以下、種々の例示的実施形態について説明する。
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持台、高周波電源、及び電源ユニットを備える。基板支持台は、下部電極を有し、チャンバ内に設けられている。高周波電源は、チャンバ内でガスからプラズマを生成するために高周波電力を供給するように構成されている。電源ユニットは、正極性の直流電圧及び負極性の直流電圧を発生するように構成されている。電源ユニットは、下部電極に電気的に接続されている。電源ユニットは、チャンバ内でのエッチングガスからのプラズマの生成中の第1の期間において、直流電圧の下部電極への印加を停止する。電源ユニットは、チャンバ内でのエッチングガスからのプラズマの生成中、且つ、第1の期間の後の第2の期間において、第1の直流電圧を下部電極に印加する。第1の直流電圧は、正極性の直流電圧である。電源ユニットは、基板支持台上に載置された基板に対するエッチングのために、チャンバ内でのエッチングガスからのプラズマの生成中、且つ、第2の期間の後の第3の期間において、第2の直流電圧を下部電極に印加する。第2の直流電圧は、負極性の直流電圧である。電源ユニットが出力する直流電圧が、第2の期間における第1の直流電圧から第3の期間における第2の直流電圧に連続的に切り替えられる。
プラズマの生成中に正極性の直流電圧が下部電極に印加されると、プラズマから負イオン及び/又は電子が基板に供給される。その結果、上記実施形態によれば、基板の正電荷量が、第2の期間において減少される。プラズマの生成中に負極性の直流電圧が下部電極に印加されると、プラズマからの正イオンが基板に向けて加速される。その結果、上記実施形態によれば、第3の期間において基板が高いエッチングレートでエッチングされる。さらに、電源ユニットが出力する直流電圧が第2の期間における第1の直流電圧から第3の期間における第2の直流電圧に連続的に切り替えられるので、第3の期間において基板に衝突する正イオンのエネルギーが更に向上される。しがたって、上記実施形態によれば、エッチングレートが更に向上される。
一つの例示的実施形態において、第1の直流電圧の絶対値は、第2の直流電圧の絶対値よりも小さい。
一つの例示的実施形態において、第3の期間の時間長は、第1の期間の時間長と第2の期間の時間長の和以下である。
一つの例示的実施形態において、第3の期間の時間長は、10μ秒以下であってもよい。
一つの例示的実施形態において、第2の期間の時間長は、第1の期間の時間長以下であってもよい。
一つの例示的実施形態において、電源ユニットは、第1の期間における下部電極への直流電圧の印加の停止、第2の期間における下部電極への第1の直流電圧の印加、及び第3の期間における下部電極への第2の直流電圧の印加を繰り返してもよい。
一つの例示的実施形態において、電源ユニットは、チャンバ内でのクリーニングガスからのプラズマの生成中の第4の期間において、第3の直流電圧を下部電極に印加する。第3の直流電圧は、負極性の直流電圧である。電源ユニットは、チャンバ内でのクリーニングガスからのプラズマの生成中、且つ、第4の期間の後の第5の期間において、直流電圧の下部電極への印加を更に停止する。電源ユニットは、チャンバ内でのクリーニングガスからのプラズマの生成中、且つ、第5の期間の後の第6の期間において、第4の直流電圧を下部電極に印加する。第4の直流電圧は、正極性の直流電圧である。第4の期間の時間長は、第5の期間の時間長と第6の期間の時間長との和よりも長い。第4の期間の時間長が比較的長い場合には、第6の期間においてプラズマの電位が高くなる。第6の期間においては下部電極に正極性の直流電圧が印加されているので、プラズマからチャンバの内壁面に向けてイオンが加速される。その結果、チャンバの内壁面に付着している堆積物が除去される。
一つの例示的実施形態において、第4の期間の時間長は、第3の期間の時間長より長くてもよい。
一つの例示的実施形態において、電源ユニットは、第4の期間における下部電極への第3の直流電圧の印加、第5の期間における下部電極への直流電圧の印加の停止、及び第6の期間における下部電極への第4の直流電圧の印加を繰り返してもよい。
別の例示的実施形態において、プラズマ処理装置を用いて実行されるプラズマ処理方法が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持台、高周波電源、及び電源ユニットを備える。基板支持台は、下部電極を有し、チャンバ内に設けられている。高周波電源は、チャンバ内でガスからプラズマを生成するために高周波電力を供給するよう構成されている。電源ユニットは、正極性の直流電圧及び負極性の直流電圧を発生するように構成されており、下部電極に電気的に接続されている。プラズマ処理方法は、チャンバ内でのエッチングガスからのプラズマの生成中の第1の期間において、電源ユニットからの直流電圧の下部電極への印加を停止する工程を含む。プラズマ処理方法は、チャンバ内でのエッチングガスからのプラズマの生成中、且つ、第1の期間の後の第2の期間において、電源ユニットから下部電極に第1の直流電圧を印加する工程を更に含む。第1の直流電圧は、正極性の電圧である。プラズマ処理方法は、基板支持台上に載置された基板に対するエッチングのために、チャンバ内でのエッチングガスからのプラズマの生成中、且つ、第2の期間の後の第3の期間において、電源ユニットから下部電極に第2の直流電圧を印加する工程を更に含む。第2の直流電圧は、負極性の直流電圧である。電源ユニットが出力する直流電圧が、第2の期間における第1の直流電圧から第3の期間における第2の直流電圧に連続的に切り替えられる。
一つの例示的実施形態において、第1の直流電圧の絶対値は、第2の直流電圧の絶対値よりも小さい。
一つの例示的実施形態において、第3の期間の時間長は、第1の期間の時間長と第2の期間の時間長の和以下である。
一つの例示的実施形態において、第3の期間の時間長は、10μ秒以下であってもよい。
一つの例示的実施形態において、第2の期間の時間長は、第1の期間の時間長以下であってもよい。
一つの例示的実施形態において、停止する工程、第1の直流電圧を印加する工程、及び第2の直流電圧を印加する工程が繰り返されてもよい。
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理方法は、チャンバ内でのクリーニングガスからのプラズマの生成中の第4の期間において、電源ユニットから下部電極に第3の直流電圧を印加する工程を更に含む。第3の直流電圧は、負極性の直流電圧である。プラズマ処理方法は、チャンバ内でのクリーニングガスからのプラズマの生成中、且つ、第4の期間の後の第5の期間において、電源ユニットからの直流電圧の下部電極への印加を更に停止する工程を更に含む。プラズマ処理方法は、チャンバ内でのクリーニングガスからのプラズマの生成中、且つ、第5の期間の後の第6の期間において、電源ユニットから下部電極に第4の直流電圧を印加する工程を更に含む。第4の直流電圧は、正極性の直流電圧である。第4の期間の時間長は、第5の期間の時間長と第6の期間の時間長との和よりも長い。
一つの例示的実施形態において、第4の期間の時間長は、第3の期間の時間長より長くてもよい。
一つの例示的実施形態において、第3の直流電圧を印加する工程、更に停止する工程、及び第4の直流電圧を印加する工程が繰り返されてもよい。
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
図1は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図1に示すプラズマ処理装置1は、容量結合型のプラズマ処理装置である。プラズマ処理装置1は、チャンバ10を備えている。チャンバ10は、その中に内部空間10sを提供している。一実施形態において、チャンバ10は、チャンバ本体12を含んでいる。チャンバ本体12は、略円筒形状を有している。内部空間10sは、チャンバ本体12の中に提供されている。チャンバ本体12は、例えばアルミニウムから構成されている。チャンバ本体12は電気的に接地されている。チャンバ本体12の内壁面、即ち、内部空間10sを画成する壁面には、耐プラズマ性を有する膜が形成されている。この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜又は酸化イットリウムから形成された膜といったセラミック製の膜であり得る。
チャンバ本体12の側壁には通路12pが形成されている。基板Wは、内部空間10sとチャンバ10の外部との間で搬送されるときに、通路12pを通過する。この通路12pの開閉のために、ゲートバルブ12gがチャンバ本体12の側壁に沿って設けられている。
チャンバ10の中には、基板支持台、即ち支持台16が設けられている。支持台16は、その上に載置された基板Wを支持するように構成されている。基板Wは、略円盤形状を有する。支持台16は、支持体15によって支持されている。支持体15は、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。支持体15は、略円筒形状を有している。支持体15は、石英といった絶縁材料から形成されている。
支持台16は、下部電極18を有する。支持台16は、静電チャック20を更に有し得る。支持台16は、電極プレート19を更に有していてもよい。電極プレート19は、アルミニウムといった導電性材料から形成されており、略円盤形状を有している。下部電極18は、電極プレート19上に設けられている。下部電極18は、アルミニウムといった導電性材料から形成されており、略円盤形状を有している。下部電極18は、電極プレート19に電気的に接続されている。
下部電極18内には、流路18fが形成されている。流路18fは、熱交換媒体用の流路である。熱交換媒体としては、液状の冷媒、或いは、その気化によって下部電極18を冷却する冷媒(例えば、フロン)が用いられる。流路18fには、熱交換媒体の循環装置(例えば、チラーユニット)が接続されている。この循環装置は、チャンバ10の外部に設けられている。流路18fには、循環装置から配管23aを介して熱交換媒体が供給される。流路18fに供給された熱交換媒体は、配管23bを介して循環装置に戻される。
静電チャック20は、下部電極18上に設けられている。基板Wは、内部空間10sの中で処理されるときには、静電チャック20上に載置され、静電チャック20によって保持される。静電チャック20は、本体及び電極を有している。静電チャック20の本体は、酸化アルミニウム又は窒化アルミニウムといった誘電体から形成されている。静電チャック20の本体は、略円盤形状を有している。静電チャック20は、基板載置領域及びフォーカスリング搭載領域を含んでいる。基板載置領域は、略円盤形状を有する領域である。基板載置領域の上面は、水平面に沿って延在している。基板載置領域の中心を含み、鉛直方向に延びる軸線AXは、チャンバ10の中心軸線と略一致する。基板Wは、チャンバ10内で処理されるときには、基板載置領域の上面の上に載置される。
フォーカスリング搭載領域は、基板載置領域を囲むように周方向に延在している。フォーカスリング搭載領域の上面の上にはフォーカスリングFRが搭載される。フォーカスリングFRは、環形状を有している。基板Wは、フォーカスリングFRによって囲まれた領域内に配置される。即ち、フォーカスリングFRは、静電チャック20の基板載置領域上に載置された基板Wのエッジを囲む。フォーカスリングFRは、例えばシリコン又は炭化ケイ素からから形成されている。
静電チャック20の電極は、静電チャック20の本体内に設けられている。静電チャック20の電極は、導体から形成された膜である。静電チャック20の電極には、直流電源が電気的に接続されている。直流電源から静電チャック20の電極に直流電圧が印加されると、静電チャック20と基板Wとの間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、基板Wは、静電チャック20に引き付けられ、静電チャック20によって保持される。
プラズマ処理装置1は、ガス供給ライン25を更に備え得る。ガス供給ライン25は、ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャック20の上面と基板Wの裏面(下面)との間に供給する。
プラズマ処理装置1は、筒状部28及び絶縁部29を更に備え得る。筒状部28は、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。筒状部28は、支持体15の外周に沿って延在している。筒状部28は、導電性材料から形成されており、略円筒形状を有している。筒状部28は、電気的に接地されている。絶縁部29は、筒状部28上に設けられている。絶縁部29は、絶縁性を有する材料から形成されている。絶縁部29は、例えば石英といったセラミックから形成されている。絶縁部29は、略円筒形状を有している。絶縁部29は、電極プレート19の外周、下部電極18の外周、及び静電チャック20の外周に沿って延在している。
プラズマ処理装置1は、上部電極30を更に備えている。上部電極30は、支持台16の上方に設けられている。上部電極30は、部材32と共にチャンバ本体12の上部開口を閉じている。部材32は、絶縁性を有している。上部電極30は、この部材32を介してチャンバ本体12の上部に支持されている。
上部電極30は、天板34及び支持体36を含んでいる。天板34の下面は、内部空間10sを画成している。天板34には、複数のガス吐出孔34aが形成されている。複数のガス吐出孔34aの各々は、天板34を板厚方向(鉛直方向)に貫通している。この天板34は、限定されるものではないが、例えばシリコンから形成されている。或いは、天板34は、アルミニウム製の部材の表面に耐プラズマ性の膜を設けた構造を有し得る。この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜又は酸化イットリウムから形成された膜といったセラミック製の膜であり得る。
支持体36は、天板34を着脱自在に支持している。支持体36は、例えばアルミニウムといった導電性材料から形成されている。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。ガス拡散室36aからは、複数のガス孔36bが下方に延びている。複数のガス孔36bは、複数のガス吐出孔34aにそれぞれ連通している。支持体36には、ガス導入ポート36cが形成されている。ガス導入ポート36cは、ガス拡散室36aに接続している。ガス導入ポート36cには、ガス供給管38が接続されている。
ガス供給管38には、ガスソース群40が、バルブ群41、流量制御器群42、及びバルブ群43を介して接続されている。ガスソース群40、バルブ群41、流量制御器群42、及びバルブ群43は、ガス供給部を構成している。ガスソース群40は、複数のガスソースを含んでいる。複数のガスソースは、種々の実施形態に係るプラズマ処理方法で用いられる複数のガスのソースを含んでいる。複数のガスは、エッチングガス及びクリーニングガスを含んでいる。バルブ群41及びバルブ群43の各々は、複数のバルブ(例えば開閉バルブ)を含んでいる。流量制御器群42は、複数の流量制御器を含んでいる。流量制御器群42の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。ガスソース群40の複数のガスソースの各々は、バルブ群41の対応のバルブ、流量制御器群42の対応の流量制御器、及びバルブ群43の対応のバルブを介して、ガス供給管38に接続されている。プラズマ処理装置1は、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択された一以上のガスソースからのガスを、個別に調整された流量で、内部空間10sに供給することが可能である。
筒状部28とチャンバ本体12の側壁との間には、バッフル部材48が設けられている。バッフル部材48は、板状の部材であり得る。バッフル部材48は、例えば、アルミニウム製の板材に酸化イットリウム等のセラミックを被覆することにより構成され得る。このバッフル部材48には、複数の貫通孔が形成されている。バッフル部材48の下方においては、排気管52がチャンバ本体12の底部に接続されている。この排気管52には、排気装置50が接続されている。排気装置50は、自動圧力制御弁といった圧力制御器、及び、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、内部空間10sの中の圧力を減圧することができる。
プラズマ処理装置1は、高周波電源61を更に備える。高周波電源61は、プラズマ生成用の高周波電力を発生する電源である。高周波電力の周波数は、限定されるものではないが、27~100MHzの範囲内の周波数、例えば40MHz又は60MHzである。高周波電源61は、高周波電力を下部電極18に供給するために、整合器63及び電極プレート19を介して下部電極18に接続されている。整合器63は、高周波電源61の出力インピーダンスと負荷側(下部電極18側)のインピーダンスを整合させるための整合回路を有している。なお、高周波電源61は、下部電極18に電気的に接続されていなくてもよく、整合器63を介して上部電極30に接続されていてもよい。
プラズマ処理装置1は、電源ユニット64を更に備える。電源ユニット64は、下部電極18に印加される直流電圧を発生するように構成されている。電源ユニット64は、負極性の直流電圧及び正極性の直流電圧を発生するように構成されている。電源ユニット64は、下部電極18に電気的に接続されている。一実施形態では、電源ユニット64は、ローパスフィルタ66を介して、整合器63と電極プレート19とを互いに接続する電気的パスに接続されている。電源ユニット64の動作の詳細については、後述する。
プラズマ処理装置1では、内部空間10sにガスが供給される。そして、高周波電力が供給されることにより、内部空間10sの中でガスが励起される。その結果、内部空間10sの中でプラズマが生成される。生成されたプラズマからのイオン及び/又はラジカルといった化学種により、基板Wが処理される。或いは、生成されたプラズマからのイオン及び/又はラジカルといった化学種により、チャンバ10の内壁面のクリーニングが行われる。
プラズマ処理装置1は、制御部MCを更に備える。制御部MCは、プロセッサ、記憶装置、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置1の各部を制御する。具体的に、制御部MCは、記憶装置に記憶されている制御プログラムを実行し、当該記憶装置に記憶されているレシピデータに基づいてプラズマ処理装置1の各部を制御する。制御部MCによる制御により、レシピデータによって指定されたプロセスがプラズマ処理装置1において実行される。種々の実施形態に係るプラズマ処理方法は、制御部MCによるプラズマ処理装置1の各部の制御により、プラズマ処理装置1において実行され得る。
以下、図2及び図3を参照して、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理方法について説明する。図2は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理方法を示す流れ図である。図3は、図2に示すプラズマ処理方法における電源ユニットの出力電圧の一例のタイミングチャートである。以下では、図2に示すプラズマ処理方法(以下、「方法MT」という)におけるプラズマ処理装置1の各部の動作についても説明する。
図2に示すように、方法MTの工程STaでは、エッチングガスからのプラズマの生成が開始される。エッチングガスは、基板Wのプラズマエッチングのために用いられるガスである。工程STaにおいて、制御部MCは、チャンバ10内にエッチングガスを供給するよう、ガス供給部を制御する。工程STaにおいて、制御部MCは、チャンバ10内の圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置50を制御する。工程STaにおいて、制御部MCは、高周波電力を下部電極18(又は上部電極30)に供給するよう、高周波電源61を制御する。
方法MTは、工程ST1、工程ST2、及び工程ST3を含む。工程ST1、工程ST2、及び工程ST3は、工程STaで開始されたエッチングガスからのプラズマの生成中に、実行される。工程ST1の実行期間は、第1の期間P1である。工程ST2の実行期間は、第2の期間P2である。工程ST3の実行期間は、第3の期間P3である。エッチングガスからプラズマを生成するために、高周波電力は、第1の期間P1、第2の期間P2、及び第3の期間P3にわたって連続的に供給されてもよい。
工程ST1は、第1の期間P1において実行される。第1の期間P1は、チャンバ10内でのエッチングガスからのプラズマの生成中の期間である。工程ST1は、第1の期間P1において電源ユニット64からの直流電圧の下部電極18への印加を停止することを含む。工程ST1の実行のために、制御部MCは、第1の期間P1において直流電圧の下部電極18への出力を停止するよう、電源ユニット64を制御する。
工程ST2は、第2の期間P2において実行される。第2の期間P2は、チャンバ10内でのエッチングガスからのプラズマの生成中の期間であり、第1の期間P1の後の期間である。工程ST2は、第2の期間P2において電源ユニット64から下部電極18に第1の直流電圧V1を印加することを含む。第1の直流電圧V1は、正極性の直流電圧である。工程ST2の実行のために、制御部MCは、第2の期間P2において下部電極18に第1の直流電圧V1を印加するよう、電源ユニット64を制御する。
工程ST3は、第3の期間P3において実行される。第3の期間P3は、チャンバ10内でのエッチングガスからのプラズマの生成中の期間であり、第2の期間P2の後の期間である。工程ST3は、第3の期間P3において電源ユニット64から下部電極18に第2の直流電圧V2を印加することを含む。第2の直流電圧V2は、負極性の直流電圧である。一実施形態では、図3に示すように、第1の直流電圧の絶対値|V1|は、第2の直流電圧の絶対値|V2|よりも小さい。第2の直流電圧の絶対値|V2|は、基板Wに深い開口を形成する場合には、3kV以上に設定され得る。第2の直流電圧の絶対値|V2|は、ゲート形成のためのポリシリコンのエッチングが行われる場合には、500V以下に設定され得る。第2の直流電圧の絶対値|V2|は、ポリシリコンのパターニングのためのエッチングが行われる場合には、5V以上、300V以下に設定され得る。工程ST3の実行のために、制御部MCは、第3の期間P3において下部電極18に第2の直流電圧V2を印加するよう、電源ユニット64を制御する。
電源ユニット64が出力する直流電圧は、第2の期間P2における第1の直流電圧V1から第3の期間P3における第2の直流電圧V2に連続的に切り替えられる。即ち、電源ユニット64が第1の直流電圧V1の出力を停止する第2の期間P2の終了時点と電源ユニット64が第2の直流電圧V2の出力を開始する第3の期間P3の開始時点とは、互いに同一であるか、連続している。
一実施形態では、図3に示すように、第3の期間P3の時間長T3は、第1の期間P1の時間長T1と第2の期間P2の時間長T2の和以下である。即ち、T3≦T1+T2が満たされる。換言すると、第1の期間P1、第2の期間P2、及び第3の期間P3からなる期間において第3の期間P3が占める割合(即ち、デューティー比)は、50%以下である。第3の期間P3の時間長T3は、例えば10μ秒以下である。一実施形態では、図3に示すように、第2の期間P2の時間長T2は、第1の期間P1の時間長T1以下であってもよい。
プラズマの生成中に正極性の直流電圧が下部電極18に印加されると、プラズマから負イオン及び/又は電子が基板Wに供給される。その結果、基板Wの正電荷量が、第2の期間P2において減少される。プラズマの生成中に負極性の直流電圧が下部電極18に印加されると、プラズマからの正イオンが基板Wに向けて加速される。その結果、第3の期間P3において基板Wが高いエッチングレートでエッチングされる。さらに、電源ユニット64が出力する直流電圧が第2の期間P2における第1の直流電圧V1から第3の期間P3における第2の直流電圧V2に連続的に切り替えられるので、第3の期間P3において基板に衝突する正イオンのエネルギーが更に向上される。しがたって、エッチングレートが更に向上される。
一実施形態において、工程ST1、工程ST2、及び工程ST3は、この順で繰り返されてもよい。この場合には、図2に示すように、方法MTは、工程STbを更に含む。工程STbでは、停止条件が満たされるか否かが判定される。停止条件は、工程ST1、工程ST2、及び工程ST3の繰り返し回数が所定回数に達している場合に満たされる。なお、工程ST1、工程ST2、及び工程ST3の繰り返しの周波数、即ち、(T1+T2+T3)の逆数は、10kHz以上400kHz以下であってもよい。或いは、当該周波数は、400kHzよりも大きくてもよい。
工程STbにおいて停止条件が満たされていないと判定されると、再び工程ST1が実行される。一方、工程STbにおいて、停止条件が満たされていると判定されると、工程STcが実行されてもよい。なお、工程STa及び工程ST1~工程ST3の実行によるプラズマエッチングが、複数の基板に対して順に実行された後に、工程STcが実行されてもよい。
工程STcが実行される場合には、支持台16上に載置される物体が工程ST1~工程ST3によって処理された基板Wからダミー基板に交換されて、当該ダミー基板が静電チャック20によって保持される。この場合には、工程STc及び後述の工程ST4~工程ST6は、ダミー基板が支持台16上に載置された状態で実行される。なお、工程STc及び工程ST4~工程ST6は、支持台16上に物体が載置されていない状態で実行されてもよい。この場合には、工程STcの実行前に基板Wがチャンバ10から搬出される。或いは、工程STc及び工程ST4~工程ST6は、工程ST1~工程ST3によって処理された基板Wが支持台16上に載置されている状態で実行されてもよい。
工程STcでは、クリーニングガスからのプラズマの生成が開始される。クリーニングガスは、チャンバ10の内壁面に付着している堆積物を除去するために用いられるガスである。工程STcにおいて、制御部MCは、チャンバ10内にクリーニングガスを供給するよう、ガス供給部を制御する。工程STcにおいて、制御部MCは、チャンバ10内の圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置50を制御する。工程STcにおいて、制御部MCは、高周波電力を下部電極18(又は上部電極30)に供給するよう、高周波電源61を制御する。
方法MTは、工程ST4、工程ST5、及び工程ST6を更に含んでいてもよい。工程ST4、工程ST5、及び工程ST6は、工程STcで開始されたクリーニングガスからのプラズマの生成中に、実行される。工程ST4の実行期間は、第4の期間P4である。工程ST5の実行期間は、第5の期間P5である。工程ST6の実行期間は、第6の期間P6である。クリーニングガスからプラズマを生成するために、高周波電力は、第4の期間P4、第5の期間P5、及び第6の期間P6にわたって連続的に供給されてもよい。
工程ST4は、第4の期間P4において実行される。第4の期間P4は、チャンバ10内でのクリーニングガスからのプラズマの生成中の期間である。工程ST4は、第4の期間P4において、電源ユニット64から下部電極18に第3の直流電圧V3を印加することを含む。第3の直流電圧V3は、負極性の直流電圧である。制御部MCは、第4の期間P4において、第3の直流電圧V3を下部電極18に印加するよう、電源ユニット64を制御する。
工程ST5は、第5の期間P5において実行される。第5の期間P5は、チャンバ10内でのクリーニングガスからのプラズマの生成中の期間であり、第4の期間P4の後の期間である。工程ST5は、第5の期間P5において電源ユニット64からの直流電圧の下部電極18への印加を停止することを含む。工程ST5の実行のために、制御部MCは、第5の期間P5において直流電圧の下部電極18への出力を停止するよう、電源ユニット64を制御する。
工程ST6は、第6の期間P6において実行される。第6の期間P6は、チャンバ10内でのクリーニングガスからのプラズマの生成中の期間であり、第5の期間P5の後の期間である。工程ST6は、第6の期間P6において電源ユニット64から下部電極18に第4の直流電圧V4を印加することを含む。第4の直流電圧V4は、正極性の直流電圧である。工程ST6の実行のために、制御部MCは、第6の期間P6において下部電極18に第4の直流電圧V4を印加するよう、電源ユニット64を制御する。
第6の期間P6においては下部電極18に第4の直流電圧V4、即ち正極性の直流電圧が印加されているので、プラズマからチャンバ10の内壁面に向けてイオンが加速される。その結果、チャンバ10の内壁面に付着している堆積物が除去される。
一実施形態では、図3に示すように、第4の直流電圧の絶対値|V4|は、第3の直流電圧の絶対値|V3|よりも小さい。なお、第4の直流電圧V4は、第1の直流電圧V1と同一であってもよい。第4の直流電圧V4はゼロであってもよい。但し、第4の直流電圧の絶対値|V4|が大きい場合には、プラズマのポテンシャルが高くなり、高いエネルギーを有するイオンがチャンバ10の内壁面に向けて供給される。第3の直流電圧V3は、第2の直流電圧V2と同一であってもよい。或いは、第3の直流電圧の絶対値|V3|は、条件:|V2|>|V3|≧0を満たしていてもよい。この条件が満たされる場合には、第3の直流電圧の絶対値|V3|は比較的小さい。したがって、支持台16上に物体が載置されていない状態で工程STc及び後述の工程ST4~工程ST6が実行される場合に、静電チャック20の損傷が抑制される。
図3に示すように、第4の期間P4の時間長T4は、第5の期間P5の時間長T5と第6の期間P6の時間長T6との和よりも長い。即ち、T4>T5+T6が満たされる。換言すると、第4の期間P4、第5の期間P5、及び第6の期間P6からなる期間において第4の期間P4が占める割合(即ち、デューティー比)は、50%よりも大きい。一実施形態において、第4の期間P4の時間長T4は、第3の期間P3の時間長T3よりも長い。即ち、一実施形態では、T4>T3が満たされる。第4の期間P4の時間長T4が比較的長い場合には、第4の直流電圧V4が大きくなり、第6の期間P6においてプラズマのポテンシャルが高くなる。したがって、高いエネルギーを有するイオンがチャンバ10の内壁面に向けて供給され、チャンバ10の内壁面のクリーニングの効率が高くなる。一実施形態において、第6の期間P6の時間長T6は、第2の期間P2の時間長T2よりも長い。即ち、一実施形態では、T2<T6が満たされる。この実施形態では、第4の直流電圧V4が印加されている期間の時間長が長くなる。したがって、第4の直流電圧V4が矩形状の電圧として印加され、チャンバ10の内壁面のクリーニングの効果が十分に発揮される。
一実施形態において、工程ST4、工程ST5、及び工程ST6は、この順で繰り返されてもよい。この場合には、図2に示すように、方法MTは、工程STdを更に含む。工程STdでは、停止条件が満たされるか否かが判定される。停止条件は、工程ST4、工程ST5、及び工程ST6の繰り返し回数が所定回数に達している場合に満たされる。なお、工程ST4、工程ST5、及び工程ST6の繰り返しの周波数、即ち、(T4+T5+T6)の逆数は、10kHz以上400kHz以下であってもよい。或いは、当該周波数は、400kHzよりも大きくてもよい。また、(T4+T5+T6)は、(T1+T2+T3)と等しくてもよい。
工程STdにおいて停止条件が満たされていないと判定されると、再び工程ST4が実行される。一方、工程STdにおいて、停止条件が満たされていると判定されると、方法MTは終了する。
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
例えば、プラズマ処理装置1は容量結合型のプラズマ処理装置であったが、別の実施形態に係るプラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置といった他のタイプのプラズマ処理装置であってもよい。また、方法MTは、プラズマ処理装置1以外の任意のタイプのプラズマ処理装置、例えば誘導結合型のプラズマ処理装置を用いて実行されてもよい。
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。