JP6448374B2 - トナー用結着樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナー用結着樹脂組成物、その製造方法及び該結着樹脂組成物を含有した電子写真用トナーに関する。
近年、装置の高速化、小型化等の要求に対し、より低温定着可能なトナー用結着樹脂が望まれている。トナー用結着樹脂としてはビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂が汎用されているが、低温定着性の観点からは、ポリエステル系樹脂が好ましいとされている。低温定着性の改善には、樹脂の軟化点やガラス転移点の低下が有効であることが知られているが、反面、耐オフセット性等が低下する。
特許文献1には、連続相を形成する縮重合系樹脂(樹脂a)と分散相を形成する付加重合系樹脂(樹脂b)とからなるトナー用結着樹脂であって、樹脂bのガラス転移点が-30〜35℃であり、45〜65℃に結着樹脂のガラス転移点を有し、35℃以下に結着樹脂のガラス転移点を有していないトナー用結着樹脂が開示されている。
特許文献2には、少なくとも結着樹脂、ワックス及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、
該結着樹脂は少なくとも2種以上の樹脂A及び樹脂Bを含有し、
該樹脂Aは、縮重合系モノマーの存在下でビニル系モノマーを付加重合させ、付加重合反応が終了後に、該縮重合系モノマーを縮重合させて得られる樹脂、または、ビニル系モノマーを付加重合させて得られるビニル系樹脂の存在下で、縮重合系モノマーを縮重合させることにより得られる樹脂であり、
該樹脂Bは、縮重合系モノマーを縮重合させることにより得られる縮重合樹脂に、ビニル系モノマーを添加、混合して付加重合させることにより得られる樹脂であり、
該樹脂Aの軟化点が該樹脂Bの軟化点よりも5℃以上低く、
該樹脂Aと該樹脂Bが10:90〜60:40の質量比で含有されていることを特徴とするトナーが開示されている。
特開2007−187997号公報 特開2008−102396号公報
しかしながら、前記特許文献1、2記載の結着樹脂では、グロスやローラー剥離性において、まだ十分とは言えない。
本発明は、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性に優れる電子写真用トナー用結着樹脂組成物、その製造方法、及び該結着樹脂を含有する電子写真用トナーに関する。
本発明は、
〔1〕 ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を10モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる重縮合系樹脂成分と、アルキル基の炭素数が2以上8以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、10質量%以上60質量%以下含有する原料モノマーを付加重合して得られる付加重合系樹脂成分とを含み、軟化点が100℃以上130℃以下、メチルエチルケトン不溶分が5質量%以上50質量%以下である非晶質複合樹脂を含有する、トナー用結着樹脂組成物、
〔2〕 ビスフェノールAにエチレンオキサイド付加物を10モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを、チタン触媒の存在下、重縮合して、重縮合系樹脂成分を得る工程、及び
アルキル基の炭素数が2以上8以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10質量%以上60質量%以下含有する付加重合系樹脂成分の原料モノマーを、付加重合して、付加重合系樹脂成分を得る工程
を含む、前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂組成物の製造方法、並びに
〔3〕 前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、電子写真用トナー
に関する。
本発明の結着樹脂組成物を含有した電子写真用トナーは、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性において優れた効果を奏するものである。
本発明の電子写真用トナー(以下、単にトナーともいう。)は、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を10モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる重縮合系樹脂成分と、アルキル基の炭素数が2以上8以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10質量%以上60質量%以下含有する原料モノマーを付加重合して得られる付加重合系樹脂成分とを含み、軟化点が100℃℃以上130℃以下、メチルエチルケトン不溶分が5質量%以上50質量%以下である非晶質複合樹脂を含有する結着樹脂組成物を含むものである。
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。非晶質樹脂は、結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満、好ましくは1.5を超えるか、0.5以下、より好ましくは1.6以上か、0.5以下の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。
本発明の電子写真用トナーが、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性に優れる理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明の結着樹脂組成物の付加重合系樹脂成分は、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数2以上8以下)エステル由来の構成単位を含み、重縮合系樹脂成分は、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物由来の構成単位を含んでいる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の末端水酸基とがエステル交換反応することで、非晶質複合樹脂内に、該エステル交換した反応物を架橋点とした、均一な架橋構造が生じると考えられる。
即ち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む原料モノマーを付加重合反応後、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を重縮合すると、上記のエステル交換が生じることで架橋構造が生じると考えられる。逆に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応後、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む原料モノマーを付加重合反応しても、同様に上記のエステル交換が生じると考えられるが、反応性の観点から、前者が好ましい。
均一な架橋構造を有することで、得られた非晶質複合樹脂は、分子量分布が狭く、低分子量成分や高分子量成分が少ないため、定着ローラーとの剥離性が向上するとともに、トナー溶融後の平滑性も向上し、グロスが向上し、低温定着性にも優れるものと考えられる。
また、本発明の結着樹脂は、この均一な架橋構造により、メチルエチルケトン不溶分を有しながら、軟化点を下げることもできる。
前記特許文献2記載の結着樹脂は、不飽和縮重合樹脂に、ビニル系モノマーを付加重合させているため、メチルエチルケトン不溶分は多くなるが、樹脂が高分子量化するため、グロス、ローラー剥離性、及び低温定着性において、十分とは言えない。
重縮合系樹脂成分の原料モノマーとして、アルコール成分とカルボン酸成分とが用いられるが、これらは、2価以上のアルコールを含有するアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分であることが好ましく、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応により、ポリエステル成分が形成される。
アルコール成分は、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を含有する。ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物は、式(I):
Figure 0006448374
(式中、R1O及びOR1はオキシエチレン基であり、x1及びy1はエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、x1とy1の和の値は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは16以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは4以下である)
で表される化合物が好ましい。
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の含有量は、重縮合系樹脂成分のアルコール成分中、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性の観点から、10モル%以上、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上であり、低温定着性及びグロスの観点から、100モル%以下、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは60モル%以下である。
アルコール成分は、低温定着性及びグロスの観点から、さらに、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を含有していることが好ましい。ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物は、式(II):
Figure 0006448374
(式中、R2O及びOR2はオキシプロピレン基であり、x2及びy2はプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、x2とy2の和の値は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは16以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは4以下である)
で表される化合物が好ましい。
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の含有量は、重縮合系樹脂成分のアルコール成分中、グロス及びローラー剥離性の観点から、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは60モル%以下であり、低温定着性及びグロスの観点から、好ましくは0モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上である。ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を、重縮合系樹脂成分のアルコール成分に用いた場合、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物と比較して、得られる非晶質複合樹脂中のメチルエチルケトン不溶分が少なくなるが、これは、エステル交換の反応性が低下し、架橋構造の形成が不十分となるためと考えられる。
重縮合系樹脂成分のアルコール成分中、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物とビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のモル比(プロピレンオキサイド付加物/エチレンオキサイド付加物)は、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性の観点から、好ましくは90/10以下、より好ましくは70/30以下、さらに好ましくは60/40以下、さらに好ましくは50/50以下であり、低温定着性及びグロスの観点から、好ましくは0/100以上、より好ましくは20/80以上、さらに好ましくは30/70以上、さらに好ましくは40/60以上である。
他のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等のジオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
一方、カルボン酸成分において、2価のカルボン酸化合物としては、耐久性の観点から、芳香族ジカルボン酸化合物が好ましく、テレフタル酸及びイソフタル酸がより好ましく、テレフタル酸がさらに好ましい。また、低温定着性の観点からは、脂肪族ジカルボン酸化合物が好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸;それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。なお、本発明において、カルボン酸化合物には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び炭素数1〜3のアルキルエステルも含まれる。
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、トナーの保存性の観点から、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上であり、低温定着性の観点から、好ましくは80モル%以下、より好ましくは75モル%以下である。
脂肪族ジカルボン酸化合物における鎖状炭化水素基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数は、好ましくは4以上であり、入手性の観点から、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。なお、本発明において、カルボン酸化合物には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び炭素数1〜3のアルキルエステルも含まれる。ただし、アルキルエステル部のアルキル基の炭素数は、脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数には含めない。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、コハク酸(炭素数:4)、フマル酸(炭素数:4)、グルタル酸(炭素数:5)、アジピン酸(炭素数:6)、スベリン酸(炭素数:8)、アゼライン酸(炭素数:9)、セバシン酸(炭素数:10)、ドデカン2酸(炭素数:12)、テトラデカン2酸(炭素数:14)、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸、これらの酸の無水物、それらの炭素数1〜3のアルキルエステル等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、低温定着性の観点から、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、保存性の観点から、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下である。
また、カルボン酸成分は、保存性及び耐久性の観点から、3価以上の芳香族カルボン酸化合物を含有していることが好ましい。
3価以上の芳香族カルボン酸化合物としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、これらの中では、トリメリット酸化合物が好ましい。
3価以上の芳香族カルボン酸化合物の含有量は、アルコール成分100モルに対して、軟化点を向上させ、ローラー剥離性を向上させる観点から、好ましくは3モル以上、より好ましくは5モル以上、さらに好ましくは7モル以上であり、軟化点を低下させ、低温定着性、及びグロスの観点から、好ましくは20モル以下、より好ましくは15モル以下、さらに好ましくは13モル以下である。
また、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、分子量調整等の観点から、適宜含有されていてもよい。
重縮合系樹脂成分におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量モル比(COOH基/OH基)は、非晶質複合樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.1以下である。
重縮合系樹脂成分のアルコール成分とカルボン酸成分の重縮合反応は、チタン触媒の存在下で行うことが好ましい。酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)(オクチル酸スズ)等のスズ触媒を用いた場合は、メチルエチルケトン不溶分が少なくなるが、これは、エステル交換反応がほとんど起こらず、架橋構造の形成が不十分となるためと考えられる。
チタン触媒としては、式(A):
Ti(X)n(Y)m (A)
(式中、Xは炭素数4以上8以下の置換アミノ基、Yは炭素数2以上28以下のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基、好ましくはアルコキシ基、n及びmは1以上3以下の整数であり、nとmの和は4である)
で表されるチタン化合物、及び式(B):
Ti(Z)4 (B)
(Zは炭素数2以上28以下のアルコキシ基、アルケニルオキシ基又はアシルオキシ基である)
で表されるチタン化合物が好ましく、これらは単独で用いられていても、併用されていてもよい。本発明では、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性の観点から、式(A)で表されるチタン化合物が好ましい。これはエステル交換反応性が向上するためと考えられる。
式(A)において、Xで表される置換アミノ基の炭素数は、6が好ましい。なお、本発明における置換アミノ基とは、チタン原子と直接結合することのできる窒素原子を有する基であり、水酸基を有していてもよいアルキルアミノ基等が挙げられるが、4級カチオン基もアミノ基に含まれ、好ましくは4級カチオン基である。かかるアミノ基は、例えばハロゲン化チタンをアミン化合物と反応させることにより生成させることができる。かかるアミン化合物としてはモノアルカノールアミン化合物、ジアルカノールアミン化合物、トリアルカノールアミン化合物等のアルカノールアミン化合物、トリアルキルアミン等のアルキルアミン化合物等が挙げられ、これらの中ではアルカノールアミンが好ましく、トリアルカノールアミンがより好ましい。
また、Yで表される基の炭素数は、好ましくは2以上10以下、より好ましくは2以上5以下である。
さらに、本発明の効果の観点から、Xで表される基がYで表される基よりも炭素数が多いことが好ましく、その炭素数の差は、好ましくは1以上6以下、より好ましくは2以上4以下である。
式(A)で表されるチタン化合物の具体例としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C37O)2〕、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート〔Ti(C4102N)2(C37O)2〕、チタンジペンチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C511O)2〕、チタンジエチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C25O)2〕、チタンジヒドロキシオクチレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(OHC816O)2〕、チタンジステアレートビストリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)2(C1837O)2〕、チタントリイソプロピレートトリエタノールアミネート〔Ti(C6143N)1(C37O)3〕、チタンモノプロピレートトリス(トリエタノールアミネート)〔Ti(C6143N)3(C37O)1〕等が挙げられ、これらの中ではチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート、チタンジイソプロピレートビスジエタノールアミネート及びチタンジペンチレートビストリエタノールアミネートが好ましく、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネートがより好ましい。これらは、例えばマツモト交商(株)の市販品としても入手可能である。
式(B)において、Zで表される基の炭素数は、好ましくは2以上5以下である。
また、Zで表される基は、それぞれ同一でも異なっていてもよいが、反応活性及び耐加水分解性の観点から、4種全て同一の基であるのが好ましい。
式(B)で表されるチタン化合物の具体例としては、テトラ-n-ブチルチタネート〔Ti(C49O)4〕、テトラプロピルチタネート〔Ti(C37O)4〕、チタンテトライソプロポキシド〔Ti[(CH3)2CHO]4〕、テトラステアリルチタネート〔Ti(C1837O)4〕、テトラミリスチルチタネート〔Ti(C1429O)4〕、テトラオクチルチタネート〔Ti(C817O)4〕、ジオクチルジヒドロキシオクチルチタネート〔Ti(C817O)2(OHC816O)2〕、ジミリスチルジオクチルチタネート〔Ti(C1429O)2(C817O)2〕等が挙げられ、これらの中では、チタンテトライソプロポキシド、テトラステアリルチタネート、テトラミリスチルチタネート、テトラオクチルチタネート及びジオクチルジヒドロキシオクチルチタネートが好ましく、チタンテトライソプロポキシドがより好ましい。これらは、例えばハロゲン化チタンを対応するアルコールと反応させることにより得ることもできるが、ニッソー社等の市販品としても入手可能である。
なお、式(A)及び式(B)において、Yで表される基及びZで表される基は、水酸基、ハロゲン等の置換基を有していてもよいが、無置換又は水酸基を置換基とするものが好ましく、無置換のものがより好ましい。
チタン触媒の使用量は、重縮合系樹脂成分の原料モノマー100質量部に対して、即ち、アルコール成分とカルボン酸成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1.2質量部以下、さらに好ましくは1.0質量部以下である。両反応性モノマーを使用する場合は、アルコール成分とカルボン酸成分と両反応性モノマーの合計量100質量部に対して、上記のチタン触媒の使用量が好ましい。
本発明の効果を損なわない範囲で、チタン触媒以外のエステル化触媒が用いられていてもよい。
アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合反応の温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上であり、好ましくは250℃以下である。
アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下で行うことできる。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
付加重合系樹脂成分の原料モノマーは、アルキル基の炭素数が2以上8以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、「(イソ又はターシャリー)」、「(イソ)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの双方の場合を含むことを示す。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性の観点から、8以下、好ましくは6以下、より好ましくは4以下であり、同様の観点から、2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4である。
付加重合系樹脂成分の原料モノマー中、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性の観点から、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、さらに低温定着性及びローラー剥離性の観点から、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、低温定着性及びグロスの観点から、60質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。
なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを介した架橋反応は、非晶質複合樹脂に均一に分布し、グロス及びローラー剥離性の効果が発揮されると考えられる。
付加重合系樹脂成分の原料モノマーは、さらに、スチレン、又はα−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体(以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて「スチレン化合物」という)を含むことが好ましい。
スチレン化合物の含有量は、付加重合系樹脂成分の原料モノマー中、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、低温定着性の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
他の付加重合系樹脂成分の原料モノマーとしては、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。なお、付加重合系樹脂成分の原料モノマーは、重合開始剤を含まない。
付加重合系樹脂成分の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で、常法により行うことができるが、温度条件としては、好ましくは110℃以上、より好ましくは140℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、付加重合系樹脂成分の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下が好ましい。
非晶質複合樹脂は、重縮合系樹脂成分の原料モノマーと付加重合系樹脂成分の原料モノマーに加えて、さらに重縮合系樹脂成分の原料モノマー及び付加重合系樹脂成分の原料モノマーのいずれとも反応し得る、両反応性モノマーを用いて得られる樹脂(ハイブリッド樹脂)であってもよい。
両反応性モノマーは、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシ基、より好ましくはカルボキシ基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物であり、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸からなる群より選ばれた少なくとも1種がより好ましい。但し、重合禁止剤と共に用いた場合は、フマル酸等のエチレン性不飽和結合を有する多価カルボン酸化合物は、重縮合系樹脂成分の原料モノマーとして機能する。この場合、フマル酸等は両反応性モノマーではなく、重縮合系樹脂成分の原料モノマーである。
しかしながら、本発明において、両反応性モノマーは、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性の観点から、使用量は少ないことが好ましく、使用していても、重縮合系樹脂成分のアルコール成分100モルに対して、好ましくは5モル以下、より好ましくは3モル以下、さらに好ましくは1モル以下、さらに好ましくは0.5モル以下、さらに好ましくは0.1モル以下であり、好ましくは0モル以上であり、実質使用しないことがより好ましい。
本発明において、非晶質複合樹脂は、
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を10モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを、チタン触媒の存在下、重縮合して、重縮合系樹脂成分を得る工程、及び
アルキル基の炭素数が2以上8以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10質量%以上60質量%以下含有する付加重合系樹脂成分の原料モノマーを、付加重合して、付加重合系樹脂成分を得る工程
を含む方法により、得ることが好ましい。重縮合系樹脂成分のアルコール成分とカルボン酸成分の重縮合反応と付加重合系樹脂成分の原料モノマーの付加重合反応は、それぞれ順次行っても、同時に進行させてもよいが、本発明では、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する付加重合系樹脂成分の原料モノマーを付加重合後、チタン触媒の存在下、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合することが好ましい。これにより、前記の如く、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の末端水酸基とが効率よくエステル交換され、架橋構造が生じると考えられる。
即ち、(イ)チタン触媒の存在下、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応後、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む付加重合系樹脂成分の原料モノマーを付加重合反応する方法よりも、(ロ)(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する付加重合系樹脂成分の原料モノマーを付加重合後、チタン触媒の存在下、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合する方法が好ましい。これは、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応を付加重合反応の前に行う方法では、エステル交換反応に用いられるアルコール成分量が減少するためと考えられる。
なお、前記(イ)の製造方法を用いる際、重縮合系樹脂成分の原料モノマーとして不飽和アルコールや不飽和カルボン酸化合物を用いる場合、付加重合反応物に、不飽和アルコールや不飽和カルボン酸化合物を添加して、さらに重縮合反応させることが、グロス、ローラー剥離性、及び低温定着性の観点から好ましい。
なお、重縮合反応と付加重合反応は、同一反応容器中で行うことが好ましく、重縮合反応は、付加重合系樹脂成分の原料モノマーの存在下で、付加重合反応は、重縮合系樹脂成分の原料モノマーの存在下で、行ってもよい。
本発明では、グロスを高める観点から、重縮合工程中又は終了後、得られた非晶質複合樹脂に、該非晶質複合樹脂100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下の水を、100℃以上300℃以下で添加することが好ましい。これにより、非晶質複合樹脂中に含まれている微量の未反応モノマーや超高分子量体を除去することができると考えられる。
非晶質複合樹脂と混合する水は、液体状であっても気体状(水蒸気)であってもよく、水の混合量は、非晶質複合樹脂の物性への影響を制御する観点から、得られる非晶質複合樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であり、好ましくは0.5質量部以上40質量部以下、より好ましくは1質量部以上30質量部以下である。
非晶質複合樹脂と水とを混合する際の温度は、水の蒸発効率及び反応混合物の粘度の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは240℃以下である。
非晶質複合樹脂と水との混合において、水の添加速度は、未反応モノマーの効率的除去等の観点から、得られる非晶質複合樹脂100質量部に対して、好ましくは0.002質量部/min以上、より好ましくは0.008質量部/min以上、さらに好ましくは0.01質量部/min以上であり、好ましくは0.5質量部/min以下、より好ましくは0.3質量部/min以下、さらに好ましくは0.2質量部/min以下である。
非晶質複合樹脂と水との混合する際の気圧は、水の効率的拡散の観点から、好ましくは4kPa以上、より好ましくは6kPa以上、さらに好ましくは20kPa以上であり、好ましくは100kPa以下、より好ましくは90kPa以下、さらに好ましくは60kPa以下である。
非晶質複合樹脂と水との混合は、反応容器から非晶質複合樹脂を抜き出すまでの間であれば特に限定されず、いつ行ってもよいが、触媒活性の低下を抑制する観点から、重縮合反応後に行うことが好ましい。
非晶質複合樹脂と水とを混合する方法は特に限定されないが、好ましくは100℃以上260℃以下、より好ましくは120℃以上180℃以下の水蒸気を非晶質複合樹脂中に吹き込む方法が好ましい。空気や窒素の吹き込み等によるバブリングの方法では、樹脂粘度が高いと、泡の一つ一つが大きくなり、また泡と樹脂との相互作用もないため、十分な効果が得られない。これに対し、本発明では、水が微細な水蒸気の気泡となって、樹脂中に広範囲にわたって均一に拡散し、効率的に未反応モノマーの除去等を行うことできるものと推定される。
混合する水の量や添加速度により、未反応モノマーの残存量等を容易に調整することができる。例えば、水の添加速度を上げることにより、未反応モノマーの残存量等を低減することができる。
非晶質複合樹脂のおける重縮合系樹脂成分と付加重合系樹脂成分の質量比(重縮合系樹脂成分/付加重合系樹脂成分)は、グロスの観点から、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、さらに好ましくは85/15以下、さらに好ましくは80/20以下、さらに好ましくは75/25以下であり、低温定着性、ローラー剥離性、及びグロスの観点から、好ましくは50/50以上、より好ましくは55/45以上、さらに好ましくは60/40以上、さらに好ましくは65/35以上である。なお、上記の計算において、重縮合系樹脂成分の質量は、用いられる重縮合系樹脂の原料モノマーの質量から、重縮合反応により脱水される反応水の量(計算値)を除いた量であり、両反応性モノマーの量は、重縮合系樹脂成分の原料モノマー量に含める。また、付加重合系樹脂成分の量は、付加重合系樹脂成分の原料モノマー量であり、重合開始剤の量は含めない。
非晶質複合樹脂のメチルエチルケトン不溶分は、グロスの向上、定着ローラーの剥離性、耐ホットオフセット性等の観点から、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。メチルエチルケトン不溶分は、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やアルキル基の炭素数が2以上8以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量等により調整することができる。
非晶質複合樹脂の軟化点は、ローラー剥離性の観点から、100℃以上、好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは115℃以上であり、低温定着性及びグロスの観点から、130℃以下、好ましくは128℃以下、より好ましくは125℃以下、さらに好ましくは123℃以下である。
非晶質複合樹脂の吸熱の最高ピーク温度は、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上であり、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。
非晶質複合樹脂のガラス転移温度は、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは50℃以上であり、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。なお、ガラス転移温度は非晶質相に特有の物性であり、吸熱の最高ピーク温度とは区別される。
非晶質複合樹脂の酸価は、トナーの帯電量の環境安定性を向上させる観点から、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、さらに好ましくは25mgKOH/g以下であり、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上である。
本発明のトナーは、非晶質複合樹脂以外の結着樹脂、例えば、ポリエステル、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂等を含有してもよい。非晶質複合樹脂の含有量は、結着樹脂中、トナーの低温定着性及び耐久性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
本発明のトナーは、前記非晶質複合樹脂を結着樹脂として含有するものである一方で、グロスを高める観点から、結着樹脂として、軟化点の異なる2種の樹脂を含有していることが好ましい。
本発明のトナーが、軟化点の異なる2種の樹脂を含む場合、軟化点が高い方の樹脂(樹脂H)の軟化点は、ローラー剥離性の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上、さらに好ましくは115℃以上であり、低温定着性及びグロスの観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは128℃以下、さらに好ましくは125℃以下、さらに好ましくは123℃以下である。軟化点が低い方の樹脂(樹脂L)の軟化点は、ローラー剥離性の観点から、好ましくは75℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは85℃以上であり、低温定着性及びグロスの観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは97℃以下、さらに好ましくは95℃以下である。樹脂Hの軟化点と樹脂Lの軟化点の差は、ローラー剥離性、低温定着性及びグロスの観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。
本発明のトナーが、軟化点の異なる2種の樹脂(樹脂H及び樹脂L)を含む場合、少なくとも樹脂Hが、前記非晶質複合樹脂であることが好ましい。樹脂Lとしては、前記公知の結着樹脂が用いられるが、低温定着性の観点から、非晶質ポリエステルが好ましい。
樹脂Hと樹脂Lの質量比(樹脂H/樹脂L)は、ローラー剥離性、低温定着性及びグロスの観点から、好ましくは60/40〜100/0、より好ましくは70/30〜100/0、さらに好ましくは80/20〜100/0である。
本発明のトナーには、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよく、着色剤、離型剤及び荷電制御剤が含有されることが好ましい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、好ましくは40質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下である。
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、同様の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業株式会社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業株式会社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット株式会社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業株式会社製)、「TN-105」(保土谷化学工業株式会社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、同様の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましい。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、同様の観点から、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、同様の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所社製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間保持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔メチルエチルケトン(MEK)不溶分〕
(1) 試料の調製
JIS Z8801の篩を用いて、22メッシュの篩を通過し、30メッシュの篩は通過しない粉末状の試料を採取する。試料が塊等の場合は、市販のハンマー、コーヒーミルを用いて、粉砕し、粉末状として篩いにかける。
(2) 試料の溶解
2-1. 試料2.000gを、ガラス瓶(柏洋硝子社製、M-140)に秤量した後、MEK 95gを加え、内蓋及び外蓋を取り付ける。
2-2. ボールミルにて5時間攪拌する(周速:200mm/sec)。
2-3. 10時間静置する。
(3) 濾過
3-1. 予め計量済み(1000分の1g単位)のナスフラスコ(質量A(g))に取り付けたガラスフィルタ(目開き規格11G-3)を準備する。ガラスフィルタのシールには、減圧が可能なゴム栓を用いる。
3-2. 2-3において10時間静置した溶解液の上澄みから20mlをメスピペッドで吸い取り、3-1で準備したガラスフィルタを用いて、減圧濾過する。なお、液面から下2cmまでを上澄みとする。溶解液を濾過する前のナスフラスコ内の減圧度を40kPaに調整する。
3-3. 未使用のMEK 20mlをメスピペッドで吸い取り、ガラスフィルタに付着している可溶分を減圧濾過する。
(4) 乾燥
4-1. エバポレータにてナスフラスコ内のMEKを除去する。
ウォーターバス温度:70℃
ナスフラスコ回転数:200r/min
MEK除去中のナスフラスコ内の減圧度:40〜20kPaに調整
時間:10分
4-2. 50℃・1torrにて12時間乾燥した後、ナスフラスコの質量B(g)を計量する。
(5) MEK不溶分の算出
5-1. MEK 20mlに溶解したMEK可溶分X(g)を算出する。
X=B−A
5-2. MEK 95gに溶解したMEK可溶分Y(g)を、MEKの比重を0.805として算出する。
Y=X×95/(20×0.805)
5-3. 試料1gあたりの可溶分Z(質量%)を算出する。
Z=Y/2×100
5-4. MEK不溶分(質量%)=100-Z
なお、MEK不溶分(質量%)は、3回の測定値の平均値とする。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とする。
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
〔トナーの体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター株式会社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター株式会社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター株式会社製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー社製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
樹脂実施例1〔樹脂HB1〜HB7、HB9、HB11〜HB18〕
表1〜3に示すアルコール成分及びフマル酸及び無水トリメリット酸以外のカルボン酸成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、160℃まで昇温した。その後、付加重合系樹脂成分の原料モノマー、重合開始剤、及び両反応性モノマー(樹脂HB9のみ)の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を熟成させた後、200℃まで上昇させ、表1〜3に示すエステル化触媒及び没食子酸2gを入れた後、235℃で6時間重縮合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。180℃まで冷却した後、フマル酸、tert-ブチルカテコール2g、及び無水トリメリット酸を投入し、180℃から210℃まで10℃/hで昇温し、210℃、10kPaにて表1〜3に示す軟化点に達するまで反応を行って、非晶質複合樹脂を得た。
樹脂製造例2〔樹脂HB8〕
表2に示すアルコール成分及びフマル酸及び無水トリメリット酸以外のカルボン酸成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、160℃まで昇温した。その後、付加重合系樹脂成分の原料モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を熟成させた後、200℃まで上昇させ、表2に示すエステル化触媒及び没食子酸2gを入れた後、235℃で6時間重縮合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。200℃まで冷却した後、40kPaにおいて攪拌しながら140℃の水(水蒸気)を5g/minの速度で1時間樹脂中に吹き込み、添加した。180℃まで冷却した後、フマル酸、tert-ブチルカテコール2g、無水トリメリット酸を投入し、180℃から210℃まで10℃/hで昇温し、210℃、10kPaにて表2に示す軟化点に達するまで反応を行って、非晶質複合樹脂を得た。水の添加速度(5g/min)は、得られた非晶質複合樹脂100質量部に対して0.057質量部/minに相当し、水の総混合量は300g、即ち結着樹脂100質量部に対して3.4質量部であった。
樹脂製造例3〔樹脂HB10〕
表2に示すアルコール成分、フマル酸及び無水トリメリット酸以外のカルボン酸成分、エステル化触媒、及び没食子酸2gを、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃まで昇温させ、235℃で6時間重縮合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。160℃まで冷却後、付加重合系樹脂成分の原料モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を熟成させた後、210℃まで上昇させ、フマル酸、tert-ブチルカテコール2g、及び無水トリメリット酸を投入し、210℃、10kPaにて表2に示す軟化点に達するまで反応を行って、非晶質複合樹脂を得た。
樹脂製造例4〔樹脂a1〕
表3に示すアルコール成分、アジピン酸及び無水トリメリット酸以外のカルボン酸成分、2-エチルヘキサン酸錫(II)45g及び没食子酸5gを入れ、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコ中、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で235℃で6時間重縮合させた後、200℃まで冷却した。その後、アジピン酸及び無水トリメリット酸を添加した後、210℃に昇温し、重縮合反応を行い、表3に示す軟化点に達するまで反応させて、非晶質ポリエステルを得た。
Figure 0006448374
Figure 0006448374
Figure 0006448374
実施例1〜13及び比較例1〜6(実施例7は参考例である)
表4に示す結着樹脂100質量部、着色剤「ECB-301」(大日精化社製、C.I.ピグメントブルー15:3)5質量部、負帯電性荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット社製)1質量部、及び離型剤「NP-105」(三井化学社製、ポリプロピレンワックス、融点:140℃)2質量部を、ヘンシェルミキサーによく攪拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱温度は120℃であり、混合物の供給速度は10kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。得られた混練物を冷却ローラーで圧延冷却した後、ジェットミルで体積中位粒径(D50)6.5μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に、外添剤「アエロジルR-972」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製、疎水化処理剤:DMDS、平均粒子径:16nm)1.0質量部及び「RY-50」(疎水性シリカ、疎水化処理剤:シリコーンオイル、日本アエロジル社製、平均粒子径:40nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、体積中位粒径(D50)6.5μmのトナーを得た。
試験例1〔低温定着性〕
得られたトナーを複写機「AR-505」(シャープ(株)製)に実装し、トナー付着量が0.7mg/cm2の未定着画像(2cm×12cm)を得た。複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機をオフラインで定着可能なように改良した定着機(定着速度200mm/sec)を用い、定着温度を90℃から240℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、各定着温度で定着試験を行った。定着紙には、「CopyBond SF-70NA」(シャープ社製、75g/m2)を使用した。
最低定着温度は500gの荷重をかけた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴムで、定着機を通して定着された画像を5往復擦り、擦る前後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(擦り後/擦り前)が最初に70%を超える定着ローラーの温度を最低定着温度とする。結果を表4に示す。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れ、最低定着温度は、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、125℃以下がさらに好ましい。
試験例2〔印刷物のグロス〕
複写機「AR-505」(商品名、シャープ(株)製)にトナーを実装し、未定着で画像出しを行った(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。前記複写機の定着機にて、160℃、400mm/secの条件で印字媒体に未定着画像を定着させた。なお、印字媒体にJ紙(商品名、富士ゼロックス(株)製)を用いた。該画像の下に厚紙を敷き、光沢度計((株)堀場製作所製、商品名:「IG-330」)を用いて入射角度60°の光射条件にて印刷物の光沢度を測定した。結果を表4に示す。光沢度が高いほどグロスに優れ、光沢度は、25以上が好ましく、35以上がより好ましく、40以上がさらに好ましい。
試験例3〔ローラー剥離性〕
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)にトナーを実装し、2cm×12cmのベタ画像部(トナー付着量:0.5mg/cm2)を有する未定着の画像を得た。複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した定着機(定着速度:100mm/sec)を用い、定着温度を170℃とし、紙を定着ローラーに通過させ、定着ローラーから剥がれるか定着ローラーに付着するかを目視にて観察し、以下の評価基準に従って、定着ローラー剥離性を評価した。結果を表4に示す。
〔評価基準〕
A:定着ローラーから紙が剥離し、通過後の紙の折れ曲がりが全くない。
B:定着ローラーから紙が剥離するが、通過後の紙の末端だけが折れ曲がる。
C:定着ローラーから紙が剥離するが、通過後の紙全体が折れ曲がる。
D:定着ローラーに紙が付着する。
Figure 0006448374
実施例1、3、4、比較例5を対比すると、付加重合系樹脂成分の原料モノマー中、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が30質量%である実施例1が、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性のバランスにより優れることがわかる。
実施例1、5、6を対比すると、重縮合系樹脂成分/付加重合系樹脂成分が70/30の実施例1が、低温定着性、ローラー剥離性、及びグロスの観点からより優れていることがわかる。
実施例1、7、比較例3を対比すると、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基が炭素数4のn-ブチル基である実施例1が、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性により優れることがわかる。
実施例1、8を対比すると、チタン触媒として、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネートを用いた実施例1が、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性により優れることがわかる。
実施例1、9を対比すると、非晶質複合樹脂100質量部に対して3.4質量部の水蒸気を添加した実施例9は、グロスが向上することがわかる。
実施例1、10を対比すると、両反応性モノマーであるアクリル酸を用いない実施例1が、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性により優れることがわかる。
実施例1、11を対比すると、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む原料モノマーを付加重合反応後、チタン触媒の存在下、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を重縮合反応する実施例1の製造方法が、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性により優れることがわかる。
実施例1、12、13、比較例6を対比すると、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物が50モル%であり、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物/ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(モル比)が50/50である実施例1が、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性により優れていることがわかる。
比較例1は、非晶質複合樹脂の軟化点が95℃と低く、メチルエチルケトン不溶分が少ないため、ローラー剥離性が低い。
比較例2は、非晶質複合樹脂の軟化点が135℃と高く、低温定着性及びグロスが低い。
比較例3は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基が、炭素数18のステアリル基であり、メチルエチルケトン不溶分が少なく、実施例1と比較して、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性が低い。
比較例4は、重縮合系樹脂成分の重縮合時に2-エチルヘキサン酸錫を用いているため、実施例1と比較して、メチルエチルケトン不溶分が少なく、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性が低い。
比較例5は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの量が少ないため、実施例1と比較して、メチルエチルケトン不溶分が少なく、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性が低い。
比較例6は、重縮合系樹脂成分のアルコール成分がビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を含んでおらず、プロピレンオキサイド加物のみからなるため、実施例1と比較して、メチルエチルケトン不溶分が少なく、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性が低い。
本発明の電子写真用トナー用結着樹脂組成物は、静電荷像現像法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられる電子写真用トナーに好適に用いられるものである。

Claims (5)

  1. ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を40モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる重縮合系樹脂成分と、アルキル基の炭素数が2以上6以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、20質量%以上60質量%以下含有する原料モノマーを付加重合して得られる付加重合系樹脂成分とを含み、軟化点が100℃以上130℃以下、メチルエチルケトン不溶分が5質量%以上50質量%以下である非晶質複合樹脂を含有する、トナー用結着樹脂組成物の製造方法であって、
    ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物を40モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを、チタン触媒の存在下、重縮合して、重縮合系樹脂成分を得る工程、及び
    アルキル基の炭素数が2以上6以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを20質量%以上60質量%以下含有する付加重合系樹脂成分の原料モノマーを、付加重合して、付加重合系樹脂成分を得る工程
    を含む、トナー用結着樹脂組成物の製造方法。
  2. (メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する付加重合系樹脂成分の原料モノマーを付加重合後、チタン触媒の存在下、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合する、請求項記載の製造方法。
  3. 重縮合工程中又は終了後、得られる非晶質複合樹脂に、該非晶質複合樹脂100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下の水を、100℃以上300℃以下で添加する、請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 重縮合系樹脂成分のアルコール成分中、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物とビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のモル比(プロピレンオキサイド付加物/エチレンオキサイド付加物)が、60/40以下0/100以上である、請求項1〜3いずれか記載の製造方法。
  5. 非晶質複合樹脂における重縮合系樹脂成分と付加重合系樹脂成分の質量比(重縮合系樹脂成分/付加重合系樹脂成分)が、50/50以上95/5以下である、請求項1〜4いずれか記載の製造方法。
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