JP7083944B1 - 不正防止機構、紙葉搬送装置、及び紙葉取扱装置 - Google Patents
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Abstract
Description
更に、特許文献1では、スリットを備えた回転体に対して同軸状且つ相対回転可能に歯車を組み付けると共に、回転体に設けた突起状の連結部を歯車に設けた突起によって押圧することにより、初期回転姿勢になかった回転体を初期回転姿勢に向けて回転移動させる。回転体が初期回転姿勢に達したことがセンサにより検知された時点で回転体を停止させると、回転体の連結部と歯車の突起との間に減速区間としてのギャップが形成される。このため、連結部の停止後も歯車の突起は減速区間がなくなるまで減速しながら回転して連結部と接した時点での衝撃力が緩和されて回転体や回転体の回転駆動装置が受けるダメージを防止でき、更に回転体の停止時にスリットを初期回転姿勢で確実に位置決めできる(オーバーランを防止できる)。
つまり、特許文献1の構成では、待機時にスリットと搬送経路とが整合しない位置で回転体を停止させることはできるものの、待機時に回転体を不正に初期回転姿勢に移行させた状態で行われる他の不正行為に対応することができないという問題があった。
但し、以下の各実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1(a)は本発明の不正防止機構を備えた紙幣搬送装置の全体の内部構成を示す縦断面図であり、(b)及び(c)は開閉部材を中心とした紙幣搬送装置の要部構成を示す縦断面図である。同図(a)は開閉部材が搬送路を開放している初期回転姿勢を示し、(b)は開閉部材が待機位置にある非初期回転姿勢を示し、(c)は外力により開閉部材が回転させられても通路を遮断している状態を示している。
なお、本例では紙葉の一例として紙幣を示すが、本装置は紙幣以外の紙葉、例えば有価証券、金券、チケット等々の搬送における不正行為の防止にも適用することができる。
紙幣搬送装置1は、下部ユニット3と、下部ユニット3に対して開閉自在に支持された上部ユニット4とを備え、図1に示した各ユニットが閉じた状態にある時に各ユニットの対向面間に紙幣搬送経路(搬送経路)10が形成される。
出口32から排出された紙幣は図示しない紙幣収納部(スタッカ装置)に収容される。
なお、紙幣搬送装置1の上記構成は一例に過ぎず、種々の変形が可能である。例えば、使用するモータ数、ローラ対の配置、識別センサの種類等々、種々変更選定可能である。
<基本構成>
本発明の一実施形態に係る不正防止機構について図1乃至図10に基づいて説明する。
図2(a)(b)及び(c)は不正防止機構の一例の構成、及び動作手順を示す正面図であり、図3(d)(e)及び(f)は図2の不正防止機構の動作手順の続きを示す正面図であり、図4(g)(h)及び(i)は図3の不正防止機構の動作手順の続きを示す正面図である。なお、図2(b)は待機時における非初期回転姿勢を示し、図2(c)、及び図3(d)は初期回転姿勢を示している。図5(a)(b)及び(c)は開閉部材と駆動部材の組み付け状態を示す正面図、及び開閉部材から駆動部材を分離した状態の正面図、及び(a)中のA-A断面図であり、図5(d)は開閉部材の回転部材側の端部の構成を示す斜視図である。図6(a)及び(b)は開閉部材と駆動部材の組み付け状態を示す斜視図、及び開閉部材と駆動部材の分解斜視図であり、図7(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る駆動部材の構成を示す斜視図であり、図8は従来の駆動部材の構成を比較のために示す斜視図である。図9は変形例に係る駆動部材の斜視図である。図10(a)乃至(c)はギャップGPが過大な駆動部材を備えた不正防止機構における不正行為の手順(可能性)を示す説明図である。
不正防止機構24は、図1(a)、図2(c)図3(d)に示した初期回転姿勢(紙幣受入れ姿勢)にあるときに搬送経路10を開放状態にして搬送される紙幣の進入、通過を許容すると共に、該初期回転姿勢から外れた非初期回転姿勢(図1(b)(c)、図2(b)、図3(e)(f)等)にある時に搬送経路10(端部開口10A、10B)の全部、又は一部を閉鎖して紙幣の通過を阻止する(不能とする)シャッター機能を備えたガイドスリット52を備え、且つガイドスリット52と並行な回転軸54を中心として回転可能に軸支された不正検知、及び不正防止用の開閉部材50を備える。更に、不正防止機構24は、開閉部材50の回転軸54の一端部により軸芯部を固定された略円盤体であり、且つ外周縁に一つの凹陥部72を備えて開閉部材50と一体回転する回転部材70と、回転部材70の外側面に対向して近接配置されて開閉部材の回転軸54の一端部により軸芯部を回転部材と相対回転可能に、且つ同軸状に軸支された開閉部材駆動用の駆動ギヤ(駆動部材)90と、駆動ギヤ90からの駆動力を回転部材70に対して所定のタイミングで断続的に伝達するように作動する駆動伝達機構100と、駆動ギヤ90を駆動する不正防止用モータ(DCモータ)120と、不正防止用モータ120と駆動ギヤ90との間において駆動力を伝達するギヤ機構130と、開閉部材50が初期回転姿勢にあること、或いは初期回転姿勢にないことを検知する回転姿勢検知手段140と、不正防止用モータ120を制御する制御手段200と、を備える。
なお、回転軸54は回転部材の両端から突出しているに過ぎず、回転部材内部のガイドスリット52内には延在していないので、図5(c)に示すようにガイドスリットには干渉しない位置関係にある。
なお、ガイドスリットは必須ではなく、ガイドスリットを有しない開閉部材自体が回転する過程で搬送路を開閉するようにしてもよいし、開閉部材に切欠きを設け、初期回転姿勢にある時にだけ切欠きが搬送経路を開放するようにしてもよい。
被駆動片74と駆動片92との間の周方向遊びθ3の値(θ1-θ2=40度)は、図1(b)、図2(b)のように開閉部材が待機時に非初期回転姿勢で停止している時に、外部から紙葉搬送経路を経由して挿入されてきた不正手段による操作により開閉部材を所要角度だけ回転させて初期回転姿勢に移行させることを阻止し得る値(不正阻止値)に設定されている。本発明では周方向遊びθ3の値をこのように構成したため、図1(b)、図2(b)の待機時における非初期回転姿勢において、外部から不正手段を用いて開閉部材を最大限正回転させたとしても図1(c)、図3(f)の非初期回転姿勢までしか回転させることができない。
これを言い換えれば、被駆動片74と駆動片92との間の周方向遊びθ3が、待機時に非初期回転姿勢にある開閉部材を実際に初期回転姿勢(連通位置)にまで回転させることができる角度と同等か、又は大きい場合には、開閉部材のガイドスリットを搬送経路と連通状態にするための不正な操作が可能になる。
つまり、待機時に駆動ギヤ90が回転を停止していることを前提として、「待機時に開閉部材が非初期回転姿勢から初期回転姿勢に至るまでの角度」≦「周方向遊びθ3」の条件を満たしている場合に、開閉部材を搬送経路と連通状態にするための不正な操作が可能になる。
なお、周方向角度θ1、θ2、及び周方向遊びの値θ3として示した上記の各数値は一例に過ぎない。
即ち、駆動伝達機構100は、回転部材70の外側面に設けられて軸方向外側へ突出した小突起(周方向角度(幅)θ2)である一つの被駆動片74と、駆動ギヤ90の内側面(回転部材との対向面)に設けられて被駆動片74に対して相対的に回転移動する過程で所定のタイミングで直接的に被駆動片を周方向(正転方向)へ押圧することにより回転部材70を所定のタイミングで回転駆動する軸方向視がC字状の突起(突条)としての駆動片92と、を備える。回転部材70と駆動ギヤ90との位置関係は、被駆動片74が駆動片92のギャップG内に常時嵌合するように設定されている。
また、上記の不正行為の成否は、周方向遊び角度θ3のみにより決定される訳ではなく、開閉部材が非初期回転姿勢にある時の停止位置(停止角度)との関係で決定される。つまり、後述するように開閉部材が非初期回転姿勢にある時の停止位置と周方向遊び角度θ3との間には密接な関係がある。従って、周方向遊び角度が40度という数値は、待機状態において非初期回転姿勢にある開閉部材の停止位置(停止角度)が所定位置(所定角度)にある場合にあることを前提としての一例に過ぎない。
図示した駆動片92は円筒状の突起(突条)の側壁の一部を切り欠いたC字形状となっており、駆動ギヤが正転(時計回り方向へ回転)する場合には一方の内壁(正転用内壁)92aが被駆動片74を押圧し、逆転する場合は他方の内壁(逆転用内壁)92bが被駆動片を押圧する。
しかし、これは一例に過ぎず、図9の変形例に示すように駆動片92をC字状に構成せず、駆動ギヤ90の内面に、内壁92a、92bに相当する2つの突起92a`、92b`を所定の周方向ギャップGを介して対向配置するように突設してもよい。
なお、駆動部材90としては、駆動ギヤに代えてプーリを用いても良い。
図11の制御手段のブロック図に示すように、制御手段200の各入力端子には、入口センサ14、光識別センサ18、出口センサ30、及びホーム位置(初期回転姿勢)検知用センサ160が接続される。制御手段200の各出力端子には、搬送モータ35、不正防止用モータ120、及び警報機110が接続される。制御手段200は、ホーム位置検知用センサ160が検知するホームアウトからホームインまでの所要時間についての情報に基づいて不正防止用モータ120の回転速度の変化の有無を判定することができる。即ち、制御手段は異常判定条件のタイムアウト、即ち、開閉部材50をn回転させた時のホームアウトからホームインまでの全所要時間が設定基準時間よりも遅いか否かのみを監視する。
なお、非初期回転姿勢では、図2(b)、図3(e)(f)等に示すように、ガイドスリットの2つの端部開口52A、52Bが搬送経路10の端部開口10A、10Bと完全に遮断されている完全な非連通状態となることが好ましい。開閉部材が初期回転姿勢から外れた姿勢にあったとしても、ガイドスリットの両端部開口が搬送経路10の端部開口と完全に遮断されておらずに多少連通がある場合には、不完全な連通状態によって形成される僅かな隙間を利用して不正手段をガイドスリット内部に挿通させる等の不正行為が可能となることがある。その意味でガイドスリットの両端開口部が搬送経路10と少しでも連通している等の原因により構造上不正手段を僅かな隙間から差し込むことによる不正が可能となるような非初期回転姿勢は好ましくない。
なお、図2(b)は開閉部材50を図2(c)の初期回転姿勢から40度正転させた状態を示しており、図3(f)は90度、図4(g)は180度、(h)は235度、正転させた状態を夫々示している。
ギヤ機構130を構成する2つのギヤをウォームとウォームホイールとから成るウォームギヤとすることにより、不正防止用モータが停止している期間中に負荷側からの駆動により駆動ギヤを正転、及び逆回転させることが共に不可能となる。
これを言い換えれば、前記した不正行為の成否を決める条件である「待機時に開閉部材が非初期回転姿勢から初期回転姿勢に至るまでの角度」≦「周方向遊びθ3」が満たされることにより、ガイドスリット52と搬送経路10とが連通状態(完全連通のみならず、部分的な連通状態を含む)となる。
つまり、開閉部材が非初期回転姿勢にある時の停止位置(停止角度)と周方向遊び角度θ3とは切っても切れない関係であり、周方向遊び角度が40度という数値は非初期回転姿勢が所定の停止角度にあることを前提としての数値である。
一方、ギヤ機構130の駆動力伝達経路内にウォームギヤを介在させない場合には、駆動ギヤは正逆回転可能な状態にある。このため、外部からの操作により開閉部材は正逆転が自由となり、非初期回転姿勢にある開閉部材を初期回転姿勢に移行させる不正行為が更に容易となる。
なお、追従部材としての回転自在なローラ142は一例に過ぎず、摩擦抵抗が少ないために回転部材外周縁をスムーズに移動できる部材であれば、回転しない構成としてもよい。
これを言い換えれば、ローラ142が凹陥部72に嵌合する際には、レバー付勢部材146の力により回転部材70はそれまで駆動ギヤにより駆動されていた時の回転速度よりも急に増速するため、被駆動片74と内壁92aとの間には周方向に減速区間としてのギャップg1(図4(i))が形成される。
開閉部材50が停止した時点における被駆動片74と駆動片の内壁92aとの間の周方向ギャップg1が駆動ギヤの正転時における減速区間となる。即ち、図4(i)に示すようにローラが凹陥部に完全に落ち込んだ時点でホーム位置検知用センサ160がレバーの被検知部144cを検知することにより制御手段200が不正防止用モータ120の駆動を停止させる。このため、ローラによって係止されることにより回転部材70が初期回転姿勢にて停止した時点では、被駆動片74に対して駆動ギヤ90(駆動片の内壁92a)は減速区間g1の距離(角度θ11)だけ離間した位置にあり、被駆動片74と衝突してオーバーランさせることがない。また、回転部材の停止後、駆動ギヤ90は、不正防止用モータの慣性(自らの余勢)により減速区間g1の範囲内で回転移動を続ける。
つまり、不正防止用モータ120の停止により回転部材70の回転が停止した後で駆動片の内壁92aが減速区間内を単独で回転移動する期間中、ローラによって係止された回転部材70は初期回転姿勢での停止状態を維持し続けることができる。また、内壁92aが減速区間内を被駆動片74に向けて移動する過程で駆動ギヤ90の慣性力が減少して減速するため、被駆動片74と衝突してオーバーランを発生させる可能性が少なくなる。仮に、減速区間内を移動してきた内壁92aが被駆動片と接触したとしても被駆動片をオーバーランさせる余勢がなくなっていれば、開閉部材は初期回転姿勢での停止状態を維持し続けることができる。このため、ガイドスリット52が搬送経路を開放する初期回転姿勢となるように開閉部材50が位置決めされる。
なお、「遊び角度θ3」≧「ホームポジションでのブレーキ時に発生するギャップg1の角度θ11」であればオーバーランせずにホームポジションで停止可能である。
本発明者は、オーバーランを阻止しつつ、待機姿勢にある開閉部材を不正に回転させる行為を阻止するためには、下記の(1)(2)の条件を満たすことが必要であることを見出した。
(1)駆動ギヤが停止している待機時に開閉部材だけを回転させてガイドスリットと搬送経路とを連通状態にさせないための条件:「待機時に非初期回転姿勢にある開閉部材を初期回転姿勢に移行させるまでに必要とされる回転角度」>「遊び角度θ3」
(2)ホームポジションでオーバーランしないための条件:「遊び角度θ3」≧「ホームブレーキ時のギャップg1の角度θ11」
本発明の実施形態では、各条件(1)(2)のバランスを取って(非初期回転姿勢の停止位置も考慮して)遊び角度θ3を40°としている。
これを更に詳細に説明すると、開閉部材50の回転動作を迅速にして紙幣搬送装置1の高速化に対応するためには、駆動片92と被駆動片74との周方向遊びθ3をゼロとすることが好ましい。しかし、周方向遊びθ3がゼロであると、ローラ142が凹陥部72に嵌合したタイミングで不正防止用モータ120を停止した時に駆動片が被駆動片を直ちに押圧するためオーバーランが発生する。一方、駆動片92と被駆動片74との間の周方向遊びθ3を、一例として180度以上に設定した場合、ローラの凹陥部への嵌合による不正防止用モータの停止時に回転部材70が駆動ギヤ90に先行して回転することにより広い減速区間を確保できる。減速区間を大きくすることにより、より余裕をもった減速が可能となり、被駆動片に加わる衝撃を大幅に減殺してオーバーランを防止することができる。一方、これまでは周方向遊びが180度未満である場合には減速効果が低下してオーバーランの発生率が高まると考えられていた。そのような事情から、従来は不正防止用モータの停止時に発生する慣性力が実機間で差異があることも考慮して、大きめに周方向遊びを設定していた。しかし、上記のように周方向遊びが180度を超えると駆動ローラはその大きな角度範囲内で自由に回動できるため、不正手段を用いて開閉部材を簡単に初期回転姿勢に移行させることができるという問題があった。
なお、図7に示した本発明に係る駆動ギヤ90と図8に示した従来の駆動ギヤ90Pとの相違点は駆動片92、92Pの構造の違いのみであるため、駆動ギヤを本発明に係る駆動ギヤ90と交換するだけで既存の不正防止機構を備えた紙幣取扱装置を改良して上記の開閉部材に対する不正操作を防止することができる。
つまり、従来は駆動ギヤに対する開閉部材の自由な回動角度範囲が過大であったため、不正手段を用いて加えられる外力により開閉部材が簡単に回動して初期回転姿勢に移行してしまった。これに対して本発明では駆動ギヤの自由な回動角度範囲を必要最小限に限定する改良を加えたため、開閉部材に対して搬送経路を確実に遮断できるシャッター機能を付与することが可能になった。
このため、開閉部材が非初期回転姿勢で停止している限りは常に、搬送経路とガイドスリットとの連通を遮断(不正防止)することができる。
次に、図2乃至図4により本発明に係る不正防止機構において駆動片が被駆動片を駆動する手順を説明する。
図2(b)の待機状態では、開閉部材50のガイドスリット52は図2(c)に示した初期回転姿勢から時計回り方向へ約40度回動した非初期回転姿勢にあり、ガイドスリットの端部開口52A、52Bが搬送経路10の端部開口10A、10Bと完全な非連通状態にある。この状態は、入口12から挿入されて搬送経路10を搬送されてくる紙幣Pがガイドスリットを通過することを阻止する閉止状態である。この待機状態では不正防止用モータ120は駆動ギヤ90、開閉部材50(回転部材70)を停止させている。また、ギヤ機構130中にウォームギヤ130a`、130b`が組み込まれているために、不正防止用モータが停止した状態で駆動ギヤ90を正転させることも逆転させることもできない(全く回転しない)。
図2(c)の状態では、駆動ギヤの駆動片92(内壁92a)は被駆動片74との間にギャップg1(減速区間、角度θ11)を介して離間した状態で停止している。また、他の内壁92bは被駆動片74との間にギャップg2(角度θ12)を介して離間している。
光識別センサ18を通過した一枚の紙幣の後端がガイドスリット52、出口32を順次通過したことが通紙センサ22、26、出口センサ30により検知されると、紙幣に固定された引き戻し用の紐などを絡めるために開閉部材50を正転方向に所要回数だけ回転させるべく、駆動ギヤを正転方向に回転させる。
駆動ギヤ90の回転初期においては、図3(d)に示すように駆動片の内壁92aが被駆動片74と接触するためにギャップg1が無くなる。続いて内壁92aが回転部材(被駆動片74)を押圧開始すると、図3(e)のようにローラ142が凹陥部72を離脱し(ホームアウトし)、外周73上に移行して行く(図3(f)、図4(g))。
その後もローラ142は回転部材の外周に沿って相対移動し、図4(h)の状態を経て図4(i)に示した凹陥部への嵌合(ホームイン)状態となる。この時、被駆動片74と内壁92aとの間には減速区間としてのギャップg1が形成されており、内壁92aが被駆動片74を押圧して回転部材(開閉部材)をオーバーランさせる可能性を低下させる。
しかし、駆動ギヤのギャップGの周方向角度が過大な場合には上記の不正行為を許すこととなるため、この点の改善が求められていた。
本発明の不正防止機構24では、図2(b)のように開閉部材が非初期回転姿勢で停止している期間における被駆動片と駆動片との周方向遊びθ3(θ1-θ2)の値を、開閉部材を正転させて初期回転姿勢に移行させることを阻止し得る値(例えば、40~60度)に設定した。このため、全ての状況下において、非初期回転姿勢にある開閉部材を不正に初期回転姿勢に移行させることを阻止(搬送経路を遮断)できる。このため、回転部材よりも下流側、例えば紙幣収納部に対して外部から不正にアクセスすることを防止できる。
紙幣搬送装置1の待機時に、不正手段を用いて開閉部材を初期回転姿勢に移行させる行為は、駆動ギヤ90の駆動片92と回転部材70の被駆動片74との間の減速区間を形成する周方向遊びが大きければ大きい程、容易になる。特に、駆動片と被駆動片との間の周方向遊び値θ3を、例えば180度以上に設定することにより図10において説明したように開閉部材を初期回転姿勢に移行させることが容易となる。
なお、駆動片と被駆動片との間の周方向遊びの値θ3を不正行為を防止可能にするために必要最小限の値(例えば、40~60度)に設定したとしても、待機時における開閉部材の姿勢、角度によっては開閉部材を回転させてガイドスリットを搬送経路と連通させる不正が行われる可能性は残る。即ち、待機時における開閉部材の姿勢が図2(b)に示すように図2(c)に示した初期回転姿勢に対して時計回り方向へ40度ずれている場合には、この開閉部材を40~60度の周方向遊びを利用して正転させても、ガイドスリットの各端部開口52A、52Bは搬送経路10の各端部開口10A、10Bに連通することができない。また、図3(f)のように開閉部材が初期回転姿勢に対して時計回り方向へ90度ずれている場合には、ガイドスリットの各端部開口52A、52Bを各端部開口10A、10Bと連通させるためには90度正転させる必要がある。このため、周方向遊びθ3が40~60度である場合には、周方向遊びを利用して正転させてもガイドスリットの各端部開口52A、52Bを搬送経路の各端部開口10A、10Bと連通させることができない。
従って、図7に示した本発明に係る駆動片92を備えた駆動ギヤ90を用いた不正防止24においては、図2(b)に示した待機状態における開閉部材の非初期回転姿勢は、駆動片と被駆動片との間の周方向遊びθ3の範囲内で開閉部材を回転させた時にガイドスリットの各端部開口が搬送経路と連通することがないように選定する必要がある。逆に言えば、周方向遊びθ3の範囲内で開閉部材を回転させたときにガイドスリットの端部開口が搬送経路と連通することがなければ、開閉部材はどのような待機状態の姿勢であってもよい。つまり、図2(b)の構成例に示した待機状態における開閉部材の姿勢は、図2(c)の初期回転姿勢から40度正転した角度であるが、これは一例に過ぎない。
以上のように本発明において、外部からの操作により開閉部材を回転させて初期回転姿勢に移行させる不正行為を阻止するためには、周方向遊びθ3の値だけではなく、非初期回転姿勢にある時の開閉部材(ガイドスリット)の角度についても予め適正に設定しておく必要がある。
ステップ101では制御手段(識別制御回路)200は入口12に紙幣が投入されるか否かを検出するために待機している。紙幣が入口12に挿入される前の待機状態では、開閉部材50のガイドスリット52は搬送経路10の上流側の端部開口10Aと下流側の端部開口10Bとを連通させない図2(b)に示す非初期回転姿勢(非連通姿勢)に保持されている。搬送経路10の一端に設けられた入口12に紙幣を投入すると、入口センサ14が紙幣の挿入を検出して制御手段200に出力を送出する。紙幣が入口センサ14を通過した後に不正防止用モータ120が駆動して駆動ギヤ90を所要角度正動方向へ回転させることにより開閉部材を図2(c)に示した初期回転姿勢に移行させる(ステップ103)。
次に、ステップ102において制御手段200は搬送モータ35を駆動して搬送経路10に沿って紙幣を搬送すると共に、ステップ104において光識別センサ18をオンする。
なお、設定基準値による判定においてn回転に要した合計時間を用いるのは一例であり、「1回転に要する時間×n回判定」を用いても良い。
ステップ122において入口センサ14がオフとなったとき、制御手段200は搬送モータ35の駆動を停止(ステップ123)して紙幣の排出を完了(ステップ124)してエンドとなる。
第1の本発明に係る不正防止機構24は、紙葉搬送経路10に設置されて、紙葉に対する不正行為を阻止する手段であって、初期回転姿勢にあるときに紙葉の通過を許容すると共に、該初期回転姿勢から外れた非初期回転姿勢にある時に紙葉の通過を阻止する開閉部材50と、開閉部材と一体回転する回転部材70と、回転部材と対向配置されて該回転部材と相対回転可能に軸支された開閉部材駆動用の駆動部材90と、駆動部材からの駆動力を回転部材に伝達する駆動伝達機構100と、を備え、駆動伝達機構は、回転部材に設けられた被駆動片74と、駆動部材に設けられて被駆動片に対して相対的に回転移動する過程で被駆動片を押圧することにより回転部材を回転駆動する少なくとも一つの駆動片92と、を備え、被駆動片と駆動片との間には、回転を停止している駆動片に対する被駆動片の回転を許容する周方向遊びθ3が設けられており、非初期回転姿勢にある時の開閉部材の角度、及び周方向遊びの値を、開閉部材が非初期回転姿勢で停止している時に外部からの操作により開閉部材を回転させて初期回転姿勢に移行させることを阻止し得るように設定したことを特徴とする。
駆動ギヤの駆動片92と回転部材の被駆動片74との間の周方向遊びがゼロ、又は過小である場合には、非初期回転姿勢にある開閉部材50を不正に回転させて下流側に位置する紙葉収納部に不正にアクセスすることを防止できるメリットがある。
原理的には「遊び角度θ3」≧「ホームポジションでのブレーキ時に発生するギャップg1の角度θ11」という条件が満たされればオーバーランなしでの停止が可能となるが、機差、環境、耐摩耗等の条件により発生するギャップg1のバラツキに対するマージンとして遊び角度を大きめに設定している。このため、周方向遊びが大きいことを利用した上記の不正アクセスの問題が発生する余地があった。
このように従来、周方向遊びの値としてオーバーランを防止しつつ、開閉部材に対する不正なアクセス行為を阻止できる最適な数値は見出されていなかった。
本発明の不正防止機構によれば、紙葉の搬送経路に設けられて回転姿勢を変化させることにより紙幣の通過を許容したり阻止する不正検知、及び防止用の開閉部材を備えた不正防止機構において、開閉部材の停止位置のずれを効果的に防止しつつ、紙葉の受入待機時に開閉部材が不正に初期回転姿勢に姿勢変更させられる不具合を解消することができる。
この紙幣取扱装置によれば、不正防止機構の発揮する不正検知、不正防止効果を発揮することができる。
この紙幣取扱装置によれば、不正防止機構の発揮する不正検知、不正防止効果を発揮することができる。
Claims (4)
- 紙葉搬送経路に設置されて、紙葉に対する不正行為を阻止する不正防止機構であって、
初期回転姿勢にあるときに前記紙葉の通過を許容すると共に、該初期回転姿勢から外れた非初期回転姿勢にある時に前記紙葉の通過を阻止する開閉部材と、
前記開閉部材と一体回転する回転部材と、
前記回転部材と対向配置されて該回転部材と相対回転可能に軸支された開閉部材駆動用の駆動部材と、
前記駆動部材からの駆動力を前記回転部材に伝達する駆動伝達機構と、を備え、
前記駆動伝達機構は、
前記回転部材に設けられた被駆動片と、前記駆動部材に設けられて前記被駆動片に対して相対的に回転移動する過程で前記被駆動片を押圧することにより前記回転部材を回転駆動する駆動片と、を備え、
前記被駆動片と前記駆動片との間には、回転を停止している前記駆動片に対する前記被駆動片の回転を許容する周方向遊びが設けられており、
前記開閉部材が待機時に非初期回転姿勢で停止している時の前記開閉部材の角度、及び前記周方向遊びの値を、外部からの操作により前記開閉部材を回転させて前記初期回転姿勢に移行させることを阻止し得るように設定したことを特徴とする不正防止機構。 - 前記駆動部材と該駆動部材を駆動する不正防止用モータとの間にはギヤ機構が配置されており、前記ギヤ機構を構成する2つのギヤをウォームとウォームホイールとから成るウォームギヤとすることにより、前記不正防止用モータが停止している期間中に外部からの操作により前記駆動部材を正転、及び逆回転させることを阻止することを特徴とする請求項1に記載の不正防止機構。
- 請求項1又は2に記載の不正防止機構を備えたことを特徴とする紙葉搬送装置。
- 請求項3に記載の紙葉搬送装置を備えたことを特徴とする紙葉取扱装置。
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