JP7069983B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、ブロックにサイプが設けられた空気入りタイヤに関する。
例えば、四輪駆動用の空気入りタイヤにあっては、トレッド部に複数のブロックを設けたブロックパターンのタイヤが採用される。このようなタイヤは、例えば、岩場路面や泥濘地等のオフロード路面において、十分なトラクションや制動力を発揮してオフロードを走破する所謂オフロード走破性能が要求される。オフロード走破性能を向上するために、例えば、複数のブロックに同じ深さのサイプを設け、ブロックの剛性を低下させてその変形を促進し、ブロック間の溝内で岩や泥を掴みやすくすることが知られている。
しかしながら、このような空気入りタイヤでは、前記ブロックの剛性低下によって、乾燥路面での操縦安定性能が悪化するおそれがある他、ブロックにチッピング等が生じやすくなり耐久性能が悪化するおそれがあった。
特開2015-202776号公報
本発明は、以上のような実情に鑑み案出されたもので、ブロックに設けられたサイプを改善することを基本として、良好なオフロード走破性能を維持しつつ、耐久性能及び乾燥路面での操縦安定性能を向上し得る空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
本発明は、トレッド部に、複数のブロックが設けられたブロックパターンの空気入りタイヤであって、前記ブロックには、サイプが設けられており、前記トレッド部が、タイヤ赤道を中心としたトレッド接地幅の1/4の領域であるクラウン領域と、前記クラウン領域のタイヤ軸方向両側で隣接してトレッド接地幅の1/8の領域である一対のミドル領域と、それぞれの前記ミドル領域のタイヤ軸方向外側で隣接してトレッド接地幅の1/8の領域である一対の内側ショルダー領域とに仮想区分された状態において、前記サイプは、前記クラウン領域内に主要部が含まれるクラウンサイプと、前記ミドル領域内に主要部が含まれるミドルサイプと、前記内側ショルダー領域内に主要部が含まれるショルダーサイプとを含み、前記クラウンサイプの深さは、前記ミドルサイプの深さよりも小さく、前記ショルダーサイプの深さは、前記ミドルサイプの深さよりも小さい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ブロックが、前記クラウン領域と前記ミドル領域に跨って配されたクラウンブロックを含み、前記クラウンサイプ及び前記ミドルサイプは、前記クラウンブロックに形成されているのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記クラウンサイプの深さ及び前記ショルダーサイプの深さが、前記ブロックのタイヤ半径方向高さの60%~80%であるのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ミドルサイプの深さが、前記ブロックのタイヤ半径方向高さの65%~85%であるのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ周方向に見て、前記クラウンサイプと前記ミドルサイプとが、互いに重複しない位置に形成され、かつ、前記ミドルサイプと前記ショルダーサイプとが、互いに重複しない位置に形成されているのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記クラウンサイプが、トレッド平面視において、95~115度の角度で折れ曲がるクラウン屈曲部を有するのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記クラウン屈曲部が、その両側の部分よりも小さい深さを有するのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記クラウンサイプの一端が、前記ブロックの内部で終端し、前記一端から前記サイプの両側のブロック縁へそれぞれ延びるサイプ垂線の長さの差が10%以下であるのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ミドルサイプが、トレッド平面視、鈍角で折れ曲がるミドル屈曲部を有し、前記ミドル屈曲部は、その両側の部分よりも小さい深さを有するのが望ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、前記サイプの両端部が、前記サイプの最大深さの15%~25%の深さを有するのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤでは、クラウン領域、ミドル領域、内側ショルダー領域のそれぞれにサイプの主要部が設けられている。サイプはブロックに設けられている。これにより、各領域におけるブロックの剛性が小さくなり、ブロックの変形が促進される。このため、ブロック間の溝内で岩や泥等を効果的に掴まえることができるので、オフロード走破性能が維持される。
また、クラウンサイプの深さがミドルサイプの深さよりも小さいので、クラウン領域の剛性がミドル領域の剛性よりも高く維持される。これにより、ミドル領域に比して大きな接地圧が作用するクラウン領域で生じやすいチッピング等の損傷が抑制されるので、耐久性能が向上する。
さらに、ショルダーサイプの深さがミドルサイプの深さよりも小さいので、内側ショルダー領域の剛性がミドル領域の剛性よりも高く維持される。内側ショルダー領域は、ミドル領域よりも大きな横力の作用する領域である。このため、乾燥路面での操縦安定性能が向上する。
従って、本発明の空気入りタイヤは、優れたオフロード走破性能が維持されつつ、耐久性能及び乾燥路面での操縦安定性能が向上する。
本発明の一実施形態の空気入りタイヤのトレッド部の展開図である。 図1の拡大図である。 (a)は、図2のA-A線断面図、(b)は、図2のB-B線断面図である。 図2のC-C線断面図である。 クラウンブロックの拡大図である。 ショルダーブロックの拡大図である。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示す空気入りタイヤ1(以下、単に「タイヤ1」という場合がある)のトレッド部2の展開図である。本実施形態では、好ましいタイヤ1として、四輪駆動車用のオールシーズンタイヤが示される。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2に複数のブロック3が設けられたブロックパターンとして形成されている。各ブロック3、3間には、溝4が形成されている。
本実施形態のブロック3は、クラウンブロック3Aとショルダーブロック3Bとを含んでいる。クラウンブロック3Aは、本実施形態では、タイヤ赤道Cの両側でタイヤ周方向に隔設されている。ショルダーブロック3Bは、本実施形態では、クラウンブロック3Aよりもタイヤ軸方向外側でタイヤ周方向に隔設されている。本実施形態では、クラウンブロック3A及びショルダーブロック3Bは、タイヤ赤道C上の任意の点を中心として、バリアブルピッチを除いて実質的に点対称に配置されている。なお、タイヤ1のブロクパターンは、このような態様に限定されるものではない。
ブロック3は、本実施形態では、サイプ5が設けられている。なお、本明細書において、「サイプ5」とは、幅が1.5mm以下の切れ込みとして定義され、これよりも大きい幅を有する「溝4」とは区別される。
トレッド部2は、本実施形態では、クラウン領域7と、一対のミドル領域8、8と、一対の内側ショルダー領域9A、9Aと、一対の外側ショルダー領域9B、9Bに仮想区分される。クラウン領域7は、タイヤ赤道Cを中心としたトレッド接地幅TWの1/4の領域である。ミドル領域8は、クラウン領域7のタイヤ軸方向両外側で隣接しトレッド接地幅TWの1/8の領域である。内側ショルダー領域9Aは、ミドル領域8のタイヤ軸方向外側で隣接しトレッド接地幅TWの1/8の領域である。外側ショルダー領域9Bは、トレッド端Teと内側ショルダー領域9Aとの間に形成されトレッド接地幅TWの1/8の領域である。
前記「トレッド端」Teは、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。正規状態において、両トレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離がトレッド接地幅TWとして定められる。特に断りがない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
図2は、図1の拡大図である。図2に示されるように、サイプ5は、本実施形態では、クラウンサイプ10と、ミドルサイプ11と、ショルダーサイプ12とを含んでいる。本実施形態のクラウンサイプ10は、その主要部がクラウン領域7に配されている。本実施形態のミドルサイプ11は、その主要部がミドル領域8に配されている。本実施形態のショルダーサイプ12は、その主要部が内側ショルダー領域9Aに配されている。これにより、ブロック3は、各領域7、8及び9Aの剛性が小さくなり、ブロック3の変形が促進される。従って、ブロック3、3間の溝4内で岩や泥等を効果的に掴まえることができるので、オフロード走破性能が向上する。主要部とは、各サイプ5の実長さの70%以上の部分をいう。
図3(a)は、図2のA-A線断面図、図3(b)は、図2のB-B線断面図である。図3(a)及び(b)に示されるように、クラウンサイプ10の深さd1(最大深さ)は、ミドルサイプ11の深さd2(最大深さ)よりも小さく形成されている。これにより、クラウン領域7の剛性がミドル領域8の剛性よりも高く維持される。このため、ミドル領域8に比して大きな接地圧が作用するクラウン領域7で生じやすいチッピング等の損傷が抑制されるので、耐久性能が向上する。
クラウンサイプ10の深さd1がミドルサイプ11の深さd2よりも過度に小さい場合、クラウンブロック3Aの変形が抑制され、ブロック間の溝4内で岩や泥を効果的に掴むことができず、オフロード走破性能が低下するおそれがある。このため、クラウンサイプ10の深さd1は、ミドルサイプ11の深さd2の75%以上が望ましく、また、ミドルサイプ11の深さd2の95%以下が望ましい。
図4は、図2のC-C線断面図である。図4に示されるように、ショルダーサイプ12の深さd3(最大深さ)は、ミドルサイプ11の深さd2よりも小さく形成されている。これにより、内側ショルダー領域9Aの剛性がミドル領域8の剛性よりも高く維持される。内側ショルダー領域9Aは、ミドル領域8よりも大きな横力の作用する領域である。このため、乾燥路での操縦安定性能が向上する。
ショルダーサイプ12の深さd3がミドルサイプ11の深さd2よりも過度に小さい場合、オフロード走破性能を高められないおそれがある。このため、ショルダーサイプ12の深さd3は、ミドルサイプ11の深さd2の75%以上が望ましく、また、ミドルサイプ11の深さd2の95%以下が望ましい。
特に限定されるものではないが、クラウンサイプ10の深さd1は、クラウンブロック3Aのタイヤ半径方向高さH1の60%~80%であるのが望ましい。同様に、ショルダーサイプ12の深さd3は、ショルダーブロック3Bのタイヤ半径方向高さH2の60%~80%であるのが望ましい。また、ミドルサイプ11の深さd2は、クラウンブロック3Aのタイヤ半径方向高さH1の65%~85%であるのが望ましい。
図2に示されるように、タイヤ周方向に見て、クラウンサイプ10とミドルサイプ11とは、本実施形態では、互いに重複しない位置に形成されている。また、タイヤ周方向に見て、ミドルサイプ11とショルダーサイプ12とは、本実施形態では、互いに重複しない位置に形成されている。これにより、ブロック3は、各領域7、8、9において、剛性の大きな低下が抑制される。従って、乾燥路面での操縦安定性能がより高くなり、かつ、チッピング等の損傷が抑制されて耐久性能がさらに向上する。
本実施形態のクラウンブロック3Aは、クラウン領域7とミドル領域8とに跨って配されている。クラウンブロック3Aは、具体的には、クラウン領域7とミドル領域8と内側ショルダー領域9Aとに跨って配されている。また、ショルダーブロック3Bは、本実施形態では、ミドル領域8と内側ショルダー領域9Aと外側ショルダー領域9Bとに跨って配されている。クラウンブロック3Aは、本実施形態では、外側ショルダー領域9Bには形成されていない。ショルダーブロック3Bは、本実施形態では、クラウン領域7には形成されていない。
図5は、クラウンブロック3Aの拡大図である。図5に示されるように、クラウンブロック3Aは、本実施形態では、第1傾斜部15と、第2傾斜部16とを含み、その踏面3aがL字状に形成されている。第1傾斜部15は、タイヤ赤道Cからタイヤ周方向の一方側へ傾斜している。第2傾斜部16は、第1傾斜部15とは逆向きかつ第1傾斜部15よりもタイヤ周方向に対して大きな角度で傾斜している。
第1傾斜部15は、本実施形態では、第1ブロック縁17と、第2ブロック縁18と、第3ブロック縁19とを含んで形成される。本実施形態の第1ブロック縁17は、クラウンブロック3Aのタイヤ軸方向の内端3iから第1傾斜部15とタイヤ周方向に対して同じ傾斜の向きに連続してのびている。本実施形態の第2ブロック縁18は、第1ブロック縁17のタイヤ軸方向の外端17eから第1ブロック縁17とはタイヤ周方向に対して逆向きに連続してのびている。本実施形態の第3ブロック縁19は、第2ブロック縁18のタイヤ軸方向の外端18eから第1ブロック縁17とタイヤ周方向に対して同じ傾斜の向きに連続してのびている。本明細書では、各ブロック縁は、ブロックの踏面と溝壁とが交わる外周縁であって、ブロック内のサイプや面取り部のエッジを含むものではない。
第2傾斜部16は、本実施形態では、第4ブロック縁20と、第5ブロック縁21と、第6ブロック縁22とを含んで形成される。本実施形態の第4ブロック縁20は、クラウンブロック3Aの前記内端3iから第2傾斜部16とはタイヤ周方向に対して同じ傾斜の向きに連続してのびている。本実施形態の第5ブロック縁21は、第4ブロック縁20のタイヤ軸方向の外端20eから第4ブロック縁20とはタイヤ周方向に対して逆向きに連続してのびている。本実施形態の第6ブロック縁22は、第5ブロック縁21のタイヤ軸方向の外端21eから第4ブロック縁20とタイヤ周方向に対して同じ傾斜の向きに連続してのびている。
図6は、ショルダーブロック3Bの拡大図である。図6に示されるように、ショルダーブロック3Bは、本実施形態では、傾斜部24と、軸方向部25とを含み、その踏面3bが屈曲状に形成されている。傾斜部24は、タイヤ赤道C側からタイヤ軸方向外側に第1傾斜部15と同じ向きに傾斜している。軸方向部25は、傾斜部24に連なりトレッド端Teの外側へタイヤ軸方向にのびている。
傾斜部24は、本実施形態では、第7ブロック縁27と、第8ブロック縁28と、第9ブロック縁29とを含んでいる。本実施形態の第7ブロック縁27は、ショルダーブロック3Bの最もタイヤ赤道C側の内端3eから傾斜部24とタイヤ周方向に対して同じ傾斜の向きに連続してのびている。本実施形態の第8ブロック縁28は、内端3eから傾斜部24とはタイヤ周方向に対して逆向きに連続してのびている。本実施形態の第9ブロック縁29は、第8ブロック縁28のタイヤ軸方向の外端28eからトレッド端Te側へ第7ブロック縁27と同じ傾斜の向きに連続してのびている。
傾斜部24の第7ブロック縁27及び第9ブロック縁29のタイヤ軸方向に対する角度θは、45~55度が望ましい。角度θが45度未満の場合、傾斜部24の横剛性が過度に大きくなり、傾斜部24の変形が促進されず、オフロード走破性能が低下するおそれがある。角度θが55度を超える場合、傾斜部24の横剛性が小さくなり、乾燥路面での操縦安定性能が悪化するおそれがある。
軸方向部25は、第10ブロック縁30と、第11ブロック縁31とを含んでいる。本実施形態の第10ブロック縁30は、第7ブロック縁27に滑らかに連なりタイヤ軸方向にのびている。本実施形態の第11ブロック縁31は、第9ブロック縁29に滑らかに連なりタイヤ軸方向にのびている。なお、ショルダーブロック3B及びクラウンブロック3Aは、このような態様に限定されるものではない。
図3及び図4に示されるように、特に限定されるものではないが、クラウンブロック3A及びショルダーブロック3Bの各タイヤ半径方向高さH1、H2は、好ましくは、12~18mmである。
図5に示されるように、クラウンサイプ10及びミドルサイプ11は、本実施形態では、クラウンブロック3Aに設けられている。これにより、クラウンブロック3Aの剛性が効果的に小さくなり、クラウンブロック3Aと隣り合う溝4内で、岩や泥等が、一層、効果的に掴まれる。
本実施形態のクラウンサイプ10は、一端10iがクラウンブロック3Aの内部で終端し、他端10eがクラウンブロック3Aの第2ブロック縁18で終端するセミオープンタイプである。このようなクラウンサイプ10は、大きな接地圧の作用するクラウン領域7の過度の剛性低下を抑制し得る。
クラウンサイプ10は、本実施形態では、トレッド平面視において、95~115度の角度α1で折れ曲がるクラウン屈曲部10cを有している。このようなクラウン屈曲部10cは、クラウンブロック3Aの剛性を局所的に小さくして、クラウンブロック3Aの変形を促進する。前記角度α1が95度未満の場合、クラウン屈曲部10cの剛性が過度に低下し、チッピング等の発生を抑制できないおそれがある。前記角度α1が115度を超える場合、クラウンブロック3Aの変形が促進されないおそれがある。
本実施形態のクラウンサイプ10は、クラウン屈曲部10cと一端10iとの間を直線状に継ぐ第1クラウン直線部10a、及び、クラウン屈曲部10cと他端10eとの間を直線状に継ぐ第2クラウン直線部10bをさらに含むL字状に形成されている。このようなクラウンサイプ10は、クラウンブロック3Aの過度の剛性低下を抑制し得る。なお、各直線部(後述するミドル直線部を含む)は、厳密な意味での直線に限定されるものではなく、例えば、曲率半径Rが80mm以上の円弧状で形成されていても良い。
第1クラウン直線部10aは、本実施形態では、第4ブロック縁20に沿ってのびている。第2クラウン直線部10bは、第1ブロック縁17に沿ってのびている。このようなクラウンサイプ10は、クラウンブロック3Aの第1傾斜部15の剛性段差を小さく維持する。
クラウンサイプ10の一端10iからクラウンサイプ10の両側のブロック縁3s、3tへそれぞれ延びるサイプ垂線の長さLa、Lbの差(LaーLb)が、各サイプ垂線の長さLa、Lbの10%以下であるのが望ましい。これにより、クラウンサイプ10の一端10i近傍のクラウンブロック3Aの剛性が高く維持され、一端10iを起点としたチッピング等が抑制される。「両側のブロック縁3s、3t」は、本明細書では、タイヤ軸方向両側のブロック縁を意味する。タイヤ赤道C側のブロック縁3sは、本実施形態では、第1ブロック縁17と第4ブロック縁20とで形成される。トレッド端Te側のブロック縁3tは、本実施形態では、第3ブロック縁19と第6ブロック縁22とで形成される。
図3(a)に示されるように、クラウン屈曲部10cは、その両側の部分、本実施形態では、第1クラウン直線部10a及び第2クラウン直線部10bよりも小さい深さを有している。これにより、クラウン屈曲部10c近傍の剛性低下が抑制され、チッピング等がより効果的に低減される。オフロード走破性能と耐久性能とをバランス良く高めるため、クラウン屈曲部10cでの深さd4は、クラウンブロック3Aのタイヤ半径方向高さH1の30%~50%であるのが望ましい。
第1クラウン直線部10a、及び、第2クラウン直線部10bは、本実施形態では、クラウンサイプ10の最大深さを有している。
図5に示されるように、本実施形態のミドルサイプ11は、その両端11e、11iがクラウンブロック3Aの第4ブロック縁20及び第5ブロック縁21に終端するフルオープンタイプである。このようなミドルサイプ11は、クラウン領域7よりも小さな接地圧、及び、内側ショルダー領域9Aよりも小さな横力が作用するミドル領域8のクラウンブロック3Aの剛性を小さくして、オフロード走破性能を、一層向上するのに役立つ。
ミドルサイプ11は、本実施形態では、トレッド平面視、鈍角で折れ曲がるミドル屈曲部13を有している。ミドル屈曲部13は、第1ミドル屈曲部13aと、第1ミドル屈曲部13aよりも折れ曲り角度の小さい第2ミドル屈曲部13bとを含んでいる。このようなミドル屈曲部13は、ミドル領域8において、クラウンブロック3Aの剛性を局所的に小さくして、クラウンブロック3Aの変形を促進する。
第1ミドル屈曲部13aの角度α2は、130~160度が望ましい。第2ミドル屈曲部13bの角度α3は、90度を超えて120度以下が望ましい。
ミドルサイプ11は、本実施形態では、第1ミドル直線部11a、第2ミドル直線部11b、及び、第3ミドル直線部11cを含んでいる。本実施形態の第1ミドル直線部11aは、一端11iと第1ミドル屈曲部13aとの間を直線状に継いでいる。本実施形態の第2ミドル直線部11bは、第1ミドル屈曲部13aと第2ミドル屈曲部13bとの間を直線状に継いでいる。本実施形態の第3ミドル直線部11cは、第2ミドル屈曲部13bと他端11eとの間を直線状に継いでいる。
第1ミドル直線部11a及び第2ミドル直線部11bは、第6ブロック縁22に沿ってのびている。第3ミドル直線部11cは、本実施形態では、第5ブロック縁21に沿ってのびている。このようなミドルサイプ11は、ミドル領域8において、クラウンブロック3Aの剛性の過度の低下を抑制する。
図3(b)に示されるように、第1ミドル屈曲部13aは、その両側の部分、本実施形態では、第1ミドル直線部11a及び第2ミドル直線部11bよりも小さい深さを有している。これにより、第1ミドル屈曲部13aを起点とするチッピング等が効果的に低減される。
第1ミドル屈曲部13aの深さd5は、クラウン屈曲部10cの深さd4よりも大きいのが望ましい。これにより、クラウン領域7に比して小さな接地圧が作用するミドル領域8のクラウンブロック3Aの剛性が相対的に低下するので、オフロード走破性能が向上する。オフロード走破性能と耐久性能とをバランス良く高めるため、第1ミドル屈曲部13aの深さd5は、クラウンブロック3Aのタイヤ半径方向高さH1の40%~60%であるのが望ましい。
第2ミドル屈曲部13bは、第1ミドル屈曲部13aよりも折れ曲り角度が小さいので、クラウンブロック3Aの第2ミドル屈曲部13b近傍の剛性は、第1ミドル屈曲部13a近傍の剛性よりも小さくなる。このため、第2ミドル屈曲部13bでのチッピングを効果的に抑制するため、第2ミドル屈曲部13bの深さd6は、例えば、第1ミドル屈曲部13aの深さd5よりも小さいのが望ましい。第2ミドル屈曲部13bの深さd6は、第1ミドル屈曲部13aの深さd5の50%~80%であるのが望ましい。
第1ミドル直線部11a、及び、第2ミドル直線部11bは、本実施形態では、ミドルサイプ11の最大深さを有している。第3ミドル直線部11cは、本実施形態では、ミドルサイプ11の最小深さを有している。
図6に示されるように、ショルダーサイプ12は、本実施形態では、ショルダーブロック3Bに設けられている。これにより、ショルダーブロック3Bの剛性が小さくなるので、ショルダーブロック3Bに挟まれる溝4によって、岩や泥等が効果的に掴まれる。
ショルダーサイプ12は、トレッド平面視において、タイヤ周方向に対して一方側に傾斜してのびている。ショルダーサイプ12は、本実施形態では、ショルダーブロック3Bの傾斜部24と同じ向きに傾斜している。このようなショルダーサイプ12は、大きな横力の作用するショルダーブロック3Bの剛性の過度の低下を抑制する。
図4に示されるように、ショルダーサイプ12は、その長手方向の中央部12cが、その両側の部分よりも小さい深さを有している。これにより、ショルダーブロック3Bの過度の剛性低下が抑制される。ショルダーサイプ12の中央部12cの深さd7は、ショルダーサイプ12の深さd3の50%~70%が望ましい。
図6に示されるように、ショルダーサイプ12は、本実施形態では、そのタイヤ軸方向の外側の他端12eにトレッド端Teを超えてタイヤ軸方向外側にのびるショルダーラグ溝14が連通している。ショルダーラグ溝14は、傾斜部24及び軸方向部25に沿ってのびている。このようなショルダーラグ溝14は、ショルダーブロック3Bの過度の剛性低下を抑制しつつ、ショルダーブロック3Bの変形を促進しうる。
図3(a)に示されるように、このようなサイプ5の長手方向の両端部5a、5bは、サイプ5の最大深さDaの15%~25%の深さDbを有するのが望ましい。両端部5a、5bの深さDbが最大深さDaの15%未満の場合、オフロード走破性能が小さくなるおそれがある。両端部5a、5bの深さDbが最大深さDaの25%を超える場合、ブロック3の剛性が小さくなり、耐久性能や乾燥路面での操縦安定性能が悪化するおそれがある。両端部5a、5bは、サイプ5の一端5i及び他端5eから5mmの長さである。
図2に示されるように、本実施形態のクラウン領域7には、クラウンサイプ10及びミドルサイプ11が設けられている。本実施形態では、クラウンサイプ10の全体がクラウン領域7に設けられている。他方、ミドルサイプ11については、他端11eを有する端部がクラウン領域7に設けられている。クラウン領域7に設けられたクラウンサイプ10のタイヤ軸方向長さL1と、ミドルサイプ11の端部のタイヤ軸方向長さL2との和(L1×2+L2×2)は、クラウン領域7のタイヤ軸方向幅Wcの60%以上であるのが望ましい。クラウンサイプ10及びミドルサイプ11の前記長さの和(L1×2+L2×2)がクラウン領域7の前記幅Wcの60%未満の場合、クラウンブロック3Aのクラウン領域7の剛性低下が抑制され、溝4で泥や岩を掴む力が小さくなるおそれがある。クラウンサイプ10及びミドルサイプ11の前記長さの和(L1×2+L2×2)が大きすぎると、大きな接地圧の作用するクラウンブロック3Aのクラウン領域7の剛性が大きく低下して、乾燥路面での操縦安定性能や耐久性能が悪化するおそれがある。このため、クラウン領域7の幅Wcに対するクラウンサイプ10及びミドルサイプ11の前記長さの和(L1×2+L2×2)の比であるクラウン領域サイプ比は、80%以下であるのが望ましい。
本実施形態のミドル領域8には、ミドルサイプ11及びショルダーサイプ12が設けられている。本実施形態では、ミドルサイプ11の主要部がミドル領域8に設けられている。ショルダーサイプ12については、本実施形態では、一端12iを含む端部のみがミドル領域8に設けられている。ミドル領域8のタイヤ軸方向の幅Wmに対する各ミドル領域8に含まれる1つのクラウンブロック3Aと1つのショルダーブロック3Bに設けられたサイプ5のタイヤ軸方向の長さの和(L3 + L4)の比であるミドル領域サイプ比は、例えば、クラウン領域サイプ比よりも大きいのが望ましい。これにより、ミドル領域8の剛性がクラウン領域7の剛性よりも相対的に小さくなるので、オフロード走破性能と耐久性能及び乾燥路面での操縦安定性能とがバランス良く向上する。このような観点より、ミドル領域サイプ比は75%以上95%以下であることが好ましい。
クラウンブロック3Aの内側ショルダー領域9Aには、サイプが設けられていない。これにより、クラウンブロック3Aの剛性の過度の低下が抑制されるので、耐久性能や乾燥路面での操縦安定性能が高く維持される。
以上、本発明の実施形態について、詳述したが、本発明は例示の実施形態に限定されるものではなく、種々の態様に変形して実施し得るのは言うまでもない。
図1の基本パターンを有するサイズ285/70R17の四輪駆動車用のタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、各試供タイヤのオフロード走破性能、乾燥路面での操縦安定性能及び耐久性能がテストされた。各試供タイヤの主な共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
クラウンブロックの高さH1:15.0mm
ショルダーブロックの高さH2:15.0mm
d4/H1:40%
d5/H1:45%
角度θ:50度
<オフロード走破性能・乾燥路面での操縦安定性能>
各試供タイヤが、下記の条件で、排気量3600ccの四輪駆動車の全輪に装着された。そして、テストドライバーが、泥で形成された軟質路面及び岩場路面のオフロードのテストコース、及び、乾燥アスファルト路面のテストコースを走行させた。テストドライバーは、このときのトラクション、泥や岩を掴む力、走行安定性等に関する走行特性を、官能により評価した。結果は、比較例1を100とする評点で表示されている。数値が大きいほど良好である。
リム:17×7.5J
内圧:255kPa
荷重:正規荷重の54%
<耐久性能(チッピングの発生状況)>
上記オフロード走破性能及び乾燥路面での操縦安定性能のテスト終了後、クラウンブロック及びショルダーブロックに生じたチッピングがテスターの目視により確認された。結果は、チッピングの数と状態とに基づいて、比較例1を100とする評点で表示されている。数値が大きいほどチッピングが抑制され耐久性能に優れる。
テストの結果などが表1に示される。
Figure 0007069983000001
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて、オフロード走破性能が維持されつつ、耐久性能及び乾燥路面での操縦安定性能が向上していることが確認できた。
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 ブロック
5 サイプ
7 クラウン領域
8 ミドル領域
9A 内側ショルダー領域
10 クラウンサイプ
11 ミドルサイプ
12 ショルダーサイプ
Te トレッド端

Claims (9)

  1. トレッド部に、複数のブロックが設けられたブロックパターンの空気入りタイヤであって、
    前記ブロックには、サイプが設けられており、
    前記トレッド部が、タイヤ赤道を中心としたトレッド接地幅の1/4の領域であるクラウン領域と、前記クラウン領域のタイヤ軸方向両側で隣接してトレッド接地幅の1/8の領域である一対のミドル領域と、それぞれの前記ミドル領域のタイヤ軸方向外側で隣接してトレッド接地幅の1/8の領域である一対の内側ショルダー領域とに仮想区分された状態において、
    前記サイプは、前記クラウン領域内に主要部が含まれるクラウンサイプと、前記ミドル領域内に主要部が含まれるミドルサイプと、前記内側ショルダー領域内に主要部が含まれるショルダーサイプとを含み、
    前記クラウンサイプの深さは、前記ミドルサイプの深さよりも小さく、
    前記ショルダーサイプの深さは、前記ミドルサイプの深さよりも小さく、
    前記クラウンサイプは、トレッド平面視において、95~115度の角度で折れ曲がるクラウン屈曲部を有する、
    空気入りタイヤ。
  2. 前記クラウン屈曲部は、その両側の部分よりも小さい深さを有する請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. トレッド部に、複数のブロックが設けられたブロックパターンの空気入りタイヤであって、
    前記ブロックには、サイプが設けられており、
    前記トレッド部が、タイヤ赤道を中心としたトレッド接地幅の1/4の領域であるクラウン領域と、前記クラウン領域のタイヤ軸方向両側で隣接してトレッド接地幅の1/8の領域である一対のミドル領域と、それぞれの前記ミドル領域のタイヤ軸方向外側で隣接してトレッド接地幅の1/8の領域である一対の内側ショルダー領域とに仮想区分された状態において、
    前記サイプは、前記クラウン領域内に主要部が含まれるクラウンサイプと、前記ミドル領域内に主要部が含まれるミドルサイプと、前記内側ショルダー領域内に主要部が含まれるショルダーサイプとを含み、
    前記クラウンサイプの深さは、前記ミドルサイプの深さよりも小さく、
    前記ショルダーサイプの深さは、前記ミドルサイプの深さよりも小さく、
    前記ミドルサイプは、トレッド平面視、鈍角で折れ曲がるミドル屈曲部を有し、
    前記ミドル屈曲部は、その両側の部分よりも小さい深さを有する、
    空気入りタイヤ。
  4. トレッド部に、複数のブロックが設けられたブロックパターンの空気入りタイヤであって、
    前記ブロックには、サイプが設けられており、
    前記トレッド部が、タイヤ赤道を中心としたトレッド接地幅の1/4の領域であるクラウン領域と、前記クラウン領域のタイヤ軸方向両側で隣接してトレッド接地幅の1/8の領域である一対のミドル領域と、それぞれの前記ミドル領域のタイヤ軸方向外側で隣接してトレッド接地幅の1/8の領域である一対の内側ショルダー領域とに仮想区分された状態において、
    前記サイプは、前記クラウン領域内に主要部が含まれるクラウンサイプと、前記ミドル領域内に主要部が含まれるミドルサイプと、前記内側ショルダー領域内に主要部が含まれるショルダーサイプとを含み、
    前記クラウンサイプの深さは、前記ミドルサイプの深さよりも小さく、
    前記ショルダーサイプの深さは、前記ミドルサイプの深さよりも小さく、
    前記サイプの両端部は、前記サイプの最大深さの15%~25%の深さを有する、
    空気入りタイヤ。
  5. 前記ブロックは、前記クラウン領域と前記ミドル領域に跨って配されたクラウンブロックを含み、前記クラウンサイプ及び前記ミドルサイプは、前記クラウンブロックに形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記クラウンサイプの深さ及び前記ショルダーサイプの深さは、前記ブロックのタイヤ半径方向高さの60%~80%である請求項1ないし5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記ミドルサイプの深さは、前記ブロックのタイヤ半径方向高さの65%~85%である請求項1ないし6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  8. タイヤ周方向に見て、前記クラウンサイプと前記ミドルサイプとは、互いに重複しない位置に形成され、かつ、前記ミドルサイプと前記ショルダーサイプとは、互いに重複しない位置に形成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記クラウンサイプの一端は、前記ブロックの内部で終端し、
    前記一端から前記サイプの両側のブロック縁へそれぞれ延びるサイプ垂線の長さLa、Lbの差(LaーLb)が、前記各サイプ垂線の長さLa、Lbの10%以下である請求項1ないし8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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