以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1-1.現金自動預払機及び紙幣入出金機の構成]
図1に外観を示すように、媒体取引装置としての現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、使用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
筐体2は、その前側に使用者が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に応対部3が設けられている。応対部3は、使用者との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになっており、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられている。
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。受渡部としての入出金口5は、使用者によって入金される紙幣が投入されると共に、使用者へ出金する紙幣が排出される部分である。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになっている。
操作表示部6は、取引に際して操作画面や取引内容等を表示する液晶表示パネルと、使用者の入力操作を検知するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルである。テンキー7は、「0」~「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。
以下では、現金自動預払機1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、取引対象である紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
媒体処理装置としての紙幣入出金機10は、図2に側面図を示すように、内部に媒体としての紙幣に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この紙幣は、例えば紙や樹脂等の材料により、薄い長方形の紙葉状に形成されている。
紙幣入出金機10には、紙幣制御部11、接客部12、上前搬送部13、鑑別部14、上後搬送部15、一時保留部16、リジェクト庫17、下搬送部18及び複数の紙幣収納庫19が設けられている。
紙幣制御部11は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行い、紙幣入出金機10を統括制御する。また紙幣制御部11は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
接客部12は、使用者との間で紙幣を受け渡すことにより、該使用者に紙幣を入金させ、又は該使用者に紙幣を出金する。接客部12は、紙幣を収容する収容器や、開口部を開閉するシャッタ、紙幣を1枚ずつに分離して繰り出す分離部、及び搬送されてきた紙幣を集積する集積部等を有している。この接客部12は、使用者により紙幣が収容器に投入されると、シャッタを閉塞し、分離部により紙幣を1枚ずつに分離して、下側に位置する上前搬送部13に順次引き渡す。また接客部12は、後側の上後搬送部15から紙幣が搬送されてくると、これを放出部により収容器内に順次放出して集積してから、シャッタを開放して利用者に受け取らせる。
上前搬送部13は、上側の接客部12、後側の鑑別部14及び下側の下搬送部18とそれぞれ接続される3本の搬送路を有しており、これらの接続部分に切替器が設けられている。この上前搬送部13は、紙幣制御部11の制御に基づき、接客部12及び鑑別部14を接続する搬送経路と、該鑑別部14及び下搬送部18を接続する搬送経路とに切り替えることができる。
鑑別部14は、接客部12の下側且つ上前搬送部13の後側に位置している。鑑別部14は、その内部において、前後方向に沿った搬送路が形成され、この搬送路に沿って磁気センサ、イメージセンサ、及び厚みセンサ等の複数のセンサが配置されている。この鑑別部14は、搬送路に沿って搬送される紙幣から各センサにより得られる種々の検知結果を鑑別結果として紙幣制御部11へ送出する。これに応じて紙幣制御部11は、この鑑別結果を基に紙幣の金種、真偽、正損(損傷しているか否か)等を判断すると共に搬送状態を認識し、得られた結果を基に該紙幣の搬送経路や搬送先を決定する。
上後搬送部15は、接客部12及び鑑別部14の後側に位置している。この上後搬送部15は、接客部12、鑑別部14、一時保留部16、リジェクト庫17及び下搬送部18とそれぞれ接続される複数本の搬送路が形成されており、各搬送路の接続箇所に切替器がそれぞれ設けられている。
この上後搬送部15は、紙幣制御部11の制御に基づき、鑑別部14及び接客部12を接続する搬送経路と、鑑別部14及び一時保留部16を接続する搬送経路と、鑑別部14及び下搬送部18を接続する搬送経路とに切り替えることができる。これに加えて上後搬送部15は、一時保留部16及び接客部12を接続する搬送経路と、下搬送部18及びリジェクト庫17を接続する搬送経路とに切り替えることもできる。
媒体収納繰出装置及び媒体収納繰出部としてのとしての一時保留部16は、いわゆるテープエスクロ方式を採用しており、円筒状に形成され回転するドラムや、このドラムの周側面に一端が固定されたテープ、このテープを他端側から巻き取るリール、及びテープを所定の走行路に沿って走行させるプーリ等を有している。この一時保留部16は、上後搬送部15から紙幣を受け取ると、ドラムを所定の巻取方向に回転させ、この紙幣をテープと共に周側面に巻き付けて収納する。また一時保留部16は、ドラムを巻取方向と反対の巻戻方向に回転させると、該ドラムの周側面からテープと共に紙幣を引き剥がし、これを繰り出して上後搬送部15に順次引き渡す(詳しくは後述する)。
リジェクト庫17は、内部に紙幣を収納する収納空間を有すると共に、この収納空間内へ紙幣を放出する放出機構を有している。このリジェクト庫17は、上後搬送部15から紙幣を受け取ると、この紙幣を放出機構により収納空間内へ放出し、集積した状態で収納する。因みにリジェクト庫17には、例えば損傷の程度が大きく出金すべきで無いと判断された紙幣(以下これをリジェクト紙幣と呼ぶ)が搬送され、収納される。
下搬送部18は、上前搬送部13、鑑別部14、上後搬送部15及びリジェクト庫17の下側に位置しており、上前搬送部13、上後搬送部15及び4個の紙幣収納庫19とそれぞれ接続された搬送路が形成されると共に、各搬送路の接続箇所に切替器がそれぞれ設けられている。この下搬送部18は、紙幣制御部11の制御に基づき、上前搬送部13及び各紙幣収納庫19を接続する搬送経路と、上後搬送部15及び各紙幣収納庫19を接続する搬送経路とに切り替えることができる。
紙幣収納庫19は、上下方向に長い直方体状に形成されており、その内部に紙幣を集積して収納する収納空間、該収納空間の上側に配置され紙幣の分離処理及び放出処理を行う分離放出部等が設けられている。また各紙幣収納庫19は、それぞれ収納すべき紙幣の金種が予め設定されている。
紙幣収納庫19は、紙幣を収納する収納処理を行う場合、上側の下搬送部18から紙幣を受け取ると、この紙幣を収納庫搬送部により分離放出部へ搬送して収納空間内へ放出し、該収納空間内に集積した状態で収納する。また紙幣収納庫19は、紙幣を繰り出す繰出処理を行う場合、収納空間内に集積された紙幣を分離放出部により1枚ずつに分離し、これを収納庫搬送部により上方へ搬送して上側の下搬送部18に引き渡すことにより繰り出す。
[1-2.一時保留部の構成]
次に、一時保留部16の構成について説明する。図3に模式的な右側面図を示すように、媒体収納繰出装置としての一時保留部16は、フレーム30内における中央付近にドラム31が配置されると共に、その後側の上下それぞれにリール41及び42が配置された構成となっている。フレーム30は、全体として中空の直方体状に構成されており、その前側に上後搬送部15(図2)との間で紙幣を受け渡すための受渡口30A等が設けられている。
ドラム31は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状若しくは円筒状に形成されており、その中心軸を左右方向に貫通する位置に、ベアリング33及び34を介してドラム中心軸32が挿通されている。ドラム中心軸32は、左右方向に沿った細長い円柱状に形成され、左右の両端近傍においてフレーム30によりワンウェイベアリング35(詳しくは後述する)及びベアリング36を介して支持されている。かかる構成によりドラム31は、このドラム中心軸32を回転中心として回転することができる。またドラム中心軸32は、フレーム30に対して所定の回転方向へ回転することができる(詳しくは後述する)。
上側のリール41は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状の部分の左右両側に円板状の部分が取り付けられた形状、すなわちいわゆる糸巻きと類似した形状となっており、直径及び左右方向の長さが何れもドラム31よりも十分に小さくなっている。このリール41は、その中心部分において、トルクリミッタ45を介して、左右方向に沿ったリール中心軸43が貫通している。
リール中心軸43は、ドラム中心軸32と同様、左右方向に沿った細長い円柱状に形成され、左右の両端近傍においてフレーム30により所定のベアリングを介して回転可能に支持されている。トルクリミッタ45は、一定以下の負荷であればリール41及びリール中心軸43の間で力を伝達して両者を一体に回転させる一方、一定以上の負荷が加わった場合に力の伝達を遮断する。
下側のリール42は、リール41と同様に構成されており、その中心部分において、トルクリミッタ46を介して、左右方向に沿ったリール中心軸44が貫通している。リール中心軸44は、リール中心軸43と同様に構成されており、左右の両端近傍においてフレーム30により所定のベアリングを介して回転可能に支持されている。トルクリミッタ46は、トルクリミッタ45と同様に構成されている。
リール41及び42の周側面には、それぞれテープ51及び52が巻き付けられている。テープ51は、可撓性を有する樹脂材料により構成され、長手方向の長さが例えば200[m]のように十分に長く、左右方向の長さ(すなわち幅)が例えば20~30[mm]ように比較的短く、すなわち狭くなっている。
テープ51は、その一端がリール41の周側面に固定された上で、該周側面に巻回されている。このテープ51は、他端がリール41の最外周部分から前方へ向けて引き出され、フレーム30内に設けられたプーリ53において後下向きに折り返された後、ドラム31の周側面に到達する走行経路に沿って張架されている。またテープ51の他端は、ドラム31の周側面に固定されている。
テープ52は、テープ51と同様に構成されており、その一端がリール42の周側面に固定された上で、該テープ51と同じ巻回方向となるように、外周側面に巻回されている。このテープ52は、他端がリール42の最外周部分から前下方へ向けて引き出され、フレーム30内に設けられたプーリ54において前向きに変化させ、さらにプーリ55において上方向に変化させた、プーリ56において後下向きに折り返された後、ドラム31の周側面に到達する走行経路に沿って張架されている。またテープ52の他端は、ドラム31の周側面におけるテープ51の外側に重ねて固定されている。
かかる構成により一時保留部16は、紙幣を収納する場合、後述する駆動機構により、ドラム31、リール41及び42を図3の反時計回り(以下これを巻取方向R1と呼ぶ)にそれぞれ回転させる。これによりテープ51及び52は、それぞれリール41及び42から引き出され、それぞれの走行経路を経た後、ドラム31の周側面に到達して巻き付けられる。このとき一時保留部16は、受渡口30Aから紙幣が引き渡されると、この紙幣をテープ51及び52の間に挟んだままドラム31の周側面に巻き付け、収納することができる。
一方、一時保留部16は、紙幣を繰り出す場合、後述する駆動機構により、ドラム31、リール41及び42を図3の時計回り(以下これを巻戻方向R2と呼ぶ)に回転させる。これによりテープ51及び52は、ドラム31の周側面から引き剥がされ、それぞれの走行経路を収納時と反対方向に走行してリール41及び42の周側面に到達し、巻き取られる。このとき一時保留部16は、テープ51及び52の間に紙幣を挟んでいれば、これをドラム31の周側面から引き剥がして前方へ進行させ、やがて受渡口30Aから繰り出して上後搬送部15(図2)に引き渡すことができる。
説明の都合上、以下では、上述した一時保留部16のうちリール41及び42、トルクリミッタ45及び46、テープ51及び52、プーリ53~56をまとめてテープ走行系40と呼ぶ。
[1-3.駆動力伝達部及び速度変換部の構成]
次に、図4及び図5を参照しながら、一時保留部16においてドラム31並びにリール41及び42に駆動力を伝達する駆動力伝達部60と、回転速度を変換する速度変換部70とついて、それぞれ説明する。因みに図4は、一時保留部16からフレーム30等の一部の部品を省略し、右斜め上方から見下ろした模式的な斜視図である。また図5は、一時保留部16おけるドラム31及びその周囲に配置された各部品を、該ドラム31の回転中心を通る水平な切断面により切断した様子を表す模式的な断面図である。この図5には、ドラム31やドラム中心軸32等が回転する場合の仮想的な中心線であるドラム軸Xも表している。
駆動力伝達部60(図4)は、一時保留部16におけるドラム31並びにリール41及び42の右側に配置されており、プーリ61、62及び63並びにベルト64により構成されている。
駆動力供給体としてのプーリ61は、中心軸を左右方向に沿わせた扁平な円柱状若しくは比較的厚い円板状に形成されており、その半径がドラム31の半径よりも十分に小さくなっている。このプーリ61は、ワンウェイベアリング66(詳しくは後述する)を介してドラム中心軸32に挿通されており、その中心軸をドラム軸Xに一致させている。プーリ62及び63は、何れもプーリ61と同様の形状であるものの、それぞれリール中心軸43及び44に挿通され、固定されている。ベルト64は、可撓性を有する樹脂材料等により構成されており、プーリ61、62及び63の周囲を周回するように張架されている。
この駆動力伝達部60は、駆動力源としてのモータ(図示せず)により生成された駆動力が伝達されると、ベルト64を図4の反時計回り(走行方向T1)又は時計回り(走行方向T2)に走行させて、プーリ61、62及び63をそれぞれ巻取方向R1または巻戻方向R2に回転させる。このときプーリ62は、リール中心軸43と一体に回転するため、トルクリミッタ45を介して、リール41に対し巻取方向R1又は巻戻方向R2に回転する力を加えることができる。これと同様にプーリ63は、リール中心軸44と一体に回転するため、トルクリミッタ46を介して、リール42に対し巻取方向R1または巻戻方向R2に回転する力を加えることができる。
速度変換部70は、概ねドラム31の右側部分における外周面よりも内側に配置されており、いわゆる遊星ギア機構を有している。遊星キャリア71は、左右方向に薄く前後方向に長い直方体状若しくは薄板状に構成されている。この遊星キャリア71は、駆動力伝達部60におけるプーリ61に対し、その左側面に当接した状態で取り付けられており、前後方向及び上下方向のほぼ中心において、ドラム中心軸32及びワンウェイベアリング66により左右方向に挿通されている。
遊星キャリア71における前側及び後側の端部近傍には、遊星ギア中心軸73及び74がそれぞれ設けられている。遊星ギア中心軸73及び74は、何れも中心軸を左右方向に沿わせた細長い円柱状に構成されており、遊星キャリア71を左右方向に貫通した状態で取り付けられ、且つ該遊星キャリア71の左側面から左方向へ十分な長さに渡り突出している。
かかる構成により遊星キャリア71は、プーリ61がドラム中心軸32を中心に巻取方向R1又は巻戻方向R2に回転する場合、該プーリ61並びに遊星ギア中心軸73及び74と一体に、ドラム軸Xを中心として、巻取方向R1又は巻戻方向R2に回転することができる。
遊星ギア中心軸73及び74には、遊星キャリア71の左側に、遊星ギア75及び76がそれぞれ挿通されている。遊星ギア75及び76は、全体として中心軸を左右方向に沿わせた円柱状若しくは円板状に構成されており、左右方向の長さ(すなわち厚さ)が比較的短く(すなわち薄く)、それぞれの外周部分にギア(図示せず)が形成されている。因みに遊星ギア75及び76の直径は、ドラム31の直径よりも十分に小さく、例えば該ドラム31の直径の約1/3~1/4程度となっている。
この遊星ギア75及び76は、それぞれの中心部分に設けられた軸孔において、遊星ギア中心軸73及び74によりそれぞれ回転可能に支持されている。このため遊星ギア75及び76は、この遊星ギア中心軸73及び74をそれぞれの回転中心として、自在に回転すること、すなわち自転することができる。また遊星ギア75及び76は、遊星キャリア71が回転すると、ドラム軸Xを中心に回転すること、すなわち公転することができる。
一方、遊星キャリア71の左側におけるドラム中心軸32の近傍には、サンギア77が取り付けられている。サンギア77は、遊星ギア75等と類似した構成となっており、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状若しくは円板状に構成され、左右方向の長さが比較的短く、それぞれの外周部分にギア(図示せず)が形成されている。因みにサンギア77の直径は、ドラム31の半径よりも小さく、例えば該ドラム31の直径の約1/2~1/3程度となっている。
またサンギア77は、その中心部分がドラム中心軸32に挿通されると共に該ドラム中心軸32に対し固定されている。このためサンギア77は、ドラム中心軸32と一体に回転することができる。さらにサンギア77は、外周部分に形成されたギアを遊星ギア75及び76の各ギアとそれぞれ歯合させている。
これに加えてドラム31における右側の内周部、すなわちサンギア77並びに遊星ギア75及び76の外側には、内歯車78が形成されている。この内歯車78は、遊星ギア75及び76と歯合されている。
このため速度変換部70では、遊星キャリア71及びサンギア77が同一の回転方向に同一の回転速度で回転する場合、遊星ギア75及び76を回転(自転)させること無く、該遊星キャリア71、該遊星ギア75及び76、該サンギア77、並びにドラム31を、ドラム中心軸32と同一の回転速度で回転させることができる。
また速度変換部70では、遊星キャリア71及びサンギア77が互いに異なる方向に回転し、或いは互いの回転速度が異なる場合、遊星ギア75及び76を回転(自転)させながら、該サンギア77及びドラム中心軸32と、該遊星キャリア71と、ドラム31とを、それぞれ異なる速度で回転させることができる。
ところで、一時保留部16の右側部分において、フレーム30及びドラム中心軸32の間には、ワンウェイベアリング35(図5)が設けられている。回転方向制限部及び第1回転方向制限部としてのワンウェイベアリング35は、外周側のフレーム30に対し、内周側のドラム中心軸32を回転可能に支持しているものの、該ドラム中心軸32が回転可能な方向を、巻戻方向R2のみに制限している。すなわちワンウェイベアリング35は、仮にドラム中心軸32に対して巻取方向R1に回転する力が作用したとしても、該巻取方向R1に回転せず、フレーム30に対し静止した状態を維持する。
また上述したように、プーリ61及び遊星キャリア71とドラム中心軸32との間にも、ワンウェイベアリング66が設けられている。回転方向制限部及び第2回転方向制限部としてのワンウェイベアリング66は、外周側のプーリ61及び遊星キャリア71に対し、内周側のドラム中心軸32を回転可能に支持しているものの、該ドラム中心軸32が回転可能な方向を、巻戻方向R2のみに制限している。換言すれば、ワンウェイベアリング66は、内周側の該ドラム中心軸32に対し、外周側のプーリ61及び遊星キャリア71が回転可能な方向を、巻取方向R1に制限している。すなわちワンウェイベアリング66は、仮にプーリ61及び遊星キャリア71に対し巻戻方向R2に回転する力が作用した場合、これらをドラム中心軸32に対して自由に回転させず、該ドラム中心軸32と一体に回転させる。
このように一時保留部16は、その右側部分におけるドラム31の内側において、遊星ギア75及び76をサンギア77及び内歯車78とそれぞれ歯合させ、さらにワンウェイベアリング35及び66によりドラム中心軸32等の回転方向を制限している。説明の都合上、以下では、ワンウェイベアリング35及び66を含めて速度変換部70と見なすものとする。
[1-4.ドラム及びリールの回転]
次に、一時保留部16におけるドラム31並びにリール41及び42の回転について、収納動作時における巻取方向R1と繰り出し動作時における巻戻方向R2とに分けて、それぞれ説明する。
[1-4-1.収納動作時における巻取方向への回転]
一時保留部16は、紙幣制御部11(図2)の制御に基づき収納動作を行う場合、駆動力伝達部60(図4)のベルト64を反時計回りとなる走行方向T1に沿って走行させる。これにより一時保留部16では、図6(A)及び(B)に一部を拡大して示すように、プーリ61が遊星キャリア71と共に巻取方向R1に回転する。因みに図6(A)は、主にプーリ61を右側から見た様子を表している。また図6(B)は、主にサンギア77、遊星ギア75及び76並びに内歯車78を右側から見た様子を表している。
このときワンウェイベアリング66は、ドラム中心軸32に対し、該プーリ61及び遊星キャリア71を制限すること無く自由に回転させる。これに伴いドラム中心軸32には、該ワンウェイベアリング66を介して、プーリ61から巻取方向R1に回転しようとする力の一部が作用する。しかしながらドラム中心軸32は、ワンウェイベアリング35(図5)によりフレーム30に対する巻取方向R1への回転が制限されている。このためドラム中心軸32は、静止した状態を維持する。これに伴い、ドラム中心軸32に固定されたサンギア77(図4及び図5)も、静止した状態を維持する。
ここで、図5と対応する図7に、収納動作時における各部の動作を模式的に表す。図7では、回転せずに静止している部材、すなわちフレーム30、ドラム中心軸32及びサンギア77等を白色(すなわち斜線なし)で表す一方、プーリ61及びこれと一体に回転する遊星キャリア71並びに遊星ギア中心軸73及び74に同一種類の斜線を付している。
すなわち一時保留部16では、図6(B)に示すように、遊星キャリア71が遊星ギア中心軸73及び74と共に巻取方向R1に回転しようとする一方でサンギア77がドラム中心軸32と共に静止している。そうすると一時保留部16では、サンギア77に歯合している遊星ギア75及び76が、遊星ギア中心軸73及び74を中心にそれぞれ巻取方向R1に回転(すなわち自転)しながら、該サンギア77の周囲を巻取方向R1に回転(すなわち公転)する。これに伴い一時保留部16では、遊星ギア75及び76と歯合する内歯車78が設けられたドラム31が、巻取方向R1に回転する。換言すれば、プーリ61、遊星キャリア71及びドラム31は、いずれも同軸で回転する。
因みに図7では、プーリ61等とは別に回転(自転)する遊星ギア75及び76を該プーリ61と異なる種類の斜線により表し、さらにこれらと異なる速度で回転するドラム31をさらに異なる種類の斜線により表している。
ここで、サンギア77の歯数をZa、内歯車78の歯数をZcとすると、仮にプーリ61及び遊星キャリア71が回転速度W[r/s]で回転した場合、内歯車78が設けられたドラム31の回転速度Wd[r/s]は、次の(1)式により表される。
この(1)式における分数の部分は、1よりも大きな値となる。このためドラム31の回転速度Wdは、プーリ61等の回転速度Wよりも大きな値となる。換言すれば、ドラム31は、プーリ61等よりも高速に回転する。
一方、ドラム31に巻き付けられたテープ51及び52の周速度であるドラム周速度Vd[m/s]は、該ドラム31の見かけ上の半径をrd[m]とすると、次の(2)式により表される。
しかしながら、ドラム31の見かけ上の半径rdは、紙幣BL(図4)並びにテープ51及び52が巻き付けられるに連れて拡大していく。このため一時保留部16では、(2)式から分かるように、ドラム31の見かけ上の半径rdが大きくなるに連れて、テープ51及び52のドラム周速度Vdも大きくなる。
一方、プーリ61の半径とプーリ62及び63の半径との比率をプーリ半径比率Rpとすると、該プーリ62及び63の回転速度Wrは、該プーリ61の回転速度Wにプーリ半径比率Rpを乗じた値となる。
また、リール41及び42に巻き付けられたテープ51及び52の周速度であるリール周速度Vrは、該リール41及び42の見かけ上の半径をrr[m]とすると、次の(3)式により表される。
さらに、リール41及び42の見かけ上の半径rrは、ドラム31の見かけ上の半径rdと同様、テープ51及び52が巻き付けられるに連れて拡大し、これと反対にテープ51及び52が引き出されるに連れて縮小していく。このため一時保留部16では、(3)式から分かるように、リール41及び42の見かけ上の半径rrが小さくなるに連れて、テープ51及び52のリール周速度Vrも小さくなる。
ここで、一時保留部16において収納動作時にテープ51及び52を弛ませないための条件は、該テープ51及び52を巻き取るドラム31のドラム周速度Vdがリール41及び42のリール周速度Vrよりも常に大きい(速い)ことである。一時保留部16では、収納動作を開始した直後でありテープ51及び52におけるほぼ全ての部分がリール41及び42に巻き付けられているときに、ドラム31の見かけ上の半径rdが最も小さくなり、且つリール41及び42の見かけ上の半径rrが最も大きくなる。以下、それぞれをドラム最小半径rdminおよびリール最大半径rrmaxと呼ぶ。
また、一時保留部16による収納動作の開始直後における、ドラム31の見かけ上の半径が最も小さい時のドラム周速度Vdをドラム最小周速度Vdminと呼び、リール41及び42の見かけ上の半径が最も大きいときのリール周速度Vrをリール最大周速度Vrmaxと呼ぶ。そのうえで一時保留部16では、ドラム最小周速度Vdminがリール最大周速度Vrmaxよりも大きくなるよう、各部の値が適切に設定されている。具体的に一時保留部16では、ドラム最小周速度Vdmin>リール最大周速度Vrmaxの関係に(1)式、(2)式及び(3)式を代入し整理して得られる(4)式の関係を満たすよう、各部の値がそれぞれ設定されている。
かくして一時保留部16では、駆動力伝達部60によりプーリ61が巻取方向R1に回転されると、ドラム31をリール41及び42と共に該巻取方向R1に回転させ、且つドラム周速度Vdをリール周速度Vrよりも常に高めた状態とするようになっている。
因みに一時保留部16では、リール周速度Vrがドラム周速度Vdよりも低い(遅い)ため、リール41及び42において、テープ51及び52が常にドラム31により引っ張られた状態となる。しかしながら一時保留部16では、トルクリミッタ45及び46が作用するため、リール41及び42における実際のテープ51及び52の速度が、ドラム周速度Vdと同等となる。
[1-4-2.繰出動作時における巻戻方向への回転]
一時保留部16は、紙幣制御部11(図2)の制御に基づき繰出動作を行う場合、駆動力伝達部60(図4)のベルト64を時計回りとなる走行方向T2に沿って走行させる。これにより一時保留部16では、図6(A)及び(B)とそれぞれ対応する図8(A)及び(B)に一部を拡大して示すように、プーリ61が遊星キャリア71と共に巻戻方向R2に回転する。
このときワンウェイベアリング66は、ドラム中心軸32に対するプーリ61及び遊星キャリア71の巻戻方向R2への回転を制限するため、該プーリ61及び遊星キャリア71と共にドラム中心軸32を巻戻方向R2へ回転させる。因みにワンウェイベアリング35(図5)は、フレーム30に対するドラム中心軸32の巻戻方向R2への回転を何ら制限していない。このためドラム中心軸32は、フレーム30に対し巻戻方向R2へ回転できる。これに伴い、ドラム中心軸32に固定されたサンギア77(図4及び図5)も、巻戻方向R2へ回転する。
ここで、図5及び図7と対応する図9に、繰出動作時における各部の動作を模式的に表す。図9では、図7と同様、回転せずに静止している部材、すなわちフレーム30を白色(すなわち斜線なし)で表す一方、プーリ61及びこれと一体に回転する遊星キャリア71、遊星ギア中心軸73及び74、ドラム中心軸32並びにサンギア77等に同一種類の斜線を付している。
すなわち一時保留部16では、図8(B)に示すように、遊星キャリア71が遊星ギア中心軸73及び74と共に巻戻方向R2に回転しようとし、さらにこれらと共にサンギア77及びドラム中心軸32も同一の回転速度で巻戻方向R2に回転しようとする。そうすると一時保留部16では、サンギア77に歯合している遊星ギア75及び76が、遊星ギア中心軸73及び74を中心に回転(すなわち自転)せず、該サンギア77及びドラム中心軸32等と一体に、ドラム軸Xを中心として巻戻方向R2に回転(すなわち公転)する。これに伴い一時保留部16では、遊星ギア75及び76と歯合する内歯車78が設けられたドラム31が、プーリ61や遊星キャリア71等と同一の回転速度で巻戻方向R2に回転する。換言すれば、プーリ61、サンギア77、ドラム中心軸32及びドラム31は、いずれも同軸で回転する。
この繰出動作時におけるドラム31の回転速度は、プーリ61や遊星キャリア71等の回転速度と同一となる。すなわち、プーリ61等が回転速度Wで回転した場合、ドラム31の回転速度Wdは、プーリ61の回転速度Wと同一となる。
一方、ドラム31に巻き付けられたテープ51及び52のドラム周速度Vd、及びリール41及び42に巻き付けられたテープ51及び52のリール周速度Vrは、収納動作時と同様、それぞれ上述した(2)式及び(3)式のように表される。
ここで、一時保留部16において繰出動作時にテープ51及び52を弛ませないための条件は、該テープ51及び52を巻き取るリール41及び42のリール周速度Vrがドラム31のドラム周速度Vdよりも常に大きい(速い)ことである。すなわち繰出動作時における周速度に関する条件は、収納動作時と比較して、大小関係が反対となる。
一時保留部16では、最大枚数の紙幣が収納された状態でありテープ51及び52におけるほぼ全ての部分がドラム31巻き付けられているときに、該ドラム31の見かけ上の半径rdが最も大きくなり、且つリール41及び42の見かけ上の半径rrが最も小さくなる。以下、それぞれをドラム最大半径rdmaxおよびリール最小半径rrminと呼ぶ。
そこで一時保留部16では、リール41及び42の見かけ上の半径が最も小さいときのリール周速度Vr(以下これをリール最小周速度Vrminと呼ぶ)が、ドラム31の見かけ上の半径が最も大きい時のドラム周速度Vd(以下これをドラム最大周速度Vdmaxと呼ぶ)よりも大きくなるよう、各部の値が適切に設定されている。具体的に一時保留部16では、リール最小周速度Vrmin>ドラム最大周速度Vdmaxの関係に(2)式及び(3)式を代入し整理して得られる(5)式の関係を満たすよう、各部の値がそれぞれ設定されている。
かくして一時保留部16では、駆動力伝達部60によりプーリ61が巻戻方向R2に回転されると、ドラム31をリール41及び42と共に該巻戻方向R2に回転させ、且つリール周速度Vrをドラム周速度Vdよりも常に高めた状態とするようになっている。
他の観点から見ると、リール周速度Vrがドラム周速度Vdよりも速いことから、ドラム31は、テープ51及び52を介してリール41及び42により巻戻方向R2へ回転する力が加えられる。そうするとドラム31に設けられた内歯車78は、遊星ギア75及び76を回転(自転)させながら、遊星キャリア71を巻戻方向R2へ回転させようとする。
しかしながらワンウェイベアリング66は、ドラム中心軸32に対するプーリ61及び遊星キャリア71の巻戻方向R2への回転を制限するため、該プーリ61及び遊星キャリア71と共にドラム中心軸32を巻戻方向R2へ回転させる。そうするとサンギア77は、ドラム中心軸32、遊星キャリア71及びプーリ61と一体に、同一の速度で巻戻方向R2に回転することになる。この結果、一時保留部16では、ドラム31がプーリ61と一体に、同一の速度で巻戻方向R2に回転することになる。
因みに一時保留部16では、リール周速度Vrがドラム周速度Vdよりも高い(速い)ため、リール41及び42において、テープ51及び52が常にドラム31により引っ張られた状態となる。しかしながら一時保留部16では、この繰出動作の場合にも収納動作の場合と同様にトルクリミッタ45及び46が作用するため、リール41及び42における実際のテープ51及び52の速度がドラム周速度Vdとほぼ同等となる。
[1-5.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による現金自動預払機1の紙幣入出金機10では、一時保留部16において駆動力伝達部60及び速度変換部70を設けた(図4及び図5)。駆動力伝達部60は、ベルト64を介してプーリ61、62及び63を常に同一方向に同一の周速度で回転させ、ドラム31並びにリール41及び42にそれぞれ駆動力を伝達する。
速度変換部70は、プーリ61に遊星キャリア71を取り付けると共に、遊星ギア75及び76をサンギア77及び内歯車78とそれぞれ歯合させた。これに加えて速度変換部70は、ワンウェイベアリング35及び66により、フレーム30に対するドラム中心軸32の回転方向と、該ドラム中心軸32に対するプーリ61の回転方向とを、それぞれ一方向のみに制限した。
これにより一時保留部16は、収納動作時にプーリ61が巻取方向R1に回転した場合、ドラム中心軸32及びサンギア77を静止させ、遊星ギア75及び76をそれぞれ自転させながら公転させることにより、内歯車78が設けられたドラム31を巻取方向R1に回転させることができる(図6及び図7)。また一時保留部16は、このときのドラム31の回転速度Wdを、プーリ61等の回転速度Wに対し、(1)式に示したようにサンギア77の歯数Za及び内歯車78の歯数Zcに基づいた比率に高めることができる。
一方、一時保留部16は、繰出動作時にプーリ61が巻戻方向R2に回転した場合、該プーリ61及び遊星キャリア71等と一体にドラム中心軸32及びサンギア77を回転させ、遊星ギア75及び76をそれぞれ自転させずに公転させることにより、内歯車78が設けられたドラム31を巻戻方向R2に回転させることができる(図8及び図9)。また一時保留部16は、このときプーリ61、遊星キャリア71、遊星ギア中心軸73及び74、遊星ギア75及び76、サンギア77、ドラム中心軸32、内歯車78及びドラム31を一体に回転させるため、ドラム31の回転速度Wdを、該プーリ61等の回転速度Wと同等とする。
すなわち一時保留部16は、プーリ61が巻取方向R1に回転する場合と巻戻方向R2に回転する場合とで、駆動力の伝達経路を切り替えて、該プーリ61の回転速度Wに対するドラム31の回転速度Wdの比率を変更することができる。これにより一時保留部16では、収納動作時にテープ51及び52をリール41及び42からドラム31へ巻き取る場合、及び繰出動作時にテープ51及び42をドラム31からリール41及び42へ巻き取る場合の何れにおいても、該テープ51及び52を弛ませずに走行させることができる。
さらに一時保留部16は、サンギア77の歯数Za、内歯車78の歯数Zc、ドラム最小半径rdmin、ドラム最大半径rdmax、リール最小半径rrmin、リール最大半径rrmax、及びプーリ半径比率Rpの各値を、(4)式及び(5)式を満たすように設定した。これにより一時保留部16は、収納動作の開始時にテープ51及び52のほぼ全部がリール41及び42に巻き付いた状態や、繰出動作の開始時に最大枚数の紙幣が収納されテープ51及び52のほぼ全部がドラム31に巻き付いた状態であっても、テープ51及び52の張力を確実に維持できる。
また他の観点から見れば、一時保留部16では、左側にのみ駆動力伝達部60及び速度変換部70の構成部品を配置した。これにより一時保留部16では、左右両側にギア等の部品をそれぞれ配置する場合と比較して、装置全体を小型に構成することができる。また一時保留部16では、保守作業等において作業者に左側からのみアクセスさせれば良く、右側へ移動させる必要が無いため、作業効率を高めることができる。
さらに一時保留部16では、遊星ギア75及び76、サンギア77及び内歯車78をドラム31の内側に設けた(図4及び図5)。これにより一時保留部16では、ドラム31の左外側に配置すべき部品の数を削減でき、装置構成の小型化を図ることができる。
以上の構成によれば、第1の実施の形態による現金自動預払機1の紙幣入出金機10における一時保留部16は、駆動力伝達部60及び速度変換部70を設けた。速度変換部70は、遊星ギア75及び76、並びにワンウェイベアリング35及び66により、プーリ61からの回転方向に応じてドラム31までの駆動力の伝達経路を切り替える。これにより一時保留部16は、駆動力伝達部60においてベルト64の走行方向を切り替えるだけで、プーリ61に対するドラム31の回転速度の比率を切り替えることができるので、テープ51及び52に常に張力を加えた状態で走行させ、紙幣の収納又は繰出を正常に行うことができる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による現金自動預払機101は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、紙幣入出金機10に代わる紙幣入出金機110を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。紙幣入出金機110は、第1の実施の形態による紙幣入出金機10と比較して、一時保留部16に代わる一時保留部116を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
一時保留部116は、第1の実施の形態による一時保留部16と比較して、速度変換部70に代わる速度変換部170を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。速度変換部170は、図5と対応する図10に示すように、速度変換部70と比較して、ベアリング33及びワンウェイベアリング66に代えてワンウェイベアリング133及びベアリング166が設けられている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
ベアリング166は、外周側のプーリ61及び遊星キャリア71に対し、内周側のドラム中心軸32を、何れの回転方向にも回転し得るように支持している。一方、ワンウェイベアリング133は、第1の実施の形態におけるワンウェイベアリング66と同様に構成されており、外周側のドラム31に対し、内周側のドラム中心軸32を回転可能に支持しているものの、該ドラム中心軸32が回転可能な方向を、巻戻方向R2のみに制限している。
換言すれば、ワンウェイベアリング133は、内周側の該ドラム中心軸32に対し、外周側のドラム31が回転可能な方向を、巻取方向R1に制限している。すなわちワンウェイベアリング66は、仮にドラム31に対し巻戻方向R2に回転する力が作用した場合、これらをドラム中心軸32に対して自由に回転させず、該ドラム中心軸32と一体に回転させる。
かかる構成により一時保留部116は、収納動作を行う場合、第1の実施の形態(図6及び図7)と同様に、駆動力伝達部60のベルト64を走行方向T1に沿って走行させ、プーリ61を遊星キャリア71と共に巻取方向R1に回転させる。
このときベアリング166は、ドラム中心軸32に対し、該プーリ61及び遊星キャリア71を制限すること無く自由に回転させる。またドラム中心軸32は、第1の実施の形態と同様、ワンウェイベアリング35によりフレーム30に対する巻取方向R1への回転が制限されているため、サンギア77と共に静止した状態を維持する。さらに一時保留部116では、第1の実施の形態と同様、遊星キャリア71が遊星ギア中心軸73及び74と共に巻取方向R1に回転しようとする一方でサンギア77がドラム中心軸32と共に静止している。
そうすると一時保留部116では、サンギア77に歯合している遊星ギア75及び76が、遊星ギア中心軸73及び74を中心にそれぞれ巻取方向R1に自転しながら、該サンギア77の周囲を巻取方向R1に公転する。またドラム31は、ワンウェイベアリング133により、ドラム中心軸32に対する巻取方向R1への回転が許容されている。これに伴い一時保留部116では、遊星ギア75及び76と歯合する内歯車78が設けられたドラム31が、巻取方向R1に回転する。この場合、ドラム31の回転速度Wdは、第1の実施の形態と同様に、(1)式により表され、プーリ61等の回転速度Wよりも高速となる。
また一時保留部116は、繰出動作を行う場合、第1の実施の形態(図8及び図9)と同様に、駆動力伝達部60のベルト64を走行方向T2に沿って走行させ、プーリ61を遊星キャリア71並びに遊星ギア中心軸73及び74と共に巻戻方向R2に回転させる。
これにより一時保留部116では、遊星ギア75及び76が、遊星ギア中心軸73及び74を中心に回転(すなわち自転)しながら、サンギア77及び内歯車78及びドラム31に巻戻方向R2に回転する駆動力を伝達しようとする。ここでドラム31には、リール41及び51から繋がっているテープ51及び52(図3及び4)が回転負荷となる。このため遊星ギア75及び76は、駆動力をサンギア77及びこれが固定されたドラム中心軸32に優先的に伝達しようとする。そうするとワンウェイベアリング133は、ドラム31に対するドラム中心軸32の巻戻方向R2への回転を制限しているため、該ドラム中心軸32と一体にドラム31を巻戻方向R2へ回転させる。この結果、一時保留部116では、第1の実施の形態と同様、プーリ61、遊星キャリア71、遊星ギア75及び76、サンギア77及びドラム中心軸32とドラム31とが一体となり、同一の回転速度で巻戻方向R2に回転する。この場合、ドラム31の回転速度Wdは、第1の実施の形態と同様に、プーリ61等の回転速度Wと同等となる。
かくして第2の実施の形態による現金自動預払機101の紙幣入出金機110における一時保留部116は、第1の実施の形態による一時保留部16と同様の作用効果を奏し得る。すなわち一時保留部116の速度変換部170は、遊星ギア75及び76、並びにワンウェイベアリング35及び133により、プーリ61からの回転方向に応じてドラム31までの駆動力の伝達経路を切り替える。これにより一時保留部116は、第1の実施の形態と同様、駆動力伝達部60においてベルト64の走行方向を切り替えるだけで、プーリ61に対するドラム31の回転速度の比率を切り替えることができるので、テープ51及び52に常に張力を加えた状態で走行させ、紙幣の収納又は繰出を正常に行うことができる。
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による現金自動預払機201は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、紙幣入出金機10に代わる紙幣入出金機210を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。紙幣入出金機210は、第1の実施の形態による紙幣入出金機10と比較して、一時保留部16に代わる一時保留部216を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
一時保留部216は、第1の実施の形態による一時保留部16と比較して、速度変換部70に代わる速度変換部270を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。速度変換部270は、図5及び図10と対応する図11に示すように、速度変換部70と比較して、第2の実施の形態と同様にワンウェイベアリング66に代わるベアリング166が設けられている点において相違する。また速度変換部270は、ワンウェイベアリング35が省略されることにより、フレーム230に対してドラム中心軸232が固定されている。
これに加えて速度変換部270には、遊星ギア75及び遊星ギア中心軸73の間にワンウェイベアリング285が設けられると共に、遊星ギア76及び遊星ギア中心軸74の間にワンウェイベアリング286が設けられている。さらに速度変換部270には、ドラム中心軸232及びサンギア77の間に、ワンウェイベアリング287が設けられている。
このうちワンウェイベアリング285及び286は、内周側の遊星ギア中心軸73及び74に対し、外周側の遊星ギア75及び76をそれぞれ回転可能に支持しているものの、該遊星ギア75及び76が回転可能な方向を、巻取方向R1のみにそれぞれ制限している。すなわちワンウェイベアリング285及び286は、仮に遊星ギア75及び76に対して巻戻方向R2に回転する力が作用したとしても、該巻戻方向R2に回転せず、遊星ギア中心軸73及び74に対し静止した状態をそれぞれ維持する。
ワンウェイベアリング287は、内周側のドラム中心軸232に対し、外周側のサンギア77を回転可能に支持しているものの、該サンギア77が回転可能な方向を巻戻方向R2のみに制限している。すなわちワンウェイベアリング287は、仮にサンギア77に対して巻取方向R1に回転する力が作用したとしても、該巻取方向R1に回転せず、ドラム中心軸232に対し静止した状態を維持する。
かかる構成により一時保留部216は、収納動作を行う場合、図6及び図7とそれぞれ対応する図12及び図13に示すように、第1の実施の形態と同様に、駆動力伝達部60のベルト64を走行方向T1に沿って走行させ、プーリ61を遊星キャリア71と共に巻取方向R1に回転させる。
このときベアリング166は、固定されているドラム中心軸232に対し、プーリ61及び遊星キャリア71並びに遊星ギア中心軸73及び74を、制限すること無く自由に回転させる。これにより遊星ギア75及び76は、遊星ギア中心軸73及び74を中心に回転(自転)しながら、該遊星ギア中心軸73及び74から伝達される力をサンギア77及び内歯車78(すなわちドラム31)に伝達しようとする。
ここでドラム31には、リール41及び51から繋がっているテープ51及び52(図3及び4)が回転負荷となる。このため遊星ギア75及び76は、駆動力をサンギア77に優先的に伝達しようとする。しかしながらサンギア77は、ワンウェイベアリング287により、巻取方向R1への回転が制限されており、静止した状態を維持する。このため
遊星ギア75及び76は、それぞれ遊星ギア中心軸73及び74を中心に回転(自転)しながら、内歯車78に駆動力を伝達する。この結果、内歯車78が取り付けられたドラム31は、巻取方向R1に回転する。この場合、ドラム31の回転速度Wdは、第1及び第2の実施の形態と同様に、(1)式により表され、プーリ61等の回転速度Wよりも高速となる。
また一時保留部216は、繰出動作を行う場合、図8及び図9とそれぞれ対応する図14及び図15に示すように、第1の実施の形態と同様に、駆動力伝達部60のベルト64を走行方向T2に沿って走行させ、プーリ61を遊星キャリア71並びに遊星ギア中心軸73及び74と共に巻戻方向R2に回転させる。
これにより一時保留部216では、遊星ギア75及び76が、遊星ギア中心軸73及び74を中心に回転(すなわち自転)しながら、サンギア77及び内歯車78及びドラム31に巻戻方向R2に回転する駆動力を伝達しようとする。ここでドラム31には、リール41及び51から繋がっているテープ51及び52(図3及び4)が回転負荷となる。このため遊星ギア75及び76は、駆動力をサンギア77に優先的に伝達しようとする。
しかしながらワンウェイベアリング285及び286は、遊星ギア中心軸73及び74に対し、遊星ギア75及び76の巻戻方向R2への回転を制限している。このため遊星ギア75及び76は、それぞれ自転することなく、サンギア77の周囲を公転する。これに伴い内歯車78及びドラム31も、巻戻方向R2へ回転する。この結果、一時保留部216では、プーリ61、遊星キャリア71、遊星ギア75及び76、サンギア77及びドラム31が一体となり、同一の回転速度で巻戻方向R2に回転する。この場合、ドラム31の回転速度Wdは、第1及び第2の実施の形態と同様に、プーリ61等の回転速度Wと同等となる。
かくして第3の実施の形態による現金自動預払機201の紙幣入出金機210における一時保留部216は、第1の実施の形態による一時保留部16と同様の作用効果を奏し得る。すなわち一時保留部216の速度変換部270は、遊星ギア75及び76、並びにワンウェイベアリング285、286及び287により、プーリ61からの回転方向に応じてドラム31までの駆動力の伝達経路を切り替える。これにより一時保留部216は、第1の実施の形態と同様、駆動力伝達部60においてベルト64の走行方向を切り替えるだけで、プーリ61に対するドラム31の回転速度の比率を切り替えることができるので、テープ51及び52に常に張力を加えた状態で走行させ、紙幣の収納又は繰出を正常に行うことができる。
[4.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、速度変換部70におけるサンギア77及び内歯車78の間に2個の遊星ギア75及び76を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば1個又は3個以上の遊星ギアを設けても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
また上述した第3の実施の形態においては、ドラム中心軸232をフレーム230に対して固定し、且つ該ドラム中心軸232及びサンギア77の間にワンウェイベアリング287を設ける場合について述べた(図11)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば第1及び第2の実施の形態と同様に、フレーム30及びドラム中心軸32の間にワンウェイベアリング35を設けると共に該ドラム中心軸32にサンギア77を固定しても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、フレーム30及びドラム中心軸32の間にワンウェイベアリング35を設けることにより、ドラム中心軸32の回転方向を巻戻方向R2のみに制限する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば電磁クラッチ等の種々の構成を用いることにより、ドラム中心軸32の回転方向を巻戻方向R2のみに制限しても良い。ワンウェイベアリング66についても同様であり、また第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、ドラム中心軸32をワンウェイベアリング35及びベアリング36により回転可能に支持すると共に該ドラム中心軸32にサンギア77を固定する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば第3の実施の形態と同様に、ドラム中心軸32をフレーム30に固定すると共に、ドラム中心軸32に対してワンウェイベアリングを介してサンギア77を取り付けても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、駆動力伝達部60において遊星キャリア71、リール中心軸43及び44にそれぞれプーリ61、62及び63を取り付け、その周囲に張架したベルト64を走行させることにより駆動力を伝達する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば複数の歯車(ギア)の組合せにより駆動力伝達部60を構成しても良い。この場合、遊星キャリア71と、リール中心軸43及び44との回転数の比率を基に、プーリ半径比率Rpに相当する比率を算出し、これが(4)式や(5)式を満たすようにすれば良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、リール41及び42、トルクリミッタ45及び46、テープ51及び52、プーリ53~56でなるテープ走行系40を1系統のみ設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、2系統以上のテープ走行系40を設けても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、2本のテープ51及び52の間に紙幣を挟んでドラム31の周側面に巻き付けることにより収納する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばテープ52及びリール42等を省略し、1本のテープ51により紙幣をドラム31の周側面に巻き付けるようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、現金自動預払機1の紙幣入出金機10に搭載される一時保留部16に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば金融機関の窓口等に設置され該金融機関の職員等に使用されるテラーマシンや、金融機関内に設置され紙幣の施封処理や精査処理等を行う紙幣処理装置等、紙幣を取り扱う種々の装置に搭載する一時保留部に適用しても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣を収納する一時保留部16に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば証券や金券、或いは商品券や入場券等、紙葉状の媒体を取り扱う種々の装置において該媒体を収納し繰り出す一時保留部に本発明を適用しても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した第1の実施の形態においては、ドラムとしてのドラム31と、リールとしてのリール41及び42と、伝達部としての駆動力伝達部60と、速度変換部としての速度変換部70とによって媒体収納排出装置としての一時保留部16を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなるドラムと、リールと、伝達部と、速度変換部とよって媒体収納排出装置を構成しても良い。