以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明に係る安全装置を備えた高所作業車の一例として、図1および図2に高所作業車1を示している。高所作業車1は、車体2の前部に設けられた運転キャブ2aと、車体2の前後左右にそれぞれ設けられた車輪3とを有するトラック車両をベースに構成されている。
車体2の前後左右にはそれぞれローラージャッキ10が設けられている。ローラージャッキ10は、車体2の左右方向に伸縮可能なアウトリガ11と、アウトリガ11の先端部に設けられた上下方向に伸縮可能なジャッキ12と、ジャッキ12の下端部に回転自在に取り付けられたローラー13とを有して構成される。アウトリガ11およびジャッキ12はそれぞれ、内蔵された油圧シリンダにより伸縮作動が可能になっている。高所作業車1は、アウトリガ11を張り出してローラー13を路面に接地させることにより、後述する作業台300を所望の高所位置に移動させた状態で車両を走行させながら作業を行うことができるように構成されている。ローラージャッキ10は、車体2に設けられたジャッキ操作レバー(図示せず)によって作動操作が行われるようになっている。
運転キャブ2a後方の車体2上の架装領域の前部には、旋回台5が水平旋回自在に設けられている。旋回台5は、車体2に設けられたブーム旋回モータ6(図3を参照)により車体2に対して水平旋回作動が可能になっている。旋回台5の上部には、枢結ピン7によりブーム20が上下方向に揺動自在(起伏自在)に設けられている。ブーム20は、旋回台5とブーム20の間に跨設されたブーム起伏シリンダ25により旋回台5(車体2)に対して起伏作動が可能になっている。ブーム20は、旋回台5に枢結される基端ブーム21、中間ブーム22および先端ブーム23を入れ子式に組み合わせて伸縮自在に構成され、ブーム20内に設けられたブーム伸縮シリンダ26(図3を参照)により伸縮作動が可能になっている。
先端ブーム23の先端部には、作業台ブラケット30が上下方向に揺動自在に設けられ、この作業台ブラケット30上に作業台300が設けられている。先端ブーム23の先端部には、先端ブーム23と略平行に延びるシリンダブラケット31が設けられている。このシリンダブラケット31と作業台ブラケット30の間にレベリングシリンダ35が跨設されている。レベリングシリンダ35は、作業台300に設けられた作業台傾斜検出器(図示せず)からの検出結果に基づいて伸縮作動して作業台ブラケット30を先端ブーム23に対して上下揺動させ、これによりブーム20の起伏角度によらず常に作業台300の床面を水平な状態に保持するように構成されている。
作業台300は、作業台ブラケット30上に水平旋回自在に設けられ、作業台ブラケット30に設けられた作業台旋回モータ36(図3を参照)により作業台ブラケット30に対して旋回作動が可能になっている。作業台300には、搭乗した作業者が操作入力する操作装置150が設けられている。操作装置150は、図3に示すように、車体2に対してブーム20(旋回台5)を旋回、起伏および伸縮作動させる作動指令を行うブーム操作レバー151と、作業台ブラケット30に対して作業台300を水平旋回作動させる作動指令を行う作業台旋回操作レバー152とを有している。
ブーム操作レバー151は、ブーム20の旋回、起伏および伸縮操作をそれぞれ単独で行うことができるようなっている。なお、図3には図示していないが、操作装置150には、作業台300の移動方向を指令する操作スイッチが設けられており、この操作スイッチによって移動方向を指令してブーム操作レバー151を操作すると、ブーム20の旋回
、起伏および伸縮作動を複合的に制御して、作業台300を水平面内で直線移動させる水平移動操作、および垂直面内で直線移動させる垂直移動操作も行うことができるようになっている。
ブーム操作レバー151および作業台旋回操作レバー152が操作されると、その操作内容に対応した操作信号が、車体2側に設けられたコントロールユニット50に出力される。そして、コントロールユニット50は、その操作信号に基づいた指令信号を油圧ユニット80に出力するようになっている。油圧ユニット80は、作動油タンク81と、エンジンもしくは電動モータにより駆動される油圧ポンプ82と、油圧ポンプ82から吐出される作動油を指令信号に基づいた供給方向および供給量で各油圧アクチュエータに供給する制御バルブユニット83とを有している。制御バルブユニット83は、ブーム旋回モータ6、ブーム起伏シリンダ25、ブーム伸縮シリンダ26および作業台旋回モータ36のそれぞれに対応した電磁比例制御バルブV1~V4を有している。油圧ユニット80は、コントロールユニット50からの指令信号に応じて各油圧アクチュエータに供給する作動油の流れを制御して、各油圧アクチュエータの作動を制御する。
次に、作業台300の構成について、図4~図8を参照して説明する。なお、図4~図8では、図4に示す前後、左右および上下の矢印の方向をそれぞれ、前後方向、左右方向および上下方向と称して説明する。作業台300は、図4に示すように、第1搭乗ユニット310、第2搭乗ユニット320および第3搭乗ユニット330を所定の連結方向(前後方向)に並べて連結されている。第1~第3搭乗ユニット310,320,330はそれぞれ、作業者が搭乗可能な作業床(床面)と、その作業床の周囲に立設された手摺りとを有している。作業台300では、第2搭乗ユニット320の床面が最も広く、第1搭乗ユニット310の床面と第3搭乗ユニット330の床面とは略同じ広さになっている。第2搭乗ユニット320が作業台ブラケット30上に水平旋回自在に支持される(図1を参照)。
第1搭乗ユニット310は、作業者が搭乗可能な第1作業床311と、第1作業床311の前後左右を囲むように立設された第1手摺り312とを有している。第1手摺り312の前方側には、第1手摺り312の一部を前後方向に横開き開閉可能に構成した第1扉部312aが設けられている。第1扉部312aにはレバー揺動式の第1扉ロック機構312bが設けられており、第1扉ロック機構312bにより第1扉部312aは閉じた状態に保持されている。第1作業床311の後端側の左右側部にはそれぞれ、第1手摺り312の外側の位置に、上方に延びる角柱状の第1支柱部材313が設けられている。第1搭乗ユニット310は、第1昇降装置350により第2搭乗ユニット320に対して下方に移動可能に連結されている。
第1昇降装置350は、左右2組の平行リンク351と、左右2個の第1昇降シリンダ355とを有して構成される。左右2組の平行リンク351はそれぞれ、前後方向に延びて上下に平行な上側リンク部材352および下側リンク部材353から構成され、上側および下側リンク部材352,353が第1搭乗ユニット310の第1支柱部材313と第2搭乗ユニット320の第2支柱部材328とに跨って枢結されている。第1搭乗ユニット310の第1作業床311と第2搭乗ユニット320の第2作業床321とが略同じ高さに位置している状態(図9に示す状態)において、上側および下側リンク部材352,353は、第1支柱部材313との枢結端部が上方となる斜めに延びた状態で、第1および第2支柱部材313,328に跨設されている。第1および第2作業床311,321が略同じ高さに位置している状態において、第1昇降シリンダ355は、ボトム側基端部が第2支柱部材328における下側リンク部材353の直上側の位置に枢結され、ロッドが伸長した状態でロッド先端部が上側リンク部材352における第1支柱部材313の近傍側の位置に枢結されている。
このように構成された第1昇降装置350では、第1搭乗ユニット310の第1作業床311と第2搭乗ユニット320の第2作業床321とが略同じ高さに位置している状態において、図5に示すように、左右の第1昇降シリンダ355のロッドを縮小作動させることにより、左右の平行リンク351を介して第1搭乗ユニット310を第2搭乗ユニット320に対して下方に移動させることができるようになっている。そして、第1搭乗ユニット310が下方に移動した状態において、左右の第1昇降シリンダ355のロッドを伸長作動させると、左右の平行リンク351を介して第1搭乗ユニット310を第1作業床311と第2作業床321とが略同じ高さとなる位置まで上方に移動させることができるように構成されている。
第3搭乗ユニット330は、図4に示すように、作業者が搭乗可能な第3作業床331と、第3作業床331の前後左右を囲むように立設された第3手摺り332とを有している。第3手摺り332の前方側には、第3手摺り332の一部を前後方向に横開き開閉可能に構成した第3扉部332aが設けられている。第3扉部332aにはレバー揺動式の第3扉ロック機構332bが設けられており、第3扉ロック機構332bにより第3扉部332aは閉じた状態に保持されている。作業者は、第3扉ロック機構332bを操作して第3扉部332aを開けて外方から第3搭乗ユニット330へ搭乗することができるようになっている。第3手摺り332の後方側には、作業者がくぐり抜けられる大きさの第1開口部332cが設けられている。第1開口部332cの上下略中央には、左右方向に延びる棒状の第1規制部材332dが上方にスライド移動可能に設けられている。第3作業床331の前端側の左右側部にはそれぞれ、第3手摺り332の外側の位置に、上方に延びる角柱状の第3支柱部材333が設けられている。第3搭乗ユニット330は、第2昇降装置360により第2搭乗ユニット320に対して上方に移動可能に連結されている。
第2昇降装置360は、左右2組の平行リンク361と、左右2個の第2昇降シリンダ365とを有している。左右2組の平行リンク361はそれぞれ、前後方向に延びて上下に平行な上側リンク部材362および下側リンク部材363から構成され、上側および下側リンク部材362,363が第3搭乗ユニット330の第3支柱部材333と第2搭乗ユニット320の第4支柱部材329とに跨って枢結されている。第3搭乗ユニット330の第3作業床331と第2搭乗ユニット320の第2作業床321とが略同じ高さに位置している状態(図4に示す状態)において、上側および下側リンク部材362,363は、第3支柱部材333との枢結端部が下方となる斜めに延びた状態で、第3および第4支柱部材333,329に跨設されている。第2および第3作業床321,331が略同じ高さに位置している状態において、第2昇降シリンダ365は、ボトム側基端部が第4支柱部材329における下側リンク部材363の直上側の位置に枢結され、ロッドが縮小した状態でロッド先端部が上側リンク部材362における第3支柱部材333の近傍側の位置に枢結されている。
このように構成された第2昇降装置360では、第3搭乗ユニット330の第3作業床331と第2搭乗ユニット320の第2作業床321とが略同じ高さに位置している状態において、図5に示すように、左右の第2昇降シリンダ365のロッドを伸長作動させることにより、左右の平行リンク361を介して第3搭乗ユニット330を第2搭乗ユニット320に対して上方に移動させることができるようになっている。そして、第3搭乗ユニット330が上方に移動した状態において、左右の第2昇降シリンダ365のロッドを縮小作動させると、左右の平行リンク361を介して第3搭乗ユニット330を第3作業床331と第2作業床321とが略同じ高さとなる位置まで下方に移動させることができるように構成されている。
第3搭乗ユニット330には、上述した操作装置150が設けられている。操作装置150は、図3に示すように、上述したブーム操作レバー151および作業台旋回操作レバー152の他に、第2搭乗ユニット320に対して第1搭乗ユニット310を昇降作動させる作動指令を行う第1昇降操作レバー153と、第2搭乗ユニット320に対して第3搭乗ユニット330を昇降作動させる作動指令を行う第2昇降操作レバー154とを有している。左右の第1および第2昇降シリンダ355,365は、上記油圧ユニット80の油圧ポンプ82から供給される作動油を受けて作動するようになっている。これらの油圧シリンダへの作動油の供給制御は、第1および第2昇降操作レバー153,154の操作入力に応じてコントロールユニット50により第1および第2昇降制御バルブV5,V6をそれぞれ駆動して行うように構成されている。このため、第3搭乗ユニット330に搭乗した作業者は、第1および第2昇降操作レバー153,154を操作することにより、第2搭乗ユニット320に対して第1および第3搭乗ユニット310,330をそれぞれ上下方向に移動させて作業台300全体の形状を変更させることが可能になっている(図5を参照)。
第2搭乗ユニット320は、図4に示すように、作業者が搭乗可能な第2作業床321と、第2作業床321の前後左右を囲むように立設された第2手摺り340とを有している。第2作業床321の後端側の左右側部にはそれぞれ、第2手摺り340の外側の位置に、上方に延びる角柱状の第2支柱部材328が設けられている。第2作業床321の前端側の左右側部にはそれぞれ、第2手摺り340の外側の位置に、上方に延びる角柱状の第4支柱部材329が設けられている。第2手摺り340は、第2作業床321の前端部に立設された前側手摺り341と、第2作業床321の後端部に立設された後側手摺り342と、第2作業床321の左端部に立設された左側手摺り343と、第2作業床321の右端部に立設された右側手摺り344とを有している。
前側手摺り341には、前側手摺り341の一部を前後方向に横開き開閉可能に構成した第2扉部341aが設けられている。第2扉部341aにはレバー揺動式の第2扉ロック機構341bが設けられており、第2扉ロック機構341bにより第2扉部341aは閉じた状態に保持されている。作業者は、第2ロック機構341bを操作して第2扉部341aを開け、第3搭乗ユニット330の第1規制部材332dを上方にスライド移動させて第1開口部332cをくぐって通り抜けることにより、第3搭乗ユニット330と第2搭乗ユニット320との間を移動することができるようになっている。後側手摺り342には、作業者がくぐり抜けられる大きさの第2開口部342cが設けられている。第2開口部342cの上下略中央には、左右方向に延びる棒状の第2規制部材342dが上方にスライド移動可能に設けられている。作業者は、第1搭乗ユニット310の第1ロック機構312bを操作して第1扉部312aを開け、第2規制部材342dを上方にスライド移動させて第2開口部342cをくぐって通り抜けることにより、第2搭乗ユニット320と第1搭乗ユニット310との間を移動することができるようになっている。
後側手摺り342、左側手摺り343および右側手摺り344はそれぞれ、図6~図8に示すように、第2作業床321側に傾倒させて折り畳み可能に構成されている。後側手摺り342の上側の左右端部にはそれぞれ第1手摺りロック機構345が設けられている。第1手摺りロック機構345は、上下にスライド移動可能なロックピンと、そのロックピンが挿入可能なロック孔とからなるロック機構である。左側の第1手摺りロック機構345は、後側手摺り342に設けられたロックピンを左側手摺り343に設けられたロック孔に挿入して後側および左側手摺り342,343を係止させ、後側および左側手摺り342,343を第2作業床321に立設させた状態を保持するようになっている。右側の第1手摺りロック機構345は、後側手摺り342に設けられたロックピンを右側手摺り344に設けられたロック孔に挿入して後側および右側手摺り342,344を係止させ、後側および右側手摺り342,344を第2作業床321に立設させた状態を保持す
るようになっている。左右の第1手摺りロック機構345はそれぞれ、第1搭乗ユニット310に搭乗した作業者から操作可能な位置に設けられている。
左右の第4支柱部材329の上部にはそれぞれ第2手摺りロック機構346が設けられている。第2手摺りロック機構346は、第1手摺りロック機構345と同様に、上下にスライド移動可能なロックピンと、そのロックピンが挿入可能なロック孔とからなるロック機構である。左側の第2手摺りロック機構346は、左側の第4支柱部材329に設けられたロックピンを左側手摺り343に設けられたロック孔に挿入して、左側の第4支柱部材329に左側手摺り343を係止させ、左側手摺り343を第2作業床321に立設させた状態を保持するようになっている。右側の第2手摺りロック機構346は、右側の第4支柱部材329に設けられたロックピンを右側手摺り344に設けられたロック孔に挿入して、右側の第4支柱部材329に右側手摺り344を係止させ、右側手摺り344を第2作業床321に立設させた状態を保持するようになっている。左右の第2手摺りロック機構346はそれぞれ、第3搭乗ユニット330に搭乗した作業者から操作可能な位置に設けられている。
左側の第3支柱部材328には、左側の第1手摺りロック機構345よりも下方の位置に、第3手摺りロック機構347が設けられている。右側の第4支柱部材329には、第2手摺りロック機構346よりも下方の位置に、第4手摺りロック機構348が設けられている。第3および第4手摺りロック機構347,348はそれぞれ、押圧操作するとロックが解除されるプッシュボタン式のロック機構である。第3手摺りロック機構347は、左側手摺り343に設けられたプッシュボタンおよびプッシュピンを左側の第3支柱部材329に設けられた係止部に係止させ、左側手摺り343を第2作業床321に立設させた状態を保持するようになっている。第3手摺りロック機構347は、第1搭乗ユニット310に搭乗した作業者から操作可能な位置に設けられている。第4手摺りロック機構348は、右側手摺り344に設けられたプッシュボタンおよびプッシュピンを右側の第4支柱部材329に設けられた係止部に係止させ、右側手摺り344を第2作業床321に立設させた状態を保持するようになっている。第4手摺りロック機構348は、第3搭乗ユニット330に搭乗した作業者から操作可能な位置に設けられている。
後側手摺り342の下部には第5手摺りロック機構349が設けられている。第5手摺りロック機構349は、上記第3手摺りロック機構347と同様に、押圧操作するとロックが解除されるプッシュボタン式のロック機構である。第5手摺りロック機構349は、後側手摺り342の折り畳み側(上部側)に設けられたプッシュボタンおよびプッシュピンを後側手摺り342の固定側(下部基端側)に設けられた係止部に係止させ、後側手摺り342を第2作業床321に立設させた状態を保持するようになっている。第5手摺りロック機構349は、第1搭乗ユニット310に搭乗した作業者から操作可能な位置に設けられている。
後側手摺り342、左側手摺り343および右側手摺り344をそれぞれ第2作業床321側に傾倒させて折り畳むには、先ず、第1搭乗ユニット310に搭乗した作業者により、左右の第1手摺りロック機構345のロックピンをロック孔から抜いて後側手摺り342と左側および右側手摺り343,344との係止状態を解除させる。また、第3搭乗ユニット330に搭乗した作業者により、左右の第2手摺りロック機構346のロックピンをロック孔から抜いて左右の第4支柱部材329と左側および右側手摺り343,344との係止状態を解除させる。次に、第3搭乗ユニット330に搭乗した作業者により、第4手摺りロック機構348のプッシュボタンを押圧操作してプッシュピンを係止部から抜いて右側手摺り344と右側の第4支柱部材329との係止状態を解除させ、右側手摺り344を第2作業床321側に傾倒させて折り畳む。また、第1搭乗ユニット310に搭乗した作業者により、第3手摺りロック機構347のプッシュボタンを押圧操作してプ
ッシュピンを係止部から抜いて左側手摺り343と左側の第3支柱部材328との係止状態を解除させ、左側手摺り343を第2作業床321側に傾倒させて折り畳む。最後に、第1搭乗ユニット310に搭乗した作業者により、第5手摺りロック機構349のプッシュボタンを押圧操作してプッシュピンを係止部から抜いて後側手摺り342の係止状態を解除させ、後側手摺り342を第2作業床321側に傾倒させて折り畳む。このように作業台300は、第1および第3搭乗ユニット310,330に搭乗した作業者によって第2搭乗ユニット320の後側手摺り342、左側手摺り343および右側手摺り344をそれぞれ第2作業床321側に傾倒させて折り畳むことができるようになっている。
このように構成された高所作業車1では、第3搭乗ユニット330に搭乗した作業者が操作装置150のブーム操作レバー151および作業台旋回操作レバー152を操作することにより、ブーム20の旋回、起伏および伸縮作動と作業台300の旋回作動とを行って、作業台300を所望の高所位置に移動させることが可能に構成されている。さらに、第1および第2昇降操作レバー153,154を操作することにより、第2搭乗ユニット320に対して第1および第3搭乗ユニット310,330をそれぞれ上下方向に移動させて作業台300全体の形状を変更させることが可能になっている(図5を参照)。以下では、これらの作動制御について説明する。
高所作業車1には、車体2に対するブーム20(旋回台5)の旋回角度を検出するブーム旋回角度検出器61と、車体2に対するブーム20の起伏角度を検出するブーム起伏角度検出器62と、ブーム20の伸縮長を検出するブーム長さ検出器63と、作業台ブラケット30(ブーム20)に対する作業台300の旋回角度を検出する作業台旋回角度検出器64とが設けられている。これらの検出器61~64により検出された情報はコントロールユニット50に入力される。
作業台300には、第2搭乗ユニット320に対する第1搭乗ユニット310の昇降位置を検出する第1昇降位置検出器65と、第2搭乗ユニット320に対する第3搭乗ユニット330の昇降位置を検出する第2昇降位置検出器66と、第2搭乗ユニット320において左側手摺り343が第2作業床321側に傾倒されて折り畳まれた状態であるか否かを検出する第1手摺り折畳検出器67と、右側手摺り344が第2作業床321側に傾倒されて折り畳まれた状態であるか否かを検出する第2手摺り折畳検出器68とが設けられている。第1および第2手摺り折畳検出器67,68はそれぞれ、各手摺り343,344が折り畳まれたときに当該手摺り343,344に押圧されて当該手摺り343,344が折り畳まれた状態であることを検出するリミットスイッチ等から構成される。これらの検出器65~68により検出された情報はコントロールユニット50に入力される。
コントロールユニット50は、演算処理部51と、記憶部52と、作動制御部53とを有している。記憶部52には、ブーム20および作業台300の各パーツの外形形状の寸法データと、作動速度規制高さRH(図9を参照)とが記憶されている。作動速度規制高さRHは、高所作業車1が走行する路面からの高さの値であり、上方に位置する作業対象物の下端部に対して下方に所定間隔を置いて作業台300の上端部が作業対象物に衝突しない高さ位置に設定されている。
演算処理部51は、記憶部52に記憶されているブーム20および作業台300の外形形状の寸法データと、ブーム旋回角度検出器61、ブーム起伏角度検出器62およびブーム長さ検出器63から入力される検出値(車体2に対するブーム20の旋回角度および起伏角度、ブーム20の伸縮長)と、第1および第2昇降位置検出器65,66から入力される検出値(第2搭乗ユニット320に対する第1および第3搭乗ユニット310,330の昇降位置)とに基づいて、車体2の位置を基準として表される作業台300の上端部の高さ位置を演算処理して常時求めるように構成されている。
作動制御部53は、ブーム操作レバー151、作業台旋回操作レバー152、第1昇降操作レバー153および第2昇降操作レバー154が操作されて、その操作内容に対応した操作信号が入力されると、その操作信号と、演算処理部51により求められた作業台300の上端部の高さ位置と、記憶部52に記憶されている作動速度規制高さRHと、第1および第2手摺り折畳検出器67,68から入力される検出値(作業台300において左側および右側手摺り343,344が折り畳まれた状態であるか否かの情報)とに基づいて、ブーム20および作業台300を作動させる油圧アクチュエータの作動制御を行うように構成されている。この作動制御部53による各油圧アクチュエータの作動制御について以下に説明する。
作動制御部53は、ブーム操作レバー151および作業台旋回操作レバー152が操作されて、その操作内容に対応した操作信号が入力されると、基本的には、その操作信号に基づいた指令信号を制御バルブユニット83に出力し、ブーム旋回モータ6、ブーム起伏シリンダ25、ブーム伸縮シリンダ26および作業台旋回モータ36への作動油の供給方向および供給量を制御する。そして、操作レバー151,152の操作量に応じた通常作動速度でブーム20の旋回、起伏および伸縮作動、並びに作業台300の旋回作動を行わせる。また、第1昇降操作レバー153および第2昇降操作レバー154が操作されて、その操作内容に対応した操作信号が入力されると、基本的には、その操作信号に基づいた指令信号を制御バルブユニット83に出力し、第1昇降シリンダ355,355および第2昇降シリンダ365,365への作動油の供給方向および供給量を制御する。そして、操作レバー153,154の操作量に応じた通常作動速度で作業台300において第2搭乗ユニット320に対する第1および第3搭乗ユニット310,330の昇降作動を行わせる。このとき、演算処理部51では、このように作動されて変化する作業台300の上端部の高さ位置が常に演算処理されて求められている。
作動制御部53は、先ず、第1および第2手摺り折畳検出器67,68からの検出結果に基づいて、作業台300の左側および右側手摺り343,344が折り畳まれた状態であるか否かを判断する。そして、左側および右側手摺り343,344が折り畳まれていない状態のときには、ブーム操作レバー151、作業台旋回操作レバー152が操作されると、上述したように、操作レバー151,152の操作量に応じた通常作動速度でブーム20の旋回、起伏および伸縮作動、並びに作業台300の旋回作動(ブーム旋回モータ6、ブーム起伏シリンダ25、ブーム伸縮シリンダ26および作業台旋回モータ36の作動)を行わせる。また、第1昇降操作レバー153および第2昇降操作レバー154が操作されると、操作レバー153,154の操作量に応じた通常作動速度で作業台300における第1および第3搭乗ユニット310,330の昇降作動(第1昇降シリンダ355,355および第2昇降シリンダ365,365の作動)を行わせる。
作動制御部53は、左側および右側手摺り343,344が折り畳まれた状態であると判断したときには、次に、演算処理部51により求められた作業台300の上端部の高さ位置と、記憶部52に記憶されている作動速度規制高さRHとを比較して、作業台300の上端部の高さ位置が作動速度規制高さRHを超えているか否かを判定する。なお、作動速度規制高さRHは上記のように路面からの高さの値であるのに対し、演算処理部51により求められた作業台300の上端部の高さ位置は、車体2の位置を基準として表される位置である。そのため、作業台300の上端部の高さ位置が、作動速度規制高さRHと同じ基準である路面からの高さの値となるように補正して比較される。
そして、作動制御部53は、左側および右側手摺り343,344が折り畳まれた状態であり、且つ、演算処理部51により求められた作業台300の上端部の高さ位置が作動速度規制高さRH未満であると判定した場合には、上記の手摺り343,344が折り畳
まれていないときと同様に、ブーム操作レバー151、作業台旋回操作レバー152が操作されると、操作レバー151,152の操作量に応じた通常作動速度でブーム20の旋回、起伏および伸縮作動、並びに作業台300の旋回作動(ブーム旋回モータ6、ブーム起伏シリンダ25、ブーム伸縮シリンダ26および作業台旋回モータ36の作動)を行わせる。また、第1昇降操作レバー153および第2昇降操作レバー154が操作されると、操作レバー153,154の操作量に応じた通常作動速度で作業台300における第1および第3搭乗ユニット310,330の昇降作動(第1昇降シリンダ355,355および第2昇降シリンダ365,365の作動)を行わせる。
その一方、作動制御部53は、左側および右側手摺り343,344が折り畳まれた状態であり、且つ、演算処理部51により求められた作業台300の上端部の高さ位置が作動速度規制高さRH以上であると判定した場合には、ブーム操作レバー151、作業台旋回操作レバー152が操作されると、操作レバー151,152の操作量に応じた通常作動速度よりも遅い作動速度(例えば、通常作動速度の30%程度の速度)で、ブーム20の旋回、起伏および伸縮作動、並びに作業台300の旋回作動(ブーム旋回モータ6、ブーム起伏シリンダ25、ブーム伸縮シリンダ26および作業台旋回モータ36の作動)を行わせる。また、第1昇降操作レバー153および第2昇降操作レバー154が操作されると、操作レバー153,154の操作量に応じた通常作動速度よりも遅い作動速度(例えば、通常作動速度の30%程度の速度)で作業台300における第1および第3搭乗ユニット310,330の昇降作動(第1昇降シリンダ355,355および第2昇降シリンダ365,365の作動)を行わせる。なおこのとき、操作レバー151~154の操作量が所定量以上傾倒された場合に、出力を一定にして作動速度を遅い一定速度にする制御を行う、或いは、操作レバー151~154の操作量に応じて変わる出力を一律で制限する(例えば30%程度に減速させる)制御を行う。
作動制御部53は、上記のようにブーム20の旋回、起伏および伸縮作動、並びに作業台300の旋回作動、並びに、作業台300における第1および第3搭乗ユニット310,330の昇降作動の速度規制(上記通常作動速度よりも遅い速度での作動制御)を行っているときに、警報信号を操作装置150に設けられた警報ランプ157および警報ブザー158に出力し、警報ランプ157を発光表示させるとともに警報ブザー158から警報音を発生させて、速度規制が行われている旨を作業者に報知するようになっている。
操作装置150には、作動制御部53による上記作動速度規制を無効にして、作業台300の左側および右側手摺り343,344が折り畳まれた状態であり、且つ作業台300の上端部の高さ位置が作動速度規制高さRH以上である場合であっても、上記通常作動速度で各アクチュエータを作動させる制御を行うための規制解除スイッチ155が設けられている。さらに、操作装置150には、記憶部52に記憶されている作動速度規制高さRHを変更させるための規制高さ入力部156が設けられている。作業者は規制高さ入力部156を操作することにより、作動速度規制高さRHを任意に設定変更することができるようになっている。
このように構成された高所作業車1では、図9に示すように、トンネル天井部に設けられたジェットファンfの点検作業を行う場合に、上記のように第2搭乗ユニット320の後側手摺り342、左側手摺り343および右側手摺り344をそれぞれ第2作業床321側に傾倒させて折り畳み、第2作業床321の上方近傍にジェットファンfが配置されるように作業台300を移動させて、第1搭乗ユニット310と第3搭乗ユニット330とによってジェットファンfの両側を挟んだ状態とすることができる。この場合に、第1搭乗ユニット310および第3搭乗ユニット330のいずれかの上端部が作動速度規制高さRHを超えていると、上述したように、操作レバー151~154の操作量に応じた通常作動速度よりも遅い作動速度で、ブーム20の旋回、起伏および伸縮作動、作業台30
0の旋回作動、並びに、作業台300における第1および第3搭乗ユニット310,330の昇降作動が行われる。そのため、各操作レバーの操作を誤って作業台300とジェットファンfとが接近する方向の操作を行った場合であっても、作業台300とジェットファンfとの衝突(干渉)を防止することができる。
これまで本発明に係る実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態において、通常作動速度よりも遅い作動速度として、例えば、通常作動速度の30%程度の速度と例示したが、これは一例であり、どの程度遅くするかは適宜変更可能である。また、上述の実施形態では、作動速度規制高さRHが記憶部52に予め記憶されているが、作業台300に作業対象物との距離を検出する検出器を設け、この検出器の検出結果に基づいて、作業対象物との距離が所定距離まで近づいたときに、上記のような作動速度を遅くする制御を行うように構成してもよい。
また、上述の実施形態では、左側および右側手摺り343,344が折り畳まれ、作業台300の上端部の高さ位置が作動速度規制高さRH以上である場合に、作業台300における第1および第3搭乗ユニット310,330の昇降作動速度も遅くする制御を行う構成であるが、第1および第3搭乗ユニット310,330は昇降作動しないように規制する構成としてもよい。また、上述の実施形態では、作業台300は第1~第3搭乗ユニット310~330を連結した構成について説明したが、作業台は2個以上の搭乗ユニットを連結した構成であってもよい。なお、2個の搭乗ユニットを連結した場合には、どちらか一方の搭乗ユニットのみが手摺りを折り畳み可能に構成される。