JP7069556B2 - 加飾シート、加飾シート付転写部材および加飾物品 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、基材層と、金属薄膜層と、プライマー層と、表面保護層とがこの順に積層された積層体であって、プライマー層が、ガラス転移点が55℃以上、110℃以下の樹脂の硬化物を含む、加飾シートが開示されている。また、例えば、特許文献2には、透明基材フィルム、離型樹脂層、保護樹脂層、絶縁性金属薄膜層および接着剤層がこの順に積層された金属転写材料が開示されている。
また、上記開示においては、上記カップリング剤が、ケイ素元素、アルミニウム元素またはチタン元素を有するカップリング剤を含むことが好ましい。
なお、本開示における「湿熱環境下」とは、温度50℃以上、湿度90%以上の環境下をいう。
本開示の加飾シートは、物品の表面に配置され、上記物品を加飾するために用いられる加飾シートであって、金属薄膜層と、上記金属薄膜層の上記物品が配置される側とは反対側の面に接触させて配置され、樹脂固形物を主体として含有するプライマー層とを有し、上記プライマー層がカップリング剤をさらに含有することを特徴とする。
また、「面に接触させて配置される」とは、加飾シートにおける2つの層の積層関係において、一方の層の面に、直接、他方の層が配置されていることをいう。すなわち、一方の層の表面の直上に他方の層が配置されていることをいう。
本開示における金属薄膜層は、加飾シートにおいてプライマー層よりも物品側に配置される層であり、金属調の意匠を示す層である。
ここで、「金属薄膜層の厚さ」とは、一般的な測定方法によって得られる厚さをいう。厚さの測定方法としては、例えば、触針で表面をなぞり凹凸を検出することによって厚さを算出する触針式の方法や、分光反射スペクトルに基づいて厚さを算出する光学式の方法等が挙げられる。具体的には、ケーエルエー・テンコール株式会社製の触針式膜厚計P-15を用いて厚さを測定することができる。なお、厚さとして、対象となる部材の複数箇所における厚さの測定結果の平均値が用いられても良い。以下、加飾シートを構成する層の厚さの測定方法についても、上述した測定方法が用いられるものとする。
ここでの光学濃度とはOptical Density(OD)値をいう。また、光学濃度にて表わされるOD値は、垂直入射した入射光の強度Iinと垂直に透過した透過光の強度Ioutとを用いた「log10(Iin/Iout)」によって特定され、顕微分光測色計(オリンパス株式会社製、OSP-SP200)によって測定することができる。
本開示におけるプライマー層は、上記金属薄膜層の上記物品が配置される側とは反対側の面に接触させて配置される層である。本開示におけるプライマー層は、湿熱環境下における金属薄膜層の退色を抑制する機能を有する。
本開示におけるカップリング剤は、プライマー層に対し、金属薄膜層の退色を抑制する機能を付与する。カップリング剤は、通常、無機元素、加水分解性官能基、および反応性官能基を有する。
なお、以下の説明において、「アクリル」および「メタクリル」を総称して、「(メタ)アクリル」と説明する場合がある。(メタ)の付く他の類似するものも同様の意である。
また、本開示に用いられるカップリング剤は、無機元素がTi元素であるチタネートカップリング剤であっても良い。チタネートカップリング剤としては、例えば、味の素ファインテクノ(株)製のプレンアクト55、プレンアクト46B等を挙げることができる。
また、本開示に用いられるカップリング剤は、無機元素がAl元素であるアルミネートカップリング剤であっても良い。アルミネートカップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートを挙げることができ、例えば市販品では、味の素ファインテクノ(株)製のプレンアクトAL-Mを挙げることができる。
ここで、「チオール系カップリング剤」とは、反応性官能基として、少なくともチオール基を有するカップリング剤を指す。また、「エポキシ系カップリング剤」とは、反応性官能基として、少なくともエポキシ基を有するカップリング剤を指す。また、本明細書において、特定の反応性官能基を有するカップリング剤を、「(反応性官能基名)系カップリング剤」と称して説明する場合がある。
チオール系カップリング剤における加水分解性官能基と、金属薄膜層における金属とが水素結合を形成すること、および、チオール系カップリング剤におけるチオール基と、プライマー層における樹脂とが脱水素による結合を形成することにより、金属界面での樹脂の密着性が向上し、外部からの水との接触、すなわち金属薄膜層への水のアタックを抑制すると推測される。また、チオール系カップリング剤における加水分解性官能基と、金属薄膜層における金属とが水素結合を形成すること、および、柔らかい酸である金属原子と柔らかい塩基であるチオール基とが配位結合することにより、金属をカップリング剤で覆うことで、樹脂密度が向上し外部からの水との接触を抑制すると推測される。
エトキシ、メトキシ等の金属反応部が加水分解により、水酸基となり、金属表面の水酸基と水素結合、あるいは脱水縮合をし、結合を形成する。一方のエポキシ基も開環され、樹脂成分と水素結合、あるいは金属表面の水酸基と水素結合あるいは脱水縮合する。この反応により、金属と水分を接触することを阻害する効果を発現していると推測する。
本開示におけるプライマー層は、樹脂固形物を主体として含有する。
「樹脂固形物」とは、樹脂を乾燥により固化させた樹脂の固化物、または樹脂を化学反応により硬化させた樹脂の硬化物をいう。また、「プライマー層が樹脂固形物を主体として含有する」とは、プライマー層に含有される全ての材料の中で、樹脂固形物の割合が最も多いことをいう。プライマー層に含有される全ての材料に対する樹脂固形物の割合は、例えば、60質量%以上であっても良く、80質量%以上であっても良く、90質量%以上であっても良い。
プライマー層に用いられる樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を挙げることができる。具体的な樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエステルポリオールが挙げられる。また、ポリウレタン系樹脂としては、例えば、ポリエステルウレタンポリオール、アクリルウレタンポリオールなどのウレタンポリオールが挙げられる。ポリアクリル系樹脂としては、例えば、アクリルポリオールが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどのポリオレフィンポリオールが挙げられる。
また、プライマー層に用いられる樹脂としては、例えば、ポリカーボネートジオールウレタンアクリレートの重合体、多官能ウレタンアクリレートの重合体であっても良い。なお、これらの樹脂は、通常、原料としてウレタンアクリレートを用い、アクリル基を重合させることでポリマー化(樹脂化)させることから、ポリアクリル系樹脂と捉えることができる。
プライマー層に用いられる樹脂は、上述した樹脂のうち1種類を単独で使用しても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
本開示の発明者は、プライマー層の樹脂としてアクリルポリオールを用いた場合に、湿熱環境下における金属薄膜層の退色が生じやすいこと、カップリング剤を添加することにより、金属薄膜層の退色が効果的に抑制されることを知見した。すなわち、本開示においては、プライマー層がアクリルポリオールおよびカップリング剤を含有することにより、密着性や三次元成形性の観点から好ましい樹脂であるアクリルポリオールを使用しつつも、アクリルポリオールを用いた際に問題となる金属薄膜層の退色を顕著に抑制できるという優れた効果を得ることができる。
上述したように、プライマー層は、樹脂のみを含有していても良く、硬化剤をさらに含有していても良い。すなわち、プライマー層は、樹脂と硬化剤との硬化物であっても良いが、後者であることがより好ましい。硬化剤としては、上述した樹脂と反応させることにより硬化物を得ることができれば特に限定されないが、一例としては、イソシアネート化合物が挙げられる。
プライマー層の厚さは、加飾シートの用途等に応じて適宜され特に限定されない。プライマー層の厚さは、例えば、0.5μm以上であっても良く、1μm以上であっても良い。また、プライマー層の厚さは、例えば、3μm以下であっても良く、2μm以下であっても良い。
本開示の加飾シートは、上述した金属薄膜層およびプライマー層を少なくとも有していれば良く、必要な機能層を適宜選択して追加することができる。加飾シートは、その用途に応じ1種類の機能層を有していても良く、2種類以上の機能層を有していても良い。以下、加飾シートにおいて、金属薄膜層の物品側に配置される機能層を第一の機能層、プライマー層の外部側に配置される機能層を第二の機能層として説明する。
第一の機能層は、金属薄膜層の物品側に配置される機能層である。第一の機能層としては、例えば、基材層、第二のプライマー層、第一の接着層、および第二の接着層を挙げることができる。
加飾シートは、基材層を有していても良い。基材層は、金属薄膜層等を支持する支持体として機能する。また、加飾シートが、後述する樹脂成型体である物品の表面に配置される場合、基材層は、樹脂成型体の表面と一体化する機能を有することが好ましい。
また、基材層には、着色剤などを配合した着色、色彩を整えるための塗装、デザイン性を付与するための模様の形成などがなされていても良い。
本開示の加飾シートは、第二のプライマー層を有しても良い。第二のプライマー層は、金属薄膜層の物品側の面に接触させて配置される層である。また、図3(b)、(d)に示すように、加飾シート10が基材層3、第一の接着層5、または後述する図4(b)に示すように、第二の接着層6をさらに有する場合、第二のプライマー層4は、これらの層と金属薄膜層1との密着性を高める機能を有する。第二のプライマー層は、通常、樹脂固形物を主体として含有する層である。第二のプライマー層に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル-ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂、または、これらの樹脂の硬化物が挙げられる。第二のプライマー層に用いられる樹脂としては、ポリエステル系樹脂であることが好ましく、ポリエステルポリオールであることが好ましい。また、第二のプライマー層は、硬化剤をさらに含有していても良く、含有していなくても良いが、前者がより好ましい。密着性を良好にすることができるからである。第二のプライマー層の樹脂固形物の成分については、上述した「2.プライマー層」の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
本開示の加飾シートは、第一の接着層を有していても良い。第一の接着層は、加飾シートが基材層を有する場合、基材層と金属薄膜層との間、または基材層および第二のプライマー層の間を接着する機能を有する。
具体的には、図3(c)、(d)に示すように、加飾シート10は、金属薄膜層1および基材層3の間に配置された第一の接着層5を有していても良い。例えば、図3(c)に示すように、第一の接着層5は、その一方の面が金属薄膜層1の物品20側の面に接触させて配置され、他方の面が基材層3の外部側の面に接触させて配置されていても良い。また、例えば、図3(d)に示すように、第一の接着層5は、その一方の面が第二のプライマー層4の物品20側の面に接触させて配置され、他方の面が基材層3の外部側の面に接触させて配置されていても良い。
第一の接着層に用いられる樹脂は、基材層と金属薄膜層などとの密着性を向上させ得るものであれば特に制限はないが、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、エチレン-塩化ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-(メタ)アクリル共重合体などのポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化プロピレン、塩素化ポリプロピレンなどの塩素系樹脂などが挙げられる。
中でも、アクリル系樹脂、塩素系樹脂であることが好ましい。第一の接着層を形成する樹脂としては、1種類単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
第一の接着層は、硬化剤をさらに含有していても良い。
第一の接着層の形成方法は、特に制限されない。第一の接着層は、例えば、基材層、金属薄膜層、第二のプライマー層などのうち第一の接着層と隣接する層の表面上に上記の樹脂を塗工することにより形成することができ、例えばドライラミネート法などを用いることができる。
本開示の加飾シートは、第二の接着層を有していても良い。第二の接着層は、加飾シートを物品と接着させる、または加飾シートおよび物品の接着性を向上させる機能を有する。
第二の接着層は、本開示の加飾シートを物品に配置して加飾物品とした場合において、加飾シートにおける最も物品側に配置される層である。例えば図4(a)に示すように、第二の接着層6は、金属薄膜層1の物品20側の面に接触させて配置されていても良い。また、図4(b)、(c)に示すように、第二の接着層6は、他の層を介して金属薄膜層1の物品側の面に配置されていても良い。図4(b)は、第二の接着層6が第二のプライマー層4の物品側の面に接触させて配置されている例、図4(c)は、第二の接着層6が基材層3の物品側の面に接触させて配置されている例について示している。
第二の機能層は、加飾シートにおけるプライマー層の外部側に配置される機能層である。第二の機能層としては、例えば、表面保護層、透明基材層、カラークリア層、第三のプライマー層、第三の接着層、転写用基材および剥離層を挙げることができる。
本開示の加飾シートは、表面保護層を有していても良い。表面保護層は、加飾シートの耐傷付き性、耐候性を高める機能を有する。表面保護層は、本開示の加飾シートを物品に配置して加飾物品とした場合において、通常、加飾シートにおける最も外部側に配置される層である。例えば、図5(a)に示すように、表面保護層7は、プライマー層2の外部側の面に接触させて配置されていても良い。また、例えば、図5(b)、(c)に示すように、表面保護層7は、他の層を介してプライマー層2の外部側の面に配置されていても良い。図5(b)は、表面保護層7がカラークリア層8を介してプライマー層2の面に配置されている例、図5(c)は、表面保護層7が、カラークリア層8および第三のプライマー層9を介してプライマー層2の面に配置されている例について示している。
ここで、電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、表面保護層の形成において好適に使用される。
電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方法を挙げることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190nm以上380nm以下の紫外線を含む光線を放射すれば良い。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が挙げられる。
本開示の加飾シートは、透明基材層を有していても良い。透明基材層は、加飾シートの耐傷付き性、耐候性を高める機能を有する。また、透明基材層は、本開示の加飾シートの成形性を高める機能を有する。本開示の加飾シートが上述した「(i)表面保護層」を有する場合、透明基材層はプライマー層および保護層の間に配置されることが好ましい。
透明基材層の厚さは、例えば、15μm以上、200μm以下の程度である。
本開示の加飾シートは、カラークリア層を有していても良い。カラークリア層は、金属薄膜層の金属調にさらに光沢を持たせたり、金属の色味を調整する機能を有する。例えば、図5(b)、(c)に示すように、カラークリア層8は、プライマー層2の外部側の面に接触させて配置させることが好ましい。
カラークリア層は、例えば、着色剤および樹脂を含有することが好ましい。カラークリア層は樹脂固形物を含有することが好ましい。着色剤としては、特に制限はないが、例えば、着色顔料、染料などが挙げられる。また、カラークリア層に用いられる樹脂は、透明樹脂であることが好ましい。透明樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル-ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。カラークリア層7の厚さは、例えば、0.5μm以上、4μm以下の程度であり、好ましくは1.1μm以上、2.9μm以下の程度である。カラークリア層の形成方法は、例えば、表面保護層、プライマー層、透明基材層、後述する第三のプライマー層等のうちカラークリア層と隣接する層の表面上に上述した着色剤および樹脂を含む組成物を塗布する方法などが挙げられる。
本開示の加飾シートは、クリア層を有していても良い。クリア層は、例えば、金属薄膜層における反射光を拡散させたり、加飾シートの意匠の奥行き感を高めたりする機能を有する。クリア層としては、例えば、透明樹脂と粒子材料とを含有する層を挙げることができる。透明樹脂としては、上述した「(iii)カラークリア層」の項で説明した透明樹脂を挙げることができる。また、粒子材料としては、例えば、シリカゲルを挙げることができる。クリア層の厚みおよび形成方法については、上述したカラークリア層の厚み形成方法と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
本開示の加飾シートは、第三のプライマー層を有していても良い。第三のプライマー層は、表面保護層と表面保護層の物品側に位置する層との密着性を高める機能を有する。例えば、図5(c)に示すように、第三のプライマー層9は、表面保護層7の物品側の面に接触させて配置される。
第三のプライマー層は、通常、樹脂固形物を主体として含有する層である。第三プライマー層に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル-ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂が挙げられる。
第三のプライマー層の厚さは、例えば、0.5μm以上、2.5μm以下の程度である。
本開示の加飾シートは、物品の表面を加飾するために用いられる部材である。
また、本開示の加飾シートは、湿熱試験後における加飾シートの色差ΔE*abが4.5以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.5以下であることが好ましい。
なお、湿熱試験の条件は、60℃、相対湿度90%の環境下で72時間静置する条件とする。また、湿熱試験は、例えば、高温高湿器PR-2J(エスペック社)を用いて行うことができる。また、色差ΔE*abは、JISZ8729-1994に規定された国際照明委員会(CIE)のL*a*b*表色系に準拠し、下記式で表される値である。
ΔE*ab={(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2}1/2
ΔE*abは、分光測色計CM-3700J(コニカミノルタ)で測定することができる。
なお、色差ΔE*abは、湿熱試験前の加飾シートの色を基準とした湿熱試験後の色の変化を示す指標であり、ΔL*、Δa*、Δb*は、それぞれ湿熱試験前と湿熱試験後とにおける加飾シートのL*値、a*値、およびb*値の差分を表す。
本開示の加飾シートが用いられる加飾方法としては、例えば、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法、真空圧着法等が挙げられる。
本開示の加飾シートが、インサート成形法用途または射出成形同時加飾法用途に用いられる場合、加飾シートの積層構造としては、基材層、金属薄膜層、およびプライマー層の順に積層された構造を少なくとも有することが好ましい。
一方、本開示の加飾シートが、真空圧着法用途に用いられる場合、加飾シートの積層構造としては、第二の接着層、金属薄膜層およびプライマー層の順に積層された構造を少なくとも有することが好ましい。
本開示の加飾シートは、上述した「A.加飾シート」と、上記加飾シートにおける上記プライマー層の上記物品が配置される側とは反対側の面に配置された転写用基材とを有することを特徴とする。
本開示における転写用基材は、上記加飾シートにおける上記プライマー層の上記物品が配置される側とは反対側の面に配置される部材である。転写用基材は、加飾シートにおいて最も外部側に配置される層の面に配置される。
転写用基材の厚さは、例えば、10μm以上、100μm以下の程度である。
本開示の加飾シート用転写部材は、離形層をさらに有していても良い。加飾シートを物品へ配置した後、転写用基材を剥離しやすくすることができるからである。
離形層に用いられる材料としては、例えば、リン脂質(レシチン)、酢酸セルロース、ワックス、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、ロジン、アクリル樹脂、シリコーン、フッ素樹脂等が挙げられる。離形層の厚さは、例えば、0.01μm以上、2μm以下の程度である。離形層は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等の従来公知の方法で形成できる。
本開示の加飾シート付転写部材においては、1つの転写用基材に対し1つの加飾シートが配置されていても良く、1つの転写用基材に対し複数の加飾シートが配置されていても良い。
本開示の加飾シート付転写部材は、種々の加飾方法に用いることができるが、特に、インモールド成形法に用いられることが好ましい。言い換えれば、加飾シート付転写部材は、インモールド成形法用途であることが好ましい。
本開示の加飾物品は、物品と、上記物品の表面に配置された加飾シートとを有する加飾物品であって、上記加飾シートが、「A.加飾シート」に記載の加飾シートであり、上記物品と上記加飾シートの上記金属薄膜層側とが対向して配置されていることを特徴とする。
本開示における物品としては、加飾シートを配置することができれば特に限定されないが、樹脂固形物の成形体であることが好ましい。
本開示の加飾物品の製造方法は、物品の表面に加飾シートを配置する加飾工程を少なくとも有する。
第一の加飾工程においては、上記加飾物品の形成と上記加飾シートの配置とが同時に行われる。第一の加飾工程における物品は、通常、通常樹脂固形物の成形体である。この場合、具体的な加飾物品の製造方法としては、例えば、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法が挙げられる。
すなわち、第一の加飾工程は、射出成形法を用いて、物品として樹脂固形物の成形体を形成し、かつ上記樹脂固形物の成形体の表面に上記加飾シートを配値する工程が同時に行われる工程であっても良い。
本開示においては、中でも、インサート成形法、または射出成形同時加飾法を用いることが好ましい。
本開示における第一加飾工程が、インサート成形法を用いる工程である場合について説明する。
ここで、インサート成形法は、樹脂成型体である物品の表面に加飾シートを配置する方法であり、物品の成形と加飾シートの配置とを同時に行う方法である。インサート形成法においては、予め加飾シートを物品表面形状に成形する成形工程と、成形された上記加飾シートを射出成形型に配置した後、上記射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂の組成物を上記射出成形型内部に射出する射出工程と、射出された上記樹脂の組成物を固化させることにより、物品を成形し、上記物品の表面に加飾シートを配置する固化工程とを少なくとも有する。
また、射出工程における流動状態の樹脂の温度は、例えば、180℃以上、320℃以下であっても良く、好ましくは220℃以上、280℃以下であっても良い。
成形工程に用いられる加飾シートの成形型、および射出成形型等については、一般的な樹脂成型体の製造方法において用いられる型と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
すなわち、本開示の加飾シートがインサート成形法用の加飾シートである場合、加飾シートの構成としては、基材層、金属薄膜層、プライマー層を少なくとも有することが好ましい。
本開示における第一加飾工程が、射出成形同時加飾法を用いる工程である場合について説明する。
ここで、射出成形同時加飾法は、樹脂成型体である物品の表面に加飾シートを配置する方法であり、物品の成形と加飾シートの配置とを同時に行う方法である。射出成形同時加飾法は、インモールド成形法とも称される方法である。射出成形同時加飾法においては、例えば、射出成形型における雌型と真空成形型との機能を備える兼用雌型を用いて加飾シートを予備成形する予備成形工程と、予備成形された上記加飾シートが配置された射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂組成物を上記射出成形型内部に射出する射出工程と、射出された上記樹脂組成物を固化させることにより、物品を成形し、上記物品の表面に加飾シートを配置する固化工程とを有する。
第二の加飾工程は、予め準備された物品の表面に加飾シートを配置する工程である。第二の加飾工程においては、真空圧着法を用いることが好ましい。
真空圧着法を用いた加飾シートにおいては、通常、金属薄膜層の物品側に第二の接着層が配置された加飾シートが用いられる。
真空圧着機については、公知の真空圧着機を用いることができるため、ここでの説明は省略する。
加飾物品の用途としては、例えば、自動車等の車両の内装材または外装材としての用途、窓枠、扉枠等の建具としての用途、壁、床、天井等の建築物の内装材としての用途、テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体としての用途、容器等としての用途等が挙げられる。
下記の加飾シートの作製において用いたプライマー層のカップリング剤の種類を表1に示し、樹脂固形物の成分の種類を表2に示す。また、第一の接着層に用いた接着剤の種類を表3に示す。
(加飾シートの作製)
離型シートとして2軸延伸ポリエチレンテレフタレートシート(東洋紡績社製のE5001、厚み25μm)を準備した。次に準備した離形シートの上に、アクリル系電子線硬化樹脂を塗布し、電子線照射装置を用いて硬化させ、厚み2μmの透明な樹脂層(保護層)を形成した。
次に、第三のプライマー層の材料として、アクリルポリオールとウレタンイソシアネートとの混合物を準備した。準備した第三のプライマー材料を、透明な樹脂層の上に塗布して、厚み1μmの第三のプライマー層を形成した。
次に、クリア層の材料として、アクリルポリオール中にシリカゲルを分散させた混合物を準備した。準備したクリア層の材料を、第三のプライマー層の上に塗布し、厚み2μmのクリア層を形成した。
次に、プライマー層の材料として、表4に示される樹脂固形物の成分およびカップリング剤の混合物を準備した。準備したプライマー層の材料を、クリア層に塗布することにより、厚み1μmのプライマー層を形成した。
次に、プライマー層の上に、真空蒸着法にてスズを厚み60nmで蒸着させることで、スズ薄膜層を形成した。
次に、接着剤として塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(上記表3の番号1)を準備した。準備した接着剤を、スズ薄膜の上に塗布して、厚み1μmの接着層を形成した。次に、接着層の上に、厚み400μmのABSシートをヒートプレスにて貼合した。
離形シートを剥がし、加飾シートを得た。
クリア層およびスズ薄膜の間に配置される、プライマー層の材料にカップリング剤を添加しなかったこと以外は、上述した実施例と同様にして、加飾シートを得た。
実施例1-1~1-11、および比較例1において得られた加飾シートにおける湿熱試験前後の色差ΔE*abを測定した。結果を表4に示す。
以上から、プライマー層にカップリング剤を添加することにより耐湿熱性を向上させることができることが確認された。また、カップリング剤がエポキシ系カップリング剤を含む場合またはチオール系カップリング剤を含む場合、耐湿熱性をより高くすることができ、特にチオール系カップリング剤を含む場合、耐湿熱性を顕著に高くすることができることが確認された。
クリア層およびスズ薄膜の間に配置される、プライマー層の材料を表5に示される樹脂固形物の成分およびカップリング剤の混合物、または表6に示される樹脂固形物の成分としたこと以外は、実施例1-1または比較例1と同様にして加飾シートを得た。また、得られた加飾シートにおける湿熱試験後の色差ΔE*abを測定した。結果を表5および表6に示す。
第一の接着層に用いられる接着剤を表7に示される接着剤としたこと以外は、実施例1-1および比較例1と同様にして加飾シートを得た。また、得られた加飾シートにおける湿熱試験後の色差ΔE*abを測定した。結果を表7に示す。
クリア層およびスズ薄膜の間に配置される、プライマー層の材料を表8に示される材料としたこと以外は、実施例1-1または比較例1と同様にして加飾シートを得た。また、得られた加飾シートにおける湿熱試験後の色差ΔE*abを測定した。結果を表5および表6に示す。
2 … プライマー層
10 … 加飾シート
20 … 物品
30 … 加飾シート付転写部材
40 … 加飾物品
Claims (6)
- 物品の表面に配置され、前記物品を加飾するために用いられる加飾シートであって、
金属薄膜層と、
前記金属薄膜層の前記物品が配置される側とは反対側の面に接触させて配置され、樹脂固形物を主体として含有するプライマー層と、を有し、
前記プライマー層がチオール系カップリング剤をさらに含有し、
前記金属薄膜層が、スズを含有する、加飾シート。 - 前記カップリング剤が、ケイ素元素、アルミニウム元素またはチタン元素を有するカップリング剤を含む、請求項1に記載の加飾シート。
- 前記プライマー層における前記樹脂固形物が、アクリルポリオール樹脂およびイソシアネート化合物の硬化物を含む、請求項1または請求項2に記載の加飾シート。
- 前記金属薄膜層の前記物品側が配置される側の面に接触させて配置され、前記樹脂固形物を主体として含有する第二のプライマー層をさらに有し、前記第二のプライマー層がカップリング剤を含有する、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の加飾シート。
- 請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の加飾シートと、
前記加飾シートにおける前記プライマー層の前記物品が配置される側とは反対側の面に配置された転写用基材とを有する、加飾シート付転写部材。 - 物品と、前記物品の表面に配置された加飾シートとを有する加飾物品であって、
前記加飾シートが、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の加飾シートであり、前記物品と前記加飾シートの前記金属薄膜層側とが対向して配置されている、加飾物品。
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