JP7082196B2 - マイコプラズマ・シノビエ感染を予防または治療するための組成物 - Google Patents
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Description
研究によって、家禽が、マイコプラズマ疾患に関するOIE(世界動物保健機関)の文献において列挙されている病原微生物であるマイコプラズマ・シノビエを含む数十のタイプのマイコプラズマ属菌に感染し得ることが示されている。したがって、マイコプラズマ・シノビエは、家禽における予防または治療について考慮に入れるべき重要な病原体である。
マイコプラズマ・シノビエは、滑膜炎または関節炎を生じさせ得る。ブロイラー鶏におけるマイコプラズマ・シノビエ感染では、飼料効率が低下し、死亡率および家禽の屠体廃棄率が上昇する。育種鶏および産卵鶏におけるマイコプラズマ・シノビエ感染では、産卵率が低下し、胚の死亡率が上昇する。鶏におけるマイコプラズマ・シノビエ感染によって、家禽農家にとって著しい財政上の損失を生じさせる、ウイルス性病原体または細菌性病原体によって生じる第2の感染が生じる可能性がより高くなる。世界中の獣医学用ワクチンの製造者が、家禽産業向けの生ワクチンおよび不活化ワクチンを開発してきている。しかし、マイコプラズマ・シノビエの培養は困難であり、コストがかかる。したがって、この分野において、マイコプラズマ・シノビエ感染を予防および治療するために使用され得るワクチンが依然として必要とされている。
本開示の別の目的は、マイコプラズマ・シノビエ感染を予防および治療するために使用され得る、複数の抗原を有するサブユニットワクチンを提供することである。このようなワクチンは、単抗原ワクチンよりも優れた防御を提供する。
この目的のために、本開示は、Tuf、NOX、MS53-0285、およびその組み合わせを含む活性成分であって、前記Tufが配列番号01の配列を有し、前記NOXが配列番号02の配列を有し、かつ前記MS53-0285が配列番号03の配列を有する、活性成分と、薬学的に許容可能なアジュバントとを含む、マイコプラズマ・シノビエ感染を予防するための組成物を提供する。
さらに好ましくは、前記活性成分は、前記組成物の全容積に基づいて40~900μg/mLの濃度を有する。
場合により、前記薬学的に許容可能なアジュバントは、完全フロイントアジュバントもしくは不完全フロイントアジュバント、アルミナゲル、界面活性剤、ポリアニオンアジュバント、ペプチド、油エマルジョン、またはその組み合わせである。
好ましくは、前記組成物は、薬学的に許容可能な添加物をさらに含む。場合により、前記薬学的に許容可能な添加物は、溶媒、安定剤、希釈剤、防腐剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤、またはその組み合わせである。
好ましくは、マイコプラズマ・シノビエ感染によって生じる前記症候は、前記活性成分がTufを含むならば、少なくとも関節炎である。好ましくは、マイコプラズマ・シノビエ感染によって生じる前記症候は、前記活性成分がNOXおよびMS53-0285またはその組み合わせを含むならば、少なくとも気嚢の病変である。さらに好ましくは、マイコプラズマ・シノビエ感染によって生じる前記症候は、前記活性成分がMS53-0285を含むならば、少なくとも気管の病変である。
好ましくは、マイコプラズマ・シノビエ感染によって生じる前記症候は、前記活性成分がTuf、NOX、およびMS53-0285を含むならば、気管の病変、気嚢の病変、および関節炎である。
本開示はまた、配列番号4、配列番号5、配列番号6、またはその組み合わせのヌクレオチド配列と、プロモーターおよびリボソーム結合部位を含む発現エレメントと、融合パートナー配列とを含む、発現ベクターを提供する。
本開示はさらに、タンパク質Tuf、NOX、MS53-0285、またはその組み合わせとして翻訳されるヌクレオチド配列であって、前記Tufが配列番号01の配列を有し、前記NOXが配列番号02の配列を有し、かつ前記MS53-0285が配列番号03の配列を有する、ヌクレオチド配列と、プロモーターおよびリボソーム結合部位を含む発現エレメントと、融合パートナー配列とを含む、発現ベクターを提供する。
好ましくは、前記発現ベクターは、配列番号07、配列番号08、または配列番号09の配列を有する。
本開示はさらに、マイコプラズマ・シノビエ感染を予防および治療するための組成物を生産するためのタンパク質の使用であって、前記タンパク質がTuf、NOX、MS53-0285、またはその組み合わせを含み、前記Tufが配列番号01の配列を有し、前記NOXが配列番号02の配列を有し、かつ前記MS53-0285が配列番号03の配列を有する、使用を提供する。
上記の観点から、本開示は、マイコプラズマ・シノビエ感染を予防および治療するために使用される、またサブユニットワクチンのための活性成分としての、抗原を開示する。本開示の結果は、マイコプラズマ・シノビエ感染を予防するための新規な選択肢を提供するだけではなく、2つ以上の抗原を組み合わせる(すなわち、2つ以上の抗原を活性成分として含有する)「カクテル」サブユニットワクチンがより優れた免疫誘導効果を有することを開示している。
当業者には、前記タンパク質上の抗原決定基が影響を受けない限りにおいて、前記アミノ酸配列がある程度改変され得、そして依然として本発明の範囲に含まれることが容易に理解されよう。例えば、前記配列内のわずかなアミノ酸が当業者によって改変され得るが、本明細書において記載される免疫誘導効果は依然として生じ得る。あるいは、当業者の要求に基づいて、他の配列を前記配列に付加して、本明細書において記載される免疫誘導効果に影響することなく生産を容易にすることができる。これに関して、修飾された配列は、依然として本発明の範囲に含まれる。
一実施形態では、前記活性成分がNOX、MS53-0285、またはその組み合わせを含む場合、マイコプラズマ・シノビエ感染によって生じる前記症候は、少なくとも気嚢の病変である。それでも、前記活性成分がNOX、MS53-0285、またはその組み合わせを含むという事実は、前記活性成分が他の疾患の予防において効果を有さないことを示唆するわけではなく、むしろ、前記活性成分が気嚢の病変の予防においてより効果的であることを示唆する。
一実施形態では、前記活性成分がMS53-0285を含む場合、マイコプラズマ・シノビエ感染によって生じる前記症候は、少なくとも気管の病変である。それでも、前記活性成分がMS53-0285を含むという事実は、前記活性成分が他の疾患の予防において効果を有さないことを示唆するわけではなく、むしろ、前記活性成分が気管の病変の予防においてより効果的であることを示唆する。
別の態様では、本開示は、マイコプラズマ・シノビエ感染の予防または治療に使用されるカクテルワクチンに関する。本明細書において記載されるカクテルワクチンは、2つ以上の抗原を含有する。好ましい実施形態では、本明細書において記載されるカクテルワクチンは、同一タイプの病原微生物に由来する2つ以上の抗原を含有する。通常、2つ以上の抗原を単一のワクチンにおいて組み合わせることは、ワクチンの免疫誘導効果に対して必ずしも相乗的に寄与するわけではない。逆に、このことによって、2つ以上の抗原の免疫誘導効果が互いに打ち消し合うという好ましくない結果が生じ得る。コストの点では、2つ以上の抗原の免疫誘導効果が互いに打ち消し合わないとしても、相乗効果がなければ、これらの2つ以上の抗原を単一のワクチンにおいて組み合わせることは有意義ではない。
好ましい実施形態では、本開示の組成物はさらに、薬学的に許容可能なアジュバントおよび/または薬学的に許容可能な添加物を含む。前記薬学的に許容可能なアジュバントは、ワクチンとして使用される場合の、活性成分の免疫誘導効果を増強させるため、活性成分の安定性を維持するため、および前記組成物の安全性を増強させるために使用される。前記薬学的に許容可能なアジュバントとしては、限定はしないが、完全フロイントアジュバントもしくは不完全フロイントアジュバント、アルミナゲル、界面活性剤、ポリアニオンアジュバント、ペプチド、油エマルジョン、またはその組み合わせが含まれる。前記薬学的に許容可能な添加物としては、限定はしないが、溶媒、安定剤、希釈剤、防腐剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤、またはその組み合わせが含まれ得る。
したがって、別の態様では、本開示は、前記Tuf、NOX、またはMS53-0285を生産するために使用される発現ベクターに関する。本開示の発現ベクターは、ヌクレオチド配列、発現エレメント、および融合パートナー配列を含む。前記ヌクレオチド配列は、Tuf、NOX、MS53-0285、またはその組み合わせとして翻訳され得る。
前記発現エレメントは、発現系における転写プロセスおよび翻訳プロセスを開始するために必要なエレメントを指す。前記発現エレメントは、プロモーターおよびリボソーム結合部位を少なくとも含んでいる。好ましくは、前記発現エレメントは、オペレーター、翻訳/転写を増強させるためのエンハンサー配列、またはその組み合わせをさらに含み得る。好ましい実施形態では、前記発現ベクターは大腸菌発現系において使用され、前記発現エレメントは大腸菌によって認識され得る。
さらに別の態様では、本開示は、マイコプラズマ・シノビエ感染を予防および治療するための、前記Tuf、NOX、またはMS53-0285が使用される組成物の使用に関する。マイコプラズマ・シノビエ感染を予防および治療するための前記組成物については、さらなる詳細は、これまでに記載されているため、不要である。
以下の実施例は、本開示の特徴および利点をさらに説明するために、本開示の開発のために実施された実験を記載する。以下に列挙する実施例は本発明の典型であるにすぎず、特許請求の範囲を限定するために使用されるべきではないことが理解されるべきである。
遺伝子特異的なプライマーを、様々な抗原について設計する(表1)。マイコプラズマ・シノビエのゲノムDNAを鋳型として使用し、遺伝子特異的なプライマーを組み合わせて、標的遺伝子を増幅した。
Mycoplasma synoviae WVU 1853(American Type Culture Collection(登録商標)25204(商標))のゲノムDNAを、DNA精製キット(Tissue & Cell Genomic DNA Purificationキット、GMbiolab、台湾)を使用して抽出した。まず、4.5mLのマイコプラズマ・シノビエの液体培養物を遠心チューブに添加した。遠心分離(5870×g、5分間)した後、上清を除去し、ペレットを回収した。次いで、20μLのプロテイナーゼK(10mg/mL)および200μLの抽出試薬を添加し、56℃で3時間反応させた。200μLの結合溶液を添加し、70℃で10分間反応させた。反応が完了したら、200μLの無水アルコールを添加し、混合物をマイクロ遠心チューブに移して、完全に混合した。得られた溶液(沈殿物を含む)をスピンカラムにピペットで移し、スピンカラムを次いでコレクションチューブに入れた。2分間遠心分離(17970×g)した後、上清を除去し、300μLの結合溶液をスピンカラムに再び添加した。2分間遠心分離(17970×g)した後、上清を除去した。700μLの洗浄溶液をスピンカラムに添加し、混合物を2分間遠心分離し(17970×g)、次いで、上清を除去し、上記のステップを1回繰り返した。最後に、混合物を17970×gで5分間遠心分離して、残留アルコールを除去した。スピンカラムを、滅菌したマイクロ遠心チューブに入れ、適量の無菌脱イオン水を添加して、ゲノムDNAをドレインした。
2.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する標的遺伝子の増幅
マイコプラズマ・シノビエのゲノムDNAを鋳型として使用し、tuf遺伝子、nox遺伝子、およびms53-0285遺伝子について設計されたプライマーを、PCR反応にそれぞれ使用した。PCRにおいて使用されたプライマーおよびPCR反応条件を、以下の表2に示し(プライマー配列は表1に示す)、この条件において、50μLのPCR反応混合物は、1×GDP-HiFi PCRバッファーB、dATP、dTTP、dGTP、およびdCTPの200μMの混合物、1μMの増幅プライマー、200ngのマイコプラズマ・シノビエゲノムDNA、ならびに1UのGDP-HiFi DNAポリメラーゼを含有していた。PCR反応が完了した後、ゲル電気泳動を行って、予想されたサイズを有するDNA断片の存在について確認した。
PCR産物の回収を、PCR Clean Upシステムキット(GMbiolab、台湾)を使用して、かつ操作マニュアルに従って行った。標的遺伝子のクローニングを次いで、製造者の操作マニュアルに従ってCloneJET PCR Cloning Kitを使用して行った。ライゲーション混合物を、大腸菌株ECOS(商標)9-5に形質転換した。形質転換の条件はマニュアルにおいて提供されているか、または当技術分野における標準的な実験手順に基づいて変更され得る。
nox遺伝子は、3つのTGAコドンを有する。TGAコドンは、マイコプラズマ属菌においてはトリプトファンとして、また大腸菌においては停止コドンとして翻訳され得る。大腸菌発現系を使用しての無傷のタンパク質の生産の失敗を避けるために、nox遺伝子内のTGAコドンを、大腸菌によって認識され得、トリプトファンとして翻訳され得るコドン(TGG)で置き換えるための、前記コドンでの点突然変異を誘発しなくてはならない。
突然変異誘発性のプライマーを設計するための基準は、少なくとも78℃のTmで、突然変異をプライマーの中央に置くことを含んでいた。プライマーのTm値は、Invitrogeneによって提供される以下の式を使用して計算し:
Tm=81.5+0.41(GC%)-675/N-ミスマッチ%、
式中、「GC%」は、プライマー内のGヌクレオチドまたはCヌクレオチドのパーセンテージであり、「N」はプライマーの長さであり、「ミスマッチ%」は、プライマー内の突然変異した塩基のパーセンテージである。NOXBAMHIF/NOXM2、NOXM1/NOXM4、NOXM3/NOXM6、およびNOXM5/NOXSALIRを含む、nox遺伝子の点突然変異に使用したプライマーを、以下の表3に列挙する。
PCR反応の後、ゲル電気泳動を行って、予想されたサイズを有するDNA断片の存在について確認した。PCR産物を、Gel-M(商標)ゲル抽出システムキットを使用して回収した。回収した4つのPCR産物を、NOXBAMHIF/NOXSALIRプライマー対を使用する遺伝子増幅のための鋳型として使用した。PCR反応条件は、96℃で2分間;94℃で30秒間、55℃で30秒間、68℃で45秒間(35サイクル);68℃で5分間であった。このステップの後、完全長の点突然変異したnox遺伝子を得た。PCR産物を、PCR Clean Upキットを使用して回収した。
ms53-0285遺伝子は、6つのTGAコドンを有する。MS53BAMHIF/MS53M2、MS53M1/MS53M4、MS53M3/MS53M6、MS53M5/MS53M8、MS53M7/MS53M10、MS53M9/MS53M12、およびMS53M11/MS53SALIRを含む、ms53-0285遺伝子の点突然変異に使用したプライマーを、以下の表4に列挙する。
上記の操作の後、tuf遺伝子(配列番号04)、nox遺伝子(配列番号05)、およびms53-0285遺伝子(配列番号06)を得た。これらは、Tuf(配列番号01)、NOX(配列番号02)、およびMS53-0285(配列番号03)としてそれぞれ翻訳され得る。
大腸菌のdsbC遺伝子を有するプラスミドを、マイコプラズマ・シノビエ抗原発現プラスミドを構築するための骨格として使用した。発現プラスミドの構築プロセスは、以下の通りである。
1. Tuf発現ベクターの構築
増幅されたtuf遺伝子を、BamHIおよびSalIで切断し、得られたDNA断片を、T4 DNAリガーゼによって、同一の制限酵素によって事前に切断されたDsbC融合体発現プラスミドpET-HISDsbCと繋ぎ合わせた。ライゲーション産物を次いで、大腸菌ECOS 9-5に形質転換した。形質転換体を、コロニーPCRによってスクリーニングした。ゲル電気泳動を行って、予想されたサイズを有する増幅されたDNA断片の存在について確認した。形質転換体がその組換えプラスミド内にインサートDNAを含有していることが確認されたら、そのプラスミドを抽出し、DNAシーケンシングを行った。正確なDNA配列を有するプラスミドを、pET-HISDsbC-MSTUF(配列番号07)と名付けた。
突然変異したnox遺伝子を、BamHIおよびSalIで切断し、得られたDNA断片を、T4 DNAリガーゼによって、同一の制限酵素によって事前に切断されたDsbC融合体発現プラスミドpET-DsbCと繋ぎ合わせた。ライゲーション産物を次いで、大腸菌ECOS 9-5に形質転換した。形質転換体を、コロニーPCRによってスクリーニングした。ゲル電気泳動を行って、予想されたサイズを有する増幅されたDNA断片の存在について確認した。形質転換体がその組換えプラスミド内にインサートDNAを含有していることが確認されたら、そのプラスミドを抽出し、DNAシーケンシングを行った。正確なDNA配列を有するプラスミドを、pET-DsbC-MSNOX(配列番号08)と名付けた。
突然変異したms53-0285遺伝子を、BamHIおよびSalIで切断し、得られたDNA断片を、T4 DNAリガーゼによって、同一の制限酵素によって事前に切断されたDsbC融合体発現プラスミドpET-DsbCと繋ぎ合わせた。ライゲーション産物を次いで、大腸菌ECOS 9-5に形質転換した。形質転換体を、コロニーPCRによってスクリーニングした。ゲル電気泳動を行って、予想されたサイズを有する増幅されたDNA断片の存在について確認した。形質転換体がその組換えプラスミド内にインサートDNAを含有していることが確認されたら、そのプラスミドを抽出し、DNAシーケンシングを行った。正確なDNA配列を有するプラスミドを、pET-DsbC-MS53(配列番号09)と名付けた。
マイコプラズマ・シノビエ抗原を発現させるためのプラスミドを、大腸菌BL21(DE3)にそれぞれ形質転換した。抗原を発現する株の単一のコロニーを選択し、カナマイシンを含有する(最終濃度:30μg/mL)12mLのLB培地に接種した。得られた混合物を、一晩、37℃および180rpmで培養した。次いで、10mLの液体培養物を、カナマイシンを含有する(最終濃度:30μg/mL)1LのLB培地に添加し、OD600が約0.4~0.6に達するまで、振とう培養した(37℃、180rpm)。0.1mMのIPTGを次いで、28℃で添加して、タンパク質の発現を誘導した。4時間誘導した後、培養物を遠心分離し(10000×g、10分間、4℃)、細菌細胞ペレットを回収した。細菌細胞ペレットを、10mLのリン酸バッファー(20mMのリン酸ナトリウム、500mMのNaCl、pH7.4)中に再懸濁し、超音波処理によって崩した。懸濁液を遠心分離し(30966×g、30分間)、上清を回収した。最後に、上清を、0.22μMの孔サイズを有するフィルター膜を通して濾過した。タンパク質の電気泳動を行って、組換え抗原の発現の状態および溶解度を観察した。
結果を図1に示す。図1Aから、この実施例の発現抗原が、その後に精製され商業化されるために非常に優れた溶解度を有することが分かる。図1Bは、精製を介して得られた抗原が信頼できる純度を有することを示す。
4週齢の特定の病原体を有さない鶏(Animal Drugs Inspection Branch of the Animal Health Research Institute、Council of Agriculture、Executive Yuan、台湾から購入した)を使用し、検査支部の動物飼育施設で維持した。組換えマイコプラズマ・シノビエ抗原Tuf、NOX、およびMS53-0285を、操作マニュアルに従って、市販されているアジュバントMONTANIDE(商標)Gel 01(Seppic)と個別に混合して、各単抗原ワクチンの最終用量を50μg/0.5mLとした。0.5mLのこれらの単抗原ワクチンを、4週齢の鶏の頚部の後ろ側に皮下投与した。2回目のワクチン接種を、6週齢に達する鶏に対して行った。ワクチン接種した後、鶏を2週間にわたり観察した。血液試料を次いで回収し、遠心分離して(2000×g、4℃、15分間)、血清試料を得た。マイコプラズマ・シノビエ抗体を、市販のキット(IDEXX Mycoplasma synoviae抗体試験キット)を使用してアッセイした。
気管でのチャレンジでは、鶏を保定し、給餌チューブを鶏の気管に挿入した。106CCUのチャレンジ株の培養液1mLを次いで、シリンジを使用して注入した。最後に、培養液が均等に広がるように、鶏の頚部を優しくこすった。足蹠でのチャレンジでは、足蹠をアルコールワイプで消毒し、103CCUのチャレンジ株の培養液0.5mLを、針を使用して足蹠に注射した。チャレンジの後、血液試料を回収し、血清を単離して、マイコプラズマ・シノビエ特異的抗体を評価した。様々な時点での鶏の体重、足蹠の温度、および足蹠の厚みもまた記録した。実験の最後に解剖を行って、鶏の間の気管、気嚢、および足蹠の腫れの症候を観察した。観察された結果を、以下の表6に記載する器官の機能障害についての診断基準に従って記録した。
気嚢の病変は、マイコプラズマ・シノビエ感染の結果としての別の一般的なタイプの感染である。健康な鶏の気嚢は透明であり、排出物で覆われていない。図6Aは、前記単抗原ワクチンを投与されていない鶏の間で、その気嚢が厚みを増し、肉眼で見られる様式でイエローチーズ様の線維タンパク質で覆われていたことを示す。他方、気嚢の病変は、本発明の単抗原ワクチンを投与することによって効果的に予防することができる。結果はまた、NOXワクチンおよびMS53-0285ワクチンが気嚢の病変の予防において特に効果的であることを示した。
上記の結果から、有効性はわずかに異なるものの、本開示のTufワクチン、NOXワクチン、およびMS53-0285ワクチンが、マイコプラズマ・シノビエによって誘発される症候の軽減において全体的に効果的であることが理解され得る。
4週齢の特定の病原体を有さない鶏(Animal Drugs Inspection Branch of the Animal Health Research Institute、Council of Agriculture、Executive Yuan、台湾から購入した)を使用し、検査支部の動物飼育施設で維持した。様々な組み合わせの抗原(Tuf+NOX、Tuf+MS53-0285、NOX+MS53-0285、およびTuf+NOX+MS53-0285)を、市販されているアジュバントと個別に混合して、カクテルワクチンを得た。各用量のワクチン(0.5mL)中の各抗原は50μgであった。
0.5mLの前記組換え抗原ワクチンを、4週齢の鶏の頚部の後ろ側に皮下投与した。2回目のワクチン接種を、6週齢に達する鶏に対して行った。ワクチン接種した後、鶏を2週間にわたり観察した。血液試料を次いで回収し、遠心分離して(2000×g、4℃、15分間)、血清試料を得た。マイコプラズマ・シノビエ特異的抗体を、市販のキット(IDEXX Mycoplasma synoviae抗体試験キット)を使用して検出した。
4週齢の特定の病原体を有さない鶏(Animal Drugs Inspection Branch of the Animal Health Research Institute、Council of Agriculture、Executive Yuan、台湾から購入した)を使用し、検査支部の動物飼育施設で維持した。組換え抗原Tuf、NOX、およびMS53-0285を、市販されているアジュバントMONTANIDE(商標) ISA 71 VG(Seppic)と混合して、本発明のカクテルワクチンを得た。各用量のワクチン(0.5mL)中の各抗原は、50μgであった。前記アジュバントを、前記抗原と7:3の質量混合比で混合した。前記アジュバントの比重が約0.816であることを考慮すると、この実験において生産されたワクチンは、およそ0.37mLのアジュバントを含有していた。
0.5mLの前記組換え抗原ワクチンを、4週齢の鶏の頚部の後ろ側に皮下投与した。2回目のワクチン接種を、6週齢に達する鶏に対して行った。ワクチン接種した後、鶏を2週間にわたり観察した。血液試料を次いで回収し、遠心分離して(2000×g、4℃、15分間)、血清試料を得た。マイコプラズマ・シノビエ特異的抗体を、市販のキット(IDEXX Mycoplasma synoviae抗体試験キット)を使用して検出した。
結果は、本開示の三重抗原ワクチンが、感染した鶏で生じる体重減少を軽減させ得ることを示した(図9)。さらに、三重抗原ワクチンはまた、足蹠の腫れおよび温度に関する症候の低減において効果的であった(図10および11)。鶏をさらに屠殺し、解剖した。足蹠および気嚢の病変のスコアから、三重抗原ワクチンが足蹠および気嚢の病変の重症度の低下において効果的であることが分かった。以下の表9を参照されたい。
組換え抗原を、市販されているアジュバントMONTANIDE(商標)ISA 71 VG(Seppic)と混合して、組換え抗原を用量当たり4つの濃度:150μg、100μg、50μg、および20μg(0.5mL)でそれぞれ有するサブユニットワクチンを製剤した。前記アジュバントを、前記抗原と7:3の質量混合比で混合した。前記アジュバントの比重が約0.816であることを考慮すると、この実験において生産されたワクチンは、およそ0.37mLのアジュバントを含有していた。群は、表10で示す通りに設計した。
Claims (13)
- Tuf、NOX、MS53-0285、またはその組み合わせを含む活性成分であって、前記Tufが配列番号01の配列を含み、前記NOXが配列番号02の配列を含み、かつ前記MS53-0285が配列番号03の配列を含む、活性成分と、
薬学的に許容可能なアジュバントと
を含む、マイコプラズマ・シノビエ(Mycoplasma synoviae)感染によって生じる症候を軽減するための組成物。 - 前記活性成分が、Tuf、NOX、およびMS53-0285からなる群から選択される少なくとも2つのタンパク質である、請求項1に記載の組成物。
- 前記活性成分が、Tuf、NOX、およびMS53-0285を含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記活性成分が、前記組成物の全容積に基づいて40~900μg/mLの濃度を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記薬学的に許容可能なアジュバントが、完全フロイントアジュバントもしくは不完全フロイントアジュバント、アルミナゲル、界面活性剤、ポリアニオンアジュバント、ペプチド、油エマルジョン、またはその組み合わせである、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
- 薬学的に許容可能な添加物をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記薬学的に許容可能な添加物が、溶媒、安定剤、希釈剤、防腐剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤、またはその組み合わせである、請求項6に記載の組成物。
- マイコプラズマ・シノビエ感染によって生じる前記症候が、気管の病変、気嚢の病変、関節炎、またはその組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
- 前記活性成分がTufであり、マイコプラズマ・シノビエ感染によって生じる前記症候が少なくとも関節炎である、請求項8に記載の組成物。
- 前記活性成分がNOXとMS53-0285との組み合わせであり、マイコプラズマ・シノビエ感染によって生じる前記症候が少なくとも気嚢の病変である、請求項8に記載の組成物。
- 前記活性成分がMS53-0285であり、マイコプラズマ・シノビエ感染によって生じる前記症候が少なくとも気管の病変である、請求項8に記載の組成物。
- マイコプラズマ・シノビエ感染によって生じる前記症候が、気管の病変、気嚢の病変、および関節炎である、請求項3に記載の組成物。
- マイコプラズマ・シノビエ感染によって生じる症候を軽減するための組成物を調製するためのタンパク質の使用であって、前記タンパク質が、Tuf、NOX、MS53-0285、またはその組み合わせを含み、前記Tufが、配列番号01の配列を有し、前記NOXが配列番号02の配列を有し、かつ前記MS53-0285が配列番号03の配列を有する、使用。
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