vfbと反転入力端(-)に入力される閾値電圧Vth2とを比較して選択制御信号SEL2を生成する。選択制御信号SEL2は、帰還電圧Vfbが閾値電圧Vth2よりも低いときにローレベルとなり、帰還電圧Vfbが閾値電圧Vth2よりも高いときにハイレベルとなる。
コンパレータB23は、非反転入力端(+)に入力される帰還電圧Vfbと反転入力端(-)に入力される閾値電圧Vth3とを比較して選択制御信号SEL3を生成する。選択制御信号SEL3は、帰還電圧Vfbが閾値電圧Vth3よりも低いときにローレベルとなり、帰還電圧Vfbが閾値電圧Vth3よりも高いときにハイレベルとなる。
選択処理部B30は、マルチプレクサB31~B33を含み、基準クロック信号S0と分周クロック信号S0d2、S0d4、S0d8の二者択一を繰り返すことにより、最終的なオン信号S1を選択する。
マルチプレクサB31は、選択制御信号SEL1がハイレベルであるときに分周クロック信号S0d4を選択出力し、選択制御信号SEL1がローレベルであるときに分周クロック信号S0d8を選択出力する。
マルチプレクサB32は、選択制御信号SEL2がハイレベルであるときに分周クロック信号S0d2を選択出力し、選択制御信号SEL2がローレベルであるときにマルチプレクサB31の出力信号(S0d4またはS0d8)を選択出力する。
マルチプレクサB33は、選択制御信号SEL3がハイレベルであるときに基準クロック信号S0を選択出力し、選択制御信号SEL3がローレベルであるときにマルチプレクサB32の出力信号(S0d2、S0d4、または、S0d8)を選択出力する。
図13は、分周動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、帰還電圧Vfb、選択制御信号SEL1~SEL3、及び、オン信号S1が描写されている。
帰還電圧Vfbが閾値電圧Vth1よりも低いときには、選択制御信号SEL1~SEL3がいずれもローレベルとなる。従って、オン信号S1としては、分周クロック信号S0d8が出力される。
帰還電圧Vfbが閾値電圧Vth1よりも高く閾値電圧Vth2よりも低いときには、選択制御信号SEL1がハイレベルとなり、選択制御信号SEL2及びSEL3がローレベルとなる。従って、オン信号S1としては、分周クロック信号S0d4が出力される。
帰還電圧Vfbが閾値電圧Vth2よりも高く閾値電圧Vth3よりも低いときには、選択制御信号SEL1及びSEL2がハイレベルとなり、選択制御信号SEL3がローレベルとなる。従って、オン信号S1としては、分周クロック信号S0d2が出力される。
帰還電圧Vfbが閾値電圧Vth3よりも高いときには、選択制御信号SEL1~SEL3がいずれもハイレベルとなる。従って、オン信号S1としては、基準クロック信号S0が出力される。
このように、発振回路111は、帰還電圧Vfb(延いては出力電圧Vout)が低いほど、オン信号S1のスイッチング周波数fsw(=f0/n)を引き下げていく機能を備えている。
図14は、分周動作の課題を示すタイミングチャートであり、上から順に、半導体装置100の起動時(ソフトスタート期間)におけるオン信号S1、誤差電圧V1(破線)、スロープ電圧V2(実線)、スイッチ電圧Vsw、及び、出力電圧Voutの挙動が描写されている。
なお、先の図7で示したように、ソフトスタート期間には、本来、オンデューティDonが徐々に増大していくが、本図の例では、図示及び説明を簡単とするために、オンデューティDonが基本的には一定値(ここではDon=50%)に固定されているものと仮定して説明する。
オン信号S1のスイッチング周波数fswが固定であれば、誤差電圧V1もそのスイッチング周波数fswに応じた電圧値に落ち着く。本図の例に即して述べると、fsw=f0/n(ただしn=1、2、4、8)であるときには、V1=V1(n)(=V1(1)×n)となる。その結果、オンデューティDonが所望値(50%)に維持される。
ここで、オン信号S1のスイッチング周波数fswをf0/iからf0/j(ただしi≠j)に切り替えた場合を考える。この場合、誤差電圧V1が瞬間的にV1(i)からV1(j)に切り替わってくれるのであれば、オンデューティDonが所望値から外れることなく一定に保たれるので、特段の問題は生じない。
しかしながら、誤差増幅回路110の利得や位相補償を鑑みると、誤差電圧V1が瞬時にV1(i)からV1(j)に切り替わることはあり得ず、本図で示したように、所定の遷移期間を経て緩やかにV1(i)からV1(j)に切り替わる。
その結果、スイッチング周波数fswの切替タイミングでは、誤差電圧V1とスロープ電圧V2との交差タイミングが本来よりも遅れ、オンデューティDonが不必要に大きくなるので、出力リップル(=出力電圧Voutのリップル成分)が増大してしまう(図中のハッチング領域を参照)。
なお、スイッチング周波数fswの変化量が大きいほど、これに伴う誤差電圧V1の変化量が大きくなるので、オンデューティDonの増大量が大きくなり、延いては、より大きな出力リップルが発生してしまう。そのため、出力リップルを抑制する手法の一つとしては、本実施形態でも採用しているように、スイッチング周波数fswの切替回数(すなわち基準クロック信号S0の分周回数)を増やして、スイッチング周波数fswの切替タイミング毎に生じる誤差電圧V1の変化量を低減することが考えられる。
しかしながら、スイッチング周波数fswを4段階(8分周、4分周、2分周、分周なし)に切り替える本実施形態においても、出力リップルの発生を完全に抑制することは難しい。また、回路規模の増大(分周器の増設)を鑑みると、スイッチング周波数fswの切替回数を際限なく増やすことも現実的ではない。
以下では、上記の考察を踏まえ、スイッチング周波数fswの切替回数を不要に増大させることなく、出力リップルを効果的に抑制することのできる新技術について提案する。
<第2実施例>
図15は、スイッチング電源装置1の第2実施例を示す要部ブロック図である。本実施例は、先の基本構成(図6)及び第1実施例(図10、図12)をベースとしつつ、発振回路111(特にその分周回路部111B)とスロープ電圧生成回路112に改良を加えた構成とされている。
より具体的に述べると、第2実施例のスイッチング電源装置1において、分周回路部111Bは、スイッチング周波数fswの切替回数を4回(8分周、4分周、2分周、分周なし)から3回(4分周、2分周、分周なし)に減らすとともに、選択制御信号SEL1及びSEL2をスロープ電圧生成回路112に出力する構成とされている。
上記の構成変更に伴い、分周回路部111Bでは、図12の分周器B13とコンパレータB23が割愛されるとともに、マルチプレクサB31~B33に代えてマルチプレクサB34及びB35が設けられている。
マルチプレクサB34は、選択制御信号SEL1がハイレベルであるときに分周クロック信号S0d2を選択出力し、選択制御信号SEL1がローレベルであるときに分周クロック信号S0d4を選択出力する。
マルチプレクサB35は、選択制御信号SEL2がハイレベルであるときに基準クロック信号S0を選択出力し、選択制御信号SEL2がローレベルであるときにマルチプレクサB34の出力信号(S0d2またはS0d4)を選択出力する。
また第2実施例のスイッチング電源装置1において、スロープ電圧生成回路112は、選択制御信号SEL1及びSEL2に応じてスロープ電圧V2の傾きを変化させる構成とされている。
図16は、スロープ電圧生成回路112の一構成例を示す回路図である。本構成例のスロープ電圧生成回路112は、電流源112xと、充放電制御部112yと、電流/電圧変換部112zと、抵抗Ra~Rcと、キャパシタCaと、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタNa~Neと、を含む。なお、スロープ電圧生成回路112は、上記の回路要素以外にも、スロープ補償機能を実現するための回路要素を含むが、説明の便宜上、本図ではその描写が割愛されている。
トランジスタNa及びNbは、カレントミラーを形成するトランジスタ対(第1トランジスタと第2トランジスタ)に相当する。すなわち、トランジスタNaのゲートとトランジスタNbのゲートは、いずれもトランジスタNaのドレインに接続されている。
電流源112xは、電源端とトランジスタNaのドレインとの間に接続されており、所定の第1電流I1を生成する。
キャパシタCa(容量値:C)は、トランジスタNaのソースと接地端との間に接続されており、第1電流I1を用いて充放電される。
トランジスタNcは、キャパシタCaに並列接続された充放電スイッチに相当する。トランジスタNcがオフされているときには、キャパシタCaが第1電流I1を用いて充電される。一方、トランジスタNcがオンされているときには、キャパシタCaの両端間が短絡されるので、キャパシタCaが放電される。
充放電制御部112yは、スイッチ出力段のスイッチング動作に同期して、トランジスタNcのオン/オフ制御を行う。例えば、充放電制御部112yは、オン信号S1のパルスエッジを受けてトランジスタNcをオフし、オフ信号S2のパルスエッジを受けてトランジスタNcをオンする構成にするとよい。或いは、充放電制御部112yは、上側オン/オフ制御信号SHの立上りエッジを受けてトランジスタNcをオフし、上側オン/オフ制御信号SHの立下りエッジを受けてトランジスタNcをオンする構成としてもよい。
電流/電圧変換部112zは、トランジスタNbのドレインに流れる第2電流I2をスロープ電圧V2に変換する。
抵抗Ra(抵抗値:R)の第1端は、トランジスタNbのソースに接続されている。抵抗Raの第2端は、抵抗Rb(抵抗値:R)の第1端に接続されている。抵抗Rbの第2端は、抵抗Rc(抵抗値:2R)の第1端に接続されている。抵抗Rcの第2端は、接地端に接続されている。
トランジスタNdは、抵抗Rbに対して並列に接続されており、選択制御信号SEL2に応じてオン/オフされる。より具体的に述べると、トランジスタNdは、選択制御信号SEL2がハイレベルであるときにオンし、選択制御信号SEL2がローレベルであるときにオフする。
トランジスタNeは、抵抗Rcに対して並列に接続されており、選択制御信号SEL1に応じてオン/オフされる。より具体的に述べると、トランジスタNeは、選択制御信号SEL1がハイレベルであるときにオンし、選択制御信号SEL1がローレベルであるときにオフする。
すなわち、抵抗Ra~RcとトランジスタNd及びNeは、選択制御信号SEL1及びSEL2に応じて可変抵抗値Rvが変化する可変抵抗として機能する。より具体的に述べると、選択制御信号SEL1及びSEL2がいずれもローレベルであるときには、Rv=4R(=R+R+2R)となる。一方、選択制御信号SEL1がハイレベルで選択制御信号SEL2がローレベルであるときには、Rv=2R(=R+R)となる。また、選択制御信号SEL1及びSEL2がいずれもハイレベルであるときには、Rv=Rとなる。
図17は、分周動作とスロープ調整動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、帰還電圧Vfb、選択制御信号SEL1及びSEL2、オン信号S1、及び、可変抵抗値Rvが描写されている。
帰還電圧Vfbが閾値電圧Vth1よりも低いときには、選択制御信号SEL1及びSEL2がいずれもローレベルとなる。従って、オン信号S1としては、分周クロック信号S0d4(周波数:f0/4)が出力される。また、このとき、スロープ電圧生成回路112の可変抵抗値Rvは4Rとなるので、第2電流I2の電流値は、充電時間tの関数として、次の(1)式で算出される(ただしα=I1/(R×C))。
I2={I1/(4R×C)}×t=(α/4)×t …(1)
帰還電圧Vfbが閾値電圧Vth1よりも高く閾値電圧Vth2よりも低いときには、選択制御信号SEL1がハイレベルとなり、選択制御信号SEL2がローレベルとなる。従って、オン信号S1としては、分周クロック信号S0d2(周波数:f0/2)が出力される。また、このとき、スロープ電圧生成回路112の可変抵抗値Rvは2Rとなるので、第2電流I2の電流値は、充電時間tの関数として、次の(2)式で算出される。
I2={I1/(2R×C)}×t=(α/2)×t …(2)
帰還電圧Vfbが閾値電圧Vth2よりも高いときには、選択制御信号SEL1及びSEL2がいずれもハイレベルとなる。従って、オン信号S1としては、基準クロック信号S0(周波数:f0)が出力される。また、このとき、スロープ電圧生成回路112の可変抵抗値RvはRとなるので、第2電流I2の電流値は、充電時間tの関数として、次の(3)式で算出される。
I2={I1/(R×C)}×t=α×t …(3)
このように、第2実施例のスイッチング電源装置1では、オン信号S1のスイッチング周波数fswが低いほど、第2電流I2の傾きが小さくなる。より具体的に述べると、スイッチング周波数fswを1/nに引き下げた場合には、第2電流I2の傾きが1/nとなり、延いては、スロープ電圧V2の傾きが1/nとなる。
図18は、出力リップルの改善結果を示すタイミングチャートであり、上から順番に、半導体装置100の起動時(ソフトスタート期間)におけるオン信号S1、誤差電圧V1(破線)、スロープ電圧V2(実線)、スイッチ電圧Vsw、及び、出力電圧Voutの挙動が描写されている。なお、本図の例においても、先の図14と同様、オンデューティDonが基本的に一定値(Don=50%)に固定されているものと仮定して説明する。
本図で示すように、分周なし時(fsw=f0)におけるスロープ電圧V2の傾きを1とした場合、2分周時(fsw=f0/2)におけるスロープ電圧V2の傾きは1/2となり、4分周時(fsw=f0/4)におけるスロープ電圧V2の傾きは1/4となる。
このように、スイッチング周波数fswに応じてスロープ電圧V2の傾きを調整することにより、帰還電圧Vfbに応じてスイッチング周波数fswを切り替えた場合でも、誤差電圧V1を分周なし時(fsw=f0)の電圧値V1(1)に維持することができる。その結果、スイッチング周波数fswの切替タイミングにおいて、誤差電圧V1とスロープ電圧V2との交差タイミングが本来よりも遅れるという不具合はもはや生じなくなる。
従って、スイッチング周波数fswの切替タイミングにおいて、オンデューティDonが所望値から外れることなく一定に保たれるので、出力リップルの発生を回避することが可能となり、延いては、スムーズなソフトスタート動作を実現することが可能となる。
また、第2実施例のスイッチング電源装置1であれば、スイッチング周波数fswの切替回数(すなわち基準クロック信号S0の分周回数)を減らしても、出力リップルを適切に抑制することができる。従って、分周回路部111Bを形成する回路要素(分周器やコンパレータなど)を削減することができるので、スイッチング電源装置1(延いては、これを搭載する電子機器)の小型化やコストダウンにも貢献することが可能となる。
<軽負荷モード>
図19及び図20は、それぞれ、軽負荷モード移行動作の課題を示すタイミングチャートであり、負荷電流Iload(破線)及びインダクタ電流IL(実線)、誤差電圧V1(破線)及びスロープ電圧V2(実線)、及び、スイッチ電圧Vswが描写されている。
なお、図19には、入力電圧Vinを大きく引き下げなければ、所望の出力電圧Voutを生成することができない第1入出力設定(例えばVin=24V、Vout=1V)での挙動が描写されている。一方、図20には、入力電圧Vinをそれほど引き下げなくても、所望の出力電圧Voutを生成することができる第2入出力設定(例えばVin=7V、Vout=5V)での挙動が描写されている。
図19で示す通り、第1入出力設定では、誤差電圧V1の平衡レベルV1(1)が低くなり、誤差電圧V1とスロープ電圧V2との交差タイミングが早くなる。従って、上側トランジスタ101HのオンデューティDon(=スイッチング周期Tに占めるオン期間Tonの割合、Don=Ton/T)が低くなる(図19の時刻t11~t13を参照)。
一方、図20で示す通り、第2入出力設定では、誤差電圧V1の平衡レベルV1(2)が高くなり、誤差電圧V1とスロープ電圧V2との交差タイミングが遅くなる。従って、上側トランジスタ101HのオンデューティDonが高くなる(図20の時刻t21~t23を参照)。
また、第1入出力設定と第2入出力設定のいずれにおいても、負荷が軽い(=負荷電流Iloadが小さい)ほど、誤差電圧V1が低下して上側トランジスタ101Hのオンデューティが低くなる(図19の時刻t13~t14、ないしは、図20の時刻t23~t27を参照)。
ここで、先出のロジック回路103には、負荷電流Iloadが閾値電流Ithを下回ると、スイッチ出力段の動作を一時的に停止させて軽負荷時の効率を高める機能(いわゆる軽負荷モード)が具備されている。
より具体的に述べると、ロジック回路103は、オン信号S1のパルス生成タイミングにおいて、誤差電圧V1がスロープ電圧V2を下回っているとき(S2=H)に、オフ信号S2を用いてオン信号S1のパルスをマスクすることにより軽負荷モードに移行する。
例えば、図19で示すように、第1入出力設定では、時刻txで誤差電圧V1がスロープ電圧V2のオフセットレベルV2ofsを下回ったことに伴い、時刻tx以降におけるスイッチ出力段の動作が一時的に停止されている(図19の時刻tx~t18を参照)。
一方、図20で示すように、第2入出力設定では、時刻tyで誤差電圧V1がスロープ電圧V2のオフセットレベルV2ofsを下回ったことに伴い、時刻ty以降におけるスイッチ出力段の動作が一時的に停止されている(図20の時刻ty~t28を参照)。
なお、軽負荷モードに移行すれば、上側トランジスタ101Hと下側トランジスタ101Lがいずれもオフされた状態となるので、スイッチング電源装置1における不要な電力消費を抑えることができる。
ただし、スロープ電圧のオフセットレベルV2ofsが固定値である場合には、入出力設定に依存して、誤差電圧V1の平衡レベルV1(*)とスロープ電圧V2のオフセットレベルV2ofsとの電圧差ΔV(*)が大きくばらつき、延いては、出力平衡時における負荷電流Iload(*)と軽負荷モード移行時の閾値電流Ith(*)との電流差ΔI(*)が大きくばらついてしまう(ただし、*=1または2であり、より具体的には、図19のΔV(1)と図20のΔV(2)、ないしは、図19のΔI(1)と図20のΔI(2)とを比較参照)。そこで、以下では、上記の不具合を解消するための改善策について提案する。
<スロープ電圧生成回路>
図21は、スロープ電圧生成回路112の一構成例を示す要部ブロック図である。本構成例のスロープ電圧生成回路112は、第1電圧生成部112Aと、第2電圧生成部112Bと、マルチプレクサ部112Cと、を含む。
第1電圧生成部112Aは、所定のリセットレベルV2AC(0)から所定の傾きで上昇する第1電圧V2ACを生成する。なお、第1電圧生成部112Aは、スイッチ出力段に流れるインダクタ電流ILの大きさに応じて、第1電圧V2ACの傾きを調整する機能(=スロープ補償機能)を備えている。
第2電圧生成部112Bは、スロープ電圧V2のオフセットレベルに相当する第2電圧V2DCを生成する。なお、第2電圧生成部112Bは、誤差電圧V1の平衡レベルに追従するように第2電圧V2DCを調整する機能を備えている。
マルチプレクサ部112Cは、上側オン/オフ制御信号SHに応じて第1電圧V2ACと第2電圧V2DCの一方をスロープ電圧V2として出力する。より具体的に述べると、マルチプレクサ部112Cは、上側オン/オフ制御信号SHがハイレベルであるときに第1電圧V2ACをスロープ電圧V2として出力し、上側オン/オフ制御信号SHがローレベルであるときに第2電圧V2DCをスロープ電圧V2として出力する。
図22は、図21のスロープ電圧生成回路112で生成されるスロープ電圧V2の波形図である。なお、破線は誤差電圧V1、実線はスロープ電圧V2、一点鎖線は第1電圧V2AC、二点鎖線は第2電圧V2DCをそれぞれ示している。
先に説明したマルチプレクサ部112Cの切替動作により、上側トランジスタ101Hのオン期間ON(=上側オン/オフ制御信号SHのハイレベル期間)には、スロープ電圧V2として第1電圧V2ACが出力される。一方、上側トランジスタ101Hのオフ期間OFF(=上側オン/オフ制御信号SHのローレベル期間)には、スロープ電圧V2として第2電圧V2DCが出力される。
従って、上側トランジスタ101Hのオン期間ONには、スロープ電圧V2がリセットレベルV2AC(0)から所定の傾きで上昇され、上側トランジスタ101Hのオフ期間OFFには、スロープ電圧V2がオフセットレベル(第2電圧V2DC)に維持される。
なお、スロープ電圧V2のオフセットレベル(=第2電圧V2DC)は、入出力設定に応じて変動する誤差電圧V1の平衡レベルに対して、電圧差ΔVが常に一定となるように調整される。この点については、後ほど詳細に説明する。
<第1電圧生成部>
図23は、第1電圧生成部112Aの一構成例を示す要部ブロック図である。本構成例の第1電圧生成部112Aは、ランプ電流生成部A1と、センス電流生成部A2と、加算部A3と、抵抗A4(抵抗値:RA4)と、を含む。
ランプ電流生成部A1は、上側トランジスタ101Hのオン期間ONにおいて、一定の傾きで増大するランプ電流IA1を生成する。
センス電流生成部A2は、スイッチ出力段に流れるインダクタ電流ILの大きさに応じたセンス電流IA2を生成する。インダクタ電流ILが大きいほどセンス電流IA2も大きくなり、逆に、インダクタ電流ILが小さいほどセンス電流IA2も小さくなる。
加算部A3は、ランプ電流IA1とセンス電流IA2とを足し合わせることにより、加算電流IA3(=IA1+IA2)を生成する。
抵抗A4は、加算電流IA3を第1電圧V2AC(=IA3×RA4)に変換する電流/電圧変換素子として機能する。
本構成例の第1電圧生成部112Aにおいて、第1電圧V2ACは、所定の傾きを持つランプ波形(=IA1×RA4)とインダクタ電流ILの大きさに応じたセンス波形(=IA2×RA4)とを足し合わせた電圧波形となる。従って、第1電圧V2ACは、インダクタ電流ILが大きいほど高くなり、インダクタ電流ILが小さいほど低くなる。
すなわち、インダクタ電流ILが大きいほど、誤差電圧V1とスロープ電圧V2との交差タイミングが早くなり、オンデューティDonが低くなるので、インダクタ電流ILを引き下げる方向に帰還が掛かる。逆に、インダクタ電流ILが小さいほど、誤差電圧V1とスロープ電圧V2との交差タイミングが遅くなり、オンデューティDonが高くなるので、インダクタ電流ILを引き上げる方向に帰還が掛かる。このようなカレントモード制御により、スイッチング電源装置1の負荷応答性を高めることが可能となる。
<第2電圧生成部(第1実施例)>
図24は、第2電圧生成部112Bの第1実施例を示す要部ブロック図である。本実施例の第2電圧生成部112Bは、基準電流生成部B1と、調整電流生成部B2と、加算部B3と、抵抗B4と、を含む。
基準電流生成部B1は、一定の電流値を持つ基準電流IB1を生成する。
調整電流生成部A2は、スロープ電圧V2のオフセットレベルを調整するための調整電流IB2を生成する。
加算部A3は、基準電流IB1と調整電流IB2とを足し合わせることにより、加算電流IB3(=IB1+IB2)を生成する。
抵抗B4は、加算電流IB3を第2電圧V2DC(=IB3×RB4)に変換する電流/電圧変換素子として機能する。
本実施形態の第2電圧生成部112Bにおいて、第2電圧V2DCは、電圧値固定の基準電圧(=IB1×RB4)と電圧値可変の調整電圧(=IB2×RB4)を足し合わせた電圧値となる。従って、スロープ電圧V2のオフセットレベル(=第2電圧V2DC)は、調整電流IB2が大きいほど高くなり、調整電流IB2が小さいほど低くなる。
<調整電流生成部>
図25は、調整電流生成部B2の一構成例を示す回路図である。本構成例の調整電流生成部B2は、npn型バイポーラトランジスタQ1~Q6と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタP1及びP2と、電流源CS1~CS4と、を含む。
トランジスタQ1のコレクタ、トランジスタQ2のコレクタ、トランジスタQ5のコレクタ、及び、トランジスタQ6のコレクタは、いずれも、第2定電圧Vregの印加端に接続されている。トランジスタQ1のベースとトランジスタQ6のベースは、いずれも、バイアス電圧 Vbiasの印加端に接続されている。トランジスタQ2のベースとトランジスタQ4のコレクタは、いずれも、トランジスタQ1のエミッタに接続されている。トランジスタQ5のベースは、トランジスタQ6のエミッタに接続されている。トランジスタQ3のベースは、トランジスタQ2のエミッタに接続されている。トランジスタQ4のベースは、トランジスタQ5のエミッタに接続されている。トランジスタQ3のエミッタとトランジスタQ4のエミッタは、互いに接続されている。
電流源CS1は、トランジスタQ2のエミッタと接地端との間に接続されており、第1電流IVinを生成する。第1電流IVinは、入力電圧Vin(ないしはその標準値)に応じた電流値を持つ。具体的には、入力電圧Vinが高いほど第1電流IVinが大きくなり、入力電圧Vinが低いほど第1電流IVinが小さくなる。
電流源CS2は、トランジスタQ3及びQ4のエミッタと接地端との間に接続されており、所定の第2電流Idrvを生成する。
電流源CS3は、トランジスタQ5のエミッタと接地端との間に接続されており、所定の第3電流Irefを生成する。
電流源CS4は、トランジスタQ6のエミッタと接地端との間に接続されており、第4電流IVoutを生成する。第4電流IVoutは、出力電圧Vout(ないしはその標準値)に応じた電流値を持つ。具体的には、出力電圧Voutが高いほど第4電流IVoutが大きくなり、出力電圧Voutが低いほど第4電流IVoutが小さくなる。
トランジスタP1のソースとトランジスタP2のソースは、いずれも、第2定電圧Vregの印加端に接続されている。トランジスタP1のゲートとトランジスタP2のゲートは、いずれもトランジスタP1のドレインに接続されている。トランジスタP1のドレインは、トランジスタQ3のコレクタに接続されている。トランジスタP2のドレインは、調整電流IB2の出力端に接続されている。
本構成例の調整電流生成部B2において、トランジスタQ1~Q6のベース・エミッタ間電圧Vbeがいずれも等しいと仮定した場合、調整電流IB2は、次の(1)式で表すことができる。
IB2=Iref×(IVout/IVin) … (1)
上記(1)式から分かるように、第2電圧生成部112Bでは、入力電圧Vinと出力電圧Voutの双方(すなわち入出力設定)に応じて調整電流IB2の大きさを変化させることにより、第2電圧V2DCの調整が行われる。
より具体的に述べると、入力電圧Vinが高いほど調整電流IB2が小さくなるので、第2電圧V2DCが低くなる。逆に、入力電圧Vinが低いほど調整電流IB2が大きくなるので、第2電圧V2DCが高くなる。また、出力電圧Voutが低いほど調整電流IB2が小さくなるので、第2電圧V2DCが低くなる。逆に、出力電圧Voutが高いほど調整電流IB2が大きくなるので、第2電圧V2DCが高くなる。
以上をまとめると、スロープ電圧生成回路112では、入力電圧Vinに対する出力電圧Voutの比(=Vout/Vin)が低いほど、スロープ電圧V2のオフセットレベル(=V2DC)が引き下げられ、逆に、入力電圧Vinに対する出力電圧Voutの比が大きいほど、スロープ電圧V2のオフセットレベルが引き上げられることになる。
言い換えると、オンデューティDonが低くなる入出力設定では、スロープ電圧V2のオフセットレベルが引き下げられ、逆に、オンデューティDonが高くなる入出力設定では、スロープ電圧V2のオフセットレベルが引き上げられることになる。
図26と図26は、それぞれ軽負荷モード移行動作の改善を示すタイミングチャートであり、負荷電流Iload(破線)及びインダクタ電流IL(実線)、誤差電圧V1(破線)及びスロープ電圧V2(実線)、並びに、スイッチ電圧Vswが描写されている。
なお、図26には、先の図19と同様、入力電圧Vinを大きく引き下げなければ所望の出力電圧Voutを生成することができない第1入出力設定(例えばVin=24V、Vout=1V)での挙動が描写されている。一方、図27には、先の図20と同様、入力電圧Vinをそれほど引き下げなくても所望の出力電圧Voutを生成することができる第2入出力設定(例えばVin=7V、Vout=5V)での挙動が描写されている。
両図から分かるように、スロープ生成回路112では、先述のオフセット調整機能により、誤差電圧V1の平衡レベルV1(*)に追従するように、第2電圧V2DC(*)が調整される。より具体的に述べると、入出力設定に依ることなく、誤差電圧V1の平衡レベルV1(*)とスロープ電圧V2のオフセットレベル(=第2電圧V2DC(*))との電圧差ΔVが一定となるように、第2電圧V2DC(*)が自動的に調整される。
例えば図26で示す通り、第1入出力設定では、時刻taで誤差電圧V1がスロープ電圧V2のオフセットレベルV2DC(1)を下回ったことに伴い、時刻ta以降におけるスイッチ出力段の動作が一時的に停止されている(図26の時刻ta~t38を参照)。
一方、図27で示す通り、第2入出力設定では、時刻tbで誤差電圧V1がスロープ電圧V2のオフセットレベルV2DC(2)を下回ったことに伴い、時刻tb以降におけるスイッチ出力段の動作が一時的に停止されている(図27の時刻tb~t48を参照)。
このように、誤差電圧V1の平衡レベルV1(*)に追従するように第2電圧V2DC(*)を調整する構成であれば、入出力設定に依ることなく、出力平衡時における負荷電流Iload(*)と軽負荷モード移行時の閾値電流Ith(*)との電流差ΔIを一定値に維持することができる。従って、スイッチング電源装置1の効率を高めたり、EMI[electro magnetic interference]対策を容易に行うことが可能となる。
<第2電圧生成部(第2実施例)>
図28は、第2電圧生成部112Bの第2実施形態を示す要部ブロック図である。本実施形態は、先の第1実施例(図24)をベースとしつつ、第2調整電流生成部B5と、第2加算部B6を追加した点に特徴を有する。そこで、第1実施形態と同様の構成要素については、図24と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、本実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
第2調整電流生成部B5は、インダクタ電流ILの大きさに応じてスロープ電圧V2のオフセットレベルを調整するための第2調整電流IB5を生成する。なお、インダクタ電流ILが大きいほど第2調整電流IB5も大きくなり、逆に、インダクタ電流ILが小さいほど第2調整電流IB5も小さくなる。
第2加算部B6は、調整電流IB2と第2調整電流IB5を足し合わせることにより、加算調整電流IB6(=IB2+IB5)を生成し、これを加算部B3に出力する。従って、加算部B3で生成される加算電圧IB3は、基準電流IB1と加算調整電流IB6とを足し合わせた電流値(=IB1+IB6=IB1+IB2+IB5)となる。
本実施例の第2電圧生成部112Bによれば、誤差電圧V1の平衡レベルのばらつきをキャンセルするだけでなく、IL×Ronのばらつき(ただしRonは上側トランジスタ101Hのオン抵抗値)についてもキャンセルすることができる。従って、カレントモード制御を行うスイッチング電源装置1においても、入出力設定に依ることなく、出力平衡時における負荷電流Iload(*)と軽負荷モード移行時の閾値電流Ith(*)との電流差ΔIを一定値に維持することができる(先出の図26及び図27を比較参照)。
<電子機器への適用>
図29は、パーソナルコンピュータの外観図である。パーソナルコンピュータXは、これまでに説明してきたスイッチング電源装置1の適用対象となる電子機器の一例である。ただし、スイッチング電源装置1の適用対象はこれに限定されるものではなく、その他の電子機器にも適用することが可能である。
<その他の変形例>
また、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、バイポーラトランジスタとMOS電界効果トランジスタとの相互置換や、各種信号の論理レベル反転は任意である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。