本発明は、ガスタービンの吸気側に設置され、ガスタービンの燃焼用空気を冷却するための吸気冷却装置に関するものである。本発明の吸気冷却装置は、ガスタービンの吸気ダクトに噴霧ノズルが設けられたものであり、この噴霧ノズルから水を噴霧することによって、水の蒸発潜熱により吸気空気が冷却され、質量流量が高められる。このように吸気空気を冷却することによって、吸気の質量流量を増大させてガスタービンに供給し、燃焼器内で燃焼することにより、ガスタービンの出力を向上させることができる。
水の噴霧によって吸気空気を冷却する場合、できるだけ水を微粒化することが望ましく、これにより水の蒸発時間を短くすることができ、効率的な空気の冷却が実現できる。ガスタービンの吸気空気は、ガスタービン入口での温度をできるだけ一定に保ったり、あるいは細かく制御することが望まれる。これにより、ガスタービンの急激な出力変更を避けることができ、タービン本体への負荷を下げることができる。
本発明者らは、ガスタービンの吸気ダクトに設置する噴霧ノズルとして、これまで衝突式ノズルや旋回式ノズルの使用を検討してきた。これらのノズルを用いれば、比較的小粒径の水滴を噴霧することができる。衝突式ノズルは、ノズル本体の先端部から出た直進棒流を、ノズル本体の先端部の延長線上に設けられた衝突ピンに衝突させて、微粒化するノズルである。衝突式ノズルとしては、例えば、特開平9-94487号公報や米国特許第7320443号明細書等に開示されるノズルを用いることができる。旋回式ノズルは、筒状のノズル本体の先端側に噴射孔を有するノズルチップを備え、当該ノズルチップのノズル本体内面側に噴射孔から放射状に延びる複数の溝(有底溝)が形成されたノズルである。ノズル本体の噴射孔から出る流体は、ノズル本体の先端側でノズルチップの溝を通り旋回流に形成され、噴射孔から霧状に噴射される。旋回式ノズルとしては、例えば、特開2008-104929号公報や特開2009-36316号公報に開示されるノズルを用いることができる。
しかし、衝突式ノズルや旋回式ノズルでは、1つのノズルからの噴霧量を大きく変動させることは難しい。噴霧量を下げるために供給水圧を下げると、噴霧する水滴の粒径が大きくなり、蒸発に時間を要し、効率的な空気冷却が難しくなるためである。これらのノズルを用いて水の噴霧量を調節するためには、仕様上の噴霧量が比較的少ないノズルを多数設置し、噴霧に使用するノズル数を変えることにより、全体としての噴霧量を調節する方法が考えられる。しかしこの方法では、水の噴霧量が段階的に変化することになるため、噴霧量を連続的に変化させたり、細かな噴霧量の制御をすることが難しい。また、噴霧に使用するノズル数が少ない場合は、吸気ダクト内で噴霧ムラが生じ、効率的な吸気冷却が難しくなる。
そこで本発明では、ガスタービンの吸気冷却に用いる噴霧ノズルとして、先端部に噴口が設けられ、当該噴口を一方側に有し、他方側に液体排出管に連通した液体排出口を有し、前記噴口と前記液体排出口の間に主流路供給口が設けられた主流路と、当該主流路供給口に連通し、主流路内に旋回流が形成されるように液体を供給する液体供給流路とを有する噴霧ノズルを用いる。当該噴霧ノズルを用いれば、主流路に水を一定圧力で供給しつつ、主流路に供給された水を液体排出管へ返送する量を調節することにより、噴口から噴霧される水の粒径を小さく維持したまま、噴口からの噴霧量を変動させることができる。そのため、吸気ダクト内でできるだけ均一に水を噴霧しつつ、水の噴霧量を連続的に変化させたり、噴霧量を細かく制御をすることが可能となる。
以下、本発明で用いる噴霧ノズルの構成例を図面を参照して説明する。なお、本発明は図面に示した態様に限定されるものではない。
図1および図2には本発明で用いる噴霧ノズルの第1実施態様が示され、図1には、噴霧ノズルの軸方向断面図が示され、図2には、図1に示した噴霧ノズルのII-II断面図の例が示されている。また、図3には、噴霧ノズルを含む本発明の吸気冷却装置の構成例が示されている。図1および図2に示した噴霧ノズルは、水のみ(高圧水)を噴射する一流体ノズルとなっている。なお、噴霧ノズルの軸方向とは、噴霧ノズルの基端側から先端側に延びる方向を意味し、噴霧ノズルの軸方向断面とは、噴霧ノズルの軸方向に沿った断面を意味する。
図1に示した噴霧ノズル1(1A)は、先端部に設けられた噴口2と、噴口2を一方側に有し、他方側に液体排出管に連通した液体排出口4を有し、噴口2と液体排出口4の間に主流路供給口5が設けられた主流路3と、主流路供給口5に連通し、主流路3内に旋回流が形成されるように液体を供給する液体供給流路8を有する。主流路3は、ノズル軸方向の少なくとも一部において内面が筒形状に形成され、その一方端に噴口2が設けられ、他方端に液体排出口4が設けられ、噴口2と液体排出口4の間の側面に主流路供給口5が設けられることが好ましい。噴口2は、ノズル先端側から見て円形に形成されることが好ましい。噴口2の直径は0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましい。
主流路供給口5は、主流路3の内側面に設けられる。図1に示した噴霧ノズル1Aでは、主流路3の筒形状に形成された部分、すなわち主流路3の円筒部の内周面に主流路供給口5が形成されている。主流路供給口5に連通して、液体供給流路8が設けられる。液体供給流路8は、ノズル先端側から見て、主流路供給口5から主流路3の内周面の略接線方向に延びるように設けられる。図2(a)では、液体供給流路8が直線状に延びるように設けられ、図2(b)では、液体供給流路8が曲線状に延びるように設けられており、いずれの場合も、液体供給流路8が主流路供給口5から主流路3の内周面の略接線方向に延びるように設けられている。噴霧ノズル1Aは、液体供給流路8から主流路供給口5を通じて主流路3内に水を供給することにより、主流路3内に旋回流が形成される。液体は主流路3内を遠心力で旋回し、微粒化しながら主流路3内をノズル先端に向かって進み、噴口2から水が噴霧される。
主流路3の他方側には液体排出管22に連通した液体排出口4が設けられる。液体排出管22には圧力制御弁が設けられ、圧力制御弁によって液体排出口4からの排出圧力を制御することができ、これにより噴口2からの噴霧量を調節することができる。例えば、圧力制御弁の開度を高めることによって、主流路3の液体排出口4からの排出量を増やし、噴口2からの噴霧量を減らすことができる。そのため、液体供給流路8からの供給圧力を一定に保ちつつ、噴口2からの噴霧量を任意に調整することが可能となる。また、液体供給流路8からの供給圧力を一定に保つことができるため、噴霧量の増減に関わらず、噴口2から噴霧される水の粒径を小さく保持することができる。
主流路3内において、旋回流は、少なくとも主流路供給口5よりもノズル先端側に形成されることが好ましく、従って、液体供給流路8内の水の流れは、主流路供給口5においてノズル先端側に向かう速度ベクトルを有していることが好ましい。従って、水は、液体供給流路8の基端側(すなわちノズル先端側と反対側)から液体供給流路8に導入することが好ましい。そのために、図1では、液体供給流路8の基端側に液体流入口9が設けられている。液体流入口9は液体供給管に連通している。
主流路3には、主流路供給口5から噴口2の間に、ノズル先端に向かって内径が漸減する縮径部6が設けられることが好ましい。縮径部6では、主流路3の内側面が切頂円錐状に形成されている。主流路3内に縮径部6を設けることにより、液体の旋回速度(角速度)が縮径部6で高まり、主流路3内で液体をより微粒化することができる。
主流路3には、主流路供給口5と液体排出口4の間に、内径が狭まった小径部7が設けられることが好ましい。これにより、主流路3内において、主流路供給口5から液体排出口4に向かった水が、再び主流路供給口5側へ戻ることを抑えることができる。主流路3において、小径部7は、それよりもノズル先端側および基端側と比べて内径が小さく形成されていることが好ましい。
なお、図1および図2では、主流路3に主流路供給口5が2つ設けられているが、主流路供給口5は1つのみ設けられてもよく、3つ以上設けられてもよい。主流路供給口5が複数設けられる場合は、主流路供給口5は、主流路3の断面周方向に対して略等間隔に設けられることが好ましい。主流路供給口5が複数設けられる場合、その数は8以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。
図3には、噴霧ノズル1Aを備えた吸気冷却装置の構成例を示した。図3に示した吸気冷却装置は、ガスタービン34の吸気側に設置された吸気ダクト31を有し、吸気ダクト31に噴霧ノズル1Aが設けられたものである。吸気ダクト31は、上流側にダクト内に空気を取り込む吸気口32が設けられ、吸気ダクト31の下流側がガスタービン34の入口に接続し、吸気ダクト31を通過した空気がガスタービン34の圧縮機35に導入される。圧縮機35で圧縮された空気は燃焼器36で燃焼されて燃焼ガスを発生し、この燃焼ガスによってタービン37を回転させ、タービン37と同軸上に連結された発電機38にタービン37の回転エネルギーを伝えて発電する。
吸気口32にはフィルタ33が設置されていることが好ましい。フィルタ33を設置することにより、吸気口32から取り込まれた空気から細かい異物が取り除かれ、ガスタービン34の損傷を防ぐことができる。吸気口32は、1つのみ設けられてもよく、2つ以上設けられてもよい。吸気口32が複数設けられる場合、各吸気口にフィルタが設けられることが好ましい。吸気口32は、多方向から空気を取り込むように設けられてもよい。なお、吸気ダクト31において、吸気口32は、フィルタ33を含んでそれより上流側の部分に相当する。
吸気ダクト31には、フィルタ33の下流側にサイレンサが設けられてもよい(図示せず)。サイレンサによって、ガスタービン34から発生し吸気ダクト31を通って外部に洩れる音が低減される。サイレンサは、例えば、吸音板、または吸音材を貼った仕切板で吸気ダクト31の内部を区切ることにより形成することができる。例えば、吸気ダクト31の延在方向に対する垂直断面で見て、吸気ダクト31を所定の一方向に分割したスプリッター型サイレンサや、吸気ダクト31を縦横に分割したセル型サイレンサなどを用いることができる。
噴霧ノズル1Aは、吸気ダクト31のいずれの位置に設置されてもよい。図3では、噴霧ノズル1Aは、吸気ダクト31内のフィルタ33の下流側に設けられているが、例えばフィルタ33の吸込側(上流側)に設けられてもよい。なお、噴霧ノズル1Aは、吸気ダクト31において、少なくともフィルタ33の下流側に設けられることが好ましい。吸気ダクト31にサイレンサが設けられる場合は、フィルタ33とサイレンサの間に噴霧ノズル1Aが設けられることが好ましい。このような位置に噴霧ノズル1Aを設けることにより、ガスタービン34に導入する空気の温度制御が容易になる。すなわち、吸気ダクト31内に取り込まれた空気の全部が噴霧ノズル1Aからの噴霧によって冷却され、また噴霧した水の蒸発時間を十分に確保しやすくなる。なお、予備冷却のために、吸気口32であって、フィルタ33の吸込側に噴霧ノズルを設けてもよい。また、サイレンサの下流側にも噴霧ノズルを設けて、ガスタービン34に導入する空気を多段で冷却してもよい。
噴霧ノズル1Aは、ノズル先端が吸気ダクト31の下流側を向くように、吸気ダクト31内に設置されていることが好ましい。この場合、噴霧ノズル1Aの噴口2が吸気ダクト31の延在方向と略平行に向くように設置されてもよく、吸気ダクト31の延在方向に対して斜め方向に向くように設置されてもよいが、好ましくは前者の態様で噴霧ノズル1Aが設けられる。すなわち、吸気ダクト31内の空気の流れに沿うように噴霧ノズル1Aから水が噴射されることが好ましい。これにより、噴口2から噴霧された水が吸気ダクト31内の空気の流れによってより微粒化され、噴霧された水の速やかな蒸発が実現できる。なお、噴霧ノズル1Aからは、ある程度の噴射角度で水が噴霧されることが好ましく、例えば噴霧ノズル1Aの先端を頂点とした円錐状に噴霧されることが好ましい。噴射角度(円錐の頂点の角度)は、例えば30°以上が好ましく、50°以上がより好ましく、また120°以下が好ましく、90°以下がより好ましい。
吸気ダクト31内には複数の噴霧ノズル1Aが設けられることが好ましく、より好ましくは吸気ダクト31の延在方向に対する垂直断面において複数の噴霧ノズル1Aが設けられる。複数の噴霧ノズル1Aは、吸気ダクト31の延在方向に対する垂直断面において、一方向と他方向に複数並んで設けられることが好ましい。吸気ダクト31内に複数の噴霧ノズル1Aを設けることにより、吸気ダクト31の断面でより均一に水を噴霧することが可能となる。噴霧ノズル1Aは、例えば吸気ダクト31の断面積1m2当たり4個~100個設置することが好ましく、8個~50個がより好ましい。噴霧ノズル1Aを複数設置する場合の各噴霧ノズル1Aからの噴霧量は同一であっても異なっていてもよい。吸気ダクト31の延在方向に対する垂直断面において、吸気空気ができるだけ均一に冷却されるように、各噴霧ノズル1Aからの噴霧量を適宜設定することが好ましい。
噴霧ノズル1Aは、液体流入口9が液体供給管21に連通し、液体排出口4が液体排出管22に連通している。そして、液体供給管21が貯水タンク23に繋がっており、液体排出管22が貯水タンク23に繋がっていることが好ましい。この場合、貯水タンク23から液体供給管21を通って液体供給流路8に水が供給され、この水が主流路供給口5を通って主流路3内に供給されるようになる。そして、主流路3内に供給された水の一部が噴口2から噴霧されるとともに、他部が液体排出口4から排出され、液体排出管22を通って貯水タンク23に戻すことができる。これにより、液体排出口4から排出された水を有効活用することができる。
液体排出管22には圧力制御弁25が設けられることが好ましい。また、液体供給管21にも圧力制御弁24が設けられることが好ましい。液体供給管21の圧力制御弁24の開度を調節することによって、噴霧ノズル1Aの液体供給流路8に供給する水の供給圧力や供給量を制御し、噴口2から噴霧される水の粒径を調整することができる。液体排出管22の圧力制御弁25の開度を調節することによって、液体排出口4からの排出圧力を制御し、液体排出口4から排出あるいは返送される水の量を調整し、噴口2からの水の噴霧量を変えることができる。例えば、吸気ダクト31での冷却効率を高める必要がある場合は、噴口2からの噴霧量を増加させるために、液体排出口4からの水の排出量(返送量)を減らすように操作する。噴霧ノズル1Aは、液体供給管21の圧力制御弁24によって噴霧ノズル1Aの液体流入口9への供給圧力を一定に維持しつつ、液体排出管22の圧力制御弁25によって液体排出口4からの排出圧力を調節することで、噴口2から噴霧される水の粒径を微細に維持したまま、噴口2から噴霧される水の噴霧量を細かく制御することができる。
噴霧ノズル1Aの液体流入口9への供給圧力(ゲージ圧)は、例えば、0.5MPa~20MPaの範囲で調節することが好ましく、2MPa~15MPaの範囲で調節することがより好ましい。噴霧ノズル1Aの液体排出口4からの排出圧力(ゲージ圧)は、例えば、0MPa~15MPaの範囲で調節することが好ましく、0MPa~12MPaの範囲で調節することがより好ましい。1つの噴霧ノズル1Aからの噴霧量は特に限定されないが、例えば、0.1~2000L/hrの範囲で調整することが好ましい。また、1つの噴霧ノズル1Aからの最大噴霧量/最小噴霧量の比が4倍以上であることが好ましく、6倍以上がより好ましく、8倍以上がさらに好ましい。これにより1つの噴霧ノズル1Aからの噴霧量を幅広い範囲で連続的に調整することができる。1つの噴霧ノズル1Aからの最大噴霧量/最小噴霧量の比の上限は、最小噴霧量での噴霧圧力を確保する点から、例えば20倍以下、あるいは15倍以下が好ましい。
噴霧ノズル1A(具体的には液体供給流路8)に供給する水の供給圧力は、液体排出口4からの排出圧力に関わらず基本的に一定にすることが好ましい。これにより、噴口2からの噴霧量に関わらず、噴口2から噴霧される水の粒径をほぼ一定にすることができる。例えば、供給圧力の変動幅が10%以内となることが好ましく、5%以内がより好ましい。供給圧力の変動幅は、(最大供給圧力-最小供給圧力)/最大供給圧力により求められる。供給圧力は、ポンプの脈動の影響を除いた値とし、例えば10秒平均値を用いる。
噴霧ノズル1Aからの噴霧量は、吸気ダクト31内のフィルタ33よりも上流側の空気の温度や湿度、あるいは吸気口32から取り込まれる空気の温度や湿度と、目標とする冷却温度に応じて適宜調整することが好ましい。例えば、吸気ダクト31内のフィルタ33よりも上流側の位置や吸気ダクト31の吸気口32の吸込側に温度計と湿度計を設置し、この測定結果に基づき液体排出管22の圧力制御弁25の開度を調節することにより、ガスタービン34に導入される空気の温度を細かく制御することができる。また、ガスタービン34の入口にも温度計を設置し、ガスタービン34に導入される空気の温度が意図した通り冷却されているか確認し、必要に応じてフィードバック制御することが好ましい。
本発明の吸気冷却装置によれば、噴霧ノズル1Aからの噴霧量を減らしても、主流路3に水を一定圧力で供給することができるため、噴口2から噴霧される水の粒径が粗大化せず、噴霧量が多い場合と同様に微細な粒子径に保持できる。そのため、吸気ダクト31に取り込まれる空気の温度変化が大きい場合でも、噴口2から噴霧される水の粒径を小さく維持したまま、噴口2からの噴霧量を変えることができ、ガスタービン34に導入される空気の温度を一定に保ったり、細かく制御することが可能となる。
本発明の吸気冷却装置に用いられる一流体ノズルの他の構成例について、図4を参照して説明する。図4には本発明で用いる噴霧ノズルの第2実施態様が示され、噴霧ノズルの軸方向断面図が示されている。
図4に示した噴霧ノズル1(1B)は、上記に説明した噴霧ノズル1Aとほぼ同じ構成を有しているが、主流路3の形状と液体供給流路8の設置態様が噴霧ノズル1Aと異なる。噴霧ノズル1Aでは、図1に示すように、液体供給流路8と主流路3との接続部において、液体供給流路8が主流路3の延在方向に対して略垂直に延びるように設けられていたが、噴霧ノズル1Bでは、図4に示すように、液体供給流路8と主流路3との接続部において、液体供給流路8がノズル先端に向かって主流路3側に傾斜して延びている。このように、液体供給流路8は、ノズル先端に向かって主流路3側に傾斜して延び主流路供給口5に到達する部分を有していてもよい。液体供給流路8がこのように形成されていれば、主流路3内において、ノズル先端側に向かう旋回流が形成されやすくなり、噴口2から噴霧される水の粒径をより微細化しやすくなる。
ノズル軸方向断面において、液体供給流路8と主流路3との接続部における液体供給流路8と主流路3とのなす角、すなわち主流路供給口5を中心とした液体供給流路8と主流路3のなす角は、20°以上が好ましく、30°以上がより好ましく、また90°以下が好ましい。
図4に示した噴霧ノズル1Bはまた、主流路3の形状や液体供給流路8の主流路3への接続態様(すなわち主流路3への主流路供給口5の設置箇所)の点でも、図1に示した噴霧ノズル1Aとは異なる。噴霧ノズル1Aは、主流路3の円筒部に主流路供給口5が設けられていたが、噴霧ノズル1Bは、主流路3の縮径部6に主流路供給口5が設けられている。主流路供給口5はこのように、主流路3の噴口2と液体排出口4の間であれば、主流路3のいずれの箇所に形成されてもよい。
噴霧ノズル1Bでは、主流路供給口5が縮径部6の最も基端側に設けられている。そして、液体供給流路8が、ノズル軸方向断面で見て、主流路供給口5から縮径部6の側面の延長方向に延びるように形成されている。このように液体供給流路8が形成されていれば、噴口2から噴霧される水をより微粒化しやすくなる。噴霧ノズル1Bにおいても、縮径部6は、主流路3の主流路供給口5から噴口2の間に形成されている。
噴霧ノズル1Bでは、主流路3で、縮径部6の基端側に隣接して小径部7が設けられている。主流路3には、小径部7がこのような形態で設けられてもよい。
噴霧ノズル1Bの吸気冷却装置への適用に関する詳細、例えば、噴霧ノズル1Bの液体供給管や液体排出管への接続態様、噴霧ノズル1Bの吸気ダクトへの設置態様、噴霧ノズル1Bの操作条件等の詳細は、上記の噴霧ノズル1Aにおけるこれらの説明が参照される。
本発明では、ガスタービンの吸気冷却に用いる噴霧ノズルとして、水と空気を噴射する二流体ノズルを用いてもよい。この場合の噴霧ノズルとしては、噴口として、内側噴口とそれよりもノズル先端側に位置する外側噴口を有し、上記に説明した主流路の一方側に内側噴口が設けられ、外側噴口に連通して気体供給流路が設けられているものが好ましく用いられる。図5には、このような噴霧ノズルとして、本発明の噴霧ノズルの第3実施態様が示され、噴霧ノズルの軸方向断面図が示されている。
図5に示した噴霧ノズル1(1C)は、噴口として、内側噴口2とそれよりもノズル先端側に位置する外側噴口10を有するものである。噴霧ノズル1Cは、内側噴口2を一方側に有し、他方側に液体排出管に連通した液体排出口4を有し、内側噴口2と液体排出口4の間に主流路供給口5が設けられた主流路3と、主流路供給口5に連通し、主流路3内に旋回流が形成されるように液体を供給する液体供給流路8と、外側噴口10に連通して設けられた気体供給流路11を有する。つまり、噴霧ノズル1Cは、上記に説明した一流体ノズルにさらに、外側噴口10に連通した気体供給流路11が設けられたものである。従って、主流路3と液体供給流路8に関する構成は、上記の噴霧ノズル1Aや噴霧ノズル1Bの説明が参照される。図5には、図1に示した噴霧ノズル1Aにさらに気体供給流路11が設けられた構造を有する噴霧ノズルの構成例を示したが、噴霧ノズル1Cは、図4に示した噴霧ノズル1Bにさらに気体供給流路11が設けられた構造を有するものであってもよい。
噴霧ノズル1Cは、旋回流によって主流路3内で一次微粒化された水が内側噴口2から噴射され、ここに気体供給流路11を流れる空気や外側噴口10から噴射された空気が衝突することで二次微粒化される。そのため、噴霧ノズル1Cによれば、さらに微粒化された水を噴霧することができる。また、外側噴口10から噴射された空気によって、噴霧ノズル1Cからの噴霧角度が過度に広がることが抑制され、噴霧の勢いを強めて吸気ダクト内の空気との混合を促進して、冷却効率を高めることができる。
噴霧ノズル1Cはまた、従来の二流体ノズルと比較して、供給空気量を大幅に低減することができるという利点も有する。例えば、従来の二流体ノズルでは、噴霧量を広い範囲で変化させつつ微粒化性能を高めるためには、気水比1000程度が必要となるため、比較的大きなコンプレッサーが必要となる。この場合、大規模な追加設備が必要となるとともに、ランニングコストが増大する。また、供給空気用の気体供給管が大きくなり、吸気の圧力損失を招く。これに対して、噴霧ノズル1Cは、上記に説明した一流体ノズルの構造を内部に有することにより、内側噴口2から噴霧される水の粒径を小さく維持したまま、内側噴口2からの噴霧量を変動させることができ、気水比を大幅に下げることができる。例えば、コンプレッサーを用いて0.2MPa~0.6MPa(ゲージ圧)の圧縮空気を気体供給流路11に供給する場合、気水比を20~300とすることができる。
外側噴口10は、ノズル先端側から見て、少なくとも一部が内側噴口2と重なる位置にあることが好ましい。より好ましくは、外側噴口10は、ノズル先端側から見て、内側噴口2の全部と重なる位置にある。すなわち、外側噴口10は内側噴口2よりも大きいことが好ましい。
内側噴口2と外側噴口10は、ノズル先端側から見て円形に形成されることが好ましい。また、ノズル先端側から見て、外側噴口10の中心は内側噴口2の中心と一致する位置にあることが好ましい。内側噴口2の直径は0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましい。外側噴口10の直径は0.5mm以上6.0mm以下であることが好ましい。
気体供給流路11は外側噴口10から噴射するための空気が通る流路である。気体供給流路11は、一方側(すなわちノズル先端側)に外側噴口10が設けられ、他方側(すなわち基端側)に気体流入口12が設けられることが好ましい。気体流入口12から気体供給流路11に空気が流入し、外側噴口10から空気が噴射される。気体流入口12は、例えばコンプレッサーが設けられた気体供給管に連通し、コンプレッサーで生成した圧縮空気を気体流入口12を通して気体供給流路11に供給することができる。
気体供給流路11は、ノズル軸方向の垂直断面において、主流路3を取り囲むように設けられることが好ましい。図5では、噴霧ノズル1Cは内筒部14と外筒部15を有し、内筒部14の内腔に主流路3が形成され、内筒部14と外筒部15の間の空間に気体供給流路11が形成されている。外側噴口10は、外筒部15の一方端に形成されている。また、内筒部14の側壁部内部に液体供給流路8が形成されている。
気体供給流路11は、内側噴口2を囲んで、ノズル先端に向かって内側噴口2の中心軸線側に傾斜した先端傾斜部13を有することが好ましい。先端傾斜部13は、噴霧ノズル1Cを側面から見て、すなわち噴霧ノズル1Cの軸方向において、少なくとも内側噴口2と重なる位置に形成され、気体供給流路11がノズル先端に向かって内側噴口2の中心軸線側に傾斜するように形成される。内側噴口2の中心軸線とは、内側噴口2をノズル先端側から見たときの内側噴口2の中心を通り、主流路3の延在方向に延びる線を意味する。気体供給流路11に先端傾斜部13を設けることによって、内側噴口2から噴射された水が、気体供給流路11を流れる空気または外側噴口10から噴射された空気によって効果的に剪断され、噴霧ノズル1Cから噴霧される水をより微粒化することができる。
気体供給流路11において、先端傾斜部13は、内側噴口2の中心軸線に対して20°以上90°以下の角度で傾斜して設けられることが好ましく、30°以上60°以下の角度で傾斜して設けられることがより好ましい。気体供給流路11の延在方向は、噴霧ノズル1Cの軸方向断面において、内筒部14と外筒部15に挟まれた空間の中心線延在方向によって定められ、先端傾斜部13の傾斜角度は、気体供給流路11の中心線延在方向の先端傾斜部13における内側噴口2の中心軸線に対する角度を意味する。噴霧ノズル1Cは、内筒部14の外側面の先端部がテーパー状に形成され、内側噴口2の中心軸線に対して20°以上90°以下の角度で傾斜するように形成されていることが好ましく、30°以上60°以下の角度で傾斜するように形成されていることがより好ましい。また、外筒部15の内側面が、噴霧ノズル1Cの軸方向において少なくとも内側噴口2と重なる位置で、内側噴口2の中心軸線に対して20°以上90°以下の角度で傾斜するように形成されていることが好ましく、30°以上60°以下の角度で傾斜するように形成されていることがより好ましい。
先端傾斜部13において、気体供給流路11は、ノズル先端に向かって、内側噴口2の中心軸線に対する垂直断面の断面積が狭くなっていることが好ましい。あるいは、先端傾斜部13において、内筒部14の外側面と外筒部15の内側面の隙間間隔が、ノズル先端に向かって狭くなっていることが好ましい。これにより、気体供給流路11を流れる空気がノズル先端側に進むに従って高速化され、噴霧ノズル1Cから噴霧される水をより微粒化することができる。
気体供給流路11は、最も狭い箇所での隙間間隔が0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上がより好ましく、また10.0mm以下が好ましく、6.0mm以下がより好ましい。すなわち、内筒部14の外側面と外筒部15の内側面の隙間間隔は、最も狭い箇所で0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上がより好ましく、また10.0mm以下が好ましく、6.0mm以下がより好ましい。これにより、気体供給流路11を流れる空気量を確保しやすくなるとともに、気体供給流路11を流れる空気または外側噴口10から噴射される空気による剪断力(内側噴口2から噴射された水の剪断力)を高めやすくなる。
噴霧ノズル1Cは、外側噴口10と内側噴口2の間の空間で、内側噴口2から噴射された水が気体供給流路11を流れる空気と混合される内部混合タイプであってもよく、噴霧ノズル1Cの外部空間で、内側噴口2から噴射された水が外側噴口10から噴射された空気と混合される外部混合タイプであってもよく、これらの両者が組み合わさったタイプであってもよい。内部混合タイプの噴霧ノズル1Cの場合、外側噴口10と内側噴口2の間に内部混合空間が確保されることが好ましく、例えば、気体供給流路11のノズル先端側での内筒部14の外側面と外筒部の内側面の隙間間隔を0.1mm以上10.0mm以下とすることが好ましい。外部混合効果を高めた噴霧ノズル1Cの場合は、例えば、気体供給流路11のノズル先端側での内筒部14の外側面と外筒部の内側面の隙間間隔を0.1mm以上5.0mm以下とすることが好ましい。
噴霧ノズル1Cの吸気冷却装置への適用に関する詳細、例えば、噴霧ノズル1Cの液体供給管や液体排出管への接続態様、噴霧ノズル1Cの吸気ダクトへの設置態様、噴霧ノズル1Cの操作条件等の詳細は、上記の噴霧ノズル1Aにおけるこれらの説明が参照される。なお、噴霧ノズル1Cは、上記に説明した一流体ノズル(例えば、噴霧ノズル1Aや噴霧ノズル1B)に気体供給流路11が付加された構成となっており、気体供給流路11へは様々な方法で空気を供給することができる。
図6と図7には、噴霧ノズル1Cが設置された吸気冷却装置の構成例を示した。図6と図7に示した吸気冷却装置は、図3に示した吸気冷却装置において、噴霧ノズル1Aの代わりに噴霧ノズル1Cを設置したものである。従って、以下において、上記の図3に係る説明と重複する部分の説明を省略する。
図6に示した吸気冷却装置では、噴霧ノズル1Cの気体流入口12が気体供給管26に連通し、気体供給管26にコンプレッサー27が設置されている。コンプレッサー27で生成した圧縮空気が、噴霧ノズル1Cの気体流入口12を通して気体供給流路11に供給される。これにより、内側噴口2から噴射された水に気体供給流路11を流れる空気や外側噴口10から噴射された空気が衝突し、さらに微粒化された水を噴霧ノズル1Cから噴霧することができる。また、外側噴口10から噴射された空気によって、噴霧ノズル1Cからの噴霧角度が過度に広がることが抑制され、噴霧の勢いを強めて吸気ダクト31内を流れる空気との混合が促進され、冷却効率を高めることができる。
図7に示した吸気冷却装置では、気体供給管26の一方側が噴霧ノズル1Cの気体流入口12に連通し、他方側がガスタービン34の圧縮機35に連通している。すなわち、噴霧ノズル1Cの気体供給流路11がガスタービン34の圧縮機35に連通し、気体供給流路11に圧縮機35からの圧縮空気が供給されるようになっている。図7に示した吸気冷却装置では、噴霧ノズル1Cに供給する圧縮空気を生成するためのコンプレッサーが不要となるため、設備コストの低減を図ることができる。
本発明の吸気冷却装置では、二流体ノズルに供給する空気として、吸気ダクト内を流れる空気を用いることもできる。この場合は、吸気ダクト内を流れる空気を噴霧ノズルの気体供給流路に取り込みやすくするために、図8に示したように、気体流入口が広げられた噴霧ノズルが好適に用いられる。図8には、本発明の噴霧ノズルの第4実施態様が示され、噴霧ノズルの軸方向断面図が示されている。
図8に示した噴霧ノズル1(1D)は、上記に説明した噴霧ノズル1Cと基本構成は同じであるが、気体供給流路11の気体流入口12が噴霧ノズル1Dの基端側に大きく開口している。気体供給流路11は、一方側が外側噴口10に連通し、他方側が吸気ダクト31の内部に連通しており、気体供給流路11に吸気ダクト31内を流れる空気が供給されるようになっている。従って、噴霧ノズル1Dは、噴霧ノズル1Cとは異なり、気体流入口12に圧縮空気等を供給する気体供給管は接続されない。
噴霧ノズル1Dは、ノズル先端が吸気ダクト31の下流側を向くように設置され、気体供給流路11の気体流入口12が吸気ダクト31の上流側に開いていることが好ましい。このように噴霧ノズル1Dを吸気ダクト31内に設置することにより、吸気ダクト31内を流れる空気が気体供給流路11に取り込まれやすくなる。気体供給流路11に流入した空気は、外側噴口10から噴射され、微粒化された水が噴霧ノズル1Dから噴霧される。
本発明の吸気冷却装置は、吸気ダクト内に複数の噴霧ノズルが設けられることが好ましい。この場合、吸気ダクト内には液体供給管や液体排出管あるいはさらに気体供給管も設置されることとなる。しかし、このように多数の配管を吸気ダクト内に設置した場合、吸気ダクト内での圧力損失が高まり、ガスタービンの吸気空気量が確保できなくなるおそれがある。従って、吸気ダクトに噴霧ノズルを複数設ける場合は、次のように液体供給管や液体排出管や気体供給管を設置することが好ましい。
噴霧ノズル1A、噴霧ノズル1B、噴霧ノズル1Dのように、液体供給口に連通して液体供給管が設けられ、液体排出口に連通して液体排出管が設けられる場合は、液体供給管と液体排出管は、吸気ダクトの上流側から見て、少なくとも一部が互いに同じ方向に延在しかつ重なって配置されることが好ましい。このように液体供給管と液体排出管を配置することにより、これらの配管を吸気ダクト内に設置することによる圧力損失の増加を抑えることができる。なお、各配管の延在方向や重なりは、吸気ダクトにおいて、噴霧ノズル1とそれに繋がる各配管が設置された箇所をその上流側から見て判定するものとする。
噴霧ノズル1Cのように、気体流入口に連通して気体供給管がさらに設けられる場合は、液体供給管と液体排出管と気体供給管は、吸気ダクトの上流側から見て、少なくとも一部が互いに同じ方向に延在しかつ重なって配置されていることが好ましい。この場合、液体供給管と液体排出管と気体供給管のうちの少なくも2つが互いに同じ方向に延在しかつ重なって配置されていればよいが、好ましくは、気体供給管が、吸気ダクトの上流側から見て、液体供給管および/または液体排出管と少なくとも一部が互いに同じ方向に延在しかつ重なって配置される。より好ましくは、気体供給管と液体供給管の少なくとも一部が互いに同じ方向に延在しかつ重なって配置され、かつ気体供給管と液体排出管の少なくとも一部が互いに同じ方向に延在しかつ重なって配置される。気体供給管は液体供給管と液体排出管よりも口径あるいは断面積が大きくなる傾向となるため、このように各配管を配置することにより、吸気ダクトの上流側から見て、コンパクトに各配管を配置することができる。吸気ダクトの圧力損失の増加を抑える点からは、気体供給管の断面(気体供給管の延在方向に対する垂直断面)の形状は、吸気ダクトの延在方向に長く、その垂直方向に短く形成されていることが好ましい。また、気体供給管内に液体供給管および/または液体排出管を配置することによって、気体供給管が液体供給管および/または液体排出管と重なるように配置されていてもよい。
図9および図10には、複数の噴霧ノズル1Cを吸気ダクト内に設置する際に、複数の噴霧ノズル1Cを液体供給管と液体排出管と気体供給管で接続した構成例が示されている。図10は図9のX-X断面図を表す。図9および図10において、矢印Wは吸気ダクト内の空気の流れる方向を表す。
図9および図10では、吸気ダクト31内に、噴霧ノズル1Cが、吸気ダクト31の延在方向に対する垂直断面において複数設置されている。図9および図10に示した噴霧ノズル1Cは、吸気ダクト31の上流側から見て、液体供給流路8の液体流入口9と気体供給流路11の気体流入口12が互いに90°ずれて配置されている。図9および図10では、複数の噴霧ノズル1Cの液体流入口9に連通して液体供給管21が設けられ、複数の噴霧ノズル1Cの液体排出口4に連通して液体排出管22が設けられている。そして、液体供給管21と液体排出管22が、吸気ダクト31の上流側から見て、少なくとも一部が互いに同じ方向に延在しかつ重なって配置されている。さらに、複数の噴霧ノズル1Cの気体流入口12に連通して気体供給管26が設けられており、気体供給管26内に液体供給管21と液体排出管22が配置されている。その結果、気体供給管26が、液体供給管21と液体排出管22と、吸気ダクト31の上流側から見て、少なくとも一部が互いに同じ方向に延在しかつ重なって配置されている。このように各配管を配置することにより、これらの配管を吸気ダクト31内に設置することによる圧力損失の増加を抑えることができる。
噴霧ノズル1と液体供給管21と液体排出管22、あるいはさらに気体供給管26は、吸気ダクト31の上流側から見て、吸気ダクト31の断面積(吸気ダクト31の内部空間の断面積)の50%以下を占めることが好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。これにより、吸気ダクト31での圧力損失の増加を抑えることができる。
本発明の吸気冷却装置では、噴霧ノズルから噴霧された水がより微粒化されるようにする点から、噴霧ノズルが吸気ダクト内の流速が5m/s以上となる位置に設置されていることが好ましい。このような流速となる位置で水を噴霧することによって、噴霧した水の微粒化が効果的に促進される。噴霧ノズルを設置する位置の流速は、より好ましくは8m/s以上であり、さらに好ましくは10m/s以上であり、さらにより好ましくは12m/s以上である。当該流速の上限は特に限定されず、例えば50m/s以下であってもよく、30m/s以下であってもよく、20m/s以下であってもよい。なお、上記に説明した流速は、噴霧ノズルの先端部分(一流体ノズルの場合は噴口であり、二流体ノズルの場合は外側噴口である)での流速を意味する。
吸気ダクト内で、噴霧ノズルが設置された位置での流速を高める点から、吸気ダクト内には整流部材が設けられることが好ましい。この場合、整流部材は、少なくとも一部が吸気ダクト内の流れ方向に対して非平行となるように配置され、整流部材によって吸気ダクト内の流速が高められる高流速領域が形成され、この高流速領域に、ノズル先端が吸気ダクトの下流側を向くように、噴霧ノズルが設置されることが好ましい。整流部材は吸気ダクト内の空間に設けられ、整流部材によって噴霧ノズルを囲む空間の断面積(吸気ダクトの延在方向に対する垂直断面の面積)が吸気ダクトの上流側から下流側にいくに従って狭くなる縮流部が形成されることが好ましい。噴霧ノズルは、吸気ダクトの延在方向において、整流部材による縮流部が形成される範囲にノズル先端が位置するように配置されることがより好ましい。
図11~図13には、噴霧ノズルの周りに整流部材が設けられた吸気冷却装置の構成を示した。図11には、噴霧ノズルと整流部材を、噴霧ノズルの軸方向断面で見た図を示し、図12には、噴霧ノズルと整流部材が吸気ダクト内に設置された吸気冷却装置の構成例を示し、図13には、吸気ダクト内に設置した噴霧ノズルと整流部材を、その上流側から見た図を示している。なお、図11~図13には、噴霧ノズル1Aの周りに整流部材を設けた構成例を示したが、整流部材とともに設置される噴霧ノズルはこれに限定されない。
吸気ダクト31内には、少なくとも一部が吸気ダクト31内の空気の流れ方向Wに対して非平行となるように配置された整流部材41が設けられている。整流部材41によって、吸気ダクト31内の流速が高められる高流速領域が形成される。図11では、整流部材41の上流側開口42から下流側開口43に向かうまでの間で、噴霧ノズル1の周りの整流部材41で囲まれた部分の断面積が縮小する縮流部が形成され、これにより吸気ダクト31内を流れる空気の流速が高められる。図11では、高流速領域は、吸気ダクト31内の空気の流れ方向Wに対して、整流部材41の途中から下流側開口43の下流側に至る範囲に形成される。噴霧ノズル1は、高流速領域に、ノズル先端が吸気ダクト31の下流側を向くように、吸気ダクト31内に設置されており、これにより、噴霧ノズル1から噴霧された水の微粒化が促進される。
整流部材41の上流側開口42の開口幅や開口面積は適宜設定すればよいが、例えば、上流側開口42の開口面積が噴霧ノズル1の設置面積(吸気ダクト31の上流側から見た投影面積)の5倍以上となることが好ましく、10倍以上がより好ましく、15倍以上がさらに好ましい。整流部材41の下流側開口43の開口面積は、上流側開口42の開口面積の20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましく、また90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。
噴霧ノズル1は、吸気ダクト31の延在方向に対する垂直断面において、一方向と他方向に複数並んで設けられ、整流部材41の上流側開口42は、吸気ダクト31の延在方向に対する垂直断面の全体を覆うように設けられることが好ましい。また、各噴霧ノズル1に対応して、上流側開口42がそれぞれ設けられることが好ましい。図13には、そのように噴霧ノズル1と整流部材41を設置した例を示しており、上流側開口42が、各噴霧ノズル1に対応して、上流側から見て四角形状で密に並んで配置されている。なお、上流側開口42の形状は四角形状に限定されず、例えば三角形状や六角形状等でもよく、いわゆる格子状に上流側開口42が配置されることが好ましい。一方、下流側開口43は各噴霧ノズル1を中心とした円形状に設置されることが好ましく、これにより噴霧ノズル1の周囲の流速が均等に高められ、噴霧ノズル1から噴霧された水を均一に微粒化しやすくなる。
噴霧ノズルは、吸気ダクト内での速やかな蒸発を実現する点から、平均粒子径が30μm以下の水滴を噴霧するものであることが好ましい。なお、ここで説明した水滴の平均粒子径は、吸気ダクト内で空気が実質的に流れていない状態でノズルから噴霧された水に対して、位相ドップラー粒子分析計を用い、ノズルの先端から30cm先の地点での水滴の粒子径分布を測定したときのザウター平均粒子径を意味する。噴霧ノズルから噴霧される水滴の平均粒子径は25μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。当該水滴の平均粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば1μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、8μm以上であってもよい。
本発明はまた、上記に説明した吸気冷却装置を用い、吸気ダクトに取り込まれる空気または吸気ダクト内を流通する空気に水を噴霧して冷却する吸気冷却方法も提供する。吸気ダクトや噴霧ノズルの詳細は上記の説明が参照される。噴霧ノズルは、吸気ダクトの吸気口またはその近傍に設置され、吸気ダクトに取り込まれる空気に水を噴霧して冷却するものであってもよく、吸気ダクト内に設置され、吸気ダクト内を流通する空気に水を噴霧して冷却するものであってもよい。本発明の吸気冷却方法によれば、噴霧ノズルから噴霧される水の粒径を小さく維持したまま、噴霧ノズルからの噴霧量を広い範囲にわたって変動させることができる。そのため、吸気ダクト内でできるだけ均一に水を噴霧しつつ、水の噴霧量を連続的に変化させたり、噴霧量を細かく制御をすることが可能となる。