JP7060065B2 - 樹脂構造体、抗病原体活性付加物、樹脂構造体の製造方法、抗病原体活性付加物の製造方法、樹脂構造体の製造装置、及び抗病原体活性付加物の製造装置 - Google Patents

樹脂構造体、抗病原体活性付加物、樹脂構造体の製造方法、抗病原体活性付加物の製造方法、樹脂構造体の製造装置、及び抗病原体活性付加物の製造装置 Download PDF

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本発明は、樹脂構造体、抗病原体活性付加物、樹脂構造体の製造方法、抗病原体活性付加物の製造方法、樹脂構造体の製造装置、及び抗病原体活性付加物の製造装置に関する。
近年、抗微生物活性又は抗ウイルス活性を有する製品が多く市販されている。抗微生物活性とは、例えば、微生物の数を減少させる性質を表す。抗ウイルス活性とは、ウイルスの数を減少させる性質又はウイルス全体としての活性(例えば、宿主に対する感染能及び宿主中における増殖能等)を減少させる性質を表す。抗微生物活性又は抗ウイルス活性を発揮させる方法としては、例えば、微生物又はウイルスに何らかの傷を負わせる又は死滅させる薬剤を構造体中に包含させる方法、特殊な表面構造を有する構造体を用いることにより当該表面構造に接触した微生物又はウイルスに何らかの傷を負わせる又は死滅させる方法等が知られている。
非特許文献1には、セミの翅は表面に微細な突起構造体を有し、この突起構造体が抗微生物活性を発揮することが開示されている。具体的には、この微細な突起構造体の柱(ナノピラー)に起因して、微生物の外殻部(細胞膜、細胞壁など)が破壊され、これにより抗微生物活性が発現することが開示されている。
また、非特許文献2、特許文献1、及び特許文献2には、上記の微細な突起構造体の柱(ナノピラー)を模した構造体を人工的に作製した場合であっても、抗微生物活性が発現することが開示されている。
しかしながら、従来の抗病原体構造体は、抗微生物活性又は抗ウイルス活性が低下しやすい課題がある。
請求項1に係る発明は、表面に孔径が1μm以下である複数の開口部を有し、複数の前記開口部を形作る骨格部を有し、前記骨格部は、複数の粒子が連結した形状であり、抗微生物活性又は抗ウイルス活性を有することを特徴とする樹脂構造体である。
本発明は、抗微生物活性又は抗ウイルス活性の低下が抑制される優れた効果を奏する。
図1は、本実施形態の抗病原体構造体の製造方法を実現するための抗病原体構造体の製造装置の一例を示す模式図である。 図2は、複数の粒子が連結した形状の骨格部及び当該骨格部により形作られる開口部を有する樹脂構造体(抗病原体構造体)の表面を、SEMを用いて観察した図である。 図3は、略平面形状の骨格部及び当該骨格部により形作られる開口部を有する樹脂構造体(抗病原体構造体)の表面を、SEMを用いて観察した図である。 図4は、実施例1の抗病原体構造体の表面を、SEMを用いて観察した図である。 図5は、比較例1の構造体の表面を、SEMを用いて観察した図である。 図6は、実施例4の構造体の表面を、SEMを用いて観察した図である。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
<<抗病原体構造体>>
本実施形態の抗病原体構造体は、表面に複数の開口部が形成された樹脂構造体を有し、必要に応じて、その他物質を有してもよい。なお、抗病原体構造体は、その他物質を有さず、樹脂構造体のみで構成されていてもよい。
抗病原体構造体とは、抗微生物活性を発揮する抗微生物構造体と、抗ウイルス活性を発揮する抗ウイルス構造体と、を含む概念を表す。また、抗病原体構造体は、抗病原体構造体を構成する樹脂構造体が抗微生物活性又は抗ウイルス活性を有することにより、全体として抗微生物活性又は抗ウイルス活性を発揮する構造体である。これは、言い換えると、樹脂構造体のみで抗微生物活性又は抗ウイルス活性を発揮できる構造体であることを表す。なお、樹脂構造体のみで抗微生物活性又は抗ウイルス活性を有しているのであれば、追加的に、抗微生物活性を有する薬剤(以降、抗微生物剤とも称する)又は抗ウイルス活性を有する薬剤(以降、抗ウイルス剤とも称する)がその他物質として構造体中に含有又は構造体表面に担持されていてもよい。なお、以降の説明において、抗微生物活性及び抗ウイルス活性の両方を総称する場合、これら活性を「抗病原体活性」と称する。なお、病原体とは、一般に、宿主となる生物に病気を起こす性質を持ったものを表すが、本願では、微生物及びウイルスの両方を総称する概念として表し、病気を起こす性質を有するか否かは問わないものとする。
抗微生物活性とは、樹脂構造体が微生物に対して接触することで何らかの影響を与えること(例えば、傷を負わせること及び死滅させること等)により、微生物の数を減少させる性質を表す。すなわち、樹脂構造体が他の部材により封止又は密閉等されることで微生物に対して接触することが困難である場合、樹脂構造体が抗微生物活性を有しているとは言えない。ここで、微生物の数を減少させるとは、抗病原体構造体を有する試験片(試験片C)に付与された微生物の数が、抗病原体構造体を構成する材料と同材料により形成されるが、表面構造が平面状であって複数の開口部が形成されていない試験片(試験片B)に付与された微生物の数と比べて経時的に減少することを表す。当該性質を確認する方法としては、特に限定されないが、例えば、蛍光顕微鏡などで微生物の動きを直接的に観察する方法、SEMなどで微生物の死骸を観察する方法、抗微生物試験により確認する方法等が挙げられる。抗微生物試験としては、具体的には、JIS Z 2801(2012)、JIS Z 2901(2018)、ISO 22196(2011)などに記載の方法に準拠して実施される試験であることが好ましい。
JIS Z 2801(2012)の方法に準拠して試験を実施する場合、当該試験の評価における抗菌活性値が0.3以上である場合を、抗微生物活性を有すると判断することが好ましい。また、抗菌活性値は0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.5以上であることが更に好ましく、2.0以上であることが特に好ましい。ここで、JIS Z 2801(2012)の方法に準拠して得られる抗菌活性値は、下記数式で表されるものである。具体的には、ガラス板である無加工試験片(試験片A)、試験片A上に形成されている試験片B、及び試験片A上に形成されている試験片Cに対して同一の菌液をそれぞれ接種し、24時間後の菌数を測定し、下記数式に基づいて算出する。なお、抗菌活性値が2以上である場合を抗菌材料と定義する場合があるが、本実施形態では微生物の増殖抑制という観点に基づき、抗菌活性値が0.3以上である場合を抗微生物活性があると判断している。
抗菌活性値=(logB-logA)-(logC-logA)
・A:試験片Aの24時間後における生菌数の平均値
・B:試験片Bの24時間後における生菌数の平均値
・C:試験片Cの24時間後における生菌数の平均値
ISO 22196(2011)の方法に準拠して試験を実施する場合、当該試験の評価における抗菌活性値が0.3以上である場合を、抗微生物活性を有すると判断することが好ましい。また、抗菌活性値は0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.5以上であることが更に好ましく、2.0以上であることが特に好ましい。ここで、ISO 22196(2011)の方法に準拠して得られる抗菌活性値は、下記数式で表されるものである。具体的には、試験片B及び試験片Cに対して同一の菌液をそれぞれ接種し、24時間後の菌数を測定し、下記数式に基づいて算出する。なお、JIS Z 2801(2012)とISO 22196(2011)は実質的に対応する規格である。
抗菌活性値=Ut-At
・Ut:試験片Bの24時間後における生菌数の常用対数値の平均値
・At:試験片Cの24時間後における生菌数の常用対数値の平均値
抗ウイルス活性とは、樹脂構造体がウイルスに対して接触することで何らかの影響を与えること(例えば、傷を負わせること及び死滅させること等)により、ウイルスの数を減少させる性質又はウイルス全体としての活性(例えば、宿主に対する感染能及び宿主中における増殖能等)を減少させる性質を表す。すなわち、樹脂構造体が他の部材により封止又は密閉等されることでウイルスに対して接触することが困難である場合、樹脂構造体が抗ウイルス活性を有しているとは言えない。ここで、ウイルスの数を減少させる又はウイルス全体としての活性を減少させるとは、抗病原体構造体を有する試験片(試験片X)に付与されたウイルスの数又はウイルス全体としての活性が、抗病原体構造体を構成する材料と同材料により形成されるが、表面構造が平面状であって複数の開口部が形成されていない試験片(試験片Y)に付与されたウイルスの数又はウイルス全体としての活性と比べて経時的に減少することを表す。上記性質を確認する方法としては、特に限定されないが、例えば、試験片X及び試験片Yのそれぞれに同濃度のウイルスを付与して一定時間静置し、静置後のウイルスをそれぞれ宿主に暴露することで感染させ、宿主における発症の有無及び生死等を観察する方法等が挙げられる。発症が観察できない場合又は死亡しなかった場合は、ウイルスを暴露してから一定時間経過後の宿主の一部組織を摘出、粉砕、及び懸濁して懸濁液を作製してから懸濁液の希釈系列を作製し、当該希釈系列を用いて培養細胞にウイルスをそれぞれ感染させ、TCID50値(50%組織培養感染量)を求めることによりウイルスの定量を行う方法等が更に挙げられる。抗ウイルス試験としては、具体的には、ISO 21702(2019)などに記載の方法に準拠して実施される試験であることが好ましい。なお、ISO 21702(2019)は、上記の抗微生物試験であるISO 22196及びJIS Z 2801をウイルス用に改良した試験である。
ISO 21702(2019)の方法に準拠して試験を実施する場合、当該試験の評価における抗ウイルス活性値が0.2以上である場合を、抗ウイルス活性を有すると判断することが好ましい。また、抗菌活性値は0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.5以上であることが更に好ましく、2.0以上であることが特に好ましい。ここで、ISO 21702(2019)の方法に準拠して得られる抗ウイルス活性値は、下記数式で表されるものである。具体的には、試験片X及び試験片Yに対して同一のウイルス液をそれぞれ接種し、24時間後のウイルス感染価(PFU/cm)を測定し、下記数式に基づいて算出する。なお、抗ウイルス活性値が2以上である場合を抗ウイルス材料と定義する場合があるが、本実施形態ではウイルスの増殖抑制という観点に基づき、抗ウイルス活性値が0.2以上である場合を抗ウイルス活性があると判断している。
抗ウイルス活性値=Ut-At
・Ut:試験片Yの24時間後におけるウイルス感染価の常用対数値の平均値
・At:試験片Xの24時間後におけるウイルス感染価の常用対数値の平均値
また、抗病原体構造体は、耐水性を有していることが好ましく、具体的には、25℃の水(具体的には、精製水及びイオン交換水等)に24時間浸漬された場合であっても抗病原体活性を有することがより好ましい。抗病原体構造体が用いられる用途において、水が付着する環境下にて使用される場合が想定されるためである。
微生物とは、微小な原核生物及び真核生物を指し、例えば、原核生物の細菌(バクテリア)に分類されるグラム陰性菌やグラム陽性菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌、ペスト菌、コレラ菌、結核菌、緑膿菌、梅毒やライム病を引き起こすスピロヘータ、発疹チフスやツツガムシ病を引き起こすリケッチア、クラミジア、マイコプラズマ、シアノバクテリアなど、原核生物の古細菌(アーケア)に分類されるメタン菌、超好熱菌など、真核生物に分類されるカビ、キノコ、酵母、カンジダ菌、白癬菌、マラリアを引き起こすマラリア原虫などが挙げられる。
また、本願における微生物は、現在確認されている微生物に限定されず、将来的に確認される微生物も含まれる。将来的に確認される微生物としては、例えば、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)等の薬剤耐性菌であって、新たに確認又は呼称される微生物が挙げられる。
ウイルスとは、他生物の細胞を利用して自己を複製させる、極微小な感染性の構造体であり、例えば、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、及びヘパドナウイルス等を含むDNAウイルス、フラビウイルス、トガウイルス、コロナウイルス、D型肝炎ウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、ブニヤウイルス、フィロウイルス、及びレトロウイルス等を含むRNAウイルスが挙げられる。
オルトミクソウイルスとしては、例えば、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、イサウイルス、トゴトウイルス、及びクアランジャウイルス等が挙げられる。
コロナウイルスとしては、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、ガンマコロナウイルス、及びデルタコロナウイルス等が挙げられる。
パラミクソウイルスとしては、パラミクソウイルス、ルブラウイルス、モルビリウイルス、及びニューモウイルス等が挙げられる。
また、本願におけるウイルスは、現在確認されているウイルスに限定されず、将来的に確認されるウイルスも含まれる。将来的に確認されるウイルスとしては、変異した新型ウイルス等であって、新たに確認又は呼称されるウイルスが挙げられる。
抗病原体構造体の形状は、目的に応じて適宜選択され、例えば、層状(フィルム状)、粒子状等の形状が挙げられる。層状(フィルム状)の形状で用いられる場合、平面状であってもよいし、曲面状であってもよい。また、複数の抗病原体構造体が集合して形成された複合体や、別の部材の表面に形成された被覆体として用いられてもよい。
但し、抗病原体構造体の形状は、使用時において表面構造が摩耗等の影響を受けやすい形状であることが好ましい。このような形状であったとしても、本開示の抗病原体構造体であれば、高い耐久性を有するため、抗微生物活性又は抗ウイルス活性の低下が抑制される効果をより顕著に享受できるためである。このような使用時において表面構造が摩耗等の影響を受けやすい形状とは、例えば、層状(フィルム状)である場合が挙げられる。一方で、粒子状である場合に関しては、使用時において表面構造が摩耗等の影響を受けにくい形状であるため、抗病原体構造体の形状が粒子状でなくてもよい。
<樹脂構造体>
樹脂構造体は、樹脂を材料として形成される構造体である。また、樹脂構造体は、重合性化合物を人為的に重合させることで製造される合成樹脂を材料として含む構造体、又は植物若しくは動物に由来する天然樹脂を人為的に加工又は処理することで製造される天然由来樹脂を材料として含む構造体を表し、天然樹脂等の無加工又は無処理の材料のみからなる構造体は含まれない。また、本実施形態に係る樹脂構造体は、上記の通り、樹脂構造体のみで抗病原体活性を発揮する。
樹脂構造体の表面には、複数の開口部を有する表面構造が形成されている。当該表面構造上に微生物又はウイルスが接触すると、開口部に起因する表面吸着力により、微生物又はウイルスの外殻部が破壊され、抗病原体活性が発現する。本作用によれば、薬剤である抗微生物剤又は抗ウイルス剤が実質的に含まれない抗病原体構造体であったとしても抗病原体活性を発揮することができる。これにより、抗微生物剤又は抗ウイルス剤により生じうる人体への影響(アレルギー反応等)を抑制することができる。また、抗微生物剤又は抗ウイルス剤と異なり経時的に消費されることがないので効果(抗病原体活性)の持続性が向上する。更に、抗微生物剤又は抗ウイルス剤に耐性を有する微生物又はウイルスの発生も抑制することができる。
表面構造は、複数の開口部と、当該複数の開口部を形作る骨格部と、を有する。開口部は、表面構造のうち骨格部以外の部分であって、少なくとも外部に対して開口している空間を表す。骨格部は、表面構造のうち複数の開口部以外の部分であって、樹脂により構成される構造部を表す。また、骨格部は、樹脂構造体表面において連続する構造であり、当該連続する構造により複数の開口部が形作られる。これにより、微細な突起構造体の柱(ナノピラー)を有する一方で表面の構造が連続しない従来の構造は耐久性が低い一方で、
本実施形態の表面構造は、摩耗による微細構造の劣化による影響を受けにくいことから、抗病原体構造体としての耐久性が向上する。すなわち、本実施形態に係る表面構造では、抗病原体活性の発揮に寄与する複数の開口部の形状が維持されやすくなり、その結果、抗病原体活性の低下が抑制される。
開口部の形状は、特に制限されず、略円形状、略楕円形状、略多角形状等の様々な形状が挙げられる。また、開口部の孔径も特に制限されない。ここで、開口部の孔径とは、開口部を観察した際(言い換えると、開口部を平面視した際)に引ける最も長い直線の長さを指すものとする。具体的には、開口部の孔径は、走査電子顕微鏡(SEM)等で撮影した写真から求めることができる。
抗微生物活性を目的とする場合、開口部の孔径は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが更に好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましい。開口部の孔径が10μm以下であることで、開口部に起因する表面吸着力により、微生物の外殻部(細胞膜、細胞壁等)が破壊され、抗微生物活性が適切に発現する。但し、開口部の孔径は、抗微生物活性を発揮させたい微生物の種類や大きさにより適宜変更することが好ましい。一般的には、微生物の最大径よりも開口部の孔径が小さいことが好ましく、例えば、カビ菌であれば10μm以下であることが好ましく、黄色ブドウ球菌であれば1μm以下であることが好ましく、大腸菌であれば4μm以下であることが好ましい。但し、表面吸着力は開口部の孔径に反比例するため、孔径が小さいほど働く力が大きくなり、より高い抗微生物活性が期待できる。なお、開口部の孔径は、重合性化合物を重合させるときにおける重合条件(照射する活性エネルギー線の照射強度、照射時間等)などにより適宜調整することができる。なお、下記の抗ウイルス活性を目的とする場合における開口部の孔径と区別するために、抗微生物活性を目的とする場合における開口部の孔径は、0.1μmより大きくてもよい。
抗ウイルス活性を目的とする場合、開口部の孔径は、0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。開口部の孔径が0.1μm以下であることで、開口部に起因する表面吸着力により、ウイルスの外殻部(エンベロープ等)が破壊され、抗ウイルス活性が適切に発現する。但し、開口部の孔径は、抗ウイルス活性を発揮させたいウイルスの種類や大きさにより適宜変更することが好ましい。一般的には、ウイルスの最大径よりも開口部の孔径が小さいことが好ましい。但し、表面吸着力は開口部の孔径に反比例するため、孔径が小さいほど働く力が大きくなり、より高い抗ウイルス活性が期待できる。なお、開口部の孔径は、重合性化合物を重合させるときにおける重合条件(照射する活性エネルギー線の照射強度、照射時間等)などにより適宜調整することができる。具体的には、例えば、重合性化合物の含有量を多くすること又は照射する活性エネルギー線の照射強度を高めることなどにより開口部の孔径を小さくすることができる。なお、抗ウイルス活性を目的とする場合における開口部の孔径の下限値は特に限定されないが、例えば、0.001μm以上であってもよい。
骨格部の形状は、開口部を形作ることができる限り特に制限されず、複数の粒子が連結した形状、及び略平面形状等の様々な形状が挙げられる。図2は、複数の粒子が連結した形状の骨格部及び当該骨格部により形作られる開口部を有する樹脂構造体(抗病原体構造体)の表面を、SEMを用いて観察した図である。図3は、略平面形状の骨格部及び当該骨格部により形作られる開口部を有する樹脂構造体(抗病原体構造体)の表面を、SEMを用いて観察した図である。骨格部の形状としては、複数の粒子が連結した形状より略平面形状の方が好ましい。略平面形状の方が樹脂構造体の表面構造が形成されている面における硬度が高く、摩耗による微細構造の劣化による影響を低減でき、抗病原体構造体としての耐久性が向上し、結果として抗病原体活性の低下が抑制されるためである。
樹脂構造体の表面構造が形成されている面における硬度は、例えば、ISO 15184に記載の方法に準拠して実施される評価における鉛筆硬度等を採用することが好ましい。このとき、複数の粒子が連結した形状である場合、鉛筆硬度は6B~2B程度である。一方で、骨格部の形状が略平面形状である場合、鉛筆硬度をB以上にすることができ、更にF以上にすることもできる。なお、本評価は、例えば、鉛筆硬度試験機(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、750g荷重にて実施される。また、抗病原体構造体としての耐久性を向上させ、抗病原体活性の低下を抑制するという観点に基づき、鉛筆硬度は高硬度であることが好ましい。
また、樹脂構造体は、複数の孔が連続して連結している共連続構造を有する多孔質構造であることが好ましく、複数の開口部は、それぞれ独立して、共連続構造を構成する一部の孔と連結していることがより好ましい。
樹脂構造体は、上記の通り、内部に孔を複数有し、これら孔が連通している(言い換えると、複数の孔が連続して繋がっている)構造体であることが好ましい。このような構造は、共連続構造又はモノリス構造とも称される。多数の孔を有し、一つの孔が周囲の他の孔と連結することで連通性を有し、連続する孔が三次元的に広がっている。そして、複数の開口部が、それぞれ独立して、共連続構造を構成する一部の孔と連結していることで、表面の開口部から内部の共連続構造に向かう連続的な毛細管力が発現し、より抗病原体活性が向上する。また、微生物又はウイルスの死骸が、表面の開口部から内部の共連続構造に向かって排出されて表面に残留することが抑制されるため、経時的な抗病原体活性の低下が抑制される。また、樹脂構造体の表面が削がれたとしても、内部の孔が新たな開口部として露出して抗病原体活性を発揮するため、従来の微細な突起構造体の柱(ナノピラー)を有する構造体に比べて、抗病原体構造体として期待される効果が長期的に持続する。
孔が連通していることを確認する方法としては、例えば、樹脂構造体の断面を走査電子顕微鏡(SEM)等により画像観察し、孔同士の繋がりが連続していることを確認する方法が挙げられる。また、孔が連通していることで得られる物性の一つとして透気度が挙げられる。樹脂構造体の透気度は、例えば、JIS P8117に準拠して測定され、1000秒/100mL以下である場合が好ましく、500秒/100mL以下である場合がより好ましく、300秒/100mL以下である場合が更に好ましい。このとき、透気度は、例えば、ガーレー式デンソメーター(東洋精機製作所製)等を用いて測定される。従って、一例として、透気度が1000秒/100mL以下であることをもって孔が連通していると判断してもよい。
樹脂構造体の空隙率としては、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更に好ましく、50%以上であることが特に好ましい。また、樹脂構造体の空隙率は、90%以下であることが好ましい。空隙率が30%以上であることで、表面の開口部から内部の共連続構造に向かう連続的な毛細管力がより発現し、更に抗病原体活性が向上する。また、空隙率が90%以下であることで、樹脂構造体の強度が向上する。なお、樹脂構造体の空隙率を測定する方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂構造体に不飽和脂肪酸(市販のバター)を充填し、オスミウム染色を施した後で、FIBで内部の断面構造を切り出し、SEMを用いて空隙率を測定する方法が挙げられる。
樹脂構造体中の孔の断面形状は、特に制限されず、略円形状、略楕円形状、略多角形状等の様々な形状が挙げられる。また、孔の孔径も特に制限されない。ここで、孔の孔径とは、断面形状において引ける最も長い直線の長さを指すものとする。孔の孔径は、走査電子顕微鏡(SEM)等で撮影した断面写真から求めることができる。
抗微生物活性を目的とする場合、樹脂構造体の有する孔の孔径は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが更に好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましい。孔の孔径が10μm以下であることで、孔に起因する毛細管力により、連通する開口部において微生物の外殻部(細胞膜、細胞壁等)がより破壊されやすくなり、抗微生物活性が適切に発現する。なお、毛細管力は孔の孔径に反比例するため、孔径が小さいほど働く力が大きくなり、より高い抗微生物活性が期待できる。なお、開口部の孔径は、重合性化合物を重合させるときにおける重合条件(照射する活性エネルギー線の照射強度、照射時間等)などにより適宜調整することができる。
-樹脂構造体を構成する材料-
樹脂構造体を構成する材料である樹脂について説明する。
使用可能な樹脂の一例としては、特に限定されないが、例えば、電離放射線、紫外線、及び赤外線(熱)等の活性エネルギー線を照射することによって形成可能な樹脂であるアクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂、及びエン-チオール反応を利用した樹脂等が挙げられるが、中でも、反応性が高いラジカル重合を利用して形成可能なアクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、及びビニルエステル樹脂が好ましく、アクリレート樹脂、及びメタアクリレート樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂がより好ましい。
使用可能な樹脂の別の一例としては、特に限定されないが、例えば、生分解性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。生分解性樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。脂肪族ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリ乳酸/グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ-ε-カプロラクトン、サクシネート系重合体、ポリヒドロキシアルカノエートなどが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネイト、テフロン(登録商標)、ポリイミド、ポリサルフォンなどが挙げられる。
上記材料を用いて、表面に複数の開口部が形成された樹脂構造体を作製する方法としては特に制限されないが、例えば、熱や光による誘起相分離、レーザーを用いたトラックエッチド、ガスによる発泡、膜の延伸、樹脂に対する良溶媒及び貧溶媒などを用いた方法が挙げられる。これらの中でも熱や光による誘起相分離を用いた方法及び樹脂に対する良溶媒及び貧溶媒を用いた方法が好ましいため、当該方法について後述する。
-硬化することで樹脂構造体を形成する液体組成物-
重合することで硬化し、上記樹脂構造体を構成する樹脂を形成する液体組成物(「硬化型組成物」とも称する)は、重合性化合物、溶媒、重合開始剤、及び有機高分子化合物などを含むことが好ましい。また、液体組成物により形成される樹脂構造体は、硬化時に複数の開口部を有する表面構造が形成されることが好ましい。更に、液体組成物により形成される樹脂構造体は、硬化時に複数の開口部を有する表面構造が形成され、かつ当該開口部が連通する共連続構造も同時に形成されることがより好ましい。本方法によれば、作製に長い工程(ナノインプリント等の転写法、パターニングなど)を要する微細な突起構造体の柱(ナノピラー)を有する構造体に比べて、短い工程で抗病原体構造体を作製できる点で有利である。また、本方法によれば、抗病原体活性を付与したい対象物(基材)に対し、液体組成物をインクジェット方式及びスプレー方式などで吐出することができるため、ナノインプリント等の転写法と比較して、対象物(基材)に対し非接触で抗病原体構造体を作製できる点で有利である。具体的には、非接触で抗病原体構造体を作製できることで、対象物(基材)が構造的に弱いことで転写法を適用できない場合、対象物(基材)が曲面構造などの複雑な立体形状を有する場合、衛生面の観点から対象物(基材)に対して非接触で処理を行う必要がある場合などにおいて有利である。
なお、液体組成物が所定の形状及び特性を有する樹脂構造体を形成するか否かを判断する場合、次の方法に従って形成された構造体において判断する。まず、ガラス板に対して液体組成物を20μl/cmの量でベタ画像状に付与する。その後、直ちに、N雰囲気下において、液体組成物の付与領域に対してUV照射(光源:UV-LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)して硬化させて構造体を得る。
--重合性化合物--
重合性化合物は、重合することにより樹脂を形成し、液体組成物中において重合した場合に上記開口部及び上記孔を有する多孔質樹脂を形成する。また、重合性化合物は、活性エネルギー線が照射されることで樹脂を形成することが好ましい。また、重合性化合物により形成される樹脂は、2官能以上の重合性化合物を用いることで、分子内に架橋構造を有していることが好ましい。これにより樹脂のガラス転移点又は融点を高めることができ、結果として強度が向上する。また、架橋構造により耐水性も向上する。
なお、活性エネルギー線としては、液体組成物中の重合性化合物の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線等が挙げられる。これらの中でも紫外線であることが好ましい。なお、特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。
重合性化合物は、少なくとも1つのラジカル重合性官能基を有することが好ましい。その例としては、1官能、2官能、3官能以上のラジカル重合性化合物、機能性モノマー、及びラジカル重合性オリゴマーなどが挙げられる。これらの中でも、2官能以上のラジカル重合性化合物が好ましい。
また、重合性化合物としては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基を有する重合性化合物であることが好ましい。
1官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
2官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5-テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
液体組成物中における重合性化合物の含有量は、液体組成物全量に対して、5.0質量%以上70.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上50.0質量%以下がより好ましく、20.0質量%以上50.0質量%以下が更に好ましい。重合性化合物の含有量が70.0質量%以下である場合、得られる樹脂構造体の開口部や孔の大きさを適切な範囲にすることができるので好ましい。また、重合性化合物の含有量が5.0質量%以上である場合、樹脂構造体の強度が向上するため好ましい。
--溶媒--
溶媒(以降、「ポロジェン」とも称する)は、重合性化合物と相溶する液体である。また、溶媒は、液体組成物中において重合性化合物が重合していく過程で重合物(樹脂)と相溶しなくなる(相分離を生じる)液体である。すなわち、本開示における「溶媒」の意味は、一般的に用いられる用語である「溶媒」の意味とは区別される。液体組成物中に溶媒が含まれることで、重合性化合物は、液体組成物中において重合した場合に、上記開口部及び上記孔を有する多孔質樹脂を形成する。また、光または熱によってラジカル又は酸を発生する化合物(後述する重合開始剤)を溶解可能であることが好ましい。溶媒は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。なお、溶媒は重合性を有さない。
ポロジェンの1種単独としての沸点または2種以上を併用した場合の沸点は、常圧において、50℃以上250℃以下であることが好ましく、70℃以上200℃以下であることがより好ましい。沸点が50℃以上であることにより、室温付近におけるポロジェンの気化が抑制されて液体組成物の取扱が容易になり、液体組成物中におけるポロジェンの含有量の制御が容易になる。また、沸点が250℃以下であることにより、重合後のポロジェンを乾燥させる工程における時間が短縮されて、樹脂構造体の生産性が向上する。
ポロジェンとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール類、γブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類、NNジメチルアセトアミド等のアミド類等を挙げることができる。また、テトラデカン酸メチル、デカン酸メチル、ミリスチン酸メチル、テトラデカン等の比較的分子量の大きな液体も挙げることができる。また、アセトン、2-エチルヘキサノール、1-ブロモナフタレン等の液体も挙げることができる。
なお、上記の例示された液体であれば常にポロジェンに該当するわけではない。ポロジェンとは、上記の通り、重合性化合物と相溶する液体であって、且つ液体組成物中において重合性化合物が重合していく過程で重合物(樹脂)と相溶しなくなる(相分離を生じる)液体である。言い換えると、ある液体がポロジェンに該当するか否かは、重合性化合物および重合物(重合性化合物が重合することにより形成される樹脂)との関係で決まる。
なお、液体組成物は、上記の通り、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有するポロジェンを少なくとも1種類含有していればいいため、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有さない液体(ポロジェンではない液体)を追加的に含有していてもよい。但し、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有さない液体(ポロジェンではない液体)の含有量は、液体組成物全量に対して10.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが更に好ましく、含まれないことが特に好ましい。
液体組成物中におけるポロジェンの含有量は、液体組成物全量に対して、30.0質量%以上95.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下がより好ましく、50.0質量%以上80.0質量%以下が更に好ましい。ポロジェンの含有量が30.0質量%以上である場合、得られる樹脂構造体の開口部や孔の大きさを適切な範囲にすることができるので好ましい。また、ポロジェンの含有量が95.0質量%以下である場合、樹脂構造体の強度が向上するため好ましい。
液体組成物中における重合性化合物の含有量とポロジェンの含有量の質量比(重合性化合物:ポロジェン)は、1.0:0.4~1.0:19.0が好ましく、1.0:1.0~1.0:9.0がより好ましく、1.0:1.0~1.0:4.0が更に好ましい。
--重合開始剤--
重合開始剤は、光や熱等のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物の重合を開始させることが可能な材料である。重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル発生剤を用いることができる。例えば、商品名イルガキュアーやダロキュアで知られるミヒラーケトンやベンゾフェノンのような光ラジカル重合開始剤、より具体的な化合物としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン誘導体、例えばα-ヒドロキシ-もしくは、α-アミノセトフェノン、4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンジルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、pp’-ジクロロベンゾフェン、pp’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインn-プロピル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(ダロキュア1173)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンモノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド又はチタノセン、フルオレセン、アントラキノン、チオキサントン又はキサントン、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物又はジハロメチル化合物、活性エステル化合物、有機ホウ素化合物、等が好適に使用される。
更に、ビスアジド化合物のような光架橋型ラジカル発生剤を同時に含有させても構わない。又、熱のみで重合させる場合は通常のラジカル発生剤であるazobisisobutyronitrile(AIBN)等の熱重合開始剤を使用することができる。
重合開始剤の含有量は、十分な硬化速度を得るために、重合性化合物の総質量を100.0質量%とした場合に、0.05質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
--有機高分子化合物--
有機高分子化合物は、液体組成物に添加される高分子の有機化合物であり、例えば、樹脂(以降「添加樹脂」とも称する)及び天然物に由来する有機高分子化合物などが挙げられる。なお、添加樹脂は、上記の重合性化合物が重合されることにより形成される樹脂(「重合樹脂」と称してもよい)とは異なる。また、有機高分子化合物は、液体組成物に添加されていることが好ましいが、添加されていなくてもよい。また、有機高分子化合物は重合性官能基を有していないことが好ましい。
有機高分子化合物は、液体組成物に添加されることで、当該液体組成物が硬化することで形成される樹脂構造体の硬度を向上させることができる。有機高分子化合物により樹脂構造体の硬度を向上させることができる理由について以下説明する。
一般に、有機高分子化合物を含まない液体組成物が硬化される過程において、重合性化合物が重合されることにより形成される樹脂は、重合が進むにつれて液体組成物に対して不溶化することで粒子状の核を形成し、この核が分子間力により集合及び結着し、結果として複数の粒子が連結した形状の骨格部を有する樹脂構造体が形成されるものと推察される。一方で、有機高分子化合物を含む液体組成物が硬化される過程においては、有機高分子化合物と重合性化合物との間で可逆的な結合及び解離が可能な結合力が生じ、有機高分子化合物の長鎖に沿って重合性化合物の重合が進む(言い換えると、有機高分子化合物と重合性化合物の重合体との間でも可逆的な結合及び解離が可能な結合力が生じる)。これにより、重合性化合物が重合されることにより形成される樹脂が、重合が進むにつれて液体組成物に対して不溶化することで粒子状の核を形成することが抑制され、結果として略平面形状の骨格部を有する樹脂構造体が形成されるものと推察される。そして、上記の通り、略平面形状の骨格部を有する樹脂構造体の硬度は、複数の粒子が連結した形状の骨格部を有する樹脂構造体の硬度より高いため、有機高分子化合物により樹脂構造体の硬度を向上させることができると言える。
なお、可逆的な結合及び解離が可能な結合力とは、水素結合(2~40kJ/mol)であることが好ましい。すなわち、有機高分子化合物は、重合性化合物及び重合性化合物の重合体と水素結合可能な官能基を有することが好ましい。
また、有機高分子化合物は、溶媒に対して溶解することが好ましい。有機高分子化合物が溶媒に溶解可能であることで、重合性化合物の重合が有機高分子化合物の長鎖に沿って適切に進むためである。なお、有機高分子化合物が溶媒に対して溶解するとは、25℃の溶媒100gに対して有機高分子化合物20gを加えて混合して撹拌した場合に、有機高分子化合物の90質量%以上が溶解することを表す。
添加樹脂は、重合性化合物及び重合性化合物の重合体と、可逆的な結合及び解離が可能な結合力が生じる限り特に限定されないが、水素結合を形成可能な官能基を有することが好ましいため、例えば、分子内に水酸基等を有する樹脂を挙げることができる。具体的には、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、エチルセルロース、及びニトロセルロース等が挙げられ、ポリビニルブチラール等が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、また、適宜合成したものであってもよいし、市販品であってもよい。
天然物に由来する有機高分子化合物は、重合性化合物及び重合性化合物の重合体と、可逆的な結合及び解離が可能な結合力が生じる限り特に限定されないが、水素結合を形成可能な官能基を有することが好ましい。具体的には、天然リグニンに由来するリグニン誘導体等が好ましい。
天然リグニンとしては、天然木材に含まれるリグニン、稲わら、麦わら等の草本植物に含まれるリグニン等が挙げられる。
リグニン誘導体は、天然リグニンに対し、例えば下記のような所定の処理を施して得ることができる。
所定の処理の一例としては、天然木材からリグニンを取り除きパルプを得る処理方法が代表的な処理方法である。その1つとして、クラフト法によるパルプ処理がある。水酸化ナトリウム水溶液と硫化ナトリウム水溶液を蒸解液とする方法であり、天然木材からリグニンを分離するための低分子化処理を行うことでリグニン誘導体が得られる。本処理により得られるリグニン誘導体を「クラフトリグニン」と称する。
別の処理の一例としては、木材等の原料から硫酸を用いて糖化した残渣リグニンを、アルカリ水溶液中で水熱処理し、水溶化処理することでリグニン誘導体が得られる。本処理により得られるリグニン誘導体を「水熱処理した硫酸リグニン」と称する。
更に別の処理の一例としては、稲わら、麦わら等の草本原料をアルカリ水溶液中で処理し、水溶化処理することでリグニン誘導体が得られる本処理により得られるリグニン誘導体を「アルカリリグニン」と称する。
また、酵素糖化リグニンも使用することができる。
なお、本開示におけるリグニン誘導体は、上記のような所定の処理を施して得られるものに限定されず、上記のような所定の処理を施した後で更に追加の処理(ヒドロキシメチル化処理、リン酸化処理等)が施されたものであってもよい。
有機高分子化合物の含有量は、樹脂構造体の十分な硬度を得るために、液体組成物の総質量を100.0質量%とした場合に、1.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.3質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。
--液体組成物の物性--
液体組成物の粘度は、液体組成物を付与する際の作業性の観点から25℃において、1.0mPa・s以上200.0mPa・s以下が好ましく、1.0mPa・s以上150.0mPa・s以下がより好ましく、1.0mPa・s以上100.0mPa・s以下が更に好ましく、1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下がより更に好ましく、1.0mPa・s以上25.0mPa・s以下が特に好ましい。液体組成物の粘度が1.0mPa・s以上200.0mPa・s以下であることにより、液体組成物を吐出方式、好ましくはインクジェット方式に適用する場合においても、良好な吐出性が得られる。ここで、粘度は、例えば、粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)などを使用して測定することができる。
-乾燥することで樹脂構造体を形成する液体組成物-
乾燥することで溶解又は分散していた樹脂が析出又は凝集(以降、「析出又は凝集」のことを総称して単に「析出」と称する)し、上記樹脂構造体を形成する液体組成物(「析出型組成物」とも称する)は、樹脂(以降「析出樹脂」とも称する)、析出樹脂に対する良溶媒、及び析出樹脂に対する貧溶媒、などを含むことが好ましい。また、液体組成物により形成される樹脂構造体は、乾燥時に複数の開口部を有する表面構造が形成されることが好ましい。更に、液体組成物により形成される樹脂構造体は、乾燥時に複数の開口部を有する表面構造が形成され、かつ当該開口部が連通する共連続構造も同時に形成されることがより好ましい。本方法によれば、作製に長い工程(ナノインプリント等の転写法、パターニングなど)を要する微細な突起構造体の柱(ナノピラー)を有する構造体に比べて、短い工程で抗病原体構造体を作製できる点で有利である。また、本方法によれば、抗病原体活性を付与したい対象物(基材)に対し、液体組成物をインクジェット方式及びスプレー方式などで吐出することができるため、ナノインプリント等の転写法と比較して、対象物(基材)に対し非接触で抗病原体構造体を作製できる点で有利である。具体的には、非接触で抗病原体構造体を作製できることで、対象物(基材)が構造的に弱いことで転写法を適用できない場合、対象物(基材)が曲面構造などの複雑な立体形状を有する場合、衛生面の観点から対象物(基材)に対して非接触で処理を行う必要がある場合などにおいて有利である。
まず、析出樹脂、良溶媒、及び貧溶媒などを含む液体組成物が乾燥することで上記樹脂構造体を形成する理由について説明する。
析出樹脂を良溶媒及び貧溶媒を含む液体に溶解又は分散させて液体組成物を作製した場合、析出樹脂は主に良溶媒中に溶解又は分散し、貧溶媒中には実質的に析出樹脂が存在しない状態となる。すなわち、液体組成物中において、析出樹脂が偏在している状態とすることができる。このような状態の液体組成物を乾燥させて析出樹脂を析出させると、良溶媒が存在していた部分には析出樹脂が残り、貧溶媒が存在していた部分には空隙が生じる。これにより、製造された析出樹脂の樹脂構造体は表面に複数の開口部が形成された多孔質構造となる。
--樹脂(析出樹脂)--
析出樹脂は、液体組成物が乾燥することで析出し、上記開口部及び上記孔を有する多孔質樹脂を形成する。また、上記の通り、良溶媒に溶解又は分散し、貧溶媒には実質的に溶解及び分散しない。
析出樹脂として使用できる樹脂は、良溶媒に溶解又は分散し、貧溶媒には実質的に溶解及び分散しないものであれば特に限定されないが、例えば、上記の生分解性樹脂及び熱可塑性樹脂などが挙げられる。
析出樹脂の含有量は、液体組成物の総質量を100.0質量%とした場合に、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上15.0質量%以下であることがより好ましい。
--良溶媒--
良溶媒は、析出樹脂を溶解又は分散できる液体である。本開示において、良溶媒とは、25℃の液体100gに対して析出樹脂0.1gを添加した場合に、析出樹脂が溶解又は分散できる液体を表すことが好ましい。
良溶媒としては、析出樹脂を溶解又は分散できる液体であれば特に限定されないが、例えば、アルコール、ケトン、エーテル、アセトニトリル、及びテトラヒドロフランなどが挙げられる。
アルコールとしては、例えば、炭素数1以上4以下のアルコールなどが挙げられる。炭素数1以上4以下のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールなどが挙げられる。
ケトンとしては、例えば、炭素数3以上6以下のケトンなどが挙げられる。炭素数3~6のケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノンなどが挙げられる。
エーテルとしては、例えば、炭素数2以上6以下のエーテルなどが挙げられる。炭素数2以上6以下のエーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、及びジエチルエーテルなどが挙げられる。
これらは、1種類単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、アルコールとケトンとを併用することが好ましく、エタノールとアセトンとを併用することがより好ましい。
良溶媒の含有量は、析出樹脂を溶解又は分散できる量である限り特に限定されないが、例えば、液体組成物の総質量を100.0質量%とした場合に、30.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、40.0質量%以上80.0質量%以下であることがより好ましい。
--貧溶媒--
貧溶媒は、析出樹脂を実質的に溶解及び分散しない液体である。本開示において、貧溶媒とは、25℃の液体100gに対して析出樹脂を添加した場合に析出樹脂が溶解又は分散できる質量が、25℃の良溶媒100gに対して析出樹脂を添加した場合に析出樹脂が溶解又は分散できる質量に対して半分以下であることが好ましい。
また、貧溶媒は、良溶媒と分離することなく一定量が互いに相溶する液体である。
貧溶媒としては、析出樹脂を実質的に溶解及び分散しない液体であり、良溶媒と分離することなく一定量が互いに相溶する液体であれば特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、及び水などが挙げられる。これらは、1種類単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
貧溶媒の含有量は、貧溶媒が良溶媒中に分散できる量である限り特に限定されないが、例えば、液体組成物の総質量を100.0質量%とした場合に、10.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましく、20.0質量%以上50.0質量%以下であることがより好ましい。
--液体組成物の物性--
液体組成物の粘度は、液体組成物を付与する際の作業性の観点から25℃において、1.0mPa・s以上200.0mPa・s以下が好ましく、1.0mPa・s以上150.0mPa・s以下がより好ましく、1.0mPa・s以上100.0mPa・s以下が更に好ましく、1.0mPa・s以上30.0mPa・s以下がより更に好ましく、1.0mPa・s以上25.0mPa・s以下が特に好ましい。液体組成物の粘度が1.0mPa・s以上200.0mPa・s以下であることにより、液体組成物を吐出方式、好ましくはインクジェット方式に適用する場合においても、良好な吐出性が得られる。ここで、粘度は、例えば、粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)などを使用して測定することができる。
<その他物質>
抗病原体構造体は、上記の樹脂構造体に加えて、必要に応じて、その他物質を含んでもよい。その他物質としては、抗微生物剤及び抗ウイルス剤などが挙げられる。抗微生物剤及び抗ウイルス剤としては、具体的には、薬剤のように物質自体が抗微生物活性又は抗ウイルス活性を有する有機物、次亜塩素酸のように経時的に抗微生物活性又は抗ウイルス活性を生じる物質、銀や銅などのように抗微生物活性又は抗ウイルス活性を有する無機物、酸化チタンや酸化タングステンなどのように光触媒反応により有機物を分解する機能を有する無機物等が挙げられる。なお、本開示では、製造後に残存した樹脂構造体の出発材料(例えば、重合性化合物など)は、抗微生物剤又は抗ウイルス剤に含まれないものであるとする。
但し、本実施形態の抗病原体構造体は、実質的に抗微生物剤又は抗ウイルス剤が含まれないことが好ましく、抗微生物剤及び抗ウイルス剤が含まれないことがより好ましい。抗微生物剤又は抗ウイルス剤が含まれないことにより、抗微生物剤又は抗ウイルス剤により生じうる人体への影響(アレルギー反応等)を抑制することができ、また抗微生物剤又は抗ウイルス剤に耐性を有する微生物又はウイルスの発生を抑制することができるためである。なお、実質的に抗微生物剤が含まれないとは、抗微生物剤の含有量が抗病原体構造体の質量に対して1.0質量%以下である場合、抗微生物剤の含有量が抗病原体構造体の質量に対して0.5質量%以下である場合、抗微生物剤の含有量が抗病原体構造体の質量に対して0.1質量%以下である場合、抗微生物剤による抗微生物活性が観察できない場合、又は抗微生物剤の含有量が検出限界以下である場合などを表す。また、実質的に抗ウイルス剤が含まれないとは、抗ウイルス剤の含有量が抗病原体構造体の質量に対して1.0質量%以下である場合、抗ウイルス剤の含有量が抗病原体構造体の質量に対して0.5質量%以下である場合、抗ウイルス剤の含有量が抗病原体構造体の質量に対して0.1質量%以下である場合、抗ウイルス剤による抗ウイルス活性が観察できない場合、又は抗ウイルス剤の含有量が検出限界以下である場合などを表す。なお、抗微生物剤による抗微生物活性の観察、抗微生物剤の含有量の検出、抗ウイルス剤による抗ウイルス活性の観察、及び抗ウイルス剤の含有量の検出は、それぞれ、公知かつ当該技術分野における技術常識の手段により行う。
<<抗病原体構造体の製造装置、抗病原体構造体の製造方法>>
図1は、本実施形態の抗病原体構造体の製造方法を実現するための抗病原体構造体の製造装置の一例を示す模式図である。図1の製造装置は、重合することで硬化して樹脂構造体を構成する樹脂を形成する液体組成物(硬化型組成物)を用いた場合における装置の一例を示す。但し、乾燥することで溶解又は分散していた樹脂が析出して樹脂構造体を形成する液体組成物(析出型組成物)を用いた場合に関しても、図1の製造装置における構成を追加、削除、変更することで適用できるため同時に説明する。
<抗病原体構造体の製造装置>
抗病原体構造体の製造装置100は、上記の液体組成物を用いて抗病原体構造体を製造する装置である。抗病原体構造体の製造装置100は、基材4上に液体組成物を付与する工程を実行する付与工程部10と、基材4上に液体組成物が付与されることで形成された液体組成物層が含む重合性化合物を重合させることで抗病原体構造体の前駆体6を得る重合工程を実行する重合工程部20と、抗病原体構造体の前駆体6を加熱して抗病原体構造体を得る加熱工程を含む加熱工程部30を備える。抗病原体構造体の製造装置100は、基材4を搬送する搬送部5を備え、搬送部5は、付与工程部10、重合工程部20、加熱工程部30の順に基材4をあらかじめ設定された速度で搬送する。
なお、液体組成物として析出型組成物を用いる場合、重合工程部20は無くてもよい。
-付与工程部-
付与工程部10は、基材4上に液体組成物を付与する付与工程を実現する付与手段の一例である付与装置1aと、液体組成物を収容する収容容器1bと、収容容器1bに貯留された液体組成物を付与装置1aに供給する供給チューブ1cを備える。
収容容器1bは液体組成物7を収容し、付与工程部10は、付与装置1aから基材4の方向に液体組成物7を吐出することで液体組成物7を付与し、液体組成物層を薄膜状に形成する。
なお、収容容器1bは、抗病原体構造体の製造装置100と一体化した構成であってもよいが、抗病原体構造体の製造装置100から取り外し可能な構成であってもよい。また、抗病原体構造体の製造装置100と一体化した収容容器や抗病原体構造体の製造装置100から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
付与装置1aは、液体組成物7を付与できるものであれば、特に制限はなく、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷方法に応じた任意の付与装置を用いることができる。この中でもインクジェット法は、基材の狙ったところに液体組成物7を付与できる点で好ましい。また、インクジェット法は、抗病原体構造体の膜厚を均一できる点で好ましい。
収容容器1bや供給チューブ1cは、液体組成物7を安定して貯蔵および供給できるものであれば任意に選択可能である。収容容器1bや供給チューブ1cを構成する材料は、紫外および可視光の比較的短波長領域において遮光性を有することが好ましい。これにより、液体組成物7が外光により重合開始されることが防止される。
-重合工程部-
重合工程部20は、図1に示すように、熱、光などの活性エネルギー線を液体組成物に照射することにより硬化させる硬化工程を実現する硬化手段の一例である光照射装置2aと、重合不活性気体を循環させる重合不活性気体循環装置2bを有する。光照射装置2aは、付与工程部10により形成された液体組成物層に重合不活性気体存在下において光を照射し、光重合させて抗病原体構造体の前駆体6を得る。
光照射装置2aは、液体組成物層に含まれる光重合開始剤の吸収波長に応じて適宜選択され、液体組成物層中の化合物の重合を開始および進行させられるものならば特に限定はなく、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、熱陰極管、冷陰極管、LED等の紫外線光源が挙げられる。ただし、短波長の光ほど一般に深部に到達しやすい傾向を持つため、形成する抗病原体構造体の厚みに応じて光源を選択することが好ましい。
光照射装置2aの光源の照射強度に関して説明する。照射強度が強すぎる場合は、相分離が十分に起きる前に急激に重合が進行する為、開口部及び孔の数が十分である抗病原体構造体が得られにくい傾向がある。また、照射強度が弱すぎる場合は、相分離がミクロスケール以上に進行し開口部及び孔の大きさのばらつきや粗大化が起きやすい。また、照射時間も長くなり、生産性が低下する傾向にある。そのため、照射強度としては10mW/cm以上1W/cm以下が好ましく、30mW/cm以上300mW/cm以下がより好ましい。
重合不活性気体循環装置2bは、大気中に含まれる重合活性な酸素濃度を低下させ、液体組成物層の表面近傍の重合性化合物の重合反応を阻害されることなく進行させる役割を担う。そのため、用いられる重合不活性気体は上記機能を満たすものならば特に制限はなく、例えば窒素や二酸化炭素やアルゴンなどが挙げられる。
また、その流量としては阻害低減効果が効果的に得られる事を考慮して、O濃度が20%未満(大気よりも酸素濃度が低い環境)であることが好ましく、0%以上15%以下であることがより好ましく、0%以上5%以下であることが更に好ましい。また、重合不活性気体循環装置2bは安定した重合進行条件を実現させる為に、温度を調節できる温調手段が設けられていることが好ましい。
-加熱工程部-
加熱工程部30は、図1に示すように、加熱工程を実現する加熱手段の一例である加熱装置3aを有し、重合工程部20により形成した抗病原体構造体の前駆体6に残存する溶媒を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する溶媒除去工程を含む。これにより抗病原体構造体を形成することができる。加熱工程部30は、溶媒除去工程を減圧下で実施しても良い。
また、加熱工程部30は、抗病原体構造体の前駆体6を加熱装置3aにより加熱して、重合工程部20で実施した重合反応を更に促進させる重合促進工程、および抗病原体構造体の前駆体6に残存する光重合開始剤を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する開始剤除去工程も含む。なお、これらの重合促進工程および開始剤除去工程は、溶媒除去工程と同時ではなく、溶媒除去工程の前または後に実施されても良い。
さらに、加熱工程部30は、溶媒除去工程後に、抗病原体構造体を減圧下で加熱する重合完了工程を含む。加熱装置3aは、上記機能を満たすものならば特に制限はなく、例えばIRヒーターや温風ヒーターなどが挙げられる。
また、加熱温度や時間に関しては、抗病原体構造体の前駆体6に含まれる溶媒の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
なお、液体組成物として析出型組成物を用いる場合、加熱工程部30は、加熱手段を用いて加熱することで良溶媒及び貧溶媒を乾燥させ、溶解又は分散していた析出樹脂を析出させ、抗病原体構造体を形成する。このとき、良溶媒及び貧溶媒を乾燥させる乾燥工程に用いる手段である乾燥手段は、加熱手段に限らず、送風手段等を用いてもよい。
-基材-
基材4の材料としては透明、不透明を問わずあらゆる材料を用いることができる。例えば、透明基材としては、ガラス基材、各種プラスチックフィルム等の樹脂フィルム基材、これら基材の複合基材などが挙げられる。また不透明な基材としては、ステンレス等の金属基材、これらを積層した基材などが挙げられる。
また、基材の形状に関しても、付与工程部10、重合工程部20に適用可能な基材ならば特に制限なく用いることができ、曲面形状や凹凸形状を有するものであってもよい。
<<抗病原体構造体の用途>>
本実施形態の抗病原体構造体の用途としては、抗病原体活性が発揮できる限り特に制限されないが、例えば、樹脂、紙、金属、及び布帛などの各種基材の表面に対して抗病原体構造体を形成させ、これら基材に抗病原体活性を付与する用途が挙げられる。より具体的には、食品用途及び医療用途等に展開することが好ましく、食品用トレイ、食品用容器、食品用ラップフィルム、医療用トレイ、医療用容器、医療用衣服、医療用手袋、医療用帽子、医療用マスク、医療用テープ、抗菌フィルム、抗菌ティッシュ等が挙げられる。
なお、本願では、基材及び当該基材表面に形成された抗病原体構造体を有し、基材に抗病原体活性を付加させたものを抗病原体活性付加物と称する。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
<液体組成物の調整例>
(調製例1)
以下に示す割合で材料を混合し液体組成物1を調製した。
・重合性化合物:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製):29.0質量部
・ポロジェン:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業株式会社製):70.0質量部
・重合開始剤:Irgacure184(BASF社製):1.0質量部
なお、液体組成物1の25℃における粘度を粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)を用いて測定したところ、30.0mPa・s以下であった。
(調製例2)
以下に示す割合で材料を混合し液体組成物2を調製した。
・重合性化合物:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(アルケマ(サートマー)社製):29.0質量部
・ポロジェン:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業株式会社製):70.0質量部
・重合開始剤:Irgacure184(BASF製):1.0質量部
なお、液体組成物2の25℃における粘度を粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)を用いて測定したところ、30.0mPa・s以下であった。
(比較調製例1)
以下に示す割合で材料を混合し比較液体組成物1を調製した。
・重合性化合物:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製):29.0質量部
・ポロジェン:シクロヘキサノン(関東化学工業株式会社製):70.0質量部
・重合開始剤:Irgacure184(BASF製):1.0質量部
なお、液体組成物1の25℃における粘度を粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)を用いて測定したところ、30.0mPa・s以下であった。
<抗病原体構造体の作製例>
(実施例1)
液体組成物1をGEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)搭載のインクジェット吐出装置に充填し、ガラス板に対して吐出してベタ画像状の付与領域を形成した。その後、直ちに、N雰囲気下において、液体組成物1の付与領域に対してUV照射(光源:UV-LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)して硬化させた。次に、ホットプレートを用い、硬化物を120℃で1分間加熱することでポロジェンを除去し、実施例1の抗病原体構造体を得た。なお、液体組成物1をインクジェット方式で吐出するにあたり、ノズル詰まり及び吐出曲がり等の吐出不良は観察されず、吐出安定性が高いことを確認した。
実施例1の抗病原体構造体の表面を、SEMを用いて観察した結果を図4に示す。
(実施例2)
実施例1において、液体組成物1を液体組成物2に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の抗病原体構造体を得た。なお、液体組成物2をインクジェット方式で吐出するにあたり、ノズル詰まり及び吐出曲がり等の吐出不良は観察されず、吐出安定性が高いことを確認した。
(比較例1)
実施例1において、液体組成物1を比較液体組成物1に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の構造体を得た。なお、比較液体組成物1をインクジェット方式で吐出するにあたり、ノズル詰まり及び吐出曲がり等の吐出不良は観察されず、吐出安定性が高いことを確認した。
比較例1の構造体の表面を、SEMを用いて観察した結果を図5に示す。
次に、得られた実施例1~2の抗病原体構造体、比較例1の構造体について、表面の開口部の孔径、内部の孔の孔径、及び空隙率の評価を行った。
[表面の開口部の孔径の評価]
抗病原体構造体の表面をSEMにより観察した。結果、実施例1~2において、孔径が1.0μm程度の開口部が抗病原体構造体の表面全体に渡って観察された。一方、比較例1においては、開口部が観察されなかった。
[内部の孔の孔径の評価]
抗病原体構造体の断面を作成し、当該断面をSEMにより観察した。結果、実施例1~2において、孔径が1.0μm程度の孔が抗病原体構造体の断面全体に渡って観察された。一方、比較例1においては、孔が観察されなかった。また、実施例1~2における各孔は連通しており、更に、表面の開口部とも連通していることが観察された。
[空隙率の評価]
抗病原体構造体に不飽和脂肪酸(市販のバター)を充填し、オスミウム染色を施した後、FIBで内部の断面構造を切り出し、SEMを用いて抗病原体構造体の空隙率を測定した。結果、実施例1~2における空隙率は30%以上であった。一方、比較例1における空隙率は30%未満であった。
次に、得られた実施例1~2の抗病原体構造体、比較例1の構造体について、抗病原体活性(抗菌活性)の評価を行った。
[抗病原体活性(抗菌活性)の評価]
JIS Z 2801(2012)の方法に準拠し、抗病原体活性を評価した。具体的には、同一の菌液を無加工試験片(ガラス板)と検体(実施例1~2の抗病原体構造体、比較例1の構造体)に接種し、24時間後の菌数を測定した。結果を下記表1に示す。
Figure 0007060065000001
次に、得られた実施例1~2の抗病原体構造体、比較例1の構造体について、耐久性及び耐水性の評価を行った。
[耐久性の評価]
まず、JIS Z 2801(2012)の方法に準拠し、実施例1~2の抗病原体構造体、比較例1の構造体の抗菌活性値を求めた。具体的には、ガラス板である無加工試験片(試験片A)、試験片A上に形成されている試験片B、及び試験片A上に形成されている試験片Cに対して同一の菌液をそれぞれ接種し、24時間後の菌数を測定し、下記数式に基づいて抗菌活性値を算出した。抗菌活性値が0.3以上であったものを「a」とし、抗菌活性値が0.3未満であったものを「b」とし、結果を下記表2に示す。
ここで、試験片Cは、実施例1~2の抗病原体構造体及び比較例1の構造体を表す。
また、試験片Bは、調整例1~2及び比較調整例1において、ポロジェンを含まない以外は同様の調整方法により得られた液体組成物を用いて作製した試験片を表す。具体的には、当該液体組成物をガラス板に対して塗布してベタ画像状の塗布領域を形成し、その後、直ちに、N雰囲気下において、当該液体組成物の塗布領域に対してUV照射(光源:UV-LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)して硬化させることで作製した。当該液体組成物を用いて作製された試験片Bは、いずれも表面構造が平面状であって複数の開口部が形成されていない試験片であった。
抗菌活性値=(logB-logA)-(logC-logA)
・A:試験片Aの24時間後における生菌数の平均値
・B:試験片Bの24時間後における生菌数の平均値
・C:試験片Cの24時間後における生菌数の平均値
次に、試験片C(実施例1~2の抗病原体構造体、比較例1の構造体)の表面を、乾いた木綿(カナキン3号)を用いて400gの加重をかけて10回擦過した。擦過後の実施例1~2の抗病原体構造体、比較例1の構造体の抗菌活性値を上記同様の方法で求めた。結果を下記表2に示す。
[耐水性の評価]
まず、JIS Z 2801(2012)の方法に準拠し、実施例1~2の抗病原体構造体、比較例1の構造体の抗菌活性値を求めた。具体的には、ガラス板である無加工試験片(試験片A)、試験片A上に形成されている試験片B、及び試験片A上に形成されている試験片Cに対して同一の菌液をそれぞれ接種し、24時間後の菌数を測定し、下記数式に基づいて抗菌活性値を算出した。抗菌活性値が0.3以上であったものを「a」とし、抗菌活性値が0.3未満であったものを「b」とし、結果を下記表2に示す。
ここで、試験片Cは、実施例1~2の抗病原体構造体及び比較例1の構造体を表す。
また、試験片Bは、調整例1~2及び比較調整例1において、ポロジェンを含まない以外は同様の調整方法により得られた液体組成物を用いて作製した試験片を表す。具体的には、当該液体組成物をガラス板に対して塗布してベタ画像状の塗布領域を形成し、その後、直ちに、N雰囲気下において、当該液体組成物の塗布領域に対してUV照射(光源:UV-LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)して硬化させることで作製した。当該液体組成物を用いて作製された試験片Bは、いずれも表面構造が平面状であって複数の開口部が形成されていない試験片であった。
抗菌活性値=(logB-logA)-(logC-logA)
・A:試験片Aの24時間後における生菌数の平均値
・B:試験片Bの24時間後における生菌数の平均値
・C:試験片Cの24時間後における生菌数の平均値
次に、試験片C(実施例1~2の抗病原体構造体、比較例1の構造体)を、25℃で保温されている蒸留水に浸漬させて24時間静置し、更に1日自然乾燥させた。乾燥後の実施例1~2の抗病原体構造体、比較例1の構造体の抗菌活性値を上記同様の方法で求めた。結果を下記表2に示す。
Figure 0007060065000002
<液体組成物の調整例>
(調製例3)
以下に示す割合で材料を混合し液体組成物3を調製した。
・重合性化合物:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製):28.0質量部
・ポロジェン:エチレングリコールモノブチルエーテル:70.0質量部
・重合開始剤:Irgacure819(BASF社製):1.0質量部
なお、液体組成物3の25℃における粘度を粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)を用いて測定したところ、30.0mPa・s以下であった。
<抗病原体構造体の作製例>
(実施例3)
実施例1において、液体組成物1を液体組成物3に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の抗病原体構造体を得た。なお、液体組成物3をインクジェット方式で吐出するにあたり、ノズル詰まり及び吐出曲がり等の吐出不良は観察されず、吐出安定性が高いことを確認した。
次に、得られた実施例3の抗病原体構造体について、実施例1と同様に、表面の開口部の孔径、内部の孔の孔径、及び空隙率の評価を行った。
結果、孔径が0.1~0.5μm程度の開口部が抗病原体構造体の表面全体に渡って観察され、孔径が0.1~0.5μmμm程度の孔が抗病原体構造体の断面全体に渡って観察され、且つ空隙率は30%以上であった。
次に、得られた実施例3の抗病原体構造体について、抗病原体活性(抗菌活性)の評価を行った。
[抗病原体活性(抗菌活性)の評価]
ISO 22196(2011)の方法に準拠し、実施例3の抗病原体構造体の抗菌活性値を求めた。具体的には、ガラス板上に形成されている試験片B、及びガラス板上に形成されている試験片Cに対して同一の菌液をそれぞれ接種し、24時間後の菌数を測定し、下記数式に基づいて抗菌活性値を算出した。結果を下記表3に示す。
ここで、試験片Cは、実施例3の抗病原体構造体を表す。
また、試験片Bは、調整例3において、ポロジェンを含まない以外は同様の調整方法により得られた液体組成物を用いて作製した試験片を表す。具体的には、当該液体組成物をガラス板に対して塗布してベタ画像状の塗布領域を形成し、その後、直ちに、N雰囲気下において、当該液体組成物の塗布領域に対してUV照射(光源:UV-LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)して硬化させることで作製した。当該液体組成物を用いて作製された試験片Bは、表面構造が平面状であって複数の開口部が形成されていない試験片であった。
抗菌活性値=Ut-At
・Ut:試験片Bの24時間後における生菌数の常用対数値の平均値
・At:試験片Cの24時間後における生菌数の常用対数値の平均値
Figure 0007060065000003
次に、得られた実施例3の抗病原体構造体について、耐久性及び耐水性の評価を行った。
[耐久性の評価]
試験片C(実施例3の抗病原体構造体)の表面を、乾いた木綿(カナキン3号)を用いて400gの加重をかけて10回擦過した。擦過後の実施例3の抗病原体構造体の抗菌活性値を、上記同様ISO 22196(2011)に準拠する方法で求めた。抗菌活性値が0.3以上であったものを「a」とし、抗菌活性値が0.3未満であったものを「b」とし、結果を下記表4に示す。
[耐水性の評価]
試験片C(実施例3の抗病原体構造体)を、25℃で保温されている蒸留水に浸漬させて24時間静置し、更に1日自然乾燥させた。乾燥後の実施例3の抗病原体構造体の抗菌活性値を、上記同様ISO 22196(2011)に準拠する方法で求めた。抗菌活性値が0.3以上であったものを「a」とし、抗菌活性値が0.3未満であったものを「b」とし、結果を下記表4に示す。
Figure 0007060065000004
<液体組成物の調整例>
(調製例4)
以下に示す割合で材料を混合し液体組成物4を調製した。
・重合性化合物:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製):48.0質量部
・ポロジェン:エチレングリコールモノイソプロピルエーテル:50.0質量部
・重合開始剤:Irgacure819(BASF社製):1.0質量部
なお、液体組成物4の25℃における粘度を粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)を用いて測定したところ、30.0mPa・s以下であった。
<抗病原体構造体の作製例>
(実施例4)
液体組成物4をGEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)搭載のインクジェット吐出装置に充填し、ガラス板に対して吐出してベタ画像状の付与領域を形成した。その後、直ちに、N雰囲気下において、液体組成物1の付与領域に対してUV照射(光源:UV-LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:400mW/cm、照射時間:20s)して硬化させた。次に、ホットプレートを用い、硬化物を120℃で1分間加熱することでポロジェンを除去し、実施例4の抗病原体構造体を得た。なお、液体組成物4をインクジェット方式で吐出するにあたり、ノズル詰まり及び吐出曲がり等の吐出不良は観察されず、吐出安定性が高いことを確認した。
実施例4の抗病原体構造体の表面を、SEMを用いて観察した結果を図6に示す。
次に、得られた実施例4の抗病原体構造体について、実施例1と同様に、表面の開口部の孔径、内部の孔の孔径、及び空隙率の評価を行った。
結果、孔径が0.05μm程度の開口部が抗病原体構造体の表面全体に渡って観察され、孔径が0.05μm程度の孔が抗病原体構造体の断面全体に渡って観察され、且つ空隙率は30%以上であった。
次に、得られた実施例1及び実施例4の抗病原体構造体について、抗病原体活性(抗ウイルス活性)の評価を行った。
[抗病原体活性(抗ウイルス活性)の評価]
ISO 21702(2019)の方法に準拠し、実施例1及び実施例4の抗病原体構造体の抗ウイルス活性値を求めた。具体的には、ガラス板上に形成されている試験片Y、及びガラス板上に形成されている試験片Xに対して同一のウイルス液をそれぞれ接種し、24時間後のウイルス感染価(PFU/cm)を測定し、下記数式に基づいて抗ウイルス活性値を算出した。結果を下記表5に示す。
ここで、試験片Xは、実施例1又は実施例4の抗病原体構造体を表す。
また、試験片Yは、調整例1又は調整例4において、ポロジェンを含まない以外は同様の調整方法により得られた液体組成物を用いて作製した試験片を表す。具体的には、当該液体組成物をガラス板に対して塗布してベタ画像状の塗布領域を形成し、その後、直ちに、N雰囲気下において、当該液体組成物の塗布領域に対してUV照射(光源:UV-LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)して硬化させることで作製した。当該液体組成物を用いて作製された試験片Yは、表面構造が平面状であって複数の開口部が形成されていない試験片であった。
抗ウイルス活性値=Ut-At
・Ut:試験片Yの24時間後におけるウイルス感染価の常用対数値の平均値
・At:試験片Xの24時間後におけるウイルス感染価の常用対数値の平均値
Figure 0007060065000005
次に、得られた実施例1及び実施例4の抗病原体構造体について、耐久性及び耐水性の評価を行った。
[耐久性の評価]
試験片X(実施例1及び実施例4の抗病原体構造体)の表面を、乾いた木綿(カナキン3号)を用いて400gの加重をかけて10回擦過した。擦過後の実施例1及び実施例4の抗病原体構造体の抗ウイルス活性値を、上記同様ISO 21702(2019)に準拠する方法で求めた。抗ウイルス活性値が0.2以上であったものを「a」とし、抗菌活性値が0.2未満であったものを「b」とし、結果を下記表6に示す。
[耐水性の評価]
試験片X(実施例1及び実施例4の抗病原体構造体)を、25℃で保温されている蒸留水に浸漬させて24時間静置し、更に1日自然乾燥させた。乾燥後の実施例1及び実施例4の抗病原体構造体の抗ウイルス活性値を、上記同様ISO 21702(2019)に準拠する方法で求めた。抗菌活性値が0.2以上であったものを「a」とし、抗菌活性値が0.2未満であったものを「b」とし、結果を下記表6に示す。
Figure 0007060065000006
<液体組成物の調整例>
(調製例5)
以下に示す割合で材料を混合し液体組成物5を調製した。
・重合性化合物:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社製):29.0質量部
・ポロジェン:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学工業株式会社製):65.0質量部
・重合開始剤:Irgacure184(BASF社製):1.0質量部
・ポリビニルブチラール樹脂(株式会社クラレ製、Mowital B20H):5.0質量部
なお、液体組成物5の25℃における粘度を粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)を用いて測定したところ、100.0mPa・s以下であった。
<抗病原体構造体の作製例>
(実施例5)
液体組成物5をガラス板に対して塗布してベタ画像状の付与領域を形成した。その後、直ちに、N雰囲気下において、液体組成物5の付与領域に対してUV照射(光源:UV-LED(Phoseon社製、商品名:FJ800)、波長:365nm、照射強度:30mW/cm、照射時間:20s)して硬化させた。次に、ホットプレートを用い、硬化物を120℃で1分間加熱することでポロジェンを除去し、実施例5の抗病原体構造体を得た。
実施例5の抗病原体構造体の表面を、SEMを用いて観察した結果が上記で説明した図3であった。
次に、得られた実施例5の抗病原体構造体について、実施例1と同様に、表面の開口部の孔径、内部の孔の孔径、及び空隙率の評価を行った。
結果、孔径が0.5μm程度の開口部が抗病原体構造体の表面全体に渡って観察され、孔径が0.5μm程度の孔が抗病原体構造体の断面全体に渡って観察され、且つ空隙率は15%以上であった。
次に、得られた実施例5の抗病原体構造体について、鉛筆硬度の評価を行った。
[鉛筆硬度の評価]
ISO 15184の方法に準拠し、実施例5の抗病原体構造体(樹脂構造体)の表面構造が形成されている面における硬度を求めた。本測定は鉛筆硬度試験機(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、750g荷重にて実施した。
結果、実施例5の抗病原体構造体の鉛筆硬度はFであった。
また、得られた実施例5の抗病原体構造体について、実施例3と同様にISO 22196(2011)の方法に準拠し、抗病原体活性(抗菌活性)の評価を行った。
結果、実施例5の抗病原体構造体の抗菌活性値は0.3以上であった。
また、得られた実施例5の抗病原体構造体について、実施例3と同様に耐久性の評価を行った。
結果、実施例5の抗病原体構造体の擦過後の抗菌活性値は0.3以上であった。
また、得られた実施例5の抗病原体構造体について、実施例3と同様に耐水性の評価を行った。
結果、実施例5の抗病原体構造体を蒸留水に浸漬させて乾燥させた後のものにおける抗菌活性値は0.3以上であった。
<液体組成物の調整例>
(調製例6)
以下に示す割合で材料を混合し液体組成物6を調製した。
・析出樹脂:ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA7520、富士フイルム和光純薬工業製):10.0質量部
・良溶媒:アセトン:67.5質量部(富士フイルム和光純薬工業製)
・貧溶媒:エタノール:22.5質量部(富士フイルム和光純薬工業製)
なお、液体組成物6の25℃における粘度を粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)を用いて測定したところ、30.0mPa・s以下であった。
<液体組成物の調整例>
(調製例7)
以下に示す割合で材料を混合し液体組成物7を調製した。
・析出樹脂:ポリ乳酸(RESOMER R 203H、Sigma-Aldrich社製):15.0質量部
・良溶媒:メチルエチルケトン:45.0質量部(富士フイルム和光純薬工業製)
・貧溶媒:メタノール:45.0質量部(富士フイルム和光純薬工業製)
なお、液体組成物7の25℃における粘度を粘度計(装置名:RE-550L、東機産業株式会社製)を用いて測定したところ、30.0mPa・s以下であった。
<抗病原体構造体の作製例>
(実施例1)
液体組成物6~7をそれぞれGEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)搭載のインクジェット吐出装置に充填し、ガラス板に対して吐出してベタ画像状の付与領域を形成した。その後、直ちに、25℃に設定した真空乾燥器内にガラス板を入れ、6時間乾燥させることで良溶媒及び貧溶媒を除去し、実施例6~7の抗病原体構造体を得た。なお、液体組成物6~7をインクジェット方式で吐出するにあたり、ノズル詰まり及び吐出曲がり等の吐出不良は観察されず、吐出安定性が高いことを確認した。
次に、得られた実施例6~7の抗病原体構造体について、実施例1と同様に、表面の開口部の孔径、内部の孔の孔径、及び空隙率の評価を行った。
結果、孔径が0.5μm程度の開口部が抗病原体構造体の表面全体に渡って観察され、孔径が0.5μm程度の孔が抗病原体構造体の断面全体に渡って観察され、且つ空隙率は15%以上であった。
また、得られた実施例6~7の抗病原体構造体について、実施例3と同様にISO 22196(2011)の方法に準拠し、抗病原体活性(抗菌活性)の評価を行った。
結果、実施例6~7の抗病原体構造体の抗菌活性値は0.3以上であった。
また、得られた実施例6~7の抗病原体構造体について、実施例3と同様に耐久性の評価を行った。
結果、実施例6~7の抗病原体構造体の擦過後の抗菌活性値は0.3以上であった。
また、得られた実施例6~7の抗病原体構造体について、実施例3と同様に耐水性の評価を行った。
結果、実施例6~7の抗病原体構造体を蒸留水に浸漬させて乾燥させた後のものにおける抗菌活性値は0.3以上であった。
1a:付与装置
1b:容器
1c:供給チューブ
2a:光照射装置
2b:重合不活性気体循環装置
3a:加熱装置
4:基材
5:搬送部
6:抗病原体構造体の前駆体
7:液体組成物
10:付与工程部
20:重合工程部
30:加熱工程部
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特開2019-72475号公報 特許第6454710号

Claims (28)

  1. 表面に孔径が1μm以下である複数の開口部を有し、
    複数の前記開口部を形作る骨格部を有し、
    前記骨格部は、複数の粒子が連結した形状であることを特徴とする抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体。
  2. 複数の孔が連続して連結している共連続構造を有する多孔質構造であり、
    前記複数の開口部は、それぞれ独立して、前記共連続構造を構成する一部の前記孔と連結している請求項1に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体。
  3. 表面に複数の開口部が形成され、
    複数の孔が連続して連結している共連続構造を有する多孔質構造であり、
    複数の前記開口部は、それぞれ独立して、前記共連続構造を構成する一部の前記孔と連結し、
    複数の前記開口部を形作る骨格部を有し、
    前記骨格部は、略平面形状であることを特徴とする抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体。
  4. 前記表面において、ISO 15184に記載の方法に準拠して実施される評価における鉛筆硬度がB以上である請求項3に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体。
  5. 25℃の水に24時間浸漬された後においても抗微生物活性又は抗ウイルス活性を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体。
  6. 記開口部の孔径は、1μm以下である請求項3または4のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体。
  7. 記開口部の孔径は、0.1μm以下である請求項1から5のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体。
  8. 前記抗微生物活性を有する場合とは、JIS Z 2801(2012)又はISO22196(2011)に記載の方法に準拠して実施される評価における抗菌活性値が0.3以上であることを表す請求項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体。
  9. 前記抗ウイルス活性を有する場合とは、ISO 21702(2019)に記載の方法に準拠して実施される評価における抗ウイルス活性値が0.2以上であることを表す請求項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体。
  10. 空隙率が10%以上である
    請求項1から9のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体。
  11. 実質的に抗微生物剤及び抗ウイルス剤を有さない
    請求項1から10のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体。
  12. 基材と、
    前記基材の表面に形成され、前記基材に抗微生物活性又は抗ウイルス活性を付加する請求項1から11のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体と、を有することを特徴とする抗病原体活性付加物。
  13. 請求項1から11のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造方法であって、
    重合性化合物及びポロジェンを含有する液体組成物を付与する付与工程と、
    前記液体組成物中において前記重合性化合物を重合させて前記樹脂構造体を形成させる重合工程と、を有する
    ことを特徴とする抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造方法。
  14. 前記重合性化合物及び前記ポロジェンは相溶し、
    前記開口部は、前記重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物及び前記ポロジェンが相溶しなくなることで形成される
    請求項13に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造方法。
  15. 前記付与工程は、前記液体組成物を吐出する工程である請求項13又は14に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造方法。
  16. 前記付与工程は、前記液体組成物をインクジェット方式で吐出する工程である請求項13から15のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造方法。
  17. 前記液体組成物は、25℃における粘度が1mPa・s以上200mPa・s以下である請求項13から16のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造方法。
  18. 前記液体組成物は、25℃における粘度が1mPa・s以上100mPa・s以下である請求項13から17のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造方法。
  19. 前記液体組成物は、25℃における粘度が1mPa・s以上30mPa・s以下である請求項13から18のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造方法。
  20. 請求項12に記載の抗病原体活性付加物の製造方法であって、
    重合性化合物及びポロジェンを含有する液体組成物を前記基材に対して付与する付与工程と、
    前記液体組成物中において前記重合性化合物を重合させて前記基材の表面に前記樹脂構造体を形成させる重合工程と、を有することを特徴とする抗病原体活性付加物の製造方法。
  21. 請求項1から11のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造装置であって、
    重合性化合物及びポロジェンを含有する液体組成物を付与する付与手段と、
    前記液体組成物中において前記重合性化合物を重合させて前記樹脂構造体を形成させる重合手段と、を有することを特徴とする抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造装置。
  22. 前記重合性化合物及び前記ポロジェンは相溶し、
    前記開口部は、前記重合性化合物が重合していく過程で生じる重合物及び前記ポロジェンが相溶しなくなることで形成される請求項21に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造装置。
  23. 前記付与手段は、前記液体組成物を吐出する手段である請求項21又は22に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造装置。
  24. 前記付与手段は、前記液体組成物をインクジェット方式で吐出する手段である請求項21から23のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造装置。
  25. 前記液体組成物は、25℃における粘度が1mPa・s以上200mPa・s以下である請求項21から24のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造装置。
  26. 前記液体組成物は、25℃における粘度が1mPa・s以上100mPa・s以下である請求項21から25のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造装置。
  27. 前記液体組成物は、25℃における粘度が1mPa・s以上30mPa・s以下である請求項21から26のいずれか一項に記載の抗微生物又は抗ウイルス用樹脂構造体の製造装置。
  28. 請求項12に記載の抗病原体活性付加物の製造装置であって、
    重合性化合物及びポロジェンを含有する液体組成物を前記基材に対して付与する付与手段と、
    前記液体組成物中において前記重合性化合物を重合させて前記基材の表面に前記樹脂構造体を形成させる重合手段と、を有することを特徴とする抗病原体活性付加物の製造装置。
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