JP7071662B2 - 赤外線透過膜形成用組成物、赤外線透過膜の形成方法、表示装置用保護板、及び表示装置 - Google Patents
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Description
(1)表示装置用保護板の額縁部に形成された赤外線通信用の開口部内に、当該赤外線透過膜形成用組成物により塗膜を形成する工程
(2)上記塗膜を加熱又は露光する工程
本発明の一実施形態に係る赤外線透過膜形成用組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、表示装置用保護板の額縁部に形成された赤外線通信用の開口部内に設けられる赤外線透過膜を形成するための組成物である。当該組成物は、波長400nm以上580nm以下の領域に吸収極大を有する色素A、波長581nm以上700nm以下の領域に吸収極大を有する色素B、及び波長701nm以上800nm以下の領域に吸収極大を有する色素Cを含有する。当該組成物は、バインダー成分をさらに含有することが好ましい。また、当該組成物は、重合開始剤をさらに含有することが好ましい。以下、当該組成物の各成分について詳説する。
バインダー成分は、赤外線透過膜において赤外線透過膜のマトリクスとなり、各色素等を保持する成分である。バインダー成分は、透明樹脂、架橋性モノマー又はこれらの組み合わせからなる。バインダー成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
透明樹脂は、得られる赤外線透過膜の効果を損なわないものである限り特に制限されない。透明樹脂としては、例えば、熱安定性および溶剤安定性を確保し、また、表示装置に適用されて100℃以上の加熱製造工程に対して耐性を示すように、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110℃~380℃、より好ましくは110℃~370℃、さらに好ましくは120℃~360℃である樹脂が挙げられる。
上述の環状オレフィン系樹脂は、単量体として環状オレフィンを含む重合体である。環状オレフィン系樹脂としては、下記式(X0)で表される単量体および下記式(Y0)で表される単量体からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体から得られる樹脂、または必要に応じてさらにその樹脂を水素添加することで得られる樹脂が好ましい。
(i)水素原子
(ii)ハロゲン原子
(iii)トリアルキルシリル基
(iv)酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有する、置換または非置換の炭素数1~30の炭化水素基
(v)置換または非置換の炭素数1~30の炭化水素基
(vi)極性基(但し(iv)を除く)
(vii)Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成されたアルキリデン基を表し、該結合に関与しないRx1~Rx4は、それぞれ独立に上述の(i)~(vi)より選ばれる原子または基を表す。
(viii)Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の炭化水素環または複素環を表し、その結合に関与しないRx1~Rx4は、それぞれ独立に上述の(i)~(vi)より選ばれる原子または基を表す。あるいは、Rx2とRx3とが、相互に結合して形成された単環の炭化水素環または複素環を表し、その結合に関与しないRx1~Rx4は、それぞれ独立に上記(i)~(vi)より選ばれる原子または基を表す。
(ix)Ry1とRy2とが、相互に結合して形成された単環または多環の脂環式炭化水素、芳香族炭化水素または複素環を表す。
上述の芳香族ポリエーテル系樹脂は、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造単位を有することが好ましい。
上述のポリイミド系樹脂としては、特に制限されず、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子化合物であればよい。ポリイミド系樹脂は、例えば、特開2006-199945号公報や特開2008-163107号公報に記載されている方法で合成することができる。
上述のフルオレンポリカーボネート系樹脂としては、特に制限されず、フルオレン部位を含むポリカーボネート樹脂であればよい。フルオレンポリカーボネート系樹脂は、例えば、特開2008-163194号公報に記載されている方法で合成することができる。
上述のフルオレンポリエステル系樹脂としては、特に制限されず、フルオレン部位を含むポリエステル樹脂であればよい。フルオレンポリエステル系樹脂は、例えば、特開2010-285505号公報や特開2011-197450号公報に記載されている方法で合成することができる。
上述のフッ素化芳香族ポリマー系樹脂としては、特に制限されないが、少なくとも1つのフッ素を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも1つの結合を含む繰り返し単位とを含有するポリマーが挙げられる。フッ素化芳香族ポリマー系樹脂は、例えば、特開2008-181121号公報に記載されている方法で合成することができる。
上記透明樹脂は購入により入手することも可能である。当該組成物の構成に好ましい透明樹脂の市販品としては、以下の市販品等を挙げることができる。環状オレフィン系樹脂の市販品としては、例えば、JSR株式会社製「アートン」、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア」、三井化学株式会社製「APEL」、ポリプラスチックス株式会社製「TOPAS」等を挙げることができる。ポリエーテルサルホン系樹脂の市販品としては、例えば、住友化学株式会社製「スミカエクセルPES」等を挙げることができる。ポリイミド系樹脂の市販品としては、例えば、三菱ガス化学株式会社製「ネオプリムL」等を挙げることができる。ポリカーボネート系樹脂の市販品としては、例えば、帝人株式会社製「ピュアエース」等を挙げることができる。フルオレンポリカーボネート系樹脂の市販品としては、例えば、三菱ガス化学株式会社製「ユピゼータEP-5000」等を挙げることができる。フルオレンポリエステル系樹脂の市販品としては、例えば、大阪ガスケミカル株式会社製「OKP4HT」等を挙げることができる。アクリル系樹脂の市販品としては、例えば、株式会社日本触媒製「アクリビュア」、日油株式会社製「マープルーフG-0105SA」、共栄社化学株式会社製「ライトアクリレートDCP-A」等を挙げることができる。ポリエステルポリオール系樹脂の市販品としては、例えば、DIC株式会社製「ポリライトOD-X-2585」等を挙げることができる。ポリエーテル系樹脂の市販品としては、例えば、旭化成株式会社製「T5650J」等を挙げることができる。ポリイソシアネート系樹脂の市販品としては、例えば、DIC株式会社製「バーノックD-750」等を挙げることができる。エポキシ系樹脂の市販品としては、例えば、三菱ケミカル株式会社の「JER-828」を挙げることができる。ウレタン系樹脂の市販品としては、例えば、共栄社化学株式会社製「UA-306H」、DIC株式会社製「バーノックDF-407」等を挙げることができる。シルセスキオキサン系UV硬化樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵化学株式会社製「シルプラス」等を挙げることができる。
(a)ウオターズ(WATERS)社製のゲルパーミエ-ションクロマトグラフィー(GPC)装置(150C型、カラム:東ソー社製Hタイプカラム、展開溶剤:o-ジクロロベンゼン)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定する。
(b)東ソー社製GPC装置(HLC-8220型、カラム:TSKgelα‐M、展開溶剤:THF)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定する。
(c)ポリイミド樹脂溶液の一部を無水メタノールに投入してポリイミド樹脂を析出させ、ろ過して未反応単量体から分離する。80℃で12時間真空乾燥して得られたポリイミド0.1gをN-メチル-2-ピロリドン20mLに溶解し、キャノン-フェンスケ粘度計を使用して30℃における対数粘度(μ)を下記式により求める。
μ={ln(tS/t0)}/C
t0:溶媒の流下時間
ts:希薄高分子溶液の流下時間
C:0.5g/dL
バインダー成分は、1分子中に2以上の重合性基を有する化合物を含むことが好ましい。このような化合物を用いることで、得られる赤外線透過膜の耐熱性、耐光性等を高めることができる。
ラジカル重合性化合物は、例えば、光ラジカル発生剤の存在下において紫外線を照射することで発生するラジカルによる重合反応により架橋する化合物である。
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、プロポキシ変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ブトキシ変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ブトキシ変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物等の三官能以上のアクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートと、シュウ酸、マロン酸、コハク酸及び水添フタル酸等のカルボン酸、アルコール性化合物又はフェノール性化合物などとの反応によって得られる化合物、アルキレングリコールジグリシジルエーテル又はポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応物が挙げられる。
カチオン重合性化合物は、例えば、光カチオン発生剤の存在下において紫外線を照射することで発生するカチオンによる反応により架橋する化合物であることが好ましい。カチオン反応性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
求核付加反応性化合物は、通常、加熱や光照射等に伴い、求核付加反応が生じる化合物である。求核付加反応性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、以下に示す3種の色素について説明する。本発明における色素とは、可視光の吸収または放出により、色を与える物質であり、無機化合物及び有機化合物のいずれも含む概念であり、染料や顔料のいずれも含むものである。
波長400nm以上580nm以下の領域に吸収極大を有する色素Aについて、以下に説明する。
ハロゲン化物イオンとしては、Cl-、Br-、I-等が挙げられる。
有機カルボン酸アニオンとしては、安息香酸イオン、アルカン酸イオン、トリハロアルカン酸イオン、ニコチン酸イオン等が挙げられる。
有機スルホン酸アニオンとしては、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、アルカンスルホン酸イオン等が挙げられる。
ルイス酸アニオンとしては、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素アニオン等が挙げられる。
次いで、波長581nm以上700nm以下の領域に吸収極大を有する色素Bについて説明する。
次いで、波長701nm以上800nm以下の領域に吸収極大を有する色素Cについて説明する。
重合開始剤としては、光重合開始剤及び熱重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤としては、光ラジカル発生剤、または光カチオン発生剤といった感光剤が挙げられる。熱重合開始剤としては、熱ラジカル発生剤、熱カチオン発生剤、ウレタン化触媒、その他の熱硬化触媒等を挙げることができる。
光ラジカル発生剤は、光の照射によりラジカルを発生し、ラジカル重合性化合物のラジカル重合を開始させる化合物である。光ラジカル発生剤の極大吸収波長は、1段階目の露光を紫外線露光で行う点から、150nm~380nmであることが好ましい。光ラジカル発生剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
ベンゾイン化合物しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
光カチオン発生剤は、光の照射によりカチオンを発生し、該カチオンによる反応により、カチオン反応性化合物の架橋を開始させる化合物である。
光カチオン発生剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
バインダー成分として、求核付加反応性化合物であるエポキシ基を有する化合物を使用する場合、重合開始剤としての熱硬化触媒を併用することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU-CAT(登録商標)3503N、U-CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CATSA102、U-CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)等が挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を上記熱硬化触媒と併用する。
バインダー成分として、求核付加反応性化合物であるイソシアネート基を有する化合物を使用する場合、重合開始剤としてのウレタン化触媒を加えることができる。ウレタン化触媒としては錫系触媒、金属塩化物、金属アセチルアセトネート塩、金属硫酸塩、アミン化合物及びアミン塩よりなる群から選択される1種以上のウレタン化触媒を使用することが好ましい。
当該組成物は、通常、溶媒を含有する。当該組成物に用いる溶媒としては、色素、バインダー成分等を、安定に分散できる分散媒または溶解できる溶媒であれば、特に限定されない。なお、本明細書において「溶媒」の用語は、分散媒を含む概念で用いられる。溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチレンエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族、またはn-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、テトラフルオロプロピルアルコール、ペンタフルオロプロピルアルコール等のフッ素系溶剤、テトラヒドロフラン、水等が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で、または2種以上を混合して使用できる。
当該組成物から、赤外線透過膜を形成することができる。当該赤外線透過膜は、表示装置用保護板の額縁部(ベゼル)に形成された赤外線通信用の開口部内に設けられる。表示装置用保護板は、スマートフォン等の表示装置の画面を保護するためのカバーであり、画面の表面上に設けられる。この保護板は、前面板等とも称される。但し、表示装置用保護板は、表示装置の「前面」に設けられるものに限定されるものではない。この保護板は、透明基板と、この透明基板の一方の表面の周縁部に配設される額縁部を有する。額縁部(ベゼル)は、ディスプレイなど表示装置の周縁部を保護し、配線等を隠す役割もある部材である。表示装置用保護板については、後に詳述する。
本発明の一実施形態に係る赤外線透過膜の形成方法は、以下の(1)及び(2)の工程を含む。
(1)表示装置用保護板の額縁部に形成された赤外線通信用の開口部内に、当該赤外線透過膜形成用組成物により塗膜を形成する工程
(2)上記塗膜を加熱又は露光する工程
工程(1)では、当該赤外線透過膜形成用組成物を表示装置用保護板の額縁部に形成された赤外線通信用の開口部内に塗布し、好ましくはプレベークを行うことにより溶媒を除去することで塗膜を形成する。通常、上記額縁部は、透明基板上に形成される。このため、上記透明基板表面に、当該組成物を塗布し、塗膜を形成することとなる。工程(1)で使用する透明基板としては、例えばガラス基板、シリコンウエハー、プラスチック基板、及びこれらの表面に各種金属が形成された基板が挙げられる。プラスチック基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックを主成分とする基板などが挙げられる。
工程(2)を露光で行う場合、例えば、工程(1)で形成した塗膜に所定のパターンを有するマスクを介して放射線を照射する。このときの放射線としては、例えば紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等が挙げられる。なお、塗膜の表面全面を露光してもよい。
図1及び図2の表示装置用保護板は、透明基板100と、この透明基板100の一方の表面の周縁部に配設される額縁部110とを備えている。この額縁部110には、赤外線通信用の開口部130が形成されている。この開口部130内には、赤外線透過膜120が設けられている。すなわち、赤外線を透過する窓部分の開口部130が形成されている透明基板100の表面に、赤外線透過膜120が積層されている。
透明基板100は、透明な材料から形成される基板である。透明基板100としては、例えばガラス基板、シリコンウエハー、プラスチック基板、これらの表面に各種金属が形成された基板等が挙げられる。プラスチック基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックを主成分とする基板などが挙げられる。透明基板100としては、これらの中で、ガラス基板が好ましい。
額縁部110は、透明基板100の一方の表面の周縁部に配設される。額縁部110は、周縁部の配線を隠すといった役割があり、通常、黒色であることが多い。
開口部130は、額縁部110に形成されている貫通孔である。開口部130は、赤外線通信用に設けられている。
赤外線透過膜120は、透明基板100の表面上の開口部130が形成された領域に設けられる。赤外線透過膜120は、開口部130の領域を充填するように形成される。すなわち、赤外線透過膜120は、透明基板100の表面における開口部130が設けられた領域を被覆している。
本発明の一実施形態に係る表示装置用保護板は、図1、2の表示装置用保護板において、赤外線透過膜120の透明基板100とは反対の面側(上面側)に形成された反射防止層をさらに有する構造のものである。この反射防止層は、近赤外領域において光線反射を抑制する層である。この反射防止層は、無機系反射防止層または有機バインダー含有組成物により形成された有機系反射防止層が選択される。
本発明の一実施形態に係る表示装置用保護板は、図1、2の表示装置用保護板において、赤外線透過膜120の透明基板100とは反対の面側(上面側)に形成され酸素遮蔽層をさらに有する構造のものである。酸素遮蔽層は無機物でも有機物でも良い。
本発明の一実施形態に係る表示装置用保護板は、図1、2の表示装置用保護板において、赤外線透過膜120の少なくとも一方の面側に形成され紫外線吸収層をさらに有する構造のものである。すなわち、紫外線吸収層は、図1及び図2の表示装置用保護板において、赤外線透過膜120の表面側(図2における上側)に形成されていてもよく、赤外線透過膜120の裏面側(図2における下側)に形成されていてもよい。
本発明の一実施形態に係る表示装置は、当該表示装置用保護板を備える表示装置である。当該表示装置に備えられた保護板においては、赤外線通信用の開口部に設けられた赤外線透過膜が、赤外線透過性が高く、かつ可視光透過性が低い。このため、赤外線通信用の開口部が目立たず、意匠性(外観)に優れる。
下記式(a)で表される8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(以下「DNM」ともいう。)100部、1-ヘキセン(分子量調節剤)18部およびトルエン(開環重合反応用溶媒)300部を、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
3Lの4つ口フラスコに2,6-ジフルオロベンゾニトリル35.12g(0.253mol)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン87.60g(0.250mol)、炭酸カリウム41.46g(0.300mol)、N,N-ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」ともいう。)443gおよびトルエン111gを添加した。続いて、4つ口フラスコに温度計、撹拌機、窒素導入管付き三方コック、ディーンスターク管および冷却管を取り付けた。
室温(25℃)まで冷却後、生成した塩をろ紙で除去し、ろ液をメタノールに投じて再沈殿させ、ろ別によりろ物(残渣)を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末(以下、「樹脂B」ともいう。)を得た(収率95%)。得られた樹脂Bは、数平均分子量(Mn)が75000、重量平均分子量(Mw)が188000であり、ガラス転移温度(Tg)が285℃であった。
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク管および冷却管を備えた500mLの5つ口フラスコに、窒素気流下、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン27.66g(0.08モル)および4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル7.38g(0.02モル)を入れて、γ―ブチロラクトン68.65gおよびN,N-ジメチルアセトアミド17.16gに溶解させた。得られた溶液を、氷水バスを用いて5℃に冷却し、同温に保ちながら1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物22.62g(0.1モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.50g(0.005モル)を一括添加した。添加終了後、180℃に昇温し、随時留出液を留去させながら、6時間還流させた。反応終了後、内温が100℃になるまで空冷した後、N,N-ジメチルアセトアミド143.6gを加えて希釈し、攪拌しながら冷却し、固形分濃度20重量%のポリイミド樹脂溶液264.16gを得た。このポリイミド樹脂溶液の一部を1Lのメタノール中に注ぎいれてポリイミドを沈殿させた。濾別したポリイミドをメタノールで洗浄した後、100℃の真空乾燥機中で24時間乾燥させて白色粉末(以下、「樹脂C」ともいう。)を得た。得られた樹脂CのIRスペクトルを測定したところ、イミド基に特有の1704cm-1、1770cm-1の吸収が見られた。樹脂Cはガラス転移温度(Tg)が310℃であり、対数粘度を測定したところ、0.87であった。
9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン9.167kg(20.90モル)、ビスフェノールA 4.585kg(20.084モル)、ジフェニルカーボネート9.000kg(42.01モル)、および炭酸水素ナトリウム0.02066kg(2.459×10-4モル)を、攪拌機および留出装置を備えた50L反応器に入れ、窒素雰囲気で760Torrの下、1時間かけて215℃に加熱・攪拌した。その後、15分かけて減圧度を150Torrに調整し、215℃、150Torrの条件下で20分間保持し、エステル交換反応を行った。さらに37.5℃/Hrの速度で240℃まで昇温し、240℃、150Torrで10分間保持した。その後、10分かけて100Torrに調整し、240℃、120Torrで70分間保持した。その後、10分かけて100Torrに調整し、240℃、100Torrで10分間保持した。更に40分かけて1Torr以下とし、240℃、1Torr以下の条件下で10分間攪拌して重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を導入し加圧にし、生成したポリカーボネート樹脂(以下、「樹脂D」ともいう。)をペレット化しながら抜き出した。得られた樹脂Dは、重量平均分子量が41,000であり、ガラス転移温度(Tg)が152℃であった。
反応器に、9,9-ビス{4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル}フルオレン0.8モル、エチレングリコール2.2モルおよびイソフタル酸ジメチル1.0モルを加え、攪拌しながら徐々に加熱溶融してエステル交換反応を行った後、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、290℃、1Torr以下に到達するまで徐々に昇温および減圧を行いながらエチレングリコールを除去した。この後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂(以下、「樹脂E」ともいう。)のペレットを得た。得られた樹脂Eは、数平均分子量が40000であり、ガラス転移温度が145℃であった。
温度計、冷却管、ガス導入管及び攪拌機を備えた反応器に、4,4’-ビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(BPDE)16.74部、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(HF)10.5部、炭酸カリウム4.34部およびDMAc90部を仕込んだ。この混合物を80℃に加温し、8時間反応させた。反応終了後、反応溶液をブレンダーで激しく攪拌しながら、1%酢酸水溶液中に添加した。析出した反応物を濾別し、蒸留水及びメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、フッ素化ポリエーテルケトン(以下、「樹脂F」ともいう。)を得た。得られた樹脂Fは、数平均分子量が71000であり、ガラス転移温度(Tg)が242℃であった。
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)7質量部及び3-メトキシプロピオン酸メチル200質量部を仕込んだ。引き続き、メタクリル酸グリシジル30質量部、スチレン70質量部を仕込んで窒素置換した後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持することによって共重合体を含む重合体溶液を得た(以下、「樹脂G」ともいう。)。得られた樹脂Gは、数平均分子量が3500であった。
(組成物の調製)
容器に、バインダー成分として合成例1で得られた樹脂A100質量部を酢酸エチルに溶解させ、樹脂濃度が8質量%の樹脂溶液を得た。次いで、得られた樹脂溶液に色素Aとして(C1-1)2.2質量部及び(C2-1)1.1質量部、色素Bとして(C4-1)2.1質量部、色素Cとして(C6-1)1.4質量部及び色素C(C7-1)1.5質量部を加え、さらにテトラヒドロフラン加えて溶解させた。これにより、固形分濃度8.8質量%で、粘度26mPa・sec(25℃)の赤外線透過膜形成用組成物(S-1)を得た。
赤外線透過膜形成用組成物(S-1)を平滑なガラス基板上に塗布し、23℃で8時間乾燥した後、塗膜をさらに減圧下50℃で3時間乾燥して、厚さ10μmの赤外線透過膜を得た。
表1~2に示す種類及び量のバインダー成分及び色素を採用したこと以外は、実施例1と同様にして、赤外線透過膜形成用組成物を調製し、赤外線透過膜を形成した。なお、1分子中に2以上の重合性基を有する化合物と感光剤を含む組成物(実施例10~12)の場合は、乾燥後、露光機(キヤノン社の「MPA-600FA」:超高圧水銀ランプを使用)を用い、マスクを介さず塗膜の全面露光を行い、赤外線透過膜とした。また、1分子中に2以上の重合性基を有する化合物と熱重合開始剤を含む組成物(実施例13~14)の場合は、乾燥後、150℃30分の条件で加熱を行い、赤外線透過膜とした。
A~G:上述した樹脂合成例1~7で得られた樹脂A~G(透明樹脂)
CS-1:日本化薬社の「KAYARAD DPHA」(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物)
CS-2:東亜合成社の「アロンオキセタン OXT-191」(オキセタン基を2個以上有する樹脂)
CS-3:新中村化学工業株式会社のトリシクロデカンジメタノールジアクリレート
CS-4:三菱ケミカル株式会社の「JER-828」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)
CS-5:DIC株式会社の「ポリライトOD-X-2585」(ポリオール)
CS-6:DIC株式会社の「バーノックD-750」(ポリイソシアネート)
CS-7:三菱ガス化学株式会社の「トリメリット酸無水物」
C1-2:上記式(C1-2)で表される化合物(最大吸収波長472nm)
C1-3:上記式(C1-3)で表される化合物(最大吸収波長475nm)
C2-1:上記式(C2-1)で表される化合物(最大吸収波長549nm)
C2-3:上記式(C2-3)で表される化合物(最大吸収波長551nm)
C3-2:上記式(C3-2)で表される化合物(最大吸収波長479nm)
C4-2:上記式(C4-2)で表される化合物(最大吸収波長605nm)
C5-1:上記式(C5-1)で表される化合物(最大吸収波長644nm)
C6-2:上記式(C6-2)で表される化合物(最大吸収波長704nm)
C6-3:上記式(C6-3)で表される化合物(最大吸収波長709nm)
C7-1:上記式(C7-1)で表される化合物(最大吸収波長738nm)
C7-3:上記式(C7-3)で表される化合物(最大吸収波長725nm)
CT-1:ラジカル性重合開始剤
BASF社の「IRGACURE 819」(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン=オキシド)
CT-2:カチオン性重合開始剤
みどり化学社の「NAI-105」(N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-1,8-ナフタレンジカルボイミド)
CT-3:ラジカル性重合開始剤
BASF社の「IRGACURE PAG121」(5-p-トルエンスルフォニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル)
CT-4:エポキシ-酸無水物硬化触媒(熱重合開始剤)
四国化成工業社の「2E4MZ」(2-エチル-4-メチルイミダゾール)
CT-5:ウレタン化反応触媒(熱重合開始剤)
共同薬品株式会社の「ジブチルスズ=ジラウラート」
実施例14と同じ赤外線透過膜上に、蒸着温度100℃で、近赤外線の反射を防止する誘電体多層膜(多層体の総厚として250nm)を反射防止層D-1として形成した。この反射防止層D-1は、シリカ(SiO2:膜厚240nm)層とチタニア(TiO2:膜厚10nm)層とが積層されてなる、積層数2の積層体とした。これにより、ガラス基板、赤外線透過膜及び反射防止層D-1がこの順に積層された積層体を得た。
各層の厚さと層数については、近赤外域の反射防止性能を達成できるよう基材屈折率の波長依存特性や、赤外線透過膜の吸収特性に合わせて光学薄膜設計ソフト(Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用いて最適化を行った。
実施例14と同じ赤外線透過膜上に有機系反射防止層(反射防止層D-2)として塗布型低屈折率層を形成した。これにより、ガラス基板、赤外線透過膜及び反射防止層D-2がこの順に積層された積層体を得た。
実施例14と同じ赤外線透過膜上に蒸着温度100℃で酸素を遮蔽する無機蒸着膜〔アルミナ(Al2O3:膜厚100nm)を酸素遮蔽層D-3として形成した。これにより、ガラス基板、赤外線透過膜及び酸素遮蔽層D-3がこの順に積層された積層体を得た。
実施例14と同じ赤外線透過膜上に塗布型酸素遮蔽層を酸素遮蔽層D-4として形成した。具体的には、まず、三菱ガス化学製マクシーブM-100/C-93を5:16の比率で混合した混合物をイソプロピルアルコールに希釈し、固形分20%とした組成物を調製した。赤外線透過膜上に、調製した上記組成物を3ミルのバーコーターを用いて硬化膜厚が500nmとなるように塗工した。その後、80℃のオーブンで1分間乾燥し、100℃のオーブンで30分間硬化させることにより酸素遮蔽層D-4を得た。これにより、ガラス基板、赤外線透過膜及び酸素遮蔽層D-4がこの順に積層された積層体を得た。
ガラス基板上へ赤外線透過膜を形成する前に、紫外線吸収層D-5を形成した。具体的には、まず、日本触媒製紫外線カットコーティング剤(ハルスハイブリッドUV-G13)を用いて、3ミルのバーコーターを用いて硬化膜厚が5000nmとなるように塗工後、80℃のオーブンで10分間乾燥した。その後、150℃のオーブンで30分間硬化させることにより紫外線吸収層D-5を得た。この紫外線吸収層D-5上へ、実施例14と同じ赤外線透過膜を形成した。これにより、ガラス基板、紫外線吸収層D-5及び赤外線透過膜がこの順に積層された積層体を得た。
実施例1~14及び比較例1~4で得られた赤外線透過膜について、ガラス基板を評価リファレンスとして分光透過率測定を行った。すなわち、赤外線透過膜の内部透過率を測定した。この測定結果に基づき、可視領域(400-700nm)における最大透過率、波長701-800nmにおいて透過率が連続して10%以下となる波長領域(以下、波長領域Xと記載)の幅、波長801-1100nmにおける最大透過率を求めた。評価結果を表1~2に示す。
実施例1~14及び比較例1~4の各赤外線透過膜形成用組成物の粘度(V1)を測定し、各赤外線透過膜形成用組成物を40℃のオーブン中で1週間放置した。加温後の粘度(V2)を測定し、粘度変化率(%)を下記式から算出し、保存安定性の指標とした。
粘度変化率(%)={(V2-V1)/V1}×100(%)
粘度変化率を、A:粘度変化率5%未満、B:粘度変化率5%以上10%未満、C:粘度変化率10%以上で区分し、A又はBの場合、保存安定性は良好と、Cの場合、不良と評価した。粘度は、E型粘度計(東機産業の「VISCONIC ELD.R」)を用いて25℃で測定した。評価結果を表1~2に示す。
実施例1~14及び比較例1~4で得られた赤外線透過膜(ガラス基板と赤外線透過膜との積層体)並びに実施例15~19で得られた積層体について、ガラス基板をそのリファレンスとして400~700nmの平均透過率(加熱前平均透過率)を測定した。その後、ホットプレートで180℃、30分間加熱し、再度400~700nmの平均透過率(加熱後平均透過率)を測定した。加熱は、ホットプレート(アズワンの「ギガホットプレート GEC-7050」)を用いて実施した。そして、加熱前平均透過率(%)と加熱後平均透過率(%)との差(%)の絶対値(耐熱性)について、以下の基準で評価した。評価結果を表1~3に示す。なお、実施例14については、比較のため表1及び3の双方に記載している。
A:1%未満
B:1%以上5%未満
C:5%以上15%未満
D:15%以上
実施例1~14及び比較例1~4で得られた赤外線透過膜(ガラス基板と赤外線透過膜との積層体)並びに実施例15~19で得られた積層体について、ガラス基板をそのリファレンスとして400~700nmの平均透過率(光照射前平均透過率)を測定した。その後、紫外線フェードメーターにて60℃、100時間光照射し、再度400~700nmの平均透過率(光照射後平均透過率)を測定した。光照射は、紫外線フェードメーター(スガ試験機株式会社の「紫外線フェードメーター U48」)を用いて実施した。そして、光照射前平均透過率(%)と光照射後平均透過率(%)との差(%)の絶対値(耐光性)について、以下の基準で評価した。評価結果を表1~3に示す。
A:1%未満
B:1%以上5%未満
C:5%以上15%未満
D:15%以上
実施例14で得られた赤外線透過膜及び実施例15~19で得られた積層体について、波長900~1000nmの範囲での最低反射率を測定した。具体的には、まず、裏面反射率をカットするために、得られた赤外線透過膜等に対してガラス基板を介して反対側に黒色アクリル板(三菱レイヨン社製、厚み2.0mm)を粘着剤を介して貼り合わせ、測定サンプルを作成した。このような測定サンプルについて、分光光度計U4100(日立ハイテクノロジー社製)を用い、5°正反射の可視光領域の反射率を測定した。評価結果を表3に示す。
110 額縁部(べゼル)
120 赤外線透過膜
130 開口部
Claims (16)
- 表示装置用保護板の額縁部に形成された赤外線通信用の開口部内に設けられる赤外線透過膜を形成するための組成物であって、
上記組成物が、波長400nm以上580nm以下の領域に吸収極大を有する色素A、波長581nm以上700nm以下の領域に吸収極大を有する色素B、及び波長701nm以上800nm以下の領域に吸収極大を有する色素C並びにバインダー成分を含有し、
上記色素Aと色素Bの吸収極大波長の差が40nm以上200nm以下であり、かつ上記色素Bと色素Cの吸収極大波長の差が80nm以上200nm以下であり、
上記バインダー成分100質量部に対する上記色素Aの含有量が0.1~5質量部、上記色素Bの含有量が0.1~5質量部、上記色素Cの含有量が0.1~5質量部である赤外線透過膜形成用組成物。 - 上記色素Aが、キサンテン系化合物、トリアリールメタン系化合物、シアニン系化合物、アントラキノン系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物、クマリン系化合物、インジゴ系化合物又はこれらの組み合わせであり、
上記色素Bが、スクアリリウム系化合物、トリアリールメタン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物又はこれらの組み合わせであり、
上記色素Cが、スクアリリウム系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ペリレン系化合物、クロコニウム系化合物又はこれらの組み合わせである請求項1に記載の赤外線透過膜形成用組成物。 - 上記バインダー成分が、透明樹脂、架橋性モノマー又はこれらの組み合わせからなる請求項1又は請求項2に記載の赤外線透過膜形成用組成物。
- 上記バインダー成分が、1分子中に2以上の重合性基を有する化合物を含む請求項3に記載の赤外線透過膜形成用組成物。
- 上記重合性基が、エポキシ基、脂環エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、水酸基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基又はこれらの組み合わせである請求項4に記載の赤外線透過膜形成用組成物。
- 重合開始剤をさらに含有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の赤外線透過膜形成用組成物。
- 上記透明樹脂が、環状オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(アラミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、ポリエステルポリオール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリイソシアネート系樹脂、ポリアミン系樹脂、ウレタン系樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化樹脂又はこれらの組み合わせである請求項3、請求項4又は請求項5に記載の赤外線透過膜形成用組成物。
- 25℃における粘度が、1~2000mPa・secの範囲である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の赤外線透過膜形成用組成物。
- 以下の(1)及び(2)の工程を含む赤外線透過膜の形成方法。
(1)表示装置用保護板の額縁部に形成された赤外線通信用の開口部内に、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の赤外線透過膜形成用組成物により塗膜を形成する工程
(2)上記塗膜を加熱又は露光する工程 - 透明基板と、この透明基板の一方の面側に設けられた額縁部とを備え、この額縁部に赤外線通信用の開口部が形成された表示装置用保護板であって、
上記開口部内に設けられた赤外線透過膜を有し、
上記赤外線透過膜が請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の赤外線透過膜形成用組成物から形成されている表示装置用保護板。 - 上記赤外線透過膜の上記透明基板とは反対の面側に形成された反射防止層をさらに有する請求項10に記載の表示装置用保護板。
- 上記反射防止層が複数種の金属酸化物の多層膜である請求項11に記載の表示装置用保護板。
- 上記反射防止層が中空粒子を含有する有機膜である請求項11に記載の表示装置用保護板。
- 上記赤外線透過膜の上記透明基板とは反対の面側に形成された酸素遮蔽層をさらに有する請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の表示装置用保護板。
- 上記赤外線透過膜の少なくとも一方の面側に形成された紫外線吸収層をさらに有する請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の表示装置用保護板。
- 請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の表示装置用保護板を有する表示装置。
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