JP7087861B2 - チタン合金及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、チタン合金及びその製造方法に関する。
工業用純チタンは、SUS304などの汎用ステンレス鋼では腐食してしまう海水においても優れた耐食性を示す。この高い耐食性を活かして海水淡水化プラント等で使用されている。
一方で、化学プラント用の材料として塩酸等の海水以上に腐食性の高い環境下で使用される場合がある。このような環境下では、工業用純チタンであっても顕著に腐食してしまう。
そこで、腐食性の高い環境下で用いることを想定し、工業用純チタンよりも耐食性に優れた耐食チタン合金が開発されてきた。
特許文献1には、Pdなどの白金族元素を添加して耐食性の低下を抑制したチタン合金が記載されている。また、特許文献2および非特許文献1には、白金族元素の添加に加えて、金属間化合物を析出させることで、耐食性の改善を図ったチタン合金が開示されている。
しかしながら、これらの従来のチタン合金は、金属間化合物、β相自体、または、これらの周囲において局部腐食が発生してしまい、金属間化合物やβ相の脱落が発生してしまう。そのため、従来のチタン合金では、金属間化合物やβ相の脱落による耐食性の低下が課題であった。
この課題に対する取り組みとして、例えば特許文献3では、チタン合金の組織として、Niリッチなβ相とTiNiが共存する組織が提案されている。
国際公開第2007/077645号 特開平6-25779号公報 特許第5379752号公報
「鉄と鋼」、vol.80,No.4(1994),P353-358
しかしながら、特許文献3に記載のような組織を形成したとしても、実用上求められる耐食性の水準に比べて腐食速度が大きく、前述の課題の完全な解決には至っていない。
以上のような経緯から、金属間化合物やβ相近傍の局部腐食を抑制して、優れた耐食性を示すチタン合金の開発が待ち望まれていた。
本発明は、上記課題を解決するために成されたもので、優れた耐食性を有するチタン合金およびその製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明者らは、金属間化合物やβ相そのものの局部腐食、および金属間化合物やβ相の周囲にて発生する局部腐食について研究を進めた。
その結果、局部腐食の発生を抑制するためには、金属間化合物の有無よりもβ相の組成が重要な役割を果たしていることが分かった。すなわち、本発明者らは、β相結晶粒(以下、β相結晶粒をβ粒と表記する場合がある)に含まれる元素の比率である平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を0.55~2.00の範囲にすることで、局部腐食を抑制することを見出した。
さらに上記の知見に加えて、チタン合金中に、希土類元素であるLa、Ce、Ndを微量含有させることで、更なる耐食性向上効果を発揮できることを見出した。
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]質量%で、
Fe:0.010~0.300%、
Ru:0.010~0.15%、
Cr:0~0.10%、
Ni:0~0.30%、
Mo:0~0.10%、
Pt:0~0.10%、
Pd:0~0.20%、
Ir:0~0.10%、
Os:0~0.10%、
Rh:0~0.10%を含有し、残部がTiおよび不純物からなり、
β相結晶粒に含まれる元素の成分比を表す下記式(1)のA値が、0.550~2.000の範囲であることを特徴とするチタン合金。
A=(〔Fe〕+〔Cr〕+〔Ni〕+〔Mo〕)/(〔Pt〕+〔Pd〕+〔Ru〕+〔Ir〕+〔Os〕+〔Rh〕)・・・(1)
ここで、式(1)内の〔元素記号〕の表示は、β相結晶粒中の元素濃度(質量%)を示す。
[2]さらに質量%で、La、Ce及びNdのうちの1種または2種以上を合計で0.001~0.10%含有することを特徴とする[1]に記載のチタン合金。
[3]塑性加工されたチタン合金素材を、仕上げ焼鈍温度:550~780℃、仕上げ焼鈍時間:1分~70時間で焼鈍する第1の工程と、
前記仕上げ焼鈍温度から400℃に到達するまでの平均冷却速度が0.20℃/s以下となる条件で冷却する第2の工程と、
を順次行うことを特徴とする、[1]または[2]に記載のチタン合金の製造方法。
本発明によれば、金属間化合物やβ相近傍の局部腐食を抑制することができ、耐食性の良好なチタン合金およびその製造方法を提供できる。
実施例(No.1~30)におけるβ粒の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比と、腐食速度との関係を示す図である。
以下、本発明の実施形態であるチタン合金およびその製造方法について詳細に説明する。
本実施形態のチタン合金は、質量%で、Fe:0.010~0.300%、Ru:0.010~0.15%、Cr:0~0.10%、Ni:0~0.30%、Mo:0~0.10%、Pt:0~0.10%、Pd:0~0.20%、Ir:0~0.10%、Os:0~0.10%、Rh:0~0.10%を含有し、残部がTiおよび不純物からなり、β相結晶粒に含まれる元素の成分比を表す下記式(1)のA値が、0.550~2.000の範囲である。
A=(〔Fe〕+〔Cr〕+〔Ni〕+〔Mo〕)/(〔Pt〕+〔Pd〕+〔Ru〕+〔Ir〕+〔Os〕+〔Rh〕)・・・(1)
ここで、式(1)内の〔元素記号〕の表示は、β相結晶粒中の元素濃度(質量%)を示す。
まず、本実施形態のチタン合金の化学成分について説明する。以下の説明では、質量%を単に%という。
Ru:0.010~0.15%
Ruは、水素過電圧が小さく、チタンの不動態化を促進して耐食性向上に有効に作用する。この効果を発揮させるため、含有量を0.010%以上とする。好ましくは0.02%以上である。しかし、Ruは強力なβ安定化元素であるため、過剰に含有させるとβ相中に濃化してβ相率の不要な増加をもたらす。また、Ruを過剰に含有させると、後述するβ相結晶粒における(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を適正なバランスから逸脱させる一因となる。そのため、Ruの上限は0.15%以下とする。好ましくは0.13%以下である。
Fe:0.010~0.300%
Feは、β安定化元素であり、Ruと同様にβ相中に濃化して分布する。Fe原子そのものの水素過電圧は必ずしも小さくなく単独添加による耐食性向上効果は認められないが、0.010%以上のFeがβ相結晶粒中にRuと共に存在することで耐食性向上効果をもたらす。そのため、合金中のFe含有量を0.010%以上とし、好ましくは0.020%以上とする。一方、Feを過剰に含有させると、後述するβ相結晶粒における(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を適正なバランスから逸脱させる一因となる。そのため、Feの上限範囲として0.300%以下とする。好ましくは0.250%以下である。
また、本実施形態に係るチタン合金は、Cr:0~0.10%、Ni:0~0.30%、Mo:0~0.10%、Pt:0~0.10%、Pd:0~0.20%、Ir:0~0.10%、Os:0~0.10%、Rh:0~0.10%の1種または2種以上を含有してもよく、これらの元素を含有しなくてもよい。含有しない場合の下限は0%である。
Cr:0~0.10%
Crは、チタン合金への微量含有では耐食性に悪影響をもたらさないが、多量の含有は局部アノードのpHを低下させてしまい局部腐食の進展を促進する悪影響をもたらしてしまう。そのため、上限を0.10%以下とする。下限は0%である。
Ni:0~0.30%
Niは、Tiに含有されて金属化合物を形成した場合に、耐食性を向上させる元素である。しかし、金属間化合物の形成は局部腐食発生の一因となる場合があり、本発明への積極的な含有は必要ない。そのため、上限を0.30%以下とする。下限は0%である。
Mo:0~0.10%
Moは、溶出してイオン化した際に腐食抑制剤として機能することで耐食性を向上させる元素である。しかし、わずかな局部腐食を抑制する本発明において、腐食抑制剤として機能するほどMoがイオン化することはなく積極的に含有させる必要はない。そのため、上限を0.10%以下とする。下限は0%である。
Pt:0~0.10%
Ptは、水素過電圧が小さく、その添加によりチタンの不動態化を促進するため耐食性向上に有効な元素である。本発明においては、Ptを積極的に含有させなくても他の白金族元素の添加によって十分な耐食性を発揮できる。高価な希少元素であるPtの過剰な含有は素材コストを損なう一因となる。そのため、上限を0.10%以下とする。下限は0%である。
Pd:0~0.20%
Pdは、水素過電圧が小さく、その含有によりチタンの不動態化を促進するため、少量の含有により耐食性向上に有効な元素である。しかし、Pdは希少元素であり高価であるため、過剰な添加は素材コストを損なう一因となる。そのため、上限を0.20%以下とする。下限は0%であってもよく、0.01%以上であってもよい。
Ir:0~0.10%以下
Irは、水素過電圧が小さく、その含有によりチタンの不動態化を促進するため耐食性向上に有効な元素である。本発明においては、Irを積極的に含有させなくても他の白金族元素の含有によって十分な耐食性を発揮できる。高価な希少元素であるIrの過剰な添加は素材コストを損なう一因となり得ること、Irの過剰な含有は不要な金属間化合物の析出を促進してしまうことから、上限を0.10%以下とする。下限は0%である。
Os:0~0.10%
Rh:0~0.10%
OsやRhは、水素過電圧が小さく、その含有によりチタンの不動態化を促進するため耐食性向上に有効な元素である。本発明においては、OsやRhを積極的に含有させなくても他の白金族元素の含有によって十分な耐食性を発揮できる。高価な希少元素であるOsやRhの過剰な含有は素材コストを損なう一因となり得ること、OsやRhの過剰な含有は規定範囲以上にβ相析出を促進してしまうことから、それぞれの上限を0.10%以下とする。下限はそれぞれ0%である。
また、本実施形態のチタン合金は、さらに質量%で、La、Ce及びNdのうちの1種または2種以上を合計で0.001~0.10%含有してもよい。
La、Ce、Ndの合計量:0.001~0.10%
RuやPd等の白金属元素を含有せずにLa、Ce、Ndをそれぞれ含有させるだけでは耐食性を向上させる効果は乏しいが、RuやPd等の水素過電圧の小さい元素と、合計0.001%以上のLa、Ce、Ndを含有させることで、チタン酸化物から構成される不動態皮膜をより溶解し難くし、耐食性を一層向上させる効果がある。ただし、La、Ce、Ndのいずれの元素も酸化物を形成しやすいため、過剰に含有すると不要な介在物の形成をもたらし、望ましくない。そのため、La、Ce、Ndの合計量上限を0.10%以下とする。La、Ce、Ndは単独で含有させてもよく、2種以上を含有させてもよい。
本実施形態に係るチタン合金は、上述してきた元素以外(残部)は、Ti及び不純物からなる。以上説明した各元素の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。本実施形態における「不純物」とは、チタン合金を工業的に製造する際にスポンジチタンやスクラップ等の原料をはじめとして製造工程の種々の要因によって混入する成分であり、不可避的に混入する成分も含む。このような不可避的な不純物としては、例えば、酸素、水素、炭素、窒素などが挙げられる。これらの元素は、本発明の課題を解決する限度において、その含有割合を制限すればよい。
また、本実施形態で対象とするチタン合金は、熱延板や冷延板として適用される。具体的には、上記の成分範囲としたインゴットやスラブを溶製するが、溶解時のTi原料としては、一般的なスポンジチタンやスクラップを適宜用いる。この際、スクラップ原料由来により、Fe、Cr、Ni、Mo、Pt、Pd、Ru、Ir、Os、Rhなどが微量含有される場合があるが、上記範囲内であれば特に問題はない。
次に、β相結晶粒中の元素濃度について説明する。本実施形態のチタン合金は、α相の組織中に、微細なβ相結晶粒が分散した組織を有している。本実施形態のチタン合金のβ相結晶粒には、主にβ安定化元素や白金属元素が濃化するが、β相結晶粒に濃化する元素の成分比が所定の範囲になる場合に、より優れた耐食性を発揮できるようになる。具体的には、β相結晶粒に含まれる元素の成分比を表す下記式(1)のA値が、0.550~2.000の範囲を満たす必要がある。
A=(〔Fe〕+〔Cr〕+〔Ni〕+〔Mo〕)/(〔Pt〕+〔Pd〕+〔Ru〕+〔Ir〕+〔Os〕+〔Rh〕)・・・(1)
ここで、式(1)内の〔元素記号〕の表示は、β相結晶粒中の元素濃度(質量%)を示す。また、式(1)中の〔元素記号〕のうち、β相結晶粒中に含有しない元素については当該元素の項に0を代入する。
局部腐食を抑制し耐食性に優れたチタン合金を提供するためには、β相結晶粒(β粒)中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を0.550~2.000とする。β粒の組成が、この条件を満足することで、β相やその周囲が優先的な腐食サイトとならず、局部腐食の抑制が成され優れた耐食性を示す。
β相やその周囲が優先的な腐食サイトとなることを回避するためには、β粒の組成において、水素過電圧が小さいPt、Pd、Ru、Ir、Os、Rhなどの白金族元素と、白金族元素に比べて水素過電圧が大きいその他のβ安定化元素のバランスが重要である。この適したバランスとしてβ粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を0.550~2.000とする。
β粒中に白金族元素が多く分布する場合、つまり(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比が小さい場合は、β相は優先溶解しないがその周囲にて局部腐食が発生してしまう。一方で、β粒中に白金族元素分布が少ない場合、つまり(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比が大きい場合は、β相が優先的な腐食サイトとなってしまい、局部腐食が発生してしまう。このようなβ相やその周囲で発生する局部腐食をどちらも抑制できる範囲として、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を0.550~2.000と定める。なお、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を適正範囲に制御するためには、後述する仕上げ焼鈍後の冷却速度を調整することによって達成できる。
β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比は以下のようにして求めることができる。
チタン合金の表面を数μm程度研削し、更に、コロイダルシルカ含有液を研磨液として機械研磨を行う。ついで、研磨後の表面に対して、EPMAによる元素分析を行う。具体的には、表面を3000倍に拡大した拡大画像においてβ粒を特定する。特定したβ粒について、粒径の大きいものから順に10個を選択し、これら10個のβ粒の化学成分をEPMA法により分析する。EPMA法による測定対象元素は、Fe、Ru、Cr、Ni、Mo、Pt、Pd、Ir、Os、Rh及びTiとする。そして、β粒中の各測定対象元素の質量%を求める。得られた各元素の含有率を式(1)に導入することで、測定対象の10個のβ粒についてそれぞれ、(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を求める。そして、これらを平均して、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比とする。
次に、本実施形態のチタン合金の製造方法について説明する。
上記のように、本実施形態で対象とするチタン合金は、熱間圧延板や冷間圧延板として適用される。そしてこれら圧延板には、仕上げ焼鈍が施されて製品とされるが、本実施形態では、この仕上げ焼鈍の条件を制御することが重要となる。
以下、チタン合金の好適な製造方法を説明する。
本実施形態のチタン合金は、塑性加工されたチタン合金素材を、仕上げ焼鈍温度:550~780℃、仕上げ焼鈍時間:1分~70時間で焼鈍する第1の工程と、仕上げ焼鈍温度から400℃に到達するまでの平均冷却速度が0.20℃/s以下となる条件で冷却する第2の工程と、を順次行うことによって製造される。なお、塑性加工されたチタン合金素材とは、例えば、熱間圧延板や冷間圧延板を例示できる。
以下、各工程について説明する。
まず、上記成分組成を有するインゴットやスラブを鋳造し、熱間鍛造や熱間圧延等の熱間加工と、脱スケールを施したのち、必要に応じて冷間加工を施す。このようにしてチタン合金素材を製造する。チタン合金素材は、冷間加工後の素材に限らず、熱間加工後の素材であってもよく、熱間加工と脱スケールを行った後の素材であってもよい。
次に、第1の工程として、チタン合金素材に仕上げ焼鈍を施す。仕上げ焼鈍後には、必要に応じて脱スケールを実施する。
仕上げ焼鈍の温度は、例えば550~780℃といった範囲で実施すればよい。また、仕上げ焼鈍の保持時間も特に規定せず、例えば連続焼鈍の場合は1~20分、バッチ焼鈍の場合は2~70時間といった範囲で実施すればよい。
仕上げ焼鈍の雰囲気についても特に限定せず、大気雰囲気で行ってもよく、真空雰囲気や不活性ガス雰囲気で行ってもよい。
次に、第2の工程として、前述の仕上げ焼鈍温度にて熱処理した後は常温まで冷却するが、このときの冷却速度は、β粒中の組成に大きな影響を及ぼす。耐食性に優れたチタン合金を提供するには、適切なβ粒中の組成とする必要があり、具体的には上述したようにβ粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を適正の範囲内とする。そのためには、前述の仕上げ焼鈍温度から400℃までの温度域における平均冷却速度を0.20℃/s以下とする必要がある。当該温度域の平均冷却速度を遅くすることで、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を適正範囲とすることができる。平均冷却速度が遅すぎると生産性が低下するため、生産性を損なわない程度に下限を設定すればよい。例えば、平均冷却速度の下限は、0.001℃/s以上としてもよい。
なお、仕上げ焼鈍温度から400℃までの温度域における平均冷却速度とは、仕上げ焼鈍温度から400℃までのチタン合金素材の表面の温度降下幅を、仕上焼鈍温度から400℃までの所要時間で除した値とする。
400℃まで冷却した後の平均冷却速度は特に制限する必要はなく、水冷等の手段によって急速に冷却を行ってもよい。
以上説明したように、本実施形態のチタン合金は、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を制御することにより、β相やその周囲が優先的な腐食サイトとなることを回避し局部腐食を抑制することができ、結果、希少元素の添加に頼らずとも耐食性を向上させることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することが可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
スポンジチタン、スクラップおよび所定の添加元素を溶解原料とし、真空アーク溶解炉により、表1に示す各成分組成のチタンインゴットを鋳造した。
鋳造したチタン鋳塊を用いて、約800~1000℃の加熱温度で鍛造、熱間圧延を行い厚さ4.0mmの熱延板を得た。熱延板に脱スケールを施した後、所定の板厚まで冷間圧延を行い、これをチタン合金素材とした。
次いで、圧力1.3x10-4Paの真空雰囲気中にて仕上げ焼鈍を施し、その後、冷却した。仕上げ焼鈍及び冷却の条件は、表2に示す条件にて実施した。表2に示す冷却速度は、仕上げ焼鈍温度から400℃に到達するまでの平均冷却速度である。このようにして、チタン合金板を得た。なお、仕上げ焼鈍における保持時間(焼鈍時間)は180minとした。
製造されたチタン合金板から試験片を作製し、以下の組織観察、β粒中の元素分布分析および耐食性試験を行った。
組織観察は、SEMを用いて、準備したチタン合金素材の表面を3000倍以上の倍率で観察することで、金属間化合物や介在物の有無を確認した。ここでは、α相およびβ粒以外の組織を全て金属間化合物または介在物と判断した。金属間化合物または介在物の合計の面積率が1%以下の場合に、金属間化合物や介在物が無いと判断した。
β粒中の元素分布分析は、以下のようにして行った。
まず、チタン合金板の表面を数μm程度研削し、更に、コロイダルシルカ含有液を研磨液として機械研磨を行った。ついで、研磨後の表面に対して、EPMAによる元素分析を行った。具体的には、表面を3000倍に拡大した拡大画像においてβ粒を特定した。特定したβ粒について、粒径の大きいものから順に10個を選択し、これら10個のβ粒の化学成分をEPMA法により分析した。EPMA法による測定対象元素は、Fe、Ru、Cr、Ni、Mo、Pt、Pd、Ir、Os、Rh及びTiとした。そして、β粒中の各測定対象元素の質量%を求めた。得られた各元素の含有率を下記式に導入することで、測定対象の10個のβ粒についてそれぞれ、(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を求めた。そして、これらを平均して、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比とした。
耐食性の評価は、以下のようにして評価した。
得られたチタン合金板から、試験片(10mm×40mm)を切り出し、当該試験片を90℃、8mass%の塩酸水溶液に24h浸漬し、浸漬前後の質量変化(腐食減量)から算出した腐食速度(mm/year)を求めた。腐食減量(質量)から腐食減肉量(厚み)を計算で求め、この24時間の腐食減肉量を1年あたりの腐食速度に換算した。すなわち、腐食速度の単位は、1年あたりの試験片の厚みの減少量に換算したものである。腐食速度が0.20(mm/year)以下である場合を合格とした。
局部腐食の評価は、以下のようにして評価した。
腐食試験後のチタン合金板の試験片(10mm×40mm)の表面を走査型電子顕微鏡で観察して、β粒の脱落の痕跡の有無を調べた。そして、β粒の全数に対する、脱落したβ粒の個数の割合を求めた。脱落したβ粒の個数が全体の10%超であった場合に、局部腐食が「有」と評価した。局部腐食が「無」を合格とした。
これらの結果を表3にまとめた。
図1に本実施例(No.1~30)におけるβ粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比と、腐食速度の関係を示す。
図1からも明らかなように、No.1~20は、本発明に規定するチタン合金の化学成分、仕上げ焼鈍後の平均冷却速度、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比の全てを満足するため、優れた腐食速度を示し、局部腐食の発生も認められなかった。特に、No.1~20の腐食速度はいずれも0.10(mm/year)以下であり、合格基準を大幅に下回った。
一方、No.21~23は、チタン合金の化学成分は本発明に規定する成分範囲を満足するものの、仕上げ焼鈍後の冷却速度が規定範囲外であった。そのため、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比が規定範囲外となり、大きな腐食速度を示し、局部腐食が発生してしまい、耐食性に劣った。
No.24~30は、本発明に規定する成分範囲を満足しない。そのため、仕上げ焼鈍後の冷却速度が規定範囲内であっても、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比は規定範囲外となり、大きな腐食速度を示し、局部腐食が発生してしまい、耐食性に劣った。
No.24はFe量が過剰であり、また、No.25はCr量が過剰である。そのため、仕上げ焼鈍後の冷却速度が規定範囲内であっても、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比が上限を超えており、大きな腐食速度を示し、局部腐食が発生してしまい、耐食性に劣った。
No.26は、Ni量が過剰である。そのため、仕上げ焼鈍後の冷却速度が規定範囲内であっても、金属化合物または介在物が析出し、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比が上限を超えており、大きな腐食速度を示し、局部腐食が発生してしまい、耐食性に劣った。
No.27はRu量が過剰であり、また、No.28はPd量が過剰である。そのため、仕上げ焼鈍後の冷却速度が規定範囲内であっても、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比が下限を下回り、大きな腐食速度を示し、局部腐食が発生してしまい、耐食性に劣った。
No.29はRu量が不足した。そのため、仕上げ焼鈍後の冷却速度が規定範囲内であっても、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比が上限を超えており、大きな腐食速度を示し、局部腐食が発生してしまい、耐食性に劣った。
No.30はRh量が過剰である。そのため、仕上げ焼鈍後の冷却速度が規定範囲内であっても、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比が下限を下回り、大きな腐食速度を示し、局部腐食が発生してしまい、耐食性に劣った。
Figure 0007087861000001
Figure 0007087861000002
Figure 0007087861000003

Claims (3)

  1. 質量%で、
    Fe:0.010~0.300%、
    Ru:0.010~0.15%、
    Cr:0~0.10%、
    Ni:0~0.30%、
    Mo:0~0.10%、
    Pt:0~0.10%、
    Pd:0~0.20%、
    Ir:0~0.10%、
    Os:0~0.10%、
    Rh:0~0.10%を含有し、残部がTiおよび不純物からなり、
    β相結晶粒に含まれる元素の成分比を表す下記式(1)のA値が、0.550~2.000の範囲であることを特徴とするチタン合金。
    A=(〔Fe〕+〔Cr〕+〔Ni〕+〔Mo〕)/(〔Pt〕+〔Pd〕+〔Ru〕+〔Ir〕+〔Os〕+〔Rh〕)・・・(1)
    ここで、式(1)内の〔元素記号〕の表示は、β相結晶粒中の元素濃度(質量%)を示す。
  2. さらに質量%で、La、Ce及びNdのうちの1種または2種以上を合計で0.001~0.10%含有することを特徴とする請求項1に記載のチタン合金。
  3. 塑性加工されたチタン合金素材を、仕上げ焼鈍温度:550~780℃、仕上げ焼鈍時間:1分~70時間で焼鈍する第1の工程と、
    前記仕上げ焼鈍温度から400℃に到達するまでの平均冷却速度が0.20℃/s以下となる条件で冷却する第2の工程と、
    を順次行うことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のチタン合金の製造方法。
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