JP7076408B2 - 低石膏濃度の苦汁の製造方法、および塩化カリウムの製造方法 - Google Patents

低石膏濃度の苦汁の製造方法、および塩化カリウムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、低石膏濃度の苦汁の製造方法、および塩化カリウムの製造方法に関する。
製塩方法は、海水をイオン交換膜電気透析法等により濃縮し、続いて真空蒸発法等で加熱蒸発して煮詰め、塩化ナトリウムを析出分離することによって塩化ナトリウムを得る場合が多い。(以下、これを製塩工程と言う。)
この製塩工程からは塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸カルシウム等の多くの成分で構成される苦汁が生成する。この苦汁は、製塩工程の設備、運転条件等により異なるが、70℃以上の高温で生成する場合が多い。
製塩工程において、海水を濃縮して塩化ナトリウムを析出分離した後に残る苦汁中には塩化カリウムが多く含まれており、この苦汁から塩化カリウムを生産する方法が実用化され、製造されている。
例えば特許文献1には、製塩工程から生成する70℃以上の苦汁に水を0.5質量%~5質量%添加し、この苦汁を、20℃~50℃の内から設定される一定温度に保持するよう調整された別の苦汁中に流入分散させて急冷却することにより、多成分で構成される苦汁中から選択的に塩化カリウムを析出させて回収するという、苦汁を用いた塩化カリウムの製造方法が開示されている。
特開2011-57537号公報
製塩工程から生成される苦汁には、硫酸カルシウムを主成分とする石膏が数質量%含まれている。石膏を数質量%含有する苦汁から製造した塩化カリウム中には石膏が高い濃度で含まれてしまうため、低石膏濃度の塩化カリウムを得ようとする場合には、製造した塩化カリウムから石膏を取り除く工程が必要となる。
本発明は、海水を濃縮して塩化ナトリウムを析出分離する製塩工程から生成する苦汁から、簡便で安価な方法により、石膏を取り除いて、石膏濃度の低い苦汁を得る方法を提供することを目的とする。また、前記石膏濃度の低い苦汁を用いて、石膏濃度が低く、高純度の塩化カリウムを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成よりなる。
(1)海水を濃縮して塩化ナトリウムを析出分離する製塩工程から生成する70℃以上の苦汁を、60℃以上に温度を維持して、石膏濃度が0.10質量%以下の低石膏濃度の苦汁を製造する方法であって、
前記60℃以上に温度を維持して苦汁を静置し、不溶解分である石膏を沈降させる工程と、
前記石膏を沈降させる工程により沈降した石膏を分離することにより石膏を除去する工程と、
を有する低石膏濃度の苦汁の製造方法。
(2)前記温度を維持する60℃以上の温度が、前記製塩工程から生成する苦汁の温度±10℃の範囲である前記(1)に記載の低石膏濃度の苦汁の製造方法。
(3)前記石膏を沈降させる沈降幅は、苦汁液層の高さの85%以上である前記(1)または(2)に記載の低石膏濃度の苦汁の製造方法。
(4)前記低石膏濃度の苦汁における石膏濃度が0.06質量%以下である前記(1)~(3)のいずれかに記載の低石膏濃度の苦汁の製造方法。
(5)前記(1)~(4)のいずれかに記載の低石膏濃度の苦汁の製造方法によって得られた60℃以上の低石膏濃度の苦汁を冷却し、塩化カリウムを析出・回収する塩化カリウムの製造方法。
(6)前記低石膏濃度の苦汁を冷却する方法が、前記60℃以上の低石膏濃度の苦汁に水を0.5質量%~5質量%添加し、前記水を添加した低石膏濃度の苦汁を、20℃~50℃の内から設定される一定温度に保持するよう調整された苦汁中に流入分散させて急冷却する方法である、前記(5)に記載の塩化カリウムの製造方法。
(7)前記急冷却を行う冷却槽内の熱交換部の伝熱面積が、前記冷却槽の内容積に対して2m2/m3以上で構成され、かつ前記冷却槽内の苦汁の流動状態がレイノルズ数で100000以上になるように攪拌されており、
前記水を添加した低石膏濃度の苦汁を、前記冷却槽内の苦汁に対して1分当たり1/150~1/20の容量比で流入させることにより、前記冷却槽内の苦汁の温度を20℃~50℃の内から設定された一定温度に保持できるように冷却し、多成分で構成される苦汁中から選択的に塩化カリウムを析出させて回収する、前記(6)に記載の塩化カリウムの製造方法。
本発明により、海水を濃縮して塩化ナトリウムを析出分離する製塩工程から生成する苦汁から、簡便で安価な方法により石膏を取り除くことができ、石膏濃度の低い苦汁を得ることができる。また、この石膏濃度の低い苦汁から、石膏濃度が低く、高純度の塩化カリウムを得ることができる。
高温苦汁中の石膏の沈降経過を示す写真である。 高温苦汁の静置時間と苦汁に含まれる石膏濃度の関係を示すグラフである。 苦汁中の石膏濃度と析出した塩化カリウムに含まれる石膏濃度の関係を示すグラフである。
本発明の実施形態に係る低石膏濃度の苦汁の製造方法においては、海水を濃縮して塩化ナトリウムを析出分離する製塩工程から生成する苦汁を使用する。製塩工程から生成する苦汁は、上述したように多くの塩類を含む。また、製塩工程の設備や運転条件等によって異なるが、70℃以上、多くの場合は80℃以上の高温の苦汁が得られる(以下、70℃以上の苦汁を「高温苦汁」と言う。)。高温苦汁は殆ど飽和状態で抜き出されることが多く、僅かに冷却されるだけでも塩が析出する。特に、塩化カリウム、塩化ナトリウムが析出しやすく、カーナライト等の複塩、マグネシウムやカルシウムの塩化物、石膏が混入することがある。ゆっくり冷却する場合、例えば一昼夜タンク内で静置して冷却する場合には、析出する結晶は、マグネシウム塩、カルシウム塩、石膏等を含んだ塩化カリウムと塩化ナトリウムの混合物となり、純度の高い塩化カリウムの結晶を得ることは難しい。
塩化カリウムは、製塩工程により排出される高温苦汁中に液体状態で存在している。塩化カリウムの溶解度は温度依存性が高く、前記高温苦汁を冷却することで塩化カリウムを析出させ、製品として回収することができる。
一方、石膏は固体状態で高温苦汁中に存在しており、石膏を含む高温苦汁を冷却して塩化カリウムを析出させると、塩化カリウムの結晶中に石膏が取り込まれてしまう。
したがって、石膏を多く含んだ苦汁からは、石膏濃度が高い塩化カリウムが得られる。このため、石膏を含んだ高温苦汁から、石膏濃度が低く、高純度の塩化カリウムを得るには、一度塩化カリウムを析出させた後で洗浄を行い、高純度の塩化カリウムを得る方法が行われている。
しかしながら、本発明者等が検討したところ、塩化カリウムの洗浄を行っても石膏の除去効果は、除去率が約60%であった。また、洗浄を行って得られた塩化カリウム結晶についてEDXによる元素マッピングを行ったところ、石膏は、塩化カリウム結晶内に存在していることが分かった。したがって、塩化カリウム晶析後では、洗浄しても共存する石膏のほぼ全量を取り除くことは不可能である。
そこで、本発明者らは鋭意検討を重ね、海水を濃縮して塩化ナトリウムを析出分離する製塩工程から生成する70℃以上の苦汁を、60℃以上に温度を維持して、前記60℃以上の苦汁を静置し、不溶解分である石膏を沈降させる工程と、前記60℃以上の苦汁から沈降した石膏を分離することにより石膏を除去する工程と、を行うことにより、石膏濃度を0.10質量%以下に低下させた低石膏濃度の苦汁を得ることができ、この低石膏濃度の苦汁を用いて塩化カリウムを製造することにより、石膏濃度が低く、高純度の塩化カリウムを得ることができることを見出した。
高温苦汁の温度を維持して塩化カリウムの結晶化を防止しつつ石膏を沈降分離し、その後塩化カリウムを析出させて回収することで、石膏濃度が低く、高純度な塩化カリウムを回収することができる。
海水を濃縮して塩化ナトリウムを析出分離する製塩工程によって生成する高温苦汁は70℃以上であればよい。塩化カリウムの回収率の観点からは、前記高温苦汁の温度は70℃~90℃であることが好ましく、80℃~90℃であることがより好ましい。
前記苦汁の温度を60℃以上に維持して静置して、60℃以上の苦汁から不溶解分である石膏を沈降させる工程は、製塩工程から排出された高温苦汁を温度保持可能な容器に投入し、60℃以上に温度を保持しながら一定時間静置する。
前記製塩工程から生成する70℃以上の高温苦汁には、石膏は微粒子として浮遊している。高温苦汁は溶存している塩類が飽和状態であり、温度の低下によっても塩が析出するため、ろ過装置で苦汁から石膏のみを取り除くことは困難である。
製塩工程から生成する高温苦汁を、60℃以上の高温に維持しながら静置することにより、高温苦汁中に溶存している塩類の析出を抑制し、石膏を沈降させることができる。そして、静置することにより沈降した石膏を分離除去することにより、石膏濃度の低い苦汁を簡便で安価に得ることができる。
更に、簡便で安価に石膏を取り除いた石膏濃度の低い苦汁から、石膏濃度が低く、高純度の塩化カリウムを製造することができる。
なお、本発明において、「低石膏濃度の苦汁」、「石膏濃度が低い苦汁」とは、石膏濃度が0.10質量%以下のものを言う。
また、「石膏濃度が低く、高純度の塩化カリウム」とは、石膏濃度が0.35質量%以下であり、かつ塩化カリウムの純度が90質量%以上のものを言う。塩化カリウムの純度は97質量%以上が好ましい。
石膏を沈降させる工程において苦汁を保持する温度は、石膏沈降時に塩化カリウム等の析出を防止するためには、60℃以上であればよく、苦汁が沸騰する手前の温度まで可能である(苦汁が沸騰すると石膏の沈降を妨害してしまう)。塩化カリウムを析出させる際の収率、及びエネルギーコストを考慮すると、苦汁を保持する温度は、高温苦汁の温度±10℃の範囲であることが好ましい。また、沈降した石膏を分離する際に塩化カリウム等が析出しないようにする観点から、苦汁を保持する温度は、高温苦汁の温度よりも高い方がより好ましく、高温苦汁の温度よりも0~5℃程度高い温度であることが特に好ましい。
静置する時間は、苦汁液層の高さと石膏の沈降速度より算出することが好ましい。石膏の沈降速度は、高温苦汁の液比重や石膏濃度に影響される。静置時間が長くなると、得られる低石膏濃度の苦汁における石膏濃度が低くなる。少なくとも沈降界面が平衡に達するまで静置することが好ましい。
また、前記石膏を沈降させる沈降幅は、高温苦汁の石膏濃度にもよるが、苦汁液層の高さの85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。沈降幅を苦汁液層の高さの85%以上とすることにより、石膏の除去率が高くなる。なお、前記沈降幅とは、液面から沈降した幅であり、苦汁液の液層の高さから沈降した石膏の高さを引いたものであり、沈降幅が苦汁液層の高さの85%の場合、沈降した石膏の幅は苦汁液層の高さの15%となる。
前記60℃以上に温度を維持して苦汁を静置する方法としては、例えば、苦汁を容器に入れて、60℃以上に設定した恒温室または水槽中で静置する方法や、温度保持機能を有する容器に入れて静置する方法等が挙げられる。
沈降した石膏を分離することにより石膏を除去する工程は、沈降分離した上澄み液を取り出すことができればよく、例えば、デカンテーション等により、上澄み液を取り出す。
製塩工程から生成する苦汁には石膏が数質量%含有されているが、前記石膏を沈降させる工程によって沈降した石膏を除去することにより、石膏濃度が低下し、低石膏濃度の苦汁が得られる。前記石膏濃度を低下させた苦汁における石膏濃度は0.10質量%以下であることが必要であり、0.06質量%以下が好ましく、0.03質量%以下であることが更に好ましい。石膏濃度が0.10質量%以下であれば、石膏濃度が低く、高純度の塩化カリウムが得られる。
石膏濃度を低下させた苦汁における石膏濃度は、前記苦汁におけるSO4濃度をイオンクロマトグラフにて測定し、その値からCaSO4濃度を求め、石膏濃度とした。
苦汁受入槽の高さと石膏沈降速度から静置時間を算出し、その一定時間の間静置した後で上澄み液を分離することにより石膏濃度の低い苦汁を得ることができる。
本発明の塩化カリウムの製造方法は、本発明の低石膏濃度の苦汁の製造方法によって得られた60℃以上の低石膏濃度の苦汁を冷却し、塩化カリウムを析出・回収する。
本発明の低石膏濃度の苦汁の製造方法によって得られる低石膏濃度の苦汁の温度は、石膏を沈降させる工程における温度と同じで60℃以上である。この高温で低石膏濃度の苦汁を冷却することにより塩化カリウムを析出させることができる。
得られた低石膏濃度の苦汁から塩化カリウムを析出・回収する方法としては、公知の方法を利用することができる。例えば、特許文献1に記載の塩化カリウムの製造方法のように、60℃以上の低石膏濃度の苦汁に水を0.5質量~5質量%添加し、これを、20℃~50℃の内から設定される一定温度に保持するよう調整された苦汁中に流入分散させて急冷却することにより、低石膏濃度の苦汁から選択的に高純度の塩化カリウムを析出・回収する塩化カリウムの製造方法が好ましい。
更に、60℃以上の低石膏濃度の苦汁に、水を0.5質量~5質量%添加した苦汁を、20℃~50℃の内から設定される一定温度に保持するよう調整された苦汁中に流入分散させて急冷却することにより塩化カリウムを製造する方法であって、急冷却を行う冷却槽内の熱交換部の伝熱面積が、冷却槽の内容積に対して2m2/m3以上で構成され、冷却槽内の苦汁の流動状態がレイノルズ数で100000以上になるように攪拌され、前記低石膏濃度の苦汁に水を0.5~5質量%添加した苦汁を当該冷却槽内の苦汁に対して1分当たり1/150~1/20の容量比で流入させることにより、冷却槽内の苦汁温度を20℃~50℃の内から設定された一定温度に保持できるように冷却して、多成分で構成される苦汁中から選択的に塩化カリウムを析出させ、回収することがより好ましい。
低石膏濃度の苦汁は溶存している塩類が飽和状態にあるため、僅かな冷却によっても塩が析出する。このため低石膏濃度の苦汁中に水を0.5質量~5.0質量%添加して、僅かに未飽和の状態にする。塩化カリウムの溶解度は、温度による影響が大きく、僅かな冷却でも飽和状態になって析出するが、塩化ナトリウムの溶解度は温度の影響が小さいため飽和になり難く析出を抑制することができる。苦汁には、多くの塩類が含まれており、製塩工程の運転条件により、塩類濃度、成分構成が変動する場合があるが、水添加を用いることにより対応することができる。
また、前記水を添加した低石膏濃度の苦汁を、20℃~50℃の内から設定される一定温度に保持するよう調整された苦汁中に流入分散させて急冷却する。この20℃~50℃の内から設定される一定温度保持するように調整された苦汁は、例えば、製塩工程から生成する高温苦汁を20℃~50℃の内から設定される温度に冷却したものを用いることができる。
この水添加と冷却方法を組み合わせることにより、安定して高純度の塩化カリウムを析出、回収することができる。
冷却速度を上げるために、冷却槽は、一般的に用いられる円筒状のタンクの内部にコイル状の伝熱管を収め、攪拌機を取り付けたタンクコイル式熱交換器等を利用することができる。
熱交換部の伝熱面積を大きくして冷却能力を高めることにより、苦汁から供給される熱を効率良く冷媒に移動させることができる。冷却槽内の熱交換部の伝熱面積が、冷却槽の内容積に対して2m2/m3以上とすることにより槽内の温度を一定に保持することができる。伝熱面積は、槽内に収めたコイルに加えて、壁面等に設置したジャケット等を組み合わせて対応しても良い。
冷却槽内は、高温苦汁が流入した際、瞬時に分散冷却するために攪拌することが好ましく、塩化カリウムの析出、さらに冷却能力にも影響する。
攪拌は、通常の攪拌機、攪拌翼を用いることができる。攪拌は冷却槽内の苦汁の流動状態を決めることになり、局部的な温度の不均一による結晶析出異常等の問題が起こらないように、冷却槽内を十分に均一に攪拌するために、冷却槽内の流動状態を表すレイノルズ数で100000以上にすることが好ましい。好ましくは150000以上である。
さらに苦汁中に析出した塩化カリウム結晶を流動させながら成長させ、冷却槽、熱交換部等への付着を抑制する作用も期待できる。ここで、レイノルズ数Reは、苦汁の密度ρ、粘度μ、攪拌翼直径d、攪拌翼回転数nとしRe=ρ×n×d2/μにより算出した。攪拌機は、冷却槽の中央部でも偏心させて設置しても良い。攪拌翼は、パドル翼、スクリュー翼、ヘリカルリボン翼、アンカー翼等を使用することができる。
低石膏濃度の高温苦汁を冷却するにあたり、20℃~50℃の内の一定温度に保持するよう調整された苦汁中に高温苦汁を流入分散させて急冷却するためには、流入する高温苦汁の量に対して、冷却槽内の苦汁の量が少ないと、冷却能力との関係もあるが、温度変動を受けやすく、析出する塩化カリウムの純度、量にも影響する。連続的に流入する高温苦汁は、冷却槽内の苦汁の容量に対して1分当たり1/150~1/20の容量比で流入するように設定することにより安定的に冷却することができる。
冷却槽内の苦汁温度の計測は、熱電対、抵抗温度計等を用いることができ、冷却槽内の苦汁温度を一定に保持するために、熱交換部への冷媒の供給量を調整するようバルブ制御する方法を用いることができる。
塩化カリウム結晶の粒子径は、高温苦汁の液組成、冷却温度、攪拌、冷却槽内での滞留時間等の影響を受ける。本発明では、これらの因子の影響は少なく、概ね安定した粒子径が得られた。
また、塩化カリウムの純度は、高温苦汁の組成、冷却温度、水添加濃度、冷却槽内での滞留時間、攪拌等の影響を受ける。本発明では、これらの因子の内、特に高温苦汁の組成、水添加濃度の影響が大きく、これらの因子を把握、調整すれば安定した純度の塩化カリウムが得ることができる。
本発明により析出した塩化カリウムは、スラリー状で冷却槽から流出し、これを遠心分離等で固液分離してそのまま用いることができ、乾燥等の処理により乾燥品にすることもできる。さらには、洗浄または溶解再結晶等の精製処理をすることもできる。
本発明により得られる塩化カリウムは、肥料、粗製海水塩化カリウムとして、さらに上記のような精製処理をすることにより食品添加物、工業、肥料等の用途にも利用することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
[実施例I-1~I-17、比較例I-1~I-2]
海水を濃縮して塩化ナトリウムを析出分離する製塩工程から生成した温度約80℃の高温苦汁(試料No.1~19)を、1Lメスシリンダーにそれぞれ入れた(液層表面積33.2cm2、沈降開始1000mL)。各メスシリンダーを水槽中で表1に記載の苦汁温度及び静置時間にて静置し、石膏を沈降させた。その後、デカンテーションして石膏を除去し、分離液(低石膏濃度の苦汁)を得た。
石膏を除去する前の高温苦汁と、除去した後の分離液中のSO4濃度をイオンクロマトグラフにて測定し、石膏濃度(CaSO4濃度(質量%))を算出した。
表1に実施例I-1~I-17、比較例I-1~I-2の沈降分離詳細データを示した。
Figure 0007076408000001
石膏の沈降開始前(分離前)の各高温苦汁中の石膏濃度にはバラツキがみられたが、実施例I-1~I-2、I-6~I-17においては静置時間内に沈降界面が平衡状態となった。また、平衡状態となった石膏の界面位置は、苦汁の液比重や石膏濃度にもよるが、大体一定しており1Lメスシリンダー目盛りの100ml付近であった。実施例I-3~I-5については、静置時間内に、沈降界面が平衡に達しなかった。高温苦汁中の石膏濃度が高い場合は、沈降界面が平衡状態となるのに時間が要することが分かる。石膏の沈降速度は比較的安定しており、平均0.24m/hrであった。
図1に実施例I-2の石膏の沈降経過を示す。
図2に実施例I-1~I-17、及び比較例I-1~I-2の苦汁の静置時間と分離液(低石膏濃度の苦汁)中の石膏濃度の関係を示す。図2により、どのような苦汁においても70分以上静置すれば、石膏濃度の低い分離液が安定して得られることが分かる。
どのような苦汁においても70分以上静置すれば、沈降分離による石膏除去率は約99%と高く、殆どの石膏を取り除くことができた(表1参照)。石膏の沈降幅は、平均で苦汁液層の高さの89%であった。
[実施例II-1~II-4]
実施例I-6、I-10、I-11、I-16で得られた低石膏濃度の苦汁から、塩化カリウムを析出させ、その成分を定量分析した。塩化カリウムの析出は、特開2011-57537号公報の実施例1に記載の塩化カリウム製造方法と同様の方法により行った。
具体的には、まず冷却槽に予め冷却された苦汁を1L張込み、攪拌翼アンカー型(幅9cm)を取り付けた攪拌機にて約60rpmで攪拌させた。ここに、表1に記載の温度に維持された低石膏濃度の苦汁に、予めドレン水を3.1質量%添加したものを1L/hrで供給し、かつ冷却槽内の液面の高さが一定となるように底部より苦汁を抜き出した。冷却槽内の温度が45℃に保たれるように冷却管に海水を流して冷却速度約0.2℃/分で冷却した。低石膏濃度の苦汁から析出した塩化カリウムは、冷却槽の底部から流出する苦汁中にスラリー状で含まれる。塩化カリウムの回収は、冷却槽から流出した苦汁を100μmの金網を張った遠心分離機で600G、1分間脱水することにより行なった。
得られた塩化カリウム中の硫酸カルシウムの濃度を表2に示す。
[実施例III]
直径5m、高さ11mの円柱状の保温機能を持つ苦汁受入槽に温度80℃の高温苦汁を100kL受け入れ、前記受入槽内で80℃で静置し、石膏を沈降させた。
沈降時間は、受入槽内の液面の高さより沈降落差10.5mとして沈降速度0.24m/hrから約2日間とした。
静置後、受入槽下部の抜出口より上澄み液(低石膏濃度の苦汁)をプラント冷却槽に送液して、実施例II-1と同様な方法で塩化カリウムを冷却析出させた。
試験に用いた冷却槽は円筒形のタンクで、内容量が11.84m3、タンク中央部に攪拌機を取り付けた。その攪拌翼はパドル翼で、冷却管はタンク内側の壁面近くに取り付けられ、冷却管表面積が38.020m2である。冷却槽に予め45℃に冷却された苦汁9.4m3を張り込み、ここに、低石膏濃度の苦汁に予めドレン水を3.1質量%添加したものを8m3/hrで供給し、かつ冷却槽内の液面の高さが一定となるように底部より苦汁を抜き出した。冷却槽内の温度が45℃に保たれるように冷却管に海水を流して冷却し、冷却槽内の苦汁の流動状態がレイノルズ数で約176,000になるように攪拌した。
続いて、塩化カリウムが析出した苦汁を遠心分離器にて脱水して塩化カリウムを回収し、乾燥機にて乾燥して塩化カリウムを得た。
上記上澄み液における硫酸カルシウムの濃度は、0.10質量%以下であり、得られた塩化カリウムの成分を定量分析したところ、硫酸カルシウム濃度は実施例II-1と同程度で0.35質量%以下であり、プラントテストにおいても良好な結果が得られることを確認した。
[比較例II]
硫酸カルシウムを1.18質量%含有する約85℃の高温苦汁(比較試料1)から、石膏を沈殿させて除去する工程を経ずに、そのまま塩化カリウムを析出させた以外は、実施例IIIと同様の方法で、塩化カリウムを得た。
[比較例III-1、III-2]
比較例III-1は、硫酸カルシウムを0.94質量%含有する約110℃の高温苦汁(比較試料2-1)から、石膏を沈殿させて除去する工程を経ずに、そのまま塩化カリウムを析出させた以外は、実施例IIIと同様の方法で、塩化カリウムを得た。
比較例III-2は、比較例III-1で得られた塩化カリウムについて洗浄を行ったものである。
洗浄は、下記の(1)~(3)の順に行った。
洗浄:(1)塩化カリウム析出後遠心分離機にて固液分離
(2)固体結晶を飽和塩化カリウム溶液中に分散
(3)再度遠心分離機にて固液分離
得られた塩化カリウム中の硫酸カルシウムの濃度を表2に示す。
Figure 0007076408000002
上記表2に示したとおり、実施例II-1~II-4で得られた塩化カリウムは、本発明の石膏を沈殿させて除去する工程(以下、高温石膏沈降除去法)を行っていない比較例II及び比較例III-1で得られた塩化カリウムに比べ石膏濃度が低いうえ塩化カリウムの純度も90%以上と高いものであった。比較例II及び比較例III-1においては、高温苦汁に含有される石膏濃度が1質量%程度であっても、高温石膏沈降除去法を行わないと、得られる塩化カリウムには石膏が多く含有され、低石膏濃度の塩化カリウムが得られていない。
ここで示した高温石膏沈降除去法を用いることにより、製塩工程から生成する苦汁から石膏を除去し石膏の含有率が少ない高純度の塩化カリウムを析出、回収できることがわかる。
図3は原料苦汁とそれから析出した塩化カリウムの石膏濃度を表したグラフである。
原料苦汁の石膏濃度が低いほど、塩化カリウム中の石膏濃度が低くなることを確認した。
また得られた塩化カリウムは純度が90%以上で、純度が高いものを得ることができた。
また、比較例III-1とIII-2から、洗浄工程を行うことにより、塩化カリウム中の石膏濃度はある程度低下し、塩化カリウムの純度は上がるが、石膏濃度の除去率は60質量%程度であり、洗浄を行っても低石膏濃度の塩化カリウムは得られないことが分かる。

Claims (7)

  1. 海水を濃縮して塩化ナトリウムを析出分離する製塩工程から生成する70℃以上の苦汁を、60℃以上に温度を維持して、石膏濃度が0.10質量%以下の低石膏濃度の苦汁を製造する方法であって、
    前記60℃以上に温度を維持し苦汁を70分以上静置し、不溶解分である石膏を沈降させる工程と、
    前記石膏を沈降させる工程により沈降した石膏を分離することにより石膏を除去する工程と、
    を有する低石膏濃度の苦汁の製造方法。
  2. 前記温度を維持する60℃以上の温度が、前記製塩工程から生成する苦汁の温度±10℃の範囲である請求項1に記載の低石膏濃度の苦汁の製造方法。
  3. 前記石膏を沈降させる沈降幅は、苦汁液層の高さの85%以上である請求項1または2に記載の低石膏濃度の苦汁の製造方法。
  4. 前記低石膏濃度の苦汁における石膏濃度が0.06質量%以下である請求項1~3のいずれかに記載の低石膏濃度の苦汁の製造方法。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の低石膏濃度の苦汁の製造方法によって得られた60℃以上の低石膏濃度の苦汁を冷却し、塩化カリウムを析出・回収する塩化カリウムの製造方法。
  6. 前記低石膏濃度の苦汁を冷却する方法が、前記60℃以上の低石膏濃度の苦汁に水を0.5質量%~5質量%添加し、前記水を添加した低石膏濃度の苦汁を、20℃~50℃の内から設定される一定温度に保持するよう調整された苦汁中に流入分散させて急冷却する方法である、請求項5に記載の塩化カリウムの製造方法。
  7. 前記急冷却を行う冷却槽内の熱交換部の伝熱面積が、前記冷却槽の内容積に対して2m/m以上で構成され、かつ前記冷却槽内の苦汁の流動状態がレイノルズ数で100000以上になるように攪拌されており、
    前記水を添加した低石膏濃度の苦汁を、前記冷却槽内の苦汁に対して1分当たり1/150~1/20の容量比で流入させることにより、前記冷却槽内の苦汁の温度を20℃~50℃の内から設定された一定温度に保持できるように冷却し、多成分で構成される苦汁中から選択的に塩化カリウムを析出させて回収する、請求項6に記載の塩化カリウムの製造方法。
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