JP7083122B2 - ポリエステル樹脂組成物及びそれからなる成形体 - Google Patents
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b値;日本電色工業社製の色差計ND-Σ80型を用いて、色調を測定し、色調の判定をハンターのLab表色計で行い、b値を測定する。
(2)ポリエステル樹脂組成物中に、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を0.005~0.5質量%含有する、(1)記載のポリエステル樹脂組成物。
(3)カルボキシル末端基濃度が35当量/t以下である、(1)又は(2)に記載のポリエステル樹脂組成物。
(4)(1)~(3)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物からなる成形体。
このため、本発明のポリエステル樹脂組成物は、一旦成形工程を経て端材となったものを、再度ブロー成形に用いても、端材を構成する樹脂組成物はブロー成形時に熱分解が生じていないため、リサイクル成形を行っても、耐衝撃性に優れたブロー成形体を生産性よく得ることができる(リサイクル性にも優れている)。
そして、本発明の成形体は、色調、透明性、耐衝撃性に優れているため、種々の用途に用いることができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、1,4-シクロヘキサンジメタノール(以下CHDMと略すことがある)を共重合成分として特定量有するポリエステル樹脂(A)と、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体(以下BAEOと略すことがある)を共重合成分として特定量含有するポリエステル樹脂(B)を適量含有するものである。
エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、CHDMを共重合成分として2~15モル%含有するものであり、CHDMの共重合量は、中でも2~12モル%であることが好ましい。CHDMを含有(共重合)することにより、ポリエステル樹脂の結晶化速度をブロー成形に適したものに調整することができ、ブロー成形時の結晶化による白化を防ぐことができる。そして、得られるブロー成形体の耐衝撃性を向上させることができる。
CHDMの共重合量が2モル%未満の場合、CHDMを共重合することによる上記効果を十分に奏することができず、ブロー成形体の耐衝撃性を向上させることが困難となる。一方、CHDMの共重合量が15モル%を超えると、結晶化速度の調整が困難となり、成形性が悪化するとともに、リサイクル性に劣るものとなる。
エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体を共重合成分として2~15モル%含有するものであり、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量は、中でも2~8モル%であることが好ましい。ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体を含有(共重合)することにより、ポリエステル樹脂の結晶化速度をブロー成形に適したものに調整することができ、ブロー成形時の結晶化による白化を防ぐことができる。そして、ポリエステル樹脂(A)による耐衝撃性を向上させる効果をより優れたものにすることが可能となる。
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量が上記の範囲外のものであると、結晶化速度の調整ができず、また、ポリエステル樹脂(A)による耐衝撃性の向上効果をより優れたものにすることができない。
なお、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)及びポリエステル樹脂組成物の極限粘度は、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定するものである。
一方、極限粘度が1.3を超える場合は、成形温度を上げる必要があり、得られる成形体の色調や透明性が悪くなる。また、ブロー成形時に押出しダイ出口での樹脂組成物の膨張が大きくなる傾向があるため好ましくない。
ヒンダードフェノール系抗酸化剤は、ポリエステル樹脂の重合反応工程中に添加することが好ましい。重合反応工程中に添加することで、該化合物の一部がポリエステル樹脂中に共重合される。これにより、ポリエステル樹脂中に分子鎖の絡み合いが生じ、架橋に似た状態が生じるものと想定され、ポリエステル樹脂の耐衝撃性を向上させることができる。
ポリエステル樹脂(A)は、特にヒンダードフェノール系抗酸化剤を添加することによる分子鎖の絡み合いが生じやすく、耐衝撃性を向上させる効果が増加する。ポリエステル樹脂(A)中のヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量は、0.01~0.5質量%であることが好ましく、中でも0.05~0.3質量%であることが好ましい。
ゲルマニウム化合物はポリエステル樹脂を得る際に重合触媒として使用されるものであり、ゲルマニウム化合物の含有量が5×10-5モル未満であると、目標の重合度のポリエステル樹脂が得られない、あるいは、重合反応において重合時間が長くなり、その結果、得られるポリエステル樹脂の色調が悪くなる。一方、3.0×10-4モルを超えても、重合触媒としての効果は飽和し、コスト的に不利となる。
本発明におけるこれらのポリエステル樹脂は、エステル化反応、溶融重合反応及び固相重合反応工程を経て得られるものであることが好ましい。エステル化反応と溶融重合反応のみでは、目標の極限粘度のポリエステル樹脂を得ることが困難となりやすい。得られたとしても、溶融重合反応の反応時間が長くなり、得られるポリエステル樹脂組成物は色調が悪いものとなる。
ポリエステル樹脂(A)は、酸成分としてテレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体、グリコール成分としてエチレングリコール及びCHDMを所定の割合でエステル化反応器に仕込み、エステル化反応を行った後、重合反応器に移し、重合触媒や添加剤を添加し、溶融重合反応を行い、プレポリマーを得る。得られたプレポリマーを用いて、固相重合反応を行い、目標の極限粘度のCHDMを共重合したポリエステル樹脂(A)を得る。
上記のようにして得られた2種類のポリエステル樹脂は、それぞれをチップ状のものとして得た後、両ポリエステル樹脂のチップをブレンドすることにより、本発明のポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
ブレンドする際には、単軸あるいは二軸の押出機を使用し、温度250~300℃の範囲で練り込む方法を採用することもできる。
本発明の成形体(ブロー成形体)を得る際には、チップ状のポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)をブロー成形機にそれぞれ投入し、成形機のシリンダー各部及びノズルを上記の温度として、ブロー成形を行ってもよい。
(a)極限粘度
前記と同様の方法で測定した。
(b)共重合成分の共重合量、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量
得られた樹脂組成物を、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比が1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合量と含有量を求めた。
得られた中空容器1(サンプル数100本)の胴部の厚さを測定し、最厚部と最薄部の厚さの差が0.30mmまでのものを合格とし、合格のサンプル数を示した。合格のサンプル数が95本以上であるものを○、95本未満であるものを×とした。
(d)リサイクル性
得られた中空容器1を粉砕機で粉砕した粉砕品50質量部、各例にて得られたポリエステル樹脂組成物50質量部をブレンドし、除湿乾燥機に投入し乾燥した後、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器2を得た。得られた中空容器2(サンプル数100本)につき、(c)と同様にして成形性を評価した。合格のサンプル数が90本以上であるものを○、90本未満であるものを×とした。
得られた中空容器1と(d)で得られた中空容器2から切り出してサンプル片(20個)を作成し、日本電色工業社製の色差計ND-Σ80型を用いて、サンプル片の色調を測定した。色調の判定はハンターのLab表色計で行い、b値を測定し、n数20の平均値とした。なお、b値が2.0以下を色調良好であると判定した。
(f)ヘーズ
得られた中空容器1と(d)で得られた中空容器2から切り出してサンプル片(20個)を作成し、濁度を日本電色工業社製の濁度計 MODEL 1001DPで測定し(空気:ヘーズ0%)、n数20の平均値とした。この値が小さいほど透明性が良好である。
(c)成形性の評価にて、合格となった中空容器1(サンプル数100本)と、(d)で得られた中空容器2であって、(c)成形性の評価にて合格となった中空容器2(サンプル数100本)に、水道水340mlを充填し、室温下にて、Pタイル上に、200cmの高さから、成形体の底面を下向き、側面を下向きにして成形体を1回ずつ落下させた。このとき割れなかった成形体の本数で耐衝撃性を評価した。なお、中空容器1の割れなかった成形体の本数が90本未満の場合は、中空容器2の評価は行わなかった。
(h)カルボキシル末端基濃度
得られたポリエステル樹脂組成物0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解し、この溶液にクロロホルム10mlを加えた後、1/10規定の水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定して求めた。
〔ポリエステル樹脂(A)〕
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃、圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%の反応生成物(数平均重合度:5)を得た。
TPAとEGの反応生成物99.0質量部を重合反応器に仕込み、続いて、CHDM4.89質量部、重合触媒として二酸化ゲルマニウム0.021質量部、酢酸コバルト4水和物0.006質量部、リン酸0.025質量部、ヒンダードフェノール系抗酸化剤〔ADEKA社製「アデカスタブAO-60」:テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン)〕0.09質量部を、それぞれ加え、反応器を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で3時間、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。
このプレポリマーの極限粘度は、0.65であった。このプレポリマーを150℃で5時間予備乾燥した後、窒素気流中で210℃、35時間固相重合し、表1に示す組成、極限粘度のポリエステル樹脂(A)を得た。
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃、圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%の反応生成物(数平均重合度:5)を得た。
TPAとEGの反応生成物99.0質量部を重合反応器に仕込み、続いて、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体4.75質量部、重合触媒として二酸化ゲルマニウム0.021質量部、酢酸コバルト4水和物0.006質量部、亜リン酸0.021質量部を、それぞれ加え、反応器を減圧にして60分後に最終圧力0.9hPa、温度280℃で4時間、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。
このプレポリマーの極限粘度は、0.70であった。このプレポリマーを150℃で5時間予備乾燥した後、窒素気流中で210℃、30時間固相重合し、表1に示す組成、極限粘度のポリエステル樹脂(B)を得た。
上記の2種類のポリエステル樹脂を乾燥させた後、二軸押出機(東芝機械社製:TEM26SS)に、質量比(A/B)=10/90で投入し、温度280℃にて練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、このポリエステル樹脂組成物を用い、ダイレクトブロー成形機(タハラ社製)を用いて、押出温度270℃、パリソン径3cmで長さが25cmとなったところで成形し、350ccの中空容器1を得た。
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の質量比(A/B)やポリエステル樹脂(A)中のヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
ポリエステル樹脂(A)のCHDMの共重合量、またはポリエステル樹脂(B)のビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして重合反応を行い、それぞれ表1に示す極限粘度を有するポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を得た。これらを実施例1と同様に練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
ポリエステル樹脂(A)を得る際の固相重合時間を15時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(A)を得た。そして、実施例1で用いたポリエステル樹脂(B)を用い、実施例1と同様にして両樹脂を練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
ポリエステル樹脂(A)を得る際の固相重合時間を3時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(A)を得た。そして、実施例1で用いたポリエステル樹脂(B)を用い、実施例1と同様にして両樹脂を練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
ポリエステル樹脂(B)として、実施例1で用いたポリエステル樹脂(B)の固相重合を行う前のプレポリマーを用いた。そして、実施例1で用いたポリエステル樹脂(A)を用い、実施例1と同様にして両樹脂を練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
ポリエステル樹脂(A)として、実施例1で用いたポリエステル樹脂(A)の固相重合を行う前のプレポリマーを用いた。ポリエステル樹脂(B)を得る際の固相重合時間を8時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(B)を得た。
得られたポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を用い、実施例1と同様にして両樹脂を練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
ポリエステル樹脂(A)に代えて、イソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートである、ベルポリエステルプロダクツ社製の「PIFG5H」を使用した。そして、実施例1で用いたポリエステル樹脂(B)を用い、実施例1と同様にして両樹脂を練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
また、中空容器1を粉砕したものを未成形のポリエステル樹脂組成物とともに用いてリサイクル使用した場合の成形性にも優れており、中空容器1と遜色のない、厚み斑がなく、色調、透明性、耐衝撃性に優れた成形体(中空容器2)を得ることができた。
比較例3、4で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂組成物の極限粘度が低すぎたため、成形性に劣るものであり、得られた成形体(中空容器1、2)は厚み斑の生じたものとなり、中空容器1は耐衝撃性に劣るものであった。
比較例5で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)のCHDMの共重合量が少なすぎたため、比較例6で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(B)のBAEOの共重合量が少なすぎたため、ともに得られた成形体(中空容器1、2)は、耐衝撃性に劣るものであった。
比較例7で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)のCHDMの共重合量が多過ぎたため、比較例8で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(B)のBAEOの共重合量が多過ぎたため、ともに成形性、リサイクル性に劣るものであった。
比較例9で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)に代えて、イソフタル酸を共重合成分とする共重合ポリエステル樹脂を用いたため、リサイクル性に劣るとともに、得られた成形体は耐衝撃性に劣るものであった。
Claims (4)
- エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、エチレングリコールを70~98モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノールを共重合成分として2~15モル%含有し、全酸成分の含有量を100モル%とするとき、テレフタル酸を70モル%以上含有するポリエステル樹脂(A)と、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、エチレングリコールを70~98モル%、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体を共重合成分として2~15モル%含有し、全酸成分の含有量を100モル%とするとき、テレフタル酸を70モル%以上含有するポリエステル樹脂(B)を3/97~60/40の質量比で含有し、極限粘度が0.7~1.3であり、以下に示す測定方法にて測定を行うb値が2.0以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
b値;日本電色工業社製の色差計ND-Σ80型を用いて、色調を測定し、色調の判定をハンターのLab表色計で行い、b値を測定する。 - ポリエステル樹脂組成物中に、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を0.005~0.5質量%含有する、請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
- カルボキシル末端基濃度が35当量/t以下である、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1~3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物からなる成形体。
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