JP7089437B2 - トナー用結着樹脂組成物 - Google Patents
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Description
しかしながら、厚紙においては用紙に熱がとられてしまうため、トナーをしっかり溶融させるのが難しく、厚紙に対しては低速で印刷する等の措置が取られることが多い。
また、近年の高速印刷(A4紙50枚/分以上)においては、薄紙の場合、トナー溶融により定着ローラと巻き付きやすい。
従って、特に高速印刷において、一定の設定、特に高速印刷で幅広い厚みの印刷(用紙汎用性)を実現するのは非常に困難である。
〔1〕 非晶質ポリエステルAH、非晶質ポリエステルAL、及び結晶性ポリエステルCを含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記非晶質ポリエステルAH及び前記非晶質ポリエステルALが、没食子酸の非存在下でのアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であって、非晶質ポリエステルAHの軟化点が非晶質ポリエステルALの軟化点よりも20℃以上高く、前記結晶性ポリエステルCが、没食子酸の存在下での炭素数4以上12以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と炭素数10以上16以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物である、トナー用結着樹脂組成物、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂組成物を用いる電子写真用トナーの製造方法であって、少なくとも、非晶質ポリエステルAH、非晶質ポリエステルAL、及び結晶性ポリエステルCを80℃以上で混合する工程を含む、電子写真用トナーの製造方法
に関する。
そこで、本発明者らは、トナーの製造過程において、原料を溶融混練する際に、ポリエステル同士を一部反応させることによって、ポリエステル同士が混ざり合うことに着目した。反応の方法としては、エステル化反応とエステル交換反応があるが、エステル交換反応は比較的低温で行うことができ、かつ、樹脂末端基により反応性が左右されないため好ましい。
一方で、結晶性ポリエステルは、トナー中で結晶性を高く保ちつつ微分散させることが重要であるが、非晶質ポリエステルとのエステル交換反応により相溶性が高くなりすぎると結晶化速度及び結晶化度の低下、それに伴うトナーの荷重耐熱性の悪化を招いてしまう。
このため、非晶質ポリエステル同士はエステル交換反応を起こし、非晶質ポリエステルと結晶性ポリエステル間ではエステル交換反応を抑制することが好ましい。
そこで、さらに検討した結果、没食子酸がエステル化反応の促進には効果的であるが、エステル交換反応に対する活性は低いことを見出し、没食子酸が用いられた結晶性ポリエステルと没食子酸が用いられていない非晶質ポリエステルとを組み合わせることにより、非晶質ポリエステル同士のみに選択的にエステル交換反応を生じさせ、荷重耐熱性を損なうことなく、用紙汎用性を向上させることが可能となった。
Ti(X)m(OH)n (Ia)
O=Ti(X)p(OY)q (Ib)
(式中、Xは炭素数2~12のモノもしくはポリアルカノールアミンから1個の水酸基から水素原子を除いた残基であり、ポリアルカノールアミンの他の水酸基は同一のチタン原子に直接結合した水酸基と分子内で重縮合し環構造を形成していてもよく、他のチタン原子に直接結合した水酸基と分子間で重縮合し繰り返し構造を形成していてもよい。繰り返し構造を形成する場合の重合度は2~5である。Yは水素原子又は1~3個のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1~8のアルキル基である。mは1~4、好ましくは2~4の整数、nは0~3、好ましくは0~2の整数、mとnの和は4である。pは1~2の整数、qは0~1の整数、pとqの和は2である。m又はpが2以上の場合、それぞれのXは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される少なくとも1種のチタン化合物が好ましい。
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、非晶質樹脂はアセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に、結晶性樹脂はクロロホルムとジメチルホルムアミドの混合溶媒(クロロホルム:ジメチルホルムアミド=7:3(容量比))に、それぞれ変更する。
JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒からテトラヒドロフランに変更する。
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフラン(非晶質樹脂)又はクロロホルム(結晶性樹脂)に、40℃で溶解させる。次いで、この溶液を孔径0.20μmのPTFEタイプメンブレンフィルター「DISMIC-25JP」(東洋濾紙(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフラン(非晶質樹脂)又はクロロホルム(結晶性樹脂)を、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:TSKgel GMHXL+TSKgel G3000HXL(東ソー(株)製)
(1)試料の調製
JIS Z8801の篩を用いて、22メッシュの篩を通過し、30メッシュの篩は通過しない粉末状の試料を採取する。試料が塊等の場合は、市販のハンマー、コーヒーミルを用いて、粉砕し、粉末状として篩いにかける。
2-1. 試料2.000gを、ガラス瓶(柏洋硝子(株)製、M-140)に秤量した後、MEK 95gを加え、内蓋及び外蓋を取り付ける。
2-2. ボールミルにて5時間攪拌する(周速:200mm/sec)。
2-3. 10時間静置する。
3-1. 予め計量済み(1000分の1g単位)のナスフラスコ(質量A(g))に取り付けたガラスフィルタ(目開き規格11G-3)を準備する。ガラスフィルタのシールには、減圧が可能なゴム栓を用いる。
3-2. 2-3において10時間静置した溶解液の上澄みから20mLをメスピペッドで吸い取り、3-1で準備したガラスフィルタを用いて、減圧濾過する。なお、液面から下2cmまでを上澄みとする。溶解液を濾過する前のナスフラスコ内の減圧度を40kPaに調整する。
3-3. 未使用のMEK 20mLをメスピペッドで吸い取り、ガラスフィルタに付着している可溶分を減圧濾過する。
4-1. エバポレータにてナスフラスコ内のMEKを除去する。
ウォーターバス温度:70℃
ナスフラスコ回転数:200r/min
MEK除去中のナスフラスコ内の減圧度:40~20kPaに調整
時間:10分
4-2. 50℃・1torrにて12時間乾燥した後、ナスフラスコの質量B(g)を計量する。
5-1. MEK 20mLに溶解したMEK可溶分X(g)を算出する。
X=B-A
5-2. MEK 95gに溶解したMEK可溶分Y(g)を、MEKの比重を0.805として算出する。
Y=X×95/(20×0.805)
5-3. 試料1gあたりの可溶分Z(質量%)を算出する。
Z=Y/2×100
5-4. MEK不溶分(質量%)=100-Z
なお、MEK不溶分(質量%)は、3回の測定値の平均値とする。
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とする。
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター(株)製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表1に示すアルコール成分、無水トリメリット酸以外のカルボン酸成分、触媒、及び助触媒を入れ、230℃にて10時間反応を行った。反応後、さらに無水トリメリット酸を添加し、1時間反応後8KPaにて、表1に記載の軟化点になるまで反応させて、非晶質ポリエステル(樹脂H1~H7)を得た。
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表2に示すアルコール成分、カルボン酸成分、触媒、及び助触媒を入れ、230℃にて10時間反応を行った後、さらに無水トリメリット酸を添加し、1時間反応後8KPaにて、表2記載の軟化点になるまで反応させて、非晶質ポリエステル(樹脂L1~L5)を得た。
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表3に示すアルコール成分及びカルボン酸成分を入れ、140℃に加熱して6時間反応させた後(反応率65%)、200℃まで10℃/hで昇温しつつ反応させた。200℃にて反応率80%まで反応させた後、触媒及び助触媒を加えて、さらに200℃にて2時間反応を行った。さらに8kPaにて2時間反応を行い、結晶性ポリエステル(樹脂C1~C7)を得た。なお、樹脂製造例において、反応率とは、生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
表4に示す配合比の結着樹脂100質量部、着色剤「ファストゲンスーパーマゼンタR」(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)6質量部、荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット社製)1質量部、及び離型剤「カルナウバワックス C1」(加藤洋行社製、融点:80℃)4質量部を、ヘンシェルミキサーでよく攪拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱設定温度は100℃であり、混練物の温度は160℃、混練物の供給速度は10kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。冷却後、ジェットミルで体積中位粒径(D50)6.5μmのトナー粒子を得た。
カラープリンター「C612dnw」(商品名、沖データ(株)製)にYMCのカートリッジにそれぞれトナーを実装し、4種の定着紙に未定着で画像出しを行った(印刷面積:2cm×12cm、付着量:1.5mg/cm2)。
前記プリンターの定着機をオフラインで用い、180℃、500mm/secで未定着画像を定着させた。
・J紙(富士ゼロックス製、SF-70NA、坪量:82g/m2、紙厚:97μm)
・C2紙(富士ゼロックス製、坪量:70g/m2、紙厚:89μm)
・Ncolor104(富士ゼロックス製、坪量:104g/m2、紙厚:125μm)
・Ncolor157(富士ゼロックス製、坪量:157g/m2、紙厚:177μm)
各印字物に対し、500gの荷重をかけた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴムで、5往復擦り、擦る前後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定した。両者の比率(擦り後/擦り前)を定着率として算出し、以下の評価基準で定着性を評価した。結果を表4に示す。
〔評価基準〕
A:Ncolor157での定着率が0.95以上
B:Ncolor157での定着率が0.90以上0.95未満
C:Ncolor157での定着率が0.80以上0.90未満
D:Ncolor157での定着率が0.80未満だが、Ncolor104での定着率が0.80以上0.90以上
E:Ncolor104での定着率が0.80未満
定着時の様子を目視にて観察し、以下の評価基準に従って、薄紙の巻き付きの程度を評価した。結果を表4に示す。
〔評価基準〕
A:C2紙において、問題なく定着できる。
B:C2紙において、定着後若干カールする。
C:C2紙において、定着器に巻き付くが、J紙では問題ない。
D:J紙でも定着器に巻き付く。
20mL容の容器(外径38×全高46mm)にマゼンタトナー4gを入れ、500gの錘をのせて、温度50℃の環境下に48時間放置した。放置後、以下の方法によりパウダーテスター(ホソカワミクロン社製)で凝集度を測定した。結果を表4に示す。凝集度が低いほど荷重耐熱性が良好であることを示す。
〔凝集度の測定〕
パウダーテスターの振動台に、3つの異なる目開きのフルイを上段250μm、中段149μm、下段74μmの順でセットし、その上にトナー4gを乗せ振動を与え、各フルイ上に残ったトナー質量を測定する。測定したトナー質量を次式に当てはめて計算し、凝集度[%]を求める。
凝集度[%]=a+b+c
a=(上段フルイ残トナー質量)/4[g]×100
b=(中段フルイ残トナー質量)/4[g]×100×(3/5)
c=(下段フルイ残トナー質量)/4[g]×100×(1/5)
これに対し、没食子酸を用いて得られた非晶質ポリエステルを含む比較例1のトナーは、非晶質ポリエステル同士のエステル交換反応が阻害されたため用紙汎用性に欠けており、没食子酸を用いずに得られた結晶性ポリエステルを含む比較例2のトナーは、非晶質ポリエステルと結晶性ポリエステルの間でのエステル交換反応により、耐巻き付き性と荷重耐熱性に欠けている。
Claims (6)
- 非晶質ポリエステルAH、非晶質ポリエステルAL、及び結晶性ポリエステルCを含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記非晶質ポリエステルAH及び前記非晶質ポリエステルALが、没食子酸の非存在下でアルコール成分とカルボン酸成分とを重合させた重縮合物であって、非晶質ポリエステルAHの軟化点が非晶質ポリエステルALの軟化点よりも20℃以上高く、前記結晶性ポリエステルCが、没食子酸の存在下で炭素数4以上12以下の脂肪族ジオールを含むアルコール成分と炭素数10以上16以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分とを重合させた重縮合物である、トナー用結着樹脂組成物。
- 非晶質ポリエステルAH及び/又は非晶質ポリエステルALが、チタン触媒の存在下でのアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である、請求項1記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 非晶質ポリエステルAHに対する非晶質ポリエステルALの質量比が、60/40以上90/10以下である、請求項1又は2記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 結晶性ポリエステルCの酸価が6mgKOH/g以下、酸価と水酸基価の合計が18mgKOH/g以下である、請求項1~3いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 非晶質ポリエステルAH及び/又は非晶質ポリエステルALのアルコール成分におけるプロピレンオキサイドの付加モル数の平均値が2.2以上3.3以下である、請求項1~4いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 請求項1~5いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物を用いる電子写真用トナーの製造方法であって、少なくとも、非晶質ポリエステルAH、非晶質ポリエステルAL、及び結晶性ポリエステルCを80℃以上で混合する工程を含む、電子写真用トナーの製造方法。
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