JP7076004B2 - 内視鏡先端部カバーおよび内視鏡 - Google Patents

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Description

本発明は、内視鏡(硬性および軟性を含む)の先端部を保護する内視鏡先端部カバー、内視鏡先端部カバーを備えた内視鏡、および内視鏡先端部カバーの使用方法に関する。
近年、反射防止技術として、凹凸の周期が可視光(λ=380nm~780nm)の波長以下に制御されたミクロな凹凸パターンを基板表面に形成する方法が注目されている(特許文献1および2を参照)。反射防止機能を発現する凹凸パターンを構成する凸部の2次元的な大きさは10nm以上500nm未満である。ここで、凸部の「2次元的な大きさ」とは、表面の法線方向から見たときの凸部の面積円相当径を指し、例えば、凸部が円錐形の場合、凸部の2次元的な大きさは、円錐の底面の直径に相当する。凹部の「2次元的な大きさ」も同様である。
本出願人は、陽極酸化ポーラスアルミナ層を用いて、モスアイ構造を有する反射防止膜(反射防止表面)を製造する方法を開発した。陽極酸化ポーラスアルミナ層を用いることによって、反転されたモスアイ構造を有する型を高い量産性で製造することができる(例えば、特許文献1~4)。参考のために、特許文献1~4の開示内容のすべてを本明細書に援用する。
また、本出願人は、上記の技術を応用することによって、表面が殺菌効果を有する合成高分子膜を開発するに至った(例えば、特許文献5)。参考のために、特許文献5の開示内容の全てを本明細書に援用する。
また、本出願人は、特許文献6に、優れた反射防止性を有するとともに、防汚性および耐擦傷性に優れた光学フィルムや、特許文献7、8に、防汚性に優れたフィルムを開示している。参考のために、特許文献6~8の開示内容のすべてを本明細書に援用する。
一方、内視鏡においては、観察窓に血液や体液が付着することによって、観察視野を確保できないという問題がある。現在は、例えば、観察窓を洗浄する機構を備えた内視鏡が用いられている。観察窓の洗浄は、内視鏡先端部に設けたノズルから洗浄液を噴出し、観察窓に付着した血液等を洗い流すことによって行われる。観察窓に付着した洗浄液は、ノズルから空気を吹き付けることによって除去される。
特許第4265729号公報 特開2009-166502号公報 国際公開第2011/125486号 国際公開第2013/183576号 国際公開第2015/163018号(特許第5788128号) 国際公開第2016/174893号(特許第5951165号) 国際公開第2018/012340号 国際公開第2018/012342号
しかしながら、上述のような、洗浄機構を有する内視鏡を用いても、観察窓を洗浄するために時間がかかる(短時間に洗浄できないことがある)という問題があった。また、洗浄によって血液(および血液を含む洗浄液)が観察窓全体に広がり、かえって観察しづらくなることがあった。洗浄によって観察窓が清浄にならない場合には、内視鏡先端部を一旦、体腔外に取り出す必要があるという問題があった。
そこで、本発明は、内視鏡の観察窓への血液や体液の付着を抑制し、従来よりも観察窓を清浄に保ちやすい、あるいは、容易に洗浄できる、内視鏡先端部カバーおよび内視鏡を提供することを目的とする。
本発明の実施形態によると、以下の項目に記載の解決手段が提供される。
[項目1]
先端部に観察窓を有する内視鏡の前記先端部を保護するカバーであって、
前記内視鏡の前記先端部に装着されたとき、前記観察窓上に配置される部分に、合成高分子膜を有し、
前記合成高分子膜は、複数の凸部を有する表面を備え、
前記合成高分子膜の法線方向から見たとき、前記複数の凸部の2次元的な大きさは20nm超500nm未満の範囲内にあり、
前記表面に対する水の静的接触角が98°以上である、内視鏡先端部カバー。
[項目2]
前記合成高分子膜の表面に対する水の静的接触角が128°以上である、項目1に記載の内視鏡先端部カバー。前記表面のヘキサデカンの静的接触角は35°以上であることが好ましい。
[項目3]
前記合成高分子膜の、少なくとも前記観察窓上に位置する部分の表面を覆う撥水性オイルの液膜をさらに有する、項目1または2に記載の内視鏡先端部カバー。
[項目4]
前記撥水性オイルは、シリコーンオイルまたはフッ素オイルである、項目3に記載の内視鏡先端部カバー。
[項目5]
前記撥水性オイルは、動粘度が350mm/s未満のシリコーンオイルである、項目3または4に記載の内視鏡先端部カバー。
[項目6]
前記撥水性オイルは、動粘度が10mm/s以下のシリコーンオイルである、項目3または4に記載の内視鏡先端部カバー。
[項目7]
前記合成高分子膜は、光硬化性樹脂から形成された樹脂膜を含む、項目1から6のいずれかに記載の内視鏡先端部カバー。
[項目8]
前記合成高分子膜は、前記樹脂膜上に形成された撥水撥油層をさらに有する、項目7に記載の内視鏡先端部カバー。
[項目9]
前記光硬化性樹脂は、フッ素元素を含む第1の重合性フッ素化合物を含み、
前記第1の重合性フッ素化合物は、複数の重合性官能基を有し、1000以上5000以下の分子量を有し、
前記合成高分子膜の前記表面に200μLの水を滴下後、5分後の水溶液のpHが6.5以上7.5以下である、項目7または8に記載の内視鏡先端部カバー。
[項目10]
前記光硬化性樹脂は、光重合開始剤を含み、
前記光重合開始剤は、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、および1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、項目9に記載の内視鏡先端部カバー。
[項目11]
前記光硬化性樹脂は、フッ素元素を含む第2の重合性フッ素化合物をさらに含み、
前記第2の重合性フッ素化合物は、単官能重合性化合物であって、100以上1000以下の分子量を有する、項目9または10に記載の内視鏡先端部カバー。
[項目12]
前記光硬化性樹脂に対する前記第1の重合性フッ素化合物の割合は、1質量%以上5質量%以下である、項目9から11のいずれかに記載の内視鏡先端部カバー。
[項目13]
項目1から12のいずれかに記載の内視鏡先端部カバーが装着された内視鏡。
本発明の実施形態によると、内視鏡の観察窓への血液や体液の付着を抑制し、従来よりも観察窓を清浄に保ちやすい、あるいは、容易に洗浄できる、内視鏡先端部カバー、内視鏡および内視鏡先端部カバーの使用方法が提供される。
(a)は、本発明の実施形態による内視鏡20を有する内視鏡システム100の模式図であり、(b)は、本発明の実施形態による内視鏡先端部カバー10の模式図である。 (a)および(b)は、それぞれ本発明の実施形態による内視鏡先端部カバー10に好適に用いられる合成高分子膜13Aおよび13Bの模式的な断面図である。 (a)、(b)および(c)は、それぞれ本発明の実施形態による内視鏡先端部カバー10A、10Bおよび10Cを模式的に示す断面図である。 (a)、(b)および(c)は、それぞれ本発明の実施形態による内視鏡先端部カバー10D、10Eおよび10Fを模式的に示す断面図である。 (a)および(b)は、本発明の実施形態による内視鏡先端部カバー10Cおよびアタッチメント22を装着した状態を示す模式的に示す断面図である。 (a)、(b)および(c)は、それぞれ、本発明の実施形態による内視鏡20A、20Bおよび20Cの先端部の端面を示す模式図である。 (a)、(b)および(c)は、本発明の他の実施形態による内視鏡先端部カバーに用いられるフィルムの表面に撥水性オイルが付与された状態を模式的に示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による内視鏡先端部カバーおよび内視鏡の構造ならびに内視鏡先端部カバーの使用方法を説明する。本発明の実施形態による内視鏡先端部カバーおよび内視鏡は、以下で例示するものに限定されない。
図1(a)は、本発明の実施形態による内視鏡20を有する内視鏡システム100の模式図であり、図1(b)は、本発明の実施形態による内視鏡先端部カバー10の模式図である。
ここでは、例えば、腹腔鏡外科手術に用いられる内視鏡20について説明するが、本発明の実施形態による内視鏡先端部カバーは、例示する内視鏡に限られず、先端部に観察窓を有する内視鏡に広く適用される。
内視鏡20は、例えば、被検者の腹部表面からトラカール(挿通具)42を体腔内に穿刺した後、このトラカール42内を通して、内視鏡20の挿入部20aを体腔内に挿入し、体腔内をモニタに表示しながら、各種処置が施される。内視鏡20の操作部20bは、ユニバーサルケーブルを介して、コンピュータおよび光源装置に接続されており、照明、撮影、鉗子(不図示)の操作や、送気・送液チューブ54から洗浄液または洗浄ガスの供給などの操作を行うことができる。トラカール42に接続された気腹チューブ56から気腹ガス(炭酸ガス)が腹腔内に供給される。トラカール42は弁部材44を有し、弁部材44は、気腹ガスがトラカール42の開口部から漏れ出るのを防止する。
内視鏡先端部20tの端面には、例えば、図6(a)に示す様に、観察窓32、照明窓34a、34b、鉗子用開口36および噴出ノズル38が設けられている。噴出ノズル38から洗浄液および/または加圧空気を観察窓32に向けて噴射することによって、観察窓32を洗浄する。しかしながら、上述した様に、観察窓を洗浄するために時間がかかる(短時間に洗浄できないことがある)という問題があった。また、洗浄によって血液(および血液を含む洗浄液)が観察窓全体に広がり、かえって観察しづらくなることがあった。洗浄によって観察窓が清浄にならない場合には、内視鏡先端部を一旦、体腔外に取り出す必要があるという問題があった。
そこで、本発明の実施形態による内視鏡先端部カバー10を内視鏡先端部20tに装着することによって、内視鏡20の観察窓32への血液や体液の付着を抑制し、従来よりも観察窓を清浄に保ちやすくする。
図1(b)に示す様に、内視鏡先端部カバー(以下、単に「カバー」ということがある。)10は、内視鏡先端部20tに装着されたとき、観察窓上に配置される部分に、合成高分子膜13を有する。合成高分子膜13は、複数の凸部を有する表面を備え、合成高分子膜13の法線方向から見たとき、複数の凸部の2次元的な大きさは20nm超500nm未満の範囲内にあり、表面に対する水の静的接触角が150°以上であり、かつ、ヘキサデカンの静的接触角が60°以上である。すなわち、合成高分子膜13は、表面にモスアイ構造を有し、優れた撥水性および撥油性を発現するので、血液や体液が付着することを抑制する。また、たとえ、合成高分子膜13の表面に血液等が付着したとしても、従来よりも簡単に、また従来よりも確実に、清浄にできる。モスアイ構造は反射防止機能(例えば、反射率が0.2%以下)を発現するので、従来よりも多くの光を観察窓に導くことができる。
カバー10は、例えば、図1(b)に示す様に、合成高分子膜13と、合成高分子膜13の内視鏡20側に配置されたベースフィルム12と、ベースフィルム12の内視鏡20側に配置されたカバー部材16とを有する。合成高分子膜13は、例えば光硬化性樹脂から形成されており、合成高分子膜13およびベースフィルム12は、先端部20tの端面上にのみ配置されており、カバー部材16は、ベースフィルム12よりも大きい引張伸度を有し、先端部20tの側面にも配置されている。ベースフィルム12とベースフィルム12上に形成された合成高分子膜13とが、表面にモスアイ構造を有するフィルム14を構成している。
表面にモスアイ構造を有する合成高分子膜13は、後述するように光硬化性樹脂を用いて形成することが好ましい。したがって、合成高分子膜13は比較的伸縮性に乏しい膜となる。また、後述するように、ロール・ツー・ロール方式で、合成高分子膜13を形成するためには、ベースフィルム12としても比較的腰の強い(すなわち、弾性率が比較的高い)フィルム(例えば、PET、TAC、PC)を用いることが好ましい。そうすると、モスアイ構造を有するフィルム14で、直接、内視鏡先端部20tを覆うことは難しい。特に、フィルム14と、観察窓32との間に空気が存在しないように、フィルム14を端面に密着させることは難しい。
そこで、ベースフィルム12よりも大きい引張伸度を有するカバー部材16を設け、カバー部材16で、先端部20tを覆う。カバー部材16の引張伸度(引張試験において破断したときの伸び:ASTM D638)100%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましく、300%以上であることがさらに好ましい。カバー部材16は、例えば、厚さが500μm以下のフィルムであってよい(例えば、図3(a)、(b)参照)。あるいは、カバー部材16は、内視鏡先端部20tを覆うキャップ状の形状(円筒の一方の端を塞いだ形状)を有してもよい(図3(c)参照)。
カバー部材16と、フィルム14(ベースフィルム12)とは、例えば、接着層15で接着する。カバー部材16とフィルム14とを熱融着できる場合には、接着層15を省略してもよい。カバー部材16は、もちろん、可視光の透過率が高いことが好ましく、可視光の透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
カバー部材16に好適に用いられる高分子材料としては、例えば、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、エステル系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーンエラストマー(シリコーンゴム)を例示することができる。カバー部材16としてフィルムを用いる場合には、上記のエラストマーに加えて、エラストマー程の伸びを有しない、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂を用いることもできる。また、これらの樹脂のうち、熱収縮性を有するフィルムを用いると、内視鏡先端部20tにカバー部材(カバーフィルム)16を容易に密着させることができる。なお、ここで、オレフィン系とは、ポリエチレン、ポリプロピレンをはじめ、エチレンとα―オレフィン(プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、4-メチルペンテンなど)との共重合体を含む。
カバー部材16は可視光に対する透明性が高いことが好ましく、可視光の透過率は80%以上が好ましく、90%以上がさらに好ましい。透明性の観点からは、アクリル系、ポリプロピレン系、スチレン系、塩化ビニル系、ポリエステル系が好ましい。
カバー部材16を内視鏡先端部20tに装着した後、固定する方法は、特に限定されない。例えば、伸縮性のある医療用テープを用いて、カバー部材16を先端部20tに固定してもよいし、接着剤(粘着剤を含む)を用いてもよい。さらに、内視鏡先端部20tに装着されたとき、カバー部材16を先端部20tの側面に押し当てる筒状装着部を有する固定部材を用いてもよい(例えば、図4(a)、(b)、(c)参照)。もちろん、複数の固定方法を組合せてもよい。
次に、図2(a)および(b)を参照して、合成高分子膜13の構造を説明する。
図2(a)および(b)は、内視鏡先端部カバー10に好適に用いられる合成高分子膜13Aおよび13Bの模式的な断面図である。ここで例示する合成高分子膜13Aおよび13Bは、いずれもベースフィルム12Aおよび12B上にそれぞれ形成されている。
図2(a)に示すフィルム14Aは、ベースフィルム12Aと、ベースフィルム12A上に形成された合成高分子膜13Aとを有している。合成高分子膜13Aは、表面に複数の凸部13Apを有しており、複数の凸部13Apは、モスアイ構造を構成している。合成高分子膜13Aの法線方向から見たとき、凸部13Apの2次元的な大きさDpは20nm超500nm未満の範囲内にある。ここで、凸部13Apの「2次元的な大きさ」とは、表面の法線方向から見たときの凸部13Apの面積円相当径を指す。例えば、凸部13Apが円錐形の場合、凸部13Apの2次元的な大きさは、円錐の底面の直径に相当する。また、凸部13Apの典型的な隣接間距離Dintは20nm超1000nm以下である。図2(a)に例示するように、凸部13Apが密に配列されており、隣接する凸部13Ap間に間隙が存在しない(例えば、円錐の底面が部分的に重なる)場合には、凸部13Apの2次元的な大きさDpは隣接間距離Dintと等しい。凸部13Apの典型的な高さDhは、50nm以上500nm未満である。凸部13Apの高さDhが150nm以下であってもよい。合成高分子膜13Aの厚さtsに特に制限はなく、凸部13Apの高さDhより大きければよい。
図2(a)に示した合成高分子膜13Aは、特許文献1~4に記載されている反射防止膜と同様のモスアイ構造を有している。反射防止機能を発現させるためには、表面に平坦な部分がなく、凸部13Apが密に配列されていることが好ましい。また、凸部13Apは、空気側からベースフィルム12A側に向かって、断面積(入射光線に直交する面に平行な断面、例えばベースフィルム12Aの面に平行な断面)が増加する形状、例えば、円錐形であることが好ましい。また、光の干渉を抑制するために、凸部13Apを規則性がないように、好ましくはランダムに、配列することが好ましい。また、合成高分子膜13Aの凹凸構造は、いわゆるロータス効果を発現するので、優れた撥水性および優れた撥油性を示す。
図2(b)に示すフィルム14Bは、ベースフィルム12Bと、ベースフィルム12B上に形成された合成高分子膜13Bとを有している。合成高分子膜13Bは、表面に複数の凸部13Bpを有しており、複数の凸部13Bpは、モスアイ構造を構成している。フィルム14Bは、合成高分子膜13Bが有する凸部13Bpの構造が、フィルム14Aの合成高分子膜13Aが有する凸部13Apの構造と異なっている。フィルム14Aと共通の特徴については説明を省略することがある。
合成高分子膜13Bの法線方向から見たとき、凸部13Bpの2次元的な大きさDpは20nm超500nm未満の範囲内にある。また、凸部13Bpの典型的な隣接間距離Dintは20nm超1000nm以下であり、かつ、Dp<Dintである。すなわち、合成高分子膜13Bでは、隣接する凸部13Bpの間に平坦部が存在する。凸部13Bpは、空気側に円錐形の部分を有する円柱状であり、凸部13Bpの典型的な高さDhは、50nm以上500nm未満である。また、凸部13Bpは、規則的に配列されていてもよいし、不規則に配列されていてもよい。凸部13Bpが規則的に配列されている場合、Dintは配列の周期をも表すことになる。このことは、当然ながら、合成高分子膜13Aについても同じである。
なお、本明細書において、「モスアイ構造」は、図2(a)に示した合成高分子膜13Aの凸部13Apの様に、断面積(膜面に平行な断面)が増加する形状の凸部で構成される、優れた反射機能を有するナノ表面構造だけでなく、図2(b)に示した合成高分子膜13Bの凸部13Bpの様に、断面積(膜面に平行な断面)が一定の部分を有する凸部で構成されるナノ表面構造も包含する。ただし、円錐形の先端は丸みを有していてもよい。
なお、特許文献5に記載されているように、合成高分子膜は、複数の第1の凸部に重畳して形成された複数の第2の凸部をさらに有してもよい。ここで、上記で例示した合成高分子膜が有する、2次元的な大きさが20nm超500nm未満の範囲にある凸部を第1の凸部という。第2の凸部の2次元的な大きさは、第1の凸部の2次元的な大きさよりも小さく、かつ、100nmを超えない。
図2(a)および(b)に例示したようなモスアイ構造を表面に形成するための型(以下、「モスアイ用型」という。)は、モスアイ構造を反転させた、反転されたモスアイ構造を有する。反転されたモスアイ構造を有する陽極酸化ポーラスアルミナ層をそのまま型として利用すると、モスアイ構造を安価に製造することができる。特に、円筒状のモスアイ用型を用いると、ロール・ツー・ロール方式によりモスアイ構造を効率良く製造することができる。このようなモスアイ用型は、特許文献2~5に記載されている方法で製造することができる。すなわち、基材上に堆積されたアルミニウム膜またはアルミニウム基材に対して、陽極酸化工程およびエッチング工程を交互に複数回繰り返すことによって、反転されたモスアイ構造を有するポーラスアルミナ層を有するモスアイ用型が得られる。
合成高分子膜13の表面は、モスアイ用型のナノ表面構造を反転したモスアイ構造を有する。用いるモスアイ用型のナノ表面構造に応じて、図2(a)および(b)に示した合成高分子膜13Aおよび13Bを作製することができる。合成高分子膜13を形成する材料は、紫外線硬化性樹脂に限られず、可視光で硬化可能な光硬化性樹脂を用いることもできる。
[合成高分子膜]
組成の異なる紫外線硬化性樹脂を用いて、図2(a)に示したフィルム14Aと同様の構造を有する試料フィルムを作製した。各試料フィルムの合成高分子膜を形成する紫外線硬化性樹脂に使用した原材料を表1に示す。
Figure 0007076004000001
合成高分子膜としては、例えば、特許文献8に記載の合成分子膜を用いることができる。実施例1の合成高分子膜を形成する紫外線硬化性樹脂に使用した原材料の配合を表2に示し、表3にフィルム表面(合成高分子膜の表面)の評価結果を示す。実施例1は、特許文献8に記載の実施例1に対応する。なお、評価方法は、後述する実施例2、3と同じである。
Figure 0007076004000002
Figure 0007076004000003
実施例1の合成高分子膜は、防汚剤として、重合性フッ素化合物を含んでいる。ここで用いたDAC-HP(ダイキン工業株式会社製)は、重合性官能基を2つ有する。分子量は1169~1999であり、フッ素元素の含有率は24.4質量%~42.8質量%である(いずれも推定による)。実施例1の合成高分子膜は、水の静的接触角が158.0°と非常に高く、超撥水性を有している。また、ヘキサデカンの静的接触角も66.0°と高く、優れた撥油性を有している。
[合成高分子膜の改良]
本発明者がさらに検討したところ、特許文献8等に記載のこれまでの合成高分子膜は、表面に付着した水(水溶液)のpHを変化させることがあった。内視鏡先端部カバーの直径が10mm程度以下なので、人体等への影響は小さいと考えられるが、pHに影響を与えないことが好ましい。そこで、撥水性・撥油性のさらなる向上および表面に付着した水(水溶液)のpHに与える影響が小さい合成高分子膜を検討した。
その結果、複数の重合官能基を有する重合性フッ素化合物を含む光硬化性樹脂を用いて、上述の表面構造を有する合成高分子膜13を作製すると、撥水性・撥油性にさらに優れた表面を有し、表面の水(水溶液)のpHに与える影響が小さい合成高分子膜を得ることができることが分かった。また、光硬化性樹脂が、単官能重合性フッ素化合物をさらに含むと、撥水性・撥油性にさらに優れた合成高分子膜が得られ得ることが分かった。
なお、重合開始剤の中には、光分解によって、有機酸を生成するものがある(例えば、819)。表面に付着した水(水溶液)のpHに与える影響をさらに小さくするためには、光分解によって有機酸を発生しない重合開始剤を用いることが好ましい。有機酸を発生しない重合開始剤としては、OXE02:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、および2959:1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンの他、例えば、Omnirad 127(IGM Resins社):2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンを好適に用いることができる。これらの重合開始剤は、着色および臭気を発生しないという利点を有している。
なお、表面の水(水溶液)のpHに与える影響が小さいとは、例えば、合成高分子膜の表面に200μLの水を滴下後、5分後の水溶液のpHが6.5以上7.5以下であることをいう。このような特徴を有する合成高分子膜は、本出願人による特開2019-156879号公報に記載されている。参考のために、特開2019-156879号公報の開示内容のすべてを本明細書に援用する。
表1に示した「防汚剤」のうち、MT70およびFAAC6は、フッ素元素を含み、重合性を有する。防汚剤MT70は、複数の重合性官能基を有する。すなわち、MT70は、多官能の重合性フッ素化合物である。MT70はウレタンメタクリレート基を有する。MT70が有する重合性官能基の数は4個である。表1中のMT70分子量(MW)は、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
防汚剤FAAC6は、単官能の重合性フッ素化合物である。すなわち、FAAC6は、重合性官能基を1つ有する。FAAC6の化学構造式を[化1]に示す。
Figure 0007076004000004
ベースフィルム12Aと、ベースフィルム12A上に形成された合成高分子膜13Aとを有する試料フィルムとしては、実施例2、3を作製した。それぞれの合成高分子膜の原材料の配合組成およびベースフィルムの種類を表4に示す。
ベースフィルム12Aとしては、厚さが80μmのTACフィルム(富士フイルム株式会社製の「TAC-TD80U」)、または、厚さが110μmのPCフィルム(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製の「ユーピロンKS3410UR」)を用いた(ユーピロンは登録商標)。
各試料フィルムは、以下のように、モスアイ用型を用いて製造した。
モスアイ用型は、ガラス基板(約5cm×約5cm)上にアルミニウム膜(厚さ:約1μm)を形成し、このアルミニウム膜に陽極酸化とエッチングとを交互に繰り返すことによって、ポーラスアルミナ層(Dpは約200nm、Dintは約200nm、Dhは約150nm)を形成した。なお、ポーラスアルミナ層は、合成高分子膜13Aが有するモスアイ構造を反転した構造を有するので、その大きさを特徴づける対応するパラメータに同じ記号を用いることがある。その後、モスアイ用型の表面(反転されたモスアイ構造を有する表面)に離型処理(「金型離型処理」ともいう。)を施した。金型離型処理は、金型の表面(ここでは、モスアイ用型の表面)に離型剤を付与する処理を広く含む。ここでは、離型剤として、フッ素系離型剤(ダイキン工業株式会社製:オプツールDSX、変性パーフルオロポリエーテル(PFPE))を用い、モスアイ用型の表面に浸漬法で付与した。なお、フッ素系離型剤は、フッ素系離型成分とフッ素系溶媒とを含み、離型成分の濃度が異なる4種類を用いた。標準濃度を0.1%とし、低濃度Iを0.001%、低濃度IIを0.0001%、低濃度IIIを0.00001%とした。いずれの濃度も質量%である。市販されているオプツールDSXは有効成分濃度20%であり、フッ素系溶媒(パーフロロヘキサンなど)を用いて所定の濃度に希釈して使用する。濃度調整のための希釈には、フロロテクノロジー社製のフッ素系溶媒(製品名:希釈剤ZV)を用いた。後に実験例を示すように、なお、モスアイ用型の表面を濃度の異なる離型剤で処理することによって、合成高分子膜の表面の撥水性・撥油性を調整することができる。
紫外線硬化性樹脂が表面に付与されたベースフィルム12Aを、モスアイ用型に押し付けた状態で、紫外線硬化性樹脂に紫外線(UV)を照射することによって紫外線硬化性樹脂を硬化した。その後、ベースフィルム12Aからモスアイ用型を分離することによって、モスアイ用型の反転されたモスアイ構造が転写された合成高分子膜13Aがベースフィルム12Aの表面に形成された。露光量は約200mJ/cm2(波長が375nmの光を基準)とした。各試料フィルムにおけるDpは約200nm、Dintは約200nm、Dhは約150nmであった。いずれも無溶剤で合成高分子膜を作製した。紫外線照射には、Fusion UV Systems社製のUVランプ(製品名:LIGHT HANMAR6J6P3)を用いた。
ベースフィルム12AとしてPCフィルムを用いた場合(実施例3)は、モスアイ用型をヒートステージ上で20℃または40℃に加熱した状態で、紫外線硬化性樹脂をモスアイ用型に付与した。紫外線硬化性樹脂が付与されたモスアイ用型の上に、PCフィルムを配置し、ハンドローラーで均一に押し当てた。次に、PCフィルム側から紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させることによって、PCフィルム上に合成高分子膜を有する試料フィルムを得た。PCフィルム上に合成高分子膜を作製する工程を転写工程ということがあり、そのときの温度(20℃または40℃)を転写温度ということがある。
Figure 0007076004000005
実施例2、3の各試料フィルムについて、試料フィルムの特性、合成高分子膜とベースフィルムとの密着性、および試料フィルムの表面(すなわち合成高分子膜の表面)の特性の評価結果を下記の表5Aに示す。なお、表5Aに示す実施例2、実施例3のフィルムは、上記の金型離型処理を標準濃度の離型剤を用いて行って作製されたものである。実施例2と同じ組成の合成高分子膜を作製する際の金型離型処理を低濃度I、II、IIIの離型剤を用いて行って得られた試料フィルムについても、同様の評価を行った結果を下記の表5Bに示す。表5Bにおける、実施例2A、2B、2Cは、それぞれ、低濃度I、II、IIIの離型剤を用いて作製した試料フィルムを表す。
試料フィルムの特性としては、試料フィルムの着色および臭気の評価と、酸の同定とを行った。試料フィルムの表面特性としては、合成高分子膜表面における水滴の濡れ広がりやすさ、水滴のpHの変化、表面に対する水またはヘキサデカンの静的接触角を評価した。
[試料フィルム特性の評価]
・着色
試料フィルムの着色の有無(黄変の程度)を目視観察で評価した。
〇:10枚重ねても無色透明。
△:1枚では無色透明だが、10枚重ねると黄変が観察される。
×:1枚で黄変が観察される。
ここで、判定が○または△であるものを実使用上問題ないとした。
・臭気
試料フィルムの臭気の有無(程度)を以下のように評価した。5cm×5cmの試料フィルムを容量100mLのガラス容器に入れて密閉し、40℃の恒温槽内で24時間放置した。24時間放置後、5人のパネラーが、開封直後の容器内の匂いを嗅ぎ、異臭の程度を評価した。
○:僅かな臭いはあるが不快な異臭はない。
△:臭いはあるが不快な異臭はない。
×:不快な異臭がある。
ここで、判定が○または△であるものを実使用上問題ないとした。
[ベースフィルムとの密着性の評価]
合成高分子膜のベースフィルムに対する密着性は、以下の様にして評価した。
温度23℃、湿度50%の環境下で、各試料フィルムの合成高分子膜の表面(基材とは反対側の表面)に対して、カッターナイフで、碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを1mm間隔で入れて、100個の正方形状の升目(1mm角)を刻んだ。そして、日東電工社製のポリエステル粘着テープ「No.31B」を升目部分に圧着した後、粘着テープを升目部分の表面に対して90°の方向に、100mm/sの速度で剥がした。その後、基材上の合成高分子膜の剥離状態を目視観察し、基材上の重合体層が剥がれずに残った升目の個数「M」(単位:個)を数えた。ベースフィルムとしてPCフィルムを用いた場合(実施例3)は、それぞれ、転写温度が20℃および40℃の両方を判定した結果、同じ結果(「100個」)が得られた。
[フィルム表面特性の評価]
・合成高分子膜上の水の広がり程度
脱イオン水を0.01mol/L-塩酸および0.011mol/L-水酸化ナトリウムにてpH=7.0±0.1に調整した。すなわち、このようにして、中性の水を用意した。
各試料フィルム表面にマイクロピペットにて上記pH調整水を0.2cc(200μL)滴下後、5minまでの最大広がり径(面積円相当径)を測定し、各5回の平均値を用いた。
・pH測定
pHの測定は、以下の様にして行った。
上記と同様に、各試料フィルム表面にマイクロピペットにて上記pH調整水を0.2cc(200μL)滴下し、5分経過後に、各試料フィルム表面の水溶液(水に合成高分子膜からの抽出物が溶解したものを含む)を下記の平板用電極にて測定を行い、各5回の平均値を用いた(方法1)。方法2は、各試料フィルム表面上の上記水溶液を下記のサンプリングシートですくい取って測定した点において、方法1と異なる。特に断りのない場合は、方法1を用いた。
電極:株式会社堀場製作所製、pH電極、型番:0040-10D(半導体センサ)
サンプリングシート:株式会社堀場製作所製、サンプリングシートB、型番:Y011A
・静的接触角の測定
接触角計(協和界面科学株式会社製、PCA-1)を用いて、各試料フィルムの合成高分子膜の表面に対する、水およびヘキサデカンの静的接触角を測定した。各試料フィルムの合成高分子膜の表面に、水またはヘキサデカンの液滴(およそ10μL)を滴下し、それぞれ、滴下後1秒後、10秒後および60秒後の静的接触角を測定した。θ/2法(θ/2=arctan(h/r)、θ:接触角、r:液滴の半径、h:液滴の高さ)で測定された、3箇所の接触角の平均値を求めた。ここで、1箇所目の測定点としては、各試料フィルムの中央部分を選択し、2箇所目及び3箇所目の測定点としては、1箇所目の測定点から20mm以上離れ、かつ、1箇所目の測定点に対して互いに点対称な位置にある2点を選択した。なお、接触角が150°以上になると、マイクロシリンジの先に形成した液滴を表面に接触させた際に、液滴が表面に着滴(移動)せず、マイクロシリンジの先に残り、接触角を測定できないことがあった。そのような場合には、「着滴せず」とした。すなわち、「着滴せず」は接触角が150°以上であることを意味する。また、接触角は、着滴後の時間経過とともに変化する(小さくなる)が、特に断らない限り、接触角は、着滴直後、1秒以内の接触角を指すことにする。
Figure 0007076004000006
表5Aに示した、実施例2、3の試料フィルムの評価結果を参照する。実施例2、3の合成高分子膜を形成する硬化性樹脂は、いずれも多官能の重合性フッ素化合物を含む。実施例2、3はいずれも、優れた撥水性(水の静的接触角が150°以上)を有し、かつ、表面の水(水溶液)のpHに与える影響が小さい。さらに、実施例2、3のいずれも優れた撥油性(ヘキサデカンの静的接触角が100°以上)を有している。
実施例2および3の合成樹脂膜は、防汚剤MT70および防汚剤FAAC6を含む。実施例2の試料フィルムは、ベースフィルムとしてTACフィルムを有する。これに対して、実施例3の試料フィルムは、ベースフィルムとしてPCフィルムを有する。
本出願人による特開2019-51638号公報に記載されているように、本出願人は、PCフィルムに対する密着性を改善するアクリルモノマーとして、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルモノマーが有効であることを見出した。参考のために特開2019-51638号公報の開示内容のすべてを本明細書に援用する。例えば、合成高分子膜の架橋構造における合成高分子膜の全体に対する(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルモノマー単位の含有率が15質量%以上45質量%未満であれば、優れたPC密着性を有し得る。PCは、エンジニアリングプラスチックの中でも平均して高い物性を示す樹脂で、特に、耐衝撃性および耐熱性に優れるので、幅広く利用されている。
実施例3では、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルとして、株式会社日本触媒製のVEEAを用い、重合開始剤として2959を用いたものである。実施例3は、PCフィルムとの密着性に優れている。なお、ベースフィルムとしてTACフィルムを用いた実施例2も、TACフィルムとの密着性に問題はない。
なお、PCフィルムとしては、実施例に用いたものの他に、旭硝子社製の「カーボグラス(登録商標)」、帝人社製の「ピュアエース(登録商標)」、コベストロ社製の「Makrofol(登録商標)」等を用いることができる。
上記では、ベースフィルムとしてポリカーボネートフィルムを用いた、ポリカーボネートフィルムと合成高分子膜とを含む積層フィルムの例を示したがこれに限られない。例えば、ポリカーボネートのプラスチック成型品をプラスチック基材として用いることもできる。この場合、所望の形状のガラス基材上に堆積したアルミニウム膜を用いて作製したモスアイ用型を用いればよい。
また、ポリカーボネートフィルムと合成高分子膜とを含む積層フィルムを用いて、種々の形状の成形品をラミネートすることによって、種々の形状の成形品の表面に、優れた撥水性・撥油性を付与し、かつ、表面に付着した水(水溶液)のpHに対する影響が小さい表面を得ることができる。
実験例を示したように、合成高分子膜が、複数の重合性官能基を有する重合性フッ素化合物を含む硬化性樹脂から形成されていれば、優れた撥水性・撥油性を有し得る。このような合成高分子膜は、表面の撥水性・撥油性の耐久性にも優れている。
重合性官能基を有する重合性フッ素化合物は、例えば、フッ素含有炭化水素鎖と、末端に(メタ)アクリレート基とを有し、フッ素含有炭化水素鎖が、硬化性樹脂の表面付近に存在しようとする。このような硬化性樹脂を硬化させて得られる合成高分子膜は、優れた撥水性・撥油性を有する。
表5Bに示した、実施例2A、2B、2Cの試料フィルムの評価結果を参照する。金型離型処理に用いた離型剤の濃度が低くなるほど、撥水性が低下するものの、いずれも優れた撥水性・撥油性を有している。モスアイ用型の表面をフッ素系離型剤で処理すると、合成高分子膜の表面付近におけるフッ素元素含有率がさらに高くなり得るので、優れた撥水性・撥油性の観点からさらに好ましい。離型剤の濃度を調整することで、合成高分子膜の撥水性・撥油性を調整することが可能で、優れた撥水性・撥油性を得るためには、例えば、0.001%(実施例2A)以上であることが好ましい。
Figure 0007076004000007
多官能の重合性フッ素化合物は、優れた撥水性・撥油性を発現させるために、フッ素含有炭化水素鎖の長さ(体積)が適度なサイズを有することが好ましい。フッ素含有炭化水素鎖の長さ(体積)が大き過ぎると、合成高分子膜の表面付近に移動し難くなる場合がある。実験例を示したように、比較的低分子量の単官能重合性フッ素化合物を併用することによって、この問題を解決することができる。フッ素含有炭化水素鎖の長さ(体積)が大き過ぎると、硬化性樹脂の他のモノマー等に対する重合性フッ素化合物の溶解性が低下し、硬化性樹脂を硬化すると白化した合成高分子膜が得られることがある。
例えば、多官能の重合性フッ素化合物は、1000以上5000以下の分子量を有し、フッ素元素の含有率が20質量%以上60質量%以下であることが好ましい。多官能の重合性フッ素化合物の分子量は、2000以上4000以下であることがさらに好ましく、フッ素元素の含有率は、30質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。上記のような比較的大きな分子量を有する多官能の重合性フッ素化合物は、重合性官能基を例えば2つ以上4つ以下有することが好ましい。
多官能の重合性フッ素化合物としては、実施例に用いたものの他に、SOLVAY社の「AD1700」、信越化学工業株式会社製の製品名「Y-1200」、「X-71-1203M」、DIC株式会社製の製品名「メガファックRS-72-K」、「メガファックRS-75」、「メガファックRS-76-E」、「メガファックRS-76-NS」、「メガファックRS-77」、ダイセル・オルネクス株式会社製の製品名「EBECRYL8110」等を用いることができる。
例えば、SOLVAY社の「AD1700」は、末端4官能のポリ(テトラフルオロエチレンオキサイド-コ-ジフルオロメチレンオキサイド)であり、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は3、500である。
実験例を示したように、合成高分子膜の形成に用いられる硬化性樹脂が、単官能重合性フッ素化合物をさらに含むと、さらに優れた撥水性・撥油性を有し得る。単官能の重合性フッ素化合物は、100以上1000以下の分子量を有し、フッ素元素の含有率が40質量%以上70質量%以下であることが好ましい。単官能の重合性フッ素化合物の分子量は、300以上500以下であることがより好ましい。単官能の重合性フッ素化合物のフッ素含有率は、50質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
単官能の重合性フッ素化合物としては、実施例に用いたものの他に、ユニマテック株式会社製の製品名「CHEMINOX FAMAC-4」、「CHEMINOX FAMAC-6」、Exfluor Research CorporationのProduct ID「C8ACRY」、「C8MTCRY」、「C10ACRY」、「C10MTCRY」等が挙げられる。
実験例では重合性フッ素化合物を「防汚剤」と表記したが、この例に限られず、上記の条件を満たすフッ素化合物であればよい。
このように、上述した実施形態による合成高分子膜は、撥水性・撥油性に優れた表面を有し、かつ、表面に付着した水(水溶液)のpHに与える影響が小さい。さらに、反射防止機能(例えば、反射率が0.2%以下)を有するので、観察窓へ従来よりも多くの光を導くことができる。
上述した合成高分子膜の表面は、撥水性・撥油性に優れているので、血液および体液が付着することを抑制する。実験結果の一例を以下に示す。
実験には、以下の試料フィルムを用いた。
・上記実施例2および3の紫外線硬化性樹脂を用いPETを基材としてそれぞれ作製した、モスアイ表面を有する実施例フィルム1および2
・上記実施例2および3の紫外線硬化性樹脂を用いPETを基材としてそれぞれ作製した、モスアイ表面を有しない(すなわち平坦な表面を有する)比較例フィルム1および2
・下記の表6に組成を示す比較例1の紫外線硬化性樹脂を用いPETを基材としてそれぞれ作製した、モスアイ表面を有する比較例フィルム3およびモスアイ表面を有しない(すなわち平坦な表面を有する)比較例フィルム4
・下記の表6に組成を示す比較例2の紫外線硬化性樹脂を用いPETを基材として作製した、モスアイ表面を有する比較例フィルム5
・PETフィルムをそのまま用いた比較例フィルム6
なお、比較例1および2の紫外線硬化性樹脂は親水性を有し、モスアイ表面を有する比較例フィルム3、5に対する水の静的接触角は90°未満であり、かつ、ヘキサデカンの静的接触角は60°未満であった。
Figure 0007076004000008
実施例フィルム1および2、比較例フィルム1から6について、血液の付着性を評価した。ここでは、人間の血液の代わりに、羊の血液(全血)を用いて、以下のようにして、合成子分子膜の表面に対する羊の血液の付着性を評価した。
〔試験方法〕
1.各フィルムを約20度傾けて表面を上向きとして置いた。
2.羊全血15μLをフィルム上側から1滴滴下し、血液がフィルム下部まで流れおちるか、フィルム上にとどまるか確認した。
3.2の操作を同様に5回繰り返し、フィルム上に血液が残った回数をカウントした。
4.滴下した血液の液滴に1~2mLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を流しかけ、洗浄しやすさを評価した。
評価結果を下記の表7Aに示す。
Figure 0007076004000009
上記の結果から分かるように、実施例フィルム1および2では、血液が付着しにくく、かつ、容易に血液を洗い流すことができた。すなわち、モスアイ表面に対する水の接触角が150°以上でかつ、ヘキサデカンの接触角が100°以上の表面は、羊の血液が付着することがほとんどなく、かつ、容易に洗い流すことができた。
また、比較例フィルム1および2の結果から、モスアイ構造を有しない表面では、洗浄液(PBS)と血液が混ざり、容易に洗浄できなかった。表面が親水性を有する比較例フィルム3~5は、モスアイ構造を有しても、洗浄液と血液が混ざり、容易に洗浄できなかった。また、PETフィルムである比較例フィルム6でも、洗浄液と血液が混ざり、容易に洗浄できなかった。
次に、実施例2A、2B、2Cの試料フィルムについての評価結果を下記の表7Bに示す。
Figure 0007076004000010
上記の結果から分かるように、優れた血液付着抑制効果を得るためには、例えば、金型離型剤の濃度が0.001%(実施例2A)以上であることが好ましい。すなわち、水の接触角(着滴から10秒後)が128°以上で、ヘキサデカンの接触角(着滴から10秒後)が35°以上の表面を有する合成高分子膜は、優れた血液付着抑制効果を発揮することができる(表5B参照)。なお、先の実施例2および3の試料フィルムは、撥水性および撥油性が非常に高く、水の接触角は測定できず、ヘキサデカンの接触角については、着滴後から1秒後の値と10秒後の値とに有意な差はなかったが、一般に、接触角は時間の経過とともに低下する。したがって、接触角が時間変化する場合には、再現性等の観点から、着滴から10秒後の値を指標とすることが好ましい。
次に、図3~図6を参照して、本発明の実施形態による内視鏡先端部カバーの具体的な構造の例を説明する。もちろん、本発明の実施形態による内視鏡先端部カバーは、例示するものに限定されない。
図3(a)、(b)および(c)は、それぞれ本発明の実施形態による内視鏡先端部カバー10A、10Bおよび10Cを模式的に示す断面図である。
図3(a)に示す内視鏡先端部カバー10Aは、合成高分子膜13と、合成高分子膜13の内視鏡20側に配置されたベースフィルム12と、ベースフィルム12の内視鏡20側に配置されたカバー部材16としてのカバーフィルム16を有している。ベースフィルム12とベースフィルム12上に形成された合成高分子膜13とが、表面にモスアイ構造を有するフィルム14を構成している。
カバーフィルム16は、ベースフィルム12よりも大きい引張伸度を有する。例えば、カバーフィルム16の引張伸度は、100%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましく、300%以上であることがさらに好ましい。柔軟性の高いカバーフィルム16は、内視鏡先端部20t(図1(b)参照)の端面に密着し、先端部20tを覆う様に配置される。カバーフィルム16の厚さは、例えば500μm以下であり、300μm以下であることが好ましい。厚さの下限に特に制限はないが、強度および/またはハンドリングのしやすさを考慮すると、100μm以上であることが好ましい。
ベースフィルム12とカバーフィルム16とは、例えば、公知の光学用接着剤で接着される(接着層15)。接着層15は、ベースフィルム12およびカバーフィルム16の屈折率と近い屈折率を有することが好ましい。もちろん、接着層15は透明であることが好ましく、可視光の透過率は80%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
内視鏡先端部20tを覆う様に配置されたカバーフィルム16は、先端部20tの側面において、例えば、伸縮性を有する医療用テープ(不図示)で固定される。このとき、カバーフィルム16と内視鏡先端部20tの側面との間から体液や血液が侵入しないように、カバーフィルム16の端を確実に医療用テープで覆い、医療用テープは内視鏡先端部20tの側面に確実に接着させる。
図3(b)に示す内視鏡先端部カバー10Bも、内視鏡先端部カバー10Aと同様に、カバー部材16としてカバーフィルム16を有している。カバー10Bは、カバー10Aにおけるカバーフィルム16の内視鏡側に配置される接着層17をさらに有している。接着層17は、モスアイ構造を表面に有するフィルム14と同様に、内視鏡先端部20tの端面上に配置される領域にのみ設けられている。もちろん、内視鏡20の種類によっては、図6(a)、(b)に示す様に、開口部10Fa、10Gaに対応する開口部を有する。
接着層17は、内視鏡先端部20tとの密着性を高めるために、比較的柔らかい接着剤(粘着剤を含む)で形成されていることが好ましい。例えば、硬化した状態でゴム弾性を示す弾性接着剤や、独立気泡構造を有する接着剤(例えば、特許第6066390号参照)を用いることができる。比較的柔らかい接着剤を用いると、内視鏡先端部20tの端面に存在する段差を吸収し、接着層17と内視鏡先端部20tの端面との間に空気(気泡)無い状態を容易に実現することができる。
図3(c)に示す内視鏡先端部カバー10Cが有するカバー部材16は、フィルム状ではなく、キャップ状の形状(円筒の一方の端を塞いだ形状)を有している。このキャップの内側の空間に内視鏡先端部20tが収容される。すなわち、カバー10Cは、内視鏡先端部20tに装着されたとき、先端部20tの側面を覆う筒状装着部を有している。カバー部材16は、例えば、上記のエラストマーで形成されており、弾性を有し、内視鏡先端部20tの側面を締め付ける力が作用するように構成されていることが好ましい。
図4(a)、(b)および(c)に、それぞれ本発明の実施形態による内視鏡先端部カバー10D、10Eおよび10Fの模式的な断面図を示す。
カバー10Dおよび10Eはいずれも、カバー部材16としてカバーフィルム16を有し、カバーフィルム16を内視鏡先端部20tの側面に押し当てる筒状装着部を有する固定部材18をさらに有する。固定部材18は、フィルム14の上面の周縁を内視鏡先端部20tの端面に押し当てる部分を有してもよい。固定部材18は、例えば、図3(c)に示したカバー10Cの筒状装着部を有するカバー部材16と同様に、例えば、上記のエラストマーで形成され得る。
図4(b)に示したカバー10Eは、カバーフィルム16の外側に配置された合成高分子膜13aに加えて、カバー部材16の内視鏡20側に配置された、さらなる合成高分子膜13bを有している。合成高分子膜13a、13bは、それぞれ上述の合成高分子膜13と同様の構造を有しており、ベースフィルム12a、12b上に、例えば紫外線硬化樹脂を用いて形成されている。ベースフィルム12a、12bは、カバーフィルム16に、例えば接着層15a、15bを用いて接着されている。
合成高分子膜13bと内視鏡20(先端部20t)との間には空気層19が形成されるように、カバー10Eは配置されている。カバー10Eの固定部材18も例えば、図3(c)に示したカバー10Cの筒状装着部を有するカバー部材16と同様に、例えば、上記のエラストマーで形成され得る。カバー10Eの位置(空気層19の厚さ)は、例えば、カバー10Eの側面の外周に、装着した際に、先端部20tの端面と同一面に位置する部分に印(線)を付けておくなどしてもよいし、内視鏡20の側面に印や段差を設けておいてもよい。なお、空気層19の厚さは特に重要ではないが、合成高分子膜13bが内視鏡20の端面と接触しないことが好ましい。合成高分子膜13bが内視鏡20の端面と接触すると、合成高分子膜13bの反射防止機能が十分に発現されないおそれがある。
図4(a)に示したカバー10Dを装着した際に、カバーフィルム16と内視鏡20の端面との間に空気層が形成されると、反射の影響で、観察窓に導かれる光の量が減ってしまう。これに対し、図4(b)に示したカバー10Eを用いると、空気層ができたとしても、合成高分子膜13bが反射防止膜として機能するので、光のロスは僅かに抑えられる。
固定部材18は、トラカールなどを経由した際に、トラカールに固定部材18の一部が引っ掛かり、体腔内に残留することがないよう、内視鏡先端部20tから容易にはずれない構成を取ることが好ましい。例えば、図4(a)に示すカバー10Dのように、内視鏡20の延伸方向へ薄く全体を覆うような構成にすることで、トラカールなどへ引っ掛かる部分が少ない構成を採ることができる。ただしこれに限られず、カバー部材16がしっかりと固定されていれば、図4(c)に示すカバー10Fの様に、固定部材18として医療用テープを用いて、カバー部材16の一部を固定してもよい。固定部材18として、医療用テープの他、ひもやゴムなどを用いて固定してもよい。固定部材18は、ゴムのような伸縮性を有する部材であってもよいし、内視鏡先端部20tとカバー部材16との間に、ねじやフックなどの留め具などを設けて、固定してもよい。
図5に、本発明の実施形態による内視鏡先端部カバー10Cおよびアタッチメント22を装着した状態を示す模式的な断面図を示す。
カバーフィルム16を有するカバー10Cを内視鏡先端部20tに装着する際に、上記の固定部材18に代えて、例えば、観察視野(空間)を確保するためのアタッチメント22を利用してもよい。透明なエラストマーで形成されたアタッチメント22が市販されている。カバーフィルム16は接着剤を用いて上述したように、内視鏡先端部20tに接着されてもよいし、カバーフィルム16を内視鏡先端部20tに接着させなくてもよい。例えば、図5(b)に示すように、カバーフィルム16をアタッチメント22の先端部に取り付けた構成としてもよい。内視鏡先端部20tに貼り付けるよりも、アタッチメント22に接着層15で貼り付けた方が、内視鏡20の観察窓にキズや汚れが付くリスクが減るので、好ましい場合もある。アタッチメント22は、例えば、伸縮性のある医療用テープで、先端部20tに固定する。
上述した内視鏡先端部カバーの固定方法は、適宜組み合わせることができる。また、両面に合成高分子膜を有する構成も、先に例示した構造と組み合わせることができる。
次に、図6(a)~(c)に、本発明の実施形態による内視鏡20A、20Bおよび20Cの先端部の端面を示す模式図を示す。上述した内視鏡先端部カバーは、いずれの内視鏡にも用いられ得る。
図6(a)に示す内視鏡20Aは、先端部20tの端面に、観察窓32、照明窓34a、34b、鉗子用開口36および噴出ノズル38を有している。噴出ノズル38から洗浄液および/または加圧空気を観察窓32に向けて噴射することによって、観察窓32を洗浄する。
内視鏡先端部カバー10Fは、鉗子用開口36および噴出ノズル38を露出する開口部10Faを有しており、それ以外の構造は、上述したカバーのいずれかと同じ構造を有している。
カバー10Fの表面は、合成高分子膜13のモスアイ構造を有する表面であり、優れた撥水性・撥油性を有しており、体液・血液等が付着しにくい。また、たとえ付着したとしても、噴出ノズル38からの洗浄液および/または加圧空気によって容易除去されるので、観察窓32および照明窓34a、34bの表面を清浄に保つことができる。
図6(b)に示す内視鏡20Bは、噴出ノズルを有していない。したがって、内視鏡先端部カバー10Gは、鉗子用開口36を露出する開口部10Gaを有しており、それ以外の構造は、上述したカバーのいずれかと同じ構造を有している。カバー10Gは優れた撥水性・撥油性を有しているので、体液・血液等が付着しにくいので、洗浄しなくてもよい。洗浄のための構造を省略することによって、内視鏡20Bは内視鏡20Aよりも小さくできる。
図6(c)に示す内視鏡20Cは、先端部20tの端面に、観察窓32、照明窓34a、34bだけを有するので、内視鏡先端部カバー10Hは、開口部を有さず、先端部20tの端面の全体を覆う様に配置されている。
もちろん、本発明の実施形態による内視鏡は、ここで例示したものに限定されず、種々に改変され得る。
[合成高分子膜の表面を覆う撥水性オイルの液膜]
上記の実施形態による内視鏡先端部カバーにおいて、合成高分子膜の、少なくとも観察窓上に位置する部分の表面を覆う撥水性オイルの液膜をさらに設けることによって、内視鏡の観察窓への血液や体液の付着を抑制する効果をさらに高めること、および血液付着抑制効果の持続性を向上させることができる。
撥水性オイルとしては、シリコーンオイルまたはフッ素オイルを好適に用いることができる。シリコーンオイルとしては、非反応性のシリコーンオイルが好ましく、例えばジメチルシリコーンオイル(ジメチルシロキサンの側鎖および末端がすべてメチル基)を好適に用いることができる。撥水性オイルを合成高分子膜の表面に付与する方法は、特に限定されず、公知の塗布法を広く適用できる。
図7(a)、(b)および(c)に、図2(a)に示したフィルム14Aの表面に撥水性オイルが付与された状態を模式的に示す。もちろんこれに限られず、図2(b)に示したフィルム14Bの表面に撥水性オイルを付与してもよい。
図7(a)に示すフィルム14Asaの様に、合成高分子膜13Aの表面が有する複数の凸部13Apの間に撥水性オイル62Aが部分的に充填され得る。すなわち、撥水性オイル62Aの表面は、複数の凸部13Apよりも低く、複数の凸部13Apの先端が撥水性オイル62Aの表面から突き出てもよい。あるいは、図7(b)に示すフィルム14Asbの様に、撥水性オイル62Bは、複数の凸部13Apの全体を覆うように付与されてもよい。すなわち、撥水性オイル62Bの表面は、複数の凸部13Apよりも高く、複数の凸部13Apの先端が撥水性オイル62Bの層内に存在してもよい。
なお、図7(b)に示したフィルム14Asbの様に撥水性オイル62Bが複数の凸部13Apの全体を覆うと、複数の凸部13Apによる反射防止機能は失われる。一方、図7(a)に示したフィルム14Asaにおいては、複数の凸部13Apの先端が撥水性オイル62Aの表面から突き出ているので、反射防止機能が残っている。したがって、撥水性オイルをモスアイ表面に付与した後の構造が、図7(a)に示したフィルム14Asaの様になっているのか、あるいは、図7(b)に示したフィルム14Asbの様になっているのかは、表面反射の程度を目視で観察することによって判別することができる。
さらに、図7(c)に示すフィルム14Ascの様に、合成高分子膜13Aの表面に撥水撥油層13Fを形成し、撥水撥油層13Fが形成されたモスアイ表面に、撥水性オイル62Aを付与してもよい。ここでは、図7(a)のフィルム14Asaの様に、合成高分子膜13Aの表面が有する複数の凸部13Apの間に撥水性オイル62Aが部分的に充填された例を示したが、図7(b)のフィルム14Asbの様に、複数の凸部13Apの全体を覆うように撥水性オイル62Bが付与されてもよい。
なお、後に実験例を示す様に、合成高分子膜13Aのモスアイ表面に撥水撥油層13Fを形成する場合、合成高分子膜13Aは親水性を有してもよい。もちろん、安定性等の観点から、合成高分子膜13Aは撥水性を有することが好ましい。撥水撥油層13Fは、例えば、フッ素系コーティング剤を用いて形成することができる。撥水撥油層13Fの好ましい厚さは、下地である合成高分子膜13Aが親水性または撥水性であるか、およびその程度に依存するが、例えば、1nm以上50nm以下である。
上記の実施形態による内視鏡先端部カバーが有する合成高分子膜の表面は、水の静的接触角(着滴から10秒後)が128°以上、好ましくは150°以上であり、かつ、ヘキサデカンの静的接触角(着滴から10秒後)が35°以上、好ましくは60°以上である、優れた撥水性および優れた撥油性を有している。すなわち、水の静的接触角が128°以上、かつ、ヘキサデカンの静的接触角が35°以上である、モスアイ表面を有する合成高分子膜は、そのままで、内視鏡先端部カバーに用いられるが、本実施形態においては、表面に撥水性オイルを付与するので、合成高分子膜の表面に求められる撥水性および撥油性は、上記の実施形態における合成高分子膜よりも低くてもよい。具体的には、撥水性オイルの液膜を形成する場合には、合成高分子膜の表面は、水の静的接触角(着滴から10秒後)が約98°以上(99°超)であればよく、103°以上であることが好ましい。もちろん、上記の実施形態における合成高分子膜のように、表面に付着した水(水溶液)のpHに与える影響が小さいことが好ましい。したがって、光硬化性樹脂を用いて合成高分子膜を形成する場合には、上述の有機酸を発生しない重合開始剤を用いることが好ましい。
以下に、実験例を示すように、撥水性オイルは、動粘度が350mm/s未満(1mm/s=1cSt)のシリコーンオイルが好ましく、動粘度が10mm/s以下のシリコーンオイルがさらに好ましい。以下で例示する実験例の説明においては、先の実施形態の実施例および比較例と区別するために、実施例2-、比較例2-をそれぞれの先頭に付し、モスアイ表面に撥水性オイルを付与した形態における対比のためだけに用いる。したがって、先の実施形態による実施例の合成高分子膜を備えても、下記では比較例と表記されることがあるし、逆に、先の実施形態の説明における比較例の合成高分子膜を備えても下記では実施例に該当することがある。
以下の実験例では、撥水性材料として先の実施例2の紫外線硬化樹脂(撥水性2という。)および表5Bに示した実施例2A、2B、2Cの撥水性材料(撥水性2A、2B、2C)を用い、親水性材料として先の比較例2の紫外線硬化樹脂(親水性1という。)と、表8に組成を示す親水性材料(親水性2、3、4)を用いた。親水性2、3、4の紫外線硬化樹脂の原材料は、表1および表9に示す。なお、添加剤PC-3662は、丸菱油化工業株式会社製の帯電防止剤で、リチウム塩を含むシリコーンオイルである。親水性2、3、4の紫外線硬化樹脂で形成された合成高分子膜の表面の水に対する接触角(着滴から1秒後および10秒後)を表10に示す。
Figure 0007076004000011
Figure 0007076004000012
Figure 0007076004000013
これらの撥水性または親水性の材料を用いて、先に説明した方法で、図2(a)に模式的に示したモスアイ構造を表面に有する試料フィルム(Dpは約200nm、Dintは約200nm、Dhは約150nm)を作製した。
また、図7(c)に示したフィルム14Ascの様に、合成高分子膜13Aの表面に撥水撥油層13Fを有する試料フィルムを作製した。ここでは、親水性材料(親水性1)を用いて上記同様に合成高分子膜を作製した後、以下のようにして、比較例2-12および実施例2-14の試料フィルムを作製した。
比較例2-12:親水性の合成高分子膜の表面に、濃度が0.01質量%のフッ素コーティング剤(フロロサーフ(登録商標)、フロロテクノロジー株式会社製)を全体に掛け流した。その後1時間程度、室温で乾燥させ、上記の希釈フッ素コーティング剤を全体に掛け流し、更に3時間程度室温で放置した(親水性1Fd)。すなわち、希釈フッ素コーティング剤を2回付与した。
実施例2-14:比較例2-12におけるフッ素コーティング剤の濃度を0.1質量%とした以外は、同様にして試料フィルムを作製した(親水性1Fc)。
各試料フィルムに対する水の接触角を測定した結果を表11に示す。
Figure 0007076004000014
撥水性オイルとしては、動粘度が10mm/s、350mm/s、500mm/sの3種類のジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製のKF-96-10cs、KF-96-350cs、KF-96-500cs)を用いた。
上記のシリコーンオイルは、以下の3つの方法のいずれかで、試料フィルム(合成高分子膜)の表面に付与した。
まず、試料フィルムを素ガラス板上に粘着剤を用いて試料フィルムの表面が平坦になるように貼り付けた。
次に、試料フィルムの表面に、シリコーンオイルを数mL滴下し、スピナーで所定の回転数(200rpm、1000rpm、または3500rpm)で12秒間回転させた(方法1:スピンコート法)。
素ガラス板上に貼り付けられた試料フィルムの表面が、水平方向に対して45°を成すように固定した状態で、試料フィルムの表面全体にシリコーンオイルをかけ流し、30分間放置した(方法2:かけ流し法)。
シリコーンオイルをしみこませた布(例えば、クリーンルームで好適に用いられるワイピングクロス(ここでは、KBセーレン株式会社製のザビーナ(登録商標)を用いた。))で、素ガラス板上に貼り付けられた試料フィルムの表面全体を拭き上げた(方法3:布拭き法)。
上述の様にして準備した試料フィルムおよび素ガラス板(下記の表12参照)について、血液付着抑制効果およびその効果の持続性を以下のようにして評価した。ここでも、先の実施形態についての実験と同様に、人間の血液の代わりに、羊の血液(全血)を用いた。
以下の3種類の試験を行った。
(試験1)
各フィルムを約20~30度傾けて表面を上向きとして置き、羊全血20μLをフィルム上側から6滴滴下し、血液がフィルムの下部まで流れ落ちるか、フィルム表面上にとどまるかを確認した。
(試験2)
上記試験1を行った後、フィルム上に血液が残っていたフィルムについて、表面全体に2mLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を2回かけ流し、血液が洗浄されるか否かを確認した。
(試験3)
上記試験2を行った後、再び、上記試験1を行った。
血液付着抑制効果およびその効果の持続性は、以下の指標に基づいて評価した。まず、血液付着抑制効果は、試験1において、フィルム表面に滴下した血液がフィルムの下部まで流れ落ちた場合を◎(優)とし、試験1において、フィルム表面上に2滴以下の血液が付着した場合でも、試験2で容易に洗浄できた場合は○(良)とした。また、試験1においてフィルム表面上に2滴超の血液が付着した場合でも、試験2で容易に洗浄できた場合は△(可)とし、それ以外を×(不可)とした。効果の持続性は、試験3の結果が、試験1と同等の血液付着抑制効果が得られた場合を◎(優)、試験2による洗浄時に液溜まりなどが見られたが試験1と同等の血液付着抑制効果が得られた場合を○(良)、試験1で血液が付着した場所で血液付着抑制効果がなくなるが(血液付着の履歴が残る)、それ以外の部位では試験1と同等の効果が得られた場合を△(可)、血液付着抑制効果がない、または、なくなった場合を×(不可)とした。
血液付着抑制効果およびその効果の持続性の評価結果を表12に示し、試験1、試験2、試験3における観察結果を表13および表14に示す。
Figure 0007076004000015
Figure 0007076004000016
Figure 0007076004000017
上記の結果(特に表12の効果持続性の評価結果)から分かるように、撥水性材料を用いて作製された表面にモスアイ構造を有する合成高分子膜(実施例2-1~2-13)および、親水性材料を用いて作製された表面にモスアイ構造を有する樹脂膜上に十分な厚さの撥水撥油層を有する合成高分子膜(実施例2-14)だけが、血液付着抑制効果の持続性に優れていることが分かる。すなわち、シリコーンオイルを表面に付与しても、その表面が親水性であると、たとえモスアイ構造を有していても、血液付着抑制効果を持続することができない。これは、洗浄時に水が、合成高分子膜の表面とシリコーンオイルとの間に侵入し、シリコーンオイルが表面から洗い流されるためと考えられる。撥水性材料で形成されたモスアイ構造を有する表面はシリコーンオイルを安定に保持し、この撥水性のモスアイ表面が有するこの作用は、洗浄時の水によっても阻害されることがないと考えられる。
シリコーンオイルが付与される合成高分子膜の表面(例えば、光硬化性樹脂から形成された樹脂膜(撥水性)の表面、または、光硬化性樹脂から形成された樹脂膜(親水性でもよい)上に形成された撥水撥油層の表面)の撥水性は、水の静的接触角(着滴から10秒後)が約98°以上(99°超)であればよい。このことは、実施例2-12(表5Bの実施例2B(撥水性2B))の結果に支持される。
また、実施例2-14と比較例2-12との比較から理解されるように、撥水性のモスアイ表面は、親水性材料を用いて作製された合成高分子膜のモスアイ表面上に十分な厚さの撥水撥油層を形成することによっても得られる。撥水撥油層の厚さは、例えば、5nm以上であることが好ましい。水の静的接触角(着滴から10秒後)は103°以上であることが好ましい(表11参照)。
実施例2-1~2-14を比較すると、シリコーンオイルとしては、動粘度が低い方が好ましいと言える。動粘度が10mm/sのシリコーンオイルを用いた実施例2-1~2-4および2-9~2-14はいずれも、動粘度が350mm/s以上のシリコーンオイルを用いた実施例2-5~2-8よりも優れた血液付着抑制効果持続性を有している。したがって、シリコーンオイルとしては、少なくとも動粘度が350mm/s未満のものが好ましく、10mm/s以下がさらに好ましいと言える。これは、動的粘度が低い方が、図7(a)に示した構造が得られやすく、動的粘度が高い方が、図7(b)に示した構造になりやすいためと考えられる。すなわち、図7(a)に示した構造は、モスアイ構造による撥水撥油性を向上させる効果が寄与すると推察される。なお、シリコーンオイルを表面に付与する方法は、上記の方法1~3の間で差は見られず、医療現場等で簡便な方法を採用すればよいと考えられる。
次に、試料フィルムの防曇性を評価した結果を説明する。内視鏡を体内に挿入すると結露することがある。手術室は比較的低温に調整されているのに比べ、体内は温度、湿度とも高いから起こる。当然のことながら、内視鏡先端部カバーは、この結露を抑制することができることが好ましい。
試料フィルムとしては、上記の試料フィルム(実施例2-1、比較例2-11、比較例2-4、比較例2-5)を用いた。
試験方法は、低温低湿の試験前環境で各試料フィルムを1時間以上放置し、十分環境に馴染ました後、10秒以内に、それぞれの高温多湿の試験環境に試料フィルムを投入し、試料フィルムの表面の結露発生状況(防曇性)を目視により観察した。結果を表15に示す。表15において、○:曇らない、△:僅かに曇る、×:曇る(水滴が付着する)、××:濡れる(水滴が全面に広がる)を示す。
Figure 0007076004000018
25℃/50%RHの試験環境では、親水性モスアイと撥水性モスアイのシリコーン有無による差異はみられなかったが、体内の環境により近い30℃/85%RHでの試験環境において、親水性モスアイでは試料フィルムの表面に結露が生じ、全面に塗れが発生したのに対し、撥水性モスアイの表面にシリコーンオイルを付与した実施例では、曇りが生じなかった。また、撥水性モスアイの表面にシリコーンオイルを付与しない場合は、表面に僅かに曇りが生じることから、撥水性モスアイ表面にシリコーンオイルを付与することで、結露防止効果が向上したと考えられる。この結果より、防曇性の観点より、撥水性モスアイを用いる方が好ましい。シリコーンオイルを表面に付与した際の撥水性モスアイと親水性モスアイの上記結果の差異は、モスアイ構造がシリコーンオイルで完全に埋められていない(図7(a)に示した状態)に起因するものと推察される。
本発明の実施形態による内視鏡先端部カバーおよび内視鏡は、観察窓への血液や体液の付着を抑制し、観察視野を容易に確保することを可能にする。
10、10A~10G :内視鏡先端部カバー
12、12A、12B :ベースフィルム
13、13A、13B :合成高分子膜
13Ap、13Bp :凸部
14、14A、14B、14Asa、14Asb、14Asc :フィルム
15、15a、15b :接着層
16 :カバー部材
17 :接着層
19 :空気層
18 :固定部材
20t :先端部
20、20A、20B、20C :内視鏡
20a :挿入部
20b :操作部
22 :アタッチメント
32 :観察窓
34a、34b :照明窓
36 :鉗子用開口
38 :噴出ノズル
42 :トラカール
44 :弁部材
54 :送液チューブ
62A、62B :撥水性オイル
100 :内視鏡システム

Claims (13)

  1. 先端部に観察窓を有する内視鏡の前記先端部を保護するカバーであって、
    前記内視鏡の前記先端部に装着されたとき、前記観察窓上に配置される部分に、合成高分子膜を有し、
    前記合成高分子膜は、複数の凸部を有する表面を備え、
    前記合成高分子膜の法線方向から見たとき、前記複数の凸部の2次元的な大きさは20nm超500nm未満の範囲内にあり、
    前記表面に対する水の静的接触角が98°以上であり、
    前記合成高分子膜は、光硬化性樹脂から形成された樹脂膜を含む、内視鏡先端部カバー。
  2. 前記合成高分子膜の表面に対する水の静的接触角が128°以上である、請求項1に記載の内視鏡先端部カバー。
  3. 前記合成高分子膜の、少なくとも前記観察窓上に位置する部分の表面を覆う撥水性オイルの液膜をさらに有する、請求項1または2に記載の内視鏡先端部カバー。
  4. 前記撥水性オイルは、シリコーンオイルまたはフッ素オイルである、請求項3に記載の内視鏡先端部カバー。
  5. 前記撥水性オイルは、動粘度が350mm2/s未満のシリコーンオイルである、請求項3または4に記載の内視鏡先端部カバー。
  6. 前記撥水性オイルは、動粘度が10mm2/s以下のシリコーンオイルである、請求項3または4に記載の内視鏡先端部カバー。
  7. 前記複数の凸部は略円錐形の部分を含む、請求項1から6のいずれかに記載の内視鏡先端部カバー。
  8. 前記合成高分子膜は、前記樹脂膜上に形成された撥水撥油層をさらに有する、請求項1から7のいずれかに記載の内視鏡先端部カバー。
  9. 前記光硬化性樹脂は、フッ素元素を含む第1の重合性フッ素化合物を含み、
    前記第1の重合性フッ素化合物は、複数の重合性官能基を有し、1000以上5000以下の分子量を有し、
    前記合成高分子膜の前記表面に200μLの水を滴下後、5分後の水溶液のpHが6.5以上7.5以下である、請求項1から8のいずれかに記載の内視鏡先端部カバー。
  10. 前記光硬化性樹脂は、光重合開始剤を含み、
    前記光重合開始剤は、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、および1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項9に記載の内視鏡先端部カバー。
  11. 前記光硬化性樹脂は、フッ素元素を含む第2の重合性フッ素化合物をさらに含み、
    前記第2の重合性フッ素化合物は、単官能重合性化合物であって、100以上1000以下の分子量を有する、請求項9または10に記載の内視鏡先端部カバー。
  12. 前記光硬化性樹脂に対する前記第1の重合性フッ素化合物の割合は、1質量%以上5質量%以下である、請求項9から11のいずれかに記載の内視鏡先端部カバー。
  13. 請求項1から12のいずれかに記載の内視鏡先端部カバーが装着された内視鏡。
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