JP2020041190A - チタン合金及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の要旨は以下の通りである。
Fe:0.010〜0.300%、
Ru:0.010〜0.15%、
Cr:0〜0.10%、
Ni:0〜0.30%、
Mo:0〜0.10%、
Pt:0〜0.10%、
Pd:0〜0.20%、
Ir:0〜0.10%、
Os:0〜0.10%、
Rh:0〜0.10%を含有し、残部がTiおよび不純物からなり、
β相結晶粒に含まれる元素の成分比を表す下記式(1)のA値が、0.550〜2.000の範囲であることを特徴とするチタン合金。
A=(〔Fe〕+〔Cr〕+〔Ni〕+〔Mo〕)/(〔Pt〕+〔Pd〕+〔Ru〕+〔Ir〕+〔Os〕+〔Rh〕)・・・(1)
ここで、式(1)内の〔元素記号〕の表示は、β相結晶粒中の元素濃度(質量%)を示す。
[2]さらに質量%で、La、Ce及びNdのうちの1種または2種以上を合計で0.001〜0.10%含有することを特徴とする[1]に記載のチタン合金。
前記仕上げ焼鈍温度から400℃に到達するまでの平均冷却速度が0.20℃/s以下となる条件で冷却する第2の工程と、
を順次行うことを特徴とする、[1]または[2]に記載のチタン合金の製造方法。
A=(〔Fe〕+〔Cr〕+〔Ni〕+〔Mo〕)/(〔Pt〕+〔Pd〕+〔Ru〕+〔Ir〕+〔Os〕+〔Rh〕)・・・(1)
ここで、式(1)内の〔元素記号〕の表示は、β相結晶粒中の元素濃度(質量%)を示す。
Ruは、水素過電圧が小さく、チタンの不動態化を促進して耐食性向上に有効に作用する。この効果を発揮させるため、含有量を0.010%以上とする。好ましくは0.02%以上である。しかし、Ruは強力なβ安定化元素であるため、過剰に含有させるとβ相中に濃化してβ相率の不要な増加をもたらす。また、Ruを過剰に含有させると、後述するβ相結晶粒における(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を適正なバランスから逸脱させる一因となる。そのため、Ruの上限は0.15%以下とする。好ましくは0.13%以下である。
Feは、β安定化元素であり、Ruと同様にβ相中に濃化して分布する。Fe原子そのものの水素過電圧は必ずしも小さくなく単独添加による耐食性向上効果は認められないが、0.010%以上のFeがβ相結晶粒中にRuと共に存在することで耐食性向上効果をもたらす。そのため、合金中のFe含有量を0.010%以上とし、好ましくは0.020%以上とする。一方、Feを過剰に含有させると、後述するβ相結晶粒における(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を適正なバランスから逸脱させる一因となる。そのため、Feの上限範囲として0.300%以下とする。好ましくは0.250%以下である。
Crは、チタン合金への微量含有では耐食性に悪影響をもたらさないが、多量の含有は局部アノードのpHを低下させてしまい局部腐食の進展を促進する悪影響をもたらしてしまう。そのため、上限を0.10%以下とする。下限は0%である。
Niは、Tiに含有されて金属化合物を形成した場合に、耐食性を向上させる元素である。しかし、金属間化合物の形成は局部腐食発生の一因となる場合があり、本発明への積極的な含有は必要ない。そのため、上限を0.30%以下とする。下限は0%である。
Moは、溶出してイオン化した際に腐食抑制剤として機能することで耐食性を向上させる元素である。しかし、わずかな局部腐食を抑制する本発明において、腐食抑制剤として機能するほどMoがイオン化することはなく積極的に含有させる必要はない。そのため、上限を0.10%以下とする。下限は0%である。
Ptは、水素過電圧が小さく、その添加によりチタンの不動態化を促進するため耐食性向上に有効な元素である。本発明においては、Ptを積極的に含有させなくても他の白金族元素の添加によって十分な耐食性を発揮できる。高価な希少元素であるPtの過剰な含有は素材コストを損なう一因となる。そのため、上限を0.10%以下とする。下限は0%である。
Pdは、水素過電圧が小さく、その含有によりチタンの不動態化を促進するため、少量の含有により耐食性向上に有効な元素である。しかし、Pdは希少元素であり高価であるため、過剰な添加は素材コストを損なう一因となる。そのため、上限を0.20%以下とする。下限は0%であってもよく、0.01%以上であってもよい。
Irは、水素過電圧が小さく、その含有によりチタンの不動態化を促進するため耐食性向上に有効な元素である。本発明においては、Irを積極的に含有させなくても他の白金族元素の含有によって十分な耐食性を発揮できる。高価な希少元素であるIrの過剰な添加は素材コストを損なう一因となり得ること、Irの過剰な含有は不要な金属間化合物の析出を促進してしまうことから、上限を0.10%以下とする。下限は0%である。
Rh:0〜0.10%
OsやRhは、水素過電圧が小さく、その含有によりチタンの不動態化を促進するため耐食性向上に有効な元素である。本発明においては、OsやRhを積極的に含有させなくても他の白金族元素の含有によって十分な耐食性を発揮できる。高価な希少元素であるOsやRhの過剰な含有は素材コストを損なう一因となり得ること、OsやRhの過剰な含有は規定範囲以上にβ相析出を促進してしまうことから、それぞれの上限を0.10%以下とする。下限はそれぞれ0%である。
RuやPd等の白金属元素を含有せずにLa、Ce、Ndをそれぞれ含有させるだけでは耐食性を向上させる効果は乏しいが、RuやPd等の水素過電圧の小さい元素と、合計0.001%以上のLa、Ce、Ndを含有させることで、チタン酸化物から構成される不動態皮膜をより溶解し難くし、耐食性を一層向上させる効果がある。ただし、La、Ce、Ndのいずれの元素も酸化物を形成しやすいため、過剰に含有すると不要な介在物の形成をもたらし、望ましくない。そのため、La、Ce、Ndの合計量上限を0.10%以下とする。La、Ce、Ndは単独で含有させてもよく、2種以上を含有させてもよい。
A=(〔Fe〕+〔Cr〕+〔Ni〕+〔Mo〕)/(〔Pt〕+〔Pd〕+〔Ru〕+〔Ir〕+〔Os〕+〔Rh〕)・・・(1)
ここで、式(1)内の〔元素記号〕の表示は、β相結晶粒中の元素濃度(質量%)を示す。また、式(1)中の〔元素記号〕のうち、β相結晶粒中に含有しない元素については当該元素の項に0を代入する。
チタン合金の表面を数μm程度研削し、更に、コロイダルシルカ含有液を研磨液として機械研磨を行う。ついで、研磨後の表面に対して、EPMAによる元素分析を行う。具体的には、表面を3000倍に拡大した拡大画像においてβ粒を特定する。特定したβ粒について、粒径の大きいものから順に10個を選択し、これら10個のβ粒の化学成分をEPMA法により分析する。EPMA法による測定対象元素は、Fe、Ru、Cr、Ni、Mo、Pt、Pd、Ir、Os、Rh及びTiとする。そして、β粒中の各測定対象元素の質量%を求める。得られた各元素の含有率を式(1)に導入することで、測定対象の10個のβ粒についてそれぞれ、(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を求める。そして、これらを平均して、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比とする。
上記のように、本実施形態で対象とするチタン合金は、熱間圧延板や冷間圧延板として適用される。そしてこれら圧延板には、仕上げ焼鈍が施されて製品とされるが、本実施形態では、この仕上げ焼鈍の条件を制御することが重要となる。
以下、チタン合金の好適な製造方法を説明する。
以下、各工程について説明する。
まず、チタン合金板の表面を数μm程度研削し、更に、コロイダルシルカ含有液を研磨液として機械研磨を行った。ついで、研磨後の表面に対して、EPMAによる元素分析を行った。具体的には、表面を3000倍に拡大した拡大画像においてβ粒を特定した。特定したβ粒について、粒径の大きいものから順に10個を選択し、これら10個のβ粒の化学成分をEPMA法により分析した。EPMA法による測定対象元素は、Fe、Ru、Cr、Ni、Mo、Pt、Pd、Ir、Os、Rh及びTiとした。そして、β粒中の各測定対象元素の質量%を求めた。得られた各元素の含有率を下記式に導入することで、測定対象の10個のβ粒についてそれぞれ、(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比を求めた。そして、これらを平均して、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比とした。
得られたチタン合金板から、試験片(10mm×40mm)を切り出し、当該試験片を90℃、8mass%の塩酸水溶液に24h浸漬し、浸漬前後の質量変化(腐食減量)から算出した腐食速度(mm/year)を求めた。腐食減量(質量)から腐食減肉量(厚み)を計算で求め、この24時間の腐食減肉量を1年あたりの腐食速度に換算した。すなわち、腐食速度の単位は、1年あたりの試験片の厚みの減少量に換算したものである。腐食速度が0.20(mm/year)以下である場合を合格とした。
腐食試験後のチタン合金板の試験片(10mm×40mm)の表面を走査型電子顕微鏡で観察して、β粒の脱落の痕跡の有無を調べた。そして、β粒の全数に対する、脱落したβ粒の個数の割合を求めた。脱落したβ粒の個数が全体の10%超であった場合に、局部腐食が「有」と評価した。局部腐食が「無」を合格とした。
これらの結果を表3にまとめた。
図1からも明らかなように、No.1〜20は、本発明に規定するチタン合金の化学成分、仕上げ焼鈍後の平均冷却速度、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比の全てを満足するため、優れた腐食速度を示し、局部腐食の発生も認められなかった。特に、No.1〜20の腐食速度はいずれも0.10(mm/year)以下であり、合格基準を大幅に下回った。
No.26は、Ni量が過剰である。そのため、仕上げ焼鈍後の冷却速度が規定範囲内であっても、金属化合物または介在物が析出し、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比が上限を超えており、大きな腐食速度を示し、局部腐食が発生してしまい、耐食性に劣った。
No.27はRu量が過剰であり、また、No.28はPd量が過剰である。そのため、仕上げ焼鈍後の冷却速度が規定範囲内であっても、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比が下限を下回り、大きな腐食速度を示し、局部腐食が発生してしまい、耐食性に劣った。
No.29はRu量が不足した。そのため、仕上げ焼鈍後の冷却速度が規定範囲内であっても、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比が上限を超えており、大きな腐食速度を示し、局部腐食が発生してしまい、耐食性に劣った。
No.30はRh量が過剰である。そのため、仕上げ焼鈍後の冷却速度が規定範囲内であっても、β粒中の平均(Fe+Cr+Ni+Mo)/(Pt+Pd+Ru+Ir+Os+Rh)比が下限を下回り、大きな腐食速度を示し、局部腐食が発生してしまい、耐食性に劣った。
Claims (3)
- 質量%で、
Fe:0.010〜0.300%、
Ru:0.010〜0.15%、
Cr:0〜0.10%、
Ni:0〜0.30%、
Mo:0〜0.10%、
Pt:0〜0.10%、
Pd:0〜0.20%、
Ir:0〜0.10%、
Os:0〜0.10%、
Rh:0〜0.10%を含有し、残部がTiおよび不純物からなり、
β相結晶粒に含まれる元素の成分比を表す下記式(1)のA値が、0.550〜2.000の範囲であることを特徴とするチタン合金。
A=(〔Fe〕+〔Cr〕+〔Ni〕+〔Mo〕)/(〔Pt〕+〔Pd〕+〔Ru〕+〔Ir〕+〔Os〕+〔Rh〕)・・・(1)
ここで、式(1)内の〔元素記号〕の表示は、β相結晶粒中の元素濃度(質量%)を示す。 - さらに質量%で、La、Ce及びNdのうちの1種または2種以上を合計で0.001〜0.10%含有することを特徴とする請求項1に記載のチタン合金。
- 塑性加工されたチタン合金素材を、仕上げ焼鈍温度:550〜780℃、仕上げ焼鈍時間:1分〜70時間で焼鈍する第1の工程と、
前記仕上げ焼鈍温度から400℃に到達するまでの平均冷却速度が0.20℃/s以下となる条件で冷却する第2の工程と、
を順次行うことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のチタン合金の製造方法。
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