JP2014200974A - 構造体およびこれを用いてなる内視鏡 - Google Patents

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裕一 多田
力也 小俣
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力也 小俣
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Tokiaki Shiratori
世明 白鳥
奎弘 慶
Takahiro Kei
奎弘 慶
芳生 堀田
Yoshio Hotta
芳生 堀田
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Abstract

【課題】内視鏡の先端部のレンズに対して、視認性に優れる構造体を提供する。
【解決手段】内視鏡先端部のレンズの表面を構成する基材2の表面の少なくとも一部に凹凸構造層4を配置してなる構造体1であって、凹凸構造層4は、ポリマー粒子3の堆積により形成される表面微細凹凸構造を有し、ポリマー粒子3は基材2に融着により固定化される。前記凹凸構造層4の表面側にフッ素含有化合物を含有する防汚性層5を更に有する構造体1。
【選択図】図1

Description

本発明は、構造体およびこれを用いてなる内視鏡に関する。特に、本発明は、視認性に優れる構造体およびこれを用いてなる内視鏡に関する。
現在、食道、胃、腸等の消化器系をはじめ、耳、鼻、のど、肺、尿道、膀胱、腎臓や子宮など人体の様々な内部を観察・診断するために、内視鏡が使用されている。観察・診断を行い、病変部を見つけた場合には、その場で、内視鏡先端に設置される処置具を用いて、病変部を切除したり、細胞を採取したりすることが可能になった。これらの処置は、外科手術を伴わない低侵襲な手技である。加えて、近年では、腹部や胸部に小さな穴を開け、腹腔鏡などの内視鏡で体腔内を観察しながら、手術用の処置具や電気メスによる外科的治療で行う内視鏡下外科手術が行われている。この手技は、従来の外科手術とは異なり、患者の体への負担が大幅に軽減して、患者のQOL(Quality Of Life)を大きく向上できる点で、現在、非常によく使用されている。
一般に、内視鏡は、先端部に設けられた対物レンズを介して、体腔内を観察・処置するが、対物レンズに体内の粘液や組織が付着して、視認性が低下して、観察や処置がうまく行えないことがある。このため、レンズ洗浄用ノズルが対物レンズに向けて配置され、このノズルから洗浄液や空気等を噴射してレンズ表面を洗浄し、視野を確保する構造がとられることがある(例えば、特許文献1)。
特開平2−129613号公報
しかしながら、このようなレンズ洗浄用ノズルをもってしても、レンズを完全に洗浄することは困難である。また、洗浄液がレンズ表面に付着して、逆に視認性を低下させてしまうことがある。加えて、このようなレンズ洗浄用ノズルの必要性により、内視鏡の細径化が難しく、患者の生体管腔を介して内視鏡を挿入する際に、内視鏡が生体管腔を圧迫し、患者に苦痛を与えてしまう。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、視認性に優れる構造体およびこれを用いてなる内視鏡を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、レンズ洗浄用ノズルを必要としない内視鏡を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、ポリマー粒子の堆積により形成される表面微細凹凸構造を有する凹凸構造層を配置することにより、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、上記目的は、基材の表面の少なくとも一部に凹凸構造層を配置してなる構造体であって、前記凹凸構造層は、ポリマー粒子の堆積により形成される表面微細凹凸構造を有し、前記ポリマー粒子は基材に融着により固定化される、構造体によって達成されうる。
本発明の構造体によると、粘液、血液、肺組織液などの体液が表面に付着するのを有効に抑制・防止できる。このため、本発明の構造体を内視鏡レンズカバーとして使用すると、洗浄操作なしでも生体由来の体液成分(粘液、血液、肺組織液など)の付着を有効に抑制・防止して、良好な視認性を確保できる。
図1は、本発明の好ましい態様の構造体の構成の概略を示す断面図である。 図2は、本発明の好ましい態様の内視鏡の先端部の構成の概略を示す拡大断面図である。 図3は、実験1における血液に対する付着防止効果評価の結果を示すカラー写真である。なお、図3Aは実施例1の構造体(1)の結果を、図3Bは比較例1の比較構造体(1)の結果を、および図3Cは比較例2の比較構造体(2)の結果を、それぞれ、示す。 図4は、実験2における肺組織液に対する付着防止効果評価の結果を示すカラー写真である。なお、図4Aは実施例1の構造体(1)の結果を、図4Bは比較例1の比較構造体(1)の結果を、および図4Cは比較例2の比較構造体(2)の結果を、それぞれ、示す。 図5は、実験3における耐久性評価の試験系を示す模式図である。
本発明は、基材の表面の少なくとも一部に凹凸構造層を配置してなる構造体であって、前記凹凸構造層は、ポリマー粒子の堆積により形成される表面微細凹凸構造を有し、前記ポリマー粒子は基材に融着により固定化される、構造体に関する。従来、内視鏡を用いて、生体管腔または体腔内を観察する際に、レンズ表面を洗浄しながらであっても、生体由来の体液成分(粘液、血液、肺組織液など)または洗浄液がレンズ表面に付着して、視認性が低下する場合がある。この場合には、内視鏡を一旦体外に取り出して、表面を洗浄する必要があるが、患者への負担が増加し、好ましくない。これに対して、本発明によるように、ポリマー粒子を基材に堆積させることにより基材表面に微細凹凸構造形成させると、洗浄なしであっても、レンズ表面への生体由来の体液成分(粘液、血液、肺組織液など)の付着を抑制・防止できる、即ち、洗浄操作を行わなくとも操作中の良好な視認性を確保できる。ここで、ポリマー粒子の配置による体液成分付着防止能の発揮メカニズムは、不明であるが、下記のように推測される。なお、本発明は、下記推測に限定されない。すなわち、ポリマー粒子が配置された基材の表面は粗度の高い(凹凸が多い)微細な凹凸構造をとる。ここで、微細な凹凸構造は液体と接触しても凹部に空気が存在するため、隣接する凸部間に空気との界面が存在し、基材表面−液面がみかけ上広い面積で接しており、液面が入り込めない多数の空隙の存在によって点接触をしている(液滴との実際の接触面積が小さい)。そして、水が表面に吸着するための水の表面積の増加量に比べて、実質の自由表面エネルギーの増加量が小さいため、体液成分(粘液、血液、肺組織液など)は粗度の高い表面に広がるよりは液滴の形態を維持しやすい。このため体液成分が表面に付着しても転落しやすく、表面に吸着され難い。したがって、本発明の構造体は、長期に渡って粘液、血液、肺組織液等の体液付着抑制効果を発現できる。また、本発明によると、ポリマー粒子は基材に融着により固定化されている。このため、ポリマー粒子(ゆえに凹凸構造層)は基材から剥離しにくいあるいは剥離しないため、長期間にわたって優れた防汚性(体液成分付着防止効果)を維持できる。このため、本発明の構造体を内視鏡等のレンズカバーとして使用すると、洗浄操作なしでも生体由来の体液成分(粘液、血液、肺組織液など)の付着を有効に抑制・防止して、良好な視認性を確保でき、内視鏡をスムーズに所定の部位にまで導入できる。
したがって、本発明の構造体を内視鏡レンズ表面にレンズカバーとして設置することにより、良好な視野を保ち、術者のストレスを軽減し、手技時間を短縮することができ、これにより患者への負担をも軽減することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
[構造体]
本発明の構造体は、基材の表面の少なくとも一部に凹凸構造層を配置してなる構造体である。図1は、本発明の好ましい態様の構造体の構成の概略を示す断面図である。図1に示すように、構造体1は、基材2に凹凸構造層4を配置してなる。ここで、凹凸構造層4は、ポリマー粒子3の堆積により形成される表面微細凹凸構造を有し、ポリマー粒子3は基材2に融着により固定化される。なお、図1では、凹凸構造層4(ポリマー粒子3)は、基材の全表面に形成されているが、本発明は上記形態に限定されず、少なくとも一部の基材表面に配置されていればよい。
上記形態の構造体は、防汚性(体液成分付着防止効果)に優れ、かつこの効果を長期間維持できる(耐久性に優れる)。このため、本発明の構造体は、様々な用途に適用できる。例えば、本発明の構造体が透明である際には、内視鏡のレンズ表面に適用でき、これにより十分な視認性を確保できる。本発明の構造体を内視鏡等のレンズカバーとして使用すると、洗浄操作なしでも生体由来の体液成分(粘液、血液、肺組織液など)の付着を有効に抑制・防止して、良好な視認性を確保でき、内視鏡をスムーズに所定の部位にまで導入できる。
また、下記に詳述するが、図1Bに示されるように、本発明の構造体1は、凹凸構造層4上にさらに防汚性層5を有してもよい。当該構成をとることによって、粘液、血液、肺組織液等の体液付着抑制効果をより向上できる。
ここで、「体液成分付着防止能」または「体液成分付着防止効果」とは、生体由来の体液成分(粘液、血液、肺組織液など)が当該構造体に付着しにくいことを意味する。本明細書では、「体液成分付着防止能」または「体液成分付着防止効果」は、構造体表面への血液や肺組織液の付着量によって規定することができる。具体的には、本発明の防汚性層を有する構造体が、下記実施例に記載の方法(実験1:血液汚染防止能の評価及び実験2:肺組織液汚染防止能の評価)において、血液や肺組織液が構造体表面にほとんど付着しないことを意味する。より具体的には、本発明の防汚性層を有する構造体が、下記実施例に記載の方法(実験1:血液汚染防止能の評価、実験2:肺組織液汚染防止能の評価)において、血液もしくは肺組織液が、構造体との接触面積に対して、50%以下(下限:0%)の割合で付着した場合には、「体液成分付着防止能」または「体液成分付着防止効果」を発揮したと、規定する。
本明細書において、「撥水性」は、水に対する接触角で表され、水に対する接触角が大きい場合に、撥水性を有すると称する。具体的には、本発明の構造体の防汚性層は、水による接触角が90度を超える(上限:180度)撥水性を発揮できる。好ましくは、本発明の構造体の防汚性層は、水による接触角が120度を超える高撥水性を発揮できる。
[基材]
本発明で使用されうる基材は、特に制限されず、一般的に医療分野で使用される基材が同様にして使用できるが、透明であることが好ましい。本明細書において、「透明」とは、十分な視認性を達成できる程度の透明性を意味する。具体的には、「透明」とは、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらにより好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上の可視光透過率を示すものを意味する。凹凸構造層が形成されることを考慮すると、基材は、65%以上、より好ましくは75%以上、特に好ましくは85%以上(上限:100%)の可視光透過率を有する透明基材であることが好ましい。なお、本明細書において、「可視光透過率」は、下記実施例に記載される方法によって測定される値である。
具体的には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体等のメタクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、高密度ポリエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリシクロヘキサジエン、ポリエステル、1,3−シクロヘキサジエンホモポリマー、1,3−シクロヘキサジエンと、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の鎖状共役ジエン系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルスチレン等のビニル芳香族系モノマー、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、α−シアノアクリル酸メチル等の極性ビニルモノマー若しくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、環状ラクトン、環状ラクタム、環状シロキサン等の極性モノマー、またはエチレン、α−オレフィン系モノマーと、の共重合体(特開平9−277045号に記載される共重合体)などの高分子材料が挙げられる。なお、本発明では、基材を、そのまま使用してもよいが、凹凸構造層を配置する前に、基材表面に付着した油脂や汚れなどを除去することが好ましい。
基材の厚みは、透明性を確保できる程度であれば特に制限されないが、0.01〜10mmであることが好ましく、0.1〜2mmであることがより好ましい。このような厚みであれば、十分な透明性を発揮し、また、内視鏡レンズ表面にレンズカバーとして設置されても、レンズ表面を良好に保護できる。
[凹凸構造層]
本発明では、ポリマー粒子の堆積により形成される表面微細凹凸構造を有する凹凸構造層が、上記基材の表面の少なくとも一部に配置される。ここで、ポリマー粒子は基材に融着により固定化されている。本明細書において、「融着」とは、ポリマー粒子(の少なくとも一部)と基材とが溶融により相互に連結(接合)することを意味する。
凹凸構造層は、所望の防汚性(体液成分付着防止効果)を達成できる限り、基材の表面の少なくとも一部に配置されればよいが、基材の一方の面の表面積に対する凹凸構造層形成面積の割合は、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上(上限:100%)である。
加えて、凹凸構造層は、少なくとも一部で連続的に形成されることが好ましい。「凹凸構造層が連続的に形成される」とは、凹凸構造層においてポリマー粒子同士が少なくとも一部で相互に接した状態で存在することを意味する。連続的に形成される凹凸構造層が占める割合は、所望の防汚性(体液成分付着防止効果)を達成できる限り、特に制限されないが、凹凸構造層の全形成面積に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上(上限:100%)である。
ポリマー粒子の材質は、特に制限されない。具体的には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体等のメタクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、高密度ポリエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリシクロヘキサジエン、ポリエステル、1,3−シクロヘキサジエンホモポリマー、1,3−シクロヘキサジエンと、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の鎖状共役ジエン系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルスチレン等のビニル芳香族系モノマー、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、α−シアノアクリル酸メチル等の極性ビニルモノマー若しくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、環状ラクトン、環状ラクタム、環状シロキサン等の極性モノマー、またはエチレン、α−オレフィン系モノマーと、の共重合体(特開平9−277045号に記載される共重合体)などが挙げられる。これらのうち、ポリマー粒子が基材と同じまたは相溶性のあるポリマーから形成されることが好ましい。すなわち、ポリマー粒子および基材が、同じまたは相溶性のあるポリマーから形成されることが好ましい。このような構成により、ポリマー粒子を基材により確実に固定することがすることができるため、耐久性をより向上できる。
ポリマー粒子の平均粒子径(直径)は、特に制限されない。透明性(特に、堆積状態での透明性)、表面の凹凸構造(体液成分付着防止性)などを考慮すると、0.001〜1μmであることが好ましく、0.005〜0.5μmであることがより好ましい。このような粒子径であれば、ポリマー粒子がある程度堆積(積層)しても、凹凸構造層が良好な透明性を示し、また、優れた防汚性(体液成分付着防止効果)を発揮することができる。
凹凸構造層は、ポリマー粒子の堆積により形成されるが、ポリマー粒子の堆積程度は、特に制限されない。透明性、防汚性(体液成分付着防止性)などを考慮すると、ポリマー粒子を、基材表面に、0.01〜10g/cmとなるように堆積することが好ましく、0.2〜5g/cmとなるように堆積することが好ましい。また、凹凸構造層の厚みは、特に制限されない。透明性、表面の凹凸構造、防汚性(体液成分付着防止性)などを考慮すると、0.01〜1μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。このような厚みであれば、凹凸構造層が良好な透明性を示し、また、優れた防汚性(体液成分付着防止効果)を発揮することができる。ここで、「凹凸構造層の厚み」とは、構造体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などにより観察される凹凸構造層の厚みの平均値として算出される値を採用するものとする。
[防汚性層]
本発明の構造体は、防汚性層をさらに有していることが好ましい。上述したように、従来では、内視鏡を用いて生体管腔または体腔内を観察する際に、生体由来の体液成分や洗浄液がレンズ表面に付着して、視認性を低下してしまう。特に、肺組織液は界面活性成分を含むため、気管や気管支に内視鏡を挿入する場合には、汚れ防止を目的とした撥水処理が施された表面であっても、上記界面活性成分により望ましい撥水性が得られず、視認性がかなり劣ってしまい、上記問題が顕著である。しかし、上記防汚性層を凹凸構造層上にさらに設けることによって、上記問題を解消できる。
ここで、防汚性層が、凹凸構造層表面の少なくとも一部に配置される。ここで、防汚性層は、所望の防汚性(体液成分付着防止効果)及び透明性を達成できる限り、凹凸構造層の表面の少なくとも一部に配置されればよいが、凹凸構造層の全表面積に対する防汚性層形成面積の割合は、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上(上限:100%)である。
また、防汚性層は、上記効果を奏するものであれば、いずれの材料によって形成されてもよいが、撥水性に優れるという観点から、フッ素含有化合物が好ましく使用できる。すなわち、防汚性層がフッ素含有化合物を有することが好ましい。フッ素含有化合物としては、特に制限されないが、防汚性層が、下記式(1):
ただし、Xは、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)または亜鉛(Zn)であり;Rは、それぞれ独立して、式:−Cの基を表わし、この際、pは6以上の整数であり、qは3〜2p+1の整数であり、qとrの合計(q+r)は2p+1であり;Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜30のアルコキシ基またはハロゲン原子を表わし;mは、1〜4の整数であり、mとnの合計(m+n)は、Xによって規定される整数である、
で示されるフルオロアルキル金属化合物、およびフルオロポリマーの少なくとも一方を含むことが好ましく、フルオロポリマーおよびフルオロアルキル金属化合物双方を含むことがより好ましい。すなわち、フッ素含有化合物は、上記式(1)で示されるフルオロアルキル金属化合物、およびフルオロポリマーからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
このように、フルオロポリマー及びフルオロアルキル金属化合物の少なくとも一方を含む防汚性層を基材の表面に配置する場合には、粘液、血液等の生体成分に対しては、洗浄なしであっても、レンズ表面への付着を抑制・防止できる、即ち、洗浄操作を行わなくとも操作中の良好な視認性を確保できる。しかし、上述したように、肺組織液は界面活性成分を含むため、この界面活性成分により、フルオロポリマーまたはフルオロアルキル金属化合物単独で形成してなる防汚性層を有するレンズでは、十分な撥水性を発揮できず、内視鏡などに適用される場合には、十分な視認性を達成できない場合がある。これに対して、フルオロポリマーおよびフルオロアルキル金属化合物を組み合わせて含む防汚性層では、体液成分、特に界面活性成分を含む肺組織液に対しても、十分な撥水性を発揮して、生体由来の体液成分(粘液、血液、肺組織液など)や洗浄液が表面に付着するのを効果的に抑制・防止する。このため、当該構造体を内視鏡などに適用する場合には、十分な視認性を達成できる。この防汚性層の配置による防汚性(体液成分付着防止)向上のメカニズムは、不明であるが、下記のように推測される。なお、本発明は、下記推測に限定されない。すなわち、フルオロポリマーにて形成されるマトリックス中でフルオロアルキル金属化合物が縮合反応により別のネットワークを形成し、フッ素密度の高い防汚性層を形成することで、これらの2成分が相乗的に防汚性を向上する。このため、界面活性成分を含む肺組織液と接触しても、十分な体液成分付着防汚性及び視認性を達成できる。よって、本発明の構造体を内視鏡等のレンズカバーとして使用すると、洗浄操作なしでも生体由来の体液成分(粘液、血液、肺組織液など)の付着を有効に抑制・防止して、良好な視認性を確保でき、内視鏡をスムーズに所定の部位にまで導入できる。
(フルオロポリマー)
本発明で使用されるフルオロポリマーは、特に制限されず、従来公知のフルオロポリマーの中から選択できる。フルオロポリマーの形状は、鎖状の重合体でもグラフト重合体でもよい。
鎖状の重合体としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)を主体とする重合体が好ましい。これらのフルオロポリマーの例としては、例えば以下(1)〜(6)に記載の重合体が挙げられる。
(1)フルオロオレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル、アルキルビニルエーテルおよびヒドロキシアルキルビニルエーテルを構成成分とする共重合体(特開昭57−34107号公報参照)。具体例としては、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)/シクロヘキシルビニルエーテル(c−HVE)/エチルビニルエーテル(EVE)/ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)共重合体、テトラフルオロエチレン(TFE)/c−HVE/EVE/HBVE共重合体、CTFE/c−HVE/イソブチルビニルエーテル(i−BVE)/HBVE共重合体など。
(2)フルオロオレフィン、カルボン酸ビニルエステル、アルキルビニルエーテルおよびヒドロキシアルキルビニルエーテルを必須の単量体とし、任意成分としてこれらの単量体と共重合可能な他のビニル単量体を共重合して得られるビニル系共重合体(特開昭62−7767号公報参照)。具体例としては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/EVE/HBVE/ベオバ9(商品名:シェル化学社製のカルボン酸ビニルエステル)共重合体、HFP/EVE/HBVE/安息香酸ビニル(VBz)共重合体、CTFE/EVE/HBVE/ベオバ9共重合体、TFE/EVE/HBVE/VBz共重合体、HFP/i−BVE/HBVE/ピバリン酸ビニル(PIV)共重合体、HFP/EVE/ヒドロキシヘキシルビニルエーテル(HHVE)/p−t−ブチル安息香酸ビニル(VPTBz)共重合体、CTFE/EVE/HBVE/シクロヘキシルカルボン酸ビニル(VCHC)共重合体、CTFE/EVE/HBVE/PIV共重合体など。
(3)式:−CClF−CF−で表わされる構造単位と、式:
(式中、R、RおよびRは同一または異なり炭素数1〜10のアルキル基)で表わされる構造単位および式:
(式中、Rは炭素数2〜5のアルキレン基)で表わされる構造単位から構成される含フッ素共重合体(特開昭62−174213号公報参照)。具体例としては、CTFE/ベオバ10(商品名:シェル化学社製のカルボン酸ビニルエステル)/HBVE共重合体、CTFE/ベオバ10/CH=CHOCH(CFH共重合体、CTFE/ベオバ10/HBVE共重合体など。
(4)フルオロオレフィンとアルケンおよび式:
(ただし、Rは−(CHCXHO)−H、nは0〜6の整数、XはHまたはCH)で表わされるヒドロキシ基含有アリルエーテルに基づく単位よりなる含フッ素樹脂(特開平2−265979号公報参照)。具体例としては、CTFE/プロピレン/エチレングリコールモノアリルエーテル(EGMAE)/ビニル酢酸(VAA)共重合体、CTFE/エチレン/EGMAE/VAA共重合体、CTFE/イソブチレン/EGMAE/VAA共重合体、CTFE/プロピレン/EGMAE共重合体、CTFE/プロピレン/アリルアルコール/VAA共重合体、TFE/エチレン/EGMAE/VAA共重合体など。
(5)フルオロオレフィン、脂肪酸ビニルエステル、アルキレングリコールモノアリルエーテルおよびカルボキシル基含有ビニル単量体からなる共重合体(特開平2−298645号公報参照)。具体例としては、CTFE/酢酸ビニル(VAc)/EGMAE/VAA共重合体、CTFE/VAc/ジエチレングリコールモノアリルエーテル/VAA共重合体、CTFE/VAc/EGMAE共重合体など。
(6)(6−1)式(I):
(式中、Xはフッ素原子、塩素原子、水素原子またはトリフルオロメチル基である)で表わされるフルオロオレフィン構造単位、
(6−2)式(II):
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基である)で表わされるβ−メチル置換α−オレフィン構造単位(6−2)、
(6−3)化学的硬化性反応性基を有する単量体に基づく構造単位、
(6−4)エステル基を側鎖に有する単量体に基づく構造単位、および
(6−5)他の共重合可能な単量体に基づく構造単位
からなる含フッ素共重合体(特開平4−279612号公報参照)。具体例としては、CTFE/イソブチレン(IB)/HBVE/プロピオン酸ビニル(VPi)共重合体、CTFE/IB/ヒドロキシエチルアリルエーテル(HEAE)/VAc共重合体、TFE/IB/HBVE/VPi共重合体、CTFE/IB/HBVE/ベオバ9共重合体、TFE/IB/HBVE/VBz共重合体、CTFE/IB/HBVE/マレイン酸ジエチル(DEM)共重合体、TFE/IB/HBVE/ベオバ9/マレイン酸ジブチル(DBM)共重合体、CTFE/IB/HBVE/フマル酸ジエチル(DEF)共重合体、CTFE/IB/ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)/フマル酸ジブチル(DBF)共重合体、HFP/IB/HBVE/VBz共重合体、TFE/2−メチル−1−ペンテン(MP)/HBVE/VPi共重合体、TFE/IB/HBVE/VPi/CH=CH(CFCF(p=1〜5)共重合体、TFE/IB/HBVE/VPi/VBz共重合体、CTFE/IB/HBVE/VAc共重合体、TFE/IB/HBVE/t−ブチル安息香酸ビニル(VtBz)共重合体、TFE/IB/HBVE/VPi/DEM共重合体、CTFE/IB/HBVE/VBz/DEF共重合体、CTFE/IB/HBVE/VPi/CH=CH(CFCF(p=1〜5)共重合体、CTFE/MP/HEVE/VPi共重合体、TFE/IB/HBVE/VPi/ビニル酢酸(VAA)共重合体、TFE/IB/HEVE/VAc/VAA共重合体、TFE/IB/HBVE/VPi/VBz/クロトン酸(CA)共重合体、TFE/IB/HBVE/ベオバ9/CA共重合体、TFE/IB/HBVE/ベオバ9/VBz/CA共重合体、TFE/IB/HBVE/ベオバ10/VtBz/CA共重合体、TFE/IB/HBVE/VtBz/CA共重合体、TFE/IB/HBVE/DEM/CA共重合体、TFE/IB/HBVE/DFM/CA共重合体、TFE/MP/HBVE/VPi/VAA共重合体など。
また、グラフト重合体としては、フルオロアルキル基を有するビニルモノマー、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートから誘導されたモノマー単位を含む重合体が例示できる。このようなモノマーの具体例としては、CF(CH)OCOCH=CH、CFCF(CH)OCOCH=CH、CF(CF(CH)OCOCH=CH、CF(CF(CH)OCOCH=CH、CF(CF(CH)OCOCH=CH、CF(CF(CH)OCOCH=CH、CF(CF(CH)OCOCH=CH、CF(CHOCOCH=CH、CFCF(CHOCOCH=CH、CF(CF(CHOCOCH=CH、CF(CF(CHOCOCH=CH、CF(CF(CHOCOCH=CH、CF(CF(CHOCOCH=CH、CF(CF(CHOCOCH=CH、CF(CHOCOCH=CH、CFCF(CHOCOCH=CH、CF(CF(CHOCOCH=CH、CF(CF(CHOCOCH=CH、CF(CF(CHOCOCH=CH、CF(CF(CHOCOCH=CH、CF(CF(CHOCOCH=CH、CF(CHOCOCH=CH、CFCF(CHOCOCH=CH、CF(CF(CHOCOCH=CH、CF(CF(CHOCOCH=CH、CF(CF(CHOCOCH=CH、CF(CF(CHOCOCH=CH、CF(CF(CHOCOCH=CH、CFCH=CHCHOCOCH=CH、CFCFCH=CHCHOCOCH=CH、CF(CFCH=CHCHOCOCH=CH、CF(CFCH=CHCHOCOCH=CH、CF(CFCH=CHCHOCOCH=CH、CF(CFCH=CHCHOCOCH=CH、CF(CFCH=CHCHOCOCH=CH、(CFCF(CHOCOCH=CH、(CFCF(CF)(CHOCOCH=CH、(CFCF(CF(CHOCOCH=CH、(CFCF(CF(CHOCOCH=CH、(CFCF(CF(CHOCOCH=CH、(CFCF(CF(CHOCOCH=CH、CFCF(CF(CHOCOCH=CH、H(CF)(CH)OCOCH=CH、H(CF(CH)OCOCH=CH、H(CF(CH)OCOCH=CH、H(CF(CH)OCOCH=CH、H(CF(CH)OCOCH=CH、CFCHFCF(CH)OCOCH=CH、CF(CH)OCOC(CH)=CH、CFCF(CH)OCOC(CH)=CH、CF(CF(CH)OCOC(CH)=CH、CF(CF(CH)OCOC(CH)=CH、CF(CF(CH)OCOC(CH)=CH、CF(CF(CH)OCOC(CH)=CH、CF(CF(CH)OCOC(CH)=CH、CF(CH)OCOCH=CH、CF(CHOCOC(CH)=CH、CFCF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CHOCOC(CH)=CH、CFCF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CHOCOC(CH)=CH、CFCF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CF(CHOCOC(CH)=CH、CF(CF(CHOCOC(CH)=CH、CFCH=CHCHOCOC(CH)=CH、CFCFCH=CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCH=CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCH=CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCH=CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCH=CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCH=CHCHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CF)(CHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CF(CHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CF(CHOCOC(CH
)=CH、(CFCF(CF(CHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CF(CHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CF(CHOCOC(CH)=CH、H(CF)(CH)OCOC(CH)=CH、H(CF(CH)OCOC(CH)=CH、H(CF(CH)OCOC(CH)=CH、H(CF(CH)OCOC(CH)=CH、H(CF(CH)OCOC(CH)=CH、CFCHFCF(CH)OCOC(CH)=CH、CFSON(CH)(CHOCOCH=CH、CF(CF)SON(CH)(CHOCOCH=CH、CF(CFSON(CH)(CHOCOCH=CH、CF(CFSON(CH)(CHOCOCH=CH、CF(CFSON(CH)(CHOCOCH=CH、CF(CFSON(CH)(CHOCOCH=CH、CF(CFSON(CH)(CHOCOCH=CH、CF(CFSON(C)(CHOCOC(CH)=CH、CF10(CFSON(CH)(CHOCOCH=CH、(CFCFCHCH(OCOCH)CHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CF)CHCH(OCOCH)CHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CFCHCH(OCOCH)CHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CFCHCH(OCOCH)CHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CFCHCH(OCOCH)CHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CFCHCH(OCOCH)CHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CFCHCH(OCOCH)CHOCOC(CH)=CH、(CFCFCHCH(OH)CHOCOCH=CH、(CFCF(CF)CHCH(OH)CHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH、下記構造:
を有するモノマーなどが挙げられる。
本発明に係るフルオロポリマーは、上記に加えて、他の公知のフルオロポリマーであってもよく、具体的には、特表2003−517067号公報、特表2004−532943号公報、特表2005−522539号公報、特表2005−522541号公報、特表2005−527716号公報、特表2007−505169号公報、特表2007−520583号公報、特表2011−511848号公報等に記載されるフルオロポリマーが使用できる。
本発明に係るフルオロポリマーは、合成されてもあるいは市販品であってもよい。市販品としては、Unidyne(登録商標)TG−580、TG−581、TG−992、TG−993(いずれも、ダイキン工業(株)製)、ゼッフル(ダイキン工業(株)製)、エフトーンシリーズ(GM−105など。ダイキン工業(株)製)、Repearl(登録商標)SR1100(三菱化学(株)製)、Rainoff F−8(Eastern Color and Chemical)およびZonyl(登録商標)、テフロン(登録商標)AF1600、AF2400、TE−9494−J、5100−J、100−J、130−J、140−J、340−J、345−J、350−J、420HP−J、440HP−J、450HP−J、451HP−J、9738−JN、807−N(いずれも、三井・デュポン フロロケミカル(株)製)ルミフロン(旭硝子(株)製)、フルオネート(大日本インキ(株)製)、セフラルコート(セントラル硝子(株)製)、のほか、アサヒガード(AG−5850など、旭硝子(株)製)やノックスガード(ST−320など、NOK(株)製)などが挙げられる。
上記フルオロポリマーは、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
また、本発明に係るフルオロポリマーは、親水性基、特にカチオン性基またはカチオン性セグメントを有することが好ましい。カチオン性基またはカチオン性セグメントの存在により、フルオロポリマーの溶剤への溶解性が向上でき、後述するコーティング操作が容易になる。特に水系溶媒に溶解(あるいは分散)できるものであれば、操作上の安全性の面からも好ましい。ここで、カチオン性基としては、特に制限されないが、例えば、式:−N(Xの基があり、ここで、Xは、それぞれ独立して、置換されてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基であり、上記と同様の定義であるため、ここでは説明を省略する。ここで、2個の置換基「X」は、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。好ましくは、Xは、炭素原子数1〜5のアルキル基であり、メチル基、エチル基がより好ましい。または、フルオロポリマーが、アンモニウム、第4級アンモニウム塩、モノエタノールアンモニウム塩などの塩の形態であってもよい。ここで、第4級アンモニウム塩は、式:N(Xで表され、ここで、Xは、それぞれ独立して、置換されてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基であり、上記と同様の定義であるため、ここでは説明を省略する。好ましくは、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等がある。
これらのうち、フルオロポリマーの好ましい例としては、下記構成単位(a)及び(b)を有する共重合体、下記構成単位(c)を有する単独重合体、下記構成単位(c)ならびに下記構成単位(a)および/または(b)を有する共重合体がある。なお、下記構成単位において、Xは、水素原子またはメチル基である。また、Xは、上記定義と同様であるため、ここでは、説明を省略する。Xは、結合手、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、−N(X)−、−SO−、−SO−、N(X)C(=O)−、アリーレン基、(ポリ)オキシアルキレン基若しくは(ポリ)パーフルオロオキシアルキレン基、またはこれらの組み合わせである。ここで、Xは、置換されてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基である。炭素原子数1〜8のアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基などの直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられる。また、アリーレン基としては、特に制限されないが、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、アンスリレン基などが挙げられる。(ポリ)オキシアルキレン基としては、特に制限されないが、例えば、(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン基としては、オキシメチレン基(−CHO−)、オキシエチレン基(−CHCHO−)、オキシトリメチレン基(−CHCHCHO−)若しくはオキシプロピレン基(−CH(CH)CHO−)、または上記オキシアルキレン基の1以上の組み合わせがある。(ポリ)パーフルオロオキシアルキレン基としては、特に制限されないが、例えば、上記(ポリ)オキシアルキレン基の水素原子がフッ素原子に置換された基、式:−(CFO)(CFCFO)(CF(CF)CFO)(CFCFCFO)(CF(CF(CF))−の基がある。ここで、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0〜30の整数であり、好ましくは1〜20の整数である。この際、d、e、fおよびgは、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよいが、d、e、fおよびgの少なくとも1は0でない。また、hおよびiは、それぞれ独立して、0または1である。なお、−CFO−、−CFCFO−、−CF(CF)CFO−、−CFCFCFO−、−CF−及び−CF(CF)の各ユニットの配列は、特に制限されず、ブロック状にまたはランダムに配置されてもいずれでもよい。Xは、水素原子、ハロゲン原子、またはアミン基(−N(X:Xは、それぞれ独立して、置換されてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基であり、上記と同様の定義である)である。ハロゲン原子は、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子があり、好ましくは、フッ素原子である。aは、1〜30の整数であり、好ましくは3〜20の整数である。bは、3〜2a+1の整数であり、好ましくは5〜41の整数である。cは、a及びbによって規定され、具体的には、(2a+1)−bである。さらに、アルキル基が置換される場合の置換基は、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、および複素環基が炭素数の数を超えない範囲で置換されてもよい。
防汚性層におけるフルオロポリマーの含有量は、特に制限されないが、防汚性層の全重量(固形分換算)に対して、50〜95重量%であることが好ましく、60〜80重量%であることがより好ましい。このような量であれば、得られる構造体は防汚性(体液成分付着防止効果)及び透明性に優れる。
(フルオロアルキル金属化合物)
本発明で使用されるフルオロアルキル金属化合物は、特に制限されず、いずれの構造を有していてもよい。具体的には、下記式(1)で示される化合物が好ましく使用できる。
上記式(1)において、Xは、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)または亜鉛(Zn)である。これらのうち、ケイ素、チタンが好ましく、ケイ素がより好ましい。また、Rは、式:−Cの基を表わす。ここで、Rが複数存在する(mが2以上の整数である)場合には、各Rは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。上記式:−Cにおいて、pは、6以上の整数である。防汚性をより向上させるためには、pは、好ましくは8以上の整数である。pの上限は、特に制限されないが、18以下が好ましく、12以下がより好ましい。また、qは、3〜2p+1の整数であり、好ましくは9〜2p+1の整数であり、より好ましくは13〜2p+1の整数である。また、少なくともRの末端が、トリフルオロメチル基(−CF)であることが好ましい。これにより、得られる構造体の防汚性(体液成分付着防止効果)をより向上できる。rは、p及びqによって規定され、2p+1−qの整数である(qとrの合計(q+r)は2p+1である)。
上記式(1)において、Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜30のアルコキシ基またはハロゲン原子を表わす。ここで、Rが複数存在する(nが2以上の整数である)場合には、各Rは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。炭素原子数1〜30のアルコキシ基としては、以下に制限されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、n−ヘンエイコシルオキシ基、n−ドコシルオキシ基、n−トリコシルオキシ基、n−テトラコシルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、炭素鎖長1〜18のアルコキシ基が好ましく、炭素鎖長1〜8のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基が特に好ましい。ハロゲン原子は、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子があり、塩素原子が好ましい。これらのうち、Rの少なくとも1つはアルコキシ基であることが好ましく、Rすべてがアルコキシ基であることがより好ましい。
mとnの合計(m+n)は、Xによって規定される整数である。このため、nは、m及びXの種類によって一義的に規定される。ここで、mは、1〜4の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
より具体的には、フルオロアルキル金属化合物としては、CF(CFSi(OCH、CF(CFSi(OCH、CF(CFSi(OCH、CF(CFSi(OCH、CF(CFSi(OCH、CF(CF10Si(OCH;[CF(CFSi(OCH、[CF(CFSi(OCH、[CF(CFSi(OCH、[CF(CFSi(OCH、[CF(CFSi(OCH、[CF(CF10Si(OCH;CF(CFSi(OCHCH、CF(CFSi(OCHCH、CF(CFSi(OCHCH、CF(CFSi(OCHCH、CF(CFSi(OCHCH、CF(CF10Si(OCHCH;[CF(CFSi(OCHCH、[CF(CFSi(OCHCH、[CF(CFSi(OCHCH、[CF(CFSi(OCHCH、[CF(CFSi(OCHCH、[CF(CF10Si(OCHCH;CF(CFSi(OCH(OCHCH)、CF(CFSi(OCH(OCHCH)、CF(CFSi(OCH(OCHCH)、CF(CFSi(OCH(OCHCH)、CF(CFSi(OCH(OCHCH)、CF(CF10Si(OCH(OCHCH);CF(CFSi(OCH)(OCHCH、CF(CFSi(OCH)(OCHCH、CF(CFSi(OCH)(OCHCH、CF(CFSi(OCH)(OCHCH、CF(CFSi(OCH)(OCHCH、CF(CF10Si(OCH)(OCHCH;CF(CF(CH)Si(OCH、CF(CF(CH)Si(OCH、CF(CF(CH)Si(OCH、CF(CF(CH)Si(OCH、CF(CF(CH)Si(OCH、CF(CF(CH)Si(OCH;[CF(CF(CH)]Si(OCH、[CF(CF(CH)]Si(OCH、[CF(CF(CH)]Si(OCH、[CF(CF(CH)]Si(OCH、[CF(CF(CH)]Si(OCH、[CF(CF(CH)]Si(OCH;CF(CF(CH)Si(OCHCH、CF(CF(CH)Si(OCHCH、CF(CF(CH)Si(OCHCH、CF(CF(CH)Si(OCHCH、CF(CF(CH)Si(OCHCH、CF(CF(CH)Si(OCHCH;[CF(CF(CH)]Si(OCHCH、[CF(CF(CH)]Si(OCHCH、[CF(CF(CH)]Si(OCHCH、[CF(CF(CH)]Si(OCHCH、[CF(CF(CH)]Si(OCHCH、[CF(CF(CH)]Si(OCHCH;CF(CF(CH)Si(OCH(OCHCH)、CF(CF(CH)Si(OCH(OCHCH)、CF(CF(CH)Si(OCH(OCHCH)、CF(CF(CH)Si(OCH(OCHCH)、CF(CF(CH)Si(OCH(OCHCH)、CF(CF(CH)Si(OCH(OCHCH);CF(CF(CH)Si(OCH)(OCHCH、CF(CF(CH)Si(OCH)(OCHCH、CF(CF(CH)Si(OCH)(OCHCH、CF(CF(CH)Si(OCH)(OCHCH、CF(CF(CH)Si(OCH)(OCHCH、CF(CF(CH)Si(OCH)(OCHCH;CF(CF(CHSi(OCH、CF(CF(CHSi(OCH、CF(CF(CHSi(OCH、CF(CF(CHSi(OCH、CF(CF(CHSi(OCH、CF(CF(CHSi(OCH;[CF(CF(CHSi(OCH、[CF(CF
(CHSi(OCH、[CF(CF(CHSi(OCH、[CF(CF(CHSi(OCH、[CF(CF(CHSi(OCH、[CF(CF(CHSi(OCH;CF(CF(CHSi(OCHCH、CF(CF(CHSi(OCHCH、CF(CF(CHSi(OCHCH、CF(CF(CHSi(OCHCH、CF(CF(CHSi(OCHCH、CF(CF(CHSi(OCHCH;[CF(CF(CHSi(OCHCH、[CF(CF(CHSi(OCHCH、[CF(CF(CHSi(OCHCH、[CF(CF(CHSi(OCHCH、[CF(CF(CHSi(OCHCH、[CF(CF(CHSi(OCHCH;CF(CF(CHSiCl、CF(CF(CHSiFなどが挙げられる。
上記フルオロアルキル金属化合物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
防汚性層におけるフルオロアルキル金属化合物の含有量は、特に制限されないが、防汚性層の全重量(固形分換算)に対して、5〜50重量%であることが好ましく、20〜40重量%であることがより好ましい。このような量であれば、得られる構造体は防汚性(体液成分付着防止効果)及び透明性に優れると共に、これらの効果を長期間にわたって維持でき、耐久性にも優れる。
本発明において、防汚性層がフルオロアルキル金属化合物及びフルオロポリマーを含む場合において、防汚性層は、フルオロアルキル金属化合物及びフルオロポリマーを含むものであれば、一層であってもあるいは2層以上の積層形態であってもよい。すなわち、防汚性層は、フルオロアルキル金属化合物及びフルオロポリマーを含む単層;フルオロアルキル金属化合物を含む被膜及びフルオロアルキル金属化合物を含む被膜;およびこれらの組み合わせから構成されてもよい。例えば、防汚性層が2層以上の積層形態である場合、各層の組成が異なっていてもよい。このため、例えば、防汚性層が2層以上の単層から構成される形態であっても、各層の組成は同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、防汚性層が2層以上の積層形態である場合の、フルオロアルキル金属化合物を含む被膜及びフルオロアルキル金属化合物を含む被膜の形成順序もまた、特に制限されず、フルオロアルキル金属化合物を含む被膜及びフルオロアルキル金属化合物を含む被膜のいずれが凹凸構造層上に形成されてもよいが、凹凸構造層上に、フルオロアルキル金属化合物を含む被膜及びフルオロポリマーを含む被膜が順次形成されることが好ましい。すなわち、防汚性層は、前記凹凸構造層上に形成される前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜および前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜上に形成される前記フルオロポリマーを含む被膜から構成される、または前記フルオロアルキル金属化合物および前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜であることが好ましい。
また、当該形態において、防汚性層におけるフルオロポリマーおよびフルオロアルキル金属化合物の混合比は、特に制限されず、フルオロポリマーおよびフルオロアルキル金属化合物の混合比(フルオロポリマー:フルオロアルキル金属化合物の混合比(重量比))が、1:1〜20:1であることが好ましく、2:1〜5:1であることがより好ましい。このような範囲であれば、防汚性層は、優れた防汚性(体液成分付着防止効果)、透明性を発揮し、また、これらの効果を長期間にわたって維持でき、耐久性にも優れる。
[構造体の製造方法]
本発明の構造体の製造方法は、上記したような構造を有するものであれば特に制限されないが、(a)ポリマー粒子を溶媒に分散して、分散液を調製し(分散液調製工程);(b)前記分散液を基材に塗布した後、ポリマー粒子を基材に融着させて、表面微細凹凸構造を有する凹凸構造層を前記基材上に形成する(凹凸構造層形成工程)ことによって構造体を製造することが好ましい。すなわち、本発明は、ポリマー粒子を溶媒に分散して、分散液を調製し;前記分散液を基材に塗布した後、ポリマー粒子を基材に融着させて、表面微細凹凸構造を有する凹凸構造層を前記基材上に形成する、ことを有する、構造体の製造方法をも提供する。
以下、上記好ましい方法について詳述するが、本発明は、下記形態に限定されるものではない。
(工程(a):分散液調製工程)
本工程では、ポリマー粒子を溶媒に分散して、分散液を調製する。
本工程(a)で使用できる溶媒としては、ポリマー粒子を適宜分散できかつポリマー粒子に対して不活性であるものであれば特に制限されない。具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、クロロホルム等のハロゲン化物、ヘキサン等のオレフィン類、テトラヒドロフラン(THF)、ブチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類などが挙げられる。上記溶媒は、一種であってもあるいは2種以上の混合液であってもよい。
ここで、分散液におけるポリマー粒子の濃度は、特に制限されないが、塗布のしやすさ、堆積しやすさ、微粒子の分散性などを考慮すると、分散液におけるポリマー粒子の濃度(分散濃度)は、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.1〜1重量%であることがより好ましい。
また、分散液は、他の添加剤を含んでもよい。この際使用できる他の添加剤としては、分散剤、安定化剤などが挙げられる。また、この際の他の添加剤の添加量は、ポリマー粒子に対して不活性であれば特に制限されないが、例えば、ポリマー粒子の添加量に対して、0.001〜1重量%程度である。
(工程(b):凹凸構造層形成工程)
本工程では、上記工程(a)で調製された分散液を基材に塗布した後、ポリマー粒子を基材に融着させて、表面微細凹凸構造を有する凹凸構造層を基材上に形成する。
本工程(b)において適用できる塗布方法は、特に制限されず、スプレーコート(噴霧法)、ディップコート(浸漬法)、スピンコート、バーコート、ロールコート、スクリーン印刷などの公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。また、塗布液を基材に塗布した後、塗膜を加熱することによって、ポリマー粒子を基材に融着させる。ここで、加熱条件は、ポリマー粒子及び基材が軟化してこれらが相互に融着する条件であれば特に制限されず、ポリマー粒子及び基材の種類によって適宜選択されうる。具体的には、加熱温度は、ポリマー粒子及び基材の軟化温度以上300℃以下の範囲であることが好ましく、軟化温度〜200℃であることがより好ましい。乾燥・加熱時間もまた、ポリマー粒子と基材とが融着できれば特に制限されないが、1分〜36時間が好ましく、5分〜24時間がより好ましい。このようにして、表面微細凹凸構造を有する凹凸構造層が基材上に形成される。なお、必要であれば、工程(b)は、所望の厚みが達成されるまで、繰り返し行ってもよい。
(工程(c))
上記したように、本発明の構造体は防汚性層をさらに有することが好ましい。ゆえに、本発明の方法は、凹凸構造層上に防汚性層を形成することをさらに有することが好ましい。ここで、防汚性層の形成方法は、特に制限されないが、上記式(1)で示されるフルオロアルキル金属化合物およびフルオロポリマーの少なくとも一方を溶媒に添加して塗布液を調製し、得られた塗布液を前記凹凸構造層上に塗布する方法が好ましい。
上述したように、防汚性層は、前記凹凸構造層上に形成される前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜および前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜上に形成される前記フルオロポリマーを含む被膜から構成される、または前記フルオロアルキル金属化合物および前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜であることが好ましい。前者の場合には、防汚性層は、前記フルオロアルキル金属化合物を溶媒に添加して、第1の塗布液を調製し、前記フルオロポリマーを溶媒に添加して、第2の塗布液を調製し、前記第1の塗布液を前記凹凸構造層上に塗布して、前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜を前記凹凸構造層上に形成した後、前記第2の塗布液を前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜上に塗布して、前記フルオロポリマーによる被膜を前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜上に形成することによって形成されることが好ましい。また、後者の場合には、防汚性層は、前記フルオロアルキル金属化合物及び前記フルオロポリマーを溶媒に添加して、第3の塗布液を調製し、前記第3の塗布液を前記凹凸構造層上に塗布して、前記フルオロアルキル金属化合物及び前記フルオロポリマーを含む被膜を前記凹凸構造層上に形成することによって形成されることが好ましい。すなわち、本発明の方法において、防汚性層は、前記フルオロアルキル金属化合物を溶媒に添加して、第1の塗布液を調製し、前記フルオロポリマーを溶媒に添加して、第2の塗布液を調製し、前記第1の塗布液を前記凹凸構造層上に塗布して、前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜を前記凹凸構造層上に形成した後、前記第2の塗布液を前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜上に塗布して、前記フルオロポリマーによる被膜を前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜上に形成することによって形成される;または前記フルオロアルキル金属化合物及び前記フルオロポリマーを溶媒に添加して、第3の塗布液を調製し、前記第3の塗布液を前記凹凸構造層上に塗布して、前記フルオロアルキル金属化合物及び前記フルオロポリマーを含む被膜を前記凹凸構造層上に形成することによって形成されることが好ましい。
以下、工程(c)を上記好ましい形態について説明する。ただし、本発明は、下記形態によって限定されない。
(工程(c−1):第1〜第3の塗布液の調製工程)
本工程では、フルオロポリマーおよびフルオロアルキル金属化合物の少なくとも一方を溶媒に添加して、第1〜第3の塗布液を調製する。すなわち、第1の塗布液は、フルオロアルキル金属化合物を溶媒に添加することによって調製される。第2の塗布液は、フルオロポリマーを溶媒に添加することによって調製される。第3の塗布は、フルオロアルキル金属化合物及びフルオロポリマーを溶媒に添加することによって調製される。
本工程(c−1)で使用できる溶媒としては、フルオロポリマーおよびフルオロアルキル金属化合物を適宜溶解または分散できかつフルオロポリマーおよびフルオロアルキル金属化合物に対して不活性である(分解などしない)ものであれば特に制限されない。具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、クロロホルム等のハロゲン化物、ヘキサン等のオレフィン類、テトラヒドロフラン(THF)、ブチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類などが挙げられる。上記溶媒は、一種であってもあるいは2種以上の混合液であってもよい。特に、第1の塗布液を凹凸構造層上に塗布して、フルオロアルキル金属化合物を含む被膜を凹凸構造層上に形成した後、第2の塗布液を上記被膜上に塗布して、フルオロポリマーによる被膜をフルオロアルキル金属化合物を含む被膜上に形成する場合には、第2の塗布液がアルコールを含むことが好ましい。フルオロアルキル金属化合物を含む被膜はある程度撥水性を示す。このため、上記したように、第2の塗布液中にアルコールが存在していることにより、濡れ性を高めて、フルオロポリマーが均一にかつ効率的にフルオロアルキル金属化合物を含む被膜上に配置されうる。ここで、第2の塗布液中のアルコールの添加量は、上記効果を奏する量であれば特に制限されないが、1〜10重量%であることが好ましい。
ここで、塗布液におけるフルオロポリマーの濃度は、特に制限されないが、上記したような量で防汚性層中に含有されるような濃度であることが好ましい。具体的には、塗布のしやすさなどを考慮すると、塗布液におけるフルオロポリマーの濃度は、0.1〜20重量%であることが好ましく、0.5〜10重量%であることがより好ましい。同様にして、塗布液におけるフルオロアルキル金属化合物の濃度は、特に制限されないが、上記したような量で防汚性層中に含有されるような濃度であることが好ましい。具体的には、塗布のしやすさなどを考慮すると、塗布液におけるフルオロアルキル金属化合物の濃度は、0.1〜10重量%であることが好ましく、0.5〜10重量%であることがより好ましい。
また、本工程(c−1)において、フルオロポリマーおよび/またはフルオロアルキル金属化合物が溶媒中に均一に溶解/分散させるために、撹拌子や撹拌羽根による機械的撹拌、容器の振盪による撹拌、超音波照射による撹拌などの撹拌を行ってもよい。
本工程(c−1)において、第1または第3の塗布液は、アルコキシ金属化合物(X’(R1’m’(R2’n’)を含むことが好ましい。上記式:X’(R1’m’(R2’n’中、X’は、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)または亜鉛(Zn)である。これらのうち、ケイ素、チタンが好ましく、ケイ素がより好ましい。または、X’は、上記式(1)中のXと同じであることが好ましい。ここで、R1’は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜30のアルキル基を表す。炭素原子数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−tert−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基などが挙げられる。R’が複数存在する(m’が2以上の整数である)場合には、各R’は、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。また、R2’は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜30のアルコキシ基を表わす。ここで、R2’が複数存在する(n’が2以上の整数である)場合には、各R2’は、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。炭素原子数1〜30のアルコキシ基としては、以下に制限されないが、上記式(2)と同様の定義であるため、ここでは説明を省略する。m’とn’の合計(m’+n’)は、X’によって規定される整数である。このため、n’は、m’及びXの種類によって一義的に規定される。ここで、mは、0〜2の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。より具体的には、アルコキシ金属化合物は、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシランであることが好ましい。このようにアルコキシ基を多数有するアルコキシ金属化合物を第1または第3の塗布液に含ませることによって、アルコキシ金属化合物は造膜結合剤として作用して、フルオロアルキル金属化合物がアルコキシ金属化合物のアルコキシ基を介して連結して、ネットワーク形成を促進できる。
第1または第3の塗布液がアルコキシ金属化合物を含む場合の、アルコキシ金属化合物の量は、上記したような効果を奏する量であれば特に制限されない。フルオロアルキル金属化合物のネットワークの形成性、防汚性層の強度、凹凸構造層または基材との結合性などを考慮すると、アルコキシ金属化合物は、フルオロアルキル金属化合物1重量部に対して、0.1〜10重量部添加されることが好ましく、0.5〜5重量部添加されることがより好ましい。このような量であれば、上記したような効果をより有効に達成できる。
また、本工程(c−1)において、第1または第3の塗布液は、酸性または塩基性であることが好ましい。この場合には、酸または塩基が反応触媒として作用し、フルオロアルキル金属化合物のネットワークの形成を促進できる。例えば、フルオロアルキル金属化合物が上記式(1)の構造を有する場合には、フルオロアルキル金属化合物が加水分解して上記式(1)中の置換基「R」が水酸基(−OH)に変換した後、縮合反応によりネットワークを形成するが、この反応は酸性または塩基性条件下で加速される。また、基材の種類によっては、酸性または塩基性条件で基材との反応性も向上して、フルオロアルキル金属化合物が基材と強固に結合するため、耐久性をより向上することもできる。第1または第3の塗布液がアルコキシ金属化合物を含む場合には、酸性または塩基性条件下では、上記と同様にしてアルコキシ金属化合物の加水分解及び縮合反応が加速されるため、さらに好ましい。第1または第3の塗布液のpHは、特に制限されないが、例えば、酸性の場合には、1以上7未満であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。また、塩基性の場合には、第1または第3の塗布液のpHは、7超14以下であることが好ましく、9〜14であることがより好ましい。塗布液のpHを、上記範囲になるように、必要であれば、酸または塩基を添加する。ここで、酸としては、特に制限されないが、塩酸、硝酸、弗酸、炭酸、および酢酸等が挙げられる。また、塩基としては、特に制限されないが、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。
また、フルオロポリマーおよびフルオロアルキル金属化合物に加えて、他の添加剤を溶媒に添加してもよい。この際使用できる他の添加剤としては、分散剤、安定化剤などが挙げられる。また、この際の他の添加剤の添加量は、フルオロポリマーおよびフルオロアルキル金属化合物による効果を阻害しない限り特に制限されないが、例えば、フルオロポリマーおよびフルオロアルキル金属化合物の合計量に対して、0.001〜1重量%程度である。
(工程(c−2):防汚性層形成工程)
本工程では、上記工程(c−1)で調製された第1の塗布液を凹凸構造層上に塗布して、前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜を前記凹凸構造層上に形成した後、上記工程(c−1)で調製された第2の塗布液を前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜上に塗布して、前記フルオロポリマーによる被膜を前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜上に形成する。この場合には、フルオロアルキル金属化合物を含む被膜及びフルオロポリマーによる被膜の積層体が防汚性層となる。または、上記工程(c−1)で調製された第3の塗布液を前記凹凸構造層上に塗布して、前記フルオロアルキル金属化合物及び前記フルオロポリマーを含む被膜を前記凹凸構造層上に形成する。この場合には、フルオロアルキル金属化合物及び前記フルオロポリマーを含む被膜(単層)が防汚性層となる。
本工程(c−2)において適用できる塗布方法は、特に制限されず、スプレーコート(噴霧法)、ディップコート(浸漬法)、スピンコート、バーコート、ロールコート、スクリーン印刷などの公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。また、塗布液を基材に塗布した後、必要であれば、塗膜を乾燥/加熱することによって、防汚性層が形成されるが、この際の乾燥・加熱条件は、特に制限されず、基材の耐熱性、フルオロポリマー、フルオロアルキル金属化合物及び溶媒の種類等によって、適宜設定すればよい。具体的には、乾燥・加熱温度は、溶媒の揮発温度以上300℃以下の範囲であることが好ましく、室温〜200℃であることがより好ましい。乾燥・加熱時間もまた、防汚性層が形成されれば特に制限されないが、0.5〜24時間が好ましく、1〜10時間がより好ましい。このようにして、防汚性層が基材上に形成される。ここで、防汚性層の厚みは、特に制限されないが、防汚性層の厚み(乾燥膜厚)は、0.01〜1μmであることが好ましく、0.05〜0.5μmであることがより好ましい。このような厚みであれば、得られる構造体は、防汚性(体液成分付着防止効果)、透明性、耐久性などに優れる。なお、必要であれば、工程(b)は、所望の厚みが達成されるまで、繰り返し行ってもよい。
[内視鏡]
上述したように、本発明の構造体は、優れた防汚性(体液成分付着防止効果)、耐久性及び透明性を発揮できるため、内視鏡のレンズ表面にレンズカバーとして好適に使用できる。したがって、本発明は、被検部位を観察するための光学素子を遠位端に有する内視鏡であって、前記光学素子の表面に本発明の構造体が設けてなる内視鏡をも提供する。本発明によると、洗浄操作なしでも生体由来の体液成分(粘液、血液、肺組織液など)の付着を有効に抑制・防止して、内視鏡レンズを通じて良好な視認性を確保できる。本発明の内視鏡を用いることによって、体液成分、特に界面活性成分を含む肺組織液に対しても、優れた防汚性(撥水性、体液成分付着防止効果)、耐久性及び透明性を達成できる。
ここで、本発明の構造体(好ましくは、透明構造体)は、いずれの内視鏡のレンズカバーとしても適用できる。すなわち、本発明の内視鏡は、レンズ表面に本発明の構造体をレンズカバーとして設置することに特徴があり、それ以外の内視鏡の構造には特徴がない。以下に、その好ましい一実施形態を、図2に示すが、本発明は当該形態に限定されない。
図2は、本発明の好ましい態様の内視鏡の先端部の構成の概略を示す拡大断面図である。図2において、本発明の内視鏡100の先端では、本発明の構造体(好ましくは、透明構造体)は、対物レンズ101の先端(遠位端)のレンズカバー102としてまたは照明用レンズ103の先端(遠位端)にレンズカバー104として、設置できる。これにより、洗浄操作なしでも、生体由来の体液成分(粘液、血液、肺組織液など)がこれらのレンズカバー表面に付着することがないまたはほとんどないので、内視鏡レンズを通じて生体内を良好に視認できる。なお、図2では、送気・送液ノズル105が内視鏡先端に設置されているが、上述したように、本発明の内視鏡によれば、送気・送液ノズルによる洗浄操作なしでも、十分な視認性を確保できるため、送気・送液ノズル105は省略できる。また、送気・送液ノズル105が設置された場合には、本発明の構造体の撥水性により、このノズルから噴射される洗浄液がレンズカバー表面に付着することがないまたはほとんどない。このため、このような場合であっても、本発明の構造体をレンズカバーとして使用することにより、内視鏡レンズを通じて生体内を良好に視認できる。
なお、本発明は上述の内視鏡のレンズ表面レンズカバー以外にも、透明であり体液と接触しうる部材に適宜使用することができる。具体的には、本発明の構造体、栄養カテーテル、吸引カテーテル、導尿カテーテルなどの各種体腔、臓器、組織内に挿入ないし留置されるカテーテル・チューブ類、血液バッグや輸血用チューブ類、体外循環治療用の医療器(人工肺、人工心臓、人工腎臓など)やその回路類、体液成分を採取・分析するための採取装置や分析装置類などにも適用できる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。
実施例1
PMMA粒子(綜研化学社製 MP−1451 平均粒子径:150nm)を、分散濃度が0.5重量%となるように、水及びエタノールの混合液(水:エタノールの混合比(体積)=1:10)中に分散した。透明基材としてのPMMA基材(大きさ:4cm×2cm、厚み:0.2mm)に、上記で得られた分散液を2.5mL、スプレーコートした。粒子が堆積した状態の基材を、180℃で20分間加熱して、粒子を基材に融着させて固定し、凹凸構造層を基材表面に形成した(基材(1))。
エタノール20gに、0.6gのフルオロアルキル金属化合物としてのヘプタデカフルオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロデシルトリエトキシシラン[CF(CF(CHSi(OCHCH]、0.5gのテトラエトキシラン(Si(OC)、及び0.01gの35重量% HCl水溶液を順次添加して、30分程度撹拌して、第1の塗布溶液を調製した。
別途、純水24.75gに、0.75gのフルオロポリマー(三井・デュポン フロロケミカル(株)製、カチオン性フルオロポリマー)及び1gのエタノールを順次添加し、30分程度撹拌して、第2の塗布液を調製した。
凹凸構造層を基材表面に形成した基材(1)を、上記で調製された第1の塗布液中に5秒間、浸漬した後、引き上げた。次に、この基材を、100℃で1時間加熱することによって、フルオロアルキルシランを含む被膜を基材(1)上に形成した(基材(2))。
次に、この基材(2)を、上記で調製された第2の塗布液中に5秒間、浸漬した後、引き上げた。次に、この基材を、100℃で1時間加熱することによって、フルオロポリマーを含む被膜を基材(2)上に形成した(構造体(1))。
得られた構造体(1)は、水による接触角が125度と撥水性を発揮した。また、得られた構造体(1)について、下記方法によって可視光透過率を測定したところ、70%であった。
<可視光透過率の測定>
各構造体について、400〜800nmの波長域での透過率を測定し、その平均値を可視光透過率とした。
比較例1
アクリルシリコーン樹脂(マイブロックワコー101、和光純薬社製)100重量部に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート20重量部を混合し、この混合物と同量の酢酸ブチルで希釈して、コート剤を調製した。このコート剤中に、透明基材としてのPMMA基材(厚み:0.2mm)を浸漬した後、引き上げた。次に、コート剤をコートしたPMMA基材を室温で12時間乾燥して、基材表面に中間層を形成した。このようにして中間層が表面に形成されたPMMA基材を、4重量%の疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製、AEROSIL RX200(一次粒子の平均粒子径:12nm、トリメチルシリル基で表面処理されたシリカ粒子))をエタノールに分散したコート液に浸漬した後、引き上げた。このPMMA基材を、180℃で20分間加熱することによって、基材と融着により固定化されていない表面微細凹凸構造を有する比較構造体(1)を得た。
得られた比較構造体(1)は、水による接触角が150度と撥水性を発揮した。また、比較構造体(1)について実施例1と同様に可視光透過率を測定したところ、86%であった。
比較例2
エタノール19gに、フルオロアルキル金属化合物としてのヘプタデカフルオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロデシルトリエトキシシラン[CF(CF(CHSi(OCHCH]を3g添加し、コート溶液を調製した。
透明基材としてのPMMA基材(大きさ:4cm×2cm、厚み:0.2mm)を、上記で調製されたコート溶液中に浸漬した後、引き上げた。このフルオロアルキル金属化合物のみがコートされた基材を、100℃で1時間加熱することによって、フルオロアルキル金属化合物のみを基材上に形成した(比較構造体(2))。
得られた比較構造体(2)は、水による接触角が105度と撥水性を発揮した。また、得られた比較構造体(2)について、実施例1と同様の方法によって可視光透過率を測定したところ、93%であった。
実験1:血液汚染防止能の評価
上記実施例1の構造体(1)ならびに、比較例1及び2の比較構造体(1)及び(2)について、下記試験を行い、血液に対する付着防止効果を評価した。結果を図3に示す。
各構造体を、ヒト全血(ヘパリン添加量:0.75unit/mL)中に1分間浸漬し、取り出した後の外観を肉眼で観察した。
図3Aに示されるように、実施例1の構造体(1)では、極一部の表面(血液が防汚性層の全形成面積(塗布面積)に対して、3%の割合で付着)を除き、血液の付着はあまり見られなかった。同様にして、図3Bに示されるように、比較例1の構造体(1)では、表面のほぼ全域(血液が防汚性層の全形成面積(塗布面積)に対して、血液の付着はあまり見られなかった。これに対して、図3Cに示されるように、比較例2の比較構造体(2)では、血液が被膜の全形成面積(塗布面積)に対して、ほぼ全面に(100%の割合で)付着していた。上記結果から、本発明の構造体(1)及び比較構造体(1)は、凹凸構造層をもたない比較構造体(2)に比べて、血液の付着を有意に抑制・防止できることが分かる。
実験2:肺組織液に対する付着防止効果の評価
上記実施例1の構造体(1)、比較例1及び2の比較構造体(1)及び(2)について、下記試験を行い、肺組織液に対する付着防止効果を評価した。結果を図4に示す。
すなわち、ブタの気管から肺までの組織に対して、シリンジを用いて、気管から120mLの生理食塩水(0.9重量% 塩化ナトリウム水溶液)を入れ、気管支及び肺内部にまで導入し、軽く振盪した後、肺中の液体を回収した。この組織液を肺組織液として使用する。各構造体を上記肺組織液に1分間浸漬し、取り出した後の外観を肉眼で観察した。
図4Aに示されるように、実施例1の構造体(1)では、極一部の表面(肺組織液が防汚性層の全形成面積(塗布面積)に対して、10%の割合で付着)を除き、肺組織液の付着は見られなかった。これに対して、比較例1の比較構造体(1)では、肺組織液が防汚性層の全形成面積(塗布面積)に対して、ほぼ全面に(85%の割合で)付着していた(図4B)。同様にして、比較例2の比較構造体(2)では、肺組織液が防汚性層の全形成面積(塗布面積)に対して、ほぼ全面に(95%の割合で)付着していた(図4C)。上記結果から、本発明の防汚性層を有する構造体(1)は、比較構造体(1)及び比較構造体(2)に比べて、肺組織液の付着を有意に抑制・防止できることが分かる。
実験3:耐久性の評価
上記実施例1の構造体(1)、比較例1及び2の比較構造体(1)及び(2)について、下記方法に従って図5に示される摩擦測定機(トリニティーラボ社製、ハンディートライボマスターTL201)20を用いて、耐久性を評価した。すなわち、各構造体21をシャーレ22中に固定し構造体21全体が浸る高さの純水23中に浸漬した。このシャーレ22を、摩擦測定機20の移動テーブル24に載置した。ガーゼをかぶせたSUS製R形状接触子(幅10mm、R12mm)25を構造体21に接触させ、端子25上に100gの荷重26をかけた。速度5mm/秒、移動距離10mmの設定で、移動テーブル24を水平に10回往復移動させ、0回(往復移動前)、5回及び10回往復移動時の接触角を測定した。なお、本評価での擦過時の抵抗値は約60gfであった。
実験1及び実験2の結果と合わせて、評価結果を表1に示す。
表1に示されるように、本発明の構造体(1)は、評価試験中、耐久性評価前(往復移動0回)とほぼ同等の接触角を示したが、比較例1の比較構造体(1)は、耐久性試験前(往復移動0回)は高い撥水性を示したものの、5回往復移動後には接触角が顕著に低下した。これから、本発明の構造体(1)は、基材と融着により固定化されていない表面微細凹凸構造を有する比較構造体(1)に比して、耐久性を著しく向上できることが分かる。また、フルオロアルキル金属化合物のみを基材上に形成した比較構造体(2)は、耐久性評価前(往復移動0回)から接触角が比較的低く、耐久性試験後は、撥水性はさらに低下した。なお、下記表1の「血液付着防止効果」において、○は、血液付着面積が全接触面積の50%未満であることを示し、×は、血液付着面積が全接触面積の50%以上であることを示す。同様にして、下記表1の「肺組織液付着防止効果」において、○は、肺組織液付着面積が全接触面積の50%未満であることを示し、×は、肺組織液付着面積が全接触面積の50%以上であることを示す。
1…構造体、
2…基材、
3…ポリマー粒子、
4…凹凸構造層、
5…防汚性層、
100…内視鏡、
101…対物レンズ、
102…レンズカバー、
103…照明用レンズ、
104…レンズカバー、
105…送気・送液ノズル、
20…摩擦測定機、
21…構造体、
22…シャーレ、
23…純水、
24…移動テーブル、
25…端子、
26…荷重。

Claims (12)

  1. 基材の表面の少なくとも一部に凹凸構造層を配置してなる構造体であって、
    前記凹凸構造層は、ポリマー粒子の堆積により形成される表面微細凹凸構造を有し、
    前記ポリマー粒子は基材に融着により固定化される、構造体。
  2. 前記凹凸構造層は、少なくとも一部で連続的に形成される、請求項1に記載の構造体。
  3. 前記凹凸構造層上に防汚性層をさらに有する、請求項1または2に記載の構造体
  4. 前記防汚性層がフッ素含有化合物を有する、請求項3に記載の構造体。
  5. 前記フッ素含有化合物が、下記式(1):
    ただし、Xは、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)または亜鉛(Zn)であり、
    は、それぞれ独立して、式:−Cの基を表わし、この際、pは6以上の整数であり、qは3〜2p+1の整数であり、qとrの合計(q+r)は2p+1であり;
    は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜30のアルコキシ基またはハロゲン原子を表わし;
    mは、1〜4の整数であり、mとnの合計(m+n)は、Xによって規定される整数である、
    で示されるフルオロアルキル金属化合物、およびフルオロポリマーからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項4に記載の構造体。
  6. 前記防汚性層が、前記凹凸構造層上に形成される前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜および前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜上に形成される前記フルオロポリマーを含む被膜から構成される、または前記フルオロアルキル金属化合物および前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜である、請求項5に記載の構造体。
  7. 前記ポリマー粒子および基材が、同じまたは相溶性のあるポリマーから形成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の構造体。
  8. ポリマー粒子を溶媒に分散して、分散液を調製し;
    前記分散液を基材に塗布した後、ポリマー粒子を基材に融着させて、表面微細凹凸構造を有する凹凸構造層を前記基材上に形成する、
    ことを有する、構造体の製造方法。
  9. 前記凹凸構造層上に防汚性層を形成することをさらに有する、請求項8に記載の方法。
  10. 前記防汚性層は、
    下記式(1):
    ただし、Xは、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)または亜鉛(Zn)であり、
    は、それぞれ独立して、式:−Cの基を表わし、この際、pは6以上の整数であり、qは3〜2p+1の整数であり、qとrの合計(q+r)は2p+1であり;
    は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜30のアルコキシ基またはハロゲン原子を表わし;
    mは、1〜4の整数であり、mとnの合計(m+n)は、Xによって規定される整数である、
    で示されるフルオロアルキル金属化合物およびフルオロポリマーの少なくとも一方を溶媒に添加して塗布液を調製し、得られた塗布液を前記凹凸構造層上に塗布することによって形成される、請求項9に記載の方法。
  11. 前記防汚性層は、
    前記フルオロアルキル金属化合物を溶媒に添加して、第1の塗布液を調製し、前記フルオロポリマーを溶媒に添加して、第2の塗布液を調製し、前記第1の塗布液を前記凹凸構造層上に塗布して、前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜を前記凹凸構造層上に形成した後、前記第2の塗布液を前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜上に塗布して、前記フルオロポリマーによる被膜を前記フルオロアルキル金属化合物を含む被膜上に形成することによって形成される;または
    前記フルオロアルキル金属化合物及び前記フルオロポリマーを溶媒に添加して、第3の塗布液を調製し、前記第3の塗布液を前記凹凸構造層上に塗布して、前記フルオロアルキル金属化合物及び前記フルオロポリマーを含む被膜を前記凹凸構造層上に形成することによって形成される、請求項10に記載の方法。
  12. 被検部位を観察するための光学素子を遠位端に有する内視鏡であって、前記光学素子の表面に請求項1〜7のいずれか1項に記載の構造体が設けてなる内視鏡。
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