JP7086511B2 - 状態判定装置、及びエレベータ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体モジュールの状態を判定する状態判定装置、及びエレベータ装置に関する。
エレベータ装置、電動車両等では、半導体モジュールを用いて電力を変換し、変換後の電力を回転電機に供給する。この半導体モジュールに異常が生じた場合、回転電機を適切に制御できなくなる。そのため、半導体モジュールに発生する異常には、より早期に対応することが望まれている。
半導体モジュールは、半導体素子を含む複数の部材から成る。電気的に接続させる部材間の接合には、通常、はんだが用いられる。はんだは、例えば半導体素子と金属板との間の接合、及び金属板と基板との間の接合に用いられる。
半導体モジュールに異常が生じる主な原因の一つとして、長時間の熱疲労により、はんだの状態が劣化することが挙げられる。はんだの状態の劣化に伴い、半導体モジュールの放熱性能が低下し、半導体モジュールはより高温となる。そのため、放熱性能の低下は、半導体体モジュールを破壊させる原因となる。
このようなことから、従来、半導体モジュールの温度を計測し、その計測結果を用いて、半導体モジュールの状態の判定が行われている。判定に用いる温度の計測結果としては、ピーク温度を用いるもの、及び温度上昇率を用いるものがある。
ピーク温度を用いた判定では、例えば2つ以上のパルスを印加した場合の半導体モジュールのピーク温度を特定する。その後、特定したピーク温度と、比較対象とするピーク温度との間の差が閾値を超えているか否かにより、はんだの状態が劣化しているか否かを判定する(例えば、特許文献1参照)。比較対象とするピーク温度は、例えばはんだの状態が劣化していない半導体モジュールで特定されるピーク温度である。
温度上昇率を用いた判定では、定めた時間での温度上昇率の上限、及び温度上昇率の下限をそれぞれ閾値として設定する。それらの閾値は、例えば半導体モジュールに発生する損失別の参照が可能なように、曲線として設定する。それにより、温度上昇率を用いた判定では、半導体モジュールに損失が発生した後の温度変化から、温度上昇率を算出し、算出した温度上昇率をその損失に対応する閾値と比較することにより、はんだの状態が劣化しているか否かを判定する(例えば、特許文献2参照)。
特開2016-20838号公報 特開2003-134795号公報
半導体モジュールの駆動時の温度変化は、はんだの状態によって変化する。しかし、はんだの状態による温度変化は、感度が比較的に高くないのが実状である。半導体モジュールに発生する異常の程度によっては、上記のように、回転電機の駆動が不可能となる。そのため、半導体モジュールの状態はより高精度に判定することが重要である。判定精度の向上により、半導体モジュールに発生する異常に対し、より早期に対応できるようになる。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、半導体モジュールの状態をより高精度に判定可能な状態判定装置、及びエレベータ装置を提供することにある。
本発明に係る状態判定装置は、半導体モジュールの温度を示す温度情報を取得する情報取得部と、温度の変化の監視を開始する開始タイミングからの温度の変化の割合である時間微分値の基準となる基準時間微分値を示す基準時間微分値情報を記憶した記憶部と、情報取得部により取得される温度情報を用いて、開始タイミングからの時間微分値を算出すると共に、基準時間微分値情報を参照し、基準時間微分値と算出した時間微分値との間の差分を算出する算出部と、差分の変化を基に、判定タイミングを決定し、判定タイミングで算出された差分を用いて、半導体モジュールの状態を判定する判定部と、を備える。
本発明に係るエレベータ装置は、上記状態判定装置を備える。
本発明によれば、半導体モジュールの状態をより高精度に判定することができる。
本発明の実施の形態1に係る状態判定装置を適用したエレベータ装置の概略構成例を示す図である。 半導体モジュールの例を示す側面図である。 本発明の実施の形態1に係る状態判定装置である状態判定部の機能構成例を示す図である。 半導体モジュールのはんだの状態による駆動時の時間微分値の時間変化例を示す図である。 半導体モジュールのはんだの状態の劣化量による増加比率の変化の例を説明する図である。 状態判定処理の例を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態1に係る状態判定装置を実現可能なハードウェア構成例を示す図である。
以下、本発明に係る状態判定装置、及びエレベータ装置の実施の形態につき図面を用いて説明する。なお、以下に示す変形例を含む実施の形態は一例であり、これらの実施の形態に本発明は限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る状態判定装置を適用したエレベータ装置の概略構成例を示す図である。このエレベータ装置は、図1に示すように、主ロープ25の一端にかご26、他端にカウンターウェイト27が結ばれたロープ式エレベータ装置である。主ロープ25は、綱車28に巻き掛けられている。モータ24は、綱車28に動力を伝達して、主ロープ25を駆動するための動力源である。
モータ24は、インバータ21により交流に変換された電力が供給されて駆動される回転電機である。インバータ21は、スイッチング素子として半導体モジュール1を複数、備えた電力変換回路である。インバータ21に備えられる各半導体モジュール1は、タイミング制御部29によってオン/オフ駆動される。
コンバータ22は、交流電力を直流電力に変換する。インバータ21の両端は、コンバータ22の両端に接続されている。それにより、インバータ21の両端間には、コンバータ22が生成した直流電圧が印加される。インバータ21の両端間に接続されたコンデンサ23は、コンバータ22から供給される直流電力を平滑化する。
電源20は、交流電力を供給する。この交流電力は、コンバータ22、及びエレベータ制御装置30に供給される。エレベータ制御装置30は、例えばエレベータ装置全体を制御する情報処理装置である。
エレベータ制御装置30は、図1に示すように、機能構成として、運転制御部30a、及び状態判定部30bを備える。運転制御部30aは、タイミング制御部29を介したインバータ21の制御により、かご26を昇降させるエレベータ装置の運転を実現させる。状態判定部30bは、インバータ21を構成する一つ以上の半導体モジュール1に異常が発生しているか否かを判定するための状態判定を行う。本実施の形態による状態判定装置は、この状態判定部30bが相当する。この状態判定部30bを機能的構成としてエレベータ制御装置30に搭載させることにより、本実施の形態1に係る状態判定装置は、エレベータ装置に適用されている。それにより、エレベータ装置は、本実施の形態1に係るエレベータ装置となっている。
なお、エレベータ装置は、図1に示すようなロープ式エレベータ装置に限定されない。言い換えれば、エレベータ装置は、半導体モジュール1を用いてモータ24等の回転電機を駆動する方式であれば良い。
図2は、半導体モジュールの例を示す側面図である。この半導体モジュール1は、図2に示すように、図2に向かって下方から、ヒートシンク7、金属基板2、絶縁基板5、及び半導体素子6を備える。絶縁基板5の両面には、それぞれ配線である電極パターン4A、4Bが形成されている。はんだ3Aは、金属基板2と電極パターン4Aとの間に層として配置され、金属基板2と電極パターン4Aとを電気的に接続させている。はんだ3Bは、電極パターン4Bと半導体素子6との間に層として配置され、電極パターン4Bと半導体素子6とを電気的に接続させている。
半導体素子6は、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)或いはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。電極パターン4Bには、半導体素子6が備える端子にそれぞれ接続される電極パターンが含まれている。
半導体素子6は、電流が流れることにより発熱する。半導体素子6の発熱による熱量の大部分は、はんだ3B→電極パターン4B→絶縁基板5→電極パターン4A→はんだ3A→金属基板2→ヒートシンク7の経路でヒートシンク7に伝達されて放熱される。それにより、はんだ3A、3Bは、半導体素子6からのヒートシンク7への熱量の伝達に大きく関係する。放熱を効率的に行えるように、ヒートシンク7には、金属基板2の反対側に、複数の放熱フィンが設けられている。
なお、半導体モジュール1は、図2に示すような構成に限定されない。例えばヒートシンク7は、複数、存在していても良い。半導体素子6も複数、存在していても良い。
図3は、本発明の実施の形態1に係る状態判定装置である状態判定部の機能構成例を示す図である。この状態判定部30bは、図3に示すように、機能構成として、測定結果取得部11、算出部12、記憶部13、判定部14、通知部15、及び報知部16を備える。
温度センサ40は、半導体モジュール1の温度、より具体的には、例えば半導体素子6の表面の温度を測定し、測定した温度を示す温度情報を出力する。状態判定部30bは、温度センサ40からの温度情報を処理し、半導体モジュール1の状態判定、例えば半導体モジュール1に異常が発生しているか否かの判定を行う。温度センサ40が出力する温度情報は、測定結果取得部11によって取得される。ここでは、温度情報は、温度を示すデジタルデータと想定する。
図3では、温度センサ40は一つのみ示している。温度センサ40は、インバータ21を構成する半導体モジュール1毎に設けても良く、各半導体モジュール1に複数、設けても良い。しかし、状態判定の仕方は各半導体モジュール1で同じである。そのため、ここでは、説明上、便宜的に、一つの温度センサ40のみを想定している。
温度センサ40は、例えばサーミスタ、或いは熱電対を用いたセンサである。温度センサ40は、設定されたサンプリング周期で温度情報を出力する。測定結果取得部11は、温度情報を取得、つまりエレベータ制御装置30が温度情報を受信すると、その温度情報を算出部12に出力すると共に、記憶部13に保存する。測定結果取得部11は、本実施の形態における情報取得部に相当する。
温度センサ40によって測定される温度は、半導体モジュール1の表面温度である。このことから、測定結果取得部11は、温度センサ40から出力された温度情報が示す温度から、半導体モジュール1の内部温度、例えば半導体素子6の内部温度を推定し、その推定結果を出力するものであっても良い。半導体素子6の内部温度としては、中央温度、平均温度、及び最高温度が考えられる。そのため、測定結果取得部11に、複種類の内部温度を推定させるようにしても良い。ここでは、温度センサ40が出力する温度情報が示す温度は、半導体素子6の表面温度と想定する。
算出部12は、測定結果取得部11からのデジタルデータが示す温度を用いて、その温度が変化する開始タイミングからの時間微分値を算出する。算出される時間微分値は、開始タイミングからの温度の変化の割合であり、開始タイミングからの温度の変化量を、開始タイミングからの経過時間で割って得られる。また、算出部12は、算出した時間微分値と、基準となる時間微分値である基準時間微分値との間の差分の絶対値を算出し、算出した絶対値を用いて、増加比率を算出する。より具体的には、増加比率は、絶対値を時間微分値、或いは基準時間微分値で割ることにより算出される値である。これら算出された時間微分値、及び増加比率は、共に記憶部13に記憶される。基準時間微分値については後述する。
図4は、半導体モジュールのはんだの状態による駆動時の時間微分値の時間変化例を示す図である。図4では、横軸に時間、縦軸に時間微分値をそれぞれとっている。ここで図4を参照し、時間微分値、及び増加比率を算出する理由について具体的に説明する。
図4において、時間微分値の時間変化の例を示す半導体モジュール1は、はんだ3A、3Bの状態が劣化していない半導体モジュール1、はんだ3A、3Bの状態の劣化量が比較的に小さい半導体モジュール1、及びはんだ3A、3Bの状態の劣化量が比較的に大きい半導体モジュール1の3つである。何れの半導体モジュール1も同一環境、及び同一条件で駆動している。はんだ3A、3Bの状態が劣化していない半導体モジュール1での時間微分値は、上記基準時間微分値に相当する。なお、はんだ3A、3Bの状態の劣化とは、電気的な抵抗を大きくさせるものである。接合部の剥離、き裂等は、はんだ3A、3Bの状態の劣化に相当する。
図4に示すように、はんだ3A、3Bの状態に係わらず、駆動時、半導体モジュール1の時間微分値は線形的に変化しない。時間微分値の傾き、言い換えれば単位時間当たりの温度の変化量は、駆動開始時には小さく、その後、大きくなり、温度が最高温度に近づくと、再度、小さくなる。これは、半導体モジュール1自体のヒートシンクとしての働き、及び温度が高くなることに伴う放熱効率の向上、等によるものである。
半導体モジュール1の図4に示すような時間微分値の時間変化から、最高温度は状態判定を行ううえで望ましくない面がある。なぜなら、はんだ3A、3Bの状態に係わらず、半導体モジュール1の最高温度には殆ど差が無いからである。時間微分値も想定する期間によっては、半導体モジュール1間の差が殆ど無いか、或いは非常に小さい。具体的には、半導体モジュール1の駆動開始直後、最高温度付近、及び最高温度時では、半導体モジュール1間で時間微分値は同じか、或いは非常に狭い範囲内の値となる。そのため、本実施の形態では、結果として、半導体モジュール1の状態判定のために温度変化を監視する監視期間を動的に決定し、決定した監視期間での増加比率を求めるようにしている。それにより、本実施の形態では、その監視期間で算出される増加比率から、半導体モジュール1の状態を判定するようにしている。
半導体モジュール1では、ヒートシンク7と半導体素子6との間の位置関係、及び電気的な抵抗の変化から、図4に示すように、はんだ3A、3Bの状態が劣化するほど、時間微分値の変化はより小さくなる。しかし、半導体素子6に流れる電流の量が何らかの異常によって大きくなったような場合、時間微分値の変化はより大きくなる。従って、時間微分値と基準時間微分値との間の差分は、正負の何れかの値となる。本実施の形態では、はんだ3A、3Bの状態の劣化の程度を状態判定の対象と想定している。このこともあり、本実施の形態では、増加比率の算出に差分の絶対値を用いている。
図4中に示す縦軸と平行な破線は、監視期間の終了タイミング、つまり半導体モジュール1の状態判定を行う判定タイミングを示している。監視期間の開始タイミングは、半導体モジュール1の駆動開始タイミング、或いはその直後のタイミングであり、図4に向かって左側の縦軸は、そのタイミングを示している。終了タイミングでの基準時間微分値と時間微分値との間の差分は、図4中に示す下向きの2つの矢印により表している。
本実施の形態では、監視期間を、増加比率、言い換えれば基準時間微分値と時間微分値との間の差分の絶対値が最大となるまでの期間としている。つまり、監視期間の終了タイミングは、増加比率が最大となるタイミングとしている。そのために、算出部12には、時間微分値の他に、増加比率を算出させている。
このように監視期間を動的に決定することにより、増幅比率、及びその算出に用いる絶対値は、環境、及び駆動条件に係わらず、最大化させることができる。言い換えれば、半導体モジュール1の状態をより高精度に示す増加比率を状態判定に用いることができる。そのため、はんだ3A、3Bの状態の劣化量を含め、半導体モジュール1の状態判定もより高精度に行えるようになる。
算出される増加比率は、半導体モジュール1が置かれている環境、及び駆動条件によって変化するだけでなく、半導体モジュール1の温度によっても変化する。例えば駆動によって発熱した半導体モジュール1の温度が下がりきっていない状況で状態判定のための駆動を開始した場合、環境、及び駆動条件が同じであっても、算出される時間微分値はより小さくなり、算出される増加比率はより大きくなる。従って、判定精度はより低くなる。このことから、本実施の形態では、温度センサ40によって測定された半導体モジュール1の温度が一定、つまり温度の変化が許容範囲内に収まっている状況から、温度の上昇傾向が確認できたタイミングを監視期間の開始タイミングとしている。温度の上昇傾向の確認は、例えばそれまでの温度、或いは温度の平均値との差の絶対値が閾値以上か否かにより行えば良い。
図5は、半導体モジュールのはんだの状態の劣化量による増加比率の変化の例を説明する図である。図5では、横軸にはんだ3A、3Bとして用いられるはんだの状態の劣化量、縦軸に増加比率をそれぞれとっている。横軸と平行な点線は、半導体モジュール1の異常判定用に設定された閾値を示している。はんだ3A、3Bのうちの一方のみ、状態が劣化している場合も考えられることから、以降、はんだには符号を付さないこととする。
図4、及び図5に示すように、増加比率は、はんだの状態の劣化量によって変化する。はんだの状態の劣化量が小さくなるほど、時間微分値と基準時間微分値との間の差分の絶対値は小さくなって、増加比率も小さくなる。このような関係から、図5では、横軸にはんだの状態の劣化量、つまりその状態の劣化の程度をとっている。閾値としては、例えば劣化量が半導体モジュール1に発生した異常と位置付けられるものとすることが考えられる。
上記のように、増加比率は、環境、及び駆動条件によって変化する。環境とは、主に半導体モジュール1の周辺温度である。増加比率に着目した状態判定では、基本的に、周辺温度=半導体モジュール1の温度、と想定すれば良い。このことから、図5に示すような閾値は、環境、及び駆動条件の組み合わせ毎に用意する必要がある。そのため、記憶部13には、環境、及び駆動条件の組み合わせ毎の閾値である閾値群13aが記憶されている。なお、駆動条件を一定として、環境毎の閾値を閾値群13aとして記憶部13に記憶させても良い。
増加比率の算出には、基準時間微分値が必要である。そのため、記憶部13には、環境、及び駆動条件の組み合わせ毎に、基準時間微分値の開始タイミングからの変化を示す基準時間微分値情報が基準時間微分値情報群13bとして記憶されている。基準時間微分値情報群13bを構成する各基準時間微分値情報は、例えば開始タイミングからの経過時間別に基準時間微分値を示すテーブル、或いはその経過時間を変数とする関数を示す関数情報である。基準時間微分値情報群13bを構成する各基準時間微分値情報は、記憶部13に予め記憶させても良いが、温度センサ40が測定した温度を用いて生成し記憶部13に保存させるようにしても良い。基準時間微分値情報の生成は、状態判定部30bに行わせても良いが、別の装置に行わせても良い。しかし、環境が常に一定と見なせないような場合、半導体モジュール1を駆動する際の環境を同じにするのが困難であると思われることから、基準時間微分値情報群13bは、記憶部13に予め記憶させておくのが望ましい。
記憶部13には、算出部12が設定期間毎に算出する時間微分値、及び増加比率が記憶される。判定部14は、記憶部13に記憶された増加比率を参照して、監視期間を特定し、特定した監視期間での増加比率を抽出すると共に、閾値群13aのうちで対応する閾値を読み出す。読み出す閾値の特定は、例えば温度センサ40によって測定された温度、及び駆動条件を用いて行えば良い。半導体モジュール1を駆動、つまりインバータ21を制御するのは運転制御部30aであることから、駆動条件は、運転制御部30aから特定することができる。それにより、判定部14は、抽出した増加比率を読み出した閾値と比較することにより、半導体モジュール1の状態判定、例えばはんだの状態の許容範囲を超えた劣化の有無の判定を行う。この判定結果は、記憶部13に記憶されると共に、通知部15に出力される。
通知部15は、判定結果を運転制御部30aに出力する。また、判定結果が半導体モジュール1の異常の発生を示していた場合、報知部16を制御し、半導体モジュール1に異常が発生した旨を作業員に報知するための処理を行わせる。この報知は、例えばエレベータ制御装置30に接続された表示装置上への情報出力、或いは設定された外部装置へのメッセージ送信により行わせることが考えられる。そのような報知により、作業員は、半導体モジュール1に発生した異常に対し、より迅速に対応することができる。また、異常と見なせる半導体モジュール1が発生している状況でのエレベータ装置の運転を自動的に停止させることもできる。
なお、本実施の形態では、半導体モジュール1の異常判定用の閾値を一つのみとしているが、2つ以上の閾値を設定するようにしても良い。2つの閾値を設定する場合、例えば一方は警告用、他方は運転停止用としても良い。設定する閾値の数、各閾値で想定する対応等は特に限定されない。
図6は、状態判定処理の例を示すフローチャートである。この状態判定処理は、各半導体モジュール1の状態判定を行うためにエレベータ制御装置30が実行する処理である。状態判定処理を実行することにより、エレベータ制御装置30上に状態判定部30bが実現される。次に図6を参照し、状態判定処理について詳細に説明する。
図6では、便宜的に、一つの半導体モジュール1の状態判定分のフローチャートのみを示している。それにより、ここでは、一つの半導体モジュール1の状態判定分にのみ着目し、説明を行う。
エレベータ制御装置30として、図7に示すように、プロセッサ51、及びメモリ52を備えた情報処理装置100が用いられる場合、状態判定処理は、メモリ52に格納された状態判定用のプログラム52aをプロセッサ51が実行することによって実現される。このことから、ここでは、状態判定処理を実行する主体として、便宜的にプロセッサ51を想定する。
半導体モジュール1に用いられたはんだの状態の劣化は徐々に進行する。そのため、半導体モジュール1の状態判定を短い時間間隔で行う必要性は低い。また、増加比率には、半導体モジュール1の駆動による発熱が影響する。このようなことから、状態判定処理は、例えば前回、実行してから所定期間が経過し、且つ一定時間、モータ24を駆動していないような状況時に実行させるのが望ましい。そのために、状態判定処理は、例えば運転制御部30aの指示により、実行させることが考えられる。
先ず、ステップS11では、プロセッサ51は、温度センサ40から測定結果として温度情報が取得されたか否か判定する。その温度情報は、例えば不図示のインタフェースコントローラを介してエレベータ制御装置30に受信される。このことから、インタフェースコントローラから温度情報の受信がプロセッサ51に割り込み等により通知された場合、ステップS11の判定はYESとなってステップS12に移行する。温度センサ40からの温度情報の受信がインタフェースコントローラから通知されていない場合、ステップS11の判定はNOとなり、再度ステップS11の判定処理を実行する。それにより、プロセッサ51は、温度情報が温度センサ40から受信されるのを待つ。
ステップS12では、プロセッサ51は、温度情報が示す温度が一定か否か判定する。温度センサ40によって測定される温度が許容範囲内で一定であった場合、ステップS12の判定はYESとなって上記ステップS11に戻る。一方、温度センサ40によって測定される温度が許容範囲外に変化する温度上昇が確認できたような場合、ステップS12の判定はNOとなってステップS13に移行する。ステップS13への移行は、監視期間の開始タイミングが決定されたことに相当する。また、その移行時に測定された温度により、閾値群13aのうちで参照すべき閾値が決定される。閾値は、各閾値で想定する温度と測定された温度との間の関係によっては、内挿計算用に2つ決定される。これは、基準時間微分値情報群13bのうちで参照すべき基準時間微分値情報の決定でも同様である。
ステップS13では、プロセッサ51は、情報としての現在時刻、及び測定結果としての温度情報をメモリ52に保存する。次のステップS14では、プロセッサ51は、温度センサ40から測定結果として温度情報が取得されたか否か判定する。インタフェースコントローラから温度情報の受信がプロセッサ51に通知された場合、ステップS14の判定はYESとなってステップS15に移行する。その温度情報の受信がインタフェースコントローラから通知されていない場合、ステップS14の判定はNOとなり、再度ステップS14の判定処理を実行する。それにより、プロセッサ51は、温度情報が温度センサ40から受信されるのを待つ。
ステップS15では、プロセッサ51は、ステップS13でメモリ52に保存した温度情報、及び、今回、受信された温度情報を用いて時間微分値を算出すると共に、増加比率を算出し、微分値、及び増加比率をメモリ52に保存する。時間微分値は、それら温度情報により特定される温度の変化量を、ステップS13で保存した現在時刻から経過した経過時間で割ることで算出される。増加比率は、算出した時間微分値と基準時間微分値との間の差分の絶対値を、例えば基準時間微分値で割ることで算出される。基準時間微分値で割るのは、はんだの状態の劣化を想定した場合、図4に示すように、時間微分値で割るより増加比率が大きくなるからである。本実施の形態では、それらに加え、今回、受信された温度情報、及び直前に受信された温度情報を用いて、それらが示す温度の間の差分(=今回の測定された温度-前回に測定された温度)を算出し、メモリ52に保存している。そのために、受信した温度情報は、現在時刻と共にメモリ52に保存される。この差分は、増加比率の算出に用いる差分と区別するために、以降「差分値」と表記する。
ステップS15の次に移行するステップS16では、プロセッサ51は、算出した差分値がそれまでの最大値か否か判定する。算出した差分値がそれまでの最大値であった場合、ステップS16の判定はYESとなってステップS17に移行する。算出した微分値がそれまでの最大値でない場合、ステップS16の判定はNOとなってステップS18に移行する。
ステップS17では、プロセッサ51は、最大値を算出した差分値に変更する。この変更は、例えば最大値の差分値を代入する変数に、今回、算出した差分値を代入する操作に相当する。そのような操作を行った後、上記ステップS14に戻る。
時間微分値が図4に示すように変化する場合、監視期間の前半部分では時間微分値の変化が比較的に緩やかなことから、増加比率が最大となるのは、差分値が減少傾向になった後となる。その前半部分では、はんだの状態による時間微分値の変化は小さい。これは、ノイズによる影響が比較的に大きいことを意味する。しかし、時間微分値は増大傾向にある。このようなことから、本実施の形態では、差分値を算出し、差分値が減少傾向にあることが確認できたことを条件に、増加比率が最大となるタイミングを特定するようにしている。ステップS16でのNOの判定は、算出される差分値の減少傾向が確認できたことを意味する。そのような条件を設けることにより、本実施の形態では、増加比率が最大となるタイミングをより高精度に特定するようにしている。そのタイミングをより高精度に特定することにより、半導体モジュール1の状態判定の精度もより高く維持させることができる。
ステップS18では、プロセッサ51は、今回、算出した増加比率を前回、算出した増加比率と比較し、増加比率が減少したか否か判定する。今回、算出した増加比率<前回、算出した増加比率、の関係が成立している場合、ステップS18の判定はYESとなってステップS19に移行する。一方、その関係が成立していない場合、ステップS18の判定はNOとなって上記ステップS14に戻る。ステップS19への移行は、監視期間の終了タイミングが決定されたことに相当する。
ステップS19では、プロセッサ51は、直前に算出した増加比率を最大の増加比率として、その増加比率を対応する閾値と比較することにより、半導体モジュール1の状態判定を行う。対応する閾値とは、上記のように、ステップS13への移行時に測定された温度、及び各閾値で想定された温度から抽出される一つの閾値、或いは2つの閾値から内挿計算により算出される閾値である。
次に移行するステップS20では、プロセッサ51は、判定結果を通知するための処理を行う。この処理は、例えば運転制御部30aを実現させるプログラムが参照可能な変数への判定結果に応じた値の代入、及び例えばエレベータ制御装置30に接続された表示装置上へのメッセージ出力を行わせるものであっても良い。そのような処理の終了後、状態判定処理が終了する。
なお、本実施の形態では、増加比率を半導体モジュール1の状態判定に用いているが、増加比率の代わりに、絶対値を用いても良い。絶対値を用いても、半導体モジュール1の状態判定は高精度に行うことができる。
また、本実施の形態では、増加比率の算出に絶対値を用いている。これは、半導体モジュール1に発生する異常の原因として、主にはんだの状態の劣化を想定しているからである。しかし、時間微分値と基準時間微分値との間の差分の符号は、異常の原因により、正負の何れにもなり得る。このことから、増加比率の算出は、差分を用いて行っても良い。その差分自体を半導体モジュール1の状態判定に用いても良い。しかし、差分を用いる場合、閾値は正負でそれぞれ少なくとも一つ用意する必要がある。
監視期間は、上記のように、増加比率、つまり絶対値の変化に着目し、動的に特定される。その監視期間は、環境、及び駆動条件によって変化する。このことから、監視期間は、環境、及び駆動条件により、静的に定めるようにしても良い。
本実施の形態では、半導体モジュール1の温度測定に温度センサ40を用いている。しかし、温度センサ40は、必ずしも必須ではない。これは、例えば、半導体の電気抵抗の温度依存性を利用して、半導体素子6の温度を算出できるからである。その温度依存性を利用する場合、例えば半導体素子6に発熱しない、或いは発熱を無視できる程度の電流を流し、その電流を流した時の半導体素子6の端子間電圧の値から、半導体素子6の温度を算出することが考えられる。
本実施の形態は、状態判定装置である状態判定部30bをエレベータ装置に適用したものである。状態判定装置を適用可能な装置は、エレベータ装置に限定されない。状態判定装置は、半導体モジュール1を駆動する装置に幅広く適用させることができる。その装置は、半導体モジュール1を回転電機の駆動に用いる電動車両等であっても良い。
1 半導体モジュール、2 金属基板、3A、3B はんだ、4A、4B 電極パターン、5 絶縁基板、6 半導体素子、7 ヒートシンク、11 測定結果取得部(情報取得部)、12 算出部、13 記憶部、13a 閾値群、13b 基準時間微分値情報群、14 判定部、15 通知部、16 報知部、21 インバータ、22 コンバータ、24 モータ、25 主ロープ、26 かご、27 カウンターウェイト、28 綱車、29 タイミング制御部、30 エレベータ制御装置、30a 運転制御部、30b 状態判定部(状態判定装置)、40 温度センサ。

Claims (5)

  1. 半導体モジュールの温度を示す温度情報を取得する情報取得部と、
    前記温度の変化の監視を開始する開始タイミングからの前記温度の変化の割合である時間微分値の基準となる基準時間微分値を示す基準時間微分値情報を記憶した記憶部と、
    前記情報取得部により取得される前記温度情報を用いて、前記開始タイミングからの前記時間微分値を算出すると共に、前記基準時間微分値情報を参照し、前記基準時間微分値と算出した前記時間微分値との間の差分を算出する算出部と、
    前記差分の変化を基に、判定タイミングを決定し、前記判定タイミングで算出された前記差分を用いて、前記半導体モジュールの状態を判定する判定部と、
    を備える状態判定装置。
  2. 前記算出部は、前記差分を前記基準時間微分値、及び前記時間微分値のうちの一方で割って得られる増加比率を更に算出し、
    前記判定部は、前記判定タイミングで前記算出部が算出した前記増加比率を基に、前記半導体モジュールの状態を判定する、
    請求項1に記載の状態判定装置。
  3. 前記判定部は、前記差分の絶対値が最大となるタイミングを前記判定タイミングとして決定する、
    請求項1または2に記載の状態判定装置。
  4. 前記判定部による前記半導体モジュールの状態の判定結果を通知する通知部、
    を更に備える請求項1~3の何れか1項に記載の状態判定装置。
  5. 請求項1~4の何れか1項に記載の状態判定装置、
    を備えるエレベータ装置。
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