JP3977998B2 - 霧化装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体を霧化散布するスプレーノズルに係わり、特にガスタービン発電システムの圧縮機の吸気に大量の微細水滴を散布するのに好適な大容量の2流体霧化スプレーノズルに関する。
【0002】
【従来の技術】
水、薬液、液体燃料などの液体を散布するノズルの一種に、空気などの気体と混合して狭い隙間から噴射し液体を霧化(アトマイズ)する方式のノズルが従来から知られており、2流体霧化スプレーノズルなどと呼ばれ、市販品も各種みることができる。
【0003】
この種の具体例としては、例えば、特開昭57−27158号公報では、気水混合器を用いないで高速気流に水を注入し、気流により水を霧化し、円錐状にスプレー水を散布するようにしたノズルについて開示している。また、特開昭61−171561号公報では、扁平な噴霧パターンを作り、その散布方向を変えられるようにした塗料の噴霧ノズルについて開示している。さらに、実公昭63−38932号公報では、気体・液体をノズル内で混合し、ノズル先端のスリット(オリフィス)から噴出させ、散布液体の微細化を図るようにしたノズルについて開示している。
【0004】
ところで、近年、総合的な熱効率の点から、ガスタービンを用いたコンバインドサイクル発電システムが広く採用されているようになっているが、このようなガスタービンを用いたシステムでは、夏期の吸気温度の上昇により出力が低下する特徴がある。近年、このような吸気温度の上昇による影響に対処するため、圧縮機上流側の吸気に20μm以下の粒径に微粒化した水滴を噴霧し、その蒸発熱により吸気温度の上昇を抑え、さらに質量流量を増加させることで増出力を得る方法が採用されている。現状では、この水滴の噴霧に圧縮機から抽気する高温空気(約250℃)を用いる内部混合型2流体霧化スプレーノズルが採用されており、その性能は、噴霧分布が扇型で散布水量が毎時42リットル、気水比(空気の体積流量/水の体積流量)が約500で平均水滴径が16μm以下である。このノズルの水滴径は常温、高温空気を使用しても変わりがない。
【0005】
圧縮機上流の空気室に噴霧する水量は噴霧水と吸気空気の重量比で約1%である。したがって、ノズルにより噴霧する水量は、ガスタービンの容量にもよるが、かなり大量の水となる。このため、複数個の2流体霧化スプレーノズルを用い、多数のノズルから一斉に噴霧するようにしている。例えば、100メガワットのガスタービンシステムでは、散布水量が毎時42リットルの大容量噴霧ノズルを使用した場合、約200個のノズルが必要となる。この時に使用される圧縮機から抽気される空気による損失は出力の約2%に相当し、電気出力換算で約2メガワットである。
【0006】
また、使用されている従来ノズルの噴霧角度が110°と広いため、ノズルの設置は、空気室の中央部に集中して設置され、空気室壁側を流れる吸気には水滴の同伴が少なく空気室内での水滴分布にアンバランスが発生する。これにより、圧縮機内での気流に乱れが生じ安定性が保たれなくなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、噴霧に必要とする空気量と噴霧される水量の比である気水比についての配慮がされていない。つまり、損失となる空気量の削減の対策がなされておらず、水滴の微細化と大容量化に問題があった。また、ガスタービンシステムの圧縮機吸気室には、多数のノズルが設置されるが、この吸気室内の水滴密度の均一性については配慮がなされていない問題があった。
【0008】
霧化装置の2流体霧化スプレーノズルで使用される空気量は、ガスタービンシステムから見れば損失となるので、出来るだけ水滴に含まれる空気量を少なくする必要である。
【0009】
ちなみに、従来技術の気水比500のノズルでは、抽気による損失が発電出力の2%に相当し、気水比250のノズルではその損失が発電出力の1%となり、従来技術の半分となる。従来技術では、注水量が毎時42リットルで気水比が約500で平均水滴径が約16μmである。この水滴径もできる小さくすることが望まれる。
【0010】
本発明は、上記の問題に対処し、多量の水滴を少ない空気量で霧化できる霧化装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、気体および液体が混合される混合部の下流側に設けられるノズル先端オリフィスと、該ノズル先端オリフィスの前端から大気に向けてすり鉢状に広がるように開口する噴霧口と、該噴霧口の中央底部に配置され、かつ噴霧口の壁面との間に噴射流路を形成する噴射駒と、前記噴射流路に向けて成形用並びに液体微細化用気体を噴射する噴射スリットを有することを特徴とする。
【0012】
このように空気・水を混合して狭い噴射流路の小孔より噴出させることで、高流速飛散効果を得ることができる。
【0013】
また本発明は、前記混合部へ供給される空気量よりも前記噴射スリットへ供給される空気量を多くし、しかも空気量の割合を約1/3:2/3にしたことを特徴する。
【0014】
このように散布水に空気を衝突させることで水滴を微細化するせん断力効果を期待できるとともに散布水の方向を変えることによるせん断効果も期待できる。しかも、微細水滴の散布範囲を広範囲にすることができる。
【0015】
さらに、外部混合でガスタービンシステムの圧縮機から抽気する高温空気(約250℃)を使用することにより、注入空気の持つ熱エネルギー有効利用が図られ、散布水のさらなる微細水滴を達成できる。
【0016】
更に具体的に述べる。
【0017】
本発明は、前記噴射スリットを等間隔に4個配置して十字状または×字状の噴霧を形成し、かつ多数のスプレーノズルを縦横に並べ、かつ十字状噴霧と×字状噴霧のものが互い違いになるように配置したことを特徴とする。
【0018】
これにより、小量空気での大量水の微細水滴化および噴霧エリアの水滴密度の均一化を達成できる。しかも、一次空気(注入空気の約1/3)と注入水を混合部内で混ぜ、ノズル先端オリフィスの噴霧口に備える噴射駒との隙間から噴出させるとすることで、高流速飛散効果が得られる。
【0019】
さらに噴射スリットより噴射される二次空気(注入空気の約2/3)を4つに分岐し、一次空気と水との混合水の噴出直後の部分に噴出させ、こうして外部混合させる構成とすることで、水滴を微細化するせん断力効果を期待できるとともに散布水の方向を変えることによるせん断効果も期待できる。加えて、微細水滴の散布範囲を広角4方向(十字、×字型)とし、さらに、この外部混合でガスタービンシステムの圧縮機から抽気する高温空気(約250℃)を使用することにより、注入空気の持つ熱エネルギー有効利用が図られる。そして、散布水のさらなる微細水滴を達成できるとともに該ノズルを多数設置する噴霧ヘッダ構造では、十字噴霧ノズルと×字噴霧ノズルを一つおきに並べて設置することで該ノズルの噴霧エリア全体を均一な水滴密度とすることができる。
【0020】
また本発明は、前記噴射スリットを等間隔に3個配置して三方向形状の噴霧を形成させ、かつ多数のスプレーノズルを縦横に並べ、隣り合うスプレーノズルの噴霧が重ならないように配置したことを特徴とする。
【0021】
これにより、小量空気での大量水の微細水滴化および噴霧エリアの水滴密度の均一化が達成される。しかも、一次空気(注入空気の約1/3)と注入水を混合器内で混ぜ、ノズル先端オリフィスの噴霧口に備える噴射駒との隙間から噴出させるとすることで、高流速飛散効果を得ることができる。さらに二次空気(注入空気の約2/3)を3つに分岐し、一次空気と水との混合水の噴出直後の部分に噴出させ外部混合させる構造とすることで、水滴を微細化するせん断力効果を期待できるとともに散布水の方向を変えることによるせん断効果も期待できる。加えて、微細水滴の散布範囲を広角3方向とし、さらに、この外部混合でガスタービンシステムの圧縮機から抽気する高温空気(約250℃)を使用することにより、注入空気の持つ熱エネルギー有効利用が図られる。そして、散布水のさらなる微細水滴を達成できるとともに該ノズルを多数設置する噴霧ヘッダ構造では、該3方向噴霧ノズルを並べて設置し、ノズル設置間隔を前述したノズルよりさらに密にすることで噴霧エリア全体をさらに均一な水滴密度とすることができる。
【0022】
更に本発明は、前述したように前記混合部へ供給される空気量よりも前記噴射スリットへ供給される空気量を多くし、しかも空気量の割合を約1/3:2/3にした特徴を有するが、これの主なる狙いは散布水の微細水滴化の促進にある。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、空気・水を使用する2流体ノズルである本発明のクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルについて、図示の実施形態により詳細に説明する。
【0024】
ここで、図1は本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの水滴微細化機構の説明図、図2は本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの実施例である十字および×字噴霧ノズルの構造図、図3は本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの噴霧状態を示す図、図4は本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの1つの噴霧パターンである×字噴霧パターンを示す図、図5は本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの1つの噴霧パターンである十字噴霧パターンを示す図、図6は本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの1つの噴霧パターンである三方噴霧パターンを示す図、図7は本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの特性図、図8は本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルをガスタービン発電システムに設置した図、図9は従来ノズルである扇型噴霧2流体ノズルを集合した場合のスプレー噴霧図、図10は本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルである十字噴霧パターンと×字噴霧パターンを組合わせて集合した場合のスプレー噴霧図、図11は本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルである三方噴霧パターンを集合した場合のスプレー噴霧図、図12は本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルである三方噴霧パターンの配列ピッチを狭くして集合した場合のスプレー噴霧図を示す。
【0025】
まず、図1を用いて本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの水滴微細化機構を説明する。
【0026】
ノズルに流入する空気は、右の矢印で示すようにノズル内に流入し、一次、二次空気に分岐される。この時、中央部(混合部に供給する気体の気体供給路)を通過する一次空気は全体空気量の約1/3の空気量で、二次空気(分岐供給流路を流れる空気)は全体空気量の約2/3である。ノズルに注入する水は、図中上部から入りノズル内部で一次空気と混合し、ノズル先端から大粒の水滴として噴出する。二次空気は、ノズル先端で噴出する上記大粒の水滴に向い4方向から噴出しノズル外部で混合する。したがって、水滴の噴霧分布は左図に示すようにクロス分布となる。なお、ガスタービンシステムにこのノズルを設置し使用する場合、空気は圧縮機から抽気した高温(約250℃)空気を使用する。
【0027】
図2を用いて本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの構造を説明する。ここで説明するノズルは、水滴の噴霧分布が十字または×字のものである。本ノズルは、空気導入フランジ1、水導入フランジ2、ボディ3、キャップ4、空気分岐フランジ5、広角の噴霧駒6で構成されている。
【0028】
ノズルに流入する空気は、空気導入フランジ1の空気系取付け穴から流入し、分岐フランジ5で中央部を通過する一次空気(全体空気量の約1/3)とノズル先端に導かれる二次空気(全体空気量の約2/3)に分けられる。ここで、一次空気は分岐フランジ5の中央通路7を通りノズル先端に導かれるが、その途中で上部水導入フランジ2から流入し、小孔オリフィス8、隙間9を通過してきた水と混合部10で混ぜられ広角噴霧駒6の固定部11の隙間12、ノズル先端オリフィス13内を通過して放出される。この時、放出される水・空気の混合液はある程度の水滴径となり、広角の噴霧駒6の作用により広角に噴出する。二次空気は、分岐フランジ5のオリフィス14から入り通路15、空気溜室16を経由してノズル先端のスリツト17から中央に向い放出される。これにより、中央から放出され、一次空気と水との混合液で形成される水滴と衝突し、水滴の微細化が促進される。
【0029】
スプレーノズルの構成について更に詳しく述べる。
【0030】
スプレーノズルの中央には、気体の気体供給路としての中央通路7が備わる。気体供給路の上流側には圧力空気を取り込む空気取り込み口が連通するように設けられる。気体供給路の下流側には混合部10が連通するように設けられる。混合部10の下流側はスプレーノズルの先端側に備わるノズル先端オリフィス13に流路としての隙間12を介して連通している。ノズル先端オリフィス13の前側には、ノズル先端オリフィス13を中心として大気に向けてすり鉢状に広がるように開口する噴射口が設けられる。この噴射口は、ボディ3、キャップ4に前側に跨るようにして形成されている。
【0031】
噴霧駒6は、噴射口の中央底部に置かれるように配置される。この噴霧駒6は固定部11に支持される。噴霧駒6は噴射口の壁面に向くところは、円錐台形状をしている。この円錐台はノズル先端オリフィス13に向かって先が細くなるようなっている。噴霧駒6の円錐台の外周と噴射口の壁面との間に狭い噴射流路が形成される。この噴射流路から放射状に噴霧される。
【0032】
噴射流路に連通するスリット17は、スリット17の先側が噴射流路に交差するように臨んでいる。スリット17には、前記気体供給路から分岐した分岐供給路を介して空気が供給される。
【0033】
さて、混合部10で混合された流体は、ノズル先端オリフィス13、噴射流路を通過して噴射口から大気に向けて噴霧となって噴射される。この噴射される流体は、予め混合部10で空気と良く混合されたものが狭い噴射流路から勢い良く噴出されるので細かい水滴の噴霧になるのである。噴射口は鉢状に広がる形状をしているので、大きく広がる噴霧になる。
【0034】
しかも、噴射流路に向けてスリット17より高圧の圧搾空気が噴出するので、噴射口から噴射される噴霧は後述するような噴霧パターンに形成される。これに加え、高圧の圧搾空気で噴射口から噴射される噴霧の水滴粒子は更に細かくされるのである。
【0035】
また、狭い噴射流路は、すり鉢状に広がるように開口する噴射口と、ノズル先端オリフィス13に向かって先が細くなる円錐台の噴霧駒6とで形成されるので、所定の間隔が保たれまま延在する狭い流路が形成されるのである。この延びる狭い流路により、より安定して噴霧が形成されるのである。
【0036】
図2の(ハ)は、図2の(イ)のA−A断面を示し、×字噴霧パターンのノズル先端スリツト17の配置を示す。図2の(ニ)は、図2の(イ)のA−A断面を示し、十字噴霧パターンのノズル先端スリツト17の配置を示す。そして、ノズル先端のスリツト17からの噴出空気は矢印18で示す。図2の(ホ)は、図2の(イ)のB−B断面を示し、広角噴霧駒6の固定部11の形状を示したものである。
【0037】
この形状のノズルにおける水滴の噴霧分布19を図3、4、5で説明する。ここで、図3に示すものは図5に示す十字噴霧パターンでの噴霧状況を示す。図4は十字噴霧パターンを形成するノズル先端のスリツト17を90°ずらした場合×字噴霧パターンを示している。このノズルにおける噴霧角度は約80°である。
【0038】
図6はノズル先端のスリツト17を120°ずらして3つ設けた場合の三方噴霧パターンを示すものである。
【0039】
図7は上記した本発明であるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの噴霧パターンにおけるノズル特性を示す。ここで、横軸は噴霧水量を、左縦軸は気水比を、右縦軸はザウター平均水滴径を示す。図中の細い実践は気水比を示し、破線は空気・水が常温でのザウター平均水滴径を、太い実践はガスタービンシステムの圧縮機から抽気する250℃の空気を用いた場合のザウター平均水滴径を示している。これから、従来技術の内部混合型2流体ノズルでは、気水比が約500でザウター平均水滴径が約16μm(常温、高温空気250℃使用でも同じ)であるに対して本発明のノズルでは、常温条件における気水比が約500(D点)で約13μm(E点)であり、ガスタービンシステムの圧縮機から抽気する高温空気を使用した場合は約10μm(F点)となり性能が向上しているのが分かる。本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルと従来技術である内部混合型2流体ノズルとをガスタービンシステムの実機条件(空気温度250℃)で比較すると、従来技術では水量が毎分0.7リットル(毎時42リットル)で気水比が500でザウター平均水滴径が約16μmに対して本発明によるノズルは噴霧水量が毎分0.7リットル(毎時42リットル)で気水比が従来技術の半分の250(A点)でザウター平均水滴径が約16μm(C点)となることがわかる。
【0040】
ちなみに、常温条件における従来技術の内部混合型2流体ノズルの性能は、噴霧水量が毎分0.7リットル(毎時42リットル)で気水比が500でザウター平均水滴径が約20μmであるが、本発明によるノズルでは、気水比が250でもザウター平均水滴径が約18μm(B点)となりで約2μm水滴径が小さくなる。これらのことから、本発明であるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルをガスタービンシステムに採用することで水滴径を同じとした場合、気水比を半分にできる、すなわち使用空気量を従来技術の半分にすることができる。したがって、圧縮機から抽気される損失となる空気量が半分になることから、従来損失であった発電出力の約2%が1%削減されることになる。
【0041】
上記実施例では、本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルについて記したが、以後に、このノズルを実機のガスタービン発電システムに設置する実施例について説明する。
【0042】
図8に本発明によるノズルをガスタービン発電システムに設置した例を示す。
【0043】
ガスタービン発電システムの基本構成機器は、吸気を圧縮する圧縮機20、圧縮した空気に燃料を注入して燃焼させる燃焼器21、その燃焼ガスが基となり回転するタービン22、この回転による電気を発生させる発電機23である。この発電機23には変電設備24、電気を送電する送電端25接続されている。このような構成でのガスタービン発電システムでの運転は、初期状態で別設備であるモータ(図示せず)により回転させ、燃料タンク26、ポンプ27、調節弁28、フイルター29等で構成される燃料供給系から燃料を燃焼器21に供給しバーナ30により燃焼させる。定常状態になったら、別設備であるモータを切り離し、燃焼させることで定常運転状態を形成する。タービン22からの排ガス31は排ガス処理装置(NOX、SOX等の除去)32、スタック33を経由して大気に放出される。
【0044】
圧縮機20の上流側である空気室34内部には、吸気量を調整するルーバー35、消音するサイレンサー36、本発明の主要である噴霧システムが収納されている。この噴霧システムの空気室内の構成は、水ヘッダ37、その水ヘッダからクロス噴霧大容量霧化スプレーノズル40に水を供給する水注入管38、空気ヘッダ39、その空気ヘッダからクロス噴霧大容量霧化スプレーノズル40に空気を供給する空気注入管41により構成されている。この噴霧システムにおける空気ヘッダへの空気の供給は、圧縮機20で加圧された空気を抽出しフイルター42を経由して、流量調節弁43で調節され空気ヘッダ39に供給される。したがって、圧縮機から抽気される空気はシステム損失となり、従来技術では発電出力の約2%が損失となるが、本発明であるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルを使用することでこの損失を1%にすることができる。水の供給は、給水タンク44からポンプ45により、水処理装置46、フイルター47を経由して流量調節弁48で調節され水ヘッダ37に供給される。このような構成の噴霧システムから噴霧された水滴は吸気49に同伴され圧縮機20に流入する。
【0045】
圧縮機20に流入する水滴は、出来るだけ細かい方が望ましい。少なくとも、噴霧される水滴の大きさがザウター平均径で20μm以下を達成するようにしたのである。水滴径が大きいと圧縮機に流入する気流にうまく乗らない、また、大きな水滴のまま圧縮機内に流入するとエロージョン(20μm以上で発生可能性あり)の原因となる。さらに、圧縮機内での蒸発が遅れ気化潜熱による効果が減少し、熱効率向上への貢献度が小さくなるからである。
【0046】
なお、上記した条件の気水比を満たし、それに加え水滴径を16μm以下とすることがより望ましいのである。
【0047】
ここで、ザウター平均粒径とはレーザ測定法で計測した散布水粒径を表す一般的な指標で、通常水滴径として用いられる。
【0048】
また、スプレーノズルを設置する位置から圧縮機入口までの距離が比較的短いことから、噴霧位置から距離をおかないで空気室内の水滴密度が均一になるような噴霧分布を持つスプレーノズルをに用いる。
【0049】
それは、圧縮機に流入する気流に水滴の濃淡があると、圧縮機内での水滴の蒸発位置が移動し、安定した特性が得られなくなり、運転制御に支障をきたすからである。
【0050】
空気室の壁等の構造物に衝突し再結合した大粒の水滴は水となりドレーン管50より外部に排水される。このようなシステムで構成されるガスタービン発電システムでは、制御監視用コンピュータ51に燃料、空気、水フィルター情報、発電出力情報が入力され状態把握される。さらに発電出力の調整はこのコンピュータ51からの制御命令により燃料、空気量、水量が制御される。
【0051】
以下に吸気49に同伴され圧縮機20に流入する水滴の作用を示す。
【0052】
圧縮機20に流入する水滴は、作動流体の重量流量を増加させ、圧縮機20内で気化する。この作動流体は、気化が完了するとさらに断熱圧縮を受ける。その際水蒸気の定圧比熱は圧縮機20内の代表的な温度(約300℃)近傍では、空気の約2倍となり、熱容量的には空気換算で気化する水滴の重量の約2倍の空気が作動流体として増したのと等価となる。圧縮機20の動力は、圧縮機20出入口の作動流体のエンタルピの差に等しく作動流体のエンタルピは温度に比例するので、圧縮機20出口の作動流体温度が下がると、圧縮機20の所要動力もそれにつれて低減することができる。したがって、圧縮機20内に流入する水滴の粒径はできるだけ小さくし、早めに気化させることで圧縮機20出口の温度を低く抑えることが効率向上に重要となる。本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルは、使用する空気量が従来技術の半分で水滴径が従来技術と同等の約16μm以下の微細水滴を達成できることから有効である。圧縮機20で加圧された作動流体は、燃焼器21で燃料の燃焼により昇温された後タービン22に流入して膨張し仕事を行う。この仕事はタービンの軸出力と呼ばれタービンの出入口作動流体のエンタルピの差に等しい。燃料の投入量は、タービン22入口のガス温度が所定の温度を超えないように制御される。たとえば、タービン22出入口の作動流体温度が本発明適用前の値と等しくなるように燃焼器21への燃料量を制御する。このような燃焼温度一定制御がおこなわれると、先に述べたように圧縮機20出口の温度が低下している分だけ燃料投入量が増すことになる。また、燃焼温度が不変かつ流入水滴の重量割合が吸気の数パーセント程度であれば、タービン22入口部の圧力と圧縮機20出口圧力は水滴注入の有無で近似的に変わらないので、タービン22出口温度T4も変化しない。よって、タービン22の軸出力は水滴注入の有無で変化しないことになる。一方、タービン22の正味出力は、タービン22の出力から圧縮機20の動力を差し引いたものであるから、結局本発明を適用することで圧縮機20の動力が低減した分だけタービン22の正味出力を増すことができる。今、吸気49の温度をT1、圧縮機20の出口の温度をT2、燃焼器21の温度をT3、タービン22出口温度をT4とすると、タービン22の電気出力Eはタービン22の軸出力Cp(T3−T4)から圧縮機20の仕事Cp(T2−T1)を差し引いて得られ、近似的に次式(1)で表される。
【0053】
E=(T3−T4)−(T2−T1)・・・・・・・・・・・・・(1)
通常、燃焼温度T3は一定となるように運転されるので、圧縮機22の出口温度T2が水滴の注入によりT2’に低下すると、圧縮機20の仕事の低下分に等価な増出力Cp(T2−T2’)が得られることになる。
【0054】
一方、ガスタービン発電システムの効率ηは近似的に次式(2)で与えられる。
【0055】
η=1−(T4−T1)/(T3−T2)・・・・・・・・・・・(2)
これから、T2’<T2であるから、右辺第2項は小さくなるので水滴注入で効率も向上する。
【0056】
圧縮機20内の温度低下割合は注入水滴が多いほど大きくなるので、前述したように空気・水の噴霧量を制御することにより、増出力割合をコントロールできる。
【0057】
以上、ここでは、ガスタービン発電システムの圧縮機上流側に設置する噴霧システムの全体構成と噴霧水滴の作用および効果について記したが、以下には、この噴霧システムに設置するノズルから噴出する微細水滴の噴霧パターンの違いによる効果について説明する。
【0058】
ガスタービン発電システムの圧縮機上流側に設置する噴霧システムでは、空気室34内で噴霧水滴の密度差が発生すると圧縮機内での気流に乱れが生じ安定性の確保が難しくなることから、空気室34内での水滴噴霧は限られたエリアにいかに均等に噴霧するか重要となる。
【0059】
一つのスプレーノズルで大量の水を霧化できるようにすることで、大容量のガスタービン発電システムに使用するスプレーノズル個数を少なくできるため、限られたエリアにスプレーノズルを配置でき、結果的にガスタービン発電システムの小型化が可能になる。
【0060】
図9、10、11に性能が同じノズルからの噴霧分布が干渉しないようにノズルを縦横同じピッチで配列した場合の噴霧分布を示す。ここで、図9は従来技術による扇型噴霧2流体ノズルを使用した場合の噴霧状況を示す。図10は本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルで十字および×字に噴霧するノズルを1つおきに設置した場合の噴霧状況を示す。図11は本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルで三方に噴霧するノズルを設置した場合の噴霧状況を示す。これから、図10に示す十字および×字に噴霧するノズルを1つおきに設置した場合が空気室34内に最も均一に噴霧されることがわかる。このように同じピッチ配列でノズルを設置する場合は十字および×字噴霧ノズルを使用することが良いが、ピッチ配列の距離を短くし、沢山のノズルを設置する場合は、図9と図11に示す扇型、三方噴霧ノズルが有効となる。ただし、図9の扇型噴霧パターンでは、ノズル設置構造上の限界はあるが縦方向の配列ピッチを短くすることは可能である。しかし、横方向の配列ピッチは噴霧分布が干渉するため変更は不可である。図11に示した三方噴霧ノズルの配列は、図12に示すように縦横のノズル配列ピッチを変えることができ、より密集した噴霧が可能となる。これらのことから、限られたエリアで噴霧水量が多い場合は三方噴霧ノズルを使用し、噴霧水量が少ない場合は十字、×字噴霧ノズルを使用すると良いことが分かる。
【0061】
以上のことから、本発明のクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルを使用することで、使用空気量を従来の半分にでき、システム損失を従来の半分に軽減できるとともに空気室内の水滴密度を均一にすることで圧縮機内の気流の乱れを軽減でき、ガスタービンシステムの安定性が確保できる。
【0062】
以上述べた本発明の良さをまとめると次のとおりである。
(1)、スプレー水の微細化を促進することで、空気・水を混合して小孔より噴出させる高流速飛散効果を有する。
(2)、散布水に空気を衝突させることで水滴を微細化するせん断力効果を有する。
(3)、散布水の方向を変えることによるせん断効果を有する。
(4)、注入空気の持つ熱エネルギー有効利用効果を組み合わせたノズル構造と成っており、2流体霧化スプレーノズルに使用する空気量を従来技術の半分に削減でき、水滴径を従来技術と同等の約16μm以下で大量の微細水滴を噴霧することができる。
(5)、注入空気の持つ熱エネルギー有効利用効果を組み合わせたノズル構造と成っており、課題であった2流体霧化スプレーノズルに使用する空気量を従来技術の半分にすることでガスタービンシステム損失を半分に削減でき、水滴径を従来技術と同等の約16μm以下で大量の微細水滴を十字噴霧パターンと×字噴霧パターンに噴霧することができる。これによって、ノズルの噴霧エリア全体を均一な水滴密度とすることができる。
(6)注入空気の持つ熱エネルギー有効利用効果を組み合わせたノズル構造と成っており、課題であった2流体霧化スプレーノズルに使用する空気量を従来技術の半分にすることでガスタービンシステム損失を半分に削減でき、水滴径を従来技術と同等の約16μm以下で大量の微細水滴を三方噴霧パターンに噴霧することができる。これによって、噴霧エリア全体の水滴密度をさらに密で均一な水滴密度とすることができる。
(7)、注入空気の持つ熱エネルギー有効利用効果を組み合わせたノズル構造とすることができ、特にノズル先端で水滴化された熱容量の小さくなった水滴に圧縮機から抽気する高温空気を大量に衝突させることで飛散効果および蒸発効果を効率良く行うことができ水滴径を常温空気使用時より約2.μm小さくできる。
(8)、ガスタービン発電システムに本発明のクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルを使用すると、従来技術である内部混合型2流体ノズルの使用空気の半分で同じ水滴径を得ることができることから、システム損失を従来技術の半分にすることができ高効率を達成できる。また、このノズルで構成する噴霧システムを圧縮機上流の空気室内に設置することで、空気室内の水滴密度を均一にすることができ、圧縮機内の気流の乱れを軽減し、ガスタービンシステムの安定性が確保できる。
【0063】
上記実施例はクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルに関するものであるが、本発明はクロス噴霧大容量霧化装置、燃料霧化装置、塗料霧化装置、薬剤霧化装置に適用できるものである。
【0064】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、スプレー水の微細化を促進することで、空気・水を混合して小孔より噴出させる高流速飛散効果を有する。また散布水に空気を衝突させることで水滴を微細化するせん断力効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの水滴微細化機構の説明図。
【図2】本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの実施例である十字および×字噴霧ノズルの構造図。
【図3】本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの噴霧状態を示す図。
【図4】本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの1つの噴霧パターンである×字噴霧パターンを示す図。
【図5】本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの1つの噴霧パターンである十字噴霧パターンを示す図。
【図6】本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの1つの噴霧パターンである三方噴霧パターンを示す図。
【図7】本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルの特性図。
【図8】本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルをガスタービン発電システムに設置した図。
【図9】従来ノズルである扇型噴霧2流体ノズルを集合した場合のスプレー噴霧図。
【図10】本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルである十字噴霧パターンと×字噴霧パターンを組合わせて集合した場合のスプレー噴霧図。
【図11】本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルである三方噴霧パターンを集合した場合のスプレー噴霧図。
【図12】本発明によるクロス噴霧大容量霧化スプレーノズルである三方噴霧パターンの配列ピッチを狭くして集合した場合のスプレー噴霧図。
【符号の説明】
1…空気導入フランジ、2…水導入フランジ、3…ボディ、4…キャップ、5…空気分岐フランジ、6…広角噴霧駒、7…中央通路、8…小孔オリフィス、9…隙間、10…混合部、11…固定部、12…隙間、13…ノズル先端オリフィス、14…オリフィス、15…通路、16…空気溜室、17…スリツト、18…噴出空気、19…噴霧分布、20…圧縮機、21…燃焼器、22…タービン、23…発電機、24…変電設備、25…送電端、26…燃料タンク、27…ポンプ、28…調節弁、29…フィルター、30…バーナ、31…排ガス、32…排ガス処理装置、33…スタック、34…空気室、35…ルーバー、36…サイレンサー、37…水ヘッダ、38…水注入管、39…空気ヘッダ、40…スプレーノズル、41…空気注入管、42…フィルター、43…流量調節弁、44…給水タンク、45…ポンプ、46…水処理装置、47…フィルター、48…流量調節弁、49…吸気、50…ドレーン管、51…制御監視用コンピュータ。

Claims (6)

  1. 供給する気体および液体が混合される混合部と、
    前記混合部の下流側に設けられるノズル先端オリフィスと、
    前記ノズル先端オリフィスの前端から大気に向けてすり鉢状に広がるように開口する噴霧口と、
    前記噴霧口の中央底部に配置され、かつ噴霧口の壁面との間に噴射流路を形成する噴射駒と、
    前記噴射流路に向けて成形用並びに液体微細化用気体を噴射する噴射スリットと、
    前記混合部に供給する気体の気体供給路と、
    前記気体供給流路から分岐され、かつ前記噴射スリットに連通する分岐供給流路と、
    前記混合部に供給される気体の量と前記噴射スリットより供給される気体の量を約1/3:2/3とし、
    前記噴射駒は前記ノズル先端オリフィスに向けて先細りの円錐台形部を有し、
    前記スリットを複数備え、複数のスリットの先側が噴射流路に交差するように臨んでいることを特徴とする霧化装置。
  2. 請求項1記載の霧化装置において、
    前記噴射スリットを等間隔に4個配置して十字状または×字状の噴霧を形成することを特徴とする霧化装置。
  3. 請求項1記載の霧化装置において、
    前記噴射スリットを等間隔に3個配置して三方向形状の噴霧を形成することを特徴とする霧化装置。
  4. 請求項2記載の霧化装置を縦横に多数並べ、かつ隣り合う十字状噴霧と×字状噴霧が互い違いになるように配置したことを特徴とする霧化装置。
  5. 請求項2記載の霧化装置を縦横に多数並べ、かつ隣り合う
    多数のスプレーノズルを縦横に並べ、かつ隣り合う三方向形状の噴霧が重ならないように配置したことを特徴とする霧化装置。
  6. 請求項1から5の何れかに記載された霧化装置を用いてガスタービン発電システムの圧縮機の上流側に噴霧を供給することを特徴とする噴霧供給装置。
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