以下、車両用のスライドドア装置に関する一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両1は、車両前後方向(図1中、左右方向)に移動することにより車体2の側面に設けられたドア開口部3を開閉可能なスライドドア4を備えている。
詳述すると、本実施形態の車両1において、車体2の側面には、車両前後方向に延びる複数のガイドレール10(11~13)が設けられている。具体的には、本実施形態の車両1には、ドア開口部3の後方に配置されたセンターレール11、ドア開口部3の上縁部に配置されたアッパーレール12、及びドア開口部3の下縁部に配置されたロアレール13が設けられている。更に、これらの各ガイドレール10(11~13)には、それぞれ、当該各ガイドレール10の延伸方向に沿って摺動可能なガイドローラユニット20(21~23)が連結されている。そして、本実施形態の車両1においては、これらの各ガイドローラユニット20(21~23)を介して車体2にスライドドア4を支持することにより、その車両前後方向に延びる各ガイドレール10(11~13)に沿ったスライドドア4の開閉動作を可能とするスライドドア装置30が形成されている。
また、図2に示すように、本実施形態のスライドドア装置30は、センターレール11の延伸方向に沿った互いに相反する方向、即ち車両前方側(図2中、左側)及び後方側(同図中、右側)から、それぞれ、そのセンターレール11に連結されたセンターローラユニット21に接続される二本の駆動ケーブル31,32を備えている。更に、このスライドドア装置30は、これら各駆動ケーブル31,32の一方側を繰り出しつつ他方側を巻き取るかたちで、そのセンターローラユニット21を牽引するドアアクチュエータ(ドラム装置)35を備えている。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、このドアアクチュエータ35の駆動力に基づいて、そのセンターローラユニット21に支持されたスライドドア4を車両前後方向に開閉動作させることが可能になっている。
さらに詳述すると、図3に示すように、本実施形態のセンターレール11は、ドア開口部3の後方において(図1参照)、その車体2の側面2sに形成された凹部36の内側に配置されている。また、このセンターレール11は、車両1の上下方向(図3中、上下方向)に延びる側壁部11aと、この側壁部11aの上端から車幅方向外側(図3中、左側)に延びる上壁部11bと、この上壁部11bの先端から下方に向かって延びる外壁部11cと、を備えている。そして、本実施形態のセンターローラユニット21は、これらセンターレール11の各壁部(11a~11c)が形成する断面略コ字形状のガイド部37内に配置されるガイドローラ40を備えている。
具体的には、図3~図5に示すように、本実施形態のセンターローラユニット21は、スライドドア4に対して回動可能に連結される回動アーム42を備えている。尚、本実施形態のスライドドア装置30において、この回動アーム42は、金属板を塑性加工(折曲加工)することにより形成されている。また、この回動アーム42は、基端部にスライドドア4に対する回動連結部43xを有して車幅方向内側に延びるアーム部43と、このアーム部43の先端側を上方に折り曲げるかたちで立設された立設部44と、を備えている。更に、立設部44の上端には、センターレール11のガイド部37に対し、その下側に開口する断面略コ字形状の下方に延びるフランジ部45が設けられている。そして、本実施形態のセンターローラユニット21は、このフランジ部45に立設された支軸47によって、そのガイドローラ40を回転可能に軸支する構成になっている。
また、本実施形態のセンターレール11は、その側壁部11aの下端から車幅方向外側に延びる下壁部11dを備えている。更に、本実施形態のセンターローラユニット21は、その立設部44を厚み方向(図3中、左右方向)に貫通するかたちで設けられた支軸48によって回動可能に軸支されたロードローラ50を備えている。そして、本実施形態のセンターローラユニット21は、センターレール11の下壁部11dに対し、このロードローラ50が上側から当接する態様で、そのセンターレール11に連結される構成になっている。
即ち、本実施形態のセンターローラユニット21は、センターレール11のガイド部37を構成する側壁部11a及び外壁部11cに対し、そのガイドローラ40が内側から当接することによりレール幅方向(図3中、左右方向)の相対移動が規制される。また、このセンターローラユニット21は、センターレール11の下壁部11dが形成する支持面S上を、そのロードローラ50が転動する。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、スライドドア4の荷重を支えつつ、そのセンターローラユニット21がセンターレール11の延伸方向に移動(摺動)する構成になっている。
尚、図5に示すように、本実施形態のセンターローラユニット21には、両者の間にロードローラ50を挟む態様で、そのセンターレール11の延伸方向に離間した一対のガイドローラ40が設けられている。また、図4に示すように、本実施形態のセンターローラユニット21は、回動アーム42の基端部に設けられた回動連結部43xに対して回動可能に連結される固定ブラケット51を備えている。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、この固定ブラケット51がスライドドア4に固定されることにより、この固定ブラケット51と回動アーム42との間に介在された連結軸52回りに、その回動アーム42の回動を許容する構成になっている。
即ち、図2に示すように、本実施形態の車両1においては、同図中に示すセンターレール11を含め、各ガイドレール10の前端部近傍(図2中、左側)が車幅方向内側(図2中、下側)に向かって湾曲した構成となっている。更に、本実施形態のスライドドア装置30は、各ガイドレール10に設定された湾曲形状部を各ガイドローラユニット20が通過する際、これらの各ガイドローラユニット20に設けられた回動軸L周りに、その車体2に対するスライドドア4の相対回動を許容する。例えば、図2中に示すセンターローラユニット21においては、上記のように固定ブラケット51と回動アーム42との間に介在された連結軸52を回動軸Lとして、そのスライドドア4に固定された固定ブラケット51とセンターレール11に対する連結部(40,50)を有した回動アーム42との間の相対回動が許容される。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、車体2の側面2sに対して略平行に配置された状態を維持しつつ車幅方向に変位するかたちで、そのスライドドア4が開閉動作するように構成されている。
具体的には、本実施形態のスライドドア4は、車両前方側に移動した全閉位置(図2中、二点鎖線に示す位置)においては、そのセンターレール11が設けられた車体の側面2sに対して意匠面が略面一となるように配置される。そして、その開動作によって車両後方側(図2中、右側)にスライドドア4が移動した場合には、車体2の側面2sに干渉しないように、そのスライドドア4が車幅方向車外側(図2中、上側)に変位する構成になっている。
また、本実施形態のドアアクチュエータ35は、車両前後方向に延びるセンターレール11の略中央位置において車体2側に設けられている。更に、このドアアクチュエータ35には、車両後方側及び前方側に向かって延びる二本のガイドチューブ53,54が接続されている。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これらの各ガイドチューブ53,54を介することにより、そのドアアクチュエータ35から延びる二本の駆動ケーブル31,32が、それぞれ、各ガイドチューブ53,54を介してセンターレール11の後端部11r近傍及び前端部11f近傍に引き出されるように構成されている。
更に、これらの各駆動ケーブル31,32は、それぞれ、そのセンターレール11の後端部11r近傍及び前端部11f近傍に設けられたプーリー55,56に巻き掛けられることにより、そのセンターレール11の延伸方向に沿って配索されている。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、互いに相反する方向に延びる二本の駆動ケーブル31,32を、そのセンターローラユニット21に接続する構成になっている。
即ち、本実施形態のスライドドア装置30は、センターレール11の後端部11rから前端部11f側に向かって延びる第1の駆動ケーブル31をドアアクチュエータ35が巻き取ることにより、この第1の駆動ケーブル31に牽引されたセンターローラユニット21がセンターレール11の後端部11r側、つまりは車両後方側に移動する。また、センターレール11の前端部11fから後端部11r側に向かって延びる第2の駆動ケーブル32をドアアクチュエータ35が巻き取ることにより、この第2の駆動ケーブル32に牽引されたセンターローラユニット21がセンターレール11の前端部11f側、つまりは車両前方側に移動する。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、そのセンターローラユニット21に支持されたスライドドア4を開閉動作させることが可能となっている。
(駆動ケーブルの接続構造)
次に、本実施形態のスライドドア装置30におけるセンターローラユニット21に対する各駆動ケーブル31,32の接続構造について説明する。
図3及び図5に示すように、本実施形態のスライドドア装置30は、各駆動ケーブル31,32の端末31e,32eを独立に保持する一対のケーブルエンドホルダ61,62を備えている。具体的には、本実施形態のスライドドア装置30において、第1のケーブルエンドホルダ61は、センターレール11の後端部11rから前端部11f側に向かって延びる第1の駆動ケーブル31の端末31eを保持する(図2参照)。また、第2のケーブルエンドホルダ62は、センターレール11の前端部11fから後端部11r側に向かって延びる第2の駆動ケーブル32の端末32eを保持する。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これらの第1及び第2のケーブルエンドホルダ61,62をセンターローラユニット21に固定することにより、その第1及び第2の駆動ケーブル31,32をセンターローラユニット21に接続する構成になっている。
詳述すると、図6(a)(b)に示すように、本実施形態の各ケーブルエンドホルダ61,62は、それぞれ、略L字状に折曲した管形状(パイプ形状)を有している。具体的には、これらの各ケーブルエンドホルダ61,62は、それぞれ、略四角管状のホルダ本体63と、このホルダ本体63の一端から当該ホルダ本体63に略直交する方向に延びるガイド部64と、を備えている。また、本実施形態のスライドドア装置30において、各駆動ケーブル31,32は、それぞれ、その対応する各ケーブルエンドホルダ61,62の筒内に挿通される態様で、これらの各ケーブルエンドホルダ61,62に組み付けられる。そして、本実施形態の各ケーブルエンドホルダ61,62は、それぞれ、そのホルダ本体63の内側に、これら各駆動ケーブル31,32の端末31e,32eを保持する構成になっている。
尚、本実施形態の各ケーブルエンドホルダ61,62は、樹脂材料を用いることにより、そのホルダ本体63とガイド部64とが一体に形成されている。そして、これにより、そのホルダ本体63の一端に設けられたガイド部64が、各駆動ケーブル31,32の保護部材として機能する構成になっている。
また、本実施形態の各ケーブルエンドホルダ61,62は、それぞれ、そのホルダ本体63の内側に、コイルバネ65を保持する。具体的には、本実施形態の各ケーブルエンドホルダ61,62において、各コイルバネ65は、それぞれ、その長手方向に沿う状態でホルダ本体63内に収容されている。また、各ケーブルエンドホルダ61,62は、これらホルダ本体63内に収容されたコイルバネ65が、それぞれ、そのガイド部64側の一端(図6(a)中、左側の端部、図6(b)中、右側の端部)に設けられたストッパ部66に当接するように構成されている。更に、本実施形態の各ケーブルエンドホルダ61,62において、各駆動ケーブル31,32は、それぞれ、そのホルダ本体63内に収容されたコイルバネ65に挿通されるかたちで、その対応する各ケーブルエンドホルダ61,62に組み付けられる。そして、本実施形態の各駆動ケーブル31,32は、それぞれ、その端末31e,32eに、ホルダ本体63の他端側(図6(a)中、右側の端部、図6(b)中、左側の端部)でコイルバネ65の端部に係合する係合部材67を有している。
即ち、本実施形態の各ケーブルエンドホルダ61,62は、それぞれ、そのホルダ本体63の一端に設けられたストッパ部66と各駆動ケーブル31,32の端末31e,32eに設けられた係合部材67との間でコイルバネ65が圧縮される構成となっている。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、この圧縮されたコイルバネ65の弾性力に基づいて、これらの各ケーブルエンドホルダ61,62が、それぞれ、その端末31e,32eを保持する各駆動ケーブル31,32に張力を付与する張力付与機構(ケーブルテンショナー)70として機能する構成になっている。
さらに詳述すると、図3及び図5に示すように、本実施形態のスライドドア装置30は、センターローラユニット21の車幅方向外側(図3中、左側)に臨む位置において、このセンターローラユニット21に固定される保持ブラケット71を備えている。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、この保持ブラケット71とセンターローラユニット21との間に挟み込む態様で、その各ケーブルエンドホルダ61,62をセンターローラユニット21に固定する構成になっている。
具体的には、本実施形態の保持ブラケット71は、センターレール11よりも車幅方向外側の位置において当該センターレール11に対向するセンターローラユニット21の立設部44に対し、その車幅方向外側(図3中、左側)に臨む外側面44sに対向するかたちで配置される縦壁部72を備えている。また、この保持ブラケット71は、その縦壁部72の下端から車幅方向外側に延設された基壁部73と、その縦壁部72の上端から車幅方向内側(図3中、右側)に延設された上壁部74と、を備えている。尚、本実施形態の保持ブラケット71は、金属からなる板材を折曲加工することにより形成されている。そして、本実施形態の保持ブラケット71は、縦壁部72の両側端部、即ちセンターレール11の延伸方向に配置される位置から車幅方向内側に延びることにより、その縦壁部72よりもセンターレール11側の位置において車幅方向に延在する一対の側壁部75を備えている。
また、本実施形態の保持ブラケット71は、センターローラユニット21の立設部44に設けられた係合突部76に対して係合する孔部77aを有した係合片77を備えている。本実施形態のスライドドア装置30において、センターローラユニット21側の係合突部76は、立設部44の上端から上方に突出するかたちで設けられ、保持ブラケット71側の係合片77は、その上壁部74を延長するかたちで設けられている。更に、本実施形態の保持ブラケット71は、その係合片77をセンターローラユニット21側の係合突部76に係合させるかたちで当該センターローラユニット21に組み付けられることにより、その基壁部73が、センターローラユニット21の回動アーム42を形成するアーム部43の上方に重ねて配置されるように構成されている。そして、本実施形態の保持ブラケット71は、この基壁部73に設けられた締結用の孔部78を備えている。
即ち、本実施形態の保持ブラケット71は、その上壁部74がセンターローラユニット21側の立設部44の上端部分に係合する状態で、その基壁部73がセンターローラユニット21のアーム部43に締結される。そして、本実施形態の保持ブラケット71は、これにより、センターローラユニット21に固定されることによって、その縦壁部72とセンターローラユニット21側の立設部44との間に上記各ケーブルエンドホルダ61,62を挟み込む構成になっている。
さらに詳述すると、図3に示すように、本実施形態のスライドドア装置30においては、これらの各ケーブルエンドホルダ61,62が、上下方向に並ぶ状態で、そのセンターローラユニット21側の立設部44と保持ブラケット71側の縦壁部72との間に保持される。具体的には、そのセンターローラユニット21側の立設部44に貫設されたロードローラ50の支軸48よりも下方の位置に第1のケーブルエンドホルダ61を配置し、上方の位置に第2のケーブルエンドホルダ62を配置する。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、これらの各ケーブルエンドホルダ61,62及び保持ブラケット71を含めた車幅方向サイズの小型化を図る構成になっている。
また、図7及び図8に示すように、本実施形態のスライドドア装置30において、各ケーブルエンドホルダ61,62は、そのガイド部64が、それぞれ、保持ブラケット71の各側壁部75に沿って車幅方向に延在するように構成されている。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、保持ブラケット71の各側壁部75が、その各ケーブルエンドホルダ61,62に設けられたガイド部64を支えるかたちで、これらの各ガイド部64に挿通された各駆動ケーブル31,32をセンターレール11のレール内11xに案内するケーブルガイド80を形成する構成になっている。
即ち、本実施形態のスライドドア装置30において、各駆動ケーブル31,32は、それぞれ、車幅方向外側に開口するセンターレール11のレール内11xに配索される(図3参照)。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、例えば、センターレール11の下方に各駆動ケーブル31,32を配索した場合に必要となるケーブル用のガイド部材を省いて構成の簡素化を図る構成になっている。
更に、図5、図7及び図8に示すように、本実施形態の保持ブラケット71は、その上壁部74の両側端部から下方に延びる一対の補強壁81を備えている。そして、これら各補強壁81を、それぞれ、各側壁部75の厚み方向、つまりはセンターレール11の延伸方向に重ねて配置する構成になっている。
即ち、各駆動ケーブル31,32を介してセンターローラユニット21を牽引することにより、各ケーブルエンドホルダ61,62には、そのガイド部64に挿通された各駆動ケーブル31,32をセンターレール11の延伸方向に引っ張る力が作用する。そして、これにより、そのホルダ本体63及びガイド部64が形成する略L字形状が押し広げられるかたちで各ケーブルエンドホルダ61,62が変形することで、センターレール11のレール内11xに配索された各駆動ケーブル31,32が、このセンターレール11の外側に引き出されてしまう可能性がある。
この点を踏まえ、本実施形態のスライドドア装置30は、上記のように、保持ブラケット71の各側壁部75が、それぞれ、その各ケーブルエンドホルダ61,62のガイド部64を支えることにより、これらの各ガイド部64に挿通された各駆動ケーブル31,32をセンターレール11の延伸方向に引っ張る力に対抗する。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これらの各側壁部75を上記各補強壁81が補強することで、より安定的に、その各駆動ケーブル31,32を介してセンターローラユニット21を牽引する、つまりは、このセンターローラユニット21に支持されたスライドドア4を開閉動作させることが可能となっている。
また、図6~図8に示すように、本実施形態の各ケーブルエンドホルダ61,62は、それぞれ、そのホルダ本体63に端末31e,32eが保持された各駆動ケーブル31,32が各ケーブルエンドホルダ61,62から引き出されるガイド部64の先端部64aに、センターレール11の延伸方向に延びる湾曲面64sを有している。
具体的には、この湾曲面64sは、車幅方向外側に凸となるセンターレール11に設定された湾曲形状部82とは反対に、車幅方向内側に凸となる湾曲形状を有している。更に、この湾曲面64sは、センターレール11の湾曲形状部82が牽引方向に位置する状態で、各駆動ケーブル31,32を介してセンターローラユニット21が牽引される場合に、各ケーブルエンドホルダ61,62から引き出された駆動ケーブル31,32が、その湾曲形状部82と湾曲面64sとの接線方向に延びるように構成されている。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、各ケーブルエンドホルダ61,62から引き出された各駆動ケーブル31,32が、そのガイド部64の先端部64aに押し当てられるような状況においても、このガイド部64の先端部64a及び各駆動ケーブル31,32に過大な負荷が加わらないように構成されている。
尚、本実施形態の保持ブラケット71は、その各側壁部75の先端が、そのガイド部64の先端部64aに形成された湾曲面64sに沿うように湾曲した形状を有している。また、第1の駆動ケーブル31を介してセンターローラユニット21を開作動方向に牽引する場合には、このセンターローラユニット21が、その湾曲形状部82よりもセンターレール11の前端部11f側にある場合、つまりは全閉位置側にある状態が、その「湾曲形状部82が牽引方向に位置する状態」に該当する(図7参照)。そして、第2の駆動ケーブル32を介してセンターローラユニット21を閉作動方向に牽引する場合には、このセンターローラユニット21が、その湾曲形状部82よりもセンターレール11の後端部11r側にある場合、つまりは全開位置側にある状態が、その「湾曲形状部82が牽引方向に位置する状態」に該当する。
さらに詳述すると、図5及び図9に示すように、本実施形態のスライドドア装置30は、第1及び第2の駆動ケーブル31,32の端末31e,32eをセンターローラユニット21に接続する際には、その第1の駆動ケーブル31の端末31eを保持する第1のケーブルエンドホルダ61をセンターローラユニット21の立設部44に係合させる。更に、第2の駆動ケーブル32の端末32eを保持する第2のケーブルエンドホルダ62を保持ブラケット71に係合させる。そして、この状態で保持ブラケット71をセンターローラユニット21に固定することにより、センターローラユニット21側の立設部44と保持ブラケット71側の縦壁部72との間に挟み込むかたちで、その第1及び第2のケーブルエンドホルダ61,62をセンターローラユニット21に固定する構成になっている。
具体的には、図6(a)に示すように、本実施形態のスライドドア装置30において、第1のケーブルエンドホルダ61には、そのガイド部64に対向するかたちで、このガイド部64と略平行に延びる係合片84aを有した略L字状の係合部材84が一体に形成されている。一方、図5に示すように、センターローラユニット21側の立設部44には、そのセンターレール11の延伸方向に配置される側端部分に、スリット状の係合溝85が設けられている。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、この係合溝85に対し、第1のケーブルエンドホルダ61に設けられた係合片84aを係合させる態様で、その第1のケーブルエンドホルダ61をセンターローラユニット21側の立設部44に係合させる構成になっている。
即ち、図5及び図6(a)に示すように、本実施形態のスライドドア装置30において、第1のケーブルエンドホルダ61は、そのホルダ本体63の長手方向端部に設けられたガイド部64と係合部材84の係合片84aとの間にセンターローラユニット21側の立設部44を挟み込む状態で、この立設部44の外側面44sに係合する(図7参照)。更に、第1のケーブルエンドホルダ61側の係合部材84は、その係合片84aの先端に鉤状の係合爪84bを有している。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、そのセンターローラユニット21の立設部44に係合した第1のケーブルエンドホルダ61が、その車幅方向外側に臨む立設部44の外側面44sと一体に保持される構成になっている。
また、図10に示すように、本実施形態の保持ブラケット71は、その上壁部74の先端から下方に延設された保持片86を備えている。そして、第2のケーブルエンドホルダ62は、この保持片86と縦壁部72とが形成する隙間に、そのホルダ本体63が挿入されるかたちで保持ブラケット71に係合する構成になっている。
更に、本実施形態のスライドドア装置30において、第2のケーブルエンドホルダ62には、このように保持ブラケット71の保持片86と縦壁部72との間にホルダ本体63が挿入された状態において、その縦壁部72に設けられた孔部87に係合する係合突部88が設けられている。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、保持ブラケット71に係合した第2のケーブルエンドホルダ62が、その保持ブラケット71と一体に保持される構成になっている。
このように、本実施形態のスライドドア装置30は、センターローラユニット21に対する第1のケーブルエンドホルダ61の係合、及び保持ブラケット71の固定を、その車幅方向外側から行うことが可能になっている。更に、保持ブラケット71をセンターローラユニット21に固定する際、その第1及び第2のケーブルエンドホルダ61,62が、それぞれ、安定的に、そのセンターローラユニット21及び保持ブラケット71に保持される。そして、本実施形態のスライドドア装置30は、これにより、そのセンターローラユニット21に対して各駆動ケーブル31,32を接続する作業の容易化を図る構成になっている。
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)スライドドア装置30は、車体2に設けられたセンターレール11(ガイドレール10)に対して摺動可能に連結されるセンターローラユニット21(ガイドローラユニット20)と、このセンターローラユニット21に係合する第1のケーブルエンドホルダ61と、を備える。また、スライドドア装置30は、センターローラユニット21に固定される保持ブラケット71と、この保持ブラケット71に係合する第2のケーブルエンドホルダ62と、を備える。更に、センターローラユニット21は、このセンターローラユニット21の車幅方向外側に臨む位置に対して、第1のケーブルエンドホルダ61が係合し、及び保持ブラケット71が固定されるように構成される。そして、保持ブラケット71は、センターローラユニット21に固定されることにより、このセンターローラユニット21との間に第1及び第2のケーブルエンドホルダ61,62を挟み込んで保持する。
上記構成によれば、センターローラユニット21に対し、車幅方向外側から、各ケーブルエンドホルダ61,62に端末31e,32eが保持された各駆動ケーブル31,32を接続することができる。このため、そのセンターローラユニット21をセンターレール11に連結したままの状態で、各駆動ケーブル31,32の接続作業を行うことができる。更に、2つのケーブルエンドホルダ61,62のうちの一方をセンターローラユニット21に係合し、他方を保持ブラケット71に係合させた上で、この保持ブラケット71をセンターローラユニット21に固定する構造としたことで、広い作業スペースが確保できない状況であっても、円滑に、その組付け作業を行うことができる。そして、これにより、容易に、センターローラユニット21に対する各駆動ケーブル31,32の接続作業を行うことができる。
更に、各ケーブルエンドホルダ61,62をセンターローラユニット21の車幅方向外側に臨む位置に固定することで、センターレール11の延伸方向において、そのサイズの拡大を避けることができる。そして、これにより、センターレール11の延伸方向に沿ったセンターローラユニット21の移動(摺動)量、つまりは、スライドドア4の開閉動作量(ドアストローク)を確保することができる。
(2)センターローラユニット21は、センターレール11よりも車幅方向外側の位置において当該センターレール11に対向する立設部44を備える。また、保持ブラケット71は、この立設部44との間に第1及び第2のケーブルエンドホルダ61,62を挟み込む縦壁部72を備える。そして、保持ブラケット71は、センターレール11の延伸方向に位置する縦壁部72の両側端部から車幅方向内側に延びることにより、その縦壁部72よりもセンターレール11側の位置において車幅方向に延在する一対の側壁部75を備える。
上記構成によれば、車幅方向外側に臨むセンターローラユニット21の立設部44(の外側面44s)と保持ブラケット71の縦壁部72との間に各ケーブルエンドホルダ61,62を挟み込むかたちで、容易且つ確実に、これらの各ケーブルエンドホルダ61,62を固定することができる。更に、保持ブラケット71の各側壁部75がケーブルガイド80を形成するかたちで、その各ケーブルエンドホルダ61,62に保持されることにより互いに相反する方向に延びる二本の駆動ケーブル31,32をセンターレール11のレール内11xに案内することができる。そして、これにより、各駆動ケーブル31,32をレール内11xに配索する構成を採用することで、センターレール11の下方に各駆動ケーブル31,32を配索した場合に必要となるケーブル用のガイド部材を省いて構成の簡素化及び作業効率の向上を図ることができる。
(3)各ケーブルエンドホルダ61,62は、ホルダ本体63と、このホルダ本体63の一端に設けられたガイド部64と、を備え、それぞれ、そのホルダ本体63に端末31e,32eが保持された各駆動ケーブル31,32をガイド部64から引き出す構成を有する。そして、これらの各ガイド部64は、それぞれ、センターローラユニット21の立設部44と保持ブラケット71の縦壁部72との間に各ケーブルエンドホルダ61,62が保持されることにより、その保持ブラケット71の各側壁部75に沿って車幅方向内側に延びるように構成される。
上記構成によれば、各ケーブルエンドホルダ61,62のガイド部64が、それぞれ、これらの各ケーブルエンドホルダ61,62に保持された駆動ケーブル31,32を保護するとともに、これらの各ガイド部64を保持ブラケット71の各側壁部75が支えるかたちでケーブルガイド80を形成することができる。そして、これにより、安定的に、各駆動ケーブル31,32を介してセンターローラユニット21を牽引することができる。
(4)各ケーブルエンドホルダ61,62は、それぞれ、これらの各ケーブルエンドホルダ61,62に保持された各駆動ケーブル31,32が、そのガイド部64の先端部64aから引き出されるように構成される。そして、ガイド部64の先端部64aには、センターレール11の延伸方向に沿って延びるとともに車幅方向内側に凸となる湾曲面64sが形成される。
上記構成によれば、各ケーブルエンドホルダ61,62から引き出された各駆動ケーブル31,32が、そのガイド部64の先端部64aに押し当てられるような状況においても、このガイド部64の先端部64a及び各駆動ケーブル31,32に過大な負荷が加わらないようにすることができる。そして、これにより、円滑且つ安定的な動作と、高い信頼性及び耐久性を確保することができる。
(5)各ケーブルエンドホルダ61,62は、それぞれ、これらの各ケーブルエンドホルダ61,62が保持する駆動ケーブル31,32に張力を付与する張力付与機構70を備える。
上記構成によれば、例えば、ドアアクチュエータ35に設けられた張力付与機構70を省いて、このドアアクチュエータ35の小型化及び構成の簡素化を図ることができる。更に、張力付与機構70を用いて各駆動ケーブル31,32に張力を付与する工程を、これらの各駆動ケーブル31,32をセンターローラユニット21に接続する作業と同時に行うことができる。そして、これにより、作業効率の向上を図ることができる。
(6)各ケーブルエンドホルダ61,62が上下方向に配置される。これにより、車幅方向サイズの小型化を図ることができる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、センターレール11に連結されたセンターローラユニット21に対して各駆動ケーブル31,32を接続する構成に具体化したが、センターローラユニット21以外のガイドローラユニットに各駆動ケーブル31,32を接続する構成に適用してもよい。
・上記実施形態では、センターローラユニット21の立設部44に設けられた係合溝85に対し、第1のケーブルエンドホルダ61に設けられた係合片84aを係合させることにより、その第1のケーブルエンドホルダ61をセンターローラユニット21の立設部44に係合させる。そして、保持ブラケット71の上壁部74の先端から下方に延設された保持片86と縦壁部72とが形成する隙間にホルダ本体63が挿入されることにより、その第2のケーブルエンドホルダ62が保持ブラケット71に係合することとした。しかし、これに限らず、センターローラユニット21に対する第1のケーブルエンドホルダ61の係合構造、及び保持ブラケット71に対する第2のケーブルエンドホルダ62の係合構造は、任意に変更してもよい。
・また、保持ブラケット71は、上壁部74が立設部44の上端部分に係合し、その基壁部73がアーム部43に締結されることによりセンターローラユニット21に固定されることとしたが、センターローラユニット21に対する保持ブラケット71の固定構造は、任意に変更してもよい。
・上記実施形態では、保持ブラケット71は、縦壁部72の両側端部から車幅方向内側に延びることにより、その縦壁部72よりもセンターレール11側の位置において車幅方向に延在する一対の側壁部75を備える。そして、上壁部74の両側端部から下方に延びることにより、各側壁部75の厚み方向に重ねて配置される一対の補強壁81を備えることとした。しかし、これに限らず、上壁部74の両側端部から下方に延びる壁部が、その縦壁部72よりもセンターレール11側の位置において車幅方向に延在する各側壁部75を形成し、縦壁部72の両側端部から車幅方向内側に延びる壁部が、各補強壁81を形成する構成であってもよい。そして、必ずしも、このような各側壁部75及び各補強壁81の二重構造でなくともよい。
・また、側壁部75は、必ずしも縦壁部72の両側端部に対応する位置に形成されるものでなくともよい。更に、例えば、側壁部75に相当する部材がセンターローラユニット21側に設けられている場合等には、保持ブラケット71に設けられる側壁部75が、一つであってもよい。そして、センターレール11のレール内11xに各駆動ケーブル31,32を案内するケーブルガイド80としての機能を有する部材が、センターローラユニット21及び保持ブラケット71とは別体に設けられた構成であってもよい。
・上記実施形態では、各ケーブルエンドホルダ61,62が上下方向に並んで配置されることとしたが、例えば、上下方向に離間して配置される構成であってもよい。そして、車幅方向に並んで配置される構成であってもよい。
・上記実施形態では、各ケーブルエンドホルダ61,62のホルダ本体63内にコイルバネ65を収容することにより、このコイルバネ65の弾性力に基づいて、各駆動ケーブル31,32に張力を付与する張力付与機構70が形成されることとした。しかし、これに限らず、各ケーブルエンドホルダ61,62に設けられた張力付与機構70の構成は、任意に変更してもよい。そして、これらの各ケーブルエンドホルダ61,62が張力付与機構70を備えない構成に具体化してもよい。
・上記実施形態では、2つのケーブルエンドホルダ61,62のうちの一方をセンターローラユニット21に係合し、他方を保持ブラケット71に係合させた上で、この保持ブラケット71をセンターローラユニット21に固定する構造とした。しかし、これに限らず、各ケーブルエンドホルダ61,62をセンターローラユニット21に係合させる、或いは各ケーブルエンドホルダ61,62を保持ブラケット71を係合させた上で、保持ブラケット71をセンターローラユニット21に固定することにより、両者の間に各ケーブルエンドホルダ61,62を挟み込む構造としてもよい。このような構成を採用しても、容易に、センターローラユニット21に対する各駆動ケーブル31,32の接続作業を行うことができる。
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について効果とともに記載する。
(イ)車体に設けられたガイドレールに対して摺動可能に連結されるガイドローラユニットと、前記ガイドローラユニットの車幅方向外側に臨む位置に固定されることにより、該ガイドローラユニットとの間に第1及び第2のケーブルエンドホルダを挟み込んで保持する保持ブラケットと、を備える車両用スライドドア装置。これにより、容易に、ガイドローラユニットに対する駆動ケーブルの接続作業を行うことができる。