JP7083274B2 - 水処理方法および水処理装置 - Google Patents
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無機凝集剤を添加した被処理水を攪拌槽内で攪拌する工程であって、該被処理水の攪拌槽における滞留時間を1分以上とする工程と、
前記撹拌槽から抜き出された被処理水に、カチオン系高分子凝集剤を添加する工程と、
カチオン系高分子凝集剤が添加された被処理水に、アニオン系高分子凝集剤を添加する工程と、
沈殿槽において、アニオン系高分子凝集剤が添加された被処理水から、固液分離によって凝集フロックを分離する工程と
を含む、水処理方法が提供される。
無機凝集剤を添加した被処理水を槽内で攪拌する攪拌槽であって、該被処理水の滞留時間が1分以上となるよう構成された攪拌槽と、
前記撹拌槽から排出された被処理水に、カチオン系高分子凝集剤を添加する手段と、
カチオン系高分子凝集剤が添加された被処理水に、アニオン系高分子凝集剤を添加する手段と、
アニオン系高分子凝集剤が添加された被処理水から、固液分離によって凝集フロックを分離する沈殿槽と
を含む、水処理装置が提供される。
工程1:無機凝集剤を添加した被処理水を攪拌槽内で攪拌する工程であって、該被処理水の攪拌槽における滞留時間を1分以上とする工程。
工程2:前記撹拌槽から抜き出された被処理水に、カチオン系高分子凝集剤を添加する工程。
工程3:カチオン系高分子凝集剤が添加された被処理水に、アニオン系高分子凝集剤を添加する工程。
工程4:沈殿槽において、アニオン系高分子凝集剤が添加された被処理水から、固液分離によって凝集フロックを分離する工程。
水処理装置に供給する被処理水(原水)については、特に制限はなく、凝集沈殿の分野で公知の原水を、適宜使用できる。原水として、例えば、電子産業等でのエッチング工程で排出されるフッ素含有排水、めっき工場のめっき排水、発電所の排煙脱硫排水、工場から排出されるボイラーブロー排水や、染色工場の染色排水などの排水が挙げられる。
無機凝集剤としては、硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウム(PAC)などのアルミニウム塩、塩化第二鉄やポリ硫酸第二鉄などの第二鉄塩の酸性溶液など、凝集沈殿の分野で公知の無機凝集剤を使用できる。
カチオン系高分子凝集剤は、凝集沈殿の分野で公知のものを適宜使用することができる。カチオン系高分子凝集剤を構成するカチオン性モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート・塩化メチル四級塩(DAA)、ジメチルアミノエチルメタアクリレート塩化メチル4級塩(DAM)が挙げられる。ノニオン性モノマーとしては、例えばアクリルアミドを挙げることができる。
アニオン系高分子凝集剤は、凝集沈殿の分野で公知のものを適宜使用することができる。アニオン系高分子凝集剤として、アニオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体からなるものを用いることができる。アニオン性モノマーは、例えば、アクリル酸である。ノニオン性モノマーは、例えば、アクリルアミドである。
沈殿槽として、凝集沈殿の分野で公知の沈殿槽を使用することができる。例えば被処理水が沈殿槽内に流入する前に凝集反応を完了させ、その後に沈殿槽に流入させるタイプの沈殿槽がある。また、沈殿槽内で凝集及び沈殿を行うタイプの沈殿槽がある。後者のタイプの沈殿槽として、特に、沈殿槽内で緩速攪拌を行うための攪拌翼を備え、沈殿槽内で凝集及び造粒操作を行う沈殿槽がある。沈殿槽で凝集と造粒を行う沈殿槽では、沈殿槽内で高密度で沈降速度の高い凝集物を形成できるため、より高い流速で水処理を行うことができる。
無機凝集剤、カチオン系高分子凝集剤及びアニオン系高分子凝集剤は、この順に被処理水に添加される。したがって、工程1は、カチオン系高分子凝集剤及びアニオン系高分子凝集剤を添加する前(工程2の前、かつ工程3の前)に行う。また、工程2は、アニオン系高分子凝集剤を添加する前(工程3の前)に行う。
以下、工程1で用いる攪拌槽を、「無機凝集剤反応槽」あるいは「反応槽」と呼ぶことがある。反応槽10に、ラインL1から原水が供給される。原水を他の処理に付した後に、反応槽10に供給することもできる。他の処理は、例えば、原水に溶解しているフッ素や金属などのイオンから懸濁物質を形成する処理である。
反応槽10から抜き出された被処理水は、ラインL2を経て、後段の一次凝集槽20に送られる。一次凝集槽20は、必要に応じて攪拌機21を備えた槽である。一次凝集槽ではカチオン系高分子凝集剤のノニオン鎖と無機凝集剤由来の微細フロックが水素結合によって結合し、フロックの粗大化が行われる。一次凝集槽における攪拌強度G値は、フロックの破壊を抑えるために、反応槽におけるG値より小さくてもよい。あるいは、後にアニオン系高分子凝集剤を添加し更にフロックの粗大化を行うため、一次凝集槽におけるG値は、反応槽と同様に高くてもよい。そのため一次凝集槽20における攪拌強度G値は10~500s-1とするのが好ましい。
一次凝集槽20からラインL3に抜き出した被処理水には、ラインL9からアニオン系高分子凝集剤が添加される。沈殿槽30への被処理水供給流路(ラインL3)において、アニオン系高分子凝集剤の添加を行うことができる。この場合、ラインL9をラインL3に接続する。あるいは、沈殿槽30において、アニオン系高分子凝集剤の添加を行うことができる。この場合、例えば、センターウェルを備える沈殿槽(不図示)を沈殿槽30として用い、ラインL9からセンターウェル内の被処理水にアニオン系高分子凝集剤を添加することができる。
アニオン系高分子凝集剤が添加された被処理水から、固液分離によって凝集フロックを分離するために、沈殿槽30を用いる。アニオン系高分子凝集剤が添加された被処理水は、ラインL3を経て(あるいは沈殿槽内のセンターウェルを経て)、沈殿槽30に、その下部もしくは底部から流入する。被処理水の上昇流によって、スラッジブランケットZ1が形成される。本例における沈殿槽30は造粒型の沈殿槽であり、この沈殿槽においては、アニオン系高分子凝集剤が添加された被処理水を沈殿槽内で撹拌することによって凝集と造粒を行い、ペレット状汚泥でスラッジブランケット(ペレットブランケット)Z1を形成させる。この攪拌のために、沈殿槽30には、モータMによって駆動される被処理水攪拌用の攪拌機31が設けられる。スラッジブランケットZ1の上に、清澄水の層Z2が形成される。清澄水層Z2から、清澄水が、処理水としてラインL4に排出される。このようにして、凝集フロック(ペレット状汚泥)が、固液分離によって、清澄水から分離される。
<実施例A1~A4>
図1に示す構成を有する水処理装置を用いて連続通水試験を実施した。すなわちPACとカチオン系高分子凝集剤は別々の槽で添加した。試験条件は次のとおりとした。
原水:カオリン模擬排水(カオリンを濃度100mg/Lで含む。模擬排水作成用の水は地下水をろ過したものを使用した。導電率:0.3mS/cm)。
反応槽及び一次凝集槽の容量:それぞれ23.8L。
反応槽及び一次凝集槽における攪拌強度G値:それぞれ105s-1。
原水通水量:
・実施例A1:40L/h(沈殿槽通水LV(線速度):5m/h、反応槽及び一次凝集槽における滞留時間:それぞれ36.4分)。
・実施例A2:80L/h(沈殿槽通水LV:10m/h、反応槽及び一次凝集槽における滞留時間:それぞれ18.2分)。
・実施例A3:120L/h(沈殿槽通水LV:15m/h、反応槽及び一次凝集槽における滞留時間:それぞれ12.1分)。
・実施例A4:240L/h(沈殿槽通水LV:30m/h、反応槽及び一次凝集槽における滞留時間:それぞれ6.1分)。
PAC添加量(添加後の被処理水中の濃度):120mg/L。
カチオン系高分子凝集剤添加量(添加後の被処理水中の濃度):0.5mg/L。
カチオン系高分子凝集剤のカチオン基比率:8モル%。
アニオン系高分子凝集剤添加量(添加後の被処理水中の濃度):1.0mg/L。
アニオン系高分子凝集剤のアニオン基比率:4モル%。
沈殿槽径:φ(直径)100mm。
図2に示す水処理装置を用いて連続通水試験を実施した。この水処理装置は、実施例A1で用いた水処理装置に次の改造を加えたものである。すなわち、原水を、ラインL2から供給した。また、PAC供給ラインL6とアルカリ供給ラインL7を、一次凝集槽20に接続した。反応槽10は用いなかった。
同時添加(比較例A4)の場合の汚泥濃度:2.4質量%。
別添加(実施例A4)の場合の汚泥濃度:3.5質量%。
本試験では、工程1の滞留時間の影響について調査した。実施例A1で用いた水処理装置を用いた。ただし無機凝集剤反応槽10の大きさを変更することによって、この槽における滞留時間、すなわち工程1の滞留時間を変化させた。沈殿槽30の通水LVは30m/hとした。実施例B1~B2においては、それぞれ工程1の滞留時間を1(反応槽容量4L)、2(反応槽容量8L)分とした。比較例B1においては、工程1の滞留時間を0.5分(反応槽容量2L)とした。本試験では一次凝集槽の滞留時間は全て6.1分とした。
<実施例C1及び比較例C1>
大型の水処理装置を用いて、連続通水試験を行った。実施例C1及び比較例C1では、それぞれ実施例A1及び比較例A1で使用した水処理装置と同様の構成を有するが、より大型の水処理装置を用いた。試験条件は次のとおりである。
原水:カオリン模擬排水(カオリンを濃度100mg/Lで含む。模擬排水作成用の水は地下水をろ過したものを使用した)。
原水通水量:19m3/h(沈殿槽通水LV:20m/h、反応槽及び一次凝集槽における滞留時間:それぞれ3.2分)。
反応槽及び一次凝集槽の容量:それぞれ1000L。
反応槽及び一次凝集槽における攪拌強度G値:387s-1。
PAC添加量(添加後の被処理水中の濃度):120mg/L。
カチオン系高分子凝集剤添加量(添加後の被処理水中の濃度):0.5mg/L。
カチオン系高分子凝集剤のカチオン基比率:8モル%。
アニオン系高分子凝集剤添加量(添加後の被処理水中の濃度):1.0mg/L。
アニオン系高分子凝集剤のアニオン基比率:4モル%。
沈殿槽径:φ1100mm。
実施例C1:1.8mg/L。
比較例C1:5.2mg/L。
実施例C2及び比較例C2においてそれぞれ、カチオン系高分子凝集剤としてカチオン基比率が3モル%のカチオン系高分子凝集剤を用いたこと以外は、実施例C1及び比較例C1と同様にして、連続通水試験を行って、得られた処理水のSS濃度を測定した。結果は次の通りであった。
実施例C2:1.2mg/L。
比較例C2:4.3mg/L。
原水の種類を変えた場合の水処理性能について調査した。原水としては、フッ素含有水を用いた。
実施例D1及びD2では、実施例A1で用いた水処理装置を、次のように改造して用いた。すなわち、反応槽10の上流側に、攪拌機を備える槽(不図示)を追加した。この槽に原水を供給した。またこの槽において、Ca(OH)2(消石灰水溶液)とHCl(塩酸)を原水に添加して、攪拌した。この槽から、難溶性のフッ素化合物(CaF2)を懸濁物質として含む被処理水を抜き出し、この被処理水をラインL1に供給した。
試験条件は次のとおりである。
原水:フッ素含有模擬排水(フッ素を濃度520mg/L、その他多数イオン類を含む水。導電率3.6mS/cm)。
原水通水量:表1に示す。
反応槽、一次凝集槽容量:23.8L。
反応槽、一次凝集槽攪拌強度G値:105s-1。
PAC添加量(添加後の被処理水中の濃度):700mg/L。
カチオン系高分子凝集剤添加量(添加後の被処理水中の濃度):表1に示す。
カチオン系高分子凝集剤カチオン基比率:8モル%。
アニオン系高分子凝集剤添加量(添加後の被処理水中の濃度):表1に示す。
アニオン系高分子凝集剤アニオン基比率:4モル%。
沈殿槽径:φ100mm。
以下の手順にてジャーテストを行い、凝集物の大きさを調べた。
原水として、実施例A1で用いたものと同じ原水を用いた。ビーカーに原水500mLを入れ、そこに無機凝集剤(PAC)を120mg/Lの濃度になるように添加し、NaOHにてpH7に調整し、150rpmで5分急速撹拌を実施した。続いて、カチオン系高分子凝集剤を0.5mg/Lの濃度になるように添加し、150rpmで1分急速撹拌を実施した。続いてアニオン系高分子凝集剤を1mg/Lの濃度になるように添加し、150rpmの急速撹拌を1分行った後、40rpmの緩速撹拌を3分実施した。
カチオン系高分子凝集剤の添加後、アニオン系高分子凝集剤の添加前の急速撹拌時間を2分にしたこと以外はジャーテストE1と同様の試験を行った。
無機凝集剤添加後の急速撹拌(5分)まではジャーテストE1と同様の操作を行った。続いて、カチオン系高分子凝集剤とアニオン系高分子凝集剤を同時に添加し、150rpmの急速撹拌を1分行った後、40rpmの緩速撹拌を5分実施した。
カチオン系高分子凝集剤の添加後、アニオン系高分子凝集剤の添加前の急速撹拌時間を30秒にしたこと以外はジャーテストE1と同様の試験を行った。
Claims (11)
- 無機凝集剤を添加した被処理水を攪拌槽内で攪拌する工程であって、該被処理水の攪拌槽における滞留時間を1分以上とする工程と、
前記撹拌槽から抜き出された被処理水に、カチオン系高分子凝集剤を添加する工程と、
カチオン系高分子凝集剤が添加された被処理水に、アニオン系高分子凝集剤を添加する工程と、
沈殿槽において、アニオン系高分子凝集剤が添加された被処理水から、固液分離によって凝集フロックを分離する工程と、を含み
前記無機凝集剤が、アルミニウム塩および第二鉄塩からなる群より選択される少なくとも1種である、
水処理方法。 - 前記アルミニウム塩が、硫酸アルミニウムおよびポリ塩化アルミニウム(PAC)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の水処理方法。
- 前記第二鉄塩が、塩基第二鉄およびポリ硫酸第二鉄からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の水処理方法。
- カチオン系高分子凝集剤を添加してから、アニオン系高分子凝集剤を添加するまでの、被処理水の滞留時間を1分以上とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理方法。
- 前記沈殿槽への被処理水の供給流路または前記沈殿槽において、前記アニオン系高分子凝集剤の添加を行い、
前記アニオン系高分子凝集剤が添加された被処理水を沈殿槽内で撹拌することによって造粒を行い、ペレット状汚泥でスラッジブランケットを形成させる、請求項1~4のいずれか1項に記載の水処理方法。 - 前記スラッジブランケットを形成するペレット状汚泥の一部を別の槽に移し、該別の槽において沈降させて濃縮する、請求項5に記載の水処理方法。
- 前記沈殿槽における通水線速度が5m/h以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の水処理方法。
- 前記沈殿槽における通水線速度が10m/h以上である、請求項7に記載の水処理方法。
- 無機凝集剤を添加した被処理水を槽内で攪拌する攪拌槽であって、該被処理水の滞留時間が1分以上となるよう構成された攪拌槽と、
前記撹拌槽から排出された被処理水に、カチオン系高分子凝集剤を添加する手段と、
カチオン系高分子凝集剤が添加された被処理水に、アニオン系高分子凝集剤を添加する手段と、
アニオン系高分子凝集剤が添加された被処理水から、固液分離によって凝集フロックを分離する沈殿槽と、を含み
前記無機凝集剤が、アルミニウム塩および第二鉄塩からなる群より選択される少なくとも1種である、
水処理装置。 - 前記アルミニウム塩が、硫酸アルミニウムおよびポリ塩化アルミニウム(PAC)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の水処理装置。
- 前記第二鉄塩が、塩基第二鉄およびポリ硫酸第二鉄からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の水処理装置。
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