以下、図面を参照ながら、本発明の実施形態について説明する。図1には、本発明に係る高所作業車の一例として、ロアブーム12と、このロアブーム12に対して屈伸可能に設けられたアッパーブーム15とからなる屈伸ブーム10を備える高所作業車1を後方から見た図を示している。まず、図1および図2を参照して、この高所作業車1の概要構成について説明する。
高所作業車1は、図1に示すように、車体2の前方に運転キャブ3を有して車輪4で走行可能なトラック車両をベースに構成される。車体2の後部には旋回モータ6(図2参照)により駆動されて水平旋回可能に構成された旋回台11が取り付けられており、この旋回台11に対してロアブーム12の基端部12cが枢結され、ロア起伏シリンダ13の伸縮作動により垂直面内においてロアブーム12が起伏動可能となっている。また、運転キャブ3の上部には規制状態表示ランプ3aが設けられている(詳細は後述)。
車体2の前後左右の4カ所には、車体2の幅方向に拡幅自在で上下方向に伸縮自在なアウトリガジャッキ5が設けられている。高所作業を行うときには、左右のアウトリガジャッキ5をそれぞれ車体幅方向に拡幅伸長させ、下方に張り出させて車体2を持ち上げることで、車体2を安定支持できるようになっている。
ロアブーム12は、ロア第1ブーム12aとロア第2ブーム12bとからなり、ロア第1ブーム12aに入れ子式にロア第2ブーム12bが嵌挿されて構成される。また、ロアブーム12にはロア伸縮シリンダ14が内蔵されており、このロア伸縮シリンダ14により駆動されて伸縮作動可能に構成されている。
ロア第2ブーム12bの先端部12dに、ロアブーム12に対して起伏動(以下、屈伸動という)可能にアッパーブーム15が枢結されており、アッパーブーム15の左右に配設されたアッパー屈伸シリンダ16の伸縮作動によりロアブーム12の起伏作動面と同一面内でロアブーム12に対して屈伸動可能に構成されている。アッパーブーム15はアッパー第1ブーム15aとアッパー第2ブーム15bとからなり、アッパー第1ブーム15aに入れ子式にアッパー第2ブーム15bが嵌挿されて構成される。また、アッパーブーム15にはアッパー伸縮シリンダ17が内蔵されており、このアッパー伸縮シリンダ17により駆動されて伸縮作動可能に構成されている。
アッパー第2ブーム15bの先端部には、ロアブーム12およびアッパーブーム15の起伏・屈伸作動面と同一面内(垂直面内)に揺動可能に垂直ポスト(図示せず)が枢結されており、図示しないレベリングシステムによってロアブーム12の起伏角度、アッパーブーム15の屈伸角度の如何に拘わらず垂直ポストが常に垂直に延びて位置するようにレベリング制御される。そのため、作業台18の床面はロアブーム12の起伏作動やアッパーブーム15の屈伸作動に拘わらず常に水平に保持される。また、このように常時垂直に保持される垂直ポストに水平旋回自在に(首振り自在に)作業台18が取り付けられ、首振モータ19(図2参照)によって水平旋回されるようになっている。
このようにして常時水平に保持される作業台18には、作業台18に搭乗した作業者が操作するためのブーム操作装置18aが設けられている(図2参照)。ブーム操作装置18aには旋回台11やロアブーム12、アッパーブーム15等の作動指令を行う操作レバーが設けられており、作業台18aに搭乗する作業者が旋回台11の旋回操作、ロアブーム12の起伏並びに伸縮操作、アッパーブーム15の屈伸並びに伸縮操作、作業台18の首振り操作等を作動軸ごとに単独で行うことができるようになっている。また、ブーム操作装置18aには作業台8の移動方向を指令することで、上記各作動軸の作動を複合的に制御し、作業台18を水平面内で直線移動させる水平移動操作、および垂直面内で直線移動させる垂直移動操作を行うことができるようになっている。このような屈伸ブーム10に対する操作を総称して「ブーム操作」と称する。
このため、作業台18に搭乗した作業者がブーム操作装置18aを操作することで、旋回台11の旋回制御、ロアブーム12の起伏および伸縮制御、アッパーブーム15の屈伸および伸縮制御を行って屈伸ブーム10を作動させて、作業台18を所望の高所に移動させことができるようになっている。
ブーム操作装置18aにおいてブーム操作がなされると、図2に示すように、ブーム操作装置18aは操作内容に対応した操作信号を車体側に設けられたコントロールユニット30に出力する。コントロールユニット30は、ブーム操作装置18aから操作信号を受けると、操作信号に基づいた指令信号を油圧ユニット40に出力する。なお、図2では電気的または光学的信号回路を実線で示し、油圧回路を点線で表示している。
油圧ユニット40は、作動油を貯留するタンク41、エンジンまたは電動モータにより駆動されて所定油圧・流量の作動油を吐出する油圧ポンプ42、油圧ポンプ42から吐出される作動油を指令信号に基づいた供給方向および供給量で旋回モータ6、ロア起伏シリンダ13、ロア伸縮シリンダ14、アッパー屈伸シリンダ16、アッパー伸縮シリンダ17、首振モータ19、アウトリガジャッキ5からなる油圧アクチュエータ50に供給制御する電磁比例弁V1〜V7から構成されている。油圧ユニット40は、コントロールユニット30からの指令信号に応じて各油圧アクチュエータ50に供給する作動油の流れを制御し、もって各油圧アクチュエータ50の作動を制御するユニットである。
コントロールユニット30には、車体2に対するロアブーム12、アッパーブーム15および作業台18の位置を検出するためのブーム位置検出装置20からの検出信号も入力されている。ブーム位置検出装置20は、車体2に対する旋回台11の旋回角度を検出する旋回角度検出器21、車体2に対するロアブーム12の起伏角度を検出する起伏角度検出器22、ロアブーム12の伸縮長を検出するロア伸縮長検出器23、ロアブーム12に対するアッパーブーム15の屈伸角度を検出する屈伸角度検出器24、アッパーブーム15の伸縮長を検出するアッパー伸縮長検出器25、アッパーブーム15(垂直ポスト)に対する作業台18の首振角度を検出する首振角度検出器26、車体2の傾斜角度を検出する車体傾斜角度検出器27等から構成されており、各検出値がコントロールユニット30に入力されている。また、アウトリガジャッキ5にはジャッキの車体幅方向への張出量を検出するジャッキ張出量検出器28が設けられており、その検出値がコントロールユニット30に入力されている。
コントロールユニット30は、ユニット内部に演算処理回路31、ROM32、規制領域設定部33および規制判定部34を有して構成される。ROM32には、高所作業車1を構成するロアブーム12、アッパーブーム15および作業台18の各パーツの外形形状データが記憶されている。演算処理回路31は、ブーム位置検出装置20から入力される検出信号に基づき、車体2に対するロアブーム12、アッパーブーム15および作業台18の外形部分の位置を演算処理して求める回路である。規制領域設定部33は、車体2の前後および側方の周囲に、ロアブーム12、アッパーブーム15および作業台18の少なくとも一部が移動して入り込むことを規制する移動規制領域を設定するための回路であり、この設定方法については後述する。規制判定部34は、演算処理回路31における処理結果と、規制領域設定部33において設定された移動規制領域とを比較して、ロアブーム12、アッパーブーム15および作業台18の少なくとも一部が移動規制領域内に位置するか否かの判定を行うものであり、この判定については後述する。
ブーム操作装置18aには、規制領域設定部33および規制判定部34を機能させるか否かの切換を行うための切換スイッチ18bが設けられている。この切換スイッチ18bによって、規制領域設定部33および規制判定部34が機能するように選択されている間は上記規制状態表示ランプ3aが点灯状態となっており、規制状態であることが周囲の作業者に分かるようになっている。
以上、ここまでは、高所作業車1の概略構成について説明した。このように構成された高所作業車1を用いて高所作業を行う場合には、作業場所の近傍に高所作業車1を停車させてアウトリガジャッキ5により車体2を持ち上げ支持させた上で、作業台18を所望の高所に移動させる。この高所作業車1を用いて行われる高所作業の具体例として、図3に示すように、片側1車線の道路Rの両端に電力共同柱P1と引き込み柱P2とが設けられた場所において、電力共同柱P1の電線Dを分岐させて引き込み柱P2に繋ぎ、引き込み柱P2に繋いだ電線Dを家屋P3に引き込む作業を行う場合を例示して説明する。
この引き込み作業においては、まず図3に示すように、電力共同柱P1に繋がれた電線Dを分岐させた上で、分岐させた電線Dを引き込み柱P2を介して家屋P3に繋ぐ必要がある。そのため、作業手順としては、まず作業台18を電力共同柱P1の上部に移動させて高所作業を行い(図3参照)、次に引き込み柱P2の上部に移動させて高所作業を行い(図5参照)、最後に家屋P3の上部に移動させて高所作業が行われる(図6参照)。
このときに、例えば道路Rの引き込み柱P2側の車線に高所作業車1を停車させたままで、屈伸ブーム10を起伏および屈伸等させることにより、電力共同柱P1の上部に作業台18を到達させることは可能ではあるが、屈伸ブーム10および作業台18の移動位置によっては、電力共同柱P1側の車線を走行する通行車両Tと接触する虞がある。そのため従来は、例えば引き込み柱P2側の車線に高所作業車1を停車させて、引き込み柱P2側の車線に加えて電力共同柱P1側の車線も通行止めとする、すなわち道路Rを完全に通行止めとして高所作業を行ったり、あるいは、電力共同柱P1側の車線に停車させて電力共同柱P1に対して作業を行った後、引き込み柱P2側の車線に移動させて引き込み柱P2および家屋P3に対して作業を行っていた。このため、道路Rを完全に通行止めとすることで交通渋滞が発生したり、あるいは、作業の途中で一旦高所作業車1を移動させることで作業効率が低下するという課題があった。
このような課題に対し、本発明を適用した高所作業車1においては、例えば道路Rの引き込み柱P2側の車線に高所作業車1を停車させたままで、電力共同柱P1の上部に作業台18を到達させて作業を行う場合であっても、電力共同柱P1側の車線を走行する通行車両Tと屈伸ブーム10(作業台18)との接触が確実に回避できる構成となっており、高所作業車1はこの構成を特徴構成としている。それでは、この特徴構成について以下に詳しく説明する。
図3に示す引き込み作業を行う場合には、例えば引き込み柱P2に近い側の車線に沿って高所作業車1を停車させ、アウトリガジャッキ5を車体幅方向に拡幅伸長させた上で、下方に張り出させて車体2を持ち上げ支持させる。作業台18に搭乗した作業者はブーム操作装置18aを操作して、作業台18を電力共同柱P1の上部の作業位置に移動させる。このとき作業者は、移動目標である電力共同柱P1の上部に気を取られがちであり、作業者から見て下方に位置する通行車両Tと屈伸ブーム10とが接触するか否かについて、十分に配慮しながらブーム操作装置18aを操作するのは難しい。そこで、走行する通行車両Tを跨いで作業台18を移動させる場合、作業台18に搭乗した作業者が切換スイッチ18bをオン操作した上で、車体2の左側側方(通行車両Tが走行する側)に移動規制領域SLを設定する。
この移動規制領域SLの設定方法の一例について、以下に説明する。作業者は、車体2に設けられたジャッキ操作装置(図示せず)を操作して、アウトリガジャッキ5を左右側方に張り出させるとともに、その側方に張り出させた状態で下方に伸長させることで、アウトリガジャッキ5の下端部を接地させて車体2を持ち上げ支持させる。このとき、車体2の左側に設けられたアウトリガジャッキ5は、電力共同柱P1側の車線にはみ出さして通行車両Tと接触しないように左側側方への張り出しが行われる。このようにしてアウトリガジャッキ5に対する操作が完了すると、コントローラ30の規制領域設定部33においては、ジャッキ張出量検出器28から入力された張出量のうち、車体2左側に配設されたアウトリガジャッキ5の車体幅方向への張出量を基にして、車体2に対するこのアウトリガジャッキ5の車体幅方向の張り出し位置を検出する。続いて規制領域設定部33では、このようにして検出されたアウトリガジャッキ5の車体幅方向の張り出し位置に対して、所定距離だけ左側側方に、車体2の前後方向に平行且つ略垂直に延びる垂直面SVが設定される。ここまでの説明から分かるように、この垂直面SVは車体2に対して相対的(仮想的)に設定された面である。なお、上記所定距離は、車体2に備えられた入力装置(図示せず)を介して作業者によってコントロールユニット30に入力される構成でも良く、または、予めROM32に記憶させておき、必要に応じて規制領域設定部33によって自動的に読み出される構成でも良い。
また、規制領域設定部33においては、上記垂直面SVの設定と併せて略水平方向に広がった水平面SHの設定が行われる。ここで、道路Rを通行することが想定される車両は、特段の事情がなければその高さが3.8m以内に限定されており、若干の余裕を持たせて例えば高さ4.2m程度の高さ位置に仮想的に水平面SHを設定し、この水平面SHを越えて下方に移動させる屈伸ブーム10の作動を規制することで、通行車両Tと屈伸ブーム10との接触を確実に防止できる。ところで、演算処理回路31で得られる屈伸ブーム10の移動位置は、図2に示す各検出器における検出結果を基にして算出されることから分かるように、車体2に対する相対位置として求められるものである。よって、例えばアウトリガジャッキ5の下方への伸長量が多い場合と少ない場合とでは、演算処理回路31において屈伸ブーム10の高さ位置が同一位置と検出されたとしても、アウトリガジャッキ5の下方への伸長量の差の分だけ、道路Rからの実際の屈伸ブーム10の高さ位置が異なることとなる。そこで、規制領域設定部33において、図示しないセンサによって検出されたアウトリガジャッキ5の下方への伸長量を反映させて水平面SHを設定することにより、アウトリガジャッキ5を下方へ伸長させて接地させた場合であっても、道路Rから約4.2mの高さ位置に水平面SHを設定できるようになっている。このようにして、車体2に対して相対的に設定された垂直面SVと水平面SHとによって囲まれた領域のうちで、垂直面SVよりも車体2の側方外側で且つ水平面SHの下方の領域が移動規制領域SLとして設定される
ところで、演算処理回路31おいては、例えばアッパーブーム15の外形部分の位置を演算するときに、アッパー第1ブーム15aの外形形状を有したものが、アッパー伸縮長検出器25により検出された伸縮長だけ伸びて位置しているとして求められる。具体的には図4に示すように、アッパーブーム15のうちでアッパー第2ブーム15bの位置を、最も大きな外形形状を有したアッパー第1ブーム15aの外形形状で置き換えて求められるように構成される。このように置き換えて位置を検出することで、屈伸ブーム10(アッパーブーム15)と通行車両Tとの接触を確実に回避しつつ演算処理負担を軽減させることができる。
上記移動規制領域SLが設定されると、規制判定部34において、演算処理回路31において求められた屈伸ブーム10および作業台18の外形部分の位置と、移動規制領域SLとが比較されて、屈伸ブーム10および作業台18の少なくとも一部が移動規制領域SL内に入り込んで位置するか否かの判定が行われる。その判定について、図4を参照しながら以下の2つの場合を例示して説明する。
図4に示す状態において、作業台18に搭乗した作業者がブーム操作装置18aを操作して、アッパー第2ブーム15bを伸長させる場合(屈伸ブーム10および作業台18の少なくとも一部が移動規制領域SL内に入り込まない場合)について説明する。このとき、コントロールユニット30は、油圧ユニット40のうちでアッパー伸縮シリンダ17の作動を制御する電磁比例弁V5に対して、ブーム操作装置18aの操作に応じた指令信号を出力し、この指令信号に応じた供給方向および供給量の差動油をアッパー伸縮シリンダ17に供給することで、アッパー第2ブーム15bを伸長させる。このようにしてアッパー第2ブーム15bが伸長される過程で、規制判定部34において、屈伸ブーム10(2点鎖線15cで示す部分)の少なくとも一部が移動規制領域SLに入り込むと判定されることはなく、このアッパー第2ブーム15bを伸長させる操作に応じてアッパー第2ブーム15bが伸長される。
次に、図4に示す状態において、作業台18に搭乗した作業者がブーム操作装置18aに対して、アッパーブーム15を矢印Aの方向(屈伸ブーム10の一部が移動規制領域SL内に入り込む方向)に起伏させる操作を行う場合について説明する。図4に示す状態から徐々にアッパーブーム15を矢印Aの方向に起伏させていくと、ある時点において、アッパーブーム15(2点鎖線15cで示す部分)が移動規制領域SLに入り込むと規制判定部34で判定される。規制判定部34でこのように判定されると、コントロールユニット30は、ブーム操作装置18aに対してアッパーブーム15を矢印Aの方向に起伏させる操作が継続されている場合であっても、アッパーブーム15を矢印Aの方向に起伏させる作動油がそれ以上アッパー屈伸シリンダ16に供給されないように、電磁比例弁V4に対して指令信号を出力して作動規制を行う。
そうすることにより、屈伸ブーム10および作業台18の少なくとも一部が移動規制領域SLに入り込むことが自動的に防止されるので、下方を走行する通行車両Tとの接触が確実に回避され、高所作業の安全が確保される。なお、この作動規制と同時に、コントロールユニット30から警報装置34に対して指令信号が出力されて、例えば警報音を発する等の警報作動がなされるように構成しても良い。このように構成すると、作業者は故障で起伏作動が停止したのではなく、作動規制によって起伏作動が停止したことを認識することができる。
このように、本発明を適用した高所作業車1においては、屈伸ブーム10および作業台18の一部が、通行車両Tが通過する移動規制領域SLに入り込む作動が自動的に規制されるので、通行車両Tとの接触を確実に防止して高所作業の安全を十分に確保した上で、移動規制領域SLを跨ぐように作業台18を移動させて高所作業を行うことができる。そのため従来であれば、道路Rを完全に通行止めにしたり、あるいは高所作業の途中で高所作業車を移動させたりする必要があったが、本発明を適用した高所作業車1においてはそのような規制および移動を行う必要がないので、従来のように交通渋滞を引き起こすことなく且つ作業効率を向上させることが可能となる。
このようにして、屈伸ブーム10および作業台18の一部が移動規制領域SLに入り込む作動を自動的に規制しながら電力共同柱P1に対する高所作業が終了すると、作業者はブーム操作装置18aを操作して、作業台18を引き込み柱P2の上部に移動させる(図5参照)。そして、引き込み柱P2に対して電線Dを繋ぐ高所作業を行うときに、作業者がブーム操作を行うことがあるが、このときに屈伸ブーム10の一部(例えばロアブーム12の先端部分)が移動規制領域SLに入り込むように操作される場合があり得る。このような場合であっても、演算処理回路31における処理結果と、規制領域設定部33において設定された移動規制領域SLとが比較されることで、屈伸ブーム10および作業台18の少なくとも一部が移動規制領域SL内に移動する作動が自動で規制される。すなわち、引き込み柱P2に対して高所作業を行うときにも、通行車両Tと屈伸ブーム10との接触が確実に回避されて、作業の安全が確保されている。
引き込み柱P2に対する高所作業が終了すると、次に、作業台18を家屋P3に接近させるように移動させ、電線Dを家屋P3に繋ぐ高所作業を行う(図6参照)。家屋P3に対して高所作業を行うときにも作業者によってブーム操作が行われることがあるが、この場合も、演算処理回路31における処理結果と、規制領域設定部33において設定された移動規制領域SLとが比較されることで、屈伸ブーム10および作業台18の少なくとも一部が移動規制領域SL内に移動する作動が自動で規制される。よって、家屋P3に対して高所作業を行うときであっても、通行車両Tと屈伸ブーム10との接触が確実に防止されるようになっており、作業の安全が確保されている。
以上説明したように、電力共同柱P1から分岐させた電線Dを引き込み柱P2を介して家屋P3に引き込む作業を行う場合に、高所作業の安全を十分に確保しつつ、例えば道路Rの引き込み柱P2側の車線に高所作業車1を停車させたままで全ての高所作業を効率良く行うことが可能となる。
ところで、高所作業車1のアウトリガジャッキ5は、車体2の転倒を防止する観点から例えば道路の傾斜に関らず車体2が水平に持ち上げ支持されるように、その張り出し量が自動で調整されるように構成されている。例えば図7に示すような傾斜路面rにおいて、傾斜下方に向けて高所作業車1を停車させてアウトリガジャッキ5を張り出すと、車体2の後部に配設されたアウトリガジャッキ5に対し、車体2の前部に配設されたアウトリガジャッキ5の方が自動で大きく下方に伸長され、傾斜路面rの傾斜に関らず高所作業車1(車体2)が略水平に持ち上げ支持される。この場合に、水平面SHを略水平に設定すると(図7に2点鎖線で示す水平面SH')、車体2の前部では十分な規制高さH1(例えば4.2m程度)が確保されるものの、車体2の後部では規制高さH2(例えば3m程度)しか確保できない。
なお、傾斜路面rの傾斜に関らず車体2が自動で略水平に持ち上げ支持される構成に代えて、作業者がアウトリガジャッキ5の各々の下方への伸長量を調整することで、車体2が略水平に持ち上げ支持される構成でも良い。
水平面SH'を基にしてブーム10の作動を規制する場合、車体2の後部においては規制高さH2の位置にまで作業台18を降下させる作動が許容されることとなり、例えば傾斜路面rからの高さが3.2m程度の車両が作業台18の下方を通過するときには、この通行車両と作業台18との接触が起こり得る。
そこで、本発明に係る高所作業車1では、傾斜路面rの傾斜に関らず車体2が略水平に持ち上げ支持される場合であっても、絶対水平に対する傾斜路面rの傾斜角度に応じて傾斜させて水平面SHを設定するように構成されている。この水平面SHの設定について図7を参照しながら詳しく説明すると、コントローラ30は車体傾斜角度検出器27によって検出された車体2の傾斜角度のうち、高所作業車1を停車させた後でいずれかのアウトリガジャッキ5が接地する直前の車体2の傾斜角度を基にして、この傾斜角度と略平行となるように水平面SHを設定する。そうすることで、高所作業車1が停車した道路が傾斜している場合であって車体2が略水平に持ち上げ支持される場合であっても、車体2の前部および後部において規制高さH1が確保された移動規制領域が設定され、屈伸ブーム10(作業台18)とその下方を通過する通行車両との接触が確実に防止される。
なお、いずれかのアウトリガジャッキ5が接地する直前に検出された車体2の傾斜角度を基にして水平面SHを設定する構成に代えて、走行用エンジンの駆動力を屈伸ブーム10の作動のために取り出す切り替えを行うPTOレバーが操作されたときの車体2の傾斜角度を用いても良い。また、図7では、前後に長く構成された車体2の構成上、傾斜路面rの影響を特に受け易い車体2の前後方向の傾斜について説明したが、これに代えてもしくはこれに加えて、車体2の左右方向の傾斜を基にして、路面と略平行となるように水平面SHを設定する構成も可能である。
上述の実施形態においては、高所作業車1の停車位置に対応させて、高所作業車1の左側側方に移動規制領域SLを設定する例を説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、図8(a)に示すように、高所作業車1の右側側方に移動規制領域SRを設定する構成や、図8(b)に示すように、高所作業車1の左右両側方に移動規制領域SL、SRを設定する構成も可能である。また、図8(b)に示す構成において、作業環境に応じて移動規制領域SL、SRのどちらか一方を選択して機能させる構成でも良い。
また、上述の実施形態において、アウトリガジャッキ5の車体幅方向への張出量を基にして垂直面SVが設定される構成を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定して解釈されるものではない。例えば、車体2のうちで最も左右側方に突出する部分を基準にして垂直面SVを設定する構成でも良く、例えば運転キャブ3のサイドミラーを基準にして設定する構成でも良い。
上述の実施形態においては、垂直方向に延びた垂直面SVおよび水平方向に延びた水平面SHを基にして移動規制領域を設定する構成例について説明したが、本発明はこの構成例に限定されるものではない。例えば、垂直方向に対して若干斜めに傾斜させて垂直面SVを設定したり、水平方向に対して若干斜めに傾斜させて水平面SHを設定する構成も可能である。また、垂直面SVと水平面SHとの接合部分を一部切り欠いて移動規制領域を設定する構成も可能である。
上述の実施形態では、通行車両が通行する道路Rに適用させた移動規制領域を設定する例を説明したが、この例以外にも、例えば屈伸ブーム10との接触を回避させたい対象物の高さが予め分かっている場合には、移動規制領域(水平面SH)をその対象物の高さよりも高く設定しておくことで、対象物にブームや作業台を干渉させることなく安全に高所作業を行うことができる。
上述の実施形態においては、屈伸ブーム10および作業台18の少なくとも一部が移動規制領域に入り込む作動を規制(屈伸ブーム10または作業台18の移動を強制的に停止)する構成を示して説明したが、このように作動が一旦規制された場合であっても、移動規制領域に入り込む作動を行わせても接触が発生しないと作業者によって判断されたときに、このような作動を許容する構成としても良い。このように構成とした場合、接触を回避しつつ使い勝手を向上させることができる。
また、上述の実施形態においては、屈伸ブーム10を備えた高所作業車に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこのタイプの高所作業車に限定して適用されるものではない。例えば図9(a)に示すように、車体110上に旋回可能に旋回台120を設け、この旋回台120に対して、基端ブーム131、中間ブーム132および先端ブーム133からなるブーム130を起伏可能に取り付けた構成の高所作業車100においても、本発明を適用可能である。また、図9(b)に示すように、旋回台220に対して起伏可能に一対の平行リンク225を取り付け、この平行リンク225の先端部に基端ブーム231および先端ブーム232からなるブーム230を屈伸可能に取り付けた構成の高所作業車200においても、同様に本発明を適用可能である。
上述の実施形態では、規制領域設定部33において、アウトリガジャッキ5の張り出し位置から所定距離だけ車幅外側に離れた位置に、車体2の前後方向と平行に垂直面SVが設定される構成を例示して説明した。この垂直面SVの設定方法に代えて、車体2前部のアウトリガジャッキ5の張り出し位置と車体2後部のアウトリガジャッキ5の張り出し位置とを繋いだラインに対して平行となるように、垂直面SVを設定することも可能である。あるいは、高所作業車1の停車位置等によっては、車体2前部のアウトリガジャッキ5と車体2後部のアウトリガジャッキ5とで、車体幅方向への張り出し位置が異なる場合があるが、このような場合に、最も車幅外側に張り出したアウトリガジャッキ5の張り出し位置から所定距離だけ車幅外側に離れた位置に、車体2の前後方向と平行に垂直面SVを設定することも可能である。
上述の実施形態において、高所作業車1の側方に移動規制領域を設定する例を示して説明したが、高所作業車1の側方に加えて高所作業車1の前方や後方にも同様に移動規制領域を設定する構成も可能である。このように構成すると、接触を回避させたい物体が車体2の側方および前後のどの位置にある場合でも対応可能となる。また、高所作業車1の前方または後方に垂直面SVを設定する場合、車体2の前部(後部)から前方(後方)に所定距離だけ離れた位置に、車体2の前部(後部)と平行に垂直面SVを設定する構成でも良く、または、車体2の前部(後部)に対して斜めに垂直面SVを設定する構成でも良い。
上述の実施形態においては、通行車両Tが走行する車線と高所作業車1が停車する車線とに段差がない場合(道路Rが平らな場合)について説明したが、作業環境によっては、通行車両Tが走行する車線と高所作業車1が停車する車線とに段差がある場合があり得る。このような場合には、例えば作業者がこの段差高さを測定し、測定結果をコントロールユニット30に入力して段差高さを水平面SHの設定に反映させることで、通行車両Tが走行する路面Rから高さ約4.2mの位置に水平面SHを設定することができる。
上述の実施形態では、車体2の前後方向に対して平行に垂直面SVを設定する例について説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、車体2の前後方向に対して斜めに垂直面SVを設定したり、または、曲線状に垂直面SVを設定する構成も可能である。このように構成することで、例えば車線に対して高所作業車1が斜めに停車された場合であっても、確実に通行車両との接触を回避することが可能となる。
上述の実施形態においては、垂直面SVの設定方法として、作業者がコントロールユニット30に所定距離を入力する手動設定方法、および、規制領域設定部33によってROM32に記憶された所定距離が自動で読み出される自動設定方法を例示して説明したが、本発明はこれらの設定方法に限定されるものではない。例えば、規制領域設定部33によってROM32に記憶された所定距離が読み出され、車体2の前後方向に対して平行に垂直面SVが自動で設定された後、この垂直面SVを車体2の前後方向に対して任意の向きに傾ける操作を作業者が手動で行う構成、すなわち、自動設定部分と手動設定部分とを組み合わせた半自動による設定方法を用いることも可能である。