JP7081863B1 - 間仕切り壁構成体及び間仕切り壁の設置工法 - Google Patents
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Description
この場合、図7に示されるように、コンクリート床面CF上を走行する荷物運搬用の手押し台車Gが間仕切り壁PWに衝突することが頻繁に起こること、さらには実験室やクリーンルームなどの衛生的な居室環境が求められる空間を間仕切り壁で仕切るときには、塵埃を発生しにくくするなどの衛生的な状態が維持されるようにすることを考慮する必要があるが、従来の間仕切り壁の設置工法にあっては以下のような問題があった。
この工法では、幅木用部材が間仕切りパネル(汎用品は幅42mm)と同等の厚さであると耐衝撃性に劣り、台車の衝突で幅木用部材の表面が欠損して粉塵が生じやすく、また、乾燥収縮によるクラックの発生やセメント系のため耐酸性に劣るという前記と同様の問題がある。幅木用部材の欠損部が粉塵や害虫の発生源となりやすいという衛生上の問題もある。また、コンクリート製の幅木用部材は重く、施工場所への運搬や床面への取り付けに人手を要し、破損した場合は間仕切りのレイアウト変更の際に再利用ができない。
コンクリート床面に直に設置した間仕切り壁の根元部分に、補強のためのコンクリート根巻を設置する工法も知られているが、前記と同様に、コンクリート根巻が乾燥収縮することによるクラックの発生や耐酸性に劣るという問題がある。間仕切り壁のレイアウト変更の際に再利用はできず、コンクリート根巻とともに間仕切り壁まで破壊し、廃棄処理する必要がある。
また、合成樹脂やセラミック、人工大理石などの硬い材料からなる幅木も耐衝撃性に劣り、施工の際に幅木の端部同士を接続する処理を要するとともに、加工性が悪く、幅木と床の不陸隙間処理が必要となって施工が煩雑であるという問題がある(例えば特許文献3参照)。
また、本発明の間仕切り壁の設置工法は、少なくとも、コンクリート床面にFRP製の間仕切り基礎材を固定する工程と、この間仕切り基礎材の上面に間仕切り材を取り付けて支持させる工程と、前記間仕切り基礎材の下縁部と前記コンクリート床面の取り合い部分に沿ってR曲面形に湾曲したR面材部を形成する工程と、前記間仕切り基礎材とR面材部の表面を塗装する工程と、を有することを特徴とする。
前述のとおり、前記「間仕切り材」には、間仕切りパネルなどのパーティションを構成する適宜な部材、軽量鉄骨下地とボードで構成される造作壁、その他化粧ボードなどの壁材を構成する適宜な部材が含まれる。
この間仕切り基礎材をコンクリート床面に固定し、その上に間仕切り材を取り付けて支持させて間仕切り壁を構成することで、台車が衝突したときの衝撃を間仕切り基礎材で緩衝或いは吸収して間仕切り壁を保護し、間仕切り壁及び間仕切り基礎材自体の変形や破損を効果的に防ぐことができる。間仕切り基礎材は、コンクリート床面上を走行する台車の周辺部が当接する高さ、具体的には150mm程度以上の高さ寸法に形成されてコンクリート床面に固定される。台車が間仕切り基礎材に衝突したときに粉塵が発生することはなく、間仕切り基礎材に収縮によるクラックが生じることもない。
また、コンクリート床面と間仕切り基礎材の取り合い部分に、微弾性・可撓性を有する素材を用いてR曲面形に湾曲したR面材部を形成することにより、取り合い部分に塵埃が溜まることを防ぐとともに付着した塵埃を取り除く清掃性を向上させ、取り合い部への浸水を防いで耐水性確保する。また、R面材部に亀裂が発生することを抑止し、間仕切り壁で仕切った空間を衛生的な居室環境に長期に亘って維持することが可能である。R面材部は、0~50R以下の湾曲面形状に形成することができる。
前記台車の衝突による間仕切り壁及び間仕切り基礎材の変形や破損を防止可能なので、間仕切り壁で仕切った居室空間の移設の際に、既設の間仕切り壁及び間仕切り基礎材をコンクリート床面から取り外し、そのまま移設先に設置して再利用することが可能である。
このように形成された間仕切り基礎材は、間仕切り基礎材の長手方向に沿ってガラス長繊維束が配列されているので、間仕切り基礎材の長手方向と交差する方向からの外力に対して弓形に撓んで衝撃を緩衝するように機能し、応力の発生が抑制されるため、台車がぶつかることによる変形や破損の発生を有効に防止することが可能である。前記熱硬化性樹脂としてポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などを用いることで、間仕切り基礎材の耐衝撃性、耐薬品特性を良好にすることができる。
間仕切り基礎材の比重が2.0以下であれば、これよりも大きな比重のコンクリート製のものよりも軽量に形成することができ、運搬や施工に人手を要さず簡便に扱うことができる。また、比重が0.3以上であれば、その曲げ強度を100~200MPa、圧縮強度を25~60MPaに成形可能であり、曲げ強度と圧縮強度が前記範囲内であれば、台車の衝突による衝撃を受けても変形したり破損したりすることはない。また、上記に加え、衝撃強さが25~45MPaに成形されていることが好ましい。衝撃強さが上記範囲内であれば、間仕切り基礎材に台車がぶつかることによる衝撃的な荷重が加わったとしても破壊する虞はない。
この場合、間仕切り基礎材の熱伝導率は0.3W/mK以下であることがより好ましく、0.1W/mK以下であることがさらに好ましい。
間仕切り基礎材の線膨張係数或いは熱伝導率が前記範囲内であれば、熱による変形が生じにくく、コンクリート床面上の当初の取り付け位置に固定することができる。熱による変形が生じないので、間仕切り基礎材同士をそれぞれの端部を隙間なく接合してシームレスに継ぎ合わせて固定することができ、クラックが生じる虞もない。間仕切り基礎材のジョイント部の防水性を高める場合は、間仕切り基礎材が接する断面に防水性のシーリング材を施工し、硬化前に端部同士を合わせることが可能である。
R面材部が硬いと、前記間仕切り基礎材に台車がぶつかったときに伝わる衝撃によって割れたり剥がれたりすることがあるが、ショア硬度が30~80Dであれば、その弾性によって衝撃を吸収することが可能であり、割れなどが生じることはない。
前記取り合い部分に設けるR面材部をセメント系モルタルで形成すると乾燥により割れが生じ、弾性コーキング剤で形成すると洗浄したときに表面が剥がれて劣化し、塗料を塗るとひび割れができやすい。また、可撓性エポキシ樹脂で形成すると破損は少ないが経時変化により脆化しやすく、金属製のものでは中空なため変形したときに内部が粉塵や残渣だまりとなり、害虫の発生原因となりやすい。
前記パテ材料を用いてR面材部を形成すれば、前記衝撃を吸収し得る弾性を保持しつつ、割れや劣化が発生しにくく、また、施工後、寸法が収縮することが殆どなく、熱成形で成形した如きR曲面形状を長期に亘って維持することが可能である。また、速硬化性、低臭性、耐薬品性及び防水性に優れ、床仕上げ材である塗装材料の接着も良好である。
R面材部は、前記ウレタン樹脂製のパテ材料に代えて、高強度と微弾性(可撓性)を有する他の合成樹脂材料、例えばエポキシ樹脂やポリエステル樹脂、MMA樹脂などからなり、好ましくはショア硬度が30~80Dのパテ材料で、R曲面の成形性に適したチクソ性、速硬化性、低臭気性、収縮安定性、耐水性、耐薬品性、密着性、塗料付着性などに優れた現場施工型の材料を用いることができる。
コンクリート床面に間仕切り基礎材を固定するには、例えばコンクリート床面にアンカーが挿入し得る大きさの孔を削孔し、この孔にウエッジアンカーを打ち込む。そして、コンクリート床面上に突出した前記ウエッジアンカーを間仕切り基礎材に形成された座グリに挿入し、ウエッジアンカーの軸部を座グリ内でナット締めして間仕切り基礎材に連結することで、コンクリート床面上に間仕切り基礎材が一体に固定されるようにすることができる。
また、間仕切り基礎材とコンクリート床面の取り合い部分にR面材部を形成した後、間仕切り基礎材とR面材部の表面に施工する表面仕上げ処理として、前記表面を塗装する床仕上げ材としては、一般的なコンクリート床面の仕上げに用いられている合成樹脂塗床材や無機系床仕上げ材を用いることができ、また、塗装に代えて塩ビ系シート材その他のシート材を貼るなど、多岐にわたる表面仕上げ処理のための部材を用いることが可能である。
同図の間仕切り壁構成体1は、コンクリート床面CF上にFRP製の間仕切り基礎材2を固定し、この間仕切り基礎材2の上面に間仕切りパネルからなる間仕切り材3を載せて一体に取り付け、間仕切り基礎材2の下縁部とコンクリート床面CFとの取り合い部分に合成樹脂製のパテ材料を肉盛り塗布してR曲面形に湾曲したR面材部4を形成し、さらに間仕切り基礎材2とR面材部4の表面に、コンクリート床面CFに施工した表面仕上げ処理部7である塗装を施して形成してある。
詳しくは、間仕切り基礎材2は、その下面2bから上面2aまでの高さを150mm程度、両側面2c,2c間の幅を40mm程度、両端部間の長さを1800mmに設定して形成されており、その上面2aには当該上面2aから下面2bに通ずる座グリ21を適宜な間隔を開けて複数穿孔してある。
図3に示されるように、間仕切り基礎材2は、コンクリート床面CFに打ち込まれたウエッジアンカー6の軸部を座グリ21に通してコンクリート床面CF上に立てた状態で、ウエッジアンカー6の軸部を座グリ21内でナット締めして間仕切り基礎材2に連結することで、コンクリート床面CFに一体に固定してある。
先ず、間仕切り基礎材2の取り付け位置に沿って、コンクリート床面CFにウエッジアンカー6が挿入し得る大きさの孔を削孔する。削孔した孔には、ウエッジアンカー6を打ち込んで当該床面CFに固定する。
この状態で、間仕切り基礎材2の天端でレベルを合わせ、コンクリート床面CFと間仕切り基礎材2の下面2bの間に隙間があるときは、図3に示されるように、ポリプロピレンやナイロン、金属などからなるスペーサ5を隙間に挿入してレベルを調整する。
レベルを調整したならば、間仕切り基礎材2の上方から座グリ21内のウエッジアンカー6の軸部にナットを螺合し、これを座グリ21内でナット締めして間仕切り基礎材2に連結する。前記ウエッジアンカー6の軸部に座グリ21内でナット締めすることで、間仕切り基礎材2がコンクリート床面CF上に固定される。
その後、間仕切り基礎材2とR面材部4の表面に塗装などの表面処理を施してなる表面仕上げ処理部7を設けて施工が完了する。
また、図6は本発明のさらに他の実施形態の間仕切り壁構成体1を示しており、これは、間仕切り材3として軽量鉄骨下地とボードで構成される造作壁を用い、これを間仕切り基礎材2の上面に載せて一体に取り付けて構成したものである。
台車の衝突による間仕切り材3と間仕切り基礎材2の変形や破損を防止可能なので、間仕切り壁で仕切った居室空間の移設の際に、既設の間仕切り材3及び間仕切り基礎材2をコンクリート床面CFから取り外し、そのまま移設先に設置して再利用することが可能である。
この間仕切り基礎材2の物性は以下のとおりである。
比重:0.74 JIS Z 2102 準拠
曲げ強さ:146.1MPa JIS Z 2101 準拠
全圧縮強さ:57.85MPa JIS Z 2101 準拠
衝撃強さ:41.2MPa JIS Z 2101 準拠
膨張係数:1.0×10-5 JIS K 6911 準拠
熱伝導率:0.077W/mK JIS Z 2101 準拠
R面材部は、ポリオールを主原料とした基剤とヘキサメチレンジイソシアネートである硬化剤からなる、ショア硬度が30~80Dの硬質ウレタン樹脂製のパテ材料を用い、これを前記取り合い部分に肉盛り塗布して50Rの湾曲面に成形した。
その後、間仕切り基礎材2とR面材部4の表面にエポキシ樹脂塗料を塗布し乾燥させて、コンクリート床面CFに間仕切り壁構成体1を設置した。
最初に、台車をおよそ時速4km/hで走行させながら台車の正面を間仕切り壁構成体1にぶつけ、次いで同様に走行させながら間仕切り壁構成体1に対して台車を斜めにぶつけたが、ともに間仕切り基礎材2と間仕切り材3の変形や破損は起きなかった。
次いで、台車の勢いを、およそ時速8km/hに増して、前記と同様に、間仕切り壁構成体1にぶつけたが、間仕切り基礎材2と間仕切り材3の変形や破損は起きなかった。
台車を間仕切り壁構成体1の正面に1m程の間隔を開けて配置し、その位置から台車を押し引き操作して、間仕切り壁構成体1への衝突を60回繰り返したが、前記と同様に、間仕切り基礎材2と間仕切り材3の変形や破損は起きなかった。
また、上記の衝突試験後に、R面材部4の状態を目視確認したが、変形や剥がれは確認されなかった。
以上の検証から、本発明の間仕切り壁構成体が、台車の衝突に対して変形や破損が生じにくい、耐衝撃性に優れたものであることが確認された。
Claims (8)
- 間仕切り材と、コンクリート床面に固定されて前記間仕切り材を上面で支持する断面縦長矩形状の角材形に形成されたFRP製の間仕切り基礎材と、この間仕切り基礎材の下縁部と前記コンクリート床面の取り合い部分に形成されるR面材部とを備える間仕切り壁構成体。
- 間仕切り基礎材は、ガラス長繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させた成形材料を用いて略角材形に成形されてなる請求項1に記載の間仕切り壁構成体。
- 間仕切り基礎材は、その比重が0.3~2.0、曲げ強度が100~200MPa、圧縮強度が25~60MPaである請求項1又は2に記載の間仕切り壁構成体。
- 間仕切り基礎材は、線膨張係数が1×10―5~5.0×10―51/℃である請求項1から3の何れかに記載の間仕切り壁構成体。
- R面材部は、ショア硬度30~80Dの合成樹脂製のパテ材料からなる請求項1から4の何れかに記載の間仕切り壁構成体。
- R面材部は、ポリオールを主原料とした基剤とヘキサメチレンジイソシアネートである硬化剤からなる硬質ウレタン樹脂製のパテ状の材料を用いて成形されてなる請求項1から5の何れかに記載の間仕切り壁構成体。
- コンクリート床面に、ガラス長繊維束に熱硬化性樹脂を含浸させた成形材料を引抜装置により引き抜いて角材形に成形されたFRP製の間仕切り基礎材を固定する工程と、
この間仕切り基礎材の上面に間仕切り材を取り付けて支持させる工程と、
前記間仕切り基礎材の下縁部と前記コンクリート床面の取り合い部分に沿って、ショア硬度40~50Dの合成樹脂製のパテ状の材料を肉盛り塗布して、R曲面形に湾曲したR面材部を形成する工程と、
前記間仕切り基礎材とR面材部の表面を塗装する工程と、
を有する間仕切り壁の設置工法。 - コンクリート床面に削孔された孔にウエッジアンカーを打ち込み、コンクリート床面上に突出した前記ウエッジアンカーを間仕切り基礎材に形成された座グリに挿入し、ウエッジアンカーの軸部を座グリ内でナット締めして間仕切り基礎材に連結して、コンクリート床面上に間仕切り基礎材を固定する請求項7に記載の間仕切り壁の設置工法。
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