JP7083148B2 - 導電性塗料、および導電性皮膜 - Google Patents

導電性塗料、および導電性皮膜 Download PDF

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Description

本発明は、伸縮性に優れた導電性皮膜、およびその皮膜を形成することが可能な導電性塗料に関する。
近年、ウェアラブルデバイス、フレキシブルプリント基板やディスプレイなどの柔軟性や伸縮性を必要とするデバイスの普及に向けた取り組みが活発化している。それらデバイスでは、柔軟性や伸縮性を有する基材に、伸縮性を有する導電膜を印刷などによって必要なパターンに形成した回路基板やセンサーなどを用いる技術が注目されている。
柔軟性や伸縮性を有する基材としては、柔軟性の観点からシリコーン樹脂基材、柔軟性とコストの観点からポリウレタン樹脂基材が多く用いられており、化学的安定性やコストの観点からポリオレフィン樹脂基材への適応が期待されている。
伸縮性を有する導電膜としては、伸縮性を有するバインダーに導電材を含有した塗料を応用する技術が多く提案されている。例えば、特許文献1には硫黄で架橋(加硫)されたゴム成分に導電材を含有する導電性ペーストが、特許文献2には水酸基を含有する樹脂およびシラノール系架橋剤に導電材を含有する導電性ペーストが、特許文献3にはウレタン樹脂に導電材を含有する導電性ペーストが、それぞれ提案されている。
再表2015/005204号公報 特開2016-207377号公報 特開2013-131385号公報
しかしながら、特許文献1に記載の硫黄で架橋された加硫ゴムのバインダーは、ゴムを架橋(加硫)させて皮膜を形成する際に150℃程度の高温処理を行うことから、例えばポリオレフィン樹脂のような低融点の樹脂を基材に用いると、基材が変形する場合があり、適応できる基材樹脂が限定されるものであった。特許文献2においても、皮膜形成時に170℃での乾燥が必要であり、特許文献1同様、適応できる基材が限定的であった。特許文献3に記載の導電ペーストは、ポリオレフィン樹脂基材との密着性に問題があった。これら特許文献1~3に限らず、ポリオレフィン樹脂基材と十分な密着性を有する導電性塗料は、これまで見うけられない。
また、特許文献1~3記載の導電性皮膜は、伸長率80%を超えるような高伸長の状態(伸ばした状態)での導電性や、伸縮率が200%を超えるような伸縮性(伸ばして、元の寸法に戻る特性)および伸縮後の導電性については不十分であり、これらの性能向上が望まれている。さらに、従来の導電性皮膜は、氷点下環境下で伸縮を繰り返した場合に導電性が悪化するといった問題があった。
本発明は上記のような問題に対して、皮膜形成においては150℃程度の高温を必要とせず、ポリオレフィン樹脂基材をはじめとする様々な基材への密着性に優れ、且つ、200%を超えるような高い伸縮性を有しており、高伸長時および伸縮後の導電性に優れ、さらに、氷点下で伸縮を繰り返した場合であっても導電性が低下しない導電性塗料および導電性皮膜を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、バインダー成分として特定の合成ゴムおよび架橋剤を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
酸変性合成ゴム、架橋剤、および導電材を含有することを特徴とする導電性塗料である。また、前記導電性塗料に由来する皮膜であることを特徴とする導電性皮膜である。
本発明の導電性塗料、および導電性皮膜は、皮膜形成の際に低融点の樹脂基材が変形するような高温(例えば、150℃程度)を必要とせず、ポリオレフィン樹脂基材をはじめとする様々な基材への密着性に優れ、且つ、200%を超えるような高い伸縮性を有しており、高伸長時および伸縮後の導電性に優れ、さらに、氷点下環境下で伸縮を繰り返した後の導電性においても優れた保持性を有するものである。また、バインダー成分として液状ゴムを用いた場合は、媒体を含有しない(無溶剤)の導電性塗料を得ることが出来る。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における酸変性合成ゴムは、主成分が合成ゴムであり、共重合成分として不飽和カルボン酸を含有するものである。合成ゴムは、固形とした際にエラストマーとしての性質を有する、人工的に得られる不飽和重合体であり、好適な具体例としては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む)、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸エステルアクリロニトリルコポリマー、アクリル酸エステル2-クロルエチルビニルエーテルコポリマー、クロルスルフォン化ポリエチレンゴム、ポリアルキレン・スルフィドゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ポリ(クロル・トリフルオロエチレン)ゴム、アルフィンゴム、熱可塑性エラストマー(スチレン系、イソプレン系)等が挙げられる。これらは単独でも複数を組み合わせしても構わない。中でも、酸変性のし易さや、基材への密着性、伸縮性の観点から、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴムが好ましく、イソプレンゴムがより好ましい。
イソプレンゴム、ブタジエンゴムは、それぞれ、主鎖が主としてイソプレン又はブタジエンをモノマー成分とするポリマーであればよく、単独重合体であっても、他の不飽和化合物、好ましくはモノオレフィン系不飽和化合物を重合させて得られる共重合体であってもよい。また、一部が水素添加されて飽和結合に変換されていてもよい。主鎖中に占める脂肪族炭化水素(イソプレン、ブタジエン又はそれらの水素添加物)に由来するモノマー単位の割合が80mol%以上であることが好ましい。さらに、イソプレンゴム、ブタジエンゴムはポリマーの主鎖中又は末端が、アミド、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイル基等で変性されていてもよく、エポキシ化されていてもよい。
さらに、イソプレンゴム、ブタジエンゴムは、修飾されていてもよく、例えば、末端に(メタ)アクリロイル基などの反応性基を導入してもよく、また、内部オレフィンの一部が水素添加されていてもよい。共重合体は、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体でも、グラフト共重合体でもよく、特に限定されない。
上記のモノオレフィン系不飽和化合物としては、具体的には、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、イソブテン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
エチレンプロピレンゴムは、共重合成分として少なくともエチレンとプロピレンを含有する共重合ゴムのことである。一般的に、チーグラー触媒を含む炭化水素溶媒中にエチレンとプロピレンの混合ガスを吹き込んで共重合することで得られる。具体的には、エチレンとプロピレンからなるエチレンプロピレンゴム、エチレンとプロピレン以外に、第三成分として少なくとも一種類の非共役ジエンを導入してなるエチレンプロピレンジエンゴムなどが挙げられる。これらは単独で使用されても、または混合物で使用されても構わない。
第三成分としての非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエンまたはこれらの混合物などが挙げられる。
本発明におけるエチレンプロピレン系ゴムの各共重合成分の種類および割合、ムーニー粘度などの特性は特に限定されず、公知のものを用いることができる。また、エチレンプロピレン系ゴムは加硫してあっても未加硫であっても構わない。加硫エチレンプロピレン系ゴムは、一般的に、次の方法で加硫することができる。例えば、エチレンプロピレンゴムの場合は、過酸化物によって加硫することができ、エチレンプロピレンジエンゴムの場合は、過酸化物または硫黄によって加硫することができる。加硫ゴムの場合は加硫促進剤および/または加硫助剤を添加してあっても構わない。
酸変性合成ゴムは、後述する架橋剤との反応性や、基材への密着性の観点から、共重合成分として不飽和カルボン酸成分を含有することが必要である。不飽和カルボン酸成分の好適な具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸などのほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミドなどが挙げられる。中でも、合成ゴムとの共重合のし易さの観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特に(無水)マレイン酸が好ましい。ここで、(無水)マレイン酸とは、マレイン酸または無水マレイン酸を意味する。
不飽和カルボン酸成分の含有量は、酸変性合成ゴムの酸価を測定することで定量出来る。酸変性合成ゴムの酸価としては1~150mgKOH/gの範囲であることが好ましく、その下限としては、2mgKOH/g以上がより好ましく、3mgKOH/g以上が特に好ましく、4mgKOH/g以上がさらに好ましく、5mgKOH/g以上が最も好ましい。その上限としては、130mgKOH/g以下がより好ましく、100mgKOH/g以下が特に好ましく、80mgKOH/g以下がさらに好ましく、50mgKOH/g以下が最も好ましい。酸価が1mgKOH/g未満の場合は、架橋剤との反応性や、基材への密着性が低下する傾向があり。150mgKOH/gを超えると基材への密着性や、伸縮性が悪化する傾向がある。なお、酸変性合成ゴムの酸価(mgKOH/g)は、JISK5407に準じて測定し、求めることが出来る。
不飽和カルボン酸成分は、合成ゴムのモノマー成分と共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
本発明における酸変性合成ゴムの好適な具体例としては、酸変性イソプレンゴム、酸変性ブタジエンゴム、酸変性エチレンプロピレンゴム(酸変性エチレンプロピレンジエンゴムを含む)、酸変性スチレンブタジエンゴム、酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム、酸変性クロロプレンゴム、酸変性イソブチレンイソプレンゴム、酸変性エチレン酢酸ビニルコポリマー、酸変性アクリル酸エステルアクリロニトリルコポリマー、酸変性アクリル酸エステル2-クロルエチルビニルエーテルコポリマー、酸変性クロルスルフォン化ポリエチレンゴム、酸変性ポリアルキレン・スルフィドゴム、酸変性シリコーンゴム、酸変性エピクロルヒドリンゴム、酸変性ポリ(クロル・トリフルオロエチレン)ゴム、酸変性アルフィンゴム、酸変性熱可塑性エラストマー(スチレン系、イソプレン系)等が上げられる。これらは単独でも複数を組み合わせしても構わない。中でも、基材への密着性や伸縮性の観点から、酸変性イソプレンゴム、酸変性ブタジエンゴム、酸変性エチレンプロピレンゴムが好ましく、酸変性イソプレンゴムがより好ましい。
酸変性合成ゴムの数平均分子量は、1000~100000であることが好ましく、2000~70000がより好ましく、3000~50000が特に好ましく、4000~50000がさらに好ましく、5000~50000が最も好ましい。数平均分子量が1000未満であると、得られる皮膜の凝集力が低下し脆くなる傾向にある。一方、数平均分子量が100000を超えると媒体への溶解や分散が困難となり、塗料に加工することが困難になる傾向がある。なお、酸変性合成ゴムの数平均分子量は、GPC分析を用い、ポリスチレン標準試料で作成した検量線から求めることができる。
酸変性合成ゴムは液状ゴムであることが、塗料に加工しやすいため好ましい。さらには、液状ゴムを用いることで、媒体を含有しなくても、塗工性や導電材の分散性が良好な導電性塗料得ることが可能である。液状ゴムとは、媒体を含有しなくても常温で液状のゴムをいう。
次に、本発明における架橋剤について説明する。本発明の架橋剤は酸変性合成ゴムの含有するカルボン酸と反応する官能基を一分子あたりに2つ以上有する化合物のことである。本発明において酸変性合成ゴムは架橋剤によって架橋構造を形成することで、基材への密着性や低温造膜性、皮膜の伸縮性が向上したり、氷点下で伸縮を繰り返した際の導電性の低下が抑制される。架橋剤の好適な具体例としては、多価ヒドラジド化合物、多価アミン化合物、多価エポキシ化合物、多価イソシアネート化合物(ブロック型を含む)、多価オキサゾリン化合物、多価カルボジイミド化合物、多価メラミン化合物などが挙げられる。これらは単独でも複数を組み合わせしても構わない。中でも、低温での皮膜形成性や基材への密着性、伸縮性の観点から、多価ヒドラジド化合物、多価アミン化合物、多価エポキシ化合物、多価イソシアネート化合物が好ましく、多価ヒドラジド化合物、多価エポキシ化合物がより好ましく、多価ヒドラジド化合物が特に好ましい。これら架橋剤は塗料に加工する観点から、水や溶剤などの媒体に溶解性または分散性に優れる物が好ましい。また架橋剤は高分子量であっても低分子量であっても構わない。
多価ヒドラジド化合物は、一分子あたりに2つ以上のヒドラジド基を有する化合物であれば特に限定されず、好適な具体例としては、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、ヘキサデカンジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4’-ビスベンゼンジヒドラジド、1,4-ナフトエ酸ジヒドラジド、ナフタレン-2,6-ジカルボヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン、7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジド等が挙げられる。これらは単独でも複数を組み合わせしても構わない。中でも、低温での皮膜形成性や基材への密着性、伸縮性の観点から、アジピン酸ジヒドラジド、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン、7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジドが好ましく、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントインがより好ましい。また、媒体に溶剤系媒体を採用した場合は溶剤溶解性能観点でも、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントインが好ましい。
多価エポキシ化合物は、一分子あたりに2つ以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、好適な具体例としては、ポリエチレングリコール、グリセリン及びその誘導体、ソルビトール等の多価水酸基化合物の水酸基の一部をグリシジル基にしたものやノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、共重合型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは単独でも複数を組み合わせしても構わない。
導電性塗料の架橋剤の含有量としては、酸変性合成ゴム100質量部に対して、0.1~30質量部の範囲であることが好ましく、その下限としては、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上が特に好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましい。その上限としては、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。0.1質量部未満場合は、架橋の効果が十分ではなく、30質量部を超えた場合は、架橋の効果が向上せずコスト的に不利であり、さらには基材との密着性が悪化する傾向がある。
次に、本発明における導電材について説明する。本発明の導電材は、皮膜において導電性を有するものである。導電材の好適な具体例は、Ag,Cu,Sn、Pb、Ni、Li、Bi、In、Alそれらの合金等の金属粒子、ZnO,SnO,In、Al、CuI、TiO/SnO・Sbドープ等の金属酸化物粒子、Al,Ni,ステンレス等の金属繊維、金属表面コーティングガラスビーズ、金属メッキカーボン等が挙げられる。また、ケッチェンブラックやバルカン等のファーネスブラック、アセチレンブラック,サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、アモルファスカーボン粒子、天然黒鉛粒子、人造黒鉛粒子、膨張黒鉛粒子、ピッチマイクロビーズ、カーボンファイバ等の気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ等のカーボン系微粒子等が挙げられる。これらは単独でも構わないし、造膜性や、皮膜とした際の導電性、塗料への加工性、塗料の特性、皮膜特性、皮膜を伸縮させた場合の導電性など考慮して複数を組み合わせしても構わない。中でも導電性や塗料への加工性、伸縮に対する追従性の観点から、金属粒子、金属酸化物粒子が好ましく、金属粒子がより好ましく、金属粒子の中でも銀粒子が特に好ましい。導電材における粒子の形状は、例えば球状、針状、楕円球状、フレーク状、鱗片状、不定形状等挙げられ、特に限定はされない。
導電材の平均粒子径は、造膜性や、皮膜とした際の導電性、塗料への加工性、塗料の特性の観点から0.01~500μmの範囲が好ましく、その下限としては、0.02μm以上がより好ましく、0.05μm以上が特に好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、0.5μm以上が最も好ましい。その上限としては、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが特に好ましく、10μm以下であることがさらに好ましく、5μm以下であることが最も好ましい。平均粒子径が上記好ましい範囲を外れた場合は、皮膜とした場合の導電性や皮膜を伸縮させた場合の導電性が低下する傾向がある。導電材は、造膜性や、皮膜とした際の導電性、塗料への加工性、塗料の特性、皮膜特性、皮膜を伸縮させた場合の導電性など考慮して、平均粒子径の異なったものを複数組み合わせしても構わない。
導電材は、塗料や皮膜とした場合の分散性や導電性など、使用する用途で必要とする性能を向上させるために、表面処理がされていることが好ましい。表面処理としては特に限定されないが、導電性の観点から有機酸、有機酸塩、界面活性剤およびシランカップリング剤による表面処理が好ましく、有機酸を用いるのがより好ましく、中でも脂肪酸を用いるのが特に好ましい。これらの表面処理材は、単独で用いても複数を組み合わせて用いても構わない。
脂肪酸の好適な具体例としては、ヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、安息香酸、グルコン酸、桂皮酸、サリチル酸、没食子酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、アラキン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、2-ペンチルノナン酸、2-ヘキシルデカン酸、2-ヘプチルドデカン酸、イソステアリン酸、パルミトレイン酸、イソオレイン酸、エライジン酸、リシノール酸、ガドレン酸、エルカ酸、セラコレイン酸等の一塩基酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、リンゴ酸、フタル酸、フマル酸等の二塩基酸などが挙げられる。これらは単独で用いても複数を組み合わせて用いても構わない。
導電材の表面処理に用いるシランカップリング剤としては、一つの分子中に、加水分解によりヒドロキシ基となって無機材料と化学結合しやすい反応基(加水分解性基)と、有機材料と化学結合しやすい反応基(反応性官能基)の両方を併せ持つ有機ケイ素化合物が好ましく、例えば、一般式Q-(CH)s-Si(OR)で表される。Qは有機官能基であり、sは1~3の数を表し、Rはメチル基またはエチル基を表す。Qの有機官能基としては、エポキシ基、ビニル基、メタクリル基、アミノ基、メルカプト基等が挙げられる。
導電性塗料の導電材の含有量としては、酸変性合成ゴム100質量部に対して、50~9900質量部であること好ましく、その下限としては、100質量部以上がより好ましく、200質量部以上が特に好ましく、500質量部以上がさらに好ましく、900質量部以上が最も好ましい。その上限としては、4900質量部以下であることがより好ましく、3200質量部以下であることが特に好ましく、2400質量部以下であることがさらに好ましい。導電材の含有量が50質量部未満の場合は導電性が低下する傾向にあり、9900質量部を超えた場合は、造膜性や膜特性が悪化する傾向がある。
本発明の導電性塗料は、酸変性合成ゴム、架橋剤、導電材などの分散性や粘度調整、塗工性や濡れ性などの観点から媒体を含有していることが好ましい。媒体は、酸変性合成ゴム、架橋剤、導電材など塗料に含まれる成分を溶解および/または分散することができる液体のことである。但し、酸変性合成ゴムの液状ゴム、液状の架橋剤(媒体を含有せずとも液状である架橋剤)、液状の導電材(媒体を含有せずとも液状である導電材)は媒体には含まれない。媒体は、造膜性の観点から、揮発性の液体であることが好ましい。室温での沸点は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、120℃以下が特に好ましく、100℃以下がさらに好ましく、80℃以下が最も好ましい。
また、媒体としては、水系媒体と溶剤系媒体が挙げられる。これらは、塗料への加工性や塗料の特性、造膜性、環境保全の観点など使用時の性能や目的を考慮して適宜選択すればよいが、一般的に、塗料への加工性や造膜性など観点からは溶剤系媒体が好ましく、環境保全や衛生性などの観点からは水系媒体が好ましい。
水系媒体とは、水を含有する媒体のことであり、塗料の特性や性能を向上させるために水以外に溶剤を含有していても構わない。媒体中の水の含有量は特に限定されないが、環境保全の観点からは、媒体100質量%に対して、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上が特に好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、100質量%が最も好ましい。
水系媒体に含有される溶剤としては、塗料としての特性を考慮して適宜選択でき、特に限定されないが塗料の安定性などの観点から水溶性の溶剤が好ましい。水系媒体に含有される溶剤の好適な具体例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-sec-ブチル、酢酸-3-メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル、1,2-ジメチルグリセリン、1,3-ジメチルグリセリン、トリメチルグリセリン等が挙げられる。これらは単独でも複数を組み合わせしても構わない。
中でも、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどが分散性や揮発性などの観点から好ましい。
溶剤系媒体とは、水以外の溶剤からなる媒体のことである。但し、水は媒体の原料として積極的に添加していないことを意味し、不純物や生成物として微量の水が含まれていても構わない。溶剤系媒体中の水の含有量としては、5質量%未満が好ましく、3質量%未満がより好ましく、2質量%未満が特に好ましく、1質量%未満がさらに好ましく、0.5質量%未満が最も好ましい。5質量%を超える場合は、溶剤系媒体とは定義し難い。
溶剤系媒体における溶剤としては、塗料としての特性を考慮し適宜選択でき、特に限定されないが酸変性合成ゴムの溶解性に優れるものが好ましい。溶剤系媒体における溶剤の好適な具体例としては、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、シクロヘキサン、ソルベッソなどの炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールなどのアルコール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ノルマルブチルなどのエステル系溶剤;セロソルブアセテート、メトキシアセテートなどのアセテート系溶剤、塩化メチレン、クロロホルムなどの塩素系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系溶剤、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。これらは単独でも複数を組み合わせしても構わない。
中でも、揮発性や酸変性合成ゴムや架橋剤の溶解性の観点から、トルエン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、酢酸エチルなどが好ましい。
導電性塗料中の媒体の含有量は、特に限定されないが、酸変性合成ゴム、架橋剤、導電材など塗料に含まれる成分を溶解性、分散性などの塗料の特性や造膜性などの観点から、導電性塗料100質量%に対して、0~95質量%の範囲が好ましく、その下限としては、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。その上限としては、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が特に好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下が最も好ましい。
導電性塗料には、本発明の効果を損ねない範囲で、酸変性合成ゴム、架橋剤、導電材、媒体以外の材料(「その他材料」と示すことがある)を含有していても構わない。その他材料としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、酸変性されていないポリエチレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、ロジン系やテルペン系などの粘着付与樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブテン、炭化カルシウム、ダイヤモンドカーボンラクタム等の各種炭化物;窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム等の各種窒化物、ホウ化ジルコニウム等の各種ホウ化物;酸化チタン(チタニア)、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、シリカ、コロイダルシリカ等の各種酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の各種チタン酸化合物;二硫化モリブデン等の硫化物;フッ化マグネシウム、フッ化炭素等の各種フッ化物;ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の各種金属石鹸;その他、滑石、ベントナイト、タルク、炭酸カルシウム、ベントナイト、カオリン、ガラス繊維、雲母などの無機材料、また、チキソ性付与剤、消泡剤、ブロッキング防止剤、難燃剤、粘着付与剤、加水分解防止剤、レベリング剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、顔料、染料を配合することができる。これらは単独でも複数を組み合わせしても構わない。導電性塗料中のその他材料の含有量は、本発明の効果を損ねない範囲で、添加の目的を考慮し適宜選択すればよいが、導電性塗料100質量%に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が最も好ましい。
次に、本発明の導電性塗料の製造方法について説明する。導電性塗料の製造方法は特に限定されない。ここでは、媒体として、溶剤系媒体を用いた場合と水系媒体を用いた場合、媒体を含有しない場合に分けて説明する。
媒体として、溶剤系媒体を用いた場合の導電性塗料の製造方法としては、予め、酸変性合成ゴムを溶剤系媒体中に溶解した溶液を取得し、次いで該酸変性合成ゴム溶液に、導電材および架橋剤を、本発明の好ましい含有量となる様に投入し撹拌(混練)・混合することで均一な塗料を取得する方法が挙げられる。
なお、架橋剤が粉末や固形のものを用いる場合は、予め個別に架橋剤を溶剤系媒体に溶解および/または分散してから酸変性合成ゴム溶液に投入する方法が好ましい。導電材に関しても、予め個別に溶剤系媒体に浸したり、分散してから、酸変性合成ゴム溶液に投入しても構わない。
また架橋剤の投入に際して、架橋剤の種類によっては、塗料中で酸変性合成ゴム反応することで塗料としてのポットライフが短く、保存性などに問題がある場合は、架橋剤は塗工の直前に混合する方法、即ち、2液化して使用する方法を採用しても構わない。
媒体として、水系媒体を用いた場合の導電性塗料の製造方法としては、予め、酸変性合成ゴムを水系媒体中に分散した水性分散体を取得し、次いで該酸変性合成ゴム水性分散体に、導電材および架橋剤を、本発明の好ましい含有量となる様に投入し撹拌(混練)・混合することで均一な塗料を取得する方法が挙げられる。酸変性合成ゴム水性分散体の製造方法は特に限定されないが、乳化剤を使用しない方法で製造することが、皮膜の導電性や密着性、耐水性などの観点から好ましい。
なお、架橋剤が粉末や固形のものを用いる場合は、予め個別に架橋剤を水系媒体に溶解および/または分散してから酸変性合成ゴム水性分散体に投入する方法が好ましい。導電材に関しても、予め個別に水系媒体に浸したり分散してから、酸変性合成ゴム水性分散体に投入しても構わない。
またこの際、架橋剤の種類によっては、塗料中で酸変性合成ゴム反応することで塗料としてのポットライフが短く、保存性などに問題がある場合は、架橋剤は塗工の直前に混合する方法、即ち、2液化して使用する方法を採用しても構わない。
媒体を含有しない場合の導電性塗料の製造方法としては、酸変性合成ゴムとして液状ゴムを用いる必要がある。液状の酸変性合成ゴムに導電材および架橋剤を、本発明の好ましい含有量となる様に投入し撹拌(混練)・混合することで均一な塗料を取得する方法が挙げられる。なお、この際、導電材および架橋剤は媒体を含有していないものを用いる必要がある。また、架橋剤の種類によっては、塗料中で酸変性合成ゴム反応することで塗料としてのポットライフが短く、保存性などに問題がある場合は、架橋剤は塗工の直前に混合する方法、即ち、2液化して使用する方法を採用しても構わない。
ここで、本発明における媒体を含有しないとは、媒体を原料として積極的に添加していないことを意味し、不純物や生成物として微量の媒体成分が含まれていても構わない。媒体の含有量としては、5質量%未満が好ましく、3質量%未満がより好ましく、2質量%未満が特に好ましく、1質量%未満がさらに好ましく、0.5質量%未満が最も好ましい。5質量%をこえる以上の場合は、媒体の乾燥工程が必要となり生産性やコストの観点で不利である。
本発明の導電性塗料は、流動性を有しており塗布が可能なものである。導電性塗料の粘度としては、特に限定されない。塗料の取り扱いのし易さや塗布のし易さなどの観点から、B型粘度計で25℃条件下にて測定した粘度が、30~2,000,000mPa・sの範囲であることが好ましく、50~1,000,000mPa・sがより好ましく、100~500,000mPa・sがより好ましく、500~100,000mPa・sが特に好ましく、1000~50,000mPa・sがさらに好ましく、1000~10,000mPa・sが最も好ましい。
次に、本発明の導電性皮膜の製造方法を説明する。本発明の導電性皮膜は、導電性塗料に由来する皮膜のことであり、導電性塗料が含有する酸変性合成ゴムのカルボン酸と、架橋剤の官能基が反応し架橋構造を形成することで、良好な導電性皮膜を得ることが出来る。導電性皮膜は、本発明の導電性塗料を基材上に塗布(印刷)し、必要に応じて乾燥やエージングなどの熱処理することで取得することができる。
なお、導電性皮膜は、基材上に積層された積層体として用いることも可能であるし、基材上に積層した後に基材から導電性皮膜を剥がして用いても構わない。これらは、使用する用途や目的、条件に沿って適宜選択すればよい。
導電性塗料を塗布する基材は、使用する用途によって必要な特性を有していれば特に限定されない。基材上に積層された積層体として用いる場合は、本発明の特性上、柔軟性や伸縮性を有する基材を選択することが好ましい。基材から導電性皮膜を剥がして用いる場合は、離型性に優れる基材を選択することが好ましい。基材の好適な具体例としては、紙、布、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂などが挙げられる。伸縮性の基材としては、ポリウレタン、ウレタンゴムなどのポリウレタン系基材、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンα-オレフィン、プロピレンα-オレフィン、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、オレフィン系エラストマーなどのポリオレフィン系基材、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、SBSエラストマー、SEBSエラストマーなどが挙げられる。これらは、表面の密着性を向上せる処理、または離型性を向上させる処理がされていても構わない。これらの中でも基材の安定性の観点から、ポリオレフィン系基材が好ましい。
塗布する方法は、特に限定されず、スプレーコーティング、ディップコーティング、刷毛塗りコーティング、シャワーコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、スクリーン印刷、平版オフセット印刷法、インクジェット法、フレキソ印刷法、グラビアオフセット印刷法、スタンピング法、ディスペンス法、スキージ印刷など、公知の方法が採用できる。
媒体を含有する導電性塗料を用いた場合、塗布のあとは、塗膜中の媒体の一部又はすべてを乾燥させるための乾燥工程を設けることが好ましい。また、乾燥の際の加熱によって、酸変性合成ゴムと架橋剤の反応が進み、造膜性が促進される。乾燥の温度としては、媒体が揮発する温度であれば特に限定されないが、媒体の揮発性や架橋剤の反応性の観点から、40~200℃の範囲が好ましく、60~150℃がより好ましく、80~120℃が特に好ましい。なお、本発明の導電性塗料の乾燥には150℃を超えるような高温は必要ないが、基材の特性や使用する目的に応じて必要であれば、150℃以上の温度で乾燥しても問題ない。乾燥時間も特に限定されないが、媒体の揮発性や架橋剤の反応性の観点から、1~18000秒の範囲が好ましく、5~3600秒がより好ましく、10~600秒が特に好ましい。
塗布の後は、皮膜の凝集力や強度、伸縮性、基材への密着性などの各種性能を向上させるために、エージング処理することが好ましい。エージング処理の温度は、25~100℃の範囲が好ましく、30~80℃がより好ましく、40~60℃は特に好ましい。処理時間は、1~360時間の範囲が好ましく、3~240時間がより好ましく、10~168時間が特に好ましく、24~168時間がさらに好ましい。
導電性皮膜の厚さとしては、使用する用途の目的を考慮して適宜選択すればよいが、導電性と伸縮性、コストなどの観点から、1~5000μmの範囲が好ましく、その下限としては、2μm以上がより好ましく、5μm以上が特に好ましく、10μm以上がさらに好ましく、20μm以上が最も好ましい。その上限としては、2000μm以下であることがより好ましく、1000μm以下であることが特に好ましく、500μm以下であることがさらに好ましく、300μm以下であることが最も好ましい。厚みが1μm未満の場合は導電性や伸縮性が低下する傾向があり、5000μmを超えた場合はコスト的に不利である。
このようにして得られた本発明の導電性皮膜は、流動性を有さない皮膜であり、凝集力や強度や様々な基材への密着性や伸長性、伸縮性に優れている。本発明における伸縮性とは、皮膜の長さ方向(例えば、水平面に直径100mm厚さ1mmに形成された円形皮膜における水平方向)に引っ張り力を加えた際に、塗膜の切れやひび割れなどの材料破壊をすることなく伸長する性質を有し、且つ引っ張り力を解放した際には、ほぼ元の寸法に戻る性質のことである。本発明の導電性皮膜における好ましい伸縮率は、使用する用途や目的によって異なるが、例えば、ウェアラブルデバイス用途、フレキシブルプリント基板、フレキシブルディスプレイ、成形回路部品などの用途での適応を考慮すれば、25℃環境下での伸縮率は、50%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましく、150%以上がさらに好ましく、200%以上が最も好ましい。例えば、伸縮率200%とは、200%伸長させた後、引っ張り力を解放し、ほぼ元の寸法に戻ったことを意味する。
本発明における導電性皮膜の好ましい導電性は、使用する用途や目的によって異なるが、例えば、ウェアラブルデバイス用途、フレキシブルプリント基板、フレキシブルディスプレイ、成形回路部品などの用途での適応を考慮すれば、導電性の指標となる体積抵抗率として、1×10(Ω・cm)未満であることが好ましく、1×10-1(Ω・cm)未満がより好ましく、1×10-2(Ω・cm)未満が特に好ましく、1×10-3(Ω・cm)未満がさらに好ましく、1×10-4(Ω・cm)未満が最も好ましい。1×10(Ω・cm)以上の場合は、使用可能な用途が限定される。
本発明における導電性皮膜は、優れた伸縮性、すなわち、高伸長させた後、元の長さに戻した場合でも、性能の低下が抑制されたものである。例えば、伸縮率200%(200%伸長後、元の長さに伸縮させたもの)であっても、導電性皮膜のひび割れや裂けなどの材料破壊が抑制され、且つ伸縮後の導電性も良好に保持することが可能である。伸縮後の体積抵抗率としては、上記の好ましい体積抵抗率の範囲であることが好ましい。また、伸縮後の体積抵抗率の変化量が、伸縮前の体積抵抗率の1000倍以下が好ましく、500倍以下がより好ましく、100倍以下が特に好ましく、10倍以下がさらに好ましく、5倍以下が最も好ましい。
本発明における導電性皮膜は、伸長時において導電性が低下しにくいものである。伸長時の体積抵抗率としては、上記の好ましい体積抵抗率の範囲であることが好ましい。また、伸長時の体積抵抗率の変化量は、伸長前の体積抵抗率の10000倍以下が好ましく、1000倍以下がより好ましく、100倍以下が特に好ましく、10倍以下がさらに好ましく、5倍以下が最も好ましい。
本発明における導電性皮膜は、伸縮の繰り返しによっても導電性が低下しにくいものであり、特に、導電性がより低下しやすい傾向にある氷点下環境下での伸縮の繰り返しを行っても導電性が低下しにくいものである。氷点下環境下での伸縮の繰り返し後の体積抵抗率としては、上記の好ましい体積抵抗率の範囲であることが好ましい。また、氷点下環境下で伸縮を繰り返した後の体積抵抗率の変化量は、無伸長時の体積抵抗率の1000倍以下が好ましく、500倍以下がより好ましく、100倍以下が特に好ましく、10倍以下がさらに好ましく、5倍以下が最も好ましい。
本発明の導電性塗料およびそれより得られる導電性皮膜は、柔軟性と導電性が必要とされる用途や部材で好適に用いることができる。そのような好ましい用途としては、ウェアラブルデバイス用途、フレキシブルプリント基板(FPC)用途、フレキシブルディスプレイ用途、成形回路部品(MID)用途などが挙げられ、部材としては配線、アンテナ、電極などが挙げられる。
また、本発明の導電性塗料およびそれより得られる導電性皮膜は、様々な基材への密着性に優れることから、異種基材間または同種基材間を接着するための接着剤などのコート剤としても、好ましく用いることが可能である。接着剤として用いた場合、柔軟性と接着性に優れた性能を有している。接着剤としては、ドライラミネート用接着剤が好適である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
各種の特性について、以下の方法で測定または評価した。
導電性皮膜の特性
(1)基材への密着性
各実施例および比較例で得られた導電性塗料をコートしたポリプロピレン樹脂シート、エチレンプロピレンゴムシート、ウレタンゴムシート、天然ゴムシートを用い、JISK5400-8.5(碁盤目試験)に準じ、各シートの導電性皮膜にカッターナイフで1mm×1mmの升目を100升作り、その上にセロハンテープ(ニチバン社製TF-12)を貼り付けた後、セロハンテープを引き剥がし、100升中で、導電性皮膜が基材から剥離しなかった升目の数を調べた。試験は5回実施し、その平均値で評価した。
本評価での密着性は、実用的には剥離しなかった升が50以上であることが好ましく、60以上がより好ましく、80以上が特に好ましく、90以上がさらに好ましく、100が最も好ましい。50未満の場合は、使用する用途での耐久性や信頼性が問題となることがある。
(2)導電性<体積抵抗率>
各実施例および比較例で得られた導電性塗料をコートしたエチレンプロピレンゴムシートおよび天然ゴムシートを用い、抵抗率計「ロレスタGP」(三菱化学アナリテック社製、ロレスタGP MCP-T610型抵抗率計、4端子4探針法定電流印加方式)を用い、導電性皮膜の体積抵抗率(Ω・cm)を求めた。試験は5回実施し、その平均値で評価した。
(3)伸縮後の導電性
各実施例および比較例で得られた導電性塗料をコートした天然ゴムシートを用い(基材の伸縮性が良好であるため天然ゴムシートを選定した)、引張試験機(インテスコ株式会社製インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用いて、日本工業規格(JIS)K7127:1999に規定された「プラスチック-引張特性の試験方法」に基づいて、試験片を長さ方向に25℃環境下で10mm/分の速度で引っ張り、引っ張り試験前の試験片の長さ(50mm)に対して伸長率が200%となるように、長さ(150mm)まで引っ張ったところで30秒間保持し、次いで10mm/分の速度でひっぱり前の試験片の長さ(50mm)まで戻し30秒間保持した。その後、抵抗率計「ロレスタGP」で導電性皮膜の体積抵抗率(Ω・cm)を求めた。試験は5回実施し、その平均値を伸縮後の導電性とし、試験前の体積低効率からの変化量についても求めた。また、伸縮後の導電性皮膜の状態を目視で確認し、下記指標で評価した。
◎:伸縮前と変化なし
○:表面の一部に微かなひび割れがある。
△:明らかなひび割れ、および/または基材から剥がれが全面積の10%未満ある。
×:裂けまたは破断がある、および/または基材から剥がれが全面積の10%以上ある。
(4)伸長時の導電性
各実施例および比較例で得られた導電性塗料をコートしたエチレンプロピレンゴムシートを用い、引張試験機を用いて、日本工業規格(JIS)K7127:1999に規定された「プラスチック-引張特性の試験方法」に基づいて、試験片を長さ方向に25℃環境下で10mm/分の速度で引っ張り、引っ張り試験前の試験片の長さ(50mm)に対して伸長率が50%の長さ(75mm)、90%の長さ(95mm)、200%の長さ(150mm)でそれぞれ30秒間保持した後、抵抗率計「ロレスタGP」で導電性皮膜の体積抵抗率(Ω・cm)を求めた。試験は5回実施し、その平均値を伸長時の導電性とし、試験前の体積抵抗率からの変化量についても求めた。
なお、抵抗率計「ロレスタGP」を用いて体積抵抗率を求める際に、導電性皮膜の厚みが必要であり、伸長時の導電性皮膜の厚みは、下記式(1)によって算出した。
式(1):厚み(μm)=100/(100+伸長率(%))×20(引っ張り前の厚み)
(5)氷点下環境下での伸縮を繰り返した後の導電性
各実施例および比較例で得られた導電性塗料をコートしたエチレンプロピレンゴムシートを用い、-10℃環境下で、伸長率20%の伸縮を1000回繰り返した後、抵抗率計「ロレスタGP」で導電性皮膜の体積抵抗率(Ω・cm)を求めた。試験は3回実施し、その平均値を氷点下環境下での伸縮を繰り返した後の導電性とし、試験前の体積抵抗率からの変化量についても求めた。
製造例1:酸変性ポリブタジエンゴムの製造
ブタジエンゴム(エボニック社製、POLYVEST MA120、マレイン酸変性ポリブタジエンゴム、液状ゴム、酸価135mgKOH/g、数平均分子量4000、以下「ブタジエンMA120」と称す)280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で系内温度を140℃に保って攪拌下、無水マレイン酸40.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド28.0gをそれぞれ2時間かけて加え、その後3時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を100℃減圧乾燥機中で3時間減圧乾燥して、液状の酸変性ポリブタジエンゴム(以下、「ブタジエンP-1」と称す。)を得た。得られた「ブタジエンP-1」の酸価は155mgKOH/g、数平均分子量8000であった。
製造例2:酸変性イソプレンゴムの水性分散体製造
撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、120.0gのクラレ社製クラプレンLIR-403(マレイン酸変性イソプレンゴム、液状ゴム、酸価10mgKOH/g、数平均分子量34000、以下「イソプレンLIR-403」と称す)、120.0gのイソプロパノール、30gのトリエチルアミンおよび330gの蒸留水を仕込み、容器を密封し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌しながら、加熱し、系内温度を120℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて攪拌しつつ80℃まで冷却した後、80℃系内温度を120℃に保って減圧し、イソプロパノールおよび水を系外に360g留去した。その後、空冷にて攪拌しつつ25℃まで冷却したところで撹拌を停止し、300メッシュのステンレス製フィルターでろ過し、乳白色の均一な酸変性イソプレンゴム水性分散体を得た(ろ過後ステンレス製フィルター上に未分散成分は確認されなかった)。以下この水性分散体を「E-1」と称す。「E-1」の「イソプレンLIR-403」含有量は50質量%であった。
製造例3:銀粒子(導電材)の製造1
特級試薬の硝酸銀950gを純水5リットルに溶解し、その溶液に試薬1級水酸化マグネシウム300gを添加し撹拌機で45分間撹拌後、試薬1級水酸化ナトリウム220gを純水2リットルに溶解させた溶液を添加し45分間撹拌した。得られた殿物をろ過で分離後、80℃で24時間常圧乾燥を行った。得られた乾燥物を乳鉢で解砕し大気中400℃で1.5時間焙焼を行った。得られた焙焼物を5リットルの純水中に懸濁させ、550gの特級試薬の硫酸を添加し45分間撹拌し、マグネシウム塩を溶解した。マグネシウム塩の溶解後ろ過し、ろ別した銀粒子は、10リットルの純水で2回水洗し、60℃で24時間常圧乾燥を行った。以上の操作で銀粒子「Ag-1」を590g得た。「Ag-1」を走査電子顕微鏡で観察したところ一次粒子の平均粒径は約0.5μmの不定形の銀粒子であった。
製造例4:銀粒子(導電材)の製造2
製造例3で得られたの「Ag-1」500gを、オクタン酸を5質量%含有したイソプロパノール溶液5リットル中に仕込み、40℃で30分間撹拌により懸濁させた後ろ過し、ろ別した銀粒子は、17リットルの純水で2回水洗し、60℃で24時間常圧乾燥を行った。以上の操作で、有機酸により表面処理された銀粒子「Ag-2」を490g得た。「Ag-2」を走査電子顕微鏡で観察したところ一次粒子の平均粒径は約0.5μmの不定形の銀粒子であった。
製造例5:銀粒子およびカーボンナノチューブの混合物(導電材)の製造
製造例4で得られたの「Ag-2」と、多層カーボンナノチューブ(SWeNT MW100、SouthWest Nano Technologies社製、直径6~9nm、長さ5μm、アスペクト比556~833、以下「S-CNT」と称す)を混合した。混合比は「Ag-2」/「S-CNT」の質量比が98/2とした。このようにして、カーボンナノチューブと「Ag-2」の混合物を得た。この混合物を「Ag/CNT」と称す。
製造例6:銀粒子およびカーボンナノチューブの混合物(導電材)の製造2
「S-CNT」と0.006mol/lの2-メルカプト-N-(2-ナフチル)アセトアミド(THIONALIDE)のエタノール溶液を混合した。混合比は「S-CNT」と「THIONALIDEのエタノール溶液」の質量比が、1/99とした。これを30分間超音波処理した後、PTFE膜を用いてろ過し、エタノールで数回洗浄した。これを乾燥させて表面にメルカプト基を有するカーボンナノチューブ「CNT-A」を作製した。
次いで製造例4で得られたの「Ag-2」と「CNT-A」を混合した。混合比は「Ag-2」/「CNT-A」の質量比が98/2とした。このようにして、メルカプト基を有するカーボンナノチューブと「Ag-2」の混合物を得た。この混合物を「Ag/CNT2」と称す。
実施例1
酸変性合成ゴムとして「イソプレンLIR-403」を用い、架橋剤として味の素ファインテクノ社製、アミキュアVDH(多価ヒドラジド化合物、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン、以下「VDH」と称す。)の10質量%溶液(VDH/メタノール/メチルエチルケトン(以下、MEKと称す。)=10/15/75(質量比))を用い、導電材として、「Ag-2」を用いた。はじめに、「イソプレンLIR-403」100質量部と、シクロヘキサンとMEKの混合溶媒(シクロヘキサン/MEK=88/12)100質量部とを混合、溶解し、「イソプレンLIR-403」の溶剤溶液を得た。この「イソプレンLIR-403」の溶剤溶液中の「イソプレンLIR-403」100質量に対して、「Ag-2」が1500質量部となる様に、「VDH」が5質量部となる様に、「Ag-2」と、「VDH」の10質量%溶液を、「イソプレンLIR-403」の溶剤溶液に添加した。これを、自転公転撹拌機にて混合して、溶剤系媒体からなる導電性塗料を得た。
この導電性塗料を、ポリプロピレン樹脂シート(オカモト社製、ポリプロピレンシート、透明、厚み1mm、以下「PPシート」と称す。)、エチレンプロピレンゴムシート(日東化工社製、EPT410、黒、厚み1mm、以下「EPTシート」と称す。)、ウレタンゴムシート(日東化工社製、NU50、薄黄色、厚み1mm、以下「PUシート」と称す。)、天然ゴムシート(十川ゴム社製、C-330、アメゴム、厚み1mm、以下「NRシート」と称す。)の各基材にシルクスクリーン印刷機によって塗布し、80℃で600秒間乾燥させた後、50℃で1日間エージング処理し、導電性皮膜が積層された試験片を作製した。なお、導電性皮膜の厚みは、それぞれ50μmとなる様に塗布した。
実施例2~6
酸変性合成ゴムとして「イソプレンLIR-403」の代わりに、
実施例2では、クレイバレー社製ライコン131MA5(マレイン酸変性ブタジエンゴム、液状ゴム、酸価29mgKOH/g、数平均分子量4700、以下「ブタジエン131MA5」と称す)を用い、
実施例3では、三井化学社製ルーカントA-5320H(マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム、液状ゴム、酸価23mgKOH/g、数平均分子量9300、以下「EPゴムA-5320H」と称す)を用い、
実施例4では、クレイバレー社製ライコン131MA20(マレイン酸変性ブタジエンゴム、液状ゴム、酸価114mgKOH/g、数平均分子量5600、以下「ブタジエン131MA20」と称す)を用い、
実施例5では、「ブタジエンMA120」(酸価135mgKOH/g)を用い、
実施例6では、製造例1で得たマレイン酸変性ブタジエンゴム「ブタジエンP-1」(酸価155mgKOH/g)を用いた以外は、実施例1と同様の操作で、導電性塗料および、導電性皮膜が積層された試験片を作製した。
実施例7、8
酸変性合成ゴムである「イソプレンLIR-403」100質量に対する「VDH」の含有量を5質量部から、実施例7では0.1質量部となる様に、実施例8では30質量部となる様に、「VDH」の10質量%溶液を、「イソプレンLIR-403」の溶剤溶液に添加した以外は、実施例1と同様の操作で、導電性塗料および、導電性皮膜が積層された試験片を作製した。
実施例9、10
架橋剤として「VDH」の10質量%溶液の代わりに、実施例9では阪本薬品工業社製、SR-6GL(多価エポキシ化合物、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、液状、エポキシ当量175g/eq、以下「SR-6GL」と称す。)の10質量%溶液(SR-6GL/メタノール/MEK=10/15/75(質量比))を用い、実施例10ではヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の10質量%溶液(HDH/MEK=10/90(質量比))を用いた以外は、実施例1と同様の操作で、導電性塗料および、導電性皮膜が積層された試験片を作製した。
実施例11~13
「イソプレンLIR-403」100質量に対する「Ag-2」の含有量を1500質量部から、実施例11では50質量部となる様に、実施例12では400質量部となる様に、実施例13では9900質量部となる様に、「Ag-2」を、「イソプレンLIR-403」の溶剤溶液に添加した以外は、実施例1と同様の操作で、導電性塗料および、導電性皮膜が積層された試験片を作製した。
実施例14
製造例2で作製した酸変性イソプレンゴムの水性分散体「E-1」を用い、架橋剤として「VDH」の10質量%水溶液(VDH/水=10/90(質量比))を用い、導電材として、「Ag-2」を用いた。「E-1」中の「イソプレンLIR-403」100質量に対して、「Ag-2」が1500質量部となる様に、「VDH」が5質量部となる様に、「Ag-2」と「VDH」の10質量%水溶液を、「E-1」に添加した。これを、自転公転撹拌機にて混合して、水系媒体からなる導電性塗料を得た。
この導電性塗料を用いて実施例1と操作の方法で、導電性皮膜が積層された試験片を作製した。
実施例15、16
架橋剤として「VDH」の10質量%水溶液の代わりに、実施例15では大塚化学社製、ADH(多価ヒドラジド化合物、アジピン酸ジヒドラジド、以下「ADH」と称す。)の10質量%水溶液(ADH/水=10/90(質量比))を用い、実施例16では三菱化学社製、水系エポキシ樹脂W2801(多価エポキシ化合物、エポキシ当量190g/eq、以下「W2801」と称す。)の10質量%水溶液(W2801/水=10/90(質量比))を用いた以外は、実施例14と同様の操作で、導電性塗料および、導電性皮膜が積層された試験片を作製した。
実施例17
導電材として「Ag-2」の代わりに、「Ag-1」を用いた以外は、実施例1と同様の操作で、導電性塗料および、導電性皮膜が積層された試験片を作製した。
実施例18
酸変性イソプレンゴムの水性分散体「E-1」を用い、架橋剤として「VDH」の10質量%水溶液(VDH/水=10/90(質量比))を用い、導電材として、「Ag/CNT」を用いた。「E-1」中の「イソプレンLIR-403」100質量に対して、「Ag/CNT」が1500質量部となる様に、「VDH」が5質量部となる様に、「Ag/CNT」と「VDH」の10質量%水溶液を、「E-1」に添加した。これを、3本ロールミルにて練肉して、水系媒体からなる導電性塗料を得た。
この導電性塗料を用いて実施例1と操作の方法で、導電性皮膜が積層された試験片を作製した。
実施例19
酸変性合成ゴムのとして「イソプレンLIR-403」(媒体を含まない原液)を用い、架橋剤として「VDH」(媒体を含まない原粉末)を用いた。「イソプレンLIR-403」100質量に対して、「Ag-2」が1500質量部となる様に、「VDH」が5質量部となる様に、「Ag-2」と、「VDH」を添加した。これを、3本ロールミルにて練肉して、媒体を含有しない導電性塗料を得た。
この導電性塗料を、「PPシート」、「EPTシート」、「PUシート」、「NRシート」の各基材にベーカー式アプリケーターによって塗布し、80℃で600秒間乾燥させた後、50℃で1日間エージング処理し、導電性皮膜が積層された試験片を作製した。なお、導電性皮膜の厚みは、それぞれ50μmとなる様に塗布した。
実施例20
酸変性合成ゴムのとして「イソプレンLIR-403」(媒体を含まない原液)を用い、架橋剤として「SR-6GL」(媒体を含まない原液)を用いた。「イソプレンLIR-403」100質量に対して、「Ag-2」が1500質量部となる様に、「SR-6GL」が5質量部となる様に、「Ag-2」と、「SR-6GL」を添加した。これを、3本ロールミルにて練肉して、媒体を含有しない導電性塗料を得た。
この導電性塗料を、「PPシート」、「EPTシート」、「PUシート」、「NRシート」の各基材にベーカー式アプリケーターによって塗布し、80℃で600秒間乾燥させた後、50℃で1日間エージング処理し、導電性皮膜が積層された試験片を作製した。なお、導電性皮膜の厚みは、それぞれ50μmとなる様に塗布した。
比較例1
酸変性合成ゴムである「イソプレンLIR-403」の代わりに、酸変性されていない合成ゴムであるクラレ社製クラプレンLIR-30(イソプレンゴム、液状ゴム、酸価0mgKOH/g、数平均分子量28000、以下「イソプレンLIR-30」と称す)を用いた以外は、実施例1と同様の操作で、導電性塗料および、導電性皮膜が積層された試験片を作製した。しかし、試験片上の塗膜は硬化せずに流動性を有しており、導電性皮膜が形成できなかった。よって、各種評価は実施しなかった(できなかった)。
比較例2
架橋剤を用いずなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。即ち、「イソプレンLIR-403」の溶剤溶液中の「イソプレンLIR-403」100質量に対して、「Ag-2」が1500質量部となる様に「Ag-2」を、「イソプレンLIR-403」の溶剤溶液に添加した。これを、自転公転撹拌機にて混合して、溶剤系媒体からなる導電性塗料を得た。
この導電性塗料を用いて実施例1と操作の方法で、導電性皮膜が積層された試験片を作製した。しかし、試験片上の塗膜は硬化せずに流動性を有しており、導電性皮膜が形成できなかった。よって、各種評価は実施しなかった(できなかった)。
比較例3
酸変性合成ゴムである「イソプレンLIR-403」の代わりに、酸変性されていない固形の合成ゴムである日本ゼオン社製Nipol IR2200(イソプレンゴム、固形、酸価0mgKOH/g、数平均分子量120000、以下「イソプレンIR2200」と称す)用いた以外は、比較例2と同様の操作を行った。即ち、はじめに、「イソプレンIR2200」100質量部と、シクロヘキサンとMEKの混合溶媒(シクロヘキサン/MEK=88/12)100質量部とを混合、溶解し、「イソプレンIR2200」の溶剤溶液を得た。この「イソプレンIR2200」の溶剤溶液中の「イソプレンIR2200」100質量に対して、「Ag-2」が1500質量部となる様に「Ag-2」を、「イソプレンIR2200」の溶剤溶液に添加した。これを、自転公転撹拌機にて混合して、溶剤系媒体からなる導電性塗料を得た。
この導電性塗料を用いて実施例1と操作の方法で、導電性皮膜が積層された試験片を作製した。
比較例4
酸変性されていない固形の合成ゴムとして「イソプレンIR2200」の代わりに、JSR社製JSR BR01(ブタジエンゴム、固形、酸価0mgKOH/g、数平均分子量400000、以下「ブタジエンBR01」と称す)用いた以外は、比較例3と同様の操作で、導電性塗料および、導電性皮膜が積層された試験片を作製した。
比較例5
ニトリル基含有ゴム(日本ゼオン社製、Nipol 1042、アクリロニトリル含量33.3質量%、酸価0mgKOH/g、ベール状(固形)、以下「NBR1042」と称す)100質量部と、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート100質量部とを混合、溶解し、「NBR1042」の溶剤溶液を得た。この「NBR1042」溶剤溶液中の「NBR1042」100質量に対して、「Ag/CNT2」が480質量部となる様に、「NBR1042」の溶剤溶液に添加した。これを、自転公転撹拌機にて混合して、溶剤系媒体からなる塗料を得た。
この塗料を、「PPシート」、「EPTシート」、「PUシート」、「NRシート」の各基材にシルクスクリーン印刷機によって塗布し、150℃で1800秒間乾燥させ、皮膜が積層された試験片を作製した。なお、導電性皮膜の厚みは、それぞれ50μmとなる様に塗布した。
なお、「PPシート」、「EPTシート」での試験片作製時において、基材が乾燥の熱による変形が確認された。評価は、変形した試験片を用いた。
比較例6
硫黄含有ゴム(東レファインケミカル社製、チオコールLP-23、ポリサルファイド樹脂、硫黄含量21.5質量%、酸価0mgKOH/g、液状ゴム、以下「LP-23」と称す)100質量部と、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート100質量部とを混合、溶解し、「LP-23」の溶剤溶液を得た。この「LP-23」溶剤溶液中の「LP-23」100質量に対して、「Ag/CNT2」が340質量部となる様に、「LP-23」の溶剤溶液に添加した。これを、自転公転撹拌機にて混合して、溶剤系媒体からなる塗料を得た。
この塗料を、「PPシート」、「EPTシート」、「PUシート」、「NRシート」の各基材にシルクスクリーン印刷機によって塗布し、150℃で1800秒間乾燥させ、皮膜が積層された試験片を作製した。なお、導電性皮膜の厚みは、それぞれ50μmとなる様に塗布した。
なお、「PPシート」、「EPTシート」での試験片作製時において、基材が乾燥の熱による変形が確認された。評価は、変形した試験片を用いた。
実施例1~20、比較例1~6で得られた導電性塗料を表1に示す。また、導電性塗料を用いて導電性皮膜が積層された試験片を用いて各種評価を行った。評価結果を表2に示す。
Figure 0007083148000001
Figure 0007083148000002
表2の結果から、実施例1~20は、酸変性合成ゴム、架橋剤、および導電材を含有する導電性塗料は、皮膜形成時に高温を必要とせず、且つポリオレフィン樹脂基材などの様々な基材に対して密着性が優れており、導電性も優れている。また、伸縮後や伸長時の導電性も優れており、さらに氷点下環境下で伸縮を繰り返した後においても優れた導電性を有しており、いずれの試験においても優れた導電性が保持されていた。
一方、比較例1では、合成ゴムが酸変性されておらず、基材上に導電性皮膜を形成できなかった。
比較例2では、導電性塗料に架橋剤を含有していなかったため、基材上に導電性皮膜を形成できなかった。
比較例3~5では、固形の合成ゴムを用いたため、架橋剤を含有せずとも流動性のない塗膜が形成することができたが、酸変性されておらず、且つ架橋剤を含有していなかったため、密着性や伸縮後や伸長時の導電性に劣る、もしくは評価できなかった。比較例5においては、乾燥に150℃という高温を必要としたため基材の変形が確認された。
比較例6では、硫黄を含有するタイプのゴムを用いたため、乾燥に150℃という高温を必要としたため基材の変形が確認された。また、ゴムが酸変性されていなかいため、基材との密着性や伸縮後や伸長時の導電性に劣る、もしくは評価できなかった。
なお、本実施例の評価では、ウェアラブルデバイス用途、フレキシブルプリント基板(FPC)用途、フレキシブルディスプレイ用途、成形回路部品(MID)用途に適した形状でないシート形状の試験片を使用しているが、本評価の目的を考慮すると、各用途に適した形状を有さずともシート形状の試験片で本用途の実用上の評価が可能である。

Claims (21)

  1. 液状ゴムである酸変性合成ゴム、架橋剤、および導電材を含有し、導電材が、金属粒子であり、平均粒子径が0.01~500μmであることを特徴とする導電性塗料。
  2. 酸変性合成ゴムの酸価が1~150mgKOH/gであることを特徴とする請求項1記載の導電性塗料。
  3. 酸変性合成ゴムが、酸変性イソプレンゴム、酸変性ブタジエンゴム、および酸変性エチレンプロピレンゴムの少なくとも一種からなることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性塗料。
  4. 導電材が、有機酸、有機酸塩、界面活性剤およびシランカップリング剤から選択される少なくとも一種によって表面処理がされていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の導電性塗料。
  5. 架橋剤が、多価ヒドラジド化合物および/または多価エポキシ化合物あることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の導電性塗料。
  6. 架橋剤の含有量が、酸変性合成ゴム100質量部に対して、0.1~30質量部であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の導電性塗料。
  7. 導電材の含有量が、酸変性合成ゴム100質量部に対して、50~9900質量部であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の導電性塗料。
  8. 媒体を含有しないことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の導電性塗料。
  9. さらに溶剤系媒体を含有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の導電性塗料。
  10. さらに水系媒体を含有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の導電性塗料。
  11. 導電性塗料由来の皮膜の25℃環境下での伸縮率が50%以上であることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の導電性塗料。
  12. ウェアラブルデバイス用導電性塗料であることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の導電性塗料。
  13. フレキシブルプリント基板(FPC)用導電性塗料であることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の導電性塗料。
  14. フレキシブルディスプレイ用導電性塗料であることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の導電性塗料。
  15. 成形回路部品(MID)用導電性塗料であることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の導電性塗料。
  16. 請求項1~11のいずれかに記載の導電性塗料に由来する皮膜であることを特徴とする導電性皮膜。
  17. 皮膜の25℃環境下での伸縮率が50%以上あることを特徴とする請求項16記載の導電性皮膜。
  18. ウェアラブルデバイス用導電性皮膜であることを特徴とする請求項16又は17記載の導電性皮膜。
  19. フレキシブルプリント基板(FPC)用導電性皮膜であることを特徴とする請求項16又は17に記載の導電性皮膜。
  20. フレキシブルディスプレイ用導電性皮膜であることを特徴とする請求項16又は17に記載の導電性皮膜。
  21. 成形回路部品(MID)用導電性皮膜であることを特徴とする請求項16又は17に記載の導電性皮膜。
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