JP7072779B2 - 細胞間質液酸性化予防用組成物 - Google Patents
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Description
糖尿病患者においては、細胞間質液のpHが低下し、インスリン抵抗性が生み出されると考えられている。また、記憶機能において重要な役割を果たす脳内の重要な領域である海馬周辺の細胞間質液のpHの低下が、アルツハイマー型認知症の原因の1つであると考えられている(非特許文献1、2)。
[1]梅エキスを含有することを特徴とする、細胞間質液酸性化予防用組成物。
[2]ムメフラールを含有することを特徴とする、前記[1]に記載の細胞間質液酸性化予防用組成物。
[3]クエン酸及び/又はリンゴ酸を含有することを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]前記細胞間質液が脳海馬付近の細胞間質液であることを特徴とする、前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]アミロイドβタンパク質蓄積予防用であることを特徴とする、前記[4]に記載の組成物。
[6]アルツハイマー型認知症治療又は予防用であることを特徴とする、前記[4]又は[5]に記載の組成物。
[7]血中中性脂肪上昇抑制用であることを特徴とする、前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[8]腸管カルボン酸輸送体発現促進用であることを特徴とする、前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[9]空腹時血糖値改善用、血漿インスリン値改善用、インスリン抵抗性改善用及び脾臓β細胞保護作用増強用からなる群から選択される少なくとも1種の用途に用いられることを特徴とする、前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[10]前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物を含有し、認知機能を維持する旨の表示を付した認知機能維持用飲食品。
[11]前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物が認知機能を維持することを記載した説明書と共にパッケージした認知機能維持用製品。
[12]前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物を含有し、血中中性脂肪の上昇を抑える旨の表示及び/又は血糖値の上昇を抑制する旨の表示を付した飲食品。
[13]前記[1]~[3]のいずれかに記載の組成物が、血中中性脂肪の上昇を抑えること及び/又は血糖値の上昇を抑制することを記載した説明書と共にパッケージした製品。
本発明における梅エキスには、さらに、クエン酸が含まれていることが好ましい。当該梅エキス全体に対するクエン酸含有割合は、例えば、約1~80質量%であることが好ましく、約10~70質量%であることがより好ましく、約20~60質量%であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、より優れた本発明の効果が奏され得る。
さらに、本発明における梅エキスには、リンゴ酸が含まれていることが好ましい。当該梅エキス全体に対するリンゴ酸の含有割合は、例えば、約1~20質量%であることが好ましく、約2~10質量%であることがより好ましく、約4~9質量%であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、より優れた本発明の効果が奏され得る。
さらに、本発明における梅エキスには、ヒト又は動物の体内に摂取された後に、カルボキシル基イオンの供給源となる有機酸及び/又はヒドロキシメチルフルフラール誘導体等が含まれていることが好ましい。このような有機酸としては、上記したクエン酸、リンゴ酸以外には、例えば、シュウ酸、コハク酸、フマル酸等が好ましく、ヒドロキシメチルフルフラール誘導体としては、上記したムメフラール(mumefural: 1-[5-(2-formylfuryl)methyl]-dihydrogen 2-hydroxypropane-1,2,3-tricarboxylate)以外には、好ましくは、2-[5-(2-formylfuryl)methyl]dihydrogen 2-hydroxypropane-1,2,3-tricarboxylate、1-[5-(2-formylfuryl)methyl]hydrogen 1-hydroxyethane-1,2-dicarboxylate、2-[5-(2-formylfuryl)methyl]hydrogen 1-hydroxyethane-1,2-dicarboxylate等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらのヒドロキシメチルフルフラール誘導体は、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)と有機酸がエステル結合したものであり、ヒト又は動物の体内に摂取された後、加水分解される。すなわち徐放性のカルボキシル基イオンの供給源となる。
本発明の組成物中、梅エキスの含有量は、本発明の効果が発揮される範囲であれば、特に限定されないが、組成物100質量%中、例えば、約0.001~100質量%の範囲であってよく、好ましくは、約1~100質量%、より好ましくは、約10~100質量%である。
また、本開示は、本発明の組成物を含有し、血中中性脂肪の上昇を抑える旨の表示及び/又は血糖値の上昇を抑える旨の表示を付した飲食品又は血中中性脂肪の上昇を抑えること、血糖値の上昇を抑えることを記載した説明書と共にパッケージした製品を包含する。
あるいは、本発明の組成物を含有し、認知機能を維持する旨の表示を付した認知機能維持用飲食品又は認知機能を維持することを記載した説明書と共にパッケージした認知機能維持用製品を包含する。
本発明においては、ヒト、特に好ましくは2型糖尿病患者又は糖尿病モデルにおいて、低下している細胞間質液のpHを改善又は上昇させることによって、インスリン抵抗性を改善することが出来る。詳細は不明であるが、細胞間質液のpH上昇の分子メカニズムの1つとして、有機弱酸の構成成分であるプロトン(H+)とカルボキシル基イオン(RCOO-)のうち、カルボキシル基イオン(RCOO-)のみが体内に吸収され、プロトン(H+)が体内に吸収されないことによって、RCOO-が体内において、pH緩衝剤として作用し、細胞間質液のpHを上昇させることが出来ると考えられる。なお、本明細書においては、細胞間質液のpHを上昇させることを、細胞間質液の酸性化を予防する、又は細胞間質液のアルカリ化に働く、と言うこともある)。
本発明のムメフラール及びクエン酸等を含む梅エキス含有組成物を投与した場合に、細胞間質液のpHは、7.3あるいはそれ以上のレベルに上昇することが好ましく、さらに好ましくは、細胞間質液のpHが7.4にまで上昇することであるが、これらに限定されない。
詳細は不明であるが、本発明の梅エキス含有組成物において、ムメフラール、さらにはムメフラール以外の成分(例えば、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸、ヒドロキシメチルフルフラール誘導体等)が含まれることによって、細胞間質液の酸性化を防止または抑制することが出来ると考えられる。また、詳細は不明であるが、本発明の梅エキス含有組成物には、好ましくは、カルボキシル基イオンの供給源となる成分が複数含まれるため、個々の成分のカルボキシル基イオンの解離形態が多様なものとなり、本発明の組成物に含まれる成分の徐放性や、本発明の組成物がもたらす優れた効果の持続性において優れるものと考えられる。
糖尿病患者においては、症状の悪化/改善を示すパラメータとして、例えば、空腹時血糖値、血漿インスリン値又はインスリン抵抗性を測定することなどが、慣行である。
本発明における空腹時血糖値について、空腹時とは、例えば、食間のことであって、好ましくは、食後3時間経過後、より好ましくは、5時間経過後、次回の食事までの間の状態のことであるか、胃に食物がほとんどない状態であってもよい。
正常なヒトや動物における空腹時血糖値は、例えば、ヒトの場合、80~100mg/dL、ラットの場合80~100mg/dLであるが、糖尿病状態のヒトや動物における空腹時血糖値は、例えば、ヒトの場合、126mg/dL、ラットの場合140mg/dL以上である。本発明の組成物を投与した場合、投与しない場合に比べ、空腹時血糖値が下がることが好ましい。具体的には、空腹時血糖値が80~100mg/dL程度に下がることが好ましい。
血圧は、例えば、テールカフ法やテレメトリー法、麻酔法、シーベル法等、当分野の公知の方法で測定することが出来る。血圧の測定は、収縮期血圧又は拡張期血圧、好ましくは、収縮期血圧が本発明の組成物投与前と比較して減少している場合に、本発明の組成物は血圧を低下させる効果を有する。
正常なヒトや動物における収縮期血圧値は、例えば、ヒトの場合、100mmHg~120mHg、ラットの場合、140mmHg~150mmHgであるが、糖尿病状態のヒトや動物における収縮期血圧値は、例えば、ヒトの場合、130mmHg以上になり、ラットの場合、160mmHg以上になることが多い。本発明の組成物を投与した場合、投与しない場合に比べ、収縮期血圧値が下がることが好ましい。具体的には、好ましくは、ヒトの場合収縮期血圧値が120mmHg程度に下がる。
脳海馬周囲の細胞間質液pH測定方法は、例えば、非特許文献2等に記載されており、当分野において十分確立されているので、それに従ってよい。本発明の組成物を投与した場合、投与しない場合に比べ、脳海馬周囲の細胞間質液pHの酸性化が抑制される。例えば、本発明の組成物を投与した場合に、脳海馬周囲の細胞間質液のpHは、7.30以上に上昇するが、好ましくは、pHが7.35程度にまで上昇する。しかしこれらに限定されない。
アルツハイマー型認知症の一つの原因として、アミロイドβタンパク質(以下、Aβともいう。)やタウの凝集等が知られている。これらの蛋白質の凝集を抑制する物質は、病気の根本治療に役立つ可能性がある。詳細は不明であるが、本発明の梅エキス含有組成物において、ムメフラール及び/又はムメフラール以外の梅エキス由来成分(例えば、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸、ヒドロキシメチルフルフラール誘導体等)が含まれることによって、アミロイドβタンパク質の蓄積を防止または抑制することが出来ると考えられている。
ヒトにおいて、空腹時、例えば、食後12時間以上経って血液中に中性脂肪値が150mg/L以上になっている場合、高脂血症と判断される。中性脂肪値が150~300mg/Lは軽度、300mg/L以上は中度、600mg/L以上は重度の高肪血症である。また、中性脂肪は、肝臓で増え過ぎれば脂肪肝に、皮下組織で増え過ぎれば肥満につながるため、中性脂肪量を調べることは、様々な病気の温床を断つことにもつながる。
詳細は不明であるが、本発明の梅エキス含有組成物において、ムメフラール及び/又はムメフラール以外の成分(例えば、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸、ヒドロキシメチルフルフラール誘導体等)が含まれることによって、血中中性脂肪値を低下させることが出来ると考えられている。
カルボン酸輸送体(カルボン酸トランスポーター)は、乳酸の輸送を媒介する輸送体であり、生体における嫌気的解糖の最終生成物である乳酸の維持に寄与する。カルボン酸輸送体において認識され細胞内に取り込まれる有機酸化合物としては、乳酸、ピルビン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、ニコチン酸、サリチル酸、安息香酸、パラアミノ安息香酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、フマル酸等が挙げられるがこれらに限定されない。
カルボン酸輸送体は体内の様々な箇所にみられるが、そのような箇所として、例えば、腸管(小腸、大腸)、腎尿細管、肝臓、神経等が挙げられる。本発明においては、好ましくは、腸管に存在するカルボン酸輸送体を指す。カルボン酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等であってよいが、モノカルボン酸であることが好ましい。
なお、本発明のカルボン酸輸送体は、当該輸送体がナトリウムイオンやカリウムイオンとカップリングしていることが好ましい。本発明が目的とする効果を効率よく得るためには、プロトンが体内に吸収されず、細胞間質液のアルカリ化に働くことが好ましいためである。
詳細は不明であるが、本発明の梅エキス含有組成物において、ムメフラール及び/又はムメフラール以外の成分(例えば、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸、ヒドロキシメチルフルフラール誘導体等)が含まれることによって、カルボン酸輸送体の量を増加または働きを向上させることが出来ると考えられている。
青梅1000kgを洗浄し、搾汁機(紀比機械製)を用いて青梅の果汁を含んだ果肉(890kg)と梅種(95kg)を分離(クッカー処理およびパルパー処理)し、不要物をとり除いた。得られた果汁を含んだ果肉を、スクリューデカンタ型遠心分離機(IHI製、2000rpm)で処理することにより、梅果汁(678kg)と梅果肉(195kg)に分離した。得られた梅果汁を蒸練機(株式会社ヤエス製、サン二重釜SQPV-800)を用いて95度で練り上げて水分を蒸発させることにより、梅エキス(50kg)を得た。この梅エキス中には、100gあたり36.6gのクエン酸が含まれる。
実験動物として、生後6週齢の正常Long-Evans Tokushima Otsuka Rat(LETO)ラットおよびOtsuka Long-Evans Tokushima Rat(OLETF)ラットを用いた(清水実験材料株式会社)。LETOラットおよびインスリン非依存性糖尿病の自然発症モデルとして知られる公知のモデル動物であるOLETFラットを標準飼料(AIN-93)で4週間予備飼育した後、それぞれ2群(n=6)ずつに分け、1.Control食を給餌するLETO-cont群、2.OLETF-cont群、3.梅エキス5%混餌を給餌するLETO-ume群、4.梅エキス5%混餌を給餌するOLETF-ume群とした。室温22±2℃及び12時間毎の明暗サイクルの環境下、吸水は自由摂取とした。尚、梅エキス5%混餌は、クエン酸1.8%混餌に相当する。
8週間後、LETOラットおよびOLETFラットは、体重及び血圧測定、さらに、以下の試験例以下で述べるpH測定、腹部大静脈からの採血等を行った後、安楽死させた。本試験は、日本動物愛護協会のガイドラインに沿って行われ、京都府立医科大学の委員会の承認も得て行った。
10~35週齢のラットの体重は図1に記載のとおりである。OLETFラットにおいては、LETOラットより体重が多いが、これは、OLETFラットは、正常な対照ラットと比較して体脂肪の蓄積を特徴とするからであり、これは一般にインスリン抵抗性の発生における主要な原因として認識されている(非特許文献2)。
LETOラットおよびOLETFラットの空腹時血糖値は、グルテスト(三和化学研究所)を用いて測定した。採血後すぐに、各ラットの血液を4℃で遠心分離(3500g、15分)した。
血漿サンプル(遊離脂肪酸、ケトン体)の分析は、株式会社ファルコバイオシステムズに委託して行った。インスリンは、インスリン測定キット(メルコディア)で検出した。吸光はマイクロプレートリーダーで測り、濃度は検量線より求めた。
なお、インスリン抵抗性(HOMA-IR)は、上記で測定したインスリン濃度及び空腹時血糖値に基づき、以下の計算式にて求めた。
インスリン及びインスリン抵抗性の測定結果は図3に記載の通りである。すなわち、梅エキスを含む本発明の組成物が投与された糖尿病ラット(OLETF-ume群)における34週経過後のインスリン及びインスリン抵抗性は、梅エキスが投与されない糖尿病ラット(OLETF-Cont群)に対し、それぞれ、約0.3μG/L(約30%)、約3.5(約40%)低下した。従って、本発明の組成物の投与により、糖尿病ラットにおけるインスリン及びインスリン抵抗性を低下させることが出来た。
ラットの血圧は、収縮期血圧を、起床時にテールカフ(Tail Cuff)法で測定した(MK-2000, 室町機械株式会社)。測定結果は、図4に示す通りである。本発明の組成物の投与により、糖尿病ラットにおいて、約200mmHg(約14%)程度血圧を低下させることが出来た。
脳海馬周囲の細胞間質液のpH測定は非特許文献2の方法に従って行った。すなわち、ラット麻酔下、アンチモン製pH電極(ケミカル機器株式会社)を用いて測った。PH測定は、電極導入後60分及び90分後に行った。結果は、図5に示す通りである。本発明の組成物の投与により、糖尿病ラットにおいて、脳海馬周囲の細胞間質液のpHを0.2程度上昇させた。すなわち、脳海馬周囲の細胞間質液の酸性化を抑制した。
ラットの脳において、Iwatsuboらの方法(Neuron 13:45-53, 1994)により、アミロイドβタンパクの蓄積量(Aβ-42 FA fraction(pmol/g tissue))を測定した。結果は、図6に示す通りである。本発明の組成物の投与により、糖尿病ラットにおいて、アミロイドβタンパク蓄積を約40%程度低減させた。
カルボン酸輸送体の量は、ラットの腸管(小腸)において、Martinらの方法(Invest Ophthalmol Vis Sci. 48:3356-63, 2007)により、モノカルボン酸輸送体量(SMCT1/β アクチン)を測定することにより行った。結果は、図7に示す通りである。本発明の組成物の投与により、糖尿病ラットにおいて、腸管(小腸)でのモノカルボン酸輸送体の発現を約30%程度上昇させた。
血中中性脂肪は、Tanigawaraらの方法(Chem Pharm Bull (Tokyo) 30:2174-2180, 1982)で、TG(トリグリセリド、単位:mg/dL)を測定することにより行った。結果は、図8に示す通りである。本発明の組成物の投与により、糖尿病ラットにおいて、血中中性脂肪(トリグリセリド)量を約30%程度減少させた。
当分野で公知の方法を用いて、例えば、以下の表1~3のような組成物を常法に従って調製可能である。
Claims (5)
- ムメフラールを含む梅エキスを含有する、腸管カルボン酸輸送体発現促進用組成物。
- さらに、腸管カルボン酸輸送体が、乳酸の維持に寄与することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
- さらに、細胞間質液の酸性化予防用であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
- 前記細胞間質液が脳海馬付近の細胞間質液であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
- さらに、アミロイドβタンパク質蓄積予防用であることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
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第1回関西公立私立医科大学・医学部連合シンポジウム, 京都府立医科大学, H29.2.6 |
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