以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。
なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。
本発明の実施形態に係る電池100の一例として非水電解質二次電池の1種である双極型リチウムイオン二次電池について説明する。ここで、双極型リチウムイオン二次電池とは、直列接続された双極型電極を含み、正極と負極との間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う二次電池である。なお、本発明を適用する電池は双極型リチウムイオン二次電池に制限されない。例えば、本発明は、電極が並列接続されてなる形式のいわゆる並列積層型電池などの従来公知の任意の二次電池にも適用可能である。本実施形態に係る電池100は、例えば、電気自動車やハイブリッド電気自動車等の車両の電源として適用できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る電池100を示す概略斜視図である。図2は、本発明の一実施形態に係る電池100の短手方向の概略断面図である。図1および図2に示すように、電池100は、電極20、30と電解質層40とを積層してなる積層体110と、セルケース120と、加圧力調整部130と、を有する。以下、電池100の各部について詳述する。
なお、図1に示す本形態では、電池100は、略矩形の扁平形状を有する。本明細書では、説明の便宜上、電極20、30および電解質層40が積層される積層方向を図中に矢印Zで示し、単に積層方向Zと称する。また、電池100の短手方向を図中に矢印Xで示し、単に短手方向Xと称する。また、電池100の長手方向を図中に矢印Yで示し、単に長手方向Yと称する。また、X-Y平面に沿う方向を面方向XYと称する。なお、積層方向Zから見た電池100の外形は、図1に示すような略長方形に限定されず、X方向およびY方向の長さが同じの略正方形でもよい。
<積層体>
積層体110は、図2に示すように、発電要素140と、強電タブ150、152と、スペーサ160、162と、を有する。以下、積層体110の各部について詳述する。
発電要素140は、複数の単セル10を積層してなる。発電要素140において積層されている単セル10は、本実施形態では、互いに直列接続されている。
単セル10は、正極20および負極30を、電解質層40を介して積層してなる。正極20は、正極活物質層21が正極集電体22に配置されてなる。負極30は、電解液を含む負極活物質層31が負極集電体32に配置されてなる。また、単セル10は、正極活物質層21および負極活物質層31の周辺部分を封止するシール部50をさらに有する。
電極活物質層21、31(正極活物質層21、負極活物質層31)は、電極活物質(正極活物質、負極活物質)を含む非結着体からなる。本明細書において「電極活物質を含む非結着体からなる」とは、電極活物質が結着剤(バインダともいう)により互いの位置を固定されていない状態であることを意味する。電極活物質層が電極活物質の非結着体からなるか否かは、電極活物質層を電解液中に完全に含浸した場合に電極活物質層が崩壊するか否かを観察することで確認できる。なお、電極活物質を含む非結着体からなる電極活物質層21、31は、非結着活物質層21、31とも称する。
電極活物質を含む非結着体からなる電極活物質層21、31とするためには、電極活物質層21、31を形成する際にスラリーからなる塗膜を乾燥させる工程を実質的に含まないようにする、といった手法が挙げられる。また、電極活物質層21、31(電極活物質層21、31を形成するためのスラリー)が実質的に結着剤を含まないようにする、といった手法によっても電極活物質を含む非結着体からなる電極活物質層21、31を形成することができる。ここで、電極活物質層21、31(電極活物質層21、31を形成するためのスラリー)が実質的に結着剤を含まないとは、具体的には、結着剤の含有量が、(電極活物質層21、31を形成するためのスラリー)に含まれる全固形分量100質量%に対して、1質量%以下(下限0質量%)であることを意味する。当該結着剤の含有量は、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
非結着活物質層21、31は、構成成分がバインダによって結着されていないため、構成成分がバインダによって結着された電極活物質層(乾燥電極の電極活物質層)と比較して柔らかく、偏荷重が加わった場合に変形し易い。そのため、非結着活物質層21、31を面方向XYに均一に加圧することが好ましい。
しかし、本発明者らの検討によれば、非結着活物質層21、31の端部P1は、非結着活物質層21、31の中央部P2と比較して、加圧力が付加された場合に構成成分が面方向XYの外側に逃げやすく、変形しやすい。なお、本明細書において、「電極活物質層の端部P1」とは、図2を参照して、電極活物質層の面方向XYにおける最端および最端から電極活物質層の面方向XYにおける中心に向かって一定の範囲を意味する。また、本明細書において、「電極活物質層の中央部P2」とは、端部P1を除き、電極活物質層21、31の面方向XYにおける中心を含む一定の範囲を意味する。
このように、非結着活物質層21、31の端部P1は、非結着活物質層21、31の中央部P2と比較して、加圧力が付加された場合に変形しやすい。そのため、仮に積層体110を面方向XYに均一に加圧した場合であっても、非結着活物質層21、31の端部P1は形状を維持できない(非結着活物質層21、31の端部が崩れる)可能性がある。後述する加圧力調整部130は、非結着活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力が非結着活物質層21、31の中央部P2に作用する加圧力よりも小さくなるように積層体110に作用する加圧力F1、F2を調整する。そのため、本実施形態に係る電池100は、非結着活物質層21、31の端部P1の形状を維持することができる。
本明細書において電極活物質層21、31が実質的に含まないとする結着剤とは活物質粒子同士および活物質粒子と集電体とを結着固定するために用いられる公知の溶媒(分散媒)乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤を意味し、例えば、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレンおよびスチレン-ブタジエンゴムが挙げられる。これらのリチウムイオン電池用結着剤は、水又は有機溶媒に溶解又は分散して使用され、溶媒(分散媒)成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質粒子同士および活物質粒子と集電体とを強固に固定する。
なお、単セル10の他の構成の詳細については、後述する。
強電タブ150、152は、例えば、略板状の銅から形成される。強電タブ150、152は、積層体110から電流を取り出すために使用され、発電要素140の最下層に位置する単セル10および最上層に位置する単セル10に当接している。
スペーサ160、162は、積層体110に付加される振動を吸収する機能を有する絶縁シートであり、強電タブ150、152の積層方向Zの端部に配置されている。なお、スペーサ160、162は、必要に応じ、適宜省略することも可能である。
<セルケース>
セルケース120は、図1および図2に示すように、剛性を有しており、積層体110を収容する。
なお、本明細書において、「剛性を有するセルケース120」とは、セルケース120に外部から力が作用した場合に、セルケース120が容易に変形せず、内部に配置した積層体110を十分に保護できる程度に、セルケース120が剛体であることを意味する。
セルケース120は、図1および図2に示すように、積層体110を積層方向Zに加圧した状態で挟み込む一対のエンドプレート121、122と、一対のエンドプレート121、122を積層方向Zに押圧するテンションプレート123~126と、を有する。
一対のエンドプレート121、122(上部エンドプレート121および下部エンドプレート122)は、図1に示すように、略矩形形状を有している。
テンションプレート123~126(第1テンションプレート123、第2テンションプレート124、第3テンションプレート125、第4テンションプレート126)は、一対のエンドプレート121、122を取り囲む。
第1テンションプレート123および第2テンションプレート124は、短手方向Xから一対のエンドプレート121、122を挟み込む。第1テンションプレート123は、図2に示すように、積層方向Zに延在する略矩形の側壁部123aと、側壁部123aの積層方向Zにおける両端部において、第2テンションプレート124に向かって突出する突出部123bと、を有している。第2テンションプレート124は、積層方向Zに延在する略矩形の側壁部124aと、側壁部124aの積層方向Zにおける両端部において、第1テンションプレート123に向かって突出する突出部124bと、を有している。突出部123b、124bは、一対のエンドプレート121、122と積層方向Zに重なるように配置している。突出部123b、124bは、一対のエンドプレート121、122に締結部材によって締結されている。
第3テンションプレート125および第4テンションプレート126は、図1に示すように、長手方向Yから一対のエンドプレート121、122を挟み込む。第3テンションプレート125および第4テンションプレート126は、略矩形形状を有している。第3テンションプレート125および第4テンションプレート126は、第1テンションプレート123および第2テンションプレート124に対して締結部材によって締結されている。
このように一対のエンドプレート121、122にテンションプレート123~126が取り付けられた状態で、セルケース120は閉じた形状を形成する。セルケース120の内部には、図2に示すように、積層体110が配置されている。なお、セルケース120の内面には、絶縁層(図示省略)を配置してもよい。
セルケース120は、図1に示すように、強電用コネクタ127、128をさらに有する。
強電用コネクタ127は、図1に示すように、第3テンションプレート125に気密的に取り付けられており、かつ、強電タブ150(図2参照)と電気的に接続されている。強電用コネクタ128は、図1に示すように、第4テンションプレート126に気密的に取り付けられており、かつ、強電タブ152(図2参照)と電気的に接続されている。
なお、必ずしも一対のエンドプレートと4枚のテンションプレートとによって発電要素を気密に囲む必要はない。例えば、発電要素が可撓性を有する外装体に気密に封入されている場合、以下のように構成してもよい。一対のエンドプレートは、外装体に封入された発電要素を積層方向Zに加圧した状態で挟み込み、対向する一対の(2枚の)テンションプレートや締結部材等によって、一対のエンドプレート同士を連結してもよい。
<加圧力調整部>
加圧力調整部130は、図2に示すように、一対のエンドプレート121、122の間に配置されている。加圧力調整部130は、図2および図3に示すように、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力が電極活物質層21、31の中央部P2に作用する加圧力よりも小さくなるように、積層体110に作用する加圧力F1、F2を調整する。
なお、図2および図3では、加圧力調整部130が、短手方向Xにおける電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を電極活物質層21、31の中央部P2に作用する加圧力よりも小さくする例を示している。ただし、加圧力調整部130は、短手方向Xではなく長手方向Yにおける電極活物質層21、31の端部に作用する加圧力を電極活物質層21、31の中央部P2に作用する加圧力よりも小さくしてもよい。また、加圧力調整部130は、短手方向Xおよび長手方向Yにおける電極活物質層21、31の端部に作用する加圧力を電極活物質層21、31の中央部P2に作用する加圧力よりも小さくしてもよい。
本実施形態では、加圧力調整部130は、積層体110を積層方向Zから挟み込むように配置される第1加圧力調整部131および第2加圧力調整部132を有している。第1加圧力調整部131は、上部エンドプレート121および積層体110のスペーサ160に当接するように配置している。第2加圧力調整部132は、下部エンドプレート122および積層体110のスペーサ162に当接するように配置している。
各加圧力調整部131、132は、本実施形態では、電極活物質層21、31の端部P1と積層方向Zに重なる領域A1および中央部P2と積層方向Zに重なる領域A2において、圧縮した状態で配置される弾性部材170を有する。
弾性部材170は、弾性部材170を積層方向Zに圧縮する圧縮力に対する反力を生じる。弾性部材170の反力は、本実施形態では、積層体110に作用する加圧力F1、F2に相当する。弾性部材170の反力の大きさを調整するという簡便な方法によって、積層体110に作用する加圧力F1、F2が調整される。
本実施形態では、弾性部材170は、複数のばね171、172である。複数のばね171、172は、短手方向Xおよび長手方向Yにおいて配列されている。各ばね171、172は、本実施形態では、短手方向Xおよび長手方向Yに略等間隔で配置されている。各ばね171、172は、本実施形態では、コイルばねによって構成している。ただし、各ばね171、172は、皿ばね、グリッドばね等によって構成してもよい。
なお、以下の説明では、複数のばね171、172のうち、電極活物質層21、31の端部P1と積層方向Zに重なる領域A1に配置されるものを、端部ばね171と称する。また、以下の説明では、複数のばね171、172のうち、電極活物質層21、31の中央部P2と積層方向Zに重なる領域A2に配置されるものを、中央ばね172と称する。
本実施形態では、各中央ばね172のばね定数の値は、略同一である。また、エンドプレート121、122と積層体110のスペーサ160、162との間の距離は、本実施形態では、面方向XYに略一定であり、各中央ばね172の圧縮量(自然状態からの積層方向Zに縮んだ長さ)は、略同一である。そのため、各中央ばね172が積層体110に付与する力F2(圧縮されたことに対する反力)は、図3に示すように、略一定となる。したがって、電極活物質層21、31の中央部P2に作用する加圧力を面方向XYに均一にできる。これによって、電極活物質層21、31の中央部P2に偏荷重が加わり、電極活物質層21、31が変形することを抑制できる。
なお、各中央ばね172のばね定数は、略同一でなくてもよい。例えば、一対のエンドプレート121、122の中央部と積層体110のスペーサ160、162との間の距離が、面方向XYに一定でない場合がある。この場合は、各中央ばね172の圧縮量は一定ではない。そのため、積層体110の中央部に作用する加圧力が面方向XYに略一定となるように、一対のエンドプレート121、122の中央部とスペーサ160との間の距離(中央ばね172の圧縮量)に応じて、各中央ばね172のばね定数の値を調整してもよい。
各端部ばね171のばね定数は、中央ばね172のばね定数よりも小さい。また、一対のエンドプレート121、122と積層体110のスペーサ160、162との間の距離は、本実施形態では、面方向XYに略一定であり、各端部ばね171の圧縮量は、中央ばね172の圧縮量と略同一となる。したがって、フックの法則より、端部ばね171が積層体110に付与する力F1は、中央ばね172が積層体110に付与する力F2よりも小さくなる。
そのため、積層体110の中央部には十分な加圧力が作用する一方、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を抑制して、電極活物質層21、31の端部P1の形状を維持できる。
また、上述したように、電極活物質層21、31の端部P1は、電極活物質層21、31の中央部P2よりも変形しやすい。そのため、仮に電極活物質層21、31が均一に加圧された場合、電極活物質層21、31の端部P1は、電極活物質層21、31の中央部P2よりも圧縮され、電極活物質層21、31の端部P1の内部抵抗は、電極活物質層21、31の中央部P2の内部抵抗よりも小さくなる。内部抵抗が小さいほど、電極活物質層21、31内の反応電流密度は大きくなり、劣化し易い。本実施形態に係る電池100では、電極活物質層21、31の端部P1と積層方向Zに重なる領域に作用する加圧力を抑制することによって、電極活物質層21、31の端部P1の内部抵抗が増大される。そのため、電極活物質層21、31の端部P1の反応電流密度が小さくなり、劣化が抑制される。
また、電極活物質層21、31の端部P1は、中央側から端部側に向うほど変形しやすい。そのため、複数の端部ばね171のばね定数は、中央側から端部側に向かうに連れて漸減するように構成している。これによって、加圧力調整部130は、図3に示すように、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を、電極活物質層21、31の中央側から端部側に向かって漸減できる。
なお、積層体110の中央部に作用する加圧力F2は、20kPa以上であることが好ましく、50kPa以上であることがより好ましく、80kPa以上であることが特に好ましい。また、加圧力の上限値については特に制限はないが、500kPa以下であることが好ましく、300kPa以下であることがより好ましく、200kPa以下であることが特に好ましい。非結着活物質層21、31を用いた場合の電極20、30の内部抵抗は、加圧力に対して感度が高く、乾燥電極の場合よりもずっと大きい加圧力を印加しなければ、内部抵抗が十分に低下しない。また、加圧力が大きいほど、非結着活物質層21、31は変形しやすく、課題が顕著になる。そのため、電極活物質層21、31の中央部P2を十分に加圧しつつ、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を抑制して電極活物質層21、31の端部P1の形状を維持するという本発明の作用効果をより一層顕著に発現させることができる。
また、積層体110には、電極活物質層21、31の膨張により、加圧力F1、F2に抗して不均一な体積変位が生じる場合がある。仮に、積層体110に不均一な体積変位が生じた場合、積層体110の各部位の体積変位に応じて、弾性部材170の圧縮量が変化する。そのため、弾性部材170は、積層体110の不均一な体積変位を吸収できる。
[単セル]
次に、単セル10の構成要素について詳述する。
(集電体)
まず、単セル10の電極20、30(正極20、負極30)を構成する集電体22、32(正極集電体22、負極集電体32)について詳述する。
集電体22、32は、正極活物質層21から負極活物質層31へと電子の移動を媒介する機能を有する。
集電体22、32は、本実施形態では、樹脂材料を含む。具体的には、集電体22、32は、導電性を備える樹脂または、樹脂を含む導電性材料で形成された樹脂集電体によって構成される。樹脂集電体は、金属箔集電体に比べて軽量なため、電池100の重量当たりの出力密度を向上できる。なお、単セル10間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、樹脂集電体の一部に金属層を設けてもよい。
樹脂集電体を構成する導電性を備える樹脂としては、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。特に、樹脂集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。
導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。かような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または樹脂集電体の軽量化の点において有利である。
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属や導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、白金、鉄、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、アンチモン、およびカリウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
正極集電体22および負極集電体32は、樹脂集電体によって構成する形態に限定されず、例えば、金属箔集電体によって構成することが可能である。金属箔集電体を構成する金属は、例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅である。また、正極集電体22または負極集電体32の一方のみを、樹脂集電体によって構成することも可能である。
(電極活物質層)
次に、単セル10の電極20、30を構成する電極活物質層21、31(正極活物質層21、負極活物質層31)について詳述する。
正極活物質としては、例えば、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、Li(Ni-Mn-Co)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム-遷移金属リン酸化合物、リチウム-遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム-遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。より好ましくはリチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が用いられる。さらに好ましくはLi(Ni-Mn-Co)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物(以下単に、「NCA複合酸化物」とも称する)などが用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を有する。そして、遷移金属1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物(例えば、Li4Ti5O12)、金属材料(スズ、シリコン)、リチウム合金系負極材料(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-シリコン合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-アルミニウム-マンガン合金等)などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム合金系負極材料が、負極活物質として好ましく用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。また、(メタ)アクリレート系共重合体等の被覆用樹脂は特に炭素材料に対して付着しやすいという性質を有している。したがって、構造的に安定した電極材料を提供するという観点からは、負極活物質として炭素材料を用いることが好ましい。
電極活物質層21、31は、必要に応じて、電極活物質の表面の少なくとも一部を被覆する被覆剤(被覆用樹脂、導電助剤)、導電部材等を含んでもよい。さらに、電極活物質層21、31は、必要に応じてイオン伝導性ポリマー、リチウム塩等を含んでもよい。
導電助剤は、被覆用樹脂とともに電極活物質の表面を被覆する被覆剤として用いられる。導電助剤は、被覆剤中で電子伝導パスを形成し、電極活物質層21、31の電子移動抵抗を低減することで、電池の高レートでの出力特性向上に寄与し得る。
導電助剤としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン等の金属、これらの金属を含む合金または金属酸化物;グラファイト、炭素繊維(具体的には、気相成長炭素繊維(VGCF)等)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等のカーボンが挙げられるが、これらに限定されない。また、粒子状のセラミック材料や樹脂材料の周りに上記金属材料をめっき等でコーティングしたものも導電助剤として使用できる。これらの導電助剤のなかでも、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、ステンレス、銀、金、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、カーボンを少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。これらの導電助剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
導電助剤の形状は、粒子状または繊維状であることが好ましい。導電助剤が粒子状である場合、粒子の形状は特に限定されず、粉末状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等、いずれの形状であっても構わない。導電助剤が粒子状である場合の平均粒子径(一次粒子径)は、100nm以下であることが好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電助剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
導電部材は、電極活物質層21、31中で電子伝導パスを形成する機能を有する。特に、導電部材の少なくとも一部が、電極活物質層21、31の2つの主面同士を電気的に接続する導電通路を形成していることが好ましい。このような形態を有することで、電極活物質層21、31中の厚さ方向の電子移動抵抗がさらに低減されるため、電池の高レートでの出力特性をより一層向上しうる。なお、導電部材の少なくとも一部が、電極活物質層21、31の2つの主面同士を電気的に接続する導電通路を形成しているか否かは、SEMや光学顕微鏡を用いて電極活物質層21、31の断面を観察することにより確認することができる。
導電部材は、繊維状の形態を有する導電性繊維であることが好ましい。具体的には、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレスのような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を、導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。なかでも、導電性に優れ、軽量であることから炭素繊維が好ましい。
正極活物質層21の厚さは、好ましくは150~1500μmであり、より好ましくは180~950μmであり、さらに好ましくは200~800μmである。また、負極活物質層31の厚さは、好ましくは150~1500μmであり、より好ましくは180~1200μmであり、さらに好ましくは200~1000μmである。電極活物質層21、31の厚さが上述した下限値以上の値であれば、電池のエネルギー密度を十分に高めることができる。一方、電極活物質層21、31の厚さが上述した上限値以下の値であれば、電極活物質層21、31の構造を十分に維持することができる。
また、積層方向Zを投影方向としたとき、正極活物質層21の投影面積は、好ましくは50~1500cm2であり、より好ましくは180~950cm2であり、さらに好ましくは200~800cm2である。また、負極活物質層31の投影面積は、好ましくは50~1500cm2であり、より好ましくは200~1500cm2であり、さらに好ましくは500~1500cm2である。電極活物質層21、31の投影面積が大きいほど、電池容量を高めることができる一方で、電極活物質層21、31は変形し易くなり、課題がより顕著になる。そのため、電極活物質層21、31の中央部P2を十分に加圧しつつ、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を抑制して電極活物質層21、31の端部P1の形状を維持するという本発明の作用効果をより一層顕著に発現させることができる。
(電解質層)
次に、単セル10を構成する電解質層40について詳述する。
電解質層40に使用される電解質は、特に制限はなく、液体電解質、ゲルポリマー電解質、またはイオン液体電解質が制限なく用いられる。これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保されうる。電解質層に用いられる電解質は電極活物質層21、31に用いられる電解液と同一であっても、異なるものであってもよい。
本実施形態では、電解質層40にセパレータを用いてもよい。セパレータは、電解質を保持して正極20と負極30との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極20と負極30との間の隔壁としての機能を有する。特に電解質として液体電解質、イオン液体電解質を使用する場合には、セパレータを用いることが好ましい。
セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
電解液は、溶媒にリチウム塩が溶解した形態を有する。電解液を構成する溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類が挙げられる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6LiClO4、Li[(FSO2)2N](LiFSI)等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、およびLiC(CF3SO2)3等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。
(シール部)
次に、単セル10を構成するシール部50について詳述する。
シール部50は、正極活物質層21、負極活物質層31および電解質層40の周囲を液密に封止し、電解液の漏れによる液絡を防止している。また、シール部50は、単セル10内で正極集電体22と負極集電体32とを電気的に隔てて、正極集電体22と負極集電体32とが接触することによる短絡を防止している。
シール部50を構成する材料としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよい。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴム(エチレン-プロピレン-ジエンゴム:EPDM)等が用いられうる。また、イソシアネート系接着剤や、アクリル樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤などを用いてもよく、ホットメルト接着剤(ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂)などを用いてもよい。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性等の観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁層の構成材料として好ましく用いられ、非結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とするエチレン、プロピレン、ブテンを共重合した樹脂を用いることが好ましい。
<作用効果>
以上説明したように、本形態に係る電池100は、積層体110と、一対のエンドプレート121、122と、加圧力調整部130と、を有している。ここで、積層体110は、電極活物質を含む非結着体からなる電極活物質層21、31が集電体22、32の表面に形成されてなる電極20、30と、電解質層40とを積層してなる。そして、一対のエンドプレート121、122は、剛性を備え、積層体110の積層方向Zから積層体110を加圧した状態で挟み込む。また、加圧力調整部130は、一対のエンドプレート121、122の間に配置される。加圧力調整部130は、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力が電極活物質層21、31の中央部P2に作用する加圧力よりも小さくなるように、積層体110に作用する加圧力を調整する。
上記構成を備える電池100によれば、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を抑制できるため、積層体110に加圧力F1、F2が付加された状態で電極活物質層21、31の端部P1の形状を維持できる。また、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を抑制することによって、電極活物質層21、31の端部P1の内部抵抗が増大される。これによって、電極活物質層21、31の端部P1の反応電流密度が抑制されるため、電極活物質層21、31の端部P1の劣化を抑制できる。
また、加圧力調整部130は、一対のエンドプレート121、122の間において、少なくとも電極活物質層21、31の中央部P2と積層方向Zに重なる領域A2に配置される弾性部材170を有する。そのため、弾性部材170を積層方向Zに圧縮する圧縮力に対して生じる反力の大きさを調整するという簡便な方法によって、一対のエンドプレート121、122に作用する加圧力F1、F2を調整できる。
また、加圧力調整部130は、上部エンドプレート121と積層体110との間に配置されている。また、加圧力調整部130は、下部エンドプレート122と積層体110との間に配置されている。そのため、加圧力調整部130は、各エンドプレート121、122から積層体110に加えられる加圧力を容易に調整できる。
また、弾性部材170は、複数のばね171、172である。そのため、簡便な構成によって、弾性部材170を構成できる。
また、電極活物質層21、31の端部P1と積層方向Zに重なる領域A1に配置されるばね(端部ばね171)のばね定数は、電極活物質層21、31の中央部P2と積層方向Zに重なる領域A2に配置されるばね(中央ばね172)のばね定数よりも小さい。そのため、ばね171、172のばね定数を調整するという簡便な方法によって、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を抑制できる。
また、集電体22、32は、樹脂材料を含む。そのため、電池100を軽量化し、電池100の重量当たりの出力密度を向上できる。
また、電極活物質層21、31の面方向XYに沿う面積は、500cm2以上である。電極活物質層21、31の面積が大きいほど、電池容量を高めることができる一方で、電極活物質層21、31は変形しやすくなり課題が顕著になる。そのため、積層体110の中央部を十分に加圧しつつ、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を抑制して電極活物質層21、31の端部P1の形状を維持するという本発明の作用効果をより一層顕著に発現させることができる。
また、電極活物質層21、31の中央部P2に作用する加圧力は、20kPa以上である。非結着活物質層21、31を用いた場合の電極20、30の内部抵抗は、加圧力に対して感度が高く、乾燥電極の場合よりもずっと大きい加圧力を印加しなければ、内部抵抗が十分に低下しない。また、加圧力が大きいほど、非結着活物質層21、31は変形しやすく、課題が顕著になる。そのため、電極活物質層21、31の中央部P2を十分に加圧しつつ、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を抑制して電極活物質層21、31の端部P1の形状を維持するという本発明の作用効果をより一層顕著に発現させることができる。
以下、上記実施形態の変形例について説明する。なお、前述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
<変形例1>
図4および図5は、変形例1に係る電池200の説明に供する図である。
変形例1に係る電池200では、複数のばね171、172が面方向XYに等間隔で配置されていない点で、上記実施形態に係る電池100と相違する。
変形例1に係る電池200では、図4に示すように、電極活物質層21、31の端部P1と積層方向Zに重なる領域A1に配置されるばね171の単位面積あたりの数は、電極活物質層21、31の中央部P2と積層方向Zに重なる領域A2に配置されるばね172の単位面積当たりの数よりも少ない。そのため、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を抑制できる。
変形例1では、端部ばね171のばね定数の値は、中央ばね172のばね定数の値よりも小さくてもよいし、中央ばね172のばね定数の値と略同一であってもよい。また、端部ばね171のばね定数の値は、各領域A1の端部ばね171の単位面積あたりの数を少なくしたことによって端部P1に作用する加圧力を中央部P2に作用する加圧力よりも小さくした効果を打ち消さない限り、中央ばね172のばね定数の値よりも大きくてもよい。
以上により、加圧力調整部130は、図5に示すように、積層体110において電極活物質層21、31の端部P1と積層方向Zに重なる領域に作用する加圧力F1を、積層体110において電極活物質層21、31の中央部P2と積層方向Zに重なる領域に作用する加圧力F2よりも小さくできる。そのため、加圧力調整部130は、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を、電極活物質層21、31の中央部P2に作用する加圧力よりも小さくできる。
以上、変形例1に係る電池200によれば、電極活物質層21、31の端部P1と積層方向Zに重なる領域A1に配置されるばね171の単位面積あたりの数は、電極活物質層21、31の中央部P2と積層方向Zに重なる領域A2に配置されるばね172の単位面積当たりの数よりも少ない。そのため、単位面積当たりのばね171、172の数を調整するという簡便な方法によって、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を抑制できる。
<変形例2>
図6および図7は、変形例2に係る電池300の説明に供する図である。
変形例2に係る電池300は、図6に示すように、弾性部材170(端部ばね171)が電極活物質層21、31の端部P1と積層方向Zに重なる領域A1に設けられていない点で、上記実施形態に係る電池100と相違する。
以上により、加圧力調整部130は、図7に示すように、積層体110において電極活物質層21、31の端部P1と積層方向Zに重なる領域に作用する加圧力を、積層体110において電極活物質層21、31の中央部P2と積層方向Zに重なる領域に作用する加圧力F2よりも小さくできる。特に、加圧力調整部130は、本変形例では、積層体110において電極活物質層21、31の最端と積層方向Zに重なる領域に作用する加圧力を、ゼロにできる。そのため、加圧力調整部130は、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を、電極活物質層21、31の中央部P2に作用する加圧力よりも小さくできる。
以上、変形例2に係る電池300では、弾性部材170を電極活物質層21、31の端部P1と積層方向Zに重なる領域A1に設けないという簡便な方法によって、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を抑制できる。
<変形例3>
図8および図9は、変形例3に係る電池400の説明に供する図である。
変形例3に係る電池400は、図8に示すように、エンドプレート521、522と積層体110との間の距離が一定ではない点で、上記実施形態に係る電池100と相違する。
変形例3に係る電池400では、一対のエンドプレート521、522は、一対のエンドプレート521、522の両端部の内面側に、一対のエンドプレート521、522の中央部よりも凹んだ凹部521a、522aを有する。
そのため、電極活物質層21、31の端部P1と積層方向Zに重なる位置における積層体110と各エンドプレート521、522との距離L1は、電極活物質層21、31の中央部P2と積層方向Zに重なる位置における積層体110と各エンドプレート521、522との距離L2よりも大きい。これによって、端部ばね171の圧縮量を、中央ばね172の圧縮量よりも小さくできる。なお、ここで、端部ばね171の圧縮量はゼロであってもよい。
変形例3では、端部ばね171のばね定数の値は、中央ばね172のばね定数の値よりも小さくてもよいし、中央ばね172のばね定数の値と略同一であってもよい。また、端部ばね171の圧縮量を小さくしたことによって端部P1に作用する加圧力を中央部P2に作用する加圧力よりも小さくした効果を打ち消さない限り、端部ばね171のばね定数の値は、中央ばね172のばね定数の値よりも大きくてもよい。具体的には、フックの法則より、端部ばね171のばね定数の値は、下記式(1)を満たせばよい。
以上により、加圧力調整部130は、図9に示すように、積層体110において電極活物質層21、31の端部P1と積層方向Zと重なる領域に作用する加圧力F1を、積層体110において電極活物質層21、31の中央部P2と積層方向Zと重なる領域に作用する加圧力F2よりも小さくできる。そのため、加圧力調整部130は、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を、電極活物質層21、31の中央部P2に作用する加圧力よりも小さくできる。
以上、変形例4に係る電池400では、弾性部材170は、各エンドプレート521、522と積層体110との間に配置されている。電極活物質層21、31の端部P1と積層方向Zに重なる位置における積層体110と各エンドプレート521、522との距離L1は、電極活物質層21、31の中央部P2と積層方向Zに重なる位置における積層体110と各エンドプレート521、522との距離L2よりも大きい。そのため、弾性部材170において電極活物質層21、31の端部P1と積層方向Zに重なる部分の圧縮量は、弾性部材170において電極活物質層21、31の端部P1と積層方向Zに重なる部分の圧縮量よりも小さくなる。そのため、電極活物質層21、31の端部P1に作用する加圧力を抑制できる。
変形例4に係る電池500では、凹部521a、522aを一対のエンドプレート521、522に設けたが、凹部は、スペーサ160、162に設けられていてもよい。
以上、実施形態および変形例を通じて本発明に係る電池を説明したが、本発明は実施形態および変形例において説明した内容のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
例えば、上記実施形態および変形例では、セルケースが、上部エンドプレート、下部エンドプレート、および、第1~第4テンションプレートの6つの別体の部材を組み合わせることによって構成されている例を説明した。しかし、セルケースの構成は、積層方向に積層体を挟み込む一対のエンドプレートを有する限り特に限定されない。例えば、下部エンドプレートと第1~第4テンションプレートとは一体的に構成されていてもよい。
また、例えば、上記実施形態および変形例では、加圧力調整部が一対のエンドプレートとスペーサとの間に配置されている例を説明した。しかし、加圧力調整部は、例えば、スペーサと強電タブとの間に配置してもよいし、強電タブと発電要素との間に配置してもよいし、積層方向に隣り合う単セルの間に配置されていてもよい。なお、加圧力調整部が強電タブと発電要素との間や積層方向に隣り合う単セルの間に配置される場合、加圧力調整部は、導電性を有する必要がある。
また、例えば、上記実施形態および変形例では、加圧力調整部が第1加圧力調整部および第2加圧力調整部を有する例を説明した。しかし、電池が備える加圧力調整部の数は、少なくとも一以上である限り特に限定されない。
また、例えば、上記実施形態および変形例では、弾性部材が複数のばねによって構成されている例を説明した。しかし、弾性部材は、ゴム、または、不織布、紙等の多孔質弾性体によって構成してもよい。
また、例えば、弾性部材をゴム等によって構成する場合、弾性部材(ゴム)において電極活物質層の端部と積層方向に重なる領域に配置される部分のヤング率は、弾性部材(ゴム)において電極活物質層の中央部と積層方向に重なる領域に配置される部分のヤング率よりも小さくしてもよい。これによって、電極活物質層の端部に作用する加圧力を抑制できる。
また、例えば、上記実施形態および変形例では、加圧力調整部が弾性部材によって構成されている例を説明した。しかし、加圧力調整部は、気体や液体等の流体が封入された可撓性を備える複数の袋体によって構成してもよい。この場合、電極活物質層の端部と積層方向に重なる領域に配置される袋体の内圧は、電極活物質層の中央部と積層方向に重なる領域に配置される袋体の内圧よりも小さくしてもよい。これによって、電極活物質層の端部に作用する加圧力を抑制できる。
また、例えば、上記実施形態および変形例で個別に例示した加圧力調整部の構成(ばね定数、ばねの単位面積当たりの個数、ばねの圧縮量等を調整する構成)は、適宜組み合わせてもよい。
また、例えば、上記実施形態および変形例では、積層された全ての電極活物質層の端の短手方向X(または長手方向Y)における位置が揃っている場合を説明した。しかし、各電極活物質層の端の短手方向X(または長手方向Y)における位置は、揃っていなくてもよい。この場合、加圧力調整部は、互いにずれた位置に配置された全ての電極活物質層の端部に作用する加圧力が、電極活物質層の中央部に作用する加圧力よりも小さくなるように積層体に作用する加圧力を調整することが好ましい。
また、例えば、上記実施形態および変形例1では、端部ばねの圧縮量が中央ばねの圧縮量と略同一である例を説明した。また、変形例3に係る電池では、端部ばねの圧縮量が中央ばねの圧縮量よりも小さい例を説明した。しかし、端部ばねの圧縮量が中央ばねの圧縮量よりも大きくてもよい。端部ばねの圧縮量が中央ばねの圧縮量よりも大きい場合、端部ばねが圧縮されることに対する反力が、端部ばねが圧縮されることに対する反力よりも小さくなるように、端部ばねのばね定数を中央ばねのばね定数よりも十分に小さくすればよい。
また、例えば、加圧力調整部の弾性部材は、必ずしも積層体と積層方向Zに重なる位置に配置されている必要はない。例えば、一対のエンドプレートが積層体を積層方向に加圧した状態で、積層方向Zに圧縮された弾性部材が、一対のエンドプレートの両端部の積層体と積層方向に重ならない位置のみに配置されていてもよい。これによって、弾性部材は、エンドプレートの端部に積層体から離間する方向の力を付与し、エンドプレートの端部が積層体の端部に付与する加圧力を抑制できる。そのため、弾性部材は、電極活物質層の端部に作用する加圧力が電極活物質層の中央部に作用する加圧力よりも小さくなるように、積層体に作用する加圧力を調整できる。