一般的にタイヤ用ゴム組成物の製造方法は、ジエン系ゴム、シリカ、シランカップリング剤、カーボンブラック、アロマオイル、および加硫系配合剤を除く配合剤を、混合、混練する混練工程(第一段階の混合工程)と、この混練工程で得られた混合物を冷却してから加硫系配合剤を混合する工程(最終段階の混合工程)の少なくとも2つの工程からなる。本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法は、上述した混練工程(第一段階の混合工程)を、1番目にシリカおよびシランカップリング剤の全量をミキサーに投入し混合するステップと、この1番目の投入・混合ステップの後、シリカおよびシランカップリング剤を含むミキサーに未変性のジエン系ゴムを投入、混練する、2番目の投入・混合ステップと、この2番目の投入・混合ステップの後、シリカおよびシランカップリング剤と未変性のジエン系ゴムとを含むミキサーに変性されたジエン系ゴムを投入、混練する、3番目の投入・混合ステップからなる少なくとも3つのステップで構成することを特徴とする。
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法では、シリカおよびシランカップリング剤と、未変性のジエン系ゴムと、変性されたジエン系ゴムとが、上述の順番で投入、混練されることが重要であるため、上述した第一段階の混合工程と最終段階の混合工程との間に、第一段階の混練工程で得られた混合物を冷却してから所定の配合剤を混合する第二段階の混合工程を追加して、第一段階の混合工程で、1番目にシリカおよびシランカップリング剤の全量をミキサーに投入し混合するステップと、この1番目の投入・混合ステップの後、シリカおよびシランカップリング剤を含むミキサーに未変性のジエン系ゴムを投入、混練する、2番目の投入・混合ステップとを行い、第二段階の混合工程で、第一段階で得られた混合物(シリカおよびシランカップリング剤と未変性のジエン系ゴムとを含む混合物)に対して変性されたジエン系ゴムを投入、混練するようにすることもできる。
本発明の製造方法は、第一段階の混合工程を、ミキサーにシリカおよびシランカップリング剤の全量を1番目に投入し混合するステップを行うことにより開始する。これによりシリカおよびシランカップリング剤を互いに接触しやすくし、シランカップリング剤がより効果的にシリカに作用するようになる。これにより従来、別の工程でシリカの表面処理を施す場合と比べ、工数を削減し生産コストを低減することができる。またシリカおよびシランカップリング剤を先に混合することにより、ミキサーの温度を低下させ、次にジエン系ゴムを混練するときの温度を下げ、ミキサー内の混練強度をより大きくしシリカの分散性をよりよくすることができる。最初にジエン系ゴムをミキサーに投入、混練した後、各種配合剤を投入、混練するという従来の第一段階の混合工程では、ジエン系ゴムの混練によりミキサー内の温度が高くなりジエン系ゴムの粘度が低下するので、後からシリカを投入、混練するとき高いせん断力をかけることができないため、シリカを良好に分散させることができない。
ミキサーに投入するシリカおよびシランカップリング剤の量は、シリカ量に対するシランカップリング剤が5質量%~18質量%、好ましくは6質量%~15質量%になるようにする。シランカップリング剤の配合量をシリカ量の5質量%以上にすることによりシリカの分散を改良することができる。またシランカップリング剤の配合量をシリカ量の18質量%以下にすることによりシランカップリング剤同士の縮合を抑制し、所望の硬度や強度を有するゴム組成物を得ることができる。
シリカおよびシランカップリング剤の混合は、通常タイヤ用ゴム組成物の製造に用いられるミキサーを使用することができる。またミキサーを構成するローターの形式は噛み合い式、非噛み合い式のいずれでもよい。ローターの回転数は、タイヤ用ゴム組成物を製造するときの通常の回転数に設定することができる。
本発明において、シリカおよびシランカップリング剤を混合する温度は、好ましくは20℃~90℃、より好ましくは30℃~70℃にすることができる。特に混合するときの上限温度を70℃にすることにより、このステップに続き、ジエン系ゴムを投入、混練するステップを行うことにより、せん断力を大きくしシリカの分散性を良好にすることができる。
シリカおよびシランカップリング剤を混合する時間は、好ましくは5秒~2分、より好ましくは20秒~90秒にすることができる。混合時間を20秒以上にすることにより、シリカおよびシランカップリング剤を混合し十分に接触させることができる。また混合時間を90秒以下にすることにより生産性の低下を抑制することができる。
本発明の製造方法において、シリカおよびシランカップリング剤と共に、カーボンブラックおよび/またはアロマオイルを投入し混合することができ、ウェットグリップ性をより高くし、耐久性をより大きくすることができる。カーボンブラックおよびアロマオイルは、シリカおよびシランカップリング剤と同時にミキサーに投入するとよい。またカーボンブラックおよびアロマオイルを投入したときの混合条件は、上記と同じにすることができる。
本発明において、シリカおよびシランカップリング剤の混合を終えたミキサーに、上述のいずれかの順序でジエン系ゴム(未変性ジエン系ゴム、変性ジエン系ゴム)を投入し混練する。ミキサーへのジエン系ゴムの投入は、通常の投入条件の範囲内で行うことができる。またシリカおよびシランカップリング剤とジエン系ゴムを混練する条件も通常の範囲内で行うことができる。但し、変性されたジエン系ゴムを投入する際の混合温度は、好ましくは100℃以下、より好ましくは70℃~95℃であるとよい。つまり、シリカおよびシランカップリング剤と未変性のジエン系ゴムとを混合するときの上限温度を100℃にして、シリカおよびシランカップリング剤と未変性のジエン系ゴムとを混合するステップに続き、変性されたジエン系ゴムを投入、混練するステップを行うとよい。これにより、せん断力を大きくしシリカの分散性を良好にすることができる。
タイヤ用ゴム組成物に配合する、加硫系配合剤を除く配合剤は、ジエン系ゴムと同時に投入し混練しても、ジエン系ゴムの混練を終えた後に投入し混合してもよい。加硫系配合剤を除く配合剤としては、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を例示することができる。これら配合剤は、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。例えばカーボンブラックなどのシリカ以外の充填剤をジエン系ゴムの投入と同時に投入、混練したり、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤などの所謂ゴム薬をジエン系ゴムの投入と同時に投入、混練したり、或はジエン系ゴムの混練を終えた後にアロマオイルを投入し混合してもよい。
本発明において、ジエン系ゴム、シリカ、シランカップリング剤、カーボンブラック、アロマオイル、および加硫系配合剤を除く配合剤を、混合、混練する混練工程(第一乃至第二段階の混合工程)の後、得られた混合物を冷却し、加硫系配合剤を混合する工程(最終段階の混合工程)を行う。加硫系配合剤としては、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、加硫遅延剤等を例示することができる。加硫系配合剤を混合する方法は、通常のタイヤ用ゴム組成物の製造方法と同様にして行うことができる。なお、最終段階の混合工程の前に、第一段階の混合工程で得られた混合物を、さらに混練する第二段階の混合工程や第三段階の混合工程を行ってもよい。第二段階の混合工程は、第一段階の混合工程のミキサーから、混練物を取出し、必要に応じ冷却し、同じミキサーまたは別のミキサーに投入し混合するものである。第三段階の混合工程は、第二段階の混合工程で得られた混合物に対し、上記と同様にして混合するものである。第二段階の混合工程および/または第三段階の混合工程では、それぞれの前段階の混合工程で得られた混合物を投入しそのまま混合してもよいし、更に混合物に対し配合剤を追加投入して混合してもよい。
本発明で製造するタイヤ用ゴム組成物は、未変性のジエン系ゴムと変性されたジエン系ゴムとからなるジエン系ゴム100質量部にシリカを80~180質量部配合し、シランカップリング剤をシリカ量の5~18質量%配合したものである。
未変性のジエン系ゴムは、通常タイヤ用ゴム組成物に用いられるものであれば特に制限されるものではなく、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム等が挙げられる。なかでも天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴムが好ましい。
変性されたジエン系ゴムも、通常タイヤ用ゴム組成物に用いられるものであれば特に制限されるものではなく、例えば上述のジエン系ゴムの分子鎖の末端および/または側鎖がヘテロ原子を有する官能基で変性されたジエン系ゴムを用いることができる。ヘテロ原子として、酸素、窒素、ケイ素、硫黄島が挙げられる。また、官能基として、エポキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シリル基、アミド基、オキシシリル基、シラノール基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、カルボニル基、アルデヒド基、等により、変性された変性ジエン系ゴムでもよい。
変性されたジエン系ゴムとして、例えばエポキシ基変性天然ゴム、エポキシ基変性イソプレンゴム、アミノ基変性スチレン-ブタジエンゴム、ヒドロキシ基変性スチレン-ブタジエンゴム、シリル基変性スチレン-ブタジエンゴム、オキシシリル基変性スチレン-ブタジエンゴム、シラノール基変性スチレン-ブタジエンゴム、イミノ基変性スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシル基変性スチレン-ブタジエンゴム、スズ基変性スチレン-ブタジエンゴム、エポキシ基変性スチレン-ブタジエンゴム、等を例示することができる。
変性されたジエン系ゴムは、ジエン系ゴム100質量%中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上含有するとよい。また変性されたジエン系ゴムは、100質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下含有するとよい。変性されたジエン系ゴムの含有量を30質量%以上にすることにより、シリカの分散性をいっそう良好にし、ウェットグリップ性能、低転がり抵抗性および耐摩耗性にさらに優れたものにすることができる。
シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらを単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。またシリカの表面をシランカップリング剤により表面処理が施された表面処理シリカを使用してもよい。
シリカのCTAB吸着比表面積は、特に制限されるものではないが、好ましくは150m2 /g~300m2 /g、より好ましくは160m2 /g~260m2 /gであるとよい。シリカのCTAB吸着比表面積を150m2 /g以上にすることにより、ゴム組成物の耐摩耗性を確保することができる。またシリカのCTAB吸着比表面積を300m2 /g以下にすることにより、ウェットグリップ性能および低転がり抵抗性を良好にすることができる。本明細書において、シリカのCTAB比表面積は、ISO 5794により測定された値とする。
シリカは、ジエン系ゴム100質量部に対し80~180質量部、好ましくは90~160質量部配合する。シリカの配合量を80質量部以上にすることにより、ウェットグリップ性能および低転がり抵抗性を改良することができる。またシリカの配合量を180質量部以下にすることにより、耐摩耗性を確保することができる。
シランカップリング剤は、シリカ配合のゴム組成物に使用可能なものであれば特に制限されるものではないが、硫黄含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤等を例示することができる。また後述する式(1)で表されるシランカップリング剤や式(2)の平均組成式で表されるポリシロキサンを好ましく用いることができる。シランカップリング剤として、例えば、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等の硫黄含有シランカップリング剤、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、等のアミノ基含有シランカップリング剤を例示することができる。
本発明の製造方法において、下記式(1)で表されるシランカップリング剤を好ましく用いることができる。
(Cp H2p+1)t (Cp H2p+1O)3-7 -SiCq H2q-S-C(O)-Cr H2r+1 ・・・(1)
(式(1)中、pは1~3の整数、qは1~3の整数、rは1~15の整数、tは0~2の整数を表す。)
上記式(1)中、シリカとの親和性が高くタイヤ用ゴム組成物の加工性が良好となり、かつタイヤ用ゴム組成物中におけるシリカの分散性が良好となる点でpは2~3であることが好ましく、2であることがより好ましい。qは、同様の理由で2~3であることが好ましく、3であることがより好ましい。rは、タイヤ用ゴム組成物の混練時のスコーチタイムが良好となる点で5~10が好ましく、6~9がより好ましく、7がさらに好ましい。tは0~2の整数を表し、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。このようなシランカップリング剤は、公知の方法により製造することができ、例えば国際公開第99/09036号公報に記載された方法が挙げられる。市販品としては、モメンティブ社のNXTシラン等が例示される。
硫黄含有シランカップリング剤は、好ましくはメルカプト基を有するシランカップリング剤であり、より好ましくは以下の式(2)の平均組成式で表されるポリシロキサンであるとよい。
(A)a (B)b (C)c (D)d (R1 )e SiO(4-2a-b-c-d-e)/2 ・・・(2)
(式中、Aは下記式(3)で表される2価の有機基、Bは炭素数5~20の1価の炭化水素基、Cは加水分解性基、Dはメルカプト基を含有する有機基、R1は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表し、a~eは、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、0<2a+b+c+d+e<4の関係式を満たす実数である。
*-(CH2 )n -Sx -(CH2 )n -* ・・・(3)
(上記式(3)中、nは1~10の整数、xは1~6の整数を表し、*は結合位置を示す。)
上記一般式(2)で表される平均組成式を有するポリシロキサン(メルカプトシラン化合物)は、その骨格として、シロキサン骨格を有する。シロキサン骨格は直鎖状、分岐状、3次元構造のいずれか又はこれらの組み合わせとすることができる。
上記一般式(2)において、a、bの少なくとも1つが0でない。すなわち、a,bの少なくとも1つが0より大であり、a及びbの両方が0より大でもよい。よって、このポリシロキサンは、スルフィド基を含有する2価の有機基A、炭素数5~10の1価の炭化水素基Bから選ばれる少なくとも一つを必ず含む。
上記一般式(2)で表される平均組成式を有するポリシロキサンからなるシランカップリング剤が、炭素数5~10の1価の炭化水素基Bを有する場合、メルカプト基を保護しムーニースコーチ時間が長くなると同時に、ゴムとの親和性に優れることで加工性をより優れたものにする。このため一般式(2)における炭化水素基Bの添え字bは、0.10≦b≦0.89であるとよい。炭化水素基Bの具体例としては、好ましくは炭素数6~10、より好ましくは炭素数8~10の1価の炭化水素基、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。これによりメルカプト基を保護しムーニースコーチ時間を長くし加工性により優れ、低発熱性をより優れたものにすることができる。
上記一般式(2)で表される平均組成式を有するポリシロキサンからなるシランカップリング剤が、スルフィド基を含有する2価の有機基Aを有する場合、低発熱性、加工性(特にムーニースコーチ時間の維持・長期化)をより優れたものにする。このため一般式(5)におけるスルフィド基を含有する2価の有機基Aの添え字aは、0<a≦0.50であるとよい。
スルフィド基を含有する2価の有機基Aは、上記一般式(3)中、nは1~10の整数を表し、なかでも、2~4の整数であることが好ましい。また、xは1~6の整数を表し、なかでも、2~4の整数であることが好ましい。有機基Aは、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい炭化水素基とすることができる。
上記一般式(3)で表される基の具体例としては、例えば、*-CH2 -S2 -CH2 -*、*-C2 H4 -S2 -C2 H4 -*、*-C3 H6 -S2 -C3 H6 -*、*-C4 H8 -S2 -C4 H8 -*、*-CH2 -S4 -CH2 -*、*-C2 H4 -S4 -C2 H4 -*、*-C3 H6 -S4 -C3 H6 -*、*-C4 H8 -S4 -C4 H8 -*などが挙げられる。
上記一般式(2)で表される平均組成式を有するポリシロキサンからなるシランカップリング剤は、加水分解性基Cを有することによって、シリカとの親和性及び/又は反応性を優れたものにする。一般式(2)における加水分解性基Cの添え字cは、低発熱性、加工性がより優れ、シリカの分散性がより優れるというる理由から、1.2≦c≦2.0であるとよい。加水分解性基Cの具体例としては、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。加水分解性基Cとしては、シリカの分散性を良好にし、また加工性をより優れたものにする観点から、下記一般式(4)で表される基であることが好ましい。
*-OR2 ・・・(4)
上記一般式(4)中、*は、結合位置を示す。またR2 は炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアラルキル基(アリールアルキル基)または炭素数2~10のアルケニル基を表し、なかでも、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。
上記炭素数1~20のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられる。上記炭素数6~10のアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基などが挙げられる。上記炭素数6~10のアラルキル基の具体例としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。上記炭素数2~10のアルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ペンテニル基などが挙げられる。
上記一般式(2)で表される平均組成式を有するポリシロキサンからなるシランカップリング剤は、メルカプト基を含有する有機基Dを有することによって、ジエン系ゴムと相互作用及び/又は反応することができ、低発熱性を優れたものにする。メルカプト基を含有する有機基Dの添え字dは、0.1≦d≦0.8であるとよい。メルカプト基を含有する有機基Dとしては、シリカの分散性を良好にし、また加工性をより優れたものにする観点から、下記一般式(5)で表される基であることが好ましい。
*-(CH2 )m-SH ・・・(5)
上記一般式(5)中、mは1~10の整数を表し、なかでも、1~5の整数であることが好ましい。また式中、*は、結合位置を示す。
上記一般式(5)で表される基の具体例としては、*-CH2 SH、*-C2 H4 SH、*-C3 H6 SH、*-C4 H8 SH、*-C5 H10SH、*-C6 H12SH、*-C7 H14SH、*-C8 H16SH、*-C9 H18SH、*-C10H20SHが挙げられる。
上記一般式(2)において、R1 は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表す。炭化水素基R1 としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
シランカップリング剤の配合量は、シリカの質量に対し5~18質量%、好ましくは6~15質量%にする。シランカップリング剤の配合量をシリカ量の5質量%以上にすることによりシリカの分散を改良することができる。またシランカップリング剤の配合量をシリカ量の18質量%以下にすることによりシランカップリング剤同士の縮合を抑制し、所望の硬度や強度を有するゴム組成物を得ることができる。
本発明で製造するタイヤ用ゴム組成物は、シリカおよびシランカップリング剤と共に、カーボンブラックおよび/またはアロマオイルを共に配合することができる。
カーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、HMF、SRF等のファーネスカーボンブラックが挙げられ、これらを単独または2種以上を組合わせて使用してもよい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、特に制限されるものではないが、好ましくは70m2 /g~240m2 /g、より好ましくは90m2 /g~200m2 /gであるとよい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積を70m2 /g以上にすることにより、ゴム組成物の機械的特性および耐摩耗性を確保することができる。またカーボンブラックの窒素吸着比表面積を240m2 /g以下にすることにより、低転がり抵抗性を良好にすることができる。本明細書において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2に準拠して、測定するものとする。
カーボンブラックは、ジエン系ゴム100質量部に対し好ましくは5~100質量部、より好ましくは10~80質量部配合することができる。カーボンブラックの配合量を5質量部以上にすることにより、ゴム組成物の機械的特性および耐摩耗性を確保することができる。またカーボンブラックの配合量を100質量部以下にすることにより、低転がり抵抗性を確保することができる。
タイヤ用ゴム組成物は、シリカ、カーボンブラック以外の他の充填剤を配合することができる。他の充填材としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウムを挙げることができる。これらを単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
アロマオイルとしては、例えば、ASTM D2140に準拠して求められた芳香族系炭化水素の質量百分率が15質量%以上のものが好適に使用される。すなわち、その分子構造的に芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素を含有することができ、芳香族系炭化水素の含有比率が15質量%以上のものが好ましく、17質量%以上のものがより好ましい。また、アロマオイル中の芳香族系炭化水素の含有比率は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下であるとよい。
アロマオイルの市販品としては、例えば昭和シェル石油社製エキストラクト4号S、出光興産社製のAC-12、AC-460、AH-16、AH-24、AH-58、ジャパンエナジー社製のプロセスNC300S、プロセスX-140などが挙げられる。
タイヤ用ゴム組成物において、アロマオイルの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し好ましくは3質量部~50質量部、より好ましくは5質量部~40質量部であるとよい。アロマオイルの配合量を3質量部以上にすることにより、低転がり抵抗性を確保することができる。また、アロマオイルの配合量を50質量部以下にすることにより、耐摩耗性を確保することができる。
本発明で製造するタイヤ用ゴム組成物は、シリカおよびシランカップリング剤と共に、シリカ用分散剤を共に配合することができる。シリカ用分散剤として、例えばアミン系化合物、シラン系化合物、エポキシ系化合物、グアニジン系化合物、等を挙げることができる。好ましくは、アミン系化合物、シラン系化合物、グアニジン系化合物から選ばれる少なくとも1つを用いるとよい。
アミン系化合物として、環状アミン系化合物等を挙げることができる。環状アミン系化合物として、好ましくはピペリジン系誘導体、ピペラジン系誘導体、モルホリン系誘導体、チオモルホリン系誘導体等を挙げることができる。なお、環状アミン系化合物は、ケイ素原子およびエナミン構造(N-C=C)を有しなくてよい。
ピペラジン系誘導体、モルホリン系誘導体、チオモルホリン系誘導体は、それぞれピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環と、その環を形成する炭素原子または窒素原子と、直接または他の有機基を介して、結合する炭素数3~30炭化水素基とを有する構造であるとよい。他の有機基として、カルボニル基、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基等の酸素を含む2価の炭化水素基が挙げられる。
炭素数3~30の炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状および環状を含む。)、芳香族炭化水素基、並びにこれらの組合せが挙げられる。なかでも、加工性により優れるという観点から、脂肪族炭化水素基が好ましく、飽和の脂肪族炭化水素基がより好ましい。また加工性により優れるという観点から、炭素数8~22の炭化水素基が好ましい。炭素数3~30の炭化水素基は、炭素原子および水素原子のみで構成されることが好ましい。また炭素数3~30の炭化水素基は、1価であることが好ましい。上記環状アミン系化合物1分子は、炭素数3~30の炭化水素基を、1個または複数有することができ、1個または2個有することが好ましい。
ピペラジン系誘導体は、好ましくは下記式(I)で表すことができる。
式(I)中、X
3 、X
4 、X
5 、X
6 は、互いに独立に、水素原子または炭素数3~30の一価の炭化水素基であり、X
1 、X
2 は、互いに独立に、水素原子、-A
1 -R
2 、-R
2 、-(R
3 -O)
n -H、スルホン系保護基、カルバメート系保護基からなる群から選ばれる1つであり、X
1 、X
2 の少なくとも1つは、-A
1 -R
2 または-R
2 である。-R
2 は、炭素数3~30の1価の炭化水素基であり、A
1 は、カルボニル基または-R
4 (OH)-O-である。R
3 は、炭素数2~3の2価の炭化水素基、R
4 は、炭素数3~30の3価の炭化水素基である。nは1~10、好ましくは1~5の数である。上記式(I)において炭素数3~30の1価の炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状の脂肪族炭化水素基が好ましい。
上記式(I)において、スルホン系保護基として、例えばメタンスルホニル基、トシル基およびノシル基が挙げられる。また、カルバメート系保護基として、例えばtert-ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基および9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基が挙げられる。
ピペラジン系誘導体としては、例えば下記式で表される化合物を挙げることができる。
上記式中、Rは、互いに独立に-C
12H
25または-C
13H
27を表す。
上記式中、nは、2~10、好ましくは2~5の数である。
上記式中、Rは、-C
12H
25または-C
13H
27を表し、これらピペラジン系誘導体の混合物でもよい。
モルホリン系誘導体、チオモルホリン系誘導体は、好ましくは下記式(II)で表すことができる。
式(I)中、X
3 、X
4 、X
5 、X
6 は、互いに独立に、水素原子または炭素数3~30の1価の炭化水素基であり、X
7 は、酸素原子または硫黄原子であり、X
1 は、-A
1 -R
2 または-R
2 である。-R
2 は、炭素数3~30の1価の炭化水素基であり、A
1 は、カルボニル基または-R
4 (OH)-O-であり、R
4 は、炭素数3~30の3価の炭化水素基である。上記式(II)において炭素数3~30の1価の炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状の脂肪族炭化水素基が好ましい。
モルホリン系誘導体としては、例えば下記式で表される化合物を挙げることができる。
上記式中、Rは、-C
12H
25または-C
13H
27を表し、これらモルホリン系誘導体の混合物でもよい。
チオモルホリン系誘導体としては、上記モルホリン系誘導体の環における酸素原子を硫黄原子に置き換えた化合物を例示することができる。
上述したピペラジン系誘導体、モルホリン系誘導体、チオモルホリン系誘導体からなる環状アミン系化合物の製造方法は、特に制限されるものではなく、通常の製造方法により得ることができる。例えば、置換基を有してもよいピペラジン、モルホリンおよびチオモルホリンからなる群から選ばれる少なくとも1種と、ハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素等)、酸ハロゲン基(酸塩化物基、酸臭化物基、酸ヨウ化物基等)およびグルシジルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する、炭素数3~30の炭化水素化合物とを、必要に応じて溶媒中で、反応させることによって得ることができる。置換基は上記と同様である。上記炭化水素化合物が有する炭素数3~30の炭化水素基は上記と同様である。また、(ポリ)オキシアルキル基を有するピペラジン系誘導体の製造方法としては、例えばヒドロキシ基を有するピペラジン系誘導体と、アルキレンオキサイドとを、金属アルコキシドの存在下で反応させる方法が挙げられる。
タイヤ用ゴム組成物において、環状アミン系化合物の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.5質量部~10質量部、更に好ましくは0.8質量部~5質量部であるとよい。環状アミン系化合物の配合量を0.5質量部以上にすることにより、タイヤにしたとき転がり抵抗性を小さくし、ウェットグリップ性能を高くすることができる。
シラン系化合物として、アルキルアルコキシシランを例示することができ、例えばモノアルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルモノアルコキシシランが挙げられる。なかでもアルキルトリアルコキシシランが好ましく、アルキルトリエトキシシランがより好ましい。アルキルアルコキシシランを配合することによりシリカの凝集やゴム組成物の粘度上昇を抑制し、ウェットグリップ性能をより優れたものにすることができる。
アルキルトリエトキシシランは、好ましくは炭素数3~20のアルキル基、より好ましくは炭素数7~20のアルキル基を有するとよい。炭素数3~20のアルキル基として、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基が挙げられる。なかでもジエン系ゴムとの相溶性の観点から、炭素数8~10のアルキル基がより好ましく、オクチル基、ノニル基がさらに好ましい。
アルキルトリエトキシシランの配合量は、シリカ配合量に対し、好ましくは0.5質量%~10質量%、より好ましくは2質量%~6質量%であるとよい。アルキルトリエトキシシランの配合量が0.5質量%未満であると、シリカの凝集を抑制する効果や、ゴム組成物の粘度上昇を抑制する効果が十分に得られない。またアルキルトリエトキシシランの配合量が10質量%を超えると、ゴム組成物の調製時にロールへの滞留が多くなる。またゴム組成物の転がり抵抗が大きくなり耐摩耗性が低下する虞がある。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲内で配合することができる。またかかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
表2に示す配合を有するゴム組成物1について、製造方法を異ならせてタイヤ用ゴム組成物の製造を行った。表2のゴム組成物の配合は、ジエン系ゴム(SBR1およびSBR2の合計)100質量部に対する配合量を記載し、各成分の略号および第一段階および第二段階、最終段階のいずれの混合工程でミキサーに投入したかを記載した。第一段階の混合では、表2の「第一段階の混合」「第二段階の混合」の欄に記載した各成分の全量をミキサー(容量1.7リットルの密閉式バンバリーミキサー、神戸製鋼社製)に表1に示す「1番目の投入」「2番目の投入」「3番目の投入」および「4番目の投入」の順番で投入し混練し、混練物(第一段階のゴム)を得、ミキサーから放出して冷却した。冷却の後、混練物を再度ミキサーに投入し、表2の「最終段階の混合」の欄に記載した各成分を投入し混合することにより、6種類の製造方法でゴム組成物を調製した(実施例1,3~5、標準例、比較例1)。尚、実施例2のゴム組成物は、上述の製造方法においてSBR2を第一段階の2番目の投入に加えず、第一段階の混合物(第一段階のゴム)をミキサーから放出して冷却した後、混練物(第一段階のゴム)を再度ミキサーに投入し、表2の「第二段階の混合」の欄に記載した各成分を投入し混合し、混練物を得、ミキサーから放出して冷却した。この後の最終段階の混合は、上述の方法と同じであり、これにより実施例2のゴム組成物を調整した。
バンバリーミキサーの温調は、60℃に設定した状態で、各種原料の温度は、常温(23℃)で混合を開始する。第一段階の混合において、混合条件として、1番目に投入した成分の混合時間及びの混合完了後の温度と2番目に投入した成分の混合開始温度を表1および2に記載した。2、3番目に投入した成分の混合時間は、それぞれ1分間とした。なお第一段階の混合および第二段階の混合で得られた混練物を機外での空冷は23℃になるまで冷却し、加硫剤を配合した後の混合は、バンバリーミキサーで1.5分間とした。
得られたタイヤ用ゴム組成物を、所定形状の金型(内寸;長さ150mm、幅150mm、厚さ2mm)を用いて170℃、10分間加硫し、加硫ゴム試験片を作成した。得られた加硫ゴム試験片を使用して、以下に示す試験方法でウェット性能、転がり抵抗性および耐摩耗性を測定した。
ウェット性能および転がり抵抗性[0℃および60℃のtanδ]
得られた加硫ゴム試験片の動的粘弾性を、岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーターを用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度0℃および60℃の条件にて測定し、tanδ(0℃)およびtanδ(60℃)を求めた。得られた結果は、標準例の値をそれぞれ100にする指数として表1の「ウェット性能」および「転がり抵抗性」の欄に記載した。ウェット性能の指数が大きいほどtanδ(0℃)が大きくウェットグリップ性能が優れることを意味する。また転がり抵抗性の指数が小さいほどtanδ(60℃)が小さく低発熱性であり、タイヤにしたとき転がり抵抗が小さいことを意味する。
耐摩耗性
得られた加硫ゴム試験片をJIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を使用して、温度20℃、荷重39N、スリップ率30%、時間4分の条件で摩耗量を測定した。得られた結果は標準例の逆数を100にする指数として表1の「耐摩耗性」の欄に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性が優れることを意味する。
表2において、使用した原材料の種類は、以下の通りである。
・SBR1:スチレンブタジエンゴム(未変性品)、JSR社製JSR HP755B
・SBR2:変性スチレンブタジエンゴム、旭化成社製TUFDENE E581
・カーボンブラック:キャボットジャパン社製ショウブラックN339
・シリカ:ローディア社製ZEOSIL 1165MP(CTAB吸着比表面積が159m2 /g)
・シランカップリング剤:スルフィド系シランカップリング剤、Evonik Degussa社製Si69、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
・老化防止剤1:Solutia Europe社製Santoflex 6PPD
・老化防止剤2:Nocil Limited社製PILNOX TDQ
・アロマオイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粒硫黄(硫黄の含有量95.24質量%)
・加硫促進剤1:住友化学社製ソクシノールD‐G(DPG)
・加硫促進剤2:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ‐G(CZ)
表1から明らかなように実施例1~5の製造方法により得られたゴム組成物は、ウェットグリップ性能(0℃のtanδ)、低転がり抵抗性(60℃のtanδ)および耐摩耗性を改良することが確認された。
一方、比較例1で得られたゴム組成物は、第一段階の混合においてミキサーへの1番目の投入、混合をSBRだけとし、シリカおよびシランカップリング剤を1番目に投入しなかったので、シリカとシランカップリング剤が十分に反応せずウェット性能、転がり抵抗性能を改良することができず、耐摩耗性が悪化した。