JP7079083B2 - 手指消毒実施モニタリングシステム - Google Patents

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Description

本明細書中に開示されている発明は、手指消毒実施モニタリングシステムに関する。
図16は、手指消毒実施モニタリングシステムの一従来例を示す図である。本従来例の手指消毒実施モニタリングシステムでは、病院内の必要個所(病室1、病室2、…、病室nほか)に消毒薬(1a、1b、1c、2a、2b、2c、…)が設置されており、それぞれの消毒薬から、その使用時に使用されたことを示す情報が発信されて、無線で病院管理サーバー1に送信される。この情報を集計し、各消毒薬の使用回数が集計されている。
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
特表2013-539087号公報
しかしながら、上記従来例の手指消毒実施モニタリングシステムでは、手指消毒を実施した職員を特定することができず、見舞客の使用実績も含んでしまい、詳細な解析を行うことができない。そのため、病院内での業務改善を検討するために大きな力を発揮するものではなく、院内感染拡大時の原因特定に貢献する情報提供も難しい。
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者らにより見出された上記の課題に鑑み、病院内での業務改善や院内感染拡大時の原因特定に貢献することのできる手指消毒実施モニタリングシステムを提供することを目的とする。
本明細書中に開示されている手指消毒実施モニタリングシステムは、病院職員の名札に搭載された第1送受信モジュールと、消毒薬のディスペンサに内蔵された第2送受信モジュールと、クライアント端末と、病院管理サーバーと、を有し、前記第2送受信モジュールは、前記第1送受信モジュールとの近距離無線通信を行い、その通信結果に応じて、少なくとも、職員ID、ディスペンサID、及び、洗浄実施フラグを含むデータを前記クライアント端末に送信し、前記クライアント端末は、前記第2送受信モジュールから送信されたデータにタイムスタンプを付与して前記病院管理サーバーに転送し、前記病院管理サーバーは、前記クライアント端末から転送されたデータを手指消毒リストに記録する構成(第1の構成)とされている。
なお、第1の構成から成る手指消毒実施モニタリングシステムにおいて、前記第1送受信モジュールは、前記職員IDを間欠的に送信し、前記第2送受信モジュールは、前記職員IDを受信してから第1時間内に前記ディスペンサが使用された場合、前記消毒実施フラグを前記第1送受信モジュールに送信し、前記第1送受信モジュールは、前記消毒実施フラグに前記職員IDを付与した第1データを生成して前記第2送受信モジュールに返信し、前記第2送受信モジュールは、前記第1データに前記ディスペンサIDを付与した第2データを生成して前記クライアント端末に送信する構成(第2の構成)にするとよい。
また、上記第2の構成から成る手指消毒実施モニタリングシステムにおいて、前記第2送受信モジュールは、前記職員IDを受信した場合、前記職員IDに前記ディスペンサIDを付与した第3データを生成して前記クライアント端末に送信し、前記クライアント端末は、病室の前に設置された複数のディスペンサからそれぞれ受信した第3データにタイムスタンプを逐一付与し、それぞれの検知時刻の差分値と所定の第2時間とを比較することにより、前記病院職員が前記病室の前を通過したか否かを判断する構成(第3の構成)にするとよい。
また、第3の構成から成る手指消毒実施モニタリングシステムにおいて、前記クライアント端末は、前記病院職員が前記病室の前を通過しておらず、かつ、前記病室の前に設置されたディスペンサ近傍での滞在時間が前記第1時間よりも短いと判断した場合に、ワーニングコマンドを前記第1送受信モジュールに送信し、前記第1送受信モジュールは、前記ワーニングコマンドを受信して前記病院職員へのワーニングを実行する構成(第4の構成)にするとよい。
また、上記第1~第4いずれかの構成から成る手指消毒実施モニタリングシステムにおいて、前記第1送受信モジュール及び前記第2送受信モジュールは、いずれも、エネルギーハーベストを使用した無線通信モジュールである構成(第5の構成)にするとよい。
また、上記第1~第5いずれかの構成から成る手指消毒実施モニタリングシステムにおいて、前記第1送受信モジュール及び前記第2送受信モジュールと前記クライアント端末との間では、特定小電力無線局を経由してデータの送受信が行われる構成(第6の構成)にするとよい。
また、上記第1~第6いずれかの構成から成る手指消毒実施モニタリングシステムにおいて、前記第1送受信モジュール及び前記第2送受信モジュールそれぞれの通信距離は、前記病院職員が手指消毒を行う際に消毒実施者全員を認識することのできる最短の距離に設定されている構成(第7の構成)にするとよい。
また、上記第1~第7いずれかの構成から成る手指消毒実施モニタリングシステムにおいて、廊下の側に設置された前記ディスペンサは、前記廊下を通過する前記病院職員が装着している前記第1送受信モジュールを認識することのできる最短の距離に設置されている構成(第8の構成)にするとよい。
また、上記第1~第8いずれかの構成から成る手指消毒実施モニタリングシステムにおいて、前記病院管理システムは、病院全体、消毒薬毎、病棟毎、フロア毎、診療科毎、作業チーム毎、職員個人毎、ないしは、設定グループ毎に、手指消毒実施実績をモニタリングする構成(第9の構成)にするとよい。
また、上記第1~第9のいずれかの構成から成る手指消毒実施モニタリングシステムにおいて、前記病院管理システムは、病院全体、病棟毎、フロア毎、診療科毎、作業チーム毎、職員個人毎、ないしは、設定グループ毎に、病院職員の動線をモニタリングする構成(第10の構成)にするとよい。
本明細書中に開示されている発明によれば、手指消毒を行う個々人の実施結果を把握でき、実施結果を基に院内感染が広がった場合の発生源や発生原因の解析支援を行うことにより、職員の手指消毒における業務モニタリングや解析を詳細に行うことが可能になる。また、合わせて、各職員の動線を管理することで、病棟内における職員の動きを把握し、各職員の業務課題などを抽出することが可能となる。
手指消毒実施モニタリングシステムの全体構成を示す図 手指消毒実施モニタリングシステムの一動作例を示す図 ユーザー登録の一例を示すフローチャート 消毒薬登録の一例を示すフローチャート マスターメンテナンス画面の一例を示す図 マスターメンテナンス画面の一例を示す図 ユーザー登録画面の一例を示す図 ユーザーリストの一例を示す図 消毒薬登録画面の一例を示す図 消毒薬リストの一例を示す図 消毒薬による手指消毒が実施された場合の処理を示すフローチャート 手指消毒実施リストの一例を示す図 消毒薬による手指消毒が未実施である場合の処理を示すフローチャート 消毒薬による手指消毒が未実施である場合の処理を示すフローチャート 病院内ロケーションに合わせたビジュアルな使用実績表現の一例を示す図 病院職員のビジュアルな動線表現の一例を示す図 手指消毒実施モニタリングシステムの一従来例を示す図
<システムの全体と概要>
図1は、手指消毒実施モニタリングシステム(以下では「本システム」と略称する場合がある)の全体構成を示す図である。本システムにおいて、病院職員(医師や看護師などの医療従事者であり、以下では、単に「職員」と略称する場合がある)の名札にそれぞれ搭載された送受信モジュールa1から間欠的に発信されている信号が、消毒薬(擦式手指消毒薬、手指洗浄消毒薬、液状石鹸など)のディスペンサに内蔵された送受信モジュールa2に受信されると、当該信号は、特定小電力無線局a3(図面中では「特小」と略記する場合がある)を経由して、クライアントパソコンb1に無線で送信される。そして、クライアントパソコンb1において、受信されたデータにタイムスタンプが付与される。
このデータ(名札ID、ディスペンサID、タイムスタンプ)は、クライアントパソコンb1から病院管理サーバーb2(いわゆるHIS[hospital information systems])に送信される。病院管理サーバーb2には、本システムのアプリケーションソフトウェアa4がインストールされており、ここで全データの保管や加工などが行われる。
なお、消毒薬のディスペンサは、病院内の各所(病室、廊下、洗面台など)に複数設置されており、それぞれの設置場所は固定である。また、クライアントパソコンb1は、例えば、病棟(ナースステーション)や医局などに置かれている。
また、送受信モジュールa1及びa2としては、例えば、エネルギーハーベストを使用したバッテリーレス・ワイヤレスの無線通信モジュール(EnOceanなど)を用いることが望ましい。ただし、送受信モジュールa1及びa2の電源については、必ずしも環境発電のみに依存する必要はなく、電池駆動としてもよく、或いは、環境発電と電池の併用駆動としてもよい。
また、特定小電力無線局a3は、送受信モジュールa1及びa2とともに、名札やディスペンサに内蔵すればよい。また、クライアントパソコンb1には、例えば、受信用USB[universal serial bus]モジュールとして装着すればよい。
図2は、手指消毒実施モニタリングシステムの一動作例を示す図である。例えば、名札を装着している職員が消毒薬を使用して手を消毒した場合、その使用時にディスペンサの送受信モジュールa2から消毒実施フラグ(=ディスペンサ使用フラグ)が発信されて、名札の送受信モジュールa1に受信される。そして、消毒実施フラグと名札IDがパケットとされて、ディスペンサの送受信モジュールa2に送信され、ここから特定小電力無線局a3を経由して、クライアントパソコンb1に無線で送信される。そして、クライアントパソコンb1において、受信されたデータにタイムスタンプが付与される。このデータ(名札ID、ディスペンサID、消毒実施フラグ、タイムスタンプ)は、クライアントパソコンb1から病院管理サーバーb2に送信される。
名札の送受信モジュールa1から間欠的に発信される信号の到達距離、及び、ディスペンサの送受信モジュールa2による受信距離は、いずれも至近距離に調整されている(図1の破線円を参照)。このことにより、複数の信号の同時受信が制限されるので、個々のIDを特定することが可能となる。
また、名札の送受信モジュールa1から間欠的に発信される信号に関しては、ディスペンサの送受信モジュールa2で適度に受信することができるように、職員の移動スピードを考慮して信号発信のインターバルを適宜設定しておくことが望ましい。
病院管理サーバーb2では、収集されたデータを用いて、消毒薬の使用実績解析や職員の動線解析などを行う。
<ユーザー登録>
図3は、ユーザー登録(使用職員登録)の一例を示すフローチャートである。本システムの使用を行う職員は、職員ID(例えば、名札IDと送受信モジュールID)、氏名、所属、担当病棟などを登録する必要がある。その手順は、次の通りである。
まず、本システムの管理者権限を持つ職員(以下ではシステム管理者と呼ぶ)は、クライアントパソコンb1から病院管理サーバーb2にアクセスし、メインメニュー画面の要求を行う(ステップS1)。この要求を受けた病院管理サーバーb2は、クライアントパソコンb1にメインメニュー画面の送信を行う(ステップS11)。なお、メインメニュー画面は、図5の通りであり、例えば、手指消毒実施実績ボタン、作業動線解析ボタン、及び、マスターメンテナンスボタンが表示される。
次に、システム管理者は、メインメニュー画面のマスターメンテナンスボタンを選択して、マスターメンテナンス画面の要求を行う(ステップS2)。この要求を受けた病院管理サーバーb2は、クライアントパソコンb1にマスターメンテナンス画面の送信を行う(ステップS12)。なお、マスターメンテナンス画面は、図6の通りであり、例えば、消毒薬登録ボタンとユーザー登録ボタンが表示される。
次に、システム管理者は、マスターメンテナンス画面のユーザー登録ボタンを選択し、ユーザー登録画面の要求を行う(ステップS3)。この要求を受けた病院管理サーバーb2は、クライアントパソコンb1にユーザー登録画面の送信を行う(ステップS13)。なお、ユーザー登録画面は、図7の通りであり、各種のユーザー情報(名前、名札ID、送受信モジュールID、使用エリアなど)を登録するための入力ボックスが表示される。
次に、システム管理者は、各種のユーザー情報をユーザー登録画面に入力し、これを病院管理サーバーb2に送信する(ステップS4)。クライアントパソコンb1からユーザー情報の入力を受け付けた病院管理サーバーb2は、これをハードディスクのユーザーリストに登録する(ステップS14)。ユーザーリストは、図8の通りであり、例えば、登録No、名前、名札ID、送受信モジュールID、使用エリア、及び、登録日などのユーザー情報が登録される。
最後に、病院管理サーバーb2は、ユーザー登録が完了したことをクライアントパソコンb1に通知する(ステップS15)。このようにして一連のユーザー登録が完了する。
<消毒薬登録>
図4は、消毒薬登録(ディスペンサ登録)の一例を示すフローチャートである。本システムで使用される消毒薬は、ディスペンサID(例えば送受信モジュールID)、消毒薬種類、設置場所などを登録する必要がある。その手順は、次の通りである。
まず、システム管理者は、クライアントパソコンb1から病院管理サーバーb2にアクセスし、メインメニュー画面の要求を行う(ステップS5)。この要求を受けた病院管理サーバーb2は、クライアントパソコンb1にメインメニュー画面の送信を行う(ステップS16)。なお、メインメニュー画面は、図5の通りであり、例えば、手指消毒実施実績ボタン、作業動線解析ボタン、及び、マスターメンテナンスボタンが表示される。
次に、システム管理者は、メインメニュー画面のマスターメンテナンスボタンを選択して、マスターメンテナンス画面の要求を行う(ステップS6)。この要求を受けた病院管理サーバーb2は、クライアントパソコンb1にマスターメンテナンス画面の送信を行う(ステップS17)。なお、マスターメンテナンス画面は、図6の通りであり、例えば、消毒薬登録ボタンとユーザー登録ボタンが表示される。
次に、システム管理者は、マスターメンテナンス画面の消毒薬登録ボタンを選択して、消毒薬登録画面の要求を行う(ステップS7)。この要求を受けた病院管理サーバーb2は、クライアントパソコンb1に消毒薬登録画面を送信する(ステップS18)。なお、消毒薬登録画面は、図9の通りであり、各種の消毒薬情報(消毒薬種類、送受信モジュールID、設置場所など)を登録するための入力ボックスが表示される。
次に、システム管理者は、各種の消毒薬情報を消毒薬登録画面に入力し、これを病院管理サーバーb2に送信する(ステップS8)。クライアントパソコンb1から消毒薬情報の入力を受け付けた病院管理サーバーb2は、これをハードディスクの消毒薬リストに紐付けて登録する(ステップS19)。消毒薬リストは、図10の通りであり、例えば、登録No、消毒薬種類、製品名称、製造メーカー、登録日、使用(Y)/使用終了(N)などが登録されている。このように、図10の消毒薬リストでは、あくまで消毒薬の種類を設定しておき、消毒薬登録画面(図9)において、送受信モジュールIDや設置場所などを入力することにより、消毒薬登録を完了させる方式を採用するとよい。
最後に、病院管理サーバーb2は、消毒薬登録が完了したことをクライアントパソコンb1に通知する(ステップS20)。このようにして一連の消毒薬登録が完了する。
<消毒薬による手指消毒実施時の処理>
図11は、消毒薬による手指消毒(ないしは手指洗浄)を実施した場合の処理を示すフローチャートである。ここでは、ユーザー登録を済ませた職員Aが、病院内に設置された消毒薬のディスペンサBを用いて手指消毒を行った場合の処理について説明する。
このとき、職員Aが身に着けている名札の送受信モジュールa1からは、間欠的に信号が発信されている(ステップS101)。ディスペンサBは、職員Aが信号の受信距離に入った場合、送受信モジュールa2で職員Aの信号を受信する(ステップS201)。
職員AがディスペンサBを使用して手指消毒を実施すると、ディスペンサBに内蔵された送受信モジュールa2から消毒実施フラグ(ディスペンサBの使用フラグ)が発信される(ステップS202)。
このとき、ディスペンサBの至近距離にいる職員Aの名札に内蔵された送受信モジュールa1は、消毒実施フラグを受信し(ステップS102)、名札IDと消毒実施フラグを合わせたパケットを作成する(ステップS103)。このパケットをデータaと呼ぶ。
次に、名札に内蔵された送受信モジュールa1は、データaを至近距離にあるディスペンサBに内蔵された送受信モジュールa2に送信する(ステップS104)。ディスペンサBに内蔵された送受信モジュールa2は、データaを受信し(ステップS203)、データaにディスペンサIDを付与したパケットを生成する(ステップS204)。このパケットをデータbと呼ぶ。
ディスペンサBに内蔵された送受信モジュールa2は、特定小電力無線局a3を経由してデータbをクライアントパソコンb1に送信する(ステップS205)。クライアントパソコンb1は、データbを受信し(ステップS301)、データbにタイムスタンプを付与したパケットを生成する(ステップS302)。このパケットをデータcと呼ぶ。
クライアントパソコンb1は、データcを病院管理サーバーb2に送信する(ステップS303)。データcを受信した病院管理サーバーb2は、受信したデータcをハードディスクの手指消毒実施リストに記録する(ステップS401)。なお、手指消毒実施リストは、図12の通りであり、例えば、実施月日、実施時刻、名札ID(送受信モジュールID)、実施者ID、ディスペンサID(送受信モジュールID)、消毒薬種類、実施場所、消毒実施フラグ(ディスペンサ使用フラグ)、ワーニング有無、通過有無などが記録される。
上記一連の処理により、職員AがディスペンサBで手指消毒を行ったという使用履歴が記録される。
<消毒薬による手指消毒が未実施である場合の処理>
図13A及び図13Bは、消毒薬による手指消毒(ないしは手指洗浄)が未実施である場合の処理を示すフローチャートである。ここでは、ユーザー登録を済ませた職員Aが、病院内に設置された消毒薬のディスペンサBを用いて手指消毒を行うべきところ、その作業を失念してディスペンサBの近傍を素通りしてしまった場合の処理について説明する。なお、以下の説明では、ディスペンサBの近傍に存在する他のディスペンサを「ディスペンサC」と呼ぶ。
職員Aが身に着けている名札の送受信モジュールa1からは、間欠的に信号が発信されている(ステップS105及びS106)。ディスペンサBは、職員Aが信号の受信距離に入った場合、送受信モジュールa2で職員Aの信号を受信する(ステップS206)。そして、送受信モジュールa2は、名札IDとディスペンサIDを合わせたパケットを作成する(ステップS207)。このパケットをデータdと呼ぶ。
上記と同じく、ディスペンサCは、職員Aが信号の受信距離に入った場合、自身の送受信モジュールa2で職員Aの信号を受信する(ステップS209)。そして、送受信モジュールa2は、名札IDとディスペンサIDを合わせたパケットを作成する(ステップS210)。このパケットをデータfと呼ぶ。
そして、ディスペンサBに内蔵された送受信モジュールa2は、特定小電力無線局a3を経由してデータdをクライアントパソコンb1に送信する(ステップS208)。クライアントパソコンb1は、データdを受信し、データdにタイムスタンプ(時刻:TB)を付与したパケットを生成する(ステップS304)。このパケットをデータeと呼ぶ。
同様に、ディスペンサCに内蔵された送受信モジュールa2は、特定小電力無線局a3を経由してデータfをクライアントパソコンb1に送信する(ステップS211)。クライアントパソコンb1は、データfを受信し、データfにタイムスタンプ(時刻:TC)を付与したパケットを生成する(ステップS305)。このパケットをデータgと呼ぶ。
その後、クライアントパソコンb1は、|TC-TB|<Tmが満たされているか否かの判定を行う(ステップS306)。なお、閾値Tmは、職員Aが或る病室(=ディスペンサBの設置位置)と隣の病室(=ディスペンサCの設置位置)との間を通過したか否かを判定するために設定された第2時間T2に相当する。例えば、閾値Tmは、病室間の移動に要する平均所要時間に基づいて設定すればよい。ここでイエス判定が下された場合には、「通過」フラグが病院管理サーバーb2に通知される。
逆に、ステップS307でノー判定が下された場合、クライアントパソコンb1は、職員AがディスペンサBの近傍で停止している時間が閾値Twよりも短いか否かの判定を行う(ステップS307)。なお、閾値Twは、職員Aが手指消毒を失念したか否かを判定するために設定された第1時間T1に相当する。標準的なケースでは、T2>T1に設定すればよいと考えられる。ここでノー判定が下された場合には、「手洗」フラグが病院管理サーバーb2に通知される。
一方、ステップS308でイエス判定が下された場合、クライアントパソコンb1は、ワーニングコマンドを作成し、これを職員Aの名札に送信する(ステップS308)。名札の送受信モジュールa1は、このワーニングコマンドを受信し(ステップS107)、職員Aに対してワーニングを実行し、手指消毒の実施を促す(ステップS108)。
さらに、クライアントパソコンb1は、データeにワーニングのコメント(フラグ)を付与したパケットを生成する(ステップS309)。このパケットをデータhと呼ぶ。そして、クライアントパソコンb1は、データhを病院管理サーバーb2に送信する(ステップS310)。データhを受信した病院管理サーバーb2は、受信したデータhをハードディスクの手指消毒実施リストに記録する(ステップS402)。なお、手指消毒実施リストは、先出の図12の通りである。
上記一連の処理により、職員AがディスペンサBでの手指消毒を怠ったという使用履歴が記録される。
なお、本フローでは、基本的な考え方として、職員Aの行動の時間的差異を明確にするため、複数のディスペンサB及びCが異なる位置に設けられている。職員Aの名札から発信される信号がディスペンサBまたはCで受信されたら、その旨を示すフラグがクライアントパソコンb1に吸い上げられて、これにタイムスタンプが付与される。これにより、職員Aの移動状態がトレースできるようになる。
職員Aが病室に入ったのか、それとも、病室の前を通過したのかについては、各病室の前に設置されたディスペンサB及びCそれぞれの検知時刻の差分値(=|TC-TB|)から判断することができる。例えば、ディスペンサBからディスペンサCまで、閾値Tm以内に移動した場合には、ディスペンサBが設置された病室の前を通過したと判断することができる。
一方、上記の検出に閾値Tmよりも長い時間を要した場合や、ディスペンサBまたはCの片方で職員Aが検出されず、上記の差分値が算出できなかった場合には、職員Aが病室に入ったものと判断することができる。また、このとき、職員AがディスペンサBの近傍に滞在している時間が手指消毒の設定時間Twよりも短ければ、手指消毒をし忘れたまま患者に対する医療行為や看護作業などを行っていることが推測される。この場合には、クライアントパソコンb1から職員Aに対してワーニングを発することが望ましい。
<距離及び時間の設定>
まず、距離の設定について述べる。(a)職員と消毒薬ディスペンサ双方の送受信モジュールの通信距離は、職員が手指消毒を行う際に消毒実施者全員を認識することのできる最短の距離(=消毒薬の充填されたディスペンサで職員が手指消毒を実施するとき、職員の名札に装着された送受信モジュールから発信される信号に関して、ディスペンサとの距離の最も短い距離に相当)に自由に設定することができるものとする。(b)廊下の側に設置された消毒薬ディスペンサは、廊下を通過する職員が装着している送受信モジュールを認識することのできる距離(=廊下に設置されたディスペンサがこれに対面した廊下の端にいる職員の名札から発信される信号を検知することのできる距離に相当)に自由に設置することができるものとする。上記(a)及び(b)の発信を交互に行うことで、職員の消毒薬ディスペンサの使用状態、及び、職員のロケーション推定を行う。
次に、第1時間T1及び第2時間T2の設定について述べる。手指消毒実施者が消毒薬ディスペンサの送受信モジュールに認識され、手指消毒を実施するまでの第1時間T1を設定することができる。(a)この第1時間T1内に消毒薬のディスペンサから消毒実施の信号が発信された場合には、手指消毒実施と認識される。(b)この第1時間T1を超えた場合には、タイムアウトとする。そして、通過判断のために設定された第2時間T2内に他の消毒薬ディスペンサの送受信モジュールに認識された場合、通過情報として取り扱う。通過情報は動線管理に使用される。
<モニタリング>
病院管理サーバーb2に保管されたデータを基に、表やグラフを用いながら、事例として様々な状態の解析を行うことができる。なお、これらのモニタリング情報は、病院管理サーバーb2で管理されており、クライアントパソコンb1からも見ることができる。以下では、モニタリング項目の一例を列挙する。
a.病院全体での手指消毒実施実績/消毒薬毎(期間は設定時間、日単位、週単位、月単位、年単位、設定期間)。
b.病棟毎、フロア毎、診療科毎、作業チーム毎、職員個人毎、ないしは、設定グループ毎での手指消毒実施実績/消毒薬毎(期間は設定時間、日単位、週単位、月単位、年単位、設定期間)。
c.病院内ロケーションに合わせたビジュアルな使用実績表現(図14を参照)。
d.HIS[hospital information system]とのデータ連携を行うことで、入院患者の感染症試験結果および抗菌材使用状況がc.に付加してビジュアルに表現される。
e.職員の動線を、病院全体、病棟毎、フロア毎、診療科毎、作業チーム毎、職員個人毎、ないしは、設定グループ毎にビジュアルに表現される(図15を参照)。また、d.のモニタリング結果に重ね合わせて表現することができる。
<まとめ>
本システムでは、バッテリーレスのスウィッチモジュールを用いて手指消毒の実施状況を確認するとともに、送受信モジュールを適切な設定(電波の強さ、発信タイミング)にすることで実施者のロケーション情報を検知することができる。
また、本システムでは、送受信モジュールの通信距離を適切に設定した上で、ディスペンサ近傍における職員の待機時間をカウントすることにより、手指消毒の実施者個人について、「移動中」や「停止」などの動作区分を行い、病棟内における全職員のロケーション情報を自動的に取得することができる。
このように、本システムを病院に導入すれば、職員による手指消毒の実施状況を把握することが可能となる。また、取得した情報の収集や加工を行うことにより、手指消毒の実施状況をモニタリングし、院内感染拡大の防止や病院内の業務改善に活用することができるようになる。また、これと並行して、病棟内各所に設置された消毒薬の側を通過する職員の位置情報を把握し、職員個々の動線管理及び評価を行うことが可能となる。
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
本明細書中に開示されている発明は、病院内での業務改善や院内感染拡大時の原因特定に貢献することが可能である。
a1 送受信モジュール(名札)
a2 送受信モジュール(消毒薬)
a3 特定小電力無線局(受信用USBモジュール)
a4 アプリケーションソフトウェア
b1 クライアントパソコン
b2 病院管理サーバー
A 職員
B、C ディスペンサ

Claims (9)

  1. 病院職員の名札に搭載された第1送受信モジュールと、
    消毒薬のディスペンサに内蔵された第2送受信モジュールと、
    クライアント端末と、
    病院管理サーバーと、
    を有し、
    前記第2送受信モジュールは、前記第1送受信モジュールとの近距離無線通信を行い、その通信結果に応じて、少なくとも、職員ID、ディスペンサID、及び、消毒実施フラグを含むデータを前記クライアント端末に送信し、
    前記クライアント端末は、前記第2送受信モジュールから送信されたデータにタイムスタンプを付与して前記病院管理サーバーに転送し、
    前記病院管理サーバーは、前記クライアント端末から転送されたデータを手指消毒リストに記録し、
    前記第1送受信モジュールは、前記職員IDを間欠的に送信し、
    前記第2送受信モジュールは、前記職員IDを受信してから第1時間内に前記ディスペンサが使用された場合、前記消毒実施フラグを前記第1送受信モジュールに送信し、
    前記第1送受信モジュールは、前記消毒実施フラグに前記職員IDを付与した第1データを生成して前記第2送受信モジュールに返信し、
    前記第2送受信モジュールは、前記第1データに前記ディスペンサIDを付与した第2データを生成して前記クライアント端末に送信する手指消毒実施モニタリングシステム。
  2. 前記第2送受信モジュールは、前記職員IDを受信した場合、前記職員IDに前記ディスペンサIDを付与した第3データを生成して前記クライアント端末に送信し、
    前記クライアント端末は、病室の前に設置された複数のディスペンサからそれぞれ受信した第3データにタイムスタンプを逐一付与し、それぞれの検知時刻の差分値と所定の第2時間とを比較することにより、前記病院職員が前記病室の前を通過したか否かを判断する、請求項1に記載の手指消毒実施モニタリングシステム。
  3. 前記クライアント端末は、前記病院職員が前記病室の前を通過しておらず、かつ、前記病室の前に設置されたディスペンサ近傍での滞在時間が前記第1時間よりも短いと判断した場合、ワーニングコマンドを前記第1送受信モジュールに送信し、前記第1送受信モジュールは、前記ワーニングコマンドを受信して前記病院職員へのワーニングを実行する、請求項2に記載の手指消毒実施モニタリングシステム。
  4. 前記第1送受信モジュール及び前記第2送受信モジュールは、いずれも、エネルギーハーベストを使用した無線通信モジュールである、請求項1~3のいずれか一項に記載の手指消毒実施モニタリングシステム。
  5. 前記第1送受信モジュール及び前記第2送受信モジュールと前記クライアント端末との間では、特定小電力無線局を経由してデータの送受信が行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の手指消毒実施モニタリングシステム。
  6. 前記第1送受信モジュール及び前記第2送受信モジュールそれぞれの通信距離は、前記ディスペンサで前記病院職員が手指消毒を実施するとき、前記病院職員の前記名札に装着された前記第1送受信モジュールから発信される信号に関して、前記ディスペンサとの距離の最も短い距離に設定されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の手指消毒実施モニタリングシステム。
  7. 廊下の側に設置された前記ディスペンサは、前記廊下を通過する前記病院職員が装着している前記第1送受信モジュールを認識することのできる最短の距離に設置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の手指消毒実施モニタリングシステム。
  8. 病院全体、消毒薬毎、病棟毎、フロア毎、診療科毎、作業チーム毎、職員個人毎、ないしは、設定グループ毎に、手指消毒実施実績をモニタリングする、請求項1~7のいずれか一項に記載の手指消毒実施モニタリングシステム。
  9. 病院全体、病棟毎、フロア毎、診療科毎、作業チーム毎、職員個人毎、ないしは、設定グループ毎に、病院職員の動線をモニタリングする、請求項1~8のいずれか一項に記載の手指消毒実施モニタリングシステム。
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