JP7072173B2 - 菌体付着対策方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの重合体または共重合体等の超親水性材料からなる抗菌性材料が開示されている。
[1] 菌体の大きさの5倍よりも周期が小さい微細凹凸構造を表面に有し、
前記微細凹凸構造側の表面が撥水性であり、
前記微細凹凸構造が、硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
かつ、前記微細凹凸構造が、微細凹凸構造を有するモールドから転写して得られる構造である、菌体低付着性物品。
[2] 菌体の大きさの5倍よりも周期が小さい微細凹凸構造を表面に有し、
前記微細凹凸構造側の表面が親水性であり、
前記微細凹凸構造が、硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
かつ、前記微細凹凸構造が、微細凹凸構造を有するモールドから転写して得られる構造である、菌体低付着性物品。
[3] 前記微細凹凸構造が、親水性単官能モノマーを含む組成物の硬化物からなる、[2]に記載の菌体低付着性物品。
[4] 前記親水性単官能モノマーが、(メタ)アクリルアミド誘導体、単官能アミド類、およびエステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[3]に記載の菌体低付着性物品。
[5] 前記周期が菌体の大きさ以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の菌体低付着性物品。
[6] 前記周期が50nm以上4μm以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の菌体低付着性物品。
[7] 菌体の付着を低減したい箇所に、[1]~[6]のいずれか1つに記載の菌体低付着性物品を設ける、菌体付着対策方法。
本明細書において、「活性エネルギー線」は、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。
図1~4において、説明の便宜上、寸法比は実際のものと異なったものである。また、図4において、図1と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
菌体の形状としては特に制限されず、球状、楕円状、およびそれら以外の他の形状などが挙げられる。他の形状の菌体としては、菌糸状の菌体や、鞭毛、繊毛などを有する菌体が挙げられる。例えば、ストレプトコッカスおよびスタフィロコッカスは球状の菌体である。大腸菌および緑膿菌は楕円状の菌体であるが、鞭毛および/または繊毛を有する場合もある。サッカロマイセスは球状または楕円状の菌体である。カンジタ菌は球状かつ菌糸状の菌体である。
なお、本明細書における菌体の大きさは、以下のように定義する。すなわち、菌体が球状の場合、菌体の大きさとは菌体の直径のことである。菌体が楕円状または菌糸状の場合、菌体の大きさとは菌体の短径のことである。菌体が鞭毛や繊毛を有する場合、これらの長さは考慮しない。
菌体低付着性物品とは、物品本体の表面に菌体の大きさの5倍よりも周期が小さい微細凹凸構造が形成されたものであり、菌体が接触しても表面に留まりにくい(付着しにくい)特性を有する。以下、菌体が付着しにくいことを「撥菌」ともいう。
物品本体としては、フィルムや各種成形体(例えば、ドアノブ、扉、つり革などの人の手が触れる箇所を構成する部材)が挙げられる。物品本体の材質としては特に制限されず、樹脂、金属、ガラスなどが挙げられる。
以下、フィルム状の物品本体の表面に微細凹凸構造が形成された菌体低付着性物品を例にとり、本発明について説明する。
基材フィルム12の材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、ポリエステル、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、脂環式ポリオレフィン、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ガラス等が挙げられる。基材は、フィルムに限定されず、シート、射出成形品等であってもよい。
硬化樹脂層16は、後述の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる膜であり、複数の凸部14からなる微細凹凸構造を表面に有する。
しかも、微細凹凸構造の周期、すなわち、隣り合う凸部14間の平均間隔Pは、菌体の大きさの5倍よりも小さい(すなわち、「周期<(菌体の大きさ×5)」の関係を満たす。)。微細凹凸構造の周期が菌体の大きさの5倍よりも小さければ、微細凹凸構造の凸部14間に存在する凹部内に菌体が入り込みにくく、また凹部内に菌体が入り込んでも留まりにくくなるので、撥菌効果が十分に得られる。
微細凹凸構造の周期は、電子顕微鏡観察によって、隣接する凸部14間の間隔(凸部14の中心から隣接する凸部14の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
凸部14の高さHは、電子顕微鏡観察によって、凸部14の最頂部と、凸部14間に存在する凹部の最底部との間の距離を50点測定し、これらの値を平均したものである。
微細凹凸構造側の表面の含水率は、微細凹凸構造の材料の架橋密度や材質により調節できる。例えば、微細凹凸構造の材料に親水性単官能モノマーを配合したり、材料の架橋密度を下げたりすると、含水率は高くなる傾向にある。
微細凹凸構造側の表面の含水率は、微細凹凸構造の材料を用いて試験膜を形成し、この試験膜を25℃の純水中で2週間以上放置した後の重量と、純水中で放置した後の試験膜を温度25℃、湿度50%RHの室内に2週間放置した後の重量(乾燥重量)とから、重量変化率を計算して求められる。なお、基材フィルム12から硬化樹脂層16を剥離し、剥離した硬化樹脂層16を試験膜の代わりに用いることでも、含水率を求めることができる。また、この手法以外にも、調湿塩法や動的水蒸気吸脱着測定を行うことでも、含水率を求めることができる。
図1に示す菌体低付着性物品10は、例えば、図2に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。
複数の細孔(図示略)を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール状のモールド20の表面と、モールド20の回転に同期してモールド20の表面に沿って移動する帯状の基材フィルム12の表面との間に、タンク22から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物24を供給する。
剥離ロール32により、硬化樹脂層16が表面に形成された基材フィルム12を剥離することによって、菌体低付着性物品10を得る。
モールド20は、特に限定されず、リソグラフィ法やレーザー加工によって凹凸構造を設けたモールド、陽極酸化アルミナを表面に有するモールド等が挙げられるが、安価に大面積化することを考えると、陽極酸化アルミナを表面に有するモールドが好ましい。陽極酸化アルミナを表面に有するモールドは、大面積化が可能であり、作製が簡便である。
(a)アルミニウム基材を電解液中、陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)アルミニウム基材を電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)細孔の径を拡大させる工程。
(e)工程(d)の後、電解液中、再度陽極酸化する工程。
(f)前記工程(d)と工程(e)を繰り返し行う工程。
図3に示すように、アルミニウム基材34を陽極酸化すると、細孔36を有する酸化皮膜38が形成される。陽極酸化で形成される細孔の規則性は初期の段階ではきわめて低いが、陽極酸化を長時間行うことで細孔の規則性が向上する。処理時間(陽極酸化時間)は5分以上が好ましく、15分以上がより好ましい。ただし、陽極酸化を長時間行うと細孔の規則性は向上するが、比較的細孔が深くなる傾向にあるので、工程(b)の処理を行い、規則的な細孔の形成のための発生点として用いる。規則性を期待せず細孔を形成するのみであれば、所望の細孔深さとなるまでの処理時間を適宜設定すればよい。
アルミニウムの純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりすることがある。
電解液としては、硫酸、シュウ酸水溶液、リン酸水溶液等が挙げられる。
図3に示すように、酸化皮膜38を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点40にすることで細孔の規則性を向上することができる。
図3に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム基材34を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔36を有する酸化皮膜38が形成される。
電解液としては、工程(a)と同様のものが挙げられる。
図3に示すように、細孔36の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
図3に示すように、再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔36の底部から下に延びる、直径の小さい円柱状の細孔36がさらに形成される。
電解液としては、工程(a)と同様のものが挙げられる。
図3に示すように、工程(d)の細孔径拡大処理と、工程(e)の陽極酸化を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔36を有する陽極酸化アルミナ(アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト))が形成されたモールド20が得られる。最後は工程(d)で終わることが好ましい。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合性化合物および重合開始剤を含む。
重合性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、非反応性のポリマー、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物を含んでいてもよい。
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルイソブチルアミド、N-ビニルアシルアミド系モノマー等の単官能アミド類などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。
R11 xSi(OR12)y ・・・(1)
ただし、R11、R12は、それぞれ炭素数1~10のアルキル基を表し、x、yは、x+y=4の関係を満たす整数を表す。
R21O[Si(OR23)(OR24)O]zR22 ・・・(2)
ただし、R21~R24は、それぞれ炭素数1~5のアルキル基を表し、zは、3~20の整数を表す。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、徐放性の点からは、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物は疎水性であっても親水性であっても効果は得られる。
菌体低付着性物品の微細凹凸構造側の表面に親水性を付与する場合には、親水性の材料を形成しうる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、4官能以上の多官能(メタ)アクリレート、2官能以上の親水性(メタ)アクリレート、望ましくは単官能モノマーを含む組成物(親水性材料)を用いることが好ましい。
菌体低付着性物品の微細凹凸構造側の表面が親水性であれば、すなわち、微細凹凸構造が親水性材料より形成されていれば、優れた撥菌性を長時間発揮できる。加えて、低濃度の菌体に対してはもちろんのこと、高濃度の菌体に対しても優れた撥菌性を発揮できる。
ここで、親水性とは、菌体低付着性物品の微細凹凸構造側の表面の水接触角が90°以下であることを意味する。また、水接触角は、菌体低付着性物品の微細凹凸構造側の表面に1μLのイオン交換水を滴下し、θ/2法にて算出される値である。
菌体低付着性物品の微細凹凸構造側の表面の水接触角は、より優れた撥菌性を持続できる点で、60°以下であることが好ましい。
ここで、平滑面とは、JIS B 0601:1994の規格に基づき、算術平均粗さRaが10nm以下であることを意味する。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、5官能以上の多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートにおいて、一分子内に存在するポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位の合計は、6~40が好ましく、9~30がより好ましく、12~20が特に好ましい。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が6以上であれば、親水性が十分となり、防汚性が向上する。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が40以下であれば、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとの相溶性が良好となり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が分離しにくい。
親水性単官能モノマーとしては、M-20G、M-90G、M-230G(新中村化学社製)、MPE400A、MPE550A(大阪有機化学社製)等のエステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレート(すなわち、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート);ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のエステル基に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体等;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルイソブチルアミド、N-ビニルアシルアミド系モノマー等の単官能アミド類;メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート等のカチオン性モノマー類などが挙げられる。
また、単官能モノマーとして、ビニルピロリドン等の粘度調整剤、基材への密着性を向上させるアクリロイルイソシアネート類等の密着性向上剤等を用いてもよい。
菌体低付着性物品の微細凹凸構造側の表面に撥水性を付与する場合には、疎水性の材料を形成しうる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、フッ素含有化合物またはシリコーン系化合物を含む組成物(疎水性材料)を用いることが好ましい。
菌体低付着性物品の微細凹凸構造側の表面が撥水性であれば、すなわち、微細凹凸構造が疎水性材料より形成されていれば、低濃度の菌体に対して優れた撥菌性を発揮できる。
ここで、撥水性とは、菌体低付着性物品の微細凹凸構造側の表面の水接触角が90°超であることを意味する。
フッ素含有化合物としては、下記式(3)で表されるフルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。
-(CF2)n-X ・・・(3)
ただし、Xは、フッ素原子または水素原子を表し、nは、1以上の整数を表し、1~20が好ましく、3~10がより好ましく、4~8が特に好ましい。
フルオロアルキル基置換ビニルモノマーとしては、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリレート、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリルアミド、フルオロアルキル基置換ビニルエーテル、フルオロアルキル基置換スチレン等が挙げられる。
CH2=C(R41)C(O)O-(CH2)m-(CF2)n-X ・・・(4)
ただし、R41は、水素原子またはメチル基を表し、Xは、水素原子またはフッ素原子を表し、mは、1~6の整数を表し、1~3が好ましく、1または2がより好ましく、nは、1~20の整数を表し、3~10が好ましく、4~8がより好ましい。
(Rf)aR51 bSiYc ・・・(5)
加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、R52C(O)O(ただし、R52は、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。)等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、iso-プロピルオキシ基、ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、Cl、Br、I等が挙げられる。
R52C(O)Oとしては、CH3C(O)O、C2H5C(O)O等が挙げられる。
ポリ(オキシアルキレン)基としては、下記式(6)で表される基が好ましい。
-(OR61)p- ・・・(6)
ただし、R61は、炭素数2~4のアルキレン基を表し、pは、2以上の整数を表す。
R61としては、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH(CH3)-等が挙げられる。
シリコーン系化合物としては、(メタ)アクリル酸変性シリコーン、シリコーン樹脂、シリコーン系シランカップリング剤等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸変性シリコーンとしては、X-22-1602(信越化学工業社製)等のシリコーン(ジ)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
以上説明した本発明の菌体低付着性物品にあっては、菌体の大きさの5倍よりも周期が小さい微細凹凸構造を表面に有するため、菌体が付着しにくい。しかも、本発明の菌体低付着性物品は、その表面の構造により撥菌性を発現しているので、微細凹凸構造を形成できる材料であれば、その種類が制限されない。よって、本発明の菌体低付着性物品は、超親水性材料を用いて撥菌性を発現する場合に比べて材料の選択性が広い。
本発明の菌体低付着性物品は、菌体の付着を低減したい箇所において広範に利用されることが予想される。例えば菌体低付着性物品が図1に示すようなフィルム状の場合、菌体の付着を低減したい箇所(例えばドアノブ、扉、つり革、手すり、チャイルドシート、自動車,電車,船舶,飛行機等の移動体の内装材、水槽の内壁等)に本発明の菌体低付着性物品を貼着するだけで、菌体の付着を抑制できる。なお、フィルム状の菌体低付着性物品を「撥菌フィルム」ともいう。
また、本発明の菌体低付着性物品は医療用機器に使用できる。例えば、本発明の菌体低付着性物品を人工臓器やカテーテル、ステント、注射器等やそれらの包装材、医療施設内の建材や設備(トイレ周辺商品、手術室内装、手術台、壁紙、床、ベットフレーム、机等)の部材として用いたり、これらに本発明の菌体低付着性物品を貼着したりして用いることもできる。このように本発明の菌体低付着性物品を医療用機器に使用すれば、菌体が付着しにくくなるため、医療施設内の院内感染防止や感染症のリスク低減等に効果を発揮すると考えられる。
本発明の菌体低付着性物品は、図示例の菌体低付着性物品10に限定はされない。
例えば、微細凹凸構造は、図示例においては、硬化樹脂層16の表面に形成されているが、硬化樹脂層16を設けることなく基材フィルム12の表面に直接形成されていてもよい。
ただし、ロール状のモールド20を用いて効率よく凹凸構造を形成できる点から、硬化樹脂層16の表面に凹凸構造が形成されていることが好ましい。
まず、金属基材の表面に、所望のピッチ(周期)および切込み深さとなるように切削加工を施す(第一の切削加工)。ついで、金属基材を90度回転させ、所望のピッチ(周期)および切込み深さとなるように切削加工を施す(第二の切削加工)。第一の切削加工および第二の切削加工の条件が同じであれば、正方格子が表面に形成されたモールドが得られる。
このようにして得られたモールドを用いると、例えば図4に示すような、基材フィルム12と、基材フィルム12の表面に形成された、回折格子状の凸部14からなる微細凹凸構造を表面に有する硬化樹脂層16とを有する菌体低付着性物品10が得られる。
本発明の第一の態様の菌体付着対策方法は、菌体の付着を低減したい箇所に、菌体の大きさの5倍よりも周期が小さい微細凹凸構造を形成することを特徴とする。
菌体の付着を低減したい箇所に微細凹凸構造を形成する方法としては、例えば上述した物品本体の表面に、直接微細凹凸構造を形成する方法が挙げられる。
菌体の付着を低減したい箇所に本発明の菌体低付着性物品を設ける方法としては、例えば図1に示すようなフィルム状の菌体低付着性物品10を菌体の付着を低減したい箇所に貼着する方法などが挙げられる。菌体低付着性物品を貼着する部分が立体形状である場合は、あらかじめそれに応じた形状の基材を用いて、上述したモールドを用いた転写法等の製造方法により菌体低付着性物品を製造しておき、これを対象物の所定部分に貼着すればよい。
<モールドの製造>
(モールドAの製造)
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
工程(a):
このアルミニウム板について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で30分間陽極酸化を行った。
工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に6時間浸漬して、酸化皮膜の一部または全部を除去した。
工程(c):
このアルミニウム板について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、32℃の5質量%リン酸に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
前記工程(c)および工程(d)を合計で5回繰り返し、周期100nm、深さ180nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
得られたモールドAの細孔を下記の方法により測定した結果、隣り合う細孔間の平均間隔(周期)が100nm、細孔の平均深さが180nmの略円錐形状のテーパー状凹部(細孔)からなる微細凹凸構造を表面に形成していた。
陽極酸化アルミナの一部を削り、断面にプラチナを1分間蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社製、「JSM-7400F」)を用いて、加速電圧3.00kVの条件にて、断面を観察し、細孔間の間隔、細孔の深さを測定した。各測定は、それぞれ50点について行い、平均値を求めた。
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物aの調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20質量部と、2官能以上の親水性(メタ)アクリレート(東亞合成社製、「アロニックスM-260」、ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位は13)70質量部と、ヒドロキシエチルアクリレート10質量部と、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン社製、「イルガキュア(登録商標)184」)1.5質量部とを混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物aを得た。
得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物aは、親水性材料である。
エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業社製、「NKエステルATM-4E」)85質量部と、セチルアクリレート(日油社製、「ブレンマーCA」)8質量部と、メチルアクリレート7質量部と、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド(BASFジャパン社製、「DAROCURE TPO」)0.5質量部と、内部離型剤(アクセル社製、「モールドウィズINT AM-121」)0.1質量部とを混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物bを得た。
得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物bは、疎水性材料である。
(菌体低付着性物品A1の製造)
モールドAの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物aを塗布し、この上に厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを被せた。
紫外線照射機(フュージョンランプDバルブ)を用いて、積算光量1000mJ/cm2でフィルム越しに紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物aの硬化を行った後、モールドAから分離し、円錐台形状の複数の凸部からなる微細凹凸構造を表面に有する厚さ10μmの硬化樹脂層が表面に形成された菌体低付着性物品A1を得た。
得られた菌体低付着性物品A1の凸部を下記の方法により測定した結果、隣り合う凸部間の平均間隔(周期)は100nmであり、凸部の高さは180nmであり、凸部の底部の幅は160nmであった。また、菌体低付着性物品A1について、下記の方法により水接触角を測定したところ、27°であり、菌体低付着性物品A1の微細凹凸構造側の表面は親水性であった。
硬化樹脂層の破断面にプラチナを10分間蒸着し、モールドの細孔と同様に断面を観察し、凸部間の間隔、凸部の高さを測定した。各測定は、それぞれ50点について行い、平均値を求めた。
菌体低付着性物品の微細凹凸構造側の表面に1μLのイオン交換水を滴下し、自動接触角測定器(KRUSS社製)を用いて、θ/2法にて水接触角を算出した。
モールドAの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物bを塗布し、この上に厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂社製、「ダイヤホイルT910E125」)を被せた以外は、菌体低付着性物品A1と同様にして菌体低付着性物品B1を得た。
隣り合う凸部間の平均間隔は100nmであり、凸部の高さは180nmであり、凸部の底部の幅は160nmであった。また、水接触角は120°であり、菌体低付着性物品B1の微細凹凸構造側の表面は撥水性であった。
(平坦フィルムaの製造)
微細凹凸構造を表面に有さない鏡面アルミニウム基材に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物aを塗布し、この上に厚さ125μmのPETフィルムを被せた。
紫外線照射機(フュージョンランプDバルブ)を用いて、積算光量1000mJ/cm2でフィルム越しに紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物aの硬化を行った後、鏡面アルミニウム基材から分離し、微細凹凸構造を表面に有さない厚さ10μmの硬化樹脂層が表面に形成された平坦フィルムaを得た。
平坦フィルムaの硬化樹脂層側の表面の水接触角は54°であり、平坦フィルムaの硬化樹脂層側の表面は親水性であった。
微細凹凸構造を表面に有さない鏡面アルミニウム基材に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物bを塗布した以外は、平坦フィルムaと同様にして平坦フィルムbを得た。
平坦フィルムbの硬化樹脂層側の表面の水接触角は95°であり、平坦フィルムbの硬化樹脂層側の表面は撥水性であった。
凹凸構造を表面に有さないポリエチレンフィルムを平坦フィルムzとして用いた。
菌体低付着性物品A1、菌体低付着性物品B1、平坦フィルムb、および平坦フィルムzを各試験片とし、以下のようにして菌体付着試験1を行った。結果を表1に示す。
ミュータンス菌(S.Mutans)を1×105cfu/ml含有する菌含有水に、試験片(1cm×1cm)毎に、3個ずつを1時間浸漬させた後、脱イオン水で洗浄し、表面の水分をエアーブローで除去して乾燥させた。乾燥後の各試験片の表面(菌体低付着性物品A1、菌体低付着性物品B1、および平坦フィルムbの場合は硬化樹脂層側の表面)の任意の10箇所について透過型電子顕微鏡(倍率2000倍)で観察し、透過型電子顕微鏡で見えている範囲内における菌数を数え、平均値および標準偏差(SD)を求めた。さらに、求めた平均値およびSDを試験片1mm2当たりに換算した。
なお、ミュータンス菌の形状はほぼ球状であり、その大きさ(直径)は約1μmである。
黄色ブドウ球菌(S.aureus)を1×105cfu/ml含有する菌含有水を用いた以外は、例1と同様にして菌体付着試験1を行った。結果を表2に示す。
なお、黄色ブドウ球菌の形状はほぼ球状であり、その大きさ(直径)は約1μmである。
カンジタ菌(C.albicans)を1×105cfu/ml含有する菌含有水を用いた以外は、例1と同様にして菌体付着試験1を行った。結果を表3に示す。
なお、カンジタ菌は球状かつ菌糸状の菌体であり、その大きさは6~7μmである。
緑膿菌(P.aeruginosa)を1×105cfu/ml含有する菌含有水を用いた以外は、例1と同様にして菌体付着試験1を行った。結果を表4に示す。
なお、緑膿菌は鞭毛および繊毛を有する菌体であり、その大きさは0.5~1μmである。
浸漬時間を8時間に変更した以外は、例1と同様にして菌体付着試験1を行った。結果を表5に示す。
黄色ブドウ球菌を1×105cfu/ml含有する菌含有水を用い、浸漬時間を8時間に変更した以外は、例1と同様にして菌体付着試験1を行った。結果を表6に示す。
カンジタ菌を1×105cfu/ml含有する菌含有水を用い、浸漬時間を8時間に変更した以外は、例1と同様にして菌体付着試験1を行った。結果を表7に示す。
緑膿菌を1×105cfu/ml含有する菌含有水を用い、浸漬時間を8時間に変更した以外は、例1と同様にして菌体付着試験1を行った。結果を表8に示す。
ミュータンス菌を1×107cfu/ml含有する菌含有水を用いた以外は、例1と同様にして菌体付着試験1を行った。結果を表9に示す。
黄色ブドウ球菌を1×107cfu/ml含有する菌含有水を用いた以外は、例1と同様にして菌体付着試験1を行った。結果を表10に示す。
カンジタ菌を1×107cfu/ml含有する菌含有水を用いた以外は、例1と同様にして菌体付着試験1を行った。結果を表11に示す。
緑膿菌を1×107cfu/ml含有する菌含有水を用いた以外は、例1と同様にして菌体付着試験1を行った。結果を表12に示す。
菌体低付着性物品A1、菌体低付着性物品B1、平坦フィルムa、平坦フィルムb、および平坦フィルムzを各試験片とし、以下のようにして菌体付着試験2を行った。結果を表13に示す。
試験片毎に、3個ずつを45度に傾けた状態で、各試験片の表面(菌体低付着性物品A1、菌体低付着性物品B1、平坦フィルムa、および平坦フィルムbの場合は硬化樹脂層側の表面)に黄色ブドウ球菌209P株(S.aureus 209P)を1×107cfu/ml含有する菌含有水100μlを滴下した。この操作を5回繰り返した後、菌含有水を滴下した試験片の表面の任意の10箇所について透過型電子顕微鏡(倍率2000倍)で観察し、透過型電子顕微鏡で見えている範囲内における菌数を数え、平均値および標準偏差(SD)を求めた。さらに、求めた平均値およびSDを試験片1mm2当たりに換算した。
なお、黄色ブドウ球菌209P株の形状はほぼ球状であり、その大きさ(直径)は0.8μmである。
大腸菌K12株(E.coli K12)を1×107cfu/ml含有する菌含有水を用いた以外は、例13と同様にして菌体付着試験2を行った。結果を表14に示す。
なお、大腸菌K12株の形状はほぼ楕円状であり、その大きさ(短径)は0.5μmである。
<モールドの製造>
(モールドBの製造)
被削材としてSTAVAX製の平板(縦200mm、横200mm、厚さ20mm)を用意した。この平板表面に100μm厚みの硬質銅めっきを施した。硬質銅めっきのビッカース硬度を測定したところ220Hvであった。
ついで、超精密平板加工機に前記平板を取り付け、硬質銅めっきを施した側の表面を鏡面加工した。
ついで、前記平板の鏡面加工した表面に、単結晶ダイヤモンドバイト(刃の厚さ1μm)を用いて切込み深さ0.4μm、ピッチ2μmで切削加工を施すことで、平板表面にピッチ(周期)が2μm、深さが0.4μm、幅が1μmの溝(凹部)を形成した。
ついで前記平板を90度回転させ、前記切削加工と同じ要領で切削加工を施すことで、表面にピッチ(周期)が2μm、深さが0.4μm、幅が1μmの正方格子状の溝(凹部)を有する平板(モールドB)を得た。
UVランプ(エム・ディ・エキシマ社製、波長172nm)で光洗浄を行ったガラス基材(コーニング社製、「イーグルXG」、縦5cm、横5cm、厚さ0.7mm)上に、アンダーコート層形成用組成物としてポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製、「A-200」)をスピンコート(回転数500rpm、厚さ3μm)し、ホットプレート上で60℃で10分加熱した後、紫外線を照射し(積算光量1000mJ/cm2)、アンダーコート層形成用組成物を硬化し、ガラス基材上にアンダーコート層を形成した。
ついで、アンダーコート層上に、RFスパッタ装置(サンユー電子社製、「SVC-700RF」)を用いて酸化インジウムスズ(ITO)を20nm積層し、表面に微細凹凸構造を有する薄膜金属層を形成した。これをモールドCとする。
アンダーコート層形成用組成物としてポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製、「A-1000」)を用いた以外は、モールドCと同様にしてモールドDを得た。
アンダーコート層形成用組成物としてポリブチレングリコールジアクリレート(三菱レイヨン社製、「PBOM2000」)を用いた以外は、モールドCと同様にしてモールドEを得た。
(菌体低付着性物品A2の製造)
モールドBの微細凹凸構造側の表面に、試験1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物aを塗布し、この上に厚さ125μmのPETフィルム(三菱樹脂社製、「ダイヤホイルT910E125」)を被せた。
紫外線照射機(フュージョンランプDバルブ)を用いて、積算光量1000mJ/cm2でフィルム越しに紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物aの硬化を行った後、モールドBから分離し、表面にピッチ(周期)が2μm、高さが0.4μm、幅が1μmの正方格子状の凸部からなる微細凹凸構造を表面に有する厚さ10μmの硬化樹脂層が表面に形成された菌体低付着性物品A2を得た。
試験1と同様にして菌体低付着性物品A2の水接触角を測定したところ82°であり、菌体低付着性物品A2の微細凹凸構造側の表面は親水性であった。
モールドBの代わりにモールドCを用いた以外は、菌体低付着性物品A2と同様にして菌体低付着性物品A3を得た。
得られた菌体低付着性物品A3の硬化樹脂層側の表面を透過型電子顕微鏡(倍率2000倍)で撮影した画像(50μm×50μm)を図5に示す。図5に示すように、菌体低付着性物品A3の表面には、測定できないほど非常に細かいシワ(微細凹凸構造)が形成されていた。
また、試験1と同様にして菌体低付着性物品A3の水接触角を測定したところ41°であり、菌体低付着性物品A3の微細凹凸構造側の表面は親水性であった。
モールドBの代わりにモールドDを用いた以外は、菌体低付着性物品A2と同様にして菌体低付着性物品A4を得た。
得られた菌体低付着性物品A4の硬化樹脂層側の表面を透過型電子顕微鏡(倍率2000倍)で撮影した画像(50μm×50μm)を図6に示す。図6に示すように、菌体低付着性物品A4の表面には、周期(シワ幅)が1100nm、高さが110nmのシワ(微細凹凸構造)が形成されていた。
また、試験1と同様にして菌体低付着性物品A4の水接触角を測定したところ53°であり、菌体低付着性物品A4の微細凹凸構造側の表面は親水性であった。
モールドBの代わりにモールドEを用いた以外は、菌体低付着性物品A2と同様にして菌体低付着性物品A5を得た。
得られた菌体低付着性物品A5の硬化樹脂層側の表面を透過型電子顕微鏡(倍率2000倍)で撮影した画像(50μm×50μm)を図7に示す。図7に示すように、菌体低付着性物品A5の表面には、周期(シワ幅)が2500nm、高さが225nmのシワ(微細凹凸構造)が形成されていた。
また、試験1と同様にして菌体低付着性物品A5の水接触角を測定したところ55°であり、菌体低付着性物品A5の微細凹凸構造側の表面は親水性であった。
菌体低付着性物品A2~A5、および試験1の平坦フィルムzを各試験片とし、以下のようにして菌体付着試験3を行った。結果を表15に示す。
試験片毎に、3個ずつを45度に傾けた状態で、各試験片の表面(菌体低付着性物品A2~A5の場合は硬化樹脂層側の表面)に黄色ブドウ球菌209P株(S.aureus 209P)を1×107cfu/ml含有する菌含有水100μlを滴下した。この操作を5回繰り返した後、菌含有水を滴下した試験片の表面の任意の10箇所について透過型電子顕微鏡(倍率2000倍)で観察し、透過型電子顕微鏡で見えている範囲内における菌数を数え、平均値および標準偏差(SD)を求めた。さらに、求めた平均値およびSDを試験片1mm2当たりに換算した。
大腸菌K12株(E.coli K12)を1×107cfu/ml含有する菌含有水を用いた以外は、例15と同様にして菌体付着試験3を行った。結果を表16に示す。
<モールドの製造>
(モールドFの製造)
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
工程(a):
このアルミニウム板について、0.4Mリン酸水溶液中で、直流100V、温度15℃の条件で45~60分間陽極酸化を行った。
工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に6時間浸漬して、酸化皮膜の一部または全部を除去した。
工程(c):
このアルミニウム板について、0.2Mリン酸水溶液中、直流100V、温度15℃の条件で7~24秒間陽極酸化を行った。
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、31.5℃の5質量%リン酸に19分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
前記工程(c)および工程(d)を合計で5回繰り返し、周期300nm、深さ300nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
得られたモールドFの細孔をモールドAと同様にして測定した結果、隣り合う細孔間の平均間隔(周期)が300nm、細孔の平均深さが300nmの略円錐形状のテーパー状凹部(細孔)からなる微細凹凸構造を表面に形成していた。
凹凸ピッチ2μm、高さ0.5μm、金型形状ピラー部(協同インターナショナル社製、「お試しモールドDTM2-3」)をモールドGとした。
工程(c)の陽極酸化時間を21秒に変更した以外はモールドAと同様にして、モールドHを得た。
得られたモールドHの細孔をモールドAと同様にして測定した結果、隣り合う細孔間の平均間隔(周期)が100nm、細孔の平均深さが50nmの略円錐形状のテーパー状凹部(細孔)からなる微細凹凸構造を表面に形成していた。
凹凸ピッチ1μm、高さ0.5μm、金型形状ピラー部(協同インターナショナル社製、「お試しモールドDTM2-3」)をモールドIとした。
凹凸ピッチ1μm、高さ2μm、金型形状ピラー部(協同インターナショナル社製、「お試しモールドDTM2-3」)をモールドJとした。
凹凸ピッチ2μm、高さ2μm、金型形状ピラー部(協同インターナショナル社製、「お試しモールドDTM2-3」)をモールドKとした。
凹凸ピッチ4μm、高さ0.5μm、金型形状ピラー部(協同インターナショナル社製、「お試しモールドDTM2-3」)をモールドLとした。
凹凸ピッチ4μm、高さ1μm、金型形状ピラー部(協同インターナショナル社製、「お試しモールドDTM2-1」)をモールドMとした。
凹凸ピッチ2μm、高さ0.5μm、金型形状ラインアンドスペース(L/S)部(協同インターナショナル社製、「お試しモールドDTM2-3」)をモールドNとした。
凹凸ピッチ4μm、高さ1μm、金型形状ラインアンドスペース(L/S)部(協同インターナショナル社製、「お試しモールドDTM2-1」)をモールドOとした。
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物cの調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学社製、「A-DPH」)25質量部と、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(新中村化学社製、「AD-TMP」)25質量部と、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、「DPEA-12」)25質量部と、親水性単官能モノマーとしてメトキシポリエチレングリコールアクリレート(大阪有機化学社製、「MPE400A」)25質量部と、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン社製、「イルガキュア(登録商標)184」)1.5質量部と、離型剤としてモールドウィズ(巴工業社製、「INT-120MC」)0.5質量部とを混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物cを得た。
得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物cは、親水性材料である。
親水性単官能モノマーをN-ビニルホルムアミド(三菱レイヨン社製、「NVF」)に変更した以外は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物cと同様にして、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物dを得た。
得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物dは、親水性材料である。
親水性単官能モノマーをN,N-ジメチルアクリルアミド(東京化成工業社製、「DMAA」)に変更した以外は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物cと同様にして、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物eを得た。
得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物eは、親水性材料である。
親水性単官能モノマーを親水性2官能モノマーである、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート(新中村化学社製、「A600」)に変更した以外は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物cと同様にして、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物fを得た。
得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物fは、親水性材料である。
ガラス製のフラスコに、ジイソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネート117.6g(0.7モル)及びイソシアヌレート型のヘキサメチレンジイソシアネート3量体151.2g(0.3モル)、水酸基含有(メタ)アクリレートとして2-ヒドロキシプロピルアクリレート128.7g(0.99モル)及びペンタエリスリトールトリアクリレート693g(1.54モル)、触媒としてジラウリル酸ジ-n-ブチルスズ22.1g、並びに重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.55gを仕込み、75℃に昇温し、75℃に保ったまま攪拌を続け、フラスコ内の残存イソシアネート化合物の濃度が0.1モル/L以下になるまで反応させ、室温に冷却し、ウレタン多官能アクリレートを得た。
得られたウレタン多官能アクリレート35質量部と、ポリブチレングリコールジメタクリレート(三菱レイヨン社製、「アクリエステルPBOM」)20質量部と、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート(第一工業製薬社製、「ニューフロンティアBPEM-10」)40質量部と、フェノキシエチルアクリレート(第一工業製薬社製、「ニューフロンティアPHE」)5質量部と、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン社製、「イルガキュア(登録商標)184」)1.2質量部とを混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物gを得た。
得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物gは、疎水性材料である。
(平坦フィルムcの製造)
微細凹凸構造を表面に有さない鏡面アルミニウム基材に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物cを塗布した以外は、平坦フィルムaと同様にして平坦フィルムcを得た。
平坦フィルムcの硬化樹脂層側の表面の水接触角は45.4°であり、平坦フィルムcの硬化樹脂層側の表面は親水性であった。結果を表17に示す。
また、JIS B 0601:1994の規格に基づき、平坦フィルムcの硬化樹脂層側の表面の算術平均粗さRaを測定した結果、1nmであった。
微細凹凸構造を表面に有さない鏡面アルミニウム基材に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物dを塗布した以外は、平坦フィルムaと同様にして平坦フィルムdを得た。
平坦フィルムdの硬化樹脂層側の表面の水接触角は49.7°であり、平坦フィルムdの硬化樹脂層側の表面は親水性であった。結果を表17に示す。
また、JIS B 0601:1994の規格に基づき、平坦フィルムdの硬化樹脂層側の表面の算術平均粗さRaを測定した結果、2nmであった。
微細凹凸構造を表面に有さない鏡面アルミニウム基材に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物eを塗布した以外は、平坦フィルムaと同様にして平坦フィルムeを得た。
平坦フィルムeの硬化樹脂層側の表面の水接触角は43.8°であり、平坦フィルムeの硬化樹脂層側の表面は親水性であった。結果を表17に示す。
また、JIS B 0601:1994の規格に基づき、平坦フィルムeの硬化樹脂層側の表面の算術平均粗さRaを測定した結果、1nmであった。
微細凹凸構造を表面に有さない鏡面アルミニウム基材に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物fを塗布した以外は、平坦フィルムaと同様にして平坦フィルムfを得た。
平坦フィルムfの硬化樹脂層側の表面の水接触角は40.4°であり、平坦フィルムfの硬化樹脂層側の表面は親水性であった。結果を表17に示す。
また、JIS B 0601:1994の規格に基づき、平坦フィルムfの硬化樹脂層側の表面の算術平均粗さRaを測定した結果、1nmであった。
微細凹凸構造を表面に有さない鏡面アルミニウム基材に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物gを塗布した以外は、平坦フィルムaと同様にして平坦フィルムgを得た。
平坦フィルムgの硬化樹脂層側の表面の水接触角は66.8°であり、平坦フィルムgの硬化樹脂層側の表面は撥水性であった。結果を表17に示す。
また、JIS B 0601:1994の規格に基づき、平坦フィルムgの硬化樹脂層側の表面の算術平均粗さRaを測定した結果、2nmであった。
(菌体低付着性物品C1の製造)
モールドFの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物cを塗布し、この上に厚さ188μmのPETフィルム(東洋紡社製、「A4100」)を被せた。
紫外線照射機(フュージョンランプDバルブ)を用いて、積算光量1000mJ/cm2でフィルム越しに紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物cの硬化を行った後、モールドFから分離し、複数の凸部からなる微細凹凸構造を表面に有する厚さ15μmの硬化樹脂層が表面に形成された菌体低付着性物品C1を得た。
得られた菌体低付着性物品C1の凸部を菌体低付着性物品A1と同様にして測定した結果、隣り合う凸部間の平均間隔(周期)は300nmであり、凸部の高さは300nmであった。
モールドFの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物dを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、厚さ12μmの菌体低付着性物品D1を得た。
モールドFの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物eを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、厚さ10μmの菌体低付着性物品E1を得た。
モールドFの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物fを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、厚さ13μmの菌体低付着性物品F1を得た。
モールドFの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物gを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、厚さ12μmの菌体低付着性物品G1を得た。
モールドGの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物cを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、ホール形状の微細凹凸構造を表面に有する厚さ12μmの硬化樹脂層が表面に形成された菌体低付着性物品C2を得た。
得られた菌体低付着性物品C2の凹部を下記の方法により測定した結果、隣り合う凹部間の平均間隔(周期)は2μmであり、凹部の深さは500nmであった。
硬化樹脂層の破断面にプラチナを10分間蒸着し、モールドの細孔と同様に断面を観察し、凹部間の間隔、凹部の深さを測定した。各測定は、それぞれ50点について行い、平均値を求めた。
モールドGの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物dを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、厚さ12μmの菌体低付着性物品D2を得た。
モールドGの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物eを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、厚さ15μmの菌体低付着性物品E2を得た。
モールドGの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物fを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、厚さ13μmの菌体低付着性物品F2を得た。
モールドGの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物gを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、厚さ10μmの菌体低付着性物品G2を得た。
モールドHの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物eを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、ピラー形状の微細凹凸構造を表面に有する厚さ12μmの硬化樹脂層が表面に形成された菌体低付着性物品E3を得た。
得られた菌体低付着性物品E3の凸部を菌体低付着性物品A1と同様にして測定した結果、隣り合う凸部間の平均間隔(周期)は100nmであり、凸部の高さは50nmであった。
モールドAの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物eを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、ピラー形状の微細凹凸構造を表面に有する厚さ11μmの硬化樹脂層が表面に形成された菌体低付着性物品E4を得た。
得られた菌体低付着性物品E4の凸部を菌体低付着性物品A1と同様にして測定した結果、隣り合う凸部間の平均間隔(周期)は100nmであり、凸部の高さは180nmであった。
モールドIの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物eを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、ホール形状の微細凹凸構造を表面に有する厚さ13μmの硬化樹脂層が表面に形成された菌体低付着性物品E5を得た。
得られた菌体低付着性物品E5の凹部を菌体低付着性物品C2と同様にして測定した結果、隣り合う凹部間の平均間隔(周期)は1000nmであり、凹部の深さは500nmであった。
モールドJの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物eを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、ホール形状の微細凹凸構造を表面に有する厚さ10μmの硬化樹脂層が表面に形成された菌体低付着性物品E6を得た。
得られた菌体低付着性物品E6の凹部を菌体低付着性物品C2と同様にして測定した結果、隣り合う凹部間の平均間隔(周期)は1000nmであり、凹部の深さは2000nmであった。
モールドKの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物eを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、ホール形状の微細凹凸構造を表面に有する厚さ12μmの硬化樹脂層が表面に形成された菌体低付着性物品E7を得た。
得られた菌体低付着性物品E7の凹部を菌体低付着性物品C2と同様にして測定した結果、隣り合う凹部間の平均間隔(周期)は2000nmであり、凹部の深さは2000nmであった。
モールドLの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物eを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、ホール形状の微細凹凸構造を表面に有する厚さ12μmの硬化樹脂層が表面に形成された菌体低付着性物品E8を得た。
得られた菌体低付着性物品E8の凹部を菌体低付着性物品C2と同様にして測定した結果、隣り合う凹部間の平均間隔(周期)は4000nmであり、凹部の深さは500nmであった。
モールドMの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物eを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、ホール形状の微細凹凸構造を表面に有する厚さ11μmの硬化樹脂層が表面に形成された菌体低付着性物品E9を得た。
得られた菌体低付着性物品E9の凹部を菌体低付着性物品C2と同様にして測定した結果、隣り合う凹部間の平均間隔(周期)は4000nmであり、凹部の深さは1000nmであった。
モールドNの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物eを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、ラインアンドスペース(L/S)形状の微細凹凸構造を表面に有する厚さ10μmの硬化樹脂層が表面に形成された菌体低付着性物品E10を得た。
得られた菌体低付着性物品E10の凸部を菌体低付着性物品A1と同様にして測定した結果、隣り合う凸部間の平均間隔(周期)は2000nmであり、凸部の高さは500nmであった。
モールドOの微細凹凸構造側の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物eを塗布した以外は、菌体低付着性物品C1と同様にして、ラインアンドスペース(L/S)形状の微細凹凸構造を表面に有する厚さ10μmの硬化樹脂層が表面に形成された菌体低付着性物品E11を得た。
得られた菌体低付着性物品E11の凸部を菌体低付着性物品A1と同様にして測定した結果、隣り合う凸部間の平均間隔(周期)は4000nmであり、凸部の高さは1000nmであった。
一方、平坦フィルムgは水接触角が66.8°であり、表面は撥水性であった。この平坦フィルムgと同じ種類の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた菌体低付着性物品G1、G2の微細凹凸構造側の表面も撥水性であった。
菌体低付着性物品C1~G1、C2~G2、平坦フィルムc~g、および平坦フィルムzを各試験片とし、以下のようにして菌体付着試験4、5を行った。結果を表18に示す。
黄色ブドウ球菌(S.aureus)を1×107cfu/ml含有する菌含有水に、試験片(0.5mm×0.5mm)毎に、3個ずつを1時間浸漬させた後、脱イオン水で洗浄し、表面の水分をエアーブローで除去して乾燥させた。乾燥後の各試験片の表面(菌体低付着性物品C1~G1、C2~G2、および平坦フィルムc~gの場合は硬化樹脂層側の表面)の任意の10箇所について透過型電子顕微鏡(倍率2000倍)で観察し、透過型電子顕微鏡で見えている範囲内における菌数を数えた。結果を表18に示す。
また、菌体低付着性物品C1~G1、C2~G2、および平坦フィルムc~gの菌数を平坦フィルムzの菌数で割り、100を掛けた値を「菌体低付着率」として表18に記載した。
また、菌体低付着性物品C1~G1、C2~G2の菌数を、その菌体低付着性物品と同じ種類の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて製造した平坦フィルムc~gの菌数で割り、100を掛けた値を「凹凸による菌体低付着率」として表18に記載した。
大腸菌(E.Coli K12)を1×107cfu/ml含有する菌含有水を用いた以外は、菌体付着試験4と同様にした。結果を表18に示す。
特に、モールドFから得られた菌体低付着性物品C1~G1は、黄色ブドウ球菌、大腸菌のどちらにおいても菌体の付着低減効果が高かった。
また、親水性単官能モノマーを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた菌体低付着性物品C1~F1、C2~F2は、大腸菌において菌体低付着率を3%以下、凹凸による菌体低付着率を20%以下に抑えることができており、より優れた菌体の付着低減効果が得らえた。
菌体低付着性物品E1~E11、平坦フィルムe、および平坦フィルムzを各試験片とし、以下のようにして菌体付着試験6、7を行った。結果を表19に示す。
黄色ブドウ球菌(S.aureus)を1×106cfu/ml含有する菌含有水を用いた以外は、菌体付着試験4と同様にした。結果を表19に示す。
また、試験後の平坦フィルムzの表面を透過型電子顕微鏡(倍率2000倍)で撮影した画像を図8に、試験後の平坦フィルムeの硬化樹脂層側の表面を透過型電子顕微鏡(倍率2000倍)で撮影した画像を図9に、試験後の菌体付着性物品E1の硬化樹脂層側の表面を透過型電子顕微鏡(倍率2000倍)で撮影した画像を図10に、試験後の菌体付着性物品E7の硬化樹脂層側の表面を透過型電子顕微鏡(倍率2000倍)で撮影した画像を図11にそれぞれ示す。
大腸菌(E.Coli K12)を1×106cfu/ml含有する菌含有水を用いた以外は、菌体付着試験4と同様にした。結果を表19に示す。
また、試験後の平坦フィルムzの表面を透過型電子顕微鏡(倍率2000倍)で撮影した画像を図12に、試験後の平坦フィルムeの硬化樹脂層側の表面を透過型電子顕微鏡(倍率2000倍)で撮影した画像を図13に、試験後の菌体付着性物品E1の硬化樹脂層側の表面を透過型電子顕微鏡(倍率2000倍)で撮影した画像を図14に、試験後の菌体付着性物品E7の硬化樹脂層側の表面を透過型電子顕微鏡(倍率2000倍)で撮影した画像を図15にそれぞれ示す。
特に、周期が2μm以下の微細凹凸構造を表面に有する菌体低付着性物品E1~7、10は、黄色ブドウ球菌、大腸菌のどちらにおいても付着低減効果が高く、菌体低付着率を4%以下、凹凸による菌体低付着率を30%以下に抑えることができており、より優れた菌体の付着低減効果が得らえた。
また、菌体低付着性物品E1、E7は、図10、11、14、15の透過型電子顕微鏡像からもわかるように、黄色ブドウ球菌、大腸菌のどちらにおいても菌体の付着低減効果がより高く、菌体低付着率を2%以下、凹凸による菌体低付着率を10%以下に抑えることができており、微細凹凸構造の形状による菌体の低付着性効果が得られやすかった。また、微細凹凸構造の形状においては、菌体低付着性物品E10よりも菌体低付着性物品E2、E7の方が菌体の付着低減効果が高く、またアスペクト比を比較すると菌体低付着性物品E2よりも菌体低付着性物品E7の方が菌体の付着低減効果が高く、高アスペクト比で2次元格子の形状が適していた。
本発明の菌体付着対策方法は、菌体の付着を低減したい箇所への菌体の付着を抑制できる。
12 基材フィルム
14 凸部
16 硬化樹脂層
20 モールド
22 タンク
24 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
26 空気圧シリンダ
28 ニップロール
30 活性エネルギー線照射装置
32 剥離ロール
34 アルミニウム基材
36 細孔
38 酸化皮膜
40 細孔発生点
H 高さ
P 平均間隔
Claims (4)
- 菌体の付着を低減したい箇所に、菌体低付着性物品を設ける、菌体付着対策方法であって、
前記菌体低付着性物品が、
周期が50nm以上4μm以下であり、凸部の高さが10~50000nmである微細凹凸構造を表面に有し、
前記微細凹凸構造側の表面が撥水性であり、
前記微細凹凸構造が、硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
かつ、前記微細凹凸構造が、微細凹凸構造を有するモールドから転写して得られる構造であり、
前記菌体が、ミュータンス菌、黄色ブドウ球菌、カンジタ菌、緑膿菌、および大腸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種である、菌体付着対策方法。 - 菌体の付着を低減したい箇所に、菌体低付着性物品を設ける、菌体付着対策方法であって、
前記菌体低付着性物品が、
周期が50nm以上4μm以下であり、凸部の高さが10~50000nmである微細凹凸構造を表面に有し、
前記微細凹凸構造側の表面が親水性であり、
前記微細凹凸構造が、硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
かつ、前記微細凹凸構造が、微細凹凸構造を有するモールドから転写して得られる構造であり、
前記菌体が、ミュータンス菌、黄色ブドウ球菌、カンジタ菌、緑膿菌、および大腸菌からなる群より選ばれる少なくとも1種である、菌体付着対策方法。 - 前記微細凹凸構造が、親水性単官能モノマーを含む組成物の硬化物からなる、請求項2に記載の菌体付着対策方法。
- 前記親水性単官能モノマーが、(メタ)アクリルアミド誘導体、単官能アミド類、およびエステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項3に記載の菌体付着対策方法。
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